2020年1月26日日曜日

米空軍の将来に必要な5項目をCSBAが提言、中露同時対応可能な空軍力の整備へ

今回の報告では中露同時対応を求めており、中国、ロシアが結託する可能性への対応を求めています。かなり空軍の現状の思考に近い内容のようです。新しい用語が出ているので原文併記で示しました。
 ただし、実現に必要な予算をどう工面するのでしょうか、国の借金を再定義しないとお金が足りません。21世紀になり財政理論の再構築が必要なのかもしれません。でないとシンクタンクの報告書は絵に描いた餅となり、我々の常識と異なる行動を展開している中国は冷笑するだけでしょう。

国、ロシアの脅威に対抗すべく、米空軍は戦力増強と近代化を図るべきで、例として高性能長距離無人機の追加や戦闘管理指揮統制 battle management, command and control (BMC2)によるマルチドメイン作戦運用の戦力増強策が必要とシンクタンクの戦略予算評価センター(CSBA)がまとめた。

「将来の空軍戦闘力に求められる優先5項目」の表題でCSBAは現状の難題を2035年までに解決する道筋を示した。難題とは機材老朽化と戦力減少が続いていること、機材の維持か近代化の選択を強いる予算環境だ。

今回の報告に先立つCSBA報告書がある。2018年国防戦略構想(NDS)が想定する大国相手の戦闘に今後の空軍力で勝利をおさめられるかを検討した議会への報告書だ。今回のCSBA提言では空軍に必要なのは有人機無人機の混合編成で二カ国相手でもほぼ同時に対応できる戦力を整備すべきとある。予算、人員双方で追加投入が必要とあるが、試算は示していない。

金額想定を質問された今回の報告書作成に加わったマーク・ガンジンガーは2018年版報告でDoD予算を年3%から5%増額続けると提言しており、空軍予算で言えば年間80億ドル増額に相当と解説している。ただし、その実現可能性は「薄い」と本人は語るものの、空軍装備の充実がないと21世紀型脅威に対応できないと強調している。

「厳しい選択が必要だ」とガンジンガーは空軍に現状の問題に目をつぶることは許されないと述べている。

過去のツケを払わされる

これまでの予算削減で空軍の戦闘機、爆撃機の維持が不可能になっているとし、陸軍、海軍より空軍に予算削減のしわ寄せが大きいとある。

「各軍おしなべて予算および規模が縮小されたが、空軍に1989年度から2001年度にかけ予算削減の大きな部分が押し付けられた」というのが今回の分析だ。空軍の31.6%削減に対し、海軍は28.2%、陸軍は29.2%だった。削減額には情報機関、特殊作戦、医療他空軍が管理できない支出項目は除いてあるという。

中でも空軍の調達予算で減額が目立つ。「調達の真水予算は同時期に52%減少している」という。

現在の調達予算は歴史的規模で低い。2020年予算要求では、F-35Aを48機調達するが、以前の二カ年は各56機で減少している。

調達予算が減少し、戦闘機部隊の即応体制は弱体化していると報告書は指摘する。爆撃機でも同様で「過去二十年にわたり爆撃機戦力の不足傾向が続いた原因に戦力削減や即応体制の低下、さらに近代化改修予算の不足がある」としている。

2018年の実態から作戦行動可能な空軍戦闘機は769機で、爆撃機は「最大で」58機とCSBAは試算。戦闘機総数は2,072機、爆撃は157機だ。(戦闘機の即応体制は2019年にF-35で改善が見られれば若干上昇の可能性がある)

CSBAによれば空軍で供用中の戦闘機の平均機齢は「前例のない水準の28年」に達しており、爆撃機は45年程度だ。国防総省で調達部門のトップのウィル・ローパーが嘆いているが、機材維持に経費と人員投下が増える原因となっている。

CSBAの提言5項目

そこでCSBAは次の5項目を提言している。

1. 中国、ロシアの同時侵攻を防止できる戦闘航空戦力 Combat Air Force (CAF)を実現する

検討では「片方の地域で米軍が忙殺される間に別の大国が侵攻を企てるリスク」が減らす空軍機材の「規模と能力」が必要と提言。とくに長距離侵攻攻撃能力により中国、ロシア他の侵略勢力に聖域を認めさせないことが必要とする。

2. 高性能ステルス機の調達数を増やし、その他CAF機材では残存性を高める

次世代ステルス機は将来の戦場で不可欠とガンジンガーは述べる。

CSBAによれば今後二十年にわたり空軍は「次世代ステルス性能機材の調達を加速化すべき」とし、B-21爆撃機、F-35A、「新型多任務侵攻形制空・侵攻型電子攻撃 Penetrating Counterair/Penetrating Electronic Attack (PCA/PEA)機材」、情報収集監視偵察機材を搭載した「侵攻型」無人機がその対象とする。同時に「F-22の残存性を維持しつつ次世代兵装として極超音速兵器ファミリーの調達」も進めるべきという。

3. 前方戦闘力の確保とともに小規模脅威地区で分散化を

「中国、ロシアによる米軍の前方航空基地への大規模ミサイル攻撃がCAF残存で最大の脅威とは限らない」(ガンジンガー)

今後の空軍機材は「共同作戦を支援し中国ないしロシアの既成事実の積み上げを否定する能力」が必要となり、同時に「ミサイル大量攻撃を受ける可能性が低い地域から出撃し攻撃数波を実施しつつ、前線基地は分散ネットワークで制空任務他を実施する」とある。

この実現には「大規模攻撃やミサイル攻撃を想定した航空基地防衛体制の強化」をDoDは実現すべきで、空軍も「航空基地防衛ミッションに装備人材を追加投入すべき」と提言している。

4. 各種ミッションに投入可能な無人機を開発し、多様な脅威に対応させる

「空軍のCAFではハイエンド戦闘作戦、本土防衛がともに能力不足で2018年国家防衛戦略の要求が同時に満たせない。能力不足は2030年代まで続きそうで、それまでにCAF能力の拡大が必要だ」としている。「不足によるリスクを減らすには空軍は戦闘構想を新構築し、既存及び今後登場するUAS(無人航空システム)の活用を考えるべきだ」とし、MQ-9リーパーの他、「低コスト使い切り装備」を想定している。

ガンジンガーは低コスト無人機の例として国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)のグレムリンズ(小型無人機多数で集中攻撃を想定)、スカイボーグ、クレイトスのヴァルキリーを上げる。

新型無人機各種は「有人ステルス機と組んで制空、長距離スタンドオフ広域偵察、攻撃、電子戦その他作戦を行う。従来型のISR、軽攻撃ミッションも行う」とあり、空軍が描く次世代航空優勢構想 Next Generation Air Dominanceの各種装備と重なる。

5. 戦力増強効果を生む新装備開発を加速化する

ここには「次世代極超音速兵器、巡航ミサイルに電子対抗用の高出力マイクロウェーブペイロードを搭載し、一本で多数標的を攻撃すること、高性能エンジンでCAF機材の航続距離・ミッション時間を延長すること、マルチドメイン作戦支援を過酷環境下でも可能なデータリンクの開発」が含まれる。

供用中のBMC2機材にE-3 AWACSやE-8 JSATRSがあるが、「全ドメインで有効な各軍共用BMC2装備があれば将来の作戦で全部隊の強靭性および作戦効果が高まる」と報告書にある。提言内容は空軍が進めるマルチドメインC2環境での高性能戦闘管理システム Advanced Battle Management System (ABMS)と重なる。

ABMSはJSTARS後継装備としてまず構想され、その後各種システムに変貌しており、ハードウェア、ソフトウェアでローパーが言う「モノのインターネット」を軍に実現する。空軍はABMSをDoDがめざす各軍共用全ドメイン指揮統制構想の柱となる技術と見ており、各軍にABMS対応能力の採用を働きかけている。■

今回の記事は以下を参考にしました。

"Creating a more range-balanced, survivable, and lethal force will require a commitment by DoD and the Congress to significantly increase the Air Force’s annual budgets," CSBA says.

on January 22, 2020 at 2:52 PM




2020年1月25日土曜日

米軍基地への攻撃でイランは死傷者発生しないように制御できていた(のか)


先日の米軍基地へのミサイル攻撃で死傷者が皆無だったのはイランの巧妙な作戦の結果...との見方です。イランが技術的に遅れていると先入観を持つと実態が見にくくなります。デュアルテクノロジーで今までとは異なる軍事作戦を見せつけられる事態がこれから増えるのでしょうか。

ランがイラク国内の米軍基地数カ所を攻撃したが米軍関係者に死傷者がでなかったのは偶然ではない。
イラン軍装備の性能不足や運用が未熟だったから死傷者が出なかったと考えたら大間違いだ。事実は反対である。イラン軍司令官は死者を出さなかったのは意図的と述べており、政策決定層はこの発言を信じるべきだ。
カセム・ソレイマニ司令を殺害した米国へのイランからの初の報復攻撃となったが、その意味を理解するには昨年9月のサウジアラビア石油施設への攻撃を思い起こす必要がある。
イランはサウジ王国最大の国営石油精製施設へ無人機多数、巡航ミサイルを投入した。
この作戦は奇襲攻撃の長距離作戦となった。「復旧が困難な高価値設備」を狙った背景に巧妙な調整と二種類の装備の同時運用が注目される。
サウジを攻撃したイランの行為から軍事立案部門はあらたな視点を得た。元UAE空軍司令官ハレド少将によればイラン初の精密大量投入攻撃は同国が実施してきた新兵器の長距離運用実験の成果が現れた格好だという。更に重要なのは非対称戦闘の考え方だ。
同少将はイランの標的設定が極めて精密だったことに注目している。さらに興味を呼ぶのは暗号が使われていないことだ。各国は民生技術でGPSをさらに正確に運用しており、誤差はセンチメートル単位に向上している。「サウジでイランが加えた攻撃がまさしくこの例だ」(ハレド少将)
だが精密度だけでなくイランの狙ったサウジ標的の高さも注目される。イランがどこでも狙えるだけでなく、いかなる高さの標的にも照準を合わせられるということだ。
新しい時代には新しい体制の防衛が必要とハレド少将は述べている。単純な対策では不十分となり、一正面作戦では足りないという。戦場は今や360度で多数の国を一度に巻き込む。同盟国や協力国との共同作戦体制では不十分だ。安全に情報を共有する体制が必要だ。
イランのイラク内米軍基地攻撃で米軍関係者に死傷者が出なかったことでトランプ大統領や安全保障チームに「安堵の反応」があったとウォール・ストリート・ジャーナルは伝えた。死傷者がでなかったことはありがたいが、イランの軍事力の成長ぶりに目をつぶってはならない。■

この記事は以下を参考にしました。

It Wasn't Luck That No U.S. Soldiers Were Killed In Iran's Strikes On Iraq

It was intended.
January 19, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: IranQassem SoleimaniIraqMilitaryWar



2020年1月23日木曜日

新型無人機X-61Aは空中発進、空中回収型の画期的機材を目指す


 無人機で次々に新型機が登場しています。やはり時代の流れですかね。今回ご紹介するX-61は最初から複数形の名称となっており、同時多数を運用する構想であることは明白です。技術がどこまで進むのか、新戦術がどう発展するのか当面目が離せませんね


DARPA(国防高等研究プロジェクト庁)のX-61A「グレムリンズ」空中発射空中回収式再利用可能無人機(GAV)が初のテスト飛行に成功した。実現すれば運用方法を一変しかねない同機の初飛行はダイネティクスDynetics が2019年11月に行っており、このたび記録映像が初公開された。民間所有のC-130輸送機がX-61Aを主翼パイロンから発進させた。無人機はジェット推進式で1時間41分飛行を続けたが、パラシュート回収装備の作動不良のため行方不明となった。フェイズ1で5機が製造されており、今回の不調でテストが止まることはない。

昨夏にカリフォーニアのチャイナレイク海軍航空基地を襲った強力な地震のためテスト本拠地で変更の必要が生じた。そこでユタのダグウェイ実証施設に変更となった。

ダイネティクスの公式発表を伝える。

「テストはソルトレイクシティ近くのダグウェイ実証施設で行われ、TBM社のC-130AがX-61Aを空中発進させ同機は1時間41分にわたり自由飛行した。テストの目的は以下を含んでいた。

  • C-130からのGAV空中発進機能を実証する
  • 空中回収、コールドエンジンスタート、動力飛行への安定した移動を実証する
  • GAVの搭載するサブシステムから作動中のデータを回収する
  • 空中、地上からの指示統制装備の機能を実証する。データリンクの性能を確かめ、地上空中間で制御を移動する
  • GAVドッキングアームを作動させる
  • 飛行完了と地上への回収(パラシュートによる)(ただし実証用装備の場合に限り、実用装備では異なる)
.
X-61Aは異常なく飛行し、テスト目的をすべて達成した。ミッション終了時にエンジンが停止し、ドローグシュートが設計通り作動しフライトは終了した。残念だったのは主シュートが作動せず、機体が行方不明となったことだ」

DARPAの戦術技術室(TTO)率いるグレムリンズの究極の目標は機材多数を空中発進・空中回収する技術開発の加速で、ゆくゆくは低コストで再利用可能な無人航空システム(UASs)の実現を目指す。今回のテストはフェイズ3実証の完了を目指し、次回は最終飛行テストでGAV4機を30分以内に回収するのが目標だ。

「今回のフライトは当社ダイネティクスならびにグレムリンズ事業にとって歴史的な一歩となった。GAVはきれいに飛行し、当社の指揮命令装備が終始GAVを制御していた。機体の喪失だが、GAV5機をフェイズ3で生産する決定をしておいてよかった。まだ4機残っている。これまでの重労働が報われた気がする。この調子で2020年早々に初の空中回収を実施できることに興奮している」とダイネティクスで事業を統括するティム・キーターが述べている。

グレムリンズ開発チームにとって2019年は画期的な年となり、2月にドッキングシステム飛行テストに成功、3月にGAVの飛翔テスト初実施、リアジェットに特殊装備を搭載し11月のテストの予行をした。7月には株主を招きエンジンテストを目の前で披露し、8月に米空軍からX-61Aの制式名称をもらった。

ダイネティクスは他の三社と2016年にフェイズ1契約を獲得、フェイズ2は2017年3月に交付され、この段階で2社に絞られ、2018年1月のフェイズ3ではダイネティクスがトップになていた。

「今回のフライトテストはこれまで実施してきた技術設計、解析、地上テストの集大成だ。性能には多大な自信があり、テレメトリーデータが飛行中に届いたがモデリング予測と内容がきわめて近かった。チームは初飛行に成功するため懸命に働いたが、短時間でここまでこぎつけられ、DoDにこの新機能を手渡す日が待ち遠しい」とX-61A主任エンジニアのブランドン・ヒラーが語っている。

ダイネティクスのグレムリンズ開発チームには各分野の優秀企業が集まった。クレイトス無人機システムウィリアムズインターナショナルプライドシステムズエンジニアリングクッタテクノロジーズムーグInc.、シエラネヴァダコーポレーションシスティマテクノロジーズエアボーンシステムズの各社である。
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SFの世界だった技術が現実になろうとしており興奮を覚える。グレムリンズのフライトテストが今後進展すれば、新しい情報を紹介できるだろう。■

この記事は以下を参考にしました。

Watch DARPA's Air-Launched And Air-Recovered "Gremlins" Drone Take Its First Flight 
The program aims to demonstrate the ability to launch and recover swarms of jet-powered drones in midair.
BY TYLER ROGOWAYJANUARY 18, 2020


2020年1月22日水曜日

ステルス無人機登場。UAVは今後どんな進化をとげるのだろうか


ステルス標的機でドッグファイト技量の向上を図るのですか。米空軍もやはりパイロットが支配する構造のようですね。無人機は使い捨てのスウォームと高性能で再使用前提の忠実なるウィングマン、単独行動するISR機材や攻撃機に分化してくのではないでしょうか。


空軍へ配備の可能性を秘めた新型ステルス標的機は第一線機材に変貌するかもしれない。
シエラ・テクニカルは同社が完成させた試作機の写真を2020年1月に公開した。
第5世代標的機つまり5GATはT-38練習機とほぼ同じサイズで、T-38同様に双発でJ85を搭載する。試作機にはF-22を思わせる鋭角がつくが、コックピットはない。
同社(本社カリフォーニア)は同機の初飛行を2020年早々に目指している。空軍は5GAT無人機でロシア、中国のステルス機を想定し戦闘機パイロットのドッグファイト技量の養成を狙う。
この無人機は空軍がめざす現実に即したパイロット訓練の根幹をなし、ステルス機との対決を特に想定している。空軍ではF-35を「敵」飛行隊とした訓練の展開をめざしている。
だが話は更に続く。5GATは標的機の域にとどまらないはずだ。
米軍では各種無人標的機を実弾演習に投入している。無人機は実戦にも投入され、2003年のイラク侵攻では海軍の無人機がレーダー探知妨害用チャフを投下した。
最前線に投入される無人機は標的機から進化している。2017年、空軍はクレイトス(本社サンディエゴ)に41百万ドルで有人機と同時に作戦展開可能な低コスト無人攻撃機の開発を託した。
ノースロップ・グラマンは各種標的機を軍に納入してきた。ベトナム戦ではノースロップBQM-34無人機がカメラ、電子探知装置、レーダー妨害装置を搭載し敵領空に侵入した。1970年代に空軍は同機を改装し、ミサイル、爆弾を搭載させテストを行った。
今日の空軍には遠隔操縦式のQF-16無人機があり、ボーイングが用途廃止のF-16初期型から改装した。2015年から空軍はコンピュータコードでQF-16をロボットのウィングマンとして有人機と同時投入できるようにしている。
忠実なるウィングマンのF-16はF-35のパイロットからの指示で、前方を飛び、敵防空体制の実効性を探る。無人F-16からミサイル発射や爆弾投下もF-35で指示できる。
同じソフトウェアがクレイトスの攻撃用無人機にも搭載され、5GATをステルスの忠実なるウィングマンに変貌させる。シエラ社長のロジャー・ヘイズは忠実なるウィングマンの仕様が決まれば、現実問題の多くが解決できると期待する。
5GATは亜音速機だが十分に高速だ。ヘイズは今後の超音速化をにらむが機体構造は超音速飛行の想定ではない。
5GATには兵装庫もなく、兵装は主翼下パイロンで搭載する。ヘイズは電子戦、人工知能装置、情報収集監視偵察のあらゆる機材を運用できると強調した。
空軍はクレイトス以外に5-Dシステムズにも契約を交付しており、別の5GAT無人機を製造させる。3型式から一つあるいはそれ以上を採用し生産に移すのだろう。■


この記事は以下を参考としました。

 

Check Out This Stealth Target Drone: It Could Be a Warplane in Disguise

by David Axe 
January 21, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: UAVStealthAir ForceU.S. MilitaryTechnology



2020年1月20日月曜日

蔡総統再選直後に巡洋艦を台湾海峡通過に送った米国のメッセージとは

2020年になり、香港の状態を見て台湾の有権者は中国の横暴さに気づき、再選が一次危うかった現職総統を再選に導きました。トランプ政権は一貫して台湾を支持する姿勢で、「一つの中国」という北京の見解が危うくなってきました。しかしこれももとは中国の誤った政策の結果であり、選挙による公職の決定という民主制度を理解できない中国の限界でもあります。では、日本はどうすべきでしょうか。大陸中国とは適当な距離を保ちながら、台湾の保全を支援し、価値観を共有する国家として台湾を認識すべきではないでしょしょうか。F-15の余剰機が出るのなら米国経由で台湾に供与するオプションはいかがでしょうか。民間分野で日台交流が拡大していますが、防衛分野でも期待したいですね。一つの中国と原則論を続ける北京はそのまま放置して、日本は台湾と実のある交流を深めれば良いと思います。



イコンデロガ級誘導ミサイル巡洋艦USSシャイロー(CG-67)が1月16日に台湾海峡を通過した。台湾総統選挙で中国接近を拒む現職総統の再選から一週間足らずである。
  • 台湾国防部は同艦の通過を17日発表し、声明文では「米艦は台湾海峡を通過するコースで航行し、台湾国軍は海空で情報収集、監視活動を展開した。航行中に異常事態は発生しなかった」とある。
  • 中国政府は航行に対し早速反応し、艦船の航行を逐一監視したとし、米海軍が示したメッセージに不快感を現した。
  • 「中国は海峡通過の最初から最後まで米艦船を監視した。台湾問題は米中関係で最重要かつもっともデリケートな問題だが、中国の主権、領土に関わる問題だ。米国には一つの中国原則を遵守し、米中共同宣言3通に従い、台湾に関わる問題に慎重な対応で中米関係の悪化を回避し、台湾海峡をめぐる平和と安定を乱すことのないよう求めたい」(中国外務省報道官Geng Shuang)
  • 選挙の2週間前12月26日に中国も台湾にメッセージを送った。人民解放軍海軍の新鋭空母山東が台湾海峡を通過した。今回のシャイローも同じ航路をたどった
  • 中国、台湾とも艦船名に触れていないが報道内容を総合しシャイローと判明した。ブルームバーグがシャイローの通過航行を真っ先に伝えた。米海軍にUSNI Newsが真偽を尋ねたが即答はなかった。
  • 蔡英文総統は今回の選挙期間中に中国とは現状を維持すると述べ、台湾は中国と別の独立国であると一貫して主張している。
  • 米国の台湾関係には複雑なものがある。1979年以来の米国は「中華人民共和国を中国唯一の合法政権と認めている」と米国務省は説明。米国は台湾が独立国家になるのを支援しているわけではないが、米政府の立場は台湾との「非公式関係」を維持するものと国務省は言う。
  • 再選した蔡総統はツイッターで台湾支持にまわる各国の指導者政治家にメッセージを送っている。「台湾は今もこれからも米国の大事な友人だ。自由市場、民主政、自由を世界各地で守ってくれている米国に感謝している。台湾はみなさんと同じ側に立ち、インド太平洋で自由を守る砦となる」■

この記事は以下を参考にしました

USS Shiloh Transits Taiwan Strait a Week After Presidential Election

January 17, 2020 2:08 PM


2020年1月19日日曜日

F-23が制式採用されていればF-22以上の高性能戦闘機になったはずなのに...

いまさら30年も前の不採択機について言うのはなんですが、敗けたのは性能でなく、企業力の違いとここまではっきり言われてしまうと、選択が違っていれば安全保障環境は今ごろどうなっていたかと思わざるを得ません。技術で優れていてもアピールが足りなかったということでしょうか。F-3となるNGFにもその設計思想が影響を与えるのか、F-3の話でこの機体の存在がちらちらするのは何か意味があるのでしょうね。National Interestの記事からです。



ースロップが受注成功していればF-23が実現し、より高い性能を誇っていたはずだが、相当の高額機材になっただろう。
 1991年、ロッキードが米空軍の高性能戦術戦闘機(ATF)競合を勝ち抜き、F-22ラプター制空戦闘機となり、ステルスで世界を圧倒した。
 敗けたノースロップYF-23は設計で上回っていたのに、米空軍がロッキード案に傾いたのは同社の開発管理の実力の方が高く、ラプターの方が費用を抑えられると判断したためだった。
 当時のノースロップはB-2スピリット・ステルス爆撃機事業他で大幅なコスト超過を発生させており、ペンタゴン、議会からにらまれていた。共同事業体のマクダネル・ダグラスも誇れる状態ではなかった。「空軍がATF交付先をどう決めたかわからないが、ノースロップのテスト不正事例、契約不履行や過去の罰金事例が考慮にあっただろう」とジョン・コニヤース下院議員(民、ミシガン)がLAタイムズに語っていた。
 だがF-23として実用化されていたらどんな機体になったのか。ジェネラル・エレクトリック製の革命的な可変サイクルエンジンYF120の搭載でどんな性能が実現していたか。
1991年当時でも、YF120エンジン搭載のYF-23はプラット&ホイットニーYF119を搭載した競合機を上回る性能との認識だった。YF-23は超音速巡航機能、ステルスで上回り、低速域の操縦性に難があると指摘があった。
 「YF-22、YF-23でAoA迎え角60度で全く同じだったのは興味深い。YF-23は推力偏向機能を使わずに実施できた。V字尾翼が本来不安定な機体で大きな機能を果たした」と両機種に詳しい内部筋が述べている。「YF-22の利点は超低速の飛行時に発揮されたが、両社とも時間不足のため低速での運動性を入念に調査できず、AoAでも同様だった。機体の比較検討時ではPR的なフライトテストが重要だとわかる事例だ。ロッキードはこの点を理解し、高AoAをやってミサイル発射し9Gで操縦してみせた。すべて一回きりの実施だったが印象は残った」
 この内部筋によればノースロップには不利な要素があった。
「ACC(航空戦闘軍団)のパイロットはドッグファイト重視の傾向があり、ロッキードは高AoAデモで好印象を与えた。テストは限定的かつ厳しいものではなかった」という。「ノースロップが実証中に高AoAを避けたのが過ちだ。両機種も同じように操縦できた。だがYF-22の方が『優れているように見える』と評価されたのは同機が興奮を呼ぶ飛行を見せたのにノースロップはこれをしなかったためだろう」
 だが実戦機材に意味があるのか。いずれにせよ米空軍は高性能制空戦闘機を配備できた。ロッキード・マーティンF-22が米国で生産された制空戦闘機で最高の存在であることは事実だが、F-23が実現していらばさらに優れた性能で、現在ラプターが想定する敵勢力の機材に十分対応できるだけの余裕があっただろう。
 F-23は航続距離でラプターを上回ったはずだ。超音速巡航性能が寄与する。YF120エンジンの効果で太平洋では大きな意味がある。ステルス性能も上でありながらラプター各速度域や高度でラプター以上の操縦性能を発揮しただろう。
 ラプター、F-23ともに空対空ミサイル8本の機内搭載は空軍の要求どおりで変わりない。さらにエイビオニクスも差はなかったはずだ。両社の提案構成は類似していた。ラプターはYF-23で搭載予定のレーダーを採択している。
 空軍はラプターを選定した。だがYF-22、YF-23ともに優秀な設計だった。ノースロップF-23になっていれば全般面でもっと高性能機になっていただろうが、価格は高くなった可能性がある。F-23で米空軍は中国のJ-20やロシアのSu-57に対しても余裕ある性能を実現していたはずだ。だがそれで機体価格の差が正当化できただろうか。むずかしい疑問で、想像するしかないだろう。■

この記事は以下を参考にしました。

King Of The Skies: Who Wins When The F-23 And F-22 Stealth Jets Do Battle?

Find out.
January 18, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22F-23MilitaryTechnologyWorldStealthAir Force


2020年1月18日土曜日

防衛装備品で市場参入の障壁は日米双方に存在する。日本企業は米国参入を進めるべき。

軍用装備では実績が物を言うので、日本製品はそれだけ不利なのですが、それとは別に前から指摘しているように政府が乗り出せば良い、という殿様商売では成約は無理でしょう。経験を金で買う、アプローチで民間のたくましい力を政府が積極的に使う意思がないのなら、紙の上の話で終わってしまいますね。またオーストラリア潜水艦案件で実は民間企業は不成約に安堵したともいわれていますが、防衛省需要を超える規模の生産基盤を整備しても民間企業に十分利益が生まれる構造にしないとお上頼みの体質は変わりませんね。ただしold企業はそんな簡単に変容しないでしょう。Dual technologyの時代ですので、意外なところから新しい防衛産業企業が生まれるかもしれませんね。

本政府が武器輸出制限を撤廃し5年たったが、日本の防衛産業は輸出で大きな成果を上げていない。日本で初めて開催された総合防衛産業展示会 DSEI Japan のカンファレンスで関係者、専門家が指摘した。
防衛装備庁(ATLA)の防衛技監外園博一は「安全保障環境が急速に変化中」と中国がクロスドメイン技術を導入し、日本も対応を迫られている状況を指摘。防衛省は陸海空に加えサイバー、電磁スペクトラム、宇宙空間を次の武力衝突場面と想定している。
防衛装備庁の研究開発は優先分野を6つと外園は紹介。サイバー、水中技術、電子戦、極超音速、広域情報収集監視偵察、ネットワーク運用だ。
目指すのは自衛隊を「マルチドメイン防衛部隊」に変え、日米同盟の強化で抑止効果を高めて外部脅威に対応することだ。防衛研究開発活動では従来の機材中心から「機能志向」に変える必要があると指摘した。
日本の高度技術では素材科学やロボット工学が有名で大部分は民生分野に源を発している。外園は新技術を軍事転用する必要があるとも指摘。
中国は軍事力を急速に拡充中だ。日本がペースに合わせられないと、日本の優位性が失われることになりかねない。「最重要なのは各技術を防衛装備に統合していくこと」(外園)で、産官学に加え同盟国交えた協力を高める必要があるという。
展示会には米、欧州、中東、豪州の企業多数が参加し、ロッキード・マーティンノースロップ・グラマンコリンズアエロスペースレオナルドDRSジェネラルアトミックス・エアロノーティカルレイセオンといった米国企業が出展していた
だが日本企業は自社製品の米国内販路開拓に文化の壁に直面し、米企業も自衛隊向け装備の販売で壁にぶつかっている。
「日本には少規模ながらハイテク航空宇宙関連の商機がありますが、日本はこれに慣れていないようです」とレイセオン・ジャパン社長のロバート・モリッセイが述べる。レイセオンは日本側ベンダー企業60社を招き、各社技術が有益か判断する場を設けた。「単独サプライヤーより、サプライヤーは多いほどいいのです。そこで日本の防衛産業に積極的に働きかけているところです」という。
日本には民生用途で開発され軍事装備に転用可能な技術が多数ある。ロボット工学以外に、機械学習、マシンビジョン、人工知能、素材工学、バッテリーで知見が豊かだ。極超音速機に活用され、5Gネットワークでもノウハウが活かせるはずと専門家は見ている。
GARアソシエイツのグレッグ・ルビンステインは米政府内、防衛産業、コンサルタントの経験を1974年から積んできた。最近の米国と日本の共同開発の成果にスタンダードミサイル3(SM-3)があり、両国政府とレイセオン、三菱重工による協力の優れた例だという。
「以前も米日共同案件はありましたが、相互の要求内容をもとに研究を進め共同開発に至った例として初です。現在は生産に入っており、調達サイクルが動いています」 同事業は先行事例として重要で、協力しながらの調達で大きな一歩となったと指摘する。
こじれた場面もあったとモリッセイは述べる。「政府と民間で意思疎通がうまくいかず、予算確保が危うくなりました。だが、最終的に成功に至った。次回の共同案件では双方の距離は縮まるでしょう」
今後は企業間の契約も必要とモリッセイは見る。日本の技術で問題となるのが価格と指摘する。顧客が日本の防衛当局のみのため少数調達・少量生産となり高価格を生む。だがそれ以外に競争関係が不在だ。「単一調達先で原価上乗せ方式の契約が日本で普通のようだ」「監督官がナット類の重量、長さ、厚みを測定する光景を目にしたことがある」といい、表面的な検査だが、要求水準を超えた部分まで検査されるため、「高コストになってしまう」のだという。
防衛省は固定価格契約を多数交付すべきという。「各社に利益を生む機会を与えるべきです。防衛案件で利益率が6-7%では足りません」
SRC副社長で国際事業を担当するジム・ダニエルズは日本市場で35年の経験がある。同社はレーダーや電子戦技術が専門で、事業は米国が中心だったが、4年前から国際進出を模索し始めた。アジア太平洋に注目している。
SRCではアジア太平洋を南北に分け、進出先を2つとしている。南部ではシンガポールで、東南アジアの技術ハブであり、最良の製品を調達できる。北部では日本に注目している。
「日本でSRCの知名度は低いです。そこで展示会で当社の紹介をめざしています」といい、日本で提携先を模索し、米国へ技術移転を実現したいという。
文化と言語の壁のため、各社は日本側提携先の案内で市場参入したいとする。提携先も複数とする。
「だれ聞いたことがない日本企業が防衛産業を話題にしています。市場はこれから開くところです。日本政府も市場拡大に動いており、各社が参入を目指しています」
米国にとって日本は最長の実績をもち、最も忠実な同盟国だと指摘する。製造業は「強力」だが経済性が高い製造が課題という。「設計を製造に移し実現させる能力には魅力を感じる」という。
自衛隊も米軍同様に国内企業からの調達を好む傾向があるが、「市場は今や海外企業にも開かれています」とダニエルズは言う。
「同盟国にはミッションの重要点や技術を共用してもらいたいものです」とし、「設計、開発、製造、サポート、運用の各面つまりcon-opsチェーン全体で協力が深まれば、それだけ双方に良い結果が生まれます」
日本企業の米国市場参入が実現すればハードルが低くなるとルビンステインは指摘し、第一段階は認知度を上げることだという。日本の大手企業でワシントンDCに事務所を置く例は多いが、駐在員数名が政策の動向を追っているだけで不十分と指摘する。
「日本企業も米国でのプレイヤーと認知してもらわないといけませんね」とし、事務所を強化して米国事情に詳しい人材を加え、自社製品を担当部局にプレゼンし、研究開発機関に売り込む必要があるとする。
一つ成功事例がある。日本のリチウムイオン電池メーカーで米国製を上回る性能で軍民両用に使える製品だ。同社は米国事務所を開設し、コンサルタントを雇いマーケティングを開始した。数年かかったが、米陸軍の関心を集めることに成功し、その後海軍も続いた。
「はじめは大変ですが、数年間粘り強く活動し、米側の調達担当者や政府関係者の関心を勝ち取りました。バッテリーの優秀さが理解され、米国防調達で優位性を発揮しています」(ルビンステイン)
米国市場参入を目指す日本企業には米企業とウェポンシステム部品を共同研究プロジェクトとして小さく始めたらよいという。
日本政府も防衛調達ミッションを派遣し日本企業の存在感を海外で強めるべきと指摘する。ミッションは官民合同でもよいが、現地で専門家を使うのがよいとルビンステインは述べている。
専門家は「現地ルールを熟知しており、問題が発生しても誰に頼ったらよいかがわかっており、解決が早くなるだけでなく意思疎通も上手くいくはずです」という。■
この記事は以下を参考にしました。

U.S.-Japan Defense Tech Cooperation Stymied by Cultural Hurdles

1/17/2020