2016年7月7日木曜日

リムパックにロシアスパイ艦がまとわりつく。中国は今のところ動きなし。


 Russian Spy Ship Now Off Hawaii, U.S. Navy Protecting ‘Critical Information’

By: Sam LaGrone
July 6, 2016 2:42 PMUpdated: July 6, 2016 6:16 PM

Undated photo of Russian spy ship Pribaltika (SSV-80) with its old hull number CCB-80. Sources confirmed the ship is operating off the coast of Hawaii.
ロシアスパイ艦プリバルティカ(SSV-80) 撮影日時不詳。複数筋から同艦がハワイ沖に展開中であると判明した。


ハワイ沖合にロシアのスパイ艦一隻が到着しておりRim of the Pacific 2016演習を監視する動きを示している
  1. ロシア海軍バルザム級「汎用情報収集艦がハワイ沖公海に最近到着し、リムパック演習の開始を待っている」と太平洋艦隊広報官クリント・ラムズデン大尉がUSNI Newsに今週述べた。「同艦がいても演習実施には影響なく、当方はすべての対策で機微情報を守っている」
  2. 冷戦時にロシアスパイ艦が米沿岸沖合で演習の通信傍受をすることはよくあったが、最近までロシアは監視活動が低迷していた。
  3. 「以前はスパイ艦が定期的に出動しこちらも洋上で遭遇することがありましたが、きわめて安全かつプロ意識豊富に動いているのがわかりましたよ。通信傍受が主な任務だったようです」とブライアン・クラーク(戦略予算評価センターで海軍関係研究員)は海軍作戦部長付補佐官当時を回顧している。
  4. 2014年にロシアがクリミア地方をウクライナから奪ったことを受けロシア海軍の活動が冷戦終結後では見られなかった活発さを取り戻した。
  5. リムパックには25カ国50隻、航空機200機、人員25千名が参加することからロシアが傍受にいそしむのは理解できるとクラークは述べた。「異様な感じがするのはしばらくあちらが活動していなかったからです」
  6. 米海軍は同艦の詳細情報を明らかにしなかったが、USNI Newsの求めに応じた専門家は同艦はプロジェクト1826バルザム級のプリバルティカ(SSV-80)でロシア太平洋艦隊所属で母港はウラジオストックと推察している。
  7. リムパック演習での通信傍受やレーダー波など電子信号を集める情報集活動にプリバルティカを派遣されたのだろうとクリス・カールソン退役海軍大佐は解説してくれた。「プリバルティカは大型で長距離航行に耐える設計でハワイには2004年にも来ており、今回もロシアが送り込んだことに意味があります」
  8. ロシアにはさらに新型の汎用情報収集艦もあるが、「新型ユーリ・イワノフ級(プロジェクト18280)情報収集艦があと数年で就役する前に旧型になるバルザム級で米海軍はじめ各国が参加する海軍演習の監視をするのがいいと判断したのでしょう」とエリック・ワーザイム(米海軍協会編世界の戦闘艦隊の著者)は見解をUSNI Newsに語っている。
  9. 2014年のリムパックでは中国人民解放軍海軍が招かれざるスパイ艦一隻を送り、演習を監視した。中国はこれとは別に四隻の艦船を米国が招へいする形で演習に参加させていた。そのためこのスパイ艦を中国が派遣したことは各国で関心を集め、中国は苦しい説明を迫られた。
  10. 今回のリムパックでは中国は招へい対象の5隻以外にスパイ艦を送り込む兆候は見られないと複数筋が語っている。■

空軍長官はF-22生産再開に冷淡な姿勢




SecAF James Is Cool To F-22 Restart

By COLIN CLARK on July 06, 2016 at 4:01 AM

f-22raptor
PENTAGON: F-22生産再開は「費用が法外な規模」と空軍長官デボラ・リー・ジェイムズが発言した
  1. ジェイムズ長官はワシントン記念碑を見下ろすペンタゴンEリングの長官執務室で取材に応じ、空軍は空優勢2030構想を進め第六世代戦闘機あるいはシステム体系のシステムの概念を初めて定義づけようとしていると説明。F-22の設計が始まった1980年代後半と今では変化が明白でF-22が想定した脅威が今では「大きく変わっている」と述べ、同機は「傑作機」であり当初設定にない用途でも有益性を実証したと説明している。
  2. 前空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が生産再開を公言したが、ジェイムズ長官が上げた再生産の功罪を引用していた。「突飛な発想ではないでしょう。F-22の性能と搭乗員の技量はずばぬけています。期待通りの成果を出している機体」とウェルシュは5月に発言していた。
  1. それ以降F-22ライン再開の議論が活発化している。ロッキード・マーティンはF-35共用打撃戦闘機を今後数十年にわたる主力製品と位置付けており、同社が議論に火をつけたのではないようだ。下院は国防予算認可法案に最低でも194機のF-22の生産再開をした場合の費用面検討結果を来年1月1日までに提出するよう空軍長官に求める文言をわざわざ加えたほどだ。
  2. だが生産再開となれば空軍は費用の数百億ドルを別事業から捻出せざるを得ず、現状でも予算管理法による強制削減措置への対処を迫られている。
  3. F-22生産再開を強く推してたランディー・フォーブス下院議員は下院軍事員会シーパワー兵力投射小委員会の委員長をまもなく退く。フォーブスはヴァージニア州で議席を守れず、スコット・テイラーという州議員、元海軍SEAL隊員という無名の新人に敗れている。

2016年7月6日水曜日

南シナ海に広大な海軍演習海域を設定した中国の不穏な動き



不利な判定が出ることを織り込んで中国はなりふり構わず力で南シナ海を支配していくことを誇示するのでしょうか。中国の常識が世界の常識からどんどんはずれていけば、面子を重んじる中国が理屈に合わない行動に出る可能性が高いと思います。また米軍はじめ各国部隊も静観できず、なんらかの行動に出れば常識の通じない中国側が予想外の反応を見せて、一触即発状態になりかねません。ここまで状況がホットになっているのに日本は鈍感ですね。

China Declares a No-Sail-Zone in Disputed Waters During Wargame

The area is larger than the US state of Maine.
BY ECHO HUANG YINYIN
JULY 5, 2016
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  1. 中国が南シナ海で軍事演習を今週開始した海域は米メイン州より広い。
  2. 中国語による発表では演習は7月5日から11日までで中国の領海主張に対する国連仲裁裁定結果が言い渡される前日までだ。中国は裁定内容は無視すると公言しており、そもそも仲裁手続きに参加していない。
  3. 声明では正確な座標情報で演習地を指定しており、海南島から南へ中国が実効支配するパラセル諸島(ヴィエトナムも領有を主張)に達する海域だ。ヴィエトナム外相は演習への抗議を7月4日に発表している。.
  4. 中国は演習海域への船舶立ち入りを禁止している。該当する海域は10万平方キロに及ぶ。これは48百万人が暮らすフィリピンのルソン島の11万平方キロに匹敵する規模だ。
  5. 今回発表の演習海域は船舶で混雑する航路と近接するが、重複していない。
  6. 中国ネチズンからは演習に興奮する向きもあり、中国の実力を誇示できるとする一方で憂慮する声もSina News WeiboやFT
  7. Chinese に見られる
  8. 演習開始日は米独立記念日の翌日であり、終了日の7月11日が国際法廷の結果発表の前日という微妙なタイミングになっている。■

★★★F-35とF-105の意外な類似性、戦闘爆撃機でドッグファイトは不得手




The National Interest


America's F-105 Thunderchief Fighter-Bomber: The F-35 of the Vietnam War?


July 3, 2016

War Is BoringによればF-35はF-16との模擬空戦で旋回速度が遅すぎて勝てなかったとテストパイロットが語っている。

  1. これからの米空軍で最多の戦闘機材になるF-35が数で優勢なロシアや中国の機体と戦って残存できるのだろうか。
  2. 答えは歴史の中にある。50年前にも米空軍は同じ予測をしている。攻撃の主力F-105サンダーチーフは重量級ハイテク地上攻撃機で敵戦闘機も同時に撃退できるはず、とF-35と同様だった。
  3. だが事実はF-105も旋回速度が遅くロシア製MiG-21に太刀打ちできず、空軍はF-105の損失を防ぐ特別な戦法を編み出した。同様の措置はF-35でも必要だろう。
  4. F-35とF-105は驚くほど似ている。「F-105とJSFは大型、単座機、単発の戦闘攻撃機で、その時点で最強力なエンジンを搭載、空虚重量は27千ポンド級で翼幅もほぼ同じ35フィートだ」とオーストラリア航空宇宙専門家カーロ・コップが2004年に指摘していた。
© 2005, 2007 Carlo Kopp


  1. 「両機種とも機内兵装庫があり機外パイロンで燃料と兵装を運べる」とコップは指摘し、「ともに戦闘半径400カイリクラスを目指し推力重量比、高機動操縦性能で制空戦闘機や迎撃機より劣っていた」
© 2005, 2007 Carlo Kopp


  1. 空軍が調達したF-105は833機のうち334機をヴィエトナムで1965年から1970年までに喪失している。北ヴィエトナムのMiGに撃墜されたのは22機で、F-105が撃墜したMiGは27機とほぼ対等の空戦実績を上げている。
  2. だが対等だからとペンタゴンは喜んでいたわけではない。1969年には状況を改善するべくF-105に模擬空中戦をイラクから搬入したMiG-21と行わせた。国防情報局の「Have Doughnut」の一環でイスラエルに亡命した機体をイスラエルから借りた。
  3. 結果はF-105に芳しくなかった。MiG-21と遭遇したF-105はまず回避行動をとるよう勧奨された。MiG-21後方に回り気づかれない時に限り、サンダーチーフは高速奇襲攻撃した。
  4. F-105とMiG-21は対等の条件で空中戦を展開していたが、F-105はトラブルに遭遇している。「F-105が交戦で長時間機体を操縦すると、機動エネルギーがなくなり、操縦の余裕が減ることで攻撃力が減じ、追撃を受けやすくなる」ことが判明したと報告書にある。
  5. F-16と戦ったF-35パイロットも同様の現象を報告している。「パッチレートが不足した」F-35のパイロットが「敵機に対してエネルギー不足が何度も発生した」と述べている。
  6. F-105には直線飛行では他機の追随を許さない速度上の利点があったが、F-35は現役世代のスホイ、瀋陽、成都の各戦闘機よりも低速だ。さいわいにもJSFはステルス機なので、一定の条件なら敵の長距離探知センサーから逃れることが可能だ。
  7. 将来の戦争に備えF-35の残存性を高くする戦術を開発し、ステルス性を武器に優位性を確立すべきだ。コップは「決定的なのはJSFのステルス性には限界があること」と指摘している。■


6月17日東シナ海上空で何があったのか どちらの言い分が正しいのか


この問題の背景には中国が狙う心理戦もありますが、世界に孤立する様相を示す中国が多方面で大胆な動きに出ていることにも注目すべきでしょう.一体真実はどうだったのか。否定するだけではだめで、日本も情報開示すべきではないでしょうか。でないとウソを言い続けるほうが真実だと受け止められるようになります。日本も主張する際に計算された戦略戦術が必要ですね。

China says Japanese F-15s locked onto its fighters over East China Sea

Gabriel Dominguez, London - IHS Jane's Defence Weekly
05 July 2016


Source: JASDF
中国国防省が火器管制レーダーを東シナ海上空を6月17日に飛行中のスホイSu-30戦闘機二機に航空自衛隊のF-15戦闘機二機がロックオンしたと非難した。
中国は中国戦闘機のうち一機が航空自衛隊F-15に攻撃を加える構えを見せて接近したとの報道を否定している。F-15はスクランブル出撃していた。
「日本側の発表は事実を捻じ曲げ白を黒と言いくるめ不和を植え付けようとするものである」と同省情報局報道官が述べているとChina Military Onlineが伝えた。
それによると報道官はSu-30の二機編隊が「東シナ海防空識別圏で通常の哨戒飛行を行っていたところ」航空自衛隊F-15が二機高速で接近し「火器管制レーダーを中国機にロックオンした」とし、日本側がいつでも武器を発射できる状態だったとしている。
Su-30編隊は「戦術行動など必要措置」で日本側の「挑発行為」に対応したと報道官は述べ、F-15二機は赤外線フレアを放出しその場を去ったという。
中国側報道官は日本の行為は「空中事故で深刻な被害や損傷を航空機搭乗員に与えかねない」事態だったと注意喚起した。また同報道官は日本政府が「中国に歩み寄り」かつ「交渉の障害を取り除き」中日海上空中連絡メカニズムの立ち上げ・運用の条件整備に向かうよう希望すると述べた。日中両国は海上での意図しない衝突回避のしくみづくりで昨年12月に基本合意している。
萩生田光一内閣官房副長官は中国の言い分を否定しており、航空自衛隊機は「中国国防部が言うような挑発行動は一切取っていない」と述べ、中国戦闘機へのロックオンレーダー作動の事実はないと述べている。■


★★米空軍主導で進む第六世代用エンジン開発の現状



Aerospace Daily & Defense Report

USAF Confirms Sixth-Gen Fighter Engine Awards

Jul 1, 2016 Guy Norris | Aerospace Daily & Defense Report

F135: Pratt & Whitney
LOS ANGELES—ジェネラルエレクトリックプラット&ホイットニーの二社が米空軍ライサイクルマネジメントセンターから次世代のサイクル可変型エンジン技術の開発契約を適合型エンジン移行事業 Adaptive Engine Transition Program (AETP)の名称で交付された総額10億ドル以上となる。.
  1. このエンジンは推力45千ポンド超で第六世代戦闘機用に空軍と海軍での供用を目指し同時にロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機の換装用になることも狙い適合型エンジン技術が研究段階から実戦用に進展していることが分かるAETPは2021年にかけて各種テストを受け適合型エンジン開発事業 Adaptive Engine Technology Development (AETD)に続くものでAETDが適合サイクルエンジンの実用性を証明したのを受けるものだ
  2. AETD技術の実証は今年から2017年にかけGEとプラットが行い終了する。空軍は同技術を2007年から開発しており、可変サイクル構造で三段式の蒸気通過でファンを適応させる。三段目の蒸気により空気の流れを追加し、ミッションの段階には左右されるとはいえ推力を追加し燃料消費を抑える効果が期待され、コア内部に空気の流れを追加し推力を増やす効果と冷却効果をともにねらう。同時に燃料の冷却も行い、機体各システムで吸熱効果も狙う。
  3. GEとプラットのエンジン構成の詳細は極秘扱いだが、空軍によればAETPエンジンで狙う効果は燃料消費で25%改善しながら推力を現行エンジンより10%向上させるものだという。今後登場する戦闘機では各種センサーや指向性エネルギー兵器により発電量の増加が必要になるとして、AETPエンジンでは熱管理の効率改善が求められる。
  4. GEはF-35用の代替エンジンで提案したF136以降は現役戦闘航空機用エンジンを手掛けておらずB-21ではプラットに負けたこともあり、AETDは戦闘機用エンジンへ再度参入するため願ってもない機会だ。同社はAETDの初期設計審査を2015年3月に終え、2014年にAdventエンジンのテストに成功している。同社はこのAdventエンジンを初の適合サイクル方式三段蒸気方式エンジンと評している。GEは推力と航続距離の関係見直しで作戦半径が30%以上増えると説明している。
  5. プラットは同社製F119とF135の運用で戦場からのデータをもとに2013年に地上施設で三段スチーム方式のファンを実証しており、これをAETDの一部としている。「2017年早々に当社は次の段階に移行し、三段風流技術を実際の作動エンジンで実証します」と発表している。■


2016年7月5日火曜日

★★★空対空性能を重視するF-3、国産開発の可能性が濃厚



選挙戦もたけなわと思いますが、相変わらず安全保障では空理空論が大手を振っているようです。スクランブルの現状などなぜ実態を踏まえた議論にならないのか、都合の悪い事実には目をつぶる傾向が見られるのは本当に残念です。
War Is BoringWe go to war so you don’t have to

For Japan, Air-to-Air Fighters Trump Other Jets

Tokyo requests information from industry for next-gen warplane

by JAMES SIMPSON
F-3はX-2技術実証機を元に生まれるのだろうか。Japanese defense ministry photo
  1. 6月末、防衛省は次世代戦闘機の情報要求を各メーカーに出し、これで三菱重工F-2の後継機「F-3」開発の長い工程が始まった。
  2. だが性能向上が目立つ中国の海空兵力の脅威に対抗する必要を日本政府が感じる中、現在入手可能な機種はいずれも日本のニーズにこたえられない
  3. 日本が本当は欲しいF-22は立法措置で購入がままならず、次善の策が新型ステルス機の国産開発だ。
  4. Aviation Weekは6月24日号でX-2戦闘機技術実証機について評価をし、F-3開発につながると見られる同機から日本が狙うのは「大型双発機で長距離飛行性能があり機体内部に大型空対空ミサイル6発を搭載する」と推定している。
  5. 確かに日本のニーズからこの推定はありうるが、その通りなら日本はF-2の攻撃能力は捨て、高速長距離迎撃性能に重点を置くことになる。つまり対地攻撃ミッションから離れ空対空戦を重視することになる。
  6. Jane’s Defense Weeklyでも今回の情報要求を報じておりF-3は100機生産になるとしている
  7. 原稿執筆時点で日本国内報道を伝えているのはロイターだけで日付は6月30日となっている。その記事によれば防衛省はボーイングとロッキード・マーティンにも参加を呼び掛けている。ロイターは新戦闘機開発の予算は400億ドルと試算している。
百里基地から離陸したF-15とF-2 Japanese Air Self-Defense Force photo

F-2から F-35へ

  1. 日本側は研究成果をF-16に詰め込み三菱F-2が生まれた。機体単価171百万ドルはF-16四機分で安い買い物ではない。日本はF-2を94機保有している。
  2. F-2は多用途戦闘機で、恒例の富士総合火力演習では爆弾投下し、地上部隊を支援する姿が見られる。島国ということもありF-2は対艦攻撃任務もこなす。
  3. だが噂通りF-2後継機が双発ステルス戦闘機になればF-2の任務はどうなるのか。答えはF-35にある。
  4. 日本は2011年にF-35Aを42機導入すると決め長年供用しているF-4ファントムの後継機種とする。まず四機がテキサスとイタリアで生産中で三菱重工の小牧南製作所も参加し、2017年に日本へ到着する。
  5. 航空自衛隊はロッキードF-22導入を希望していたが、2006年に米下院が輸出禁止措置を延長し、日本導入の可能性が消えた。
  6. 日本がF-22を調達できていれば旧式ながら非常に価値の高い双発多用途戦闘機F-4を退役させていたはずだ。代わりに日本は第五世代戦闘機で唯一入手可能な機種として性能は落ちるが単発のF-35に落ち着いた。同機輸出はロッキードが力を入れており、議会も海外販売を後押ししていた。
  7. 双発と単発の違いを論じると多分に学術的になる。双発機の方がエンジンが余分にある分だけ残存性が高いとされるが、現実にはエンジン一基が作動しなくなると墜落する。
  8. 双発機でステルス効果が高いのはエンジンの大きさだけでなく同じ推力なら探知されにくい排気を出すためだ。このためF-22のステルス性能はF-35に勝る。
  9. そうなるとF-35をF-2やF-4の後継機種にすることで意味が出てくるが、わずか42機では90機近くのF-4にとって代わることができないし、日本は戦闘機が不足しているのだ。F-35選定が遅れ、稼働開始が遅れている中で既存各機は限界まで使われている。
  10. 日本にはF-15が150機ほどあり、日本の領空を中国の偵察行為の増加から守っているが、F-15は数次にわたる耐用年数延長改修を受けている。F-2も改修されているとはいえ、F-4が消えた後のギャップは早々に埋まりそうにない。Jane's報道のF-3100機が正しくても日本の戦闘機不足は解消しない。
  11. 今のところ日本は数より質を重視するようだ。Aviation Weekの推測通りならF-3はF-15同様の航空優勢戦闘機となるが、わずか42機のF-35はF-4とF-2の役目もこなせるのか。
  12. この場合のF-35は空対空戦に加え戦闘攻撃機の機能も果たす。日本が求めるのは高速ステルス戦闘機であり、F-35やF-15改修型を補完し、中国の高性能機材へ一対一で対決できる機材だ。

中国問題

  1. なぜ日本が空対空能力を重視するかを理解するためには中国が琉球諸島へ脅威になっていることを知る必要がある。
  2. 冷戦時の日本は北方の守りを固めソ連からの防衛を重視していた。だが冷戦後の状況変化へ対応が遅れた日本はロシアと緊張緩和しても北方重点配備を続けていた。1990年代から2000年代にかけ自衛隊は存続意義の説明に苦慮し、平和維持活動や国際災害救難人道援助活動、さらにテロ対策や中東での民生整備事業に活路を見出すありさまだった。
  3. だが2010年に保守派が懸念していた通りに防衛省は新しい脅威対象を発見する。その年の防衛ガイドラインで中国の海洋進出の野望、接近阻止領域拒否の兵器体系と尖閣諸島占拠の可能性を取り上げた。
  4. 日本の懸念を理解するのは難しくない。
  1. 上図は日本の防空識別圏に侵入した中国航空機へのスクランブル回数を防衛省データでまとめたものだ。2008年に航空自衛隊のスクランブルで中国機は全体の13パーセントだったが、昨年実績では65パーセントに増加している。
  2. 中国の侵犯は年々増加し、今年4月から6月だけで航空自衛隊のスクランブル回数は200回近くと、前年同期の114回から大幅に増えている。
  3. 制空防衛任務が日常的になっている現状で高速長距離迎撃機が航空自衛隊で一番活躍する機材になっている。航空自衛隊の主任務は接近してくる中国機への対応になった。
  4. そこで那覇基地にF-15が40機ほど展開し、2010年の24機から大幅増で同基地は緊急配備部隊の本拠地になったが、基地としては完全とはいいがたく、民間空港と同居して沖縄の空を守っている。政府も尖閣諸島に近い地点に基地開設を検討しているが、現行基地の負担は相当大きい。
  5. 那覇基地のF-15は今や一日一回のスクランブル出撃をしており、離陸後のF-15は255マイル先の尖閣諸島まで20分飛行する。
  6. 中国機は高速化しており、ロシアが北方に飛ばす低速の偵察機とは大違いだ。
  7. 中国が焦点を合わせる外縁島しょ部分には双発長距離戦闘機が日本に最適な存在となる。ただし攻撃能力も完全に除外されているわけではない。IHI製XF-5のような高出力双発エンジンでペイロードが増加すると、F-3を揚陸部隊支援として対地攻撃に充てることも可能だろう。

脅威は第五世代機

  1. 武装した航空機が対峙すると緊張も確実に上がる。航空自衛隊航空支援集団の元司令官が6月17日に中国戦闘機がF-15に敵対行動をとったとオンラインニュースで明らかにした。これに対し防衛省は中国機が「異常な行動」はとっていないと報道を否定している。
  2. だが翌6月18日に河野 克俊統合幕僚長から報道陣に「中国は海空で行動をエスカレートしているようだ」とのコメントが出ている。
  3. このままでは中国機と日本機の遭遇が危険な状態を作った2013年の再来は時間の問題だろう。緊張がここまで高くなると一回のパイロットの行為が国際危機につながりかねない。危機が発生した場合、日本は戦闘に勝ちたいと思うのは当然だ。
  4. そこで中期防衛整備計画(2018年まで)から日本の優先順位が見えてくる。「海上優位性ならびに空中優位性の確保を可能とする能力の整備」で日本政府は実現に全力を挙げている。
  5. その表れとして航空自衛隊はF-2のうち49機に三菱電機製のAAM-4B空対空ミサイルを、また91機に新型J/APG-2レーダーを導入た。改修でF-2はF-15をよりよく支援できるようになった。
  6. F-15も二回に分け性能改修を2004年から受けており、68機で完了している。ただしF-15では老朽化の兆候を示しており、部品落下が特に沖縄で増えている。
  7. F-2が2030年までに退役し、F-15は2040年代まで飛行するが、つなぎ機材のF-35が42機では大変なので第六世代のステルス制空戦闘機が数年のうちにも必要となる。
  8. 問題は日本が欲しい機材が今存在しないことだ。日本は今もF-22調達を希望しているが。
  9. 背景に中国のJ-20、J-31の共に双発ステルス戦闘機の存在があり、2020年代に実戦化すると見られる。中国報道では空母に搭載する案もある。
  10. 実際の性能、特にエンジン性能とは別に中国の利点は数だ。およそ8対1で劣勢な日本の武器は地理条件、練度と技術で強力な隣国に対抗しようとする。.
  11. 現時点の日本は第五世代技術の実証機による技術開発を目指しX-2高度技術実証機を作り、初飛行を2016年に済ませている。同機は縮小型で生産機材とはかけ離れた存在だがテストで得られる技術成果は次の国産機の基礎となるだろう。
  12. 防衛省からの情報要求は既存機材の項中、共同生産、純国産のいずれかの選択を目指す日本政府の既定方針の日程に合致し2018年に最終決定を下す。
  13. ボーイング、ロッキードあるいはヨーロッパ企業が極秘プロジェクトを隠しているのでなければ、Aviation Weekが伝えた予想性能諸元ではF-3が国産開発になる可能性が高い。ただF-2のように機体は高額となり期待通りの結果が得られないかもしれない。.
  14. なお、情報要求の回答締め切りは8月。■


F-22は南シナ海でHQ-9ミサイル防空網を突破できるのか



ここにきて中国の動向に関心が集まり、米中軍事衝突の想定での記事が増えています。観念的な内容が次第に兵装レベルに移ってきたのはそれだけ緊張がリアルであることの証拠でしょう。

Visit Warrior Can the F-22 Evade and Destroy Chinese HQ-9 Air Defenses - Now in the South China Sea?

DAVE MAJUMDAR
Wednesday at 10:59 PM

National Interest 誌はF-22戦闘機を南シナ海に投入すれば中国で最高性能を誇るHQ-9ミサイル防空網をかいくぐり勢力均衡が変わるとしている。

  1. 強力なHQ-9ミサイルを中国が南シナ海ウッディ島に持ち込んだことで緊張がさらに高くなっているが、ただちに開戦になる可能性は低い。だが武力衝突が発生すれば米国はHQ-9に対抗してロッキード・マーティンF-22ラプターを投入するだろう。
  2. HQ-9は極めて高性能な兵器でロシアのアルマズアンティS-300P(SA-10グラウラー)と米製MIM-104ペイトリオット(中国はイスラエルから入手済み)の長所を融合させたような装備だ。だが米製、あるいはロシア製の地対空ミサイル(SAM)にない特徴としてアクティブ電子スキャンアレイレーダーを搭載している。HQ-9発射装置一式で同時に6個の目標を最大120マイル射程、高度90千フィートまで狙える。さらに一部のHQ-9迎撃ミサイルでは最大有効射程が150マイルまで延長しているといわれる。同ミサイルには事実上の飛行禁止帯ができるほどの威力がある。
  1. 第五世代ステルス戦闘機F-22ラプターはHQ-9に対抗して米空軍が投入できる最高の機材だ。もともと制空戦闘機の役割を中心に考えてきたが、多様な任務をこなせるのは実証ずみだ。また制空任務にあわせ「ドアを破り」ノースロップ・グラマンB-2爆撃機に侵入経路を開く任務も想定している。イラクとシリア上空ではF-22の強力なセンサー性能が着目され、偵察任務と指揮統制任務もこなしている。
  2. 空軍のラプター遠征飛行隊がエルメンドーフ・リチャードソン共用基地にあり、第三飛行団がアラスカから展開できる。同飛行団の機体は装備アップグレードで最新の3.2A仕様になっている。つまり合成開口レーダーによる地図表示、位置認識能力に加えて小口径爆弾(SBD)の運用能力があり、戦闘識別能力が向上しており、Link-16によるデータ受け渡しで各機のデータを融合できる。.
  3. 現在配備中の機体にアップグレード5仕様のソフトウェアがついているか不明だが、同ソフトは2015年10月にリリース済みで、AIM-9Xサイドワインダー、AIM-120D AMRAAMおよび自動地上衝突回避システムがソフトウェアが先に搭載されていれば運用できる。
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  1. ラプターはインクリメント3.1アップグレードで位置把握性能が付与されており、S-300やS-400相手に強力な威力を発揮できる。合成開口レーダーと位置把握能力でラプターは高機動式SAMの位置を突き止め、スピードとステルスを組み合わせ比較的安全に攻撃を加えることが可能。マッハ1.8超の飛行速度をアフターバーナーを使わずに維持でき、同機のレーダー断面積はおはじき玉ほどになる。つまりHQ-9陣地に接近して250ポンドのSBDあるいは1,000ポンドのJDAM衛星誘導爆弾を敵に機体を長くさらすことなく投下できる。
  2. 中国はウッディ島にHQ-9を持ち込み各国空軍機の接近を困難にしているが、F-22が到着すれば米空軍は南シナ海上空を自由に飛行できる。

Dave Majumdar is the defense editor for the National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.