スキップしてメイン コンテンツに移動

★ロッキード提案のF-21(F-16ブロック70原型)の詳細はこうなっている



Lockheed Martin Offers India Enhanced F-16 Block 70 Multirole Combat Aircraft Dubbed “F-21” ロッキード・マーティンが改修型F-16ブロック70多用途戦闘機を「F-21」としてインドに提案している




F-21想像図 (Image credit: Lockheed Martin).


「新型」F-21が Aero India 2019航空ショーで注目を集めている



ロッキード・マーティンがインド空軍のRFI情報提供要請に基づき新型戦闘機を初公開した。インドは110機を150億ドルで調達の予定。


F-21との命名だが、IAIのクフィールを米軍が供用した際に使用された呼称である。「Make in India」と「F-35につながるインドの道」と銘打ち、同機はインド国内でタタ・アドバンストシステムズと共同生産するという。


「F-21は外観内部ともに別の機体です」とロッキード・マーティンエアロノーティクスの事業戦略開発担当副社長ヴィヴェク・ラルは述べているが、実態はF-16ブロック70が原型のようだ。F-16Vの一型式で2015年10月に初飛行している。F-16の供用期間を延長する中間時点改修(MLU)と共通仕様改良事業(CCIP)の発展形でインドへの営業はすでに展開されている。


ブロック70改修ではAESAレーダー、民生部品(COTS)を流用したエイビオニクスのサブシステム、AN/APX-126高性能IFF、共用ヘルメット搭載指示システムII、CFT(機体一体型燃料タンク)や大容量高速データバス、さらにLink-16戦域データリンク、スナイパー高性能照準ポッド、その他高性能兵装や精密GPS航法や自動地上追突回避システム(自動GCAS)を採用した。


ブロック70で一番興味を惹かれるのがノースロップ・グラマン製のAPG-83 AESA レーダーで、探知追尾範囲が広がり、20余りの標的を同時に追尾し、高解像度の合成開口レーダー(SAR)地図により全天候下で精密攻撃が可能とし、空対空あるいは空対地モード切り替えで状況認識力が向上し、作戦有効性と残存性が伸びた。また電子防御力が改善されている。APG-83は同社がF-22用に開発したAPG-77、F-35用のAPG-81につながるファミリーの一部で第5世代機のASEAとハードウェア、ソフトウェアとの互換性が生まれた。


APG-83 AESAが「インド向けロッキード・マーティンF-16ブロック70」の広報資料に載っている (Image credit: LM).


ロッキードが公開したアニメーションや図表ではF-21機体右側にIFR(空中給油)装備のプローブがつく。
View image on TwitterView image on TwitterView image on Twitter
From the dorsal section, to a triple launcher to the probe-drogue system, here’s everything that’s different in @LockheedMartin’s F-21 compared to the F-16 Block 70. #AeroIndia2019 https://www.pscp.tv/w/bzz-wDEzMjE2OTk0fDFPZEtyUnZMd01PS1idZqtfrSPZIPulsjzxoGzVhs1_H6fC6Wgk6mj6KhhZKw== …


また注目したいのは曳航式デコイ装備が尾部につくことでF-16ブロック70ではALE-80ATDを主翼下パイロンに搭載しているという。


コックピットも大幅に手を入れている。F-16ブロック70改修では基本型ヴァイパーのコックピットにHUD(ヘッドアップディスプレイ)、大型画面を前方パネルに、高解像カラー映像CPD(足元中央画面)が提示されていた。だが今回の映像を見るとF-21では広角HUDと大画面エイビオニクス画面のみとなり、F-35の仕様に近い。


F-21のグラスコックピット (Screenshot from LM F-21 launch video).F-35のコックピット (Image credit: LM)

F-21はF-16の性能を極限まで引き上げた機体だが、インド空軍にはその他7機種が名乗りを上げており、長期にわたり複雑な過程になったあげく2015年に取り消しになった中型多用途戦闘航空機材(MMRCA)と同様の結果になるかもしれない。この事業ではフランスとの政府間協議でラファール36機の採用に終わった。


View image on Twitter
Here’s how the 7 aircraft that have responded to the Indian Air Force’s RFI for 110 fighters are present at #AeroIndia2019. Clockwise from top left:
F/A-18
Rafale
Gripen E
Typhoon
Su-35
MiG-35
F-21/F-16 Block 70

ではロッキード・マーティンF-21がインド空軍に採択される可能性はあるのか。


断言できない。大型調達案件では政治的な動きに左右されやすく、性能よりも価格が前面に出る。さらにインド航空宇宙産業との契約関係は混乱かつ非効率であることが実証済みであり、新旧機材が入り交じる中で多額の契約規模をめぐり選定は長期化しそうで今回の選定が終わりのない契約工程と交渉の連続になる予感がある。これは前回のMMRCAで実証ずみだ。


ただしインド空軍がソ連時代のMiG-21やMiG-27の用途廃止で待ったなしになり数年が経過し、飛行隊規模が内閣が定めた42隊に近づいている。


まず静観し今回はどうなるか見ようではないか。■

コメント

  1. MMRCA提案用のF-16INをベースに完成したのが、F-16V(Block70/72)でそこから改修されてF-21になる。
    なかなか、面白い展開です。
    前回の結果から、ラファエールはないでしょうし、タイフーンは前回は、インドでの生産前提で230億とか言っていたので、これもないかな。
    現地生産及び技術移転をクリアするためのタタとの共同生産なのでしょう。
    ただ、やはりパキスタンがF-16Block52+を装備しているのがネックです。
    これを無視できれば、本命ですかね。

    返信削除
  2. インドの戦闘機導入ってラファールに決まったと思ったらMig-29にするとか、訳がわからないのですが、未だ決まっていなかったのでしょうか?
    また、ロッキードもインド向け110機のためにこれだけの新しい機体の提案するだけのメリット(費用など)があるんだろうか?と思ったりします。同種の機体を他国にも売るために改修したのかな?

    返信削除
  3. ラファールが決まったMMRCAは、契約でもめにもめて結局36機の輸入でチャラになったようです。
    再度のコンペで、さらにメンツが変わらないという、何やっているんだ状態です。
    F-21は、ほぼBlock70/72で、以前のF-16INの反映ですので、そんなに開発費はかかってないのでは。パキスタンがらみでF-16を名乗れないだけだと思います。
    ドローグ追加も確か実績あったと思います。
    たぶん足りない開発費は、タタに出させるのでは。

    返信削除
  4. ありがとうございます。この件は、ラファールがひっくり返ってMigになったとか、錯綜している案件の続きなんですね。韓国ではF-35になった件で50回入札をやり直したとか、インドネシアの鉄道などの案件もそうですが、つくづく途上国は訳がわからんと思います。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...