German F-35 decision sacrifices NATO capability for Franco-German industrial cooperation ドイツのF-35不採択方針は仏独産業協力を優先しNATO戦力を犠牲にするものだ
By: Hans Binnendijk and Jim Townsend
Pilots from the 388th and 419th fighter wings taxi F-35As on the runway in preparation for a combat power exercise at Hill Air Force Base, Utah. (Senior Airman Justin Fuchs/U.S. Air Force)
ドイツがロッキード・マーティンF-35をトーネード90機の後継機候補から外したのはフランスとの産業協力を優先したためで、ドイツ空軍の戦力が仏独共同開発戦闘機が稼働開始する2040年まで弱体化する代償につきそうだ。
今回の決定はドイツのNATOでの指導力より国内政治情勢を優先させている。ロシアの軍事脅威を受けない国であれば理解できないこともないがNATO抑止力効果を最大化させようと主張する向きの足を引っ張る動きとなり見直しが求められる。
- F-35を選定対象から外した(同時にF-15も検討対象から外した)ドイツに選択肢は3つある。ユーロファイター・タイフーンが177機あるが90機を追加調達し、敵防空体制制圧任務と電子攻撃任務に特化させるのがまずある。タイフーンが267機になれば整備管理や訓練が簡略化されるが、一方で同機に問題が見つかれば一気に全機が地上待機となる。タイフーンでは稼働率で大きな課題が指摘されている。
- 別の選択肢がボーイングF-18(スーパーホーネット、グラウラー混成)を90機導入することでドイツも真剣に検討している。これに決まれば対地攻撃、電子戦でいずれも戦力が増強される。だが採択すれば他国が次世代戦闘機に向かう中でドイツは第5世代機がないままになる。
- あるいはタイフーン、F-18を同時に調達する可能性もある。ドイツでは米国製機材を運用しているのでF-18採択の可能性は高いと見る向きもある。
上記の3つの可能性はいずれもドイツ空軍力の整備ならびにNAOT空軍力でのドイツの指導力の今後を展望すれば決して最善の結果にならない。
運用面ではF-35が最善の選択である。ステルス性能だけでなく戦闘管理能力は一世代先をゆく存在でタイフーンやF-18の比ではない。戦力効果を増強させつつそこまでの能力のない同盟各国の機体を助ける能力を発揮する。ドイツ空軍が将来の戦場で強固な防御態勢を突破して敵地奥深くに進行する能力が必要なら選択肢はF-35だろう。F-35を欠いたままのドイツ空軍は厳しい環境の中で苦戦を強いられるだろう。
現時点でNAOT加盟国のうち8カ国がF-35導入を決めており、第5世代戦闘機で高度の相互作戦能力を実現できる。将来のNATO空軍作戦でエリート国となり敵防空体制の制圧任務に投入されるだろう。F-35を欠いたドイツはこの中に入れず、ドイツ軍パイロットは二次的任務をあてがわれるだろう。
F-35にはドイツのNATO核戦力運用能力で利点もある。F-35なら敵地侵攻しつつ残存性が高い。F-35は核兵器運用能力の認証を受けてから納入の見込みだが、タイフーンやF-18だと時間や予算がかかるだけでなくドイツ政界にも負担が生じる。既存タイフーンの耐用年数延長を選択すればNATO核抑止力そのものも低下しかねない。
ドイツ空軍トップがF-35導入を公然と支援したのは不思議ではないが、その後沈黙を強いられ退役させられてしまった。
ドイツ政治家はなぜこの決断に至ったのか。
予算だけではないようだ。F-35は高性能機材だが機体価格はタイフーン並に低下する。タイフーン生産は現地経済に恩恵があるのは事実だ。
納入次期も要素ではない。ロッキード・マーティンはドイツ側に契約交付から三年で納入開始できると伝えている。
決め手は政治と産業界への配慮だ。
メルケル政権は連立内閣であり、社会民主党が連邦外務省、財務省で主要ポストを占める。同党は国防支出増に反対する傾向がありロシアの動向にも寛容な傾向があり、ドイツ核兵器運用にも抵抗が高い。またドナルド・トランプ大統領率いる米国に利益を与えたくないとの点で一致している。
より重要なのがフランとドイツが国防政策の面で協力を強めており、ブレグジットやトランプ大統領のNATO批判を意識していることだ。両国が最近調印したアーヘン条約では防衛外交両面でこれまでにない水準の二カ国間協力をめざすとある。
仏独防衛協力の中心が昨年夏に合意した次世代戦闘機の開発で2040年を目標にしている。ダッソー、エアバスがラファール、タイフーンを元に次世代共用機の完成を目指す。フランスとしてはドイツがF-35を大量導入したら次世代戦闘機の必要性が減り、欧州製高性能戦闘機の実現が遠のくとの危惧があった。当然、ドイツ政府にもこの考えを示している。
仏独中心の欧州防衛は進めるべきだ。だがNATO航空戦力、抑止力が犠牲になってはおかしいだろう。ましては広義のNATO団結力を損なってもいいのか。
ドイツはF-35を対象外とした選択を見直し、逆にF-35を十分に導入し欧州空軍力における主導的位置を維持しつつ、第5世代機技術を駆使すべきだ。一方で欧州内のその他同盟国に悪影響は生まれず逆に歓迎されるはずだ。これができなければ、F-18導入は次善の選択肢となるはずだ。■
Hans Binnendijk is a distinguished fellow at the Atlantic Council and formerly served as the U.S. National Security Council’s senior director for defense policy. James Townsend is a senior fellow at the Center for a New American Security and formerly served as deputy assistant secretary of defense for European and NATO policy
ビックリするくらい机上の空論かな。F-35擁護のカウンターですかね。F-35は核兵器運用能力の追加は当分ないですから、核兵器運用から見たら、F-35は対象外でしょう。たぶん、価格は、F-35の方が安いでしょうけど。タイフーンって以外に高くて、3A止まりなんですよね。
返信削除さらに、現在のドイツ空軍に運用できるとは思えないですね。
実質、現状でもほとんど飛行できないトーネードですから、純減でも問題ないのでは。電子戦用にグラウラーを所要数のみ購入するのが現実的では?
員数的には177機あるはずのタイフーンの稼働率を上げるのが最優先で、せめて、50%以上位は目指してほしい。稼働機14機とか冗談としか思えない。さらに31機あるはずのトランシェ1対応も必要かな。ドイツのはPIRATEもついてないオンボロですし。
70機以上あるトランシェ2はトランシェ3Aにするのに45億以上かかって、AESAなしですから、このままかな。
後は、ドイツがやらかした機体寿命が短いのも改善されたとは聞かないので、2040年まで持つか?の問題もありますね。
どうしてドイツ軍はこうなっちゃったんでしょうね。
ドイツ軍自体のグランドデザインから見直して、新規装備を購入してる場合じゃないのでは。
こんなこと言っているとドイツ空軍に飛べる戦闘機がなくなりそうですけど。
ドイツも悩ましいですよね。米国と核シェアしている核の運用能力がトルネードしか無く、その更新ですから米国機が最善ですが、次世代機で提携しているフランスがF35のみの購入にも、F35とタイフーンを折半で購入する案にも難色を示している上に、タイフーンに米国製核の運用能力を付加するのは米国が難色を示す、あるいは運用までの時間と費用がかかると、どちらに行っても痛し痒しで身動き取れないみたいですからね。
返信削除2040年に次機種をフランスと開発するため、当面の急場しのぎで暫定的にF18あたりを少数導入してお茶を濁すくらいしか手は無いでしょう。
F35が望ましいと言ったドイツの軍幹部(空軍大将だったかな?)はあっさり更迭されてしまいましたし、本当に軍事装備は現場の軍人の意向を無視して政治的に決められる場合があるという事例ですね。
ドイツは、東方が平原続きの地政学的に不利な地勢であり、ポーランド等東欧諸国と共にロシアの脅威を、NATOの一員としてでなくても、もっと真剣に考えるべきであるが、そのような脅威を感じていないようだ。これではEU、及びNATOを構成する主要国として、さらに安全保障に寄与すべき大国としても失格であろう。
返信削除しかし、このようなドイツの現実を直視しない姿勢は今に始まったことではない。ドイツは、EUの制度の枠組みを利用して経済的優位となり、大きな利益を得ていながらEU内の南欧等の他国に寛容でない。さらに中国やロシア等の問題国との繋がりも、利益を得るため躊躇なしにのめり込んでいる。
長期政権の首相であるメルケルは、トランプ政権成立時に、「民主主義、自由、法の尊重、人間の尊厳といった価値観」からトランプを非難したが、この価値観を最も損なっている中露と友好的な関係を維持する理由は何だろうか?
今回のF-35の選択外しもドイツの上記の姿勢を反映している。強い抑止力を持たない大国は、周辺国を動揺させ、周辺国の軍事強化を促進させる。この結果は、東欧・中欧を不安定化させ、EU/NATOの結束を弱めるだろう。