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次回トランプ金会談で韓国の行方が決まる 日本も安閑としていられない交渉の鍵は在韓米軍の行方だ

A Strategic Disaster Looms at the 2nd Trump-Kim Summit

第二回トランプ金首脳会談が戦略的失敗に終わる可能性

President Donald Trump meets with North Korean leader Kim Jong Un on Sentosa Island, Tuesday, June 12, 2018, in Singapore.
JANUARY 30, 2019

年1月始め、韓国はマイク・ポンペイオ国務長官の発言に震撼した。平壌は祝杯をあげただろうが、長官はフォックニュースで米国本土の安全が最優先であり、このため米国は北朝鮮非核化をめざすと語ったのだ。長官が否定しなかった想定が危険をはらむ。トランプ政権が北朝鮮との交渉を優先し韓国との同盟関係を取引材料にするのではないか。 

米政府が米国の安全を第一に置くのは当然であり、そうしなければ無責任のそしりを逃れない。遠隔地で戦火が開くのを阻止することが本国の安全にどうつながっているかを米国民は理解していない。指導層が認識すべきは朝鮮半島や北東アジアの有事で米本土の安全や経済活動にどんな影響が生まれるかだ。仮に北朝鮮が米本土を狙うミサイルを廃止しても、在韓米軍を撤退させればアメリカに害が返ってくる。地域内の武力衝突の可能性が高まり米国民や同盟国が血と富を犠牲にすることになる。

ドナルド・トランプと金正恩は今月末に二回目の直接会談に臨む。首脳会談でトランプ政権にとって最大の外交成果が生まれる可能性もあるが、米国と韓国にとり戦略的失敗の序曲となる可能性もある。
.会談が近づく中、米韓両国の同盟関係を破綻させかねない3つの問題を克服し、両国の安全保障で破滅的影響が出ないよう努力すべきだ。まず、在韓米軍の経費負担で韓国が拒否していること、二番目にホワイトハウスが米本土防衛を最優先しているが韓国にどんな意味があるのか、三番目にトランプが同盟関係を軽視していることだ。

韓国は金正恩が北朝鮮ICBM開発終了の見返りに在韓米軍の撤退をトランプに求めるのではと懸念している。金正恩は韓国が米軍経費負担に合意していない状況を知っており、韓国のために米軍を危険に犯す必要はないと主張してくるのではないか。

仮にそんな合意が生まれれば、トランプではなく金正恩が史上最大の取引成約者となり、核武装した北、世界第四位規模の軍組織と南の吸収合併を当然視するイデオロギー存続を米大統領に認めさせたことになる。トランプは韓国と北東アジアを喪失した大統領として記憶されるだろう。

金正恩にとって在韓米軍は大きな脅威であり、核兵器を米国に向けているのはそのせいだ。だが在韓米軍の存在は北朝鮮の南進を阻止する抑止力だ。米軍が去れば金正恩には分割統治戦略を実現する好機が生まれ、韓国併合に向かうだろう。米軍が朝鮮半島を去れば武力衝突の発生は必至だ。

だがトランプが最大の外交上の成果を手に入れたようにまず映るはずだ。ワシントンは行き詰まった韓国との在韓米軍経費負担交渉の継続は断念し、米韓関係は最低水準にまで下がる。米側は「心理マジノ線」と呼ばれる年間一兆ウォン(12億ドル)の負担水準の突破を韓国に求めているが、韓国政府は承服できないとしている。金正恩はここでナポレオンの法則を使うだろう。「敵が過ちを冒している際には決して手を出してはならない」

もちろんこうした意見衝突を超えた意味が同盟関係にある。ただいトランプは同盟関係を軽視してやまず先回のシンガポール会談では韓国から米軍を呼び戻したいとさえ発言している。シリアやアフガニスタンでも同様の発言があり、実際に両国から部隊撤退を命じているので今回も大統領の発言内容を真剣に受け止めるべきだろう。
負担分担を巡る堂々巡りに北朝鮮のICBM戦力解体が加われば大統領は撤退を命じてしまうかも知れない。金正恩が自国ICBMと核弾頭を中国に譲渡する可能性が浮上している。

トランプがそんな提案を目の前にしたら可能性はふたつだ。まず受け入れれば朝鮮は米防衛線の外側とした1950年の過ち以上の規模で戦略的誤謬となる。1950年にはそれを聞いて金日成が南侵攻を開始した。

二番目は金正恩と全力で対決した指導者としてトランプが歴史本に名を刻むことだ。金正恩がICBMを断念すると認めるとすれば実はICBM戦力を大規模に保有していないためであり、金王朝でも最高水準の交渉戦術を使ってい代償なしで結果を得ることになる。トランプに本国防衛へ集中させながら韓国を放棄させれば朝鮮半島内の戦闘をまきおこさせることになる。

米軍が半島から本国に戻れば金正恩は安全を感じ満足するだろうか。2018年4月の板門店宣言およびシンガポール首脳会談声明の双方で朝鮮半島全土の非核化が金正恩の目的と述べている。この意味を理解するためには米国は1991年以来朝鮮半島内に戦術核兵器を持ち込んでいない事実を理解する必要がある。ただし金正恩は在韓米軍の存在、戦略装備の展開、抑止力の拡大は韓国を「核化」するのと同じと考えているのである。金正恩が「非核化」を口にする際は「在韓米軍」のことを指す。

金正恩は米国と自国の関係改善への前向きな姿勢も話題にしている。また米国の「敵対政策」の終了も口にしている。だが北朝鮮指導者の真意はここでも米軍部隊の撤退なのだ。

同様に金正恩が安全保障上の保証を求めていることに混乱する向きがある。金正恩の視点では公式文書や署名は保証として不十分である。そこで物理的な保証を求め、ここでも米軍撤退を意味し、同盟関係の終了、抑止力整備の中止、韓国と日本への核の傘提供の終了を求めている。

米本土への脅威を除去すべく「大安売り」すれば米国の対北朝鮮取引も不成功に終わる。トランプにとって唯一の実質的な勝利は南北統一朝鮮国家の出現まで朝鮮半島での戦闘事態勃発を防止することだ。非核化と米国本土や同盟各国への脅威を除去するには他に手段がない。■

David Maxwell, a 30-year veteran of the United States Army and retired Special Forces colonel, is a senior fellow at the Foundation for Defense of Democracies.

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