2019年1月19日土曜日

1月15日、嘉手納基地滑走路にF-15が滑走路両端から緊急着陸した

Two F-15s make emergency arrested landings within minutes of each other on Okinawa

沖縄でF-15の2機がわずか数分の差で滑走路に両側から緊急着陸した

An aerial view of Kadena Air Base, Okinawa, shows the north and south runways.
COURTESY OF GOOGLE EARTH

By CARLOS M. VAZQUEZ II AND AYA ICHIHASHI | STARS AND STRIPESPublished: January 17, 2019



全上の問題のためF-15の2機が同じ滑走路に反対方向から着陸する事態が発生した。

両機とも嘉手納基地に1月15日午前10:30ごろ安全に着陸したが、緊急車両が待機する中でのことだったと沖縄防衛局が発表。

両機は拘束フックによる着陸で、南滑走路両端に設置した鋼鉄索をテイルフックで捉えたと現地紙沖縄タイムズが伝えている。南滑走路は1月8日以降工事のため閉鎖中だ。

一機は降着装置に異常があり、もう一機は油圧で問題があったが両機とも安全に着陸したと17日に18航空団が発表した。

両機は格納庫まで牽引され移動したと沖縄タイムズは伝えている。滑走路は午前11:20に通常運用に戻った。

一時的にせよ滑走路が閉鎖されたためその他機材は普天間海兵隊航空基地に着陸地を変更した。

今回の事案の前日に三沢航空基地を離陸したF-16Dファイティングファルコンが機内密封度に問題があり青森県の地方空港に緊急着陸する事態が発生していた。■

コメント 軍用機と民間機で基準が違いますし、そもそも用途後外から設計が全く異なるのですが、今回の事案はその中でも極めて異例だったようです。しかし、これを材料に「軍用機の危険」を訴える勢力の狙いが「基地の全廃」「安保体制の廃止」にあることは明らかであり、地政学の理解ゼロ、国の安全に対する懸念ゼロである以上そのまま聞き流すことは到底できませんね。あまり騒ぎ立てる材料には到底なりえないと思いますが。むしろ緊急時対応に向けた日頃の訓練の成果が現れていますね。

2019年1月18日金曜日

日本海上空でロシア戦闘爆撃機Su-34フルバックが空中衝突 追加情報あり

Su-34 / Wikicommons
ロシア軍のSu-34戦闘爆撃機2機が18日、日本海上空で空中衝突し墜落した模様。情報が錯綜しています。
国営TASS通信は「うち一機の乗員は脱出した」との消息筋情報を伝えており、「両機の乗員の消息は不明」とのことです。
別の消息筋は両機の乗員が機外脱出し「パラシュートふたつを視認している」と伝えています。
これも国営のRIAノーボスチ通信は国防省の話として非武装のSu-34が空中で接触し、両機のパイロットは機外脱出したと伝えています。また国防省はAn-12が1機、Mi-8ヘリコプター2機が救難捜索に離陸したとも述べ、墜落地点はロシア沿海州に近い地点と思われます。
事実関係が明らかになればこの項を続けます。

その後TASSによれば、機外脱出した一名(副パイロット)の生存は確認、二番目三番目の遺体を回収、四番目の搭乗員の生死は不明です。

衝突当時はやはり訓練中で、発生場所は沿海州沖合35キロ地点の日本海。航空機、船舶に民間も加わり捜索はまだ継続しています。捜索にはTu-142哨戒機も加わっています。(18日現在)

事故発生は18日午前だったようです。




米政府機能閉鎖で心配な安全保障への影響について

The Shutdown Is Doing Lasting Damage to National Security 政府機能閉鎖で国家安全保障へ悪影響が長く残る

With every passing day, America’s defenses are weakening. 米国の防衛力は日一日と弱体化している
Transportation Security Administration officers check boarding passes and identification at Logan International Airport in Boston, Sunday, Dec. 23, 2018.

上最長記録となる米政府機関の閉鎖が続いたままだが、連邦政府職員の士気低下に加え米経済全般への影響も懸念される。安全保障も例外ではない。政府機能が再開しても以下4点で影響は長く残りそうだ。

まず短期での安全保障や国土防衛で弱点が生まれている。空港では検査官が不足し、FBIでは捜査官・分析官・事務官数千名が休暇扱いとなり、サイバーセキュリティ部門でも半数が自宅待機だ。捜査活動に身が入らず処理が遅れ解決できなくなっている。またサイバーセキュリティもせっかく組織ができたのに活動できない状態だ。さらに移民対策や国境警備を重視する政府の動きと裏腹に国土安全保障省(DHS)の警備担当者は重責にもかかわらず給与が支払われていない。

DHSは民間サイバーセキュリティ分野の調整に加え、連邦・地方の法執行機関の調整も役目だが今回の閉鎖で大きく打撃を受けている。政権、議会共にサイバーセキュリティの脅威を最大の優先事項と認識しているものの、業務が止まっているため敵意ある国家勢力が米国の個人情報や企業の知財を盗みかねない。本来はDHSがこうした企みを阻止するべきで民生部門と情報を共有しつつ各レベルの政府機関と調整する。さらに連邦、州を問わずDHSは選挙投票の安全を高める支援を期待されているが、今や投票結果が危険にさらされている。

だが長期的に見た国家安全保障への影響のほうが大きい。ひとつは連邦政府公務員だ。経験豊かな外交官が辞職している。政府は養成に何年もかかる人材をみすみす捨てているようなものだ。各機関は人材育成訓練を経て有能な職員により運営されている。だがそうした優秀な人材が民生部門へ流れつつある。

連邦政府職員も家族がある身であり、安定収入が必要なのは変わりない。公務があるとはいえ、給与のめどがつかない状況ではキャリア中ばの安全保障専門職が転職を目指さざるを得ないストレスを感じている。

二番目が未完成の業務が山積することだ。法律では公務員は閉鎖期間中は危急の事態が生命財産に見られる場合に限り職務につけることになっているが、情報分析や政策選択は中長期的な業務であり国家安全保障に不可欠な業務である。通常の場合でさえ、そうした公務員が日常業務に忙殺されがちであることを著者はよく知っている。今こそ通常時にまして長期的視野が欠如していると言わざるを得ない。

三番目に国家安全保障関連の法律実務家として著者は安全保障関連の政府職員が財務上苦しい状況だと外国勢力による脅迫やそそのかしに脆弱になることを熟知している。閉鎖が長引けば外国情報機関が財政上苦しい政府職員を悪用し米国の安全保障に悪影響を与えることは疑う余地がない。

四番目が最悪だ。米国は国内分裂で麻痺状態にある状況を世界に露呈している。これを見てロシアは米国弱体化を国内外でねらってくるだろう。クレムリンはドナルド・トランプを大統領として望んでいたようだが、ロシアでさえ当選すると見てなかった。

トランプ当選以上にクレムリンはアメリカの分裂を望んでいたのだ。そうすればロシア外交に反対できず、民主改革を求めることもなくなるためだ。トランプ政権の最初のニ年間で米国はロシアの戦略的な国益追求を心情的に支持する政策により同盟各国とのつながりを弱体化してしまった。今や政府機能閉鎖により国防体制が日毎に弱体化している。

大統領に言わせれば我が国の安全のため政府機能閉鎖が必要だという。だが現実は閉鎖こそが国家安全保障上の脅威であり、その傷は長く残りそうだ。■

  • Carrie Cordero is the Robert M. Gates senior fellow and general counsel at the Center for a New American Security. She is also an adjunct professor of law at Georgetown University Law Center, a CNN analyst, and a contributing editor of Lawfare. FULL BIO
  • Joshua A. Geltzer was the senior director for counterterrorism at the National Security Council from 2015 to 2017. FULL BIO

コメント: 今回は民主制度の弱点が露呈しており、民主政体と無縁のロシア、中国、北朝鮮、イランは敵失を意識し、小躍りしているのでしょうか。防衛体制ではただでさえ遅れることが多い装備品の開発、配備がさらに遅れることが懸念されますね。それ以外に防衛の第一線につく各人への影響も懸念材料です。なんとか事態が解決に向かう、邪悪な企みを現実に移す勢力が手を出してこないことを祈るばかりです。先日、米国から日本へ入国しようとした女性が拳銃を持ったままであることが露呈しましたが、これも保安体制の緩みの一例なのでしょうか

★★F-35がステルスにこだわらず「ビーストモード」になると....



A Must See: This Leaked Video Shows the F-35 in "Beast Mode" F-35の「ビーストモード」は必見だ

January 17, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35F-22StealthAir ForceMilitaryTechnology
近流出したビデオ映像でF-35の威力をうかがわせる場面が見られる。ロッキード・マーティンが「ビーストモード」と表現する仕様だ。.
.映像は2018年11月の撮影とされ、F-35一機が標的5個に空対地ミサイル数発を同時発射している。
Screen capture from new video of F-35 dropping multiple precision guided weapons in multi-target test with moving vehicles. (Photo: Via YouTube)---The Aviationist
試射の場所と誘導爆弾の種類は確認できないが、専門家がThe Aviationistに対して「NTTR(ネリス試験訓練場)です。ペイブウェイIVを5発投下しており、全弾がGEOT(目標に十分な効果を与える)です」と述べている。
場所では議論の余地があるが、映像中の爆弾はペイブウェイIVで間違いないようだ。ペイブウェイIVは英国製500ポンドレーザー誘導爆弾で英国防省は「高性能かつ高度精密兵器でRAF攻撃部隊に高い誘導精密攻撃能力を実現」と述べている。
ペイブウェイIVは2008年に登場し、英軍のほか、サウジアラビア軍も供用中と言われ、製造では米国内のサプライチェーンが密接に関与している。
Load carrying capability of F-35 in both low-observable “stealth” and “beast mode” for more permissive air defense environment. (Photo: Lockheed Martin)---The Aviationist
F-35では各種兵装で多様な戦術戦術シナリオに対応する。そのうち「ステルス」仕様ではAIM-120AMRAAMミサイル四発で空対空戦あるいはAIM-120とGBU-31JDAM合計4発で空対地ミッションに臨み、すべて機内に搭載する。その名の通り、敵の対空装備で完全に機能している前提だステルス性能を重視し開戦初日に対応する。
敵の防空能力が除去されれば、同機はビーストモード、つまりF-35に兵装を外部装着し、レーダー断面積にこだわらない。
ビーストモードではAIM-120を14発、小型AIM-9X2発で空対空戦に対応するか、GBU-31を6発とAIM-120/9Xを4発で対地攻撃に投入される。
この場合の兵装は機内機外に搭載し、今回はこの想定の運用テスト映像が流出したようだ。オランダ空軍のF-35がビーストモードになっているのが昨年目撃され、GBU-31が4発、AIM-9Xサイドワインダー2発が外部搭載されていた。ただしミサイル16発をフル搭載した姿はまだ目撃されていない。
F-35は技術課題や費用効果で困難な局面に直面してきたが、2019年の今年は強気に展開しそうだ。これが本当なのかは時が経てばわかる。■
Mark Episkopos is a frequent contributor toThe National Interest and serves as research assistant at the Center for the National Interest. Mark is also a PhD student in History at American University.

2019年1月17日木曜日

★次期中期防で導入する主要装備の単価を日本が発表

Aerospace Daily & Defense Report

Japan Details 2019-23 Defense Plan Costs

Jan 14, 2019Bradley Perrett | Aerospace Daily & Defense Report


E-2D: U.S. Navy
本が合計9機導入するノースロップ・グラマンE-2Dホークアイの平均価格は262億円(242百万ドル)で五カ年に渡り調達する。米海軍のE-2D調達では単価223百万ドルである。
 ボーイングKC-46Aペガサス空中給油機4機は平均249億円(229百万ドル)と防衛省資料でわかる。米空軍の2019会計年度単価は201百万ドルだ。
 川崎重工業のC-2輸送機は5機を単価249億円で調達する。
 ロッキード・マーティンF-35ライトニング45機は2019年4月より5カ年で調達予定でうち18機をF-35Bとする。防衛省発表資料では全部F-35Aとあり明らかに誤りであるが、総額116億ドルというのは両型の平均価格を乗じたものとわかる。
 その他では川崎重工業P-1哨戒機12機を221億ドルで、シコースキーSH-60K対潜ヘリを三菱重工業から13機計73億ドル、ボーイングCH-47JAチヌークを川崎重工が3機89億ドルで調達する。
 ボーイングF-15イーグル20機の改修は平均単価35億円の試算だ。
 艦艇建造では日本単価は驚くほど低い。改そうりゅう級ディーゼル潜水艦5隻の平均建造費は647億円であるのに対し、オーストラリアが2050年までに12隻建造を目指す攻撃型ディーゼル潜水艦は艦体が大きいとはいえ単価42オーストラリアドル(30億ドル 約3,200億円)でインフレを考慮してもあまりにも違いすぎる。

以上日本側による試算は中期防衛計画で2018年12月18日に公表され、財務省及び国会審議を経て正式に決まる。■

F-15Xとは何を目指す機体なのか

The F-15X Fighter: The Missile-Hauler The Air Force Needs For A Stand-Off Fight F-15Xはミサイル多数を搭載するスタンドオフ機として米空軍に必要な機材だ。

January 14, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-15XRussiaChinaMilitaryTechnologyWorldA2/ad
空軍が極秘裏にF-15C/D型の更新機材としてF-15Xを導入する案を検討中との報道は昨年7月にthe Driveが報じたが、実現すればF-22やF-35の機数不足を補うものになりそうだ。あるいは第5世代機の運航整備経費が高額のため節約作になるかも知れない。
イーグルは1970年代中頃に就役し、欧州の空でソ連機を駆逐することを目的としていた。その後、中東や中央アジアの空で活躍したが、米空軍に残る200余機ものイーグルの去就は老朽化も進む中で注目されていた。
F-35はスイスアーミーナイフのような存在でステルス性能と対地攻撃能力もあるがドッグファイト能力はF-15より近接戦では劣る。もしF-35をスタンドオフミサイル発射母機に使い、外部パイロンも使い16発を搭載するとステルス性能を失い、脆弱になる。
.F-15は疑いなく第4世代空対空戦闘機の頂上に君臨する存在だ。ボーイングはイーグル機内のエイビオニクスを改良した輸出仕様をイスラエル、サウジアラビア、カタールに輸出している。F-15X提案では空対空ミサイル22本を搭載し、F-15C/D型の後釜をねらう。F-15Xは「視程外」(BVR)戦で最良の機材となる可能性があり、中国が目指す接近阻止領域拒否戦略に対応可能だろう。アジアで戦火の幕が開けば、BVRが緒戦で重要要素となるのは間違いない。
F-15Xではパイロンを新設計しており、従来より大型の兵装を搭載可能としており、電子戦装備も一新し、電子スキャンレーダーアレイの他、新型多機能センサー「リージョンポッド」を搭載する。また時間あたり運行経費は27千ドルとラプターの35千ドルより低い。
新刊小説 Ghost Fleet では第5世代戦闘機に依存しすぎた米国が中国、ロシアと太平洋で開戦する。悪夢のようなシナリオだが米空軍は対英気済みのF-15を機体保管場から引っ張り出し、奇襲攻撃を生き延びたF-22やF-35の機数不足を補う手段とするのだ。
この想定で今から準備しておく必要がありそうだ。■

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2019年1月16日水曜日

KC-46の米空軍引き渡しは始まったが、完全運用はまだ先の話か。前途多難な同機は日本も導入予定

USAF Finally Accepts Its First KC-46A Tanker, But The Design Still Needs Years Worth Of Fixes

KC-46Aの米空軍引き渡しが始まったが手直し多数が残る

Boeing will begin delivering the aircraft soon, but persistent issues with the refueling system will limit their operational utility in the near-term. 給油系統で問題が散発しており当面は機能が制限されそうだ。

BY JOSEPH TREVITHICKJANUARY 10, 2019

USAF
空軍がボーイングKC-46Aペガサス初号機を受領し、トラブル続きの同機事業で大きな一歩となった。だが初期生産分には深刻な問題が残ったままだ。遠隔視認機能や給油用ブームの作動だ。このため機材は今後も完全作戦能力の獲得まで数年掛かりそうだ。
Foreign Policy が空軍とボーイングが取り交わした合意内容について最初に報道し、初号機の引き渡しを2019年1月10日と伝えた。Defense News はボーイングが未解決の欠陥で改修を行うこととし、空軍には初回バッチ52機全機で進展が見られなければ最高15億ドルの支払いを停止することで合意したと伝えている。
ボーイングによれば初号機に続き4機が22空中給油団のあるカンザス州マッコーネル空軍基地に最短で2019年2月に納入される。その後別の4機が97空輸航空団のあるオクラホマ州アルタス空軍基地に届けられる。
KC-46A納入ははじまったが、ボーイングがKC-X競作に勝ち契約を交付された2011年から遅延や問題発生が度々続いた。契約の背景に複雑な事情があった。2004年に空軍で調達トップを務めたボーイング幹部ダリーン・ドゥルヤンが給油機選定での汚職の廉で連邦刑務所での実刑判決を受けた。
本来ならKC-46Aの最初の18機を2017年末までに受領し、直後に初期作戦能力獲得の予定だった。2011年から2017年にかけ技術問題が連続し、日程は何度も延期されたまま2018年に突入し、空軍とボーイングの間の口喧嘩につながった。ボーイングが交付された契約は固定価格制のため同社は30億ドルを自社資金で投入しコスト超過分を補っている。
ボーイングは一号機を2018年12月中に納入できると見ていたが、ジェイムズ・マティス国防長官の辞任に伴い延期されたとの報道がある。長官代行パトリック・シャナハンは元ボーイング社役員であり同社関連の取引へ関与ができない。このためペンタゴンは空軍の企画の承認に時間がかかった。

Embedded video
.@USAirForce accepts Boeing's first #KC46 Pegasus next-gen tanker. Next stop for the world’s newest tanker: @22ARW #TeamMcConnell.
だが事態を簡単に収拾できなかった。前述のように同社は2017年中にまず18機を納入するはずだったが今のままでは今年いっぱいかけてもこの機数に達するか不明だ。
受領機材でも未解決問題が残り、空軍ボーイングともに解決には三ないし四年かかると見ている。まず機体後部の給油ブームの問題だ。
被給油機は給油機のブーム末端のブローブを自機の燃料受け入れ口に挿入する必要がある。被給油機が十分な推力を出さないと連結がうまくできず給油中に接続に失敗する危険が生まれる。
KC-46AのブームはDefense Newsによれば1,400ポンド推力に耐えるとある。これはA-10対地攻撃機含む米軍用機の最大許容値より高い。
どうも空軍は当初契約でこれより低い耐推力を指定しておらず今になってボーイングに設計変更を求めているようだ。このため新規要求内容だが空軍は同社へ追加予算を固定価格契約外で認めている。
このことはプローブ部分が被給油機を損傷する事案が発生したためボーイングにブーム関連のソフトウェア改修を自社費用で行わせてきた空軍としては大きな譲歩だ。両者はブーム再設計の経費積算で交渉中だが完了には二年かかると見ている。
もっと深刻な問題がペガサスが搭載する遠隔視認装置RVSである。KC-135やKC-10では操作員が機体後部席でブーム操作をするが、KC-46Aでは操縦席から遠隔操作で行い、映像は二次元、三次元画像を組合せて電子光学、熱映像の双方のカメラを後部から中継している。
「RVSの画像と実際の操作にわずかなずれがある」と空軍はDefense Newsに語っていた。画像に圧縮と湾曲効果が生まれているようだ。

BOEING
被給油機からKC-46Aを見るとこうなる

陰影他の要素によりブーム操作員は機体後部で何が起こっているのか把握できなくなり、ブーム操作を誤り結果としてブームに過剰な負担を与えたり、被給油機に損傷を与えるリスクが発生する。さらに操作員が目の疲労、頭痛、めまいを訴える危険を指摘する研究報告もあり、長期間操作で視力に問題が生まれ、操作員に問題が生まれないかと懸念する向きがある。
ボーイングは機体引き渡しに際しRVSの完全補修を約束し、ハードウェア、ソフトウェア両面での手直しを再度自社費用で行う。空軍は代替装備の実現は三年ないし四年かかると見ており、各機の改善作業がいつ終わるか見通せない。
その他にもボーイングが対応を迫られる改修課題があるが、解決がどこまで可能か不明だ。その一つにブームが被給油機に接触する事例があり、F-22ラプターやF-35共用打撃戦闘機のようなステルス機で深刻な問題だ。
.レーダー吸収剤を施した機体表面が損傷を受ければステルス性能に影響が出る。また非ステルス機たるKC-46がステルス機の有人、無人機をハイエンド戦で給油できるのかとの疑問も生まれている。

BOEING
KC-46Aがブームを完全に伸ばしている

こうした重要問題が未解決のまま、新型機がどこまで有効に機能するのか見通せない。ペガサス乗員の訓練で給油技術の熟達に一定の効果は期待できようが、訓練がどこまで実効性があるのか、特にブーム操作の効果がわからない。今後議論を呼びそうだ。
ペガサスは今年中に初期運行テスト評価 (IOT&E) を受け、空軍はその後初期作戦能力獲得を宣言する予定だ。だが上記の問題が残ったままでITO&Eの要求基準に合致できるか不明だ。このためKC-46運用には制限が付き、問題が完全に解決される数年先までは空軍が初期作戦能力獲得を宣言しようが状況は変わらない。
しかしなんといっても空軍が旧型給油機の退役を計画する中でペガサスの二次発注の行方が一番の問題で、既存機体で改修しながら何機の追加発注になるか、空軍が別の選択肢に向かうかが注目される。空軍はKC-46は180機程度の規模を維持し、今後の空軍力整備に役立てたいとしている。
そうなるとKC-46初号機納入には大きな意義があるものの、空軍とボーイングにとっては同型機が完全に能力を発揮するまでには課題が残ったままだとわかる。■
Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

コメント ボーイングはこうなるとは想定していなかったのでは。自社負担が30億ドルで後付改修で更にこれが増えて、しかも二次発注がなければ泣きっ面に蜂です。今のところ同機導入の表明は日本だけですから、同社も日本からどれだけ費用回収できるかを計算するはずで、日本には高い買い物になりそうな予感です。日本とイタリア向けのKC-767でも遠隔操作など同じ発想の装備ではないのでしょうか。KC-767でこんな問題の情報はないので装備自体が違うようですね。それにしても航空自衛隊にKC-767が4機のみとは明らかに不足ですが、日本向けKC-46の納入はずいぶん先になりそうです