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M1エイブラムズ主力戦車誕生の背景と現状、今後の戦力整備について

このブログでは陸上装備はどうしても後回しになり、戦車についてもとても知識が豊富と言えないのですがこの記事を読むと戦車自体の性能はもちろんですが重要なのは運用する砲弾の性能だとわかります。


Is America's M1 Abrams Tank Hopelessly Obsolete? 

M1エイブラムズ戦車はどうしようもないほど旧式化しているのか

We have an answer.
February 12, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: M1 AbramsTanksAmericaRussiaChina



1970年代のNATO戦車部隊の欧州での状況は暗かった。次世代主力戦車開発をドイツと米国で共同で進めるMBT-70は挫折し、一方でソ連の新世代戦車が第一線に姿を表し始めていた。

米陸軍と同盟国部隊の主力戦車は老朽化したM60や同世代の戦車で機密解除のCIA文書は悲観的な表現にあふれていた。ソ連戦車は数の上でも技術面でも優れていた。

MBT-70構想が挫折したことを受け米議会は陸軍に対し新型戦車開発を厳格な予算管理、納期管理のもとで開始するよう求めた。開発構想文書(DCP)が1972年に作られ、1973年に承認された。DCPでは比較優位製の検討、タービンエンジンとディーゼルエンジンの実証結果や技術開発の同時並行進行を述べていた。

新型戦車にはXM1の名称がつき装甲と兵装の目的では最新の技術を導入することだった。米陸軍は英国が開発したチョバム装甲を採用した。

次世代の英国式110mm戦車砲とドイツ製120mm戦車砲の採用も検討対象だったが、ドイツ砲はXM1の開発完了までに完成しないと判明した。そのためXM1では120mm砲搭載を想定した設計だが105mmM68A1砲を搭載し、これはM60パットン戦車と同じ装備だ。

XM1は量産に入りM1エイブラムズの制式名称が1981年2月についた。タービンエンジンを搭載しチョバム複合材装甲、M68A1 105mm主砲を採用した。機動性、防御力のいずれも優れていたが、105mm主砲で東側の敵戦車に対して十分なのか。

M1エイブラムズのM68A1105mm主砲は装甲貫徹用にフィン安定版付きのサボ砲弾(APFSDS) 各種を発射できた。とくに対戦車用に優秀なのがM774APFSDS弾だがM735砲弾が一般的に運用されM774は1980年代通じ増産された。1983年にはM833に交替されたが各戦車に配布されたのは1985年まで待つ必要があった。M735砲弾はタングステン製で、M774とM833は劣化ウラン弾だ。

ロシアはM735、M774、M833の貫徹力をそれぞれ~250mm、~375mm、~500mmとしているが米側はやや楽観的にM774で400mm、M833は500mm超としている。M774はT-62、T-72基本型、T-64なら正面から撃破できることになる。M833はさらに高性能でT-72基本型とT-64Aに対峙できる。

だがもっと一般的なM735ではそこまでの性能はない。CIAの推定ではM735の命中撃破率はT-72基本型に前方から対決して20%だがM774だと50-70%だった。
だがM1エイブラムズの配備が始まるとソ連も最新鋭のT-64B、T-72A、T-80を配備してきた。複合装甲材を採用したため従来のT-72基本型やT-64と比べれば撃破ははるかに難しくなった。

M833なら新型戦車でも貫徹命中できると見られたが確実ではなかった。CIA文書ではT-80はM833を運用するM1より優位と見ていた。T-72Bの就航は1984年でM1にとって事態が困難になった。T-72Aより装甲が厚くなった。

それでも米陸軍はその先を見ていた。1981年3月に生産ラインからM1原型が完成しておりMIE1の呼称がつき、ドイツ製120mm砲の簡略版を搭載しM256の正式名となった。装甲を改良し、核生物化学防護装備を採用しエンジンまわりも改良した。

M1E1はさらに1984年にM1A1となり、量産一号車は1985年12月に完成した。M1エイブラムズ基本型の生産はその年のはじめに終了した。

新型120mm主砲を搭載したエイブラムズは敵に十分対応できる火力をついに獲得し、新型APFSDS弾M829を採用し、540-550mmの貫徹力があるとの推定があった。その後M829A1にかわり700mm貫徹力があるとされ、120mm主砲はさらなる性能向上の余地を示していた。

M829A1は砂漠の嵐作戦でその実力を発揮し、T-55やT-72Mをいとも簡単に撃破した。イラク軍相手では貫徹力と威力を示したがソ連のT-80UやT-72B Obr相手では撃破は無理と見られた。

その結果、陸軍はM829A2、M829A3 の開発に進み、長距離での貫徹力や大型ERA相手の効果拡大を目指した。M829A3弾が現在もM1A1やM1A2エイブラムズ戦車で広く採用されており、世界各地の戦車の大部分を撃破可能と言われ、T-72B3やT-90Aもここに含むとされる。

だが2018年に次世代戦車が出現した。新型T-90MとT-80BVMで装甲を改良しAPFSDS発射弾にも有効といわれる。T-14アルマータの装甲とアクティブ防御背装備の組み合わせはさらに効果を上げているという。

そこで米側の対応は新型M829A4で、新型重装備ERAも撃破可能と言われるが、詳しい作動原理は不明だ。M829A4には弾薬データリンクがつき、予め砲弾をプログラムし「スマート」運用が可能と言われる。

M1エイブラムズは長寿を誇る戦車となり、1985年の初登場を皮切りに120mm砲で世界で最も威力のある戦車となった。このまま今後もその地位を守れるのか、あるいは将来の敵に対応しさらに火力を増強するのか今後も注目される。■

Information about the Abrams’s development taken from M1 Abrams Main Battle Tank 1982-1992 by Steve Zaloga and Peter Sarson and M1 Abrams in action by Jim Mesko.
Charlie Gao studied Political and Computer Science at Grinnell College and is a frequent commentator on defense and national security issues.

コメント

  1. 陸上装備は砲弾と装甲の強度比べのいたちごっこが続いているようですね。日本では地形の特性上から海上/海中装備、航空装備に目が行きがちになりやすいですね。海に囲まれ、更に平野部分が少なくて重量級の戦車同士の戦いには向かない地形(北海道は別ですが)というのもあるでしょうが。
    また、イラク戦争で使われた劣化ウラン弾は放射性物質が飛散し、有害な影響が出ていると批判された砲弾ですね。材質の強度が高いと聞いていますが、それでも人体に有害な物質への批判が高まる中で何でこんな材料を使うんだかと呆れます。最近では、ロシアが原子力推進ミサイルという、詳細は不明ですが、着弾先はどうなるんだ?と思わざるを得ないものを公表してます。米国もロシアも過去に原子炉の事故などで、大きな放射線の被害を受けた方々がいるのに、懲りないものですね。

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