2020年3月16日月曜日

Su-35が米軍の脅威となる理由、ロシア・中国だけではない



戦末期の米軍ジェット戦闘機はソ連機材各種に対し大きく優位だった。1988年登場のSu-27も例外でなく、F-15の相手にならなかった。だがSu-27最新版は真剣に対応すべき脅威だ。       
スホイSu-35SはSu-27の改良型第二弾で前身のSu-35M同様の単座双発高度操縦性を誇る機材だ。35S型は大型カナード翼がついて、ユーロファイターのように見える。NATO呼称「フランカーE」の同機は第4++世代機としてF-15イーグル、F-18、さらにF-35ライトニングIIも油断できない対決相手だ。
Su-35の武装にはGSh-30-1(30m自動機関砲、150発発射可能)以外にペイロード17,630ポンドまでを外部ポイント12箇所に搭載する。空対空、空対地、対レーダー、対艦の各種ミサイルや、TV誘導、レーザー誘導、衛星誘導の爆弾を搭載する。これに対し米空軍のF-22の主翼下強化ポイントは4箇所しかなく、内部兵装庫は3発しか搭載できない。
サトゥルンAL-41F1Sターボファン双発の推力でほぼ全機の第4世代機を上回る操縦性で危険を離脱できる。最高速度 1,550 mph、上昇限度59,050フィートで同機は重武装かつ高速力の機材だ。
ただし国防アナリストにはSu-35最新型はロシア第5世代機のスホイPAK FA(Su-57)の生産が軌道に乗るまでのつなぎに過ぎないとの見方がある。
ロシア空軍以外にも同機を運用する国があり、域内のパワーバランスの変更につながる。もともと同機は輸出仕様だったが、ロシア空軍が2009年にローンチカスタマーになった経緯がある。
中国人民解放軍空軍(PLAAF)、インドネシア空軍が同機を発注しており、うち中国は初期納入4機を2016年に、10機を2017年それぞれ受領し、24機まで増える。Jane'sは25億ドルの商談と見る。中ロ合意には支援機材、予備エンジンも含まれ今年中にすべて実施となる。
中国がSu-35初の海外導入国となり、米国の敵勢力に制裁対応する米議会措置の立法(CAATSA)で中国は制裁対象となった。それでもPLAAFはSu-35を2018年4月から部隊編入している。
昨秋にトルコも同型機36機の導入でロシアと最終商談に入った。この動きはトルコがF-35事業から除外されたためで、もとはといえばNATO加盟の同国がロシアからS-400防空ミサイル装備を購入したためだ。
その他導入希望国にはアルジェリア、エジプト、インド、アラブ首長国連邦がある。ロシア空軍ではつなぎ機材だとしてもSu-35は世界各地の空の優位を覆しかねない機体になる。■

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Russia's Su-35 Should be Seen as A Real Threat. Here's Why.

Can it take on the best in the U.S. Air Force?
March 14, 2020  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: RussiaSu-35Air ForceMilitaryNATO


2020年3月15日日曜日

戦闘機像に大きな転機がやってくる:忠実なるウィングマンの導入時期を決めたACC

ローバー次官補提唱のiPhone方式の計画的陳腐化が一番実現しやすいのが無人機の分野でしょう。F-35のように40年供用を前提としたビジネスモデルではとても対応できません。いよいよ有人戦闘機が終焉を迎えるのか、スカイボーグが急発展するのか、それとも筆者が支持する大型戦闘航空機の登場につながるのか、2020年代は大きな転換点になりそうです。

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F-16ブロック25/30の後継機が低コスト消耗品扱いの無人機になる可能性がある。その例がクレイトスXQ-58ヴァルキリーだ。Credit: Kratos

空軍は最先端技術に明るい民間専門家を招き、パイロットや隊員向けに技術革新の最新知識を普及させている。だが2月28日の航空戦シンポジウム会場にやってきたイーロン・マスクには別の考えがあった
スペースX、テスラを立ち上げてきた本人が空軍協会の会場に到着すると空軍の戦術航空戦力の中心とされてきた戦闘機に対し、「ジェット戦闘機の時代は終わった」と述べ、聴衆を挑発した。進行役のジョン・トンプソン中将は即座に話題を切り替えた。
その後、マスクはAviation Weekにツイッターで返答し、真意は戦闘機は今後も残るが、パイロットが搭乗する必要はないと言いたかったのだとした。「競争相手は無人戦闘航空機で、人員で遠隔操縦されても、自律運航能力で操縦性が補強できる」。
マスクの航空戦力に関する意見は多少加減して聞くべきだろう。本人の企業群は宇宙空間への進出、自動車産業、鉱物採掘にあたっている。マスク自身に航空業界での経歴はない。
空軍上位関係者にはマスクと異なる見解がある。ウィル・ローパー空軍次官補(調達、技術、兵站)は将来の空軍力に自律運航機材を多数配備し、有人機を補完させるべきと主張している。航空戦闘軍団(ACC)司令のジェイムズ・ホームズ大将は無人戦闘機材の編入を2025年から27年とはじめて日程表で示した。
当面は旧式化進むF-15C/DをボーイングF-15EXやロッキード・マーティンF-35Aで更改することに空軍は集中する。一方で空軍研究本部(AFRL)は低価格「消耗品」扱いの新型機材で実験を開始した。
第一弾がクレイトスXQ-58Aヴァルキリーで、2019年3月に初飛行した。空軍はXQ-58Aまたは類似機材に人工知能の「頭脳」を搭載し、いわゆる「スカイボーグ」として飛行させる予定で、飛行を重ねるたびに機体制御を学習させる。こうした機能はマスクの描く将来機材と近いが、直ちにF-15Cの代替になるには技術が早熟なためF-15EX導入の決定に至った。
ホームズ大将は次段階の機材が5ないし8年で登場すると述べる。この年数はXQ-58Aやスカイボーグのような機材の技術成熟期間と一致する。空軍はF-16ブロック25、30数百機の更新が必要となる。
「新型機として低コストかつ忠実に行動するウィングマンとして従来と全く異なる機材が登場する」(ホームズ大将)  
ホームズ大将はローパー次官補と2月に会見し、導入可能な価格かつ高性能機を3から5年間隔で小ロットで連続生産する方法づくりを打ち合わせた。空軍は広大な太平洋地区を念頭に基本要求性能(航続距離やペイロード等)の明確化に取り組んでいる。 
「戦闘機開発に応用してきた計算式はヨーロッパ環境ならまだ有効だ」とホームズは述べる。「だが太平洋では機能しない。距離感が違いすぎる。そのためNGAD他新規企画では、従来の戦闘機形態と異なる機材が出てくるはずだ」
航空戦シンポジウムの展示コーナーにヒントがあった。従来型機材のF-35やF-15に混じり新規コンセプトが展示されていた。ジェネラルアトミックス・エアロノーティカルシステムズ(GA-ASI)は「ディフェンダー」を公開し、プレデターCアヴェンジャーの改良型として空対空ミサイル、赤外線探査追尾センサーを搭載する。ディフェンダーの任務は支援機材の給油機や偵察機を敵から守ることで、爆撃機や戦闘機に敵地侵攻させることと同社は説明。 

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GA-ASIが提案するディフェンダーは空中給油機護衛用のジェット推進、ミサイル搭載の無人機。Credit: U.S. Air Force
クレイトスはXQ-58に引き続きとりくんでいる。AFRLは当初テストフライト用に5機分の予算を計上し、三回目の飛行で墜落したものの、テスト目標は三回目飛行で全数達成したと同社は述べている。AFRLはXQ-58の「任務遂行機材化」を加速中で、ペイロード増加で搭載兵装の強化を目指す。まず4月にF-35とF-22間の通信中継機能を実証する。
クレイトスはXQ-58の12機製造を開始しており、2021年第一四半期にラインオフする。各機は政府各機関の予算で各種実証に投入されるという。
XQ-58によりまったく新規の機種、「忠実なるウィングマン」が米国に生まれ、ヨーロッパでは「遠隔キャリア」となる。XQ-58やボーイングの空軍力チーム化システムAirpower Teaming System (ATS) で重要となるのが航続距離だ。両機種は無給油で3千カイリとF-35の約3倍の距離を飛べる。ATSと異なりXQ-58では着陸用の滑走路は不要で、パラシュートで回収する。
ACCが求めてきた次世代戦闘機の姿から見れば両機種は注目に足りない存在になるが、方法論そのものが変わりつつあるとホームズ大将は述べている。
「航空戦闘軍団は戦闘機ロードマップを作ってきた。30年後の戦闘機はどうあるべきか、と言った具合だ」「だが今は性能ロードマップで従来は戦闘機でこなしてきたミッションをどう実現するかを考えている」
空軍資材軍団(AFMC)も戦闘機の調達方法を抜本的に変えようとし、昨年10月に高性能機材事業実施室Advanced Aircraft Program Executive Officeを立ち上げた。次世代戦闘機の調達手順を再定義するのが目的だ。現代の戦闘機では開発に10年以上をかけ、数十年を要する事例もある。だが次世代戦闘機で空軍が望むのは数機種の少数生産で、開発サイクルも5年未満に抑えることだ。
配備期間も最小に抑える。供用期間が短く退役するからだ。この方法だと実施企業も開発段階で十分な利益を実現できる。現状では開発期間は赤字で配備中に利益を確保するのが通常だ。このため供用期間が短いと利益も十分出ない。
空軍はこの調達での契約形式を検討中とAFMC司令アーノルド・バンチ大将が述べている。
「業界はこの方式にどう対応するか検討中だ。各社経営陣がこの話題を口にしているが対応は各社別だ」とバンチ大将は言う。「各社が検討するのは、費用試算の方式であり、財務計画や、議会へどうはたらきかけるか だろう」■
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U.S. Air Force Plots Fleet Insertion Path For ‘Loyal Wingman’

Steve Trimble Lee Hudson March 06, 2020

2020年3月14日土曜日

ハイテク飛行船が無人機空母になる、空母部隊を上空から支援する日がやってくる(?)

現代のハイテク飛行船が海軍作戦を支援する図が実現するのか。無人機との組み合わせで空中空母になればすばらしいのですが....

海軍は1930年代に飛行船を運用し、発想はよかったが実践で想定通りにいかなかった経緯がある。
1930年代で終焉した飛行船運用構想を米海軍は復活すべきとの論考が米海軍協会紀要に掲載された。
著者カイル・ミゾカミは大型飛行船を無人航空機の母機に採用すべきという。米海軍では80年前のアクロン級飛行船の復活になるが、飛行船で航空母艦を補完できるという。
「UAVを搭載した今日版のアクロン級飛行船を実現する技術はすでに存在している」(ミゾカミ)
海軍の公式ウェブサイトはアクロン級飛行船二機の短い供用実績に触れている。全長785フィート、時速50ノット、乗員89名で長距離飛行可能だった同級は機関銃6丁を搭載し、戦闘機4機を発進、改修する複雑な取り扱い装置もついていた。
「当時の技術を考えると3千マイルを移動し、素材の欠陥や航法技術の未熟さを克服したのは傑出した成果だったといえる」と歴史に詳しいリチャード・スミスが著している「1932年当時、それだけの航続距離を有する機体は存在しなかった」
だがアクロンは1933年に墜落し73名が死亡した。姉妹船メイコンも1935年墜落し二名の生命を奪った。海軍は艦載機運用を重視し飛行船使用を中止した。だがミゾカミは飛行船運用を再検討すべきと主張する。
高高度上空の飛行船にセンサー、ネットワーク機能を搭載すれば空母より早く到達しつつ数日間数週間も現地に留まれる。無人航空機数十機を搭載し、それぞれがレーダー、電子光学式等のセンサーを運用すれば母船のセンサー探知距離を拡大し水上部隊の目となる。無人機には兵装搭載も可能で対艦、対潜攻撃の他ヘリコプター等低性能機材の攻撃や対地攻撃も可能だろう。
攻撃型飛行船は水上艦の代替にならないが、補強効果が期待でき、分散攻撃力の実現手段として海兵隊等地上部隊の支援もできる。飛行船多数で広大な海域に警戒網を敷けば、敵脅威が低い海域である前提なら、有益な効果を生むだろう。
2005年にアメリカンブリンプ社のA-170一機MZ-3Aを海軍が調達した。同機は全長178フィートで最高時速40ノットで、ヘリウムを充填したA-170は数千フィートの低空での性能が最高になる。
同機はニュージャージー、メリーランドで各種センサーを搭載し試験された。「機体の大きさや空力特性上の制約があるが、飛行船は固定翼機回転翼機よりはるかに短期間かつ効率の良い開発が可能だ」と海軍高システムズ本部は説明している。
2010年にMZ-3Aはアラバマへ展開し、ディープウォーターホライゾン石油掘削事故の後始末を支援した。MZ-3Aの調達運航コストは2006年から2012年通じ360万ドルだった。
海軍はMZ-3運航を2013年に終了した。「予算不足の理由でなく、投入すべきミッションがないためだ」との説明で、予算は高高度飛行無人機やF-35Bに流用された。
それでもミゾカミは自説を曲げない。「海軍航空運用の100年超の実績で各種構想を試してきた。水上戦闘機など実現しなかったものもある。飛行船空母構想は逆に復活してもおかしくない。経費上の問題はあるが航空母艦の将来は保証されているように見えるが、次代の艦隊が画期的な航空戦力の放射手段を伴い展開するのは確実に思える」■

この記事は以下を再構成したものです。

Not Dead Yet: What If the Navy Revived Flying Aircraft Carriers?

Could it be?
by David Axe 
March 13, 2020  Topic: Technology  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: USS AkronNavyU.S. NavyMilitaryTechnologyWorld


2020年3月10日火曜日

フォード級の後の米空母像を探る検討作業が始まった---超大型原子力空母か通常型軽空母か

軍は超大型原子力空母の次の姿を調査研究二案件で模索している。
 ともにさらに大型の原子力空母を求める声で共通している。だがペンタゴンがこれまでの流れを否定し、通常型で小型の「軽空母」へ向かう可能性もある。
2020年初頭に海軍は航空母艦の要求性能について正式検討を開始し、フォード級超大型空母5隻の後継艦の姿を模索しはじめた。フォードは就役ずみで、第五号最終建造艦の就役は2032年ごろになる。
これが「次世代空母2030タスクフォース」による検討で、これとつながるのが国防長官官房が行っている空母検討作業で、2020年夏にまとまる。海軍が内部検討結果を公表するかは不明だ。
双方の作業から海軍の長期建造計画、議会による歳出へ提言が行われ、今後の軍事力構造が形成される。
海軍の予算環境に不確実性が増しており、直近でも艦艇建造計画の最新版の発表を遅らせざるをえなかったほどだ。 
海軍の選択肢としては①単価130億ドルでフォード級建造を継続する ②新型艦を開発し、単価40億ドルとする ③アメリカ級強襲揚陸艦を追加建造し軽空母として配備する、の三つと言ってよい。
現有の超大型空母11隻で退役艦が発生しても後継艦建造しない選択肢もあるが、この可能性は最も低い。議会から空母12隻体制の堅持を求めらており、海軍は11隻運用での猶予を何度も要請している。
予算が伸び悩んでいるのも検討に影響を与えそうだ。現在の艦艇数294隻を2030年代のうちに355隻に拡大する構想に海軍が後ろ向きなのも当然と言える。
海軍上層部は艦隊規模拡大に巨額予算が必要なこと、無人艦艇技術が進展してることを指摘している。海軍の試算では有人艦艇60隻を追加すると2049年まで毎年250億ドルが必要となる。この金額は海軍のこれまでの支出規模のほぼ二倍に相当する。
小型無人艦艇は有人艦艇より安価だが現状の枠組みでは無人艦は「戦闘部隊」艦艇に計上できない。
「355隻体制が実現できるか。現状の財政状況から見れば305から310隻しか適正に人員配備、装備搭載、保守管理し、稼働させられない」とロバート・バーク大将(海軍作戦副部長)が2019年10月に述べていた。
予算面で悲観的な見方が続き、海軍の2021年度予算要求では戦闘艦艇建造は8隻予定と、これまでより減っている。
だが海軍長官代行トーマス・モドリーは小型有人無人艦艇を急いで調達し艦隊規模は435隻に拡大できると主張しており、さらに想定予算内で実現都まで言い切っている。モドリーの大胆な構想がいつ消えてもおかしくない。本人は代行で上院が次期長官を正式承認すれば退くからだ。
結果として海軍の第一線艦艇はより現実的に355隻未満となる可能性が高い。問題はこの中に空母が何隻となり、その戦力はどうなるかだ。
2065年ごろにニミッツ級、フォード級あわせて12隻を運用するためにはフォード級建造は10隻以上が必要というのが現在の計画だ。
ここに疑問をぶつけるのがマーク・エスパー国防長官だ。「ゼロか12隻かと二者択一議論になっている。まず、本当にそうだろうか。空母は極めて重要だ。米国の国力を示威する手段だ。抑止効果も高い。大きな戦力となる」
エスパー長官が言おうとしているのは、戦力編成に小型軽空母を加えることだ。海軍にはワスプ級、アメリカ級の強襲揚陸艦10隻があり、F-35Bを搭載し軽空母として機能している。
軽空母は確かに安価だが超大型空母の戦力には及ばない。小型空母で搭載できるF-35は多くても20機だろう。これに対して超大型空母では軽く40機搭載できる。
軽空母で一日に実施可能なソーティーは40どまりと海兵隊が試算している。新型フォード級超大型空母では160となる。.
原子力推進超大型空母なら通常型強襲揚陸艦で不可能な長期間運用が可能だし、電子戦機材や給油機も運用できるが、軽空母では大型機は搭載できない。
そうなると解決策として超大型空母は微減とし、強襲揚陸艦の建造を増やし、軽空母としてF-35搭載数を増やしながら運用する選択肢が浮上する。
「強襲揚陸艦で正規空母のかわりにならないが、工夫して補完的に使える」と海兵隊はまとめている。■

この記事は以下を再構成したものです

What Comes After the Nuclear-Powered Aircraft Carrier?

by David Axe 
March 7, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35Aircraft CarrierMilitaryTechnologyWorld

2020年3月8日日曜日

空中給油の民間企業委託を検討し始めた米空軍AMC

民間企業への防衛業務委託は別に新しいことではなく、中東で民間業者が輸送兵站や要人保護を実施していますが、航空業務でしかも重要な空中給油業務の民間委託は画期的です。しかも参入に期待する企業が多数があるというのも驚きですね。各国で防衛予算の確保が難しくなるとこういう民間参入の動きがこれから増えるかもしれません。でももとはと言えば、ボーイングKC-46がちっとも予定通りに就役してくれないからなのですけどね。
 

第385遠征航空機材整備中隊がKC-135ストラトタンカーの飛行後点検中。カタールのアルウデイド航空基地にて。2019年9月24日。 (Master Sgt. Russ Scalf/U.S. Air Force)


空軍は空中給油業務を民間公募すべきかで結論を今月末に出すと航空機動軍団(AMC)司令がDefnense Newsに明らかにした。
空軍は民間空中給油業者に給油業務を認めていいのかの評価作業が最終段階にあるとマリアン・ミラー大将が2月28日独占取材で述べた。
「民間に期待している。業務参入したい民間企業側も検討結果を重視している。3月中に結果が出る」「一部業者から結果発表がいつになるか聞かれた。こちらも待っているところだ」
検討結果から民間空中給油業者の投入が費用対効果で優れているのか、また契約の枠組みが決まる。ただし、民間業者機材は戦闘や海外運用に投入されず、あくまでも米本土での任務につくとミラー大将は述べ、AMCで手が回らない訓練、試験評価時の空中給油を担当するという。
AMC試算では年間需要は6千時間としているが、検討結果で変わる可能性がある。現在参入に関心を示すのは14社あるという。
「調査結果が肯定的になると期待している。要求水準が実現でき、提案内容を入手でき想定通りの手順で進めればよい。楽観視している」「現在のストレスや緊張が緩和できるはず」(ミラー大将)
空中給油業務の民間委託を議会に承認させるのは難易度が高い。とくに空軍が給油機現有勢力の削減を狙っている中では。空軍はKC-10(16機)、KC-135(13機)の退役を2021年度予算案で提示している。ただし、同内容は米輸送軍団が批判しており、23機を再就役させる予算を確保しようとしている。議員の中にも短期的にリスクが高くなるとの懸念もある。.
だがミラー大将の主張は民間空中給油業者を利用すれば柔軟度が増え、空軍機材への圧力が緩和され、空中給油へ高い需要が海外で生まれると発生するギャップが埋められるとする。
「現時点で実施困難なミッションを実現しつつ不足分を補える。現在は稼働率が問題になっている」と述べ、機材調達にも好影響が生まれるとする。空中給油機材が増え試験評価フライトに投入できれば、試験項目が迅速かつ効率よく埋まり、空軍もKC-135の飛行時間を消耗しなくてすむという。「選択肢が増えることがとても重要です」(ミラー大将)■

この記事は以下を再構成したものです。

US Air Force gets ready for decision on commercial aerial-refueling services

By: Valerie Insinna    

2020年3月7日土曜日

2020年米国防力の現状③ 米海軍

スパー国防長官の削減策が355隻規模の艦隊を必要とする海軍に影響を与えそうだ。
355隻体制の実現は易しい仕事ではない。だが海軍首脳部がこの規模を実現すると約束してから3年たつが行方は一層不明瞭になってきた。
昨年12月には事態はまだ順調に見えた。海軍と海兵隊は共同で初の「統合戦力構造評価」に着手するとの発表があった。トーマス・モドリー海軍長官代行は355隻規模実現を10年以内に達成すべしと目標設定した。だが数週間後に海軍作戦部長に就任したばかりのマイケル・ギルディー海軍大将から異例の発表があり、追加予算数十億ドルが必要とし、政権側が望む戦力増強がいかに常軌を逸しているかを示していた。
ペンタゴンの2021年度予算要求が先月に議会に回されたが、艦艇建造予算は40億ドル減額となり、当初の5か年計画から11隻減っている。造船産業を抱える国会議員はこれに動揺し、一斉に要求案を非難し始めた。
An unarmed Trident II missile launches from the USS Maine (SSBN 741) off the coast of San Diego, California, Feb. 12, 2020.
Navy / Mass Communication Specialist 2nd Class Thomas Gooley
さらに海軍海兵隊戦力評価が出るのが今春のいつか」に延期された。つまり評価内容は2021年度予算公聴会には間に合わないことになる。結果は2022年度予算編成に参考となりそうだ。「海軍は355隻規模の目標にとらわれつつ、予算削減の中で数勘定の方法論から自由になっていない」とCSISアナリストのマーク・キャンシアンとアダム・サクストンは指摘している。
ドナルド・トランプ政権では政府のあちこちに大変な事態が発生している。海軍では上院承認を受けた長官が不在のままだ。モドリーは2017年に海軍次官の承認を受けたが、11月に長官代行に任命されたのはリチャード・スペンサー前長官がネービーSEAL元隊員の恩赦を望むトランプ大統領の意向に応じず罷免されたためだ。
モドリーの次官としての最大の功績は海軍内部の教育体系の再整備だろう。その手始めが一年前に発表され、海軍の各種学校を「海軍総合大学」に再編し、中将を最高訓練責任者に任命し、民間出身者を「最高学習責任者」とした。後者がジョン・クローガーでリードカレッジ前総長だ。クローガーは1月に海軍の「三大知的課題」として将来の戦力構造の企画、変革に取り組む姿勢、艦艇の調達をあげていた。
モドリーは長官代行となり、毎週のように内部メモを発出し組織運営にあたっている。最初の12月6日付けでは三つの目標を掲げた。海軍の戦力構造、知的作業と倫理、さらにデジタル近代化である。その後追加しているのは予算と日程が想定を超えているUSSフォードについて「可能な限り早期に軍艦として準備させる」とし、太平洋諸国とのかかわりを強化し、海軍教育体系や情報管理に「予算満額」を手当てし、水兵の住宅問題を解決するとしていた。
An F/A-18F Super Hornet flies over the Indo-Pacific region on Jan. 29, 2020.
Navy / Lt. Alex Gramma
モドリーの1月15日付けメモでは355隻(以上)の艦艇整備案で通常の艦艇に加え無人潜水艦も含めるとした。現実の制約条件を見るとこの構想も変更を余儀なくされよう。
制約の一つにマーク・エスパー国防長官がロシアまたは中国との対決への準備に焦点をあてていることがある。モドリーもペンタゴンの将来戦構想で有望な新型兵装の開発に熱心で、次世代戦場通信ネットワークや極超音速ミサイルがある。だが米国の安全保障構想では海軍の役割として世界の海上交通路の守護にこれまで依存しており、同時に自然災害時の人道救難業務でも海軍に期待するところが大きい。だがエスパー長官のめざす大国間戦闘に向けた「無慈悲なまでの優先順位付け」でこうした従来型任務がどこまで削減縮小されるのだろうか。
その答えがまもなくわかりそうだ。海軍が355隻目標を実現するには無人装備まで勘定に入れる必要がある。エスパー長官は355隻構想を支持するとしながら、小型かつ「軽装備」の無人艦艇が今後増えると見ている。だが変化はそこにとどまらない。陸軍長官としてエスパーは250億ドル規模の予算を「夜間法廷」として知られる大胆な見直しで再編成した。これと同じボトムアップ手法をペンタゴンに持ち込み、「これまでで最大の国防改革を目指している」とヘリテージ財団のマッケンジー・イーグレンは見る。
Ships assigned to Destroyer Squadron (DESRON) 23 transit the Pacific Ocean, Jan. 22, 2020.
Navy / Mass Communication Specialist 3rd Class Erick A. Parsons
エスパー体制で精査が始まっており、海軍が2021年度予算要求を公表した翌週にモドリーから急きょ「最低でも400億ドルの予算節減策」を「今後六週間かけて」模索するとの発表が出ている。そのメモでは戦力戦略検討」とモドリー自身が呼び、現行の海軍予算が2,056億ドルの中で400億ドル節減を2022年から2026年にかけ実行するとあるが、艦艇建造にも影響が出そうだし、海軍の任務で重要度が低いあるいは効率が悪い分野が廃止になるかも知れない。
ただし、最終決定は議会にゆだねられる。エスパーやモドリーがめざす海軍建造計画や予算削減を議員がそのまま認めるだろうか。反撥を示すだろうか。 ■

この記事は以下を再構成したものです。

State of the Navy
 By Bradley Peniston

defenseone.com/feature/state-of-defense-2020/#navy

海自最新鋭潜水艦おうりゅうのリチウムイオン搭載に海外も注目


 

三菱重工神戸造船所で行われた潜水艦応龍の引き渡し式典。(Japan Maritime Self-Defense Force photo)


上自衛隊はリチウムイオン電池搭載の初の潜水艦、そうりゅう級11番艦おうりゅうを3月5日就役させ、呉の第一潜水艦隊群に編入する。

おうりゅうは三菱重工による同級6番目の艦で、川崎重工5隻建造ずみで最終12号艦を建造中だ。▶おうりゅうおよび最終号艦とうりゅうは以前の建造艦との変更点としてスターリングエンジンによる鉛電池充電方式に代えリチウムイオン電池(GSユアサ製)を搭載している。▶海上自衛隊潜水艦隊司令(当時)小林海将補は2017年におうりゅう、とうりゅうで搭載するのはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)電池と述べ、保守管理が楽になり潜航時の高速移動が長時間可能となったという。▶充電時間の短縮化と長寿命も特徴で、後者で供用中の電池交換回数が減る利点もあると紹介があった。▶ただし調達コストが高くなった。おうりゅうの契約金額608百万ドルに対し10号艦は488百万ドルだった。
 そうりゅう級は浮上時排水量2,900トン、潜航時4,200トンで最高速力が浮上時13ノット、潜航時20ノットだ。乗員65名、魚雷発射管6門で大型魚雷、ハープーン対艦ミサイル、機雷を30本まで搭載できる。▶そうりゅう級建造が終わると日本は後継艦29SSの建造に移る。■

この記事は以下から再構成しています。

Japan commissions its first submarine running on lithium-ion batteries


2020年3月6日金曜日

F-35は新型無人機XQ-58Aに勝てるのだろうか

国が西太平洋で中国と対決する日が来れば、最前線を飛ぶのは安価な無人航空装備になっているかもしれない。
ロッキード・マーティンF-35に未解決の課題3点がある。稼働率を高く維持したくても機体があまりにも複雑な構造なこと。航続距離が圧倒的に足りないし、運行経費が高い。これに対しクレイトス・ディフェンス&セキュリティのXQ-58Aヴァルキリーは実験段階の無人航空機(UAV)だが、F-35の任務の多くをこなしつつ、近代戦での残存性が優れている。
有人戦闘機は攻撃に脆弱
F-35では機体構造が複雑すぎ、信頼性が劣る結果が生じている。事業開始から26年が経過しているが米国防総省の運用テスト評価部長ロバート・ベーラーはF-35各型で信頼性が65%以上の機体はなく、故障が頻発し、修理に長時間が必要になていると指摘している。
二番目にF-35Aの作戦半径はおよそ675カイリ(1,250キロ)で中国がUAV、弾道ミサイル・巡航ミサイル多数を投入しているが、多くはこの半径を超えている。中国は第一列島線、第二列島線の米軍基地をミサイル、無人機で攻撃してくるだろう。
このためF-35が安全運行できるのは遠隔地の基地からで、空中給油機がないと戦闘に加われない。給油機にステルス性がないため、中国はこの撃破を目指した戦術や兵装を開発してきた。空中給油ができないとF-35は戦闘に加われない。
だが戦闘機で最大の問題は新型かつ安価な技術により戦闘機の任務を数分の一程度の予算で実現できるようになったことだ。XQ-58Aは滑走路以外の場所から運用でき、ステルス性があり(正しき体表面に塗布材料はつかない、有効半径は3,000カイリがあり、マッハ0.72で巡航し、270Kgの兵装搭載能力がある。
ステルスモードのF-35では小半径爆弾なら8発、空対空ミサイルは4本しか機内搭載できない。ロッキードは空対空ミサイル6発の搭載が可能となったと述べている。ロット13のF-35Aの機体単価は80百万ドルになるが、この数字は機材の最終価格ではない。テスト中にまだ多くの欠陥が見つかっており、解決が間に合わない。
F-35の耐用期間は8千時間といわれ、一時間あたり運行経費は2018年に44千ドル、2024年度に34千ドルに下がる。そうなるとF-35A一機の調達運用コストは352百万ドルから432百万ドルの間になる。これに対しクレイトスはヴァルキリーの販売価格を100機製造の場合で2百万ドルに設定している。また同機は自律飛行型であり、パイロット技能の維持に毎月飛行時間を計上する必要がない。
自律型ヴァルキリーでは人件費がさらに削減できる。整備陣および航空基地の経費や各専門職養成費用や退職金、健康保険料も不要だ。
この計算ではF-35一機の導入運用コストでX-58が300機調達できることになる。供用期間通じてヴァルキリー4機がF-35A1機の約四十分の一程度の費用ですむ。また航続距離の長さを生かしヴァルキリーはF-35では到達不可能な地点も標的にできる。
さらに重要な点としてヴァルキリーなら中国の偵察攻撃部隊に勝てる。F-35では無理だが、ヴァルキリーに固定運用基地は不要だ。クレイトスは標準貨物コンテナーでヴァルキリー運用を実証中だ。つまり発進するまでコンテナー内部に格納されたまま居場所を探知されない。この機能を使えば同機は平滑な場所ならどこからでも発進し、どの場所でも回収できる。また中国の攻撃兵器の有効射程外からも運用できる。 
XQ-58Aの性能はF-35の数分の一にeすぎなくても、2つの局面でうわまわる性能がある。航続距離と地上での残存性だ。F-35がいかに高性能でも航空基地を攻撃されれば残存が危うくなる。ヴァルキリーは地上で撃破を免れる可能性が高く、F-35の僚機となる日が遠からず将来に実現しそうで、F-35の後継機種とも組んで供用されそうだ。■
TX Hammes is a Distinguished Research Fellow at the USA’s National Defense University. The views expressed are his own and do not reflect the official policy or position of the National Defense University, the DoD, or the government. He is the author of Deglobalization and International Security
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F-35 v Valkyrie: range, payload, cost and survivability
3 March 2020