2019年4月28日日曜日

★F-3開発はF-22/F-35ハイブリッド案に決まったのか

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Japan's New Stealth Fighter: A Hybrid Mix of the F-22 and F-35?

日本の次期ステルス戦闘機はF-22、F-35のハイブリッド案で決定?
 
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April 24, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22F-35MilitaryTechnologyWorldJapanStealth

本政府は米F-22、F-35ステルス戦闘機の要素を組み合わせた新型機を実現したい意向だ。
極秘技術を日本に公開しハイブリッド戦闘機の実現を進めようとの姿勢が米当局から示されている。
日本には同様の経験が前にもあった。1980年代90年代にかけてロッキード・マーティンF-16戦闘機の設計をもとにライセンスを受けF-2開発を進め、主翼を大型化し電子装備を強化した。
だがF-2はあまりにも高額な機体になった。日本が目指すステルス機戦闘機は少数規模に終わったF-2後継機の想定だが同様にとんでもない単価になる可能性がある。
「高性能F-35ステルス戦闘機の極秘技術情報を日本へ開示し航空自衛隊F-2戦闘機の後継機種開発を進めたいとの提案が米国から入った」と読売新聞が伝えている。
航空自衛隊にはF-35もある。防衛省に届いた米提案内容ではF-35等を元に共同開発するとあり、世界最先端の戦闘機を実現するとのものだ。
日本政府筋によれば米国からF-35搭載のエンジンやミサイル制御用のソフトウェアの機密情報開示に応じてもよいと伝えてきたとある。F-35用のソフトウェアは今まで米国以外に公開していないが、F-2後継機に搭載されれば米国はソースコードを日本に公開することになる。
ハイブリッド機は日本が「F-3」と呼称するはずで機体はロッキードのF-22でセンサーや電子装備はF-35と同等になるとロッキードは提案。
日本は2000年代初頭に空自F-15後継機にF-22を取得したいと打診してきたが、米国はロッキードにF-22輸出を禁じる法制を成立させた。F-22ハイブリッド案が実現すればロッキードは輸出禁止措置を回避できる。
ただし日本が必要とする新型機の機数は少ない。空自はF-35A型B型あわせ141機導入を決めており、F-4と旧式F-15を更新する。
F-35の141機全部稼働で空自は改修型F-15J(102機)、F-2(82機)との混合編成となる。日本が考えるハイブリッドF-3はF-2後継機だがF-15J後継機としてもおかしくない。
だが完全新型ステルス機開発が184機程度では機体単価が高くなりすぎる。すでにF-2で痛い経験もした。
F-2では20年余りで100機足らずの生産を三菱重工が行いスケールメリットが生まれなかった。F-2はF-16の四倍の機体単価とされるが性能が4倍とはいいがたい。
米空軍はF-22の187機を700億ドルで調達した。既存技術の応用で日本向け戦闘機開発に節減効果が生まれそうだが、読売新聞は新型戦闘機開発予算は180億ドル程度と推計した。
これに対しTeal Groupアナリストのリチャード・アブラフィアの試算では日本のステルス戦闘機小規模生産には最低で200億ドル必要だという。
これだけの規模は「明らかに(空自の)予算規模を超える」とする。日本の防衛予算はGDPの1パーセント相当ちょうどだ。つまり年間500億ドル未満で、米国国防予算の10パーセントにも満たない。■
David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad.

この問題はいつになったら方向性がはっきりするのでしょう。ロッキード提案を米当局も後押ししているようですが、F-2の苦い経験から日本はどっちに舵を切るのでしょう。一方で機体開発が今までと質的に変わっており、今までの体験を引きずったままで選択を誤りかねません。ここは目的とあるべき姿をゼロベースで考え直し、最適解を求める「ブレイクスルー思考」でことをすすめるべきではないでしょうか。(ブレイクスルー思考にご関心の向きは日本企画計画学会のウェブサイトhttp://www.bttnet.com/jps/index.htmを御覧ください。

2019年4月27日土曜日

F-35A墜落事故の捜索体制を強化する日米両国。中国、ロシアの機体奪取は発生せず?

今回の捜索活動は難易度がそこまで高いのでしょうか。機体、パイロットの回収は依然完了していません。まず、ロイター記事をBusiness Insiderが伝えています。

Japan is expanding the hunt for its F-35 that disappeared over the Pacific

Tim Kelly, Reuters 2m

japan f 35
航空自衛隊第3航空団302戦術飛行隊(三沢基地)所属のF-35A
  • 日本が4月9日墜落したF-35戦闘機の捜索活動を強化中
  • 回収できたのは尾部の一部にとどまりパイロットは見つかっていない
方不明のF-35戦闘機で日本は4月25日から捜索体制を強化し、海洋探索船が新たに加わったほか、米海軍のサルベージ部隊も数日内に合流すると航空自衛隊が伝えている。
墜落は4月9日発生し、訓練中に一機が太平洋上空の日本北西部付近で消息を絶った。尾部の部品数点しか回収されていない。
探索艦船が搭載するソナーは深度1,500メートルまで有効だ。
Japan F-35
三沢基地で第3航空団が初のF-35Aを2018年2月24日に受領した。US Air Force/Tech. Sgt. Benjamin W. Stratton
米海軍はサルベージ部隊を民間潜水支援船DSCVヴァン・ゴッホから運用し、17,150平方キロに及ぶ海域の探査を開始すると第7艦隊が報道発表した。
海上保安庁艦船が一般船舶を該当海域から締め出していると空軍報道官は述べている。該当海域は公海の一部。
「これだけの最新装備なので他国が回収する懸念が常に残る」と米海軍関係者は中国ないしロシアが機体入手に関心を持っているのではとの問に答えている。「そんな事態に日本がさせないと確信している」
捜索部隊は単価126百万ドルの機体からフライトデータレコーダー回収を急ぎ事故の実態を把握をめざす。
一方で事故機パイロットの医療記録の精査が続いており、同僚パイロットには本人の精神状態含む聞き取り調査を展開中と報道官は述べた。
事故機は製造後一年未満で三菱重工業が日本で組み立てた一号機だった。事故発生28分前に離陸し、突如姿を消した。280時間の飛行実績しかなかった。

一方、USNI Newsは以下伝えています。

Navy Black Box Detector Joins in Deep Water Hunt for Missing Japanese F-35A

April 26, 2019 12:13 PM
DSCV Van Gogh. 海軍サルベージ部隊が4月24日に沖縄で乗船した。


海軍は日本のF-35A墜落事故でマレーシア航空370便捜索時と同じ装備品を投入すると第7艦隊広報官が認めた。

海軍のサルベージ部隊を民間の深海度潜行可能無人水中機と運用し、TPL-25「ブラックボックス探査機」と呼ばれる曳航式センサーで深度25千フィートの海中で緊急信号を突き止める。

サルベージ部隊が民間潜行支援建設船DSCVヴァン・ゴッホに沖縄から乗船した。航空自衛隊細見三佐のF-35Aが海上に墜落した4月9日以降に展開中の捜索活動へ加わる。

「4月9日から17日にかけ米海軍誘導ミサイル駆逐艦USSステサム(DDG-63)及びP-8Aポセイドン一機が自衛隊捜索チームに加わり、およそ5千平方マイルの海域で活動した。米海軍所属のP-8Aポセイドンは182時間飛行した」

その余暇米空軍はU-2偵察機も投入した。日本からはJSちよだ(ASR-404)潜水艦救難艦が捜索中で海洋研究開発機構の調査船かいめいも加わった

JS Chiyoda(ASR-404) in 2017. Photo via Wikipedia


「かいめいには音響測定装置、磁力計のほか無人潜水艇で深度3千メートルまでの海底調査が可能」とフィナンシャル・タイムズが4月24日報じた。「墜落したF-35は深度1,500地点にあると考えられており、充分探査範囲内にある」

その他の報道では日米当局がF-35Aの搭載技術を敵対勢力が入手しリバースエンジニアリングされることを憂慮しているとある。ただし、米国某関係者はUSNI Newsに対し中国、ロシアが機体発見に動いている兆候はないと伝えている。

海軍サルベージ部隊が使うTPL-25およびソナー搭載無人潜行装備はマレーシア航空777機が消息をたった2014年に広範囲にわたる捜索に投入されたが結果を出せなかった。

TPL-25システムは海中の墜落機が発する信号を探知し、有効深度は最大20千フィートだ。US Navy Image

2019年4月22日月曜日

米空軍がB-1を海軍に移管すれば中国海軍の動きを封じるのに有効活用できる(はず)

Why the Air Force Might Give its B-1 Lancer to the Navy

米空軍が海軍にB-1ランサーを譲渡したらどうなるか

by

略予算評価センター(CSBA)公表の研究ではUSAFは米国の「空の王者」の地位確保のため必要以上の支出をしているとある。またB-1ランサー退役の提言もある。またもや筆者は予算潤沢な同研究所と見解が相違すると感じる。USAFがランサーに現状と違う任務を与えられないのなら制海任務をUSNでつかせれば良いと考える。特に第一列島線内部で強気姿勢にでているPLANに対抗できるはずだ。

ランサー各機は長距離ステルス対艦巡航ミサイル24本の運用能力があり、スタンドオフ地点で発射できる。ランサーの高速性能をもってすれば発射地点に迅速に到達できる。第1及び第2列島線各地に分散した強化型施設から運用すればランサー部隊でPLAN艦艇の動きを数日どころか数時間のうちに封じることができる。ロシア、PRCがともに長距離の「旧爆撃機」に対艦長距離巡航ミサイルを搭載しUSN艦艇の攻撃を想定している事実を想起されたい。

で想定できるランサ二番目のミッションに2千ポンド精密機雷24発の投入で戦略地点を封鎖しPLAN艦艇のインド太平洋に向けた海峡通行を阻止することがある。機雷にはリスクもあるが、中国の主要港湾を封鎖すれば海軍のみならず民間商船も封じる事が可能だろう。

2千ポンド機雷はJDAMと同じ誘導装置がついたクイックストライク-Jで磁気振動型信管がつきスキップジャックとも呼称される。本体寸法重量ともにJDAMと同様でB-1による投下の実績もある。

PRCが領有を主張する海域すべてを機雷封鎖すればPRCを通過する貨物、商船の海上保険料は高騰し、外国船舶は危険を避けるはずだ。機雷封鎖でPRCの経済活動は一気に縮小され、その恐れだけでも充分で実際に敷設の必要はなくなる。同じ海域で潜水艦による雷撃戦が展開されれば海軍、民間商船問わず活動を妨害できる。■

Bruce Bibee - Senior Warrior Maven Writer - Former US Army officer and Explosive Ordnance Disposal Expert. Vietnam Veteran
More Weapons and Technology - WARRIOR MAVEN (CLICK HERE)--

Kris Osborn can be reached at Krisosborn.ko@gmail.com

2019年4月21日日曜日

クラシック機体シリーズ 米海軍初の実用ジェット戦闘機の朝鮮戦争での実績



Air War: How the Navy’s 1st Fighter Jet Battled MiGs over North Korea 米海軍初のジェット戦闘機はMiGと北朝鮮上空でどう戦ったのか


二次大戦後の米海軍はジェット戦闘機の実用化を急いでいた。ただし高速飛行可能な機体を空母の限られた飛行甲板で運用するのは難易度が高い課題だった。海軍初の実用型ジェット機FHファントムは出力不足でわずか二年間しか供用されなかった。
海軍機メーカーのグラマンに1946年にターボジェットG-75試作機四機をピストン機F7Fタイガーキャットを原型で制作する契約が入った。しかし、構想は挫折し、同社は契約資金で単発機G-79製造に切り替えた。これがXF9F試作機となり1947年11月に初飛行した。
米空軍初の実用ジェット戦闘機P-80シューティングスター同様にグラマンは直線翼を採用したため音速近くになると性能に限界があった。グラマンは海軍機には空母着艦の激しい環境に耐える頑丈さが重要と考えた。パンサーには折り畳み翼がつき、飛行甲板を有効に使用する機構となり、パイロットにもうれしい射出座席や与圧式コックピットがついた。
グラマンはF9F-2にロールスロイス製ニーンターボジェットエンジンを搭載し、F9F-3にはアリソンJ33を採用し、英国製エンジンが不調になった場合に備えた。ただしライセンス生産のJ42ニーンは性能が優秀とわかりF-3も適宜改造された。パンサーは取扱と操縦取り回しが楽で時速575マイル、航続距離1,300マイルを翼端燃料タンク2個により実現した。ただし、尾部テイルフックの強度不足を着艦時に露呈した。
パンサーは海軍、海兵隊に1949年から配備され、ブルーエンジェルスも同機を初のジェット機材として導入した。
朝鮮戦闘で初の空戦撃墜
1950年6月25日、北朝鮮人民空軍は100機あまりのソ連供与Yak-9戦闘機、Il-10強襲機編隊で韓国「空軍」の10機弱の訓練機、連絡機を地上で撃破した。
トルーマン大統領が米軍の介入を决定するや、まず航空優勢の確保が課題とアンった。7月3日早朝、海軍はピストンエンジンのスカイレイダー、コルセア編隊を空母ヴァレイフォージから発進っせ平壌の北朝鮮空軍基地を襲撃させた。ここにVF-51所属F9F-3も初の実戦に出動し、攻撃隊の前に北朝鮮戦闘機を排除した。
パンサー編隊が航空基地上空に到着すると北朝鮮Yak-9数機が迎撃に離陸してきた。エルドン・ブラウン少尉、レナード・プロッグ中尉が各一機を撃墜したのが朝鮮戦争初の空中戦成果となった。プロッグはYakの一機は「完全にこちらを狙える位置についたが、これだけ高速に飛ぶ相手をしたことがないのはあきらかだった」という。
北朝鮮空軍は数日にして排除されたが四ヶ月後にソ連パイロットがMiG-15を鴨緑江の反対側の中国から出撃し国連軍を脅かし始めた。MiG-15は軽量で後退翼でこれもニーンターボジェットが原型の発動機をソ連で生産し搭載していた。MiGは高高度性能がパンサーやP-80より優れ、速度も100マイル早かった。
パンサーが性能で劣るのは明らかだったが、特定高度では操縦性が優れ、武装も20見るM3イスパノ機関砲4門と強力だった。射速が早いため毎秒16ポンドの高性能火薬銃弾を打ち込み、合計13秒分の銃弾を搭載していた。MiG-15は射撃時に安定性が欠け23ミリ機関砲二門、37ミリ機関砲一門を搭載したが、後者は命中させるのが難しい上に射速が遅く精度が低かった。
11月9日に、パンサー編隊が中国国境近くの新義州で橋梁攻撃の上空援護を行っているとMiG-15編隊が向かってきた。ミハイル・グラチェフ大尉が率いる第139護衛戦闘連隊の機体だった。VF-111「サンダウナーズ」編隊長ウィリアム・エイメン少佐がグラチェフ乗機が後部に接近し旋回するのをみつけた。ソ連機はパンサー編隊の位置を見失ったようでエイメンはウィングマンのジョージ・ホローマンとMiG機の後方にまわり機関砲を斉射した。
ジグザク飛行で回避しようとグラチェフは急速降下で追撃機を振り切ろうとしたがエイメンの技量はそれをものともせず銃撃を続け、飛行速度は限界に近づいた。エイメンはついに機首を引き起こしたが高度はわずか200フィートだった。グラチェフ機は山の側面に激突した。
これがパンサーによる初のジェット機撃墜事例になった。だがジェット機による撃墜は前日にP-80がMiG-15とのジェット機同士の初の空戦で記録していた。ただし、ソ連米国双方の戦史記録はともに撃墜の事実を確認しておらず、11月9日についても同様だ。
パンサーは11月18日にMiG2機を撃墜している。だが次の空中対決は二年待ってやっと実現した。海軍海兵隊は使用機材がMiGに見劣りすることを認識し沿岸地区での運用に集中させ、空軍の新型F-86セイバーが中国国境近くの「ミグ横丁」で対応した。
ハリウッド映画トコリの橋への登場
だがパンサー搭乗員が安全になったわけではない。朝鮮戦争ではパンサーが87千回の出撃をし、対地攻撃ミッションで橋梁や兵站拠点を攻撃した。F9F-2は千ポンド爆弾2発と127ミリロケット弾6発を搭載可能に改装されていた。
攻撃任務には強烈な対空射撃がつきもので、パンサーは例外的なまでの強靭性を証明し、同機がなければ米人パイロット多数が犠牲になっていただろう。
その後宇宙飛行士になったニール・アームストロングもF9Fで78回のミッションをUSSエセックスから行った。このうちマジョンリの兵站基地への強襲で低空飛行した乗機は山間のケーブル線を引っ掛けた。衝撃で主翼を6フィート失ったが機体をなんとか友軍の戦線まで飛ばし射出脱出した。
その後同僚となったジョン・グレンもパンサーを海兵隊飛行隊VMF-311で1953年に飛ばし、「マグネットアス」のあだ名を頂戴したのは多数の対空砲火を後部に浴びたためだった。そのうち85ミリ砲弾が主翼に3フィートの大穴をあけたが、グレンは基地まで乗機を飛ばした。その一週間後、37ミリ対空火砲弾が命中したがなんとか着陸させた。グレンはその後F-86に乗り換えMiGを3機撃墜した。
グレンのVM-311での戦友にレッドソックスの打者テッド・ウィリアムズがいた。この野球選手は海兵隊予備役として召集され朝鮮で39回の戦闘ミッションをこなした。平壌の訓練基地を襲撃した際に対空砲で乗機F9Fの油圧系統、電子装備が使えなくなり、射出脱出で膝を痛めたくなかったウィリアムズは燃えるパンサーをなだめつつ基地まで帰った。乗機は不時着で損傷したが本人は一年足らずで野球界に復帰した。
2機のパンサーが尾翼と胴体それぞれ破損して帰還した。整備陣破損性のない青色尾翼と銀色の胴体でフランケン・パンサーをこしらえ12回のミッションに活用された。
そこまで運に恵まれなかったものもある。リチャード・ハリオン著The Naval Air War in Korea,によれば空母航空隊は平均10%の搭乗員は朝鮮で失っている。海軍の記録では67機のパンサーを喪失しているが、敵砲火より恐ろしいのが着艦時だと判明した。
ある飛行隊では最初の二ヶ月で受けた損害は敵火砲による穴ひとつだけだったのに35回もの非戦闘事故が発生している。パンサーは着艦時に誤って甲板上の機体に衝突することがあった。だが逆に着艦を誤り艦に激突することもあった。
発艦に失敗し海面に激突する事例も多く発生した。射出脱出で着水しても日本海の冷たい海中では救難ヘリが間に合わないとパイロットが凍死する危険があった。
これとは別の危険は北朝鮮国内の橋梁攻撃でジェイムズ・ミッチナーがマジョンリ事例を中編小説「トコリの橋」にし、1954年に映画化されたが空母運用の複雑な様子を描くとともに米国内で関心の低い戦役に動員された隊員の悲劇をとりあげた。原作はF2Hバンシーだったが、ハリウッドはVF-192「ゴールデンドラゴン」飛行隊のパンサーを使った。実機に加えモデル機を使った撮影を交えた戦闘シーンは60年たった今でも息を飲むものがある。
パンサーからクーガーへ
パンサーの速力不足を痛感したグラマンはパンサー改良型を二形式試した。まずF9F-4がアリソンJ-33を搭載し、F-5はロールスロイスのテイ(7千ポンド推力)を積んだ。ここでも英国設計のエンジンが優秀と判明し、パンサーの最高速度は625マイルになり最大離陸重量も75%増えた。F-4は大半がF-5仕様に改装された。
F9F-5にはレーダー照準射撃性能もつき、機体を延長し燃料搭載量を増やしたほか、尾翼を延長し低速域の操縦性を改良した。グラマンはベアメタル仕上げの機体も試したが耐腐食性能が劣ることがわかった。
この改良型パンサーが朝鮮に姿を表したのは1952年末で海軍の大規模航空戦の最後に間に合った。ソ連崩壊まで極秘扱いだったがF9F-5を操縦するロイス・ウィリアムズがMiG-15の7機編隊とウラジオストック付近で交戦する事案が11月18日に発生した。ソ連機で無事帰還したのは3機だけだった。ウィリアムズも昇降舵のみでやっと着陸したが機体には263個の穴があいていた。ウィリアムズはアイゼンハワーとウィスキーを楽しむ特権を与えられたが、ソ連軍とのドッグファイトの事実は秘密扱いと言い聞かされた。
海軍はパンサーの可能性を認識し、グラマンは後退翼型をF9F-6クーガーとして製造した。クーガーはさらに高速で高高度飛行が可能となったものの航続距離が機体重量増加で短くなった。朝鮮戦争には投入されなかったがパンサーと交替して供用された。クーガーでサイドワインダー空対空ミサイルや戦術核弾頭の搭載が可能となったが、実戦に参加したのはヴィエトナム戦争で前方航空統制官が使用した海兵隊TF-9J練習機のみだった。
ただパンサーにはこれ以外に奇妙な実戦投入事例がある。28機がアルゼンチン海軍に移管されたのは1958年のことで1963年4月2日に海軍内の強硬はが政権転覆を図った。陸軍が戦車連隊を送り、海軍の本拠地プンタインディオの占拠に接近すると同基地に配備されていたパンサーが戦車攻撃に出撃しシャーマン戦車数両を破壊したがパンサーも一機を50口径機関銃で喪失した。プントインディオ基地は翌日陥落した。
パンサーは当時でも最高性能を誇る機材ではなかったが搭乗員の技量と勇気に機体の信頼性と残存性が加わり航空史で特筆すべき実績を残したのである。■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

2019年4月17日水曜日

テキサスの民間企業が普通の国の空軍より大規模な戦闘機を運用している理由とは

民間企業が空戦訓練をするのはすでに定着した流れのようですが、民間企業に航空戦力の一部を担わせる動きがこれからでてこないとは言えませんね。イラクやアフガニスタン等ではすでに民間企業が軍事作戦の一部をこなしているではありませんか。では、日本はどうでしょうか。イメージを気にする日本企業では軍事企業は当面あらわれないでしょう。ただし法的に実施は可能なはずですが。日本にもアグレッサー部隊がありますが、考え方は米空軍と似ていますね。しかしそこに大切なF-15を配備しておいていいのかという気もしますが。


Mystery: Why Does a Private Company in Texas Have Its Very Own 'Air Force'? テキサスの一民間企業がこれだけの規模の「空軍」を保有しているのはなぜか

With its 63 former French air force Dassault Mirage F.1s, Fort Worth-based Airborne Tactical Advantage Company possesses an air force that, in size, rivals that of many countries.
フランス空軍供出のダッソー・ミラージュF.1を63機も保有する Airborne Tactical Advantage Company(本社フォート・ワース)は多数の国の空軍を上回る規模だ。
April 3, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: FranceMilitaryTechnologyAir ForceMirage F-1

キサスの一民間企業がフランスから旧型戦闘機多数を取得している。
 フランス空軍が供用していたダッソー・ミラージュF1を63機取得したのはフォートワースに本社をおく Airborne Tactical Advantage Compan (ATAC)で保有機材は多くの国の空軍部隊を上回る。
 ATACは2017年にミラージュを買い敵部隊役運用を強化すると発表した。米軍や同盟国の航空演習での「レッドエア」をシミュレートが目的だ。
 それから二年がたち、ATACは親企業テキストロンの協力を得て、ミラージュ各機の再整備改修を完了したと発表した。
 「テキストロンがF.1およそ45機のエイビオニクスをデジタル周波数メモリージャミング式にし、レーダーも更新した」とJane'sが報じた。「ATACはミラージュを米空軍向けの敵部隊役に投入する。米空軍はレッドエア訓練に150機程度の需要を想定している」
 ATACではホーカー・ハンター、IAI製F-21クフィール、エアロヴォドチョディL-39ZAも運用中。その他のレッドエア企業にはドラケン・インターナショナルタクティカル・エアサポートトップエイセズエアUSAがある。
 このうちタクティカル・エアサポートはヨルダンからF-5を21機購入し、同型機を計26機にした。ドラケンは南アフリカからチーター戦闘機12機を購入し、自社保有機を109機にした。
 これまで米軍はレッドエアを自前整備してきた。空軍には「アグレッサー」三個飛行隊でF-15やF-16を装備していた。だが2014年に費用節減のためF-15運用を中止した。残る二飛行隊はネヴァダ、アラスカにあり、現在もF-16を敵機役に投入している。
 米海軍、海兵隊にも敵機役飛行隊があり、F-16初期型やF/A-18とスイスが運用していたF-5を改装し運用中。海軍の2020年予算要求にはスイスからF-5を40百万ドルで22機調達し、F-5の44機体制を維持するとある。
 海軍では空軍とちがい自前レッドエアを削減していないが、もっと多くの敵機役機材が必要としている。海兵隊の2018年航空部隊運用案では「敵機役機材の確保が空対空訓練で最大の課題だ」としていた。
 海兵隊ではおよそ100機の対地攻撃用ハリヤーのF-35への更新が課題で、F-35は空対空性能を拡充している。F-35の性能を発揮させるためにも海兵隊パイロットに空戦訓練の強化が求められている。
「敵機役訓練の年間需要は17年実績の6,400ソーティが22年度には8,300ソーティになる」と海兵隊は記していた。海兵隊は年間10,000ソーティまで増やしたいが、訓練には「機材のやりくりとF-5機数」の制約があるという。
 自前敵機飛行隊の強化策として海軍はタクティカル・エアサポートに5カ年106.8百万ドル契約を交付し、レッドエア運用をさせる。
 空軍では海軍より敵機役機材多数が必要だ。つなぎ策として空軍はレッドエア運用を小規模ながらネリス空軍基地他州軍航空隊の基地六ヶ所で行う契約をドラケンに交付した。
 2018年末に空軍はレッドエア企業会社に大規模運用の提案内容を求め、単一企業で年間3万ソーティを数十億ドルで行わせたいとする。契約交付は2019年ないし2020年になる見込みだ。
 「理想を言えばマッハ1.5程度の飛行性能で上昇限度35千フィート、45分から60分飛行が可能な機材がほしい」とAir Forceマガジンが空軍文書を引用して紹介していた。
 「機材には火器管制レーダーで探知追尾ができ、『敵性機材への武装運用』を模擬出来る性能を求める」とあり、「半アクティブミサイルで20カイリ、アクティブミサイルで45カイリの射程を模擬』する能力が想定される。
 ATACには自社所有機多数があり、今回の有利な契約の獲得が有望視されている。しかしレッド業界も競争が激しく、空対空戦訓練の需要の高まりの中で同社も競争に直面しているのが現実だ。■

Image: Creative Commons.