2017年3月28日火曜日

★★日英共同開発戦闘機が実現する可能性



これはどうなるのでしょうか。米側と英国の違いも体験できるでしょうが、そんなに共同開発が簡単だとは思えません。ましてや英国が資金面で大きな役割を果たすとは思えません。さらに両国の置かれた作戦環境、仮想敵が違います。とはいえ、今年中に何らかの展開がありそうですね。引き続き注視していきましょう。

Aviation Week & Space Technology

Japan-UK Fighter Project Sign Of Closer Defense Partnership

Tokyo and London explore building a combat aircraft together
日英戦闘機共同開発は2国間防衛協力の新しい方向性を示す

Mar 24, 2017 Bradley Perrett and Tony Osborne | Aviation Week & Space Technology

日英共同開発戦闘機が生まれる日がくるのか
  • TMHI製F-2は20230年代に後継機が必要となる。
  • ユーロファイター・タイフーンのRAF退役は2040年以前。
  • 日本側は次期戦闘機に有人案を想定。
  • 英国は無人機を重視しつつ、有人機版にも道を残す。

  1. 英国は日本と戦闘機共同開発をめざし、2030年代の供用開始を狙う。この驚くべき動きは両国が防衛技術で密接になっているあらわれだ。
  2. 日英共同開発戦闘機が実現しなくてもBAEシステムズ三菱重工業 (MHI) の進める国産戦闘機開発に参画したいと考えている。共同開発となれば日本は費用分担の相手先として英国に期待するはずで、単なる技術助言の役割では終わらない。
  3. そうなるとフランスが問題となる。英国との共同開発を一番強く求めていたのはフランスだ。
  4. 日英両国はそれぞれのプロジェクトで現状の情報を交換することから始める。日本の将来型戦闘機と英国の進める将来戦闘航空機システム(FCAS)が対象。共同開発の可能性を模索し、両国は相互に助言すると日本防衛省は述べ、まず技術内容を見せ合うようだ。
  5. 日本にとって英国は米国に次ぐ防衛技術パートナーになってきた。2012年に両国は2国間協力強化で合意し、2014年に日本は武器輸出に道を開いた。この決定で日本企業も海外提携先と共同開発や生産が可能となった。
  6. 2016年両国政府は日本製シーカーを英国が進めているMBDA製メテオ空対空ミサイルに搭載する検討に入ると発表。
  7. 防衛省からは共同開発戦闘機の供用開始時期で何も発言がないが、開発日程はそんなに遠い先の話ではないようだ。日本は次期戦闘機の運用開始をMHI製F-2の後継機として次期戦闘機の運用開始を2030年代に想定している。ユーロファイター・タイフーンは英空軍を2040年以前に去ることになりそうで、後継機を事前に準備する必要がある。
2016年11月、F-2とRAFが日本に配備したタイフーンが共同訓練を行った。Credit: Crown Copyright
  1. 両国はそれぞれの戦闘機要求をまず理解した上で、今年末までに共同開発すべきか決めると日経が伝えている。
  2. 2国間の相違点は有人機にすべきかだ。日本が進めてきた将来型戦闘機研究は最新版26DMUまですべて有人機だ。日本の防衛産業技術陣は空対空戦は複雑過ぎコンピュータに任せられないと考えている。これに対しFCASは無人機想定だ。
  3. 日本は縮小版実証機を有人機MHI製X-2として飛行させているが、英国は無人機BAEタラニスで技術評価中だ。さらに英仏両国は技術実証機二機で無人戦闘航空機の実証を2025年までに実施する合意済みだ。
  4. とは言え英国防省はFCASが有人機になる場合もあると発言。
  5. 日本側は大型機を想定している。設計では航続距離、飛行時間にくわえ装備搭載量を操縦性より重視し、スタンドオフで大型高性能ミサイルを使用する想定だ。このコンセプトはRAF退役済みトーネードF3に似る。
  6. 将来型戦闘機はF-3の呼称で運用されMHIが生産する。日本は平成30年度末までに国産開発を決定するはずだ。英国が同時期に態度を決めるか不明だ。決定から数年後に実証機が飛び、供用開始は2030年代中頃だろう。
日本の将来型戦闘機の概念設計から意外に大きな機体だと判る。ここに示したDMU25のあとに最新型DMU26がある。Credit: Colin Throm/AW&ST
  1. 日英共同研究の中心がステルス技術だと日テレNEWSが伝えており、同技術が戦闘機設計で優先順位を与えられるとするが、日本開発の直近の戦闘機F-2ではロッキード・マーティンが相当の支援をしている。
  2. 英国のステルス技術は米国協力のもとで開発され、第三国と共有は許されないが、その他分野は独自開発で日本にも提供可能だ。日本からすれば英国は技術提供で米国より寛大と感じるかもしれない。
  3. IHIが高性能33千ポンド推力エンジンの実証機を作成中で将来型戦闘機への搭載が期待される。英国にはエンジン大手ロールズロイスがあり、日本製エンジンは採用しないだろうが、二国共同開発エンジンが必要となる。ただし日本側からすればこれまでの設計を捨てたくないだろう。むしろ新開発技術を共同開発エンジンに反映するのではないか。さらに航空自衛隊はロールズロイスの関与があれば心強く思うはずだ。
  4. 英国の視点からすれば本案件でBAEシステムズには共同開発が実現しなくても戦闘航空機技術の維持発展が期待できる。これこそ同社が狙っていた目標であり、英国にタイフーン後の戦闘機事業がないのが現状だ。
  5. BAEは今もエアバスとレオナルドの協力の下タイフーンを製造中で、ロッキード・マーティンF-35事業でも開発段階から製造面で大きな役割を果たしている。タラニスで経験を積んだ同社技術陣は英仏技術実証機の製造を進めるが全面的な開発や製造が実現する保証はない。
  6. 1月に123百万ポンド(150百万ドル)でトルコ政府は英政府と合意し、BAEがトルコの進めるTF-X戦闘機開発を支援することになった。トルコはBAEの知見や施設を利用し、BAEは戦闘機開発の分野にとどまることになる。
  7. 日本との協力が同じ形になってもトルコ案件から数年遅れることになり、BAEには技術陣をうまく配置できる利点が生まれる。英国としてもトルコあるいは日本事業に開発生産面から協力国として参加できる。
  8. だが日本は英国の資金も期待しているはずだ。両国とフランスはほぼ同じ国防予算規模が日本も共同開発相手先がほしいはずだ。その点で検討が始まればフランスが英国の協力国から外れる可能性が生まれる。
  9. その他日英防衛協力の進展を示すものとして英国防省は3月15日、部隊展開時の物資役務の相互提供に両国が合意したと発表。またRAFタイフーン飛行隊は11月に日本へ移動し、航空自衛隊と初の共同訓練を国内で展開した。英戦闘機の日本配備も数十年ぶりとなった。■


2017年3月27日月曜日

★中国が台湾侵攻に動く日、侵攻を食い止める方法はあるのか

朝鮮半島やシナ海、台湾と本当にこの地区は面倒な事態が多いですね。と言って目をつぶれば解決するわけではないので、現実に直面して物事を考えていく必要があります。台湾の場合は有効な防衛体制、国民の総意による中国拒否がカギですね。日本としてもゆくゆくは支援を提供する日が来るのでは。

The National Interest

How China Would Invade Taiwan (And How to Stop It)


March 25, 2017

  1. 中華人民共和国の各種筋を総合すると台湾の民主制度に残された時間がなくなってきたようだ。習近平の言葉を借りれば「忍耐の限界」となっており台湾侵攻が2020年代早々になる可能性が出てきた。圧倒的な量の揚陸作戦を電撃戦で実施するだろう。実施は中国共産党(CCP)創立100周年の2021年7月以前の可能性が高い。
  2. と言うのは簡単だが、実際に中国が台湾を乱暴に侵攻して自らリスクを引き上げることないはずだ。習近平はじめ中国最高指導部が台湾海峡をはさみ神経戦を強化する可能性のほうが高い。その際、虚偽情報他で台湾防衛に対する米国の信認を貶めながら台湾の自信と意思力を低下させ、破壊活動を展開するだろう。
  3. 習近平は時間をかけ台湾政府が圧力に耐えきれず崩壊するのを待ち、高い代償なしで台湾を手に入れようとするだろう。同時に中国軍は「神聖な」任務の遂行にむけ作戦立案と準備を進める。中国に今より優勢な状況が生まれた時が侵攻作戦実施が有望な選択肢になる時だ。
脅威の評価
  1. 台湾海峡をはさみ政治安全保障環境が厳しさを増す中、人民解放軍(PLA)の能力、長所・短所を正確に評価することがますます必要だ。
  2. PLAの強さのほうが耳目に入りやすい。中国軍事力は報道で取り上げられることが多い。疑う余地なく中国の弾道ミサイル、サイバー戦能力や宇宙対抗兵器で中国軍事力を評価せざるを得ない。だがもっと危険なのは諜報活動であり外交政策に影響を与えている。  
  3. それだけではない。海軍大学校の著名な教官アンドリュー・エリクソンは近著で中国艦隊が驚くべきペースで拡大しているものの、台湾侵攻支援はできないと指摘している。海軍に輸送能力が不足しており、防空能力も同様だ。にもかかわらず今の状況のままが続くはずはなく将来は変化しているはずだ。
  4. デニス・ブラスコはCCPの地上軍は海軍同様に侵攻作戦の準備体制は出来ていないと指摘。ヘリコプター、落下傘部隊、特殊作戦部隊、揚陸用機械化師団、海兵隊の拡充が必要という。さらにPLAは下士官階層でも拡充が必要で訓練も改善して現場指揮官とし、権限移譲もすべきだという。すでにこの方向で作業は始まっており、今後10年程度で成果が現れるだろう。
台湾は侵攻作戦にどう対抗するか:
  1. では台湾軍の防衛策はどうなっているのか。また米国はどう支援するのか。
  2. 台湾は全志願制の軍構成への転換の最終段階にある。プロ兵士で構成したエリート部隊の整備は台湾にとってよいことで利点となる。中国の兵員は短期徴兵で構成されているのが普通だ。
  3. 最新のRANDコーポレーション報告書によれば台湾は全志願制部隊をエリート予備役部隊で補強し、中国の侵攻作戦を電子、空、海の各分野で食い止める能力を強化できると指摘。台湾国防軍は新たな訓練機会の恩恵も期待できる。米軍との共同訓練や人道救援訓練は台湾に良い刺激となる。
  4. 近代戦は頭脳戦の様相を強めており、その実施には訓練の進化が必要だ。台湾の目指す防衛目標にPLAによる電撃戦のショックに備えることがある。このため高い意識を持った人員で組織を構成し、訓練し必要な装備を与え敵侵攻に対応し強い抵抗を示すことが必要となる。     
  5. 中国と規模ではかなわないので、防衛側は潜在力をすべて活用して効果を生むべく各方面で強化が必要だ。台湾が想定する全方位防衛策では全国規模の動員、体力面で対応可能な男女全員の動員で対侵攻作戦を支援するとしている。
  6. ロンドン・キングス・カレッジのローレン・ディッキーは台湾国防省(MND)は一貫して中国侵攻を撃退する能力を引き上げようと努力中と指摘する。MNDは毎年恒例の軍事演習を全国・地方両レベルで展開し、防衛作戦内容を点検して敵侵攻に備えている。
  7. 中国侵攻に先立ち台湾には四週間の余裕があるとみられる。中国が戦略的な欺瞞作戦に長じているため、これで安閑とできない。ただしPLAが想定する大規模揚陸作戦では攻撃の意図がまず表に出てくるはずだ。
  8. 兆候には部隊移動、予備役呼集、物資集積、軍事演習、報道内容があり、さらに外交上の発言や台湾を対象にした国内妨害工作があろう。中でも要注意なのが海軍および民間船舶の大量徴用が中国南東部で広く行われることだ。   
  9. こうした動きが出た場合、台湾総統は内閣顧問や準軍組織トップと対応策を協議し、レーダー、衛星、データ収集施設からの情報を重視し中国国内の諜報員からの情報も使うはずだ。まず出てくる選択肢は即応体制引き上げと敵攻撃撃退の体制づくりだろう。
  10. 台湾海峡での機雷敷設は短時間で完了するが、沿岸部の防御強化はすぐには出来ないし、港湾や空港も同様だ。橋梁や発電所など国内重要拠点への人員配置も時間がかかるし、戦闘地区になりそうな場所からの人員疎開も同様だ。ここまで完了するには莫大な人員が必要で予備役を再呼集し契約企業も動員するだろう。このため台湾は軍に2百50万人を動員し、民間防衛従事者百万人を数日以内に集める体制を維持している。
  11. 緊急時動員の実証は毎年恒例で台湾本島以外に澎湖や金門、馬祖の島しょ部でも実施している。これにより一般市民も迅速に部隊要員として緊急配備できる。
  12. 台湾の全面的国防動員案では軍事力の動員だけではない。総統府と配下の各省、内務省、経済省他も民間防衛による本土防衛で重要な役割を果たす想定だ。
今後の展望  
  1. 台湾政府、軍部は一般に知られる以上にたくましい。だが自国だけで実施可能な範囲にも限界がある。ペンタゴンが台湾救援で重要で台湾の継戦能力維持に不可欠だ。米支援がある前提で台湾は防衛支出を展開し、中国の侵攻を食い止める期待が生まれる。
  2. 上記RAND報告書では共同作業部会の発足を提言し、米側は国防次官補クラスをトップにすべきという。台湾軍も米国流の新しい軍事教育や技術訓練の恩恵を期待できる。米教官により台湾の全志願制への移行が円滑に進み、予備役部隊の戦略的な活用にも道が開くだろう。     
  3. 台湾軍へ武器売却を通常の形で確実に提供する必要があるが、不幸にもブッシュ、オバマ両政権はこれを拒否してきた。台湾の視点では米製兵装の作戦能力や戦術効果は疑う余地がない。トランプ政権は日本や韓国に提供するのと同様の実戦能力を台湾に与えるべきで、ステルス戦闘機、ミサイル防衛部隊や駆逐艦が想定される。
  4. さらに米企業も米政府から制約されず自由に動くべきで、台湾の進める国産潜水艦建造へのアクセスを模索すべきだ。ただ火力より重要なのが戦意の維持や向上で人員募集や定着率が高ければ台湾の決意と目的意識を中国に強く示せる。          
  5. 台湾軍は強固な防衛作戦を構想し、プロ意識の高い部隊を育成してきた。だが台湾が侵攻を受ける可能性は増えている。中国の攻撃能力に呼応できる体制の維持は米国が対アジア政策を大幅に変更しない限りきわめて難しいだろう。
  6. 今後を展望すればトランプ政権は米台関係をさらに前進させる新戦略案を求めるべきだ。台湾に十分な自国防衛能力があれば世界最大の火薬庫は点火を免れる。中国を無視するだけでは問題は悪化するだけだ。■  
Ian Easton is a research fellow at the Project 2049 (where this first appeared) Institute and author of the forthcoming book, The Chinese Invasion Threat: Taiwan's Defense and American Strategy in Asia.


2017年3月26日日曜日

OPLAN 5015はそのまま実施できないのではないか


伝えられる作戦内容が実は異なり、情勢の変化を反映した全く違う内容かもしれません。米韓演習は3月から4月にかけてですのでこの間に空爆作戦中心の展開が始まってもおかしくありません。作戦実施の場合は長期戦も覚悟する必要があり、斬首作戦が本当に実施できるかわかりませんが後継政権の樹立もめどが立たないと困ります。こうしてみると金正男の殺害が痛いですね。実は OPLAN 5015 そのものが欺瞞策かもしれません。核実験、ICBM発射の兆候が出た段階が危険です。

The National Interest

OPLAN 5015: The Secret Plan for Destroying North Korea (and Start World War III?)


March 11, 2017

北朝鮮の予測不可能な指導者金正恩には周辺国への戦闘開始で選択肢が多数ある。特殊部隊、サイバー、大量破壊兵器とあるが、世界が自分の思い通りにならないと悟れば何をするかわからない。
ただ金正恩が生きて結果を見られるかは別の話だ。
  1. 米韓特殊部隊により抹殺されるか、バンカーバスター爆弾で生き埋めになるかもしれない。スマート爆弾で指揮命令所や核施設が破壊されるかもしれない。北朝鮮は指導者を精密攻撃で斬首され国家指導力を失う。
  2. 米国には次の朝鮮戦争を戦う計画があるようだ。北朝鮮が弾道ミサイル実験を繰り返す中、米韓軍は北朝鮮核施設破壊をめざす演習を展開中で、戦争計画は現実味を帯びてきた。
  3. 米作戦案5015(OPLAN 0515)の詳細は極秘扱いだ。部分的に日韓の報道機関が明らかにしているが、2015年には北朝鮮を標的にした新しい戦闘方法が浮上しており、好戦的な北朝鮮の有する膨大な通常兵器核兵器にどう対応するかというおなじみの課題に真正面から取り組んでいる。
  4. これまで次回の朝鮮戦争は初回同様に通常戦が大規模に展開し、米韓が敵を食い止めた後、北朝鮮に進軍すると見られていた。だがOPLAN 5015は21世紀型の限定戦といわれ、特殊部隊、精密兵器を投入するらしい。2015年に朝日新聞がゲリラ戦に近く特殊部隊が暗殺と中核施設を攻撃すると報道した。従来の戦闘案をまとめつつ、死傷者を最低にし北朝鮮政権の崩壊の可能性に備えるのが目標だ。
  5. なかでも重要なのは OPLAN 5015 が北朝鮮への先制攻撃を想定していることだ。
  6. 「新作戦案は安全保障環境の変化を反映し今までより迅速かつ高機動の軍事対応を目指し、先制攻撃構想を取り入れた」とGlobalsecurity.org がまとめている。北朝鮮の挑発が高まる中、エスカレーションの危機は増している。
  7. その現れが米韓合同演習フォールイーグル2017で300千名超が2ヶ月にわたり実弾演習とコンピュータ・シミュレーションに参加している。ワシントン・ポストは韓国聯合通信を引用し「演習では新しい『4D』作戦構想で先制攻撃により北朝鮮核ミサイル施設の探知、撹乱、破壊をおこなう」と伝えている。
  8. 問題は OPLAN 5015 にどこまで信憑性があるのかだ。デイヴィッド・マックスウェルは退役米陸軍特殊部隊大佐で現在はジョージタウンの安全保障研究所で教鞭をとり、OPLAN 5015 を文字通り受け止めることに警鐘を鳴らしている。
  9. 軍事作戦立案者は最悪の事態を想定するものだが同時に国家指導部に複数の選択肢も提示して敵の行動による最悪の事態を念頭に置く。緊急事態では選択肢がA,B,Cと複数ある中で実施されるのが実際には敵評価をもとにA-C案から生まれたD案になるのが普通だ。
  10. Globalsecurity.org も以下述べている。
  11. 伝えられる新作戦案では全面戦争でなく限定戦とのことだが、先制攻撃は全面開戦にエスカレートする可能性はある。開戦となれば南北朝鮮の軍の統制がなくなり、両軍は地上戦に釘付けとなる一方で米軍が海空から支援すると専門家が見る。これに対し南朝鮮は作戦案の再考を求めている。
  12. 北朝鮮の攻撃で被害を被りそうな国では政治の要素が入る。南朝鮮議会は2015年に政府がOPLAN 5015の詳細を明らかにするのを躊躇したことに怒りを爆発させた。
  13. 「新作戦案は全面戦争ではなく限定戦を想定していると言うが、先制攻撃に踏み切れば不必要かつ危険なエスカレーションにつながり、小規模衝突が大規模戦になってしまう」と Korea Times 社説は述べている。
  14. 韓国軍が中心的役割を果たせるのか見通せないが、開戦となれば韓国に統帥権がないことは周知の事実だ。となれば韓国軍は地上戦に投入され、米軍が海空から支援を行うことになるので、構想は再検討の必要があろう。
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.


北朝鮮空爆作戦はパンドラの箱を空けることになるのか



The National Interest


Want to Open the Ultimate Pandora's Box? Bomb North Korea


March 24, 2017


レックス・ティラーソン国務長官は対北朝鮮軍事行動は選択肢の一つと公言し波風を立てた。長官はバラク・オバマ前大統領の「戦略的忍耐」の段階は終わったと端的に述べている。長官は軍事行動を検討中と発言していないが爆撃は選択肢だ。米軍は北朝鮮に大きく航空優勢を保っており、海軍も投入可能だが、地上部隊投入は大きなリスクを伴う。
北朝鮮への制裁攻撃措置はここ数年何度となく想定されてきた。北朝鮮が韓国、日本、米国を挑発してきたためだ。軍事行動を招いても仕方ない挑発もあった。1968年には情報収集艦USSプエブロを拿捕し乗組員をほぼ一年解放しなかった。1998年には日本上空を飛行したミサイルを発射した。2010年には韓国コルベット艦を撃沈し、韓国領の島を砲撃し50名を殺した。それでも毎回、米韓日は行動を留保してきた。自制には理由があり、ドナルド・トランプ大統領も行動を制約される可能性がある。
1. ソウルは北朝鮮攻撃にきわめて脆弱
これがおそらく最大の軍事作戦の足かせだ。韓国は北朝鮮の報復攻撃の標的になる。イスラエルがアラブ諸国を攻撃しても報復攻撃を心配しなくてもいいのと大違いだ。ソウル含む京畿道は軍事境界線に近く韓国人口の55%を占め、経済政治の中心地だ。これだけの大都市圏は防衛もままならず逆に容易な標的であり、平壌による反撃は避けられない。
2. トランプは韓国、日本から事前承認を得る必要がある

各国は報復攻撃を受けるはずだ。かりにどちらかの国が承認せず米国が攻撃を強行すれば同盟関係が壊れる。右寄りの安倍政権の日本がリスクを受容するとしても、韓国は今の状態では反応しにくい。韓国左翼勢力は空爆を認めない可能性が濃厚で5月大統領選で勝利をつかむのは確実といわれる。
3. 空爆は短期「外科手術」で終わらず数日あるいは数週間続く可能性がある
そうなると限定行動ではなく本格的戦闘の様相を呈してくるはずだ。北朝鮮は数十年かけて地下トンネル網を構築し軍事力を温存する体制になっているのは朝鮮戦争で米空爆から大損害を経験したためだ。また道路移動式発射装置や潜水艦も重点的に整備している。仮に北朝鮮の核施設ミサイル施設を全部攻撃しようとすると空爆作戦は大規模かつ長期化する。北朝鮮は残る装備を韓国と日本の攻撃に投入するだろう。作戦が長期化すれば北朝鮮の反撃の可能性も高くなる。
4. 北朝鮮が超えてはいけない一線は
朝鮮人民軍(KPA)も独自の交戦計画を持っているはずで攻撃を受けた場合の対応も想定しているだろう。北朝鮮にとっては核・ミサイルが指導部の次に重要なはずで、KPAが黙って攻撃を甘受したままのはずがない。また米航空戦が長期化すれば、全面戦争の様相になるはずで限定戦から離れていく。北朝鮮エリート層は事態打開を求め、限られた国家予算を自由に使えるKPAに国家体制の保護者としての期待が高まり、軍部は強力な反撃を企てるはずだ。そうなるとこれも戦闘規模の拡大につながる要素になる。
5. 北朝鮮が人間の盾作戦をとるのは必至
米航空作戦が短期間で終わらないと、北朝鮮は国内標的に国民を集結させるだろう。北朝鮮上層部は1990年代の飢餓で国民百万から二百万を平気に餓死させており国民の犠牲になんら良心の呵責はない。
6. 米空爆作戦で最重要な対中関係はぎくしゃくし、数年か数十年修復不可能となる
中国が反対したままならば、米国が事前通告して作戦を実施する可能性は少ない。中国は北朝鮮を嫌悪しても崩壊は望まず、米国がアジアで今以上の覇権を手に入れるのを恐れている。米国は北朝鮮問題で中国の支援を必要としながら、対中関係を危険に晒すリスクは望まず、北朝鮮問題を理由に貿易投資、中国のドル保有高、東・南シナ海、気候変動その他を犠牲にしたくないはずだ。
代償や制約があって空爆作戦が実施できないわけではない。確かにハードルは高いが米国が空爆作戦を検討しているのは北朝鮮がここまで危険になっているのを示している。■
Robert Kelly is an associate professor of international relations in the Department of Political Science at Pusan National University. More of his writing can be found at his website. He tweets at @Robert_E_Kelly.


2017年3月25日土曜日

★米空軍がF-15C/D型の早期退役を検討中



予算がないからと機種を整理していけば、その先はどうなるかわかっていても背に腹は変えられない事情が米空軍にあるのでしょうか。F-15はまだまだ供用に耐える機種であり、「空飛ぶミサイルトラック」に改装する構想もあるのに行く末に黄色信号ですね。もっともA-10の事例のように議会が強硬な反対論を展開することもあり(マクサリー議員は退役空軍大佐でA-10パイロットのようです)、空軍もわざと議論を巻き起こしてちゃっかり予算を確保したいと考えているのではないでしょうか。本家の米空軍がこんな状態では先が心配ですね。航空自衛隊は結局最後までイーグルを運用するのではないかと思いますが。

Are the F-15 Eagle's days numbered? Top generals say maybe

By: Stephen Losey, March 22, 2017 (Photo Credit: Senior Airman John Hughel/Air Force)
米空軍はF-15C型およびD型を退役させ任務をF-16に引き継がせる検討に入っている。
  1. 下院軍事委員会即応体制小委員会の聴聞会が今週水曜日に開かれ、委員長ジョー・ウィルソン議員(共、サウスカロライナ)がスコット・ライス中将(州軍航空隊総監)にF-15C型D型計236機を退役させ予算節約する案を質した。ライス中将は検討中と認めた。
  2. 同聴聞会でマーサ・マクサリー議員(共、アリゾナ)から同案は初めて聞いたとして、スコット・ウェスト少将(空軍運用部長兼参謀次長)に同戦闘機退役案が既定方針なのかを問いただした。
  3. ウェスト少将は正式決定ではないとしながら限られた予算を最大限に活用する案を空軍が検討中と認め、ミッション実現のため機種数を最小限にしたいと発言。ウェスト、ライスともにF-15の一部退役は「正式決定前」とした。なお、F-15Eストライクイーグルは検討対象ではない。
  4. ライス中将からはレーダー改修を行えばF-16でF-15の代わりは務まるとの発言があり、空軍は2019年度業務を計画中だが、F-15C型D型の退役方針は今年中は決まらないとライス中将は発言。そうなると同機退役は最短で2020年となる。
  5. だが空対空任務を主眼におくF-15C型D型を退役させ、空対地任務中心のF-16を使う案には疑問が寄せられた。F-15C型D型の就役開始は1979年でAIM-9サイドワインダーおよびAIM-120AMRAAM空対空ミサイルを最大8発搭載する。これに対してF-16は空対空ミサイルあるいは空対地ミサイルを最大6発搭載する。両機種がM-61A1多銃身20ミリ砲を装備するが、F-15では940発なのにF-16は500発だ。
  6. 「性能の違いは明らかだ」とウィルソン委員長は指摘。
  7. F-15イーグルの任務をF-16に任せて航空優勢確保で支障が生まれないのかを尋ねられライス中将は問題なしと答えている。「機種構成変更でリスクがないわけではないが、F-16に新能力を付与すれば性能面で十分対応できる。即応体制や本土防衛体制で変更が生じるが、対応は可能」と述べている。
  8. これに対してマクサリー議員はF-22登場までF-15Cが最優秀の空対空戦闘機であったと指摘。これに対しF-16は各種任務を低費用でこなせるが、レーダーを換装してもF-15Cと同等の空対空性能は実現しないと主張した。また現在でさえパイロット不足に悩む空軍で機種変更したら即応体制の維持が懸念されると表明した。「今でも即応体制に危うさがあり機種変更で再訓練をする間に危機が生まれれば短期でも即応体制が犠牲になる。戦闘機飛行隊が55個まで削減されている中、機種変更には慎重に望むべきだ」
  9. ウェスト少将は機種変更の際には一時的に「オフライン」状態が発生するが、中国やロシアへの優越性が減っているのも事実だとし、機種近代化は早く行ったほうが良いと述べた。
  10. 空軍報道官アン・ステファネックはその後F-15C型D型の退役案は決定事項ではないと述べ、これまでもA-10退役を複数年度で提案したものの同機はまだ運用中と指摘した。「将来の戦力構成は機会あるごとに検討しています。予算案に盛り込まないかぎり、案は案であり、検討にすぎません。選択肢の一つであり実行に移すわけではありません」■


2017年3月24日金曜日

SEAL作戦と電子製品持ち込み禁止措置の関係


これは恐ろしい事態です。今のところ保安措置の対象は一部便に限定ですが、場合によっては拡大するかもしれません。ラップトップが一切持ち込めなくなっては困る向きが多いのではないでしょうか。今後の進展は要注意ですね。


Yemen SEAL Raid Likely Led to New Restrictions for Electronics on Flights イエメンSEAL強襲作戦と電子製品持ち込み制限措置の関連

Mar 22 2017 - By Tom Demerly

ダアロエアラインズ159便爆発事故の損傷具合。ソマリア上空を飛行中で2016年2月に発生した。 (credit: GoobjoNews).


情報リークと報道内容からラップトップPC機内持ち込み禁止措置は1月28日のSEALイエメン強襲作戦が遠因と判明。

  1. 情報筋の話を総合すると米海軍SEAL強襲作戦が今年1月27日に実施されたことからラップトップ含む電子装備の機内持ち込み禁止が一部エアラインで実施されている。
  2. Daily Beastでジェナ・ウィンター、クライブ・アービング両名が匿名情報源のリークとして伝えている。その他報道機関も今回の措置と実施済み作戦の関連に気づいてきたようだ。
  3. 両記者は「強襲作戦で得た情報からアルカイダが小型電池の形の爆弾を開発に成功しラップトップやその他製品に入れて運び機体を破壊する可能性が指摘された」と書く。
  4. 両記者は情報源を明らかにしていない。情報機関が意図的に「リーク」記事を書かせ社会の反応を見ることはよくある。
CNNはソマリアの旅客機が「高性能ラップトップ爆弾により破壊され、X線検査をそのまま通過していた」と報じている。 (Somali Police Authority via CNN)

  1. 国土保全省は2015年10月31日のロシアのメトロジェット9268便がシナイ砂漠上空飛行中に爆弾で墜落させられたと発表している。同省によれば2016年2月2日にジブチに向かっていたダアロエアラインズD3159便が損傷を受けたのも今回の措置につながっているという。各事件がSEALによる2017年1月28日イエメン強襲作戦に発展し、さらに今回航空保安体制の強化につながっている。
  2. ロシアメトロジェットの場合はラップトップ爆弾が疑われており、ダアロ機事件では車椅子の乗客が機体を損傷した。犯人が爆弾を点火しているがこれもラップトップか、車椅子内部の可能性があり、右主翼の付け根部分で爆発した。犯人は主翼近くで爆発させれば機体構造を損傷できると考えたようだ。ダアロエアラインズのエアバスA321-111は墜落せず、ソマリアの出発空港アデンアデ国際空港に戻り緊急着陸を要請した。
  3. エジプトエア804便はパリからカイロを目指していたが、2016年5月19日に地中海上空で墜落し、乗員乗客66名が死亡した。事故報道から遺体から爆発物の痕跡が見つかったといわれる。
  4. 大手報道機関のCNNやBBCでは米強襲作戦と航空保安体制強化の関連は報じていない。一ヶ月ほど前にデイヴィッド・サンガーがニューヨーク・タイムズで「まだ成功とはいえないものの、今回押収した情報の価値は相当あり、コンピューターと携帯電話がほとんどだが今後解明が進む。また聞くところではまだ情報の価値の評価はできていないとのこと」と書いていた。この記事は2月2日付けのことだった。次第に出てきた報道と今回の航空保安体制強化から強襲作戦で得られた情報が今回の措置につながったと伺わせる。■

2017年3月23日木曜日

日米海軍協力は新次元へ、日・米物品役務相互提供協定ACSAで部品融通



U.S., Japanese Destroyers Conduct First-Of-Kind Parts Swaps During Interoperability Exercise 米日両国の駆逐艦で初の部品融通交換が2国間共同作戦訓練中に実現

March 17, 2017 12:17 PM

A Sailor assigned to the Arleigh Burke-class guided-missile destroyer USS Stethem (DDG 63), stands watch while the Arleigh Burke-class guided-missile destroyers USS Fitzgerald (DDG 62), left, and USS McCampbell (DDG 85) steam nearby during MultiSail 17. US Navy photo.

  1. 米海軍と海上自衛隊は相互運用の新しい段階に入った。部品交換により補給兵站の相互支援を証明した。
  2. 3月11日にアーレイ・バーク級駆逐艦USSステサム(DDG-63)はむらさめ級駆逐艦JDSいかづち(DD-107)と補修用部品を融通しあった。グアムで展開中の日米演習マルティセイル17の開催中のことであり米海軍報道部が発表した。部品交換は日・米物品役務相互提供協定ACSAの枠組み内で実施された。
  3. ACSAにより米軍は糧食、燃料、輸送手段、弾薬その他装備を海外国と交換できると海軍広報資料は説明。交換により「演習や実戦時に補給品入手の別手段が確立された」という。
  4. ステサムの補給科士官ニコラス・セゴヴィア中尉がいかづち艦上に赴き海自の前田貴明二尉と融通を行った。セゴヴィア中尉はによれば「ACSAによる部品入手は海上自衛隊との関係強化にもってこいの機会だった」という。
Lt. Nicolas Segovia, left, Supply Officer aboard the Arleigh Burke-class guided-missile destroyer Stethem (DDG 63), poses for a photo with Lt. Takaaki Maeda, supply officer assigned to JDS Ikazuchi (DD 107), following an Acquisition and Cross-Servicing Agreements (ACSA) parts transfer aboard the Japan Maritime Self-Defense Force ship. Using ACSA, the United States can exchange common types of support such as provisions, fuel, transportation, ammunition, or equipment with a foreign nation. US Navy photo.

  1. 「実戦となれば、ACSAによる補給品入手は両国にとってミッションを迅速に実施する有力な手段となる」とも語っている。
  2. 「それぞれの側で調整、協力しこの結果につながった。次の段階は支援を拡大し、対象を増やし、糧食の融通まで広げることです」
  3. ペンタゴンのウェブサイトを見ると物品融通は「戦時、合同演習、訓練、現地展開、緊急作戦、人道救難作戦、国連平和維持活動さらに想定外の緊急作戦」で実施し、通常は地域戦闘司令官により実施されるとする。
  4. 今回はそれぞれ横須賀を母港とする2艦の部品交換の実施で米太平洋軍が大きな役割を果たした。マルティセイル演習はグアムを中心に展開され、日米両国の共同作戦実施体制の強化をめざし、共同訓練と緊急時対応を図るのが目的で実施されたと海軍は説明している。■


2017年3月22日水曜日

★こうすれば日本帝国は戦勝国になれた(かもしれない)



日本人は戦争を天災と同様に理解する傾向があるので、一体あの戦争で何が間違っていたのかを真剣に考えるのは苦手です。責任を追求する相手を絞り込むより一億総懺悔で逃げてしまいました。また先達の非を追求するのは美しくないと考える傾向があるようです。一方で直ぐ付近にかつての日本帝国の如き体制を護持しようと無駄な努力をしている国があるわけで日本帝国が勝利を収める条件(わずかですが)を考えることは北朝鮮をどう崩壊させるかにもつながりそうですね。その意味で米海軍大ホームズ教授の見解を眺めてください。


The National Interest

The Crazy Way Japan's Military Could Have Beat America During World War II 第2次大戦で日本が米国に勝利するためにはここまでやっていなければ無理だった


February 15, 2017

  1. 日本帝国が対米戦で勝利を収める可能性はなかった。その理由が国家の決意と資源だ。怒りに動かされた米国人は完全勝利を指導部に迫り、ワシントンは国内産業を止めどもない軍需生産に振り向けた。ここまで物量で差がつくと日本は米国の経済規模の十分の一しかなく打つ手がなかったといえる。
  2. 質より量が物を言う。いかに精神力や武道をきわめても数の劣勢は覆せない。日本は真珠湾攻撃以降この苦悩を味合わされた。
  3. 結局日本は米海軍を太平洋戦域で撃滅できず、有利な条件をワシントンにぶつけることもできなかった。とはいえ第二次大戦で日本が勝利する可能性が皆無だったのではない。というと非常識に聞こえるだろうか。だが弱者が勝利をおさめることもある。カール・フォン・クラウゼウィッツが解説しているように歴史上は弱い立場の国が戦火を開くことはよくある。指導部が武力に訴える以外に手段がないと見れば、また状況が不利と理解すれば、いいかえれば今しか機会がないと見れば、行動に移るのだ。
  4. 偉大なるカールによれば戦勝を収めるには3つの方法がある。まず、敵軍を粉砕し、好きなように条件を申し渡すことがある。次に、敵が支払う代償を大きくすることがある。交戦国がどんな政治目的を掲げるかによりどれだけの資源をいつまで投入するかが決まってくる。敵に戦死者、装備損傷、国富支出をもっと増やさせれば代償を高くできる。戦闘を長引かせれば犠牲もそれだけ増えることになる。そして三番目が戦意をくじき、戦争に訴えても目的達成は無理と説得することだ。
  5. 絶望を感じている敵あるいは戦争の負担に尻込みする敵は与し易い敵で難局から脱するためならなんでもするはずだ。
  6. 軍事的に日本に勝利の可能性がないのなら、残る2つの方法があったはずだ。日本の指導部は資源を節約し、兵力の差をひろげないようにしていた。戦闘の犠牲をもっと引き上げられたはずで、米国の戦意をくじくため戦闘を長引かせられたはずだ。あるいは別に初期段階で米国の怒りが最高潮に達するのを回避できたはずだ。ハワイ攻撃に踏み切らなかったら日本は米国の戦意を高めず、敵に回すこともなかったのではないか。
  7. 結論を言えば、単一の戦略や一回の攻撃で米国を打倒するのは不可能だった。むしろ日本軍指導部は熟考し戦術で負けても戦略で勝てたはずだ。これが日本勝利の可能性をひきあげていたはずだ。
  8. そこで日本勝利の5つの方法をまとめてみた。以下は互いに排反する内容である。日本指導部が以下を守っていれば勝利は近づいていただろう。その場合、将来を見据えた指導力が必要だったはずだ。先見の明は天皇および軍指導部にひどく不足していた。日本の指導部が賢く行動できたのかは議論がわかれるところである。以上の注意点をもとに見ていこう。
戦局は1つずつ解決する
  1. 敵をむやみに増やさないことは最強の戦闘部隊でも必須だ。小国ながら大きな野心を持つ国が無分別に戦火を開くことは避けるべきだ。規律ある戦い方は日本には無縁だった。帝政ドイツを真似た統治形態で帝国陸軍と帝国海軍を最優先し、文民による監督はなかった。帝国陸軍はアジア大陸部に熱い視線を送り、満州から中国内陸部に変えて戦線を拡大してしまった。帝国海軍は海洋進出で資源を東南アジアに求めた。2つの動きがまったく同期しないまま1931年から1941年展開して日本は敵対勢力に包囲されてしまった。この流れが真珠湾につながった。360度脅威になれば事態は絶望的になる。日本は優先順位を定めるべきであった。その場合、1つずつ順番正しく行動すれば一部の目標を達成することが出来たかもしれない。
山本長官に耳を傾ける
  1. 山本五十六提督は日本が勝てるのは短期で決定的勝利を収めた場合のみで「眠れる巨人」米国を起こしてはいけない、日本の存亡が危うくなると繰り返し警告していた。また帝国海軍は半年なら暴れてみせると山本は請け負い、その間に米社会に講和の気分が生まれ、日本は太平洋で守備を固める構想だった。うまく行かなければどうなるか。米産業力は大量の兵器を製造し、1940年には両洋海軍力整備法が成立しており、続々と新しい装備が戦線に投入されるであろう。そうなれば戦局は日本に不利となる。要するに山本は軍幹部が敵を想定通りに動く筋書きづくりを戒めたのだ。山本は米国事情を少なからず知っており、米国が予想を簡単に裏切るはずと分かっていたのだ。
山本長官を無視する
  1. 山本提督が賢明な助言を戦略レベルで行っていれば、作戦実行レベルが怪しくなっていたはずだ。山本が考えた米軍の物量優位性への対抗策は敵軍の中心たる戦艦群を叩くことだった。それまで帝国海軍はずっと「迎撃殲滅作戦」で米太平洋艦隊が西方移動するにつれて威力を減じる作戦の想定だった。フィリピン救援に駆けつける米艦隊に、航空機、潜水艦で太平洋艦隊を弱体化しつつ、帝国海軍主力戦艦部隊が決戦を挑む構想だった。山本は真珠湾奇襲攻撃を海軍指導部に同意させた。だが真珠湾の戦艦群は米海軍の中心ではなかった。両洋艦隊の出現こそ中心であった。山本の作戦がうまくいけば米反抗作戦を1943年まで遅らせている間に日本はそれまでの狙い通り米側に負担増と作戦の先送りさらに忍耐力を奪っていたかもしれない。
資源を分散させず集中する
  1. 日本側には戦局拡大を防ぐ能力がなかったようだが、同様に作戦実施の範囲や戦闘地域も制御できなかった。1942年には帝国海軍機動部隊はインド洋まで進出して真珠湾同様に英東アジア艦隊をセイロン沖で撃破している。ミッドウェイ海戦では北方を牽制攻撃する必要があるとしアリューシャン諸島に上陸作戦を敢行した。こうして帝国防衛線が拡大する中、さらにソロモン諸島で第二戦線を形成し北米とオーストラリア間の輸送路を遮断しようと虚しい努力をしている。弱い立場の交戦国が二次的な戦線で一定の戦果を目指せば最重要戦線でリスクを抱えるのは当然だ。とくにただでさえ軍需物資が乏しい日本が自らリスクを高めてしまったのは戦略思考の規律が足りない事が原因だ。
無制限潜水艦戦を展開する:
  1. 不可解なことは米国海軍が戦艦群が火につつまれた中で採択を迫られた無制限潜水艦攻撃戦法を帝国海軍が採用しなかったことだ。1945年までに米潜水艦は日本本土を分断し、通商航路を遮断していた。日本の潜水艦は米海軍と同等の性能があったが、帝国海軍指導部は米潜水艦が西太平洋まで進出しているのを横目に自軍の潜水艦にも米輸送路を攻撃する命令を出してしかるべきだった。これ以上に意味があり費用対効果が高い選択はなかった。水中戦の軽視は第一級の作戦上の過ちといってよい。■
James Holmes is Professor of Strategy at the Naval War College and coauthor of Red Star over the Pacific, just out through the China Academy of Social Sciences. The views voiced here are his alone.
This appeared several years ago and is being reposted due to reader interest.