2020年6月2日火曜日

B-52エンジン換装事業の背景と進捗状況




インド太平洋軍の爆撃機連続プレゼンス作戦の一環でB-52が二機太平洋上空に展開した。Photo: A1C Gerald Willis

B-52の最終号機がラインオフしたのは1962年だった。米空軍は2050年まで同機を供用する。そのため空軍はB-52のエンジン換装で整備性にすぐれ運用効率を高くする改修をめざしている。
同時にB-52エンジン換装事業は契約交付の短縮化を図る最初の事例ともなる。これまで綿密に細部まで打ち合わせ、書類多数を作成し各候補を比較してきたが、今回は「デジタルフライオフ」でエンジン候補をコンピュータ・シミュレーションにかける。比較項目は燃料消費効率、整備面の必要条件、各種条件での性能に絞る。
「この事業で学ぶべき点は多い」と空軍の調達トップ、ウィリアム・ローパーが述べていた。「デジタルエンジニアリングは紙の上の検討より優れた評価方法となり、システムのシミュレーションで採択案に絞っていきたい」
ローパーによれば契約事務工程が合理化され、さらにデジタルフライオフの採用で当初の工期10年を3.5年短くできる。
USAFは現在のプラット&ホイットニーTF33エンジンの代替候補を2018年10月に検討開始していた。
「既存エンジン改修は最初から検討対象から外した」とグローバル打撃軍団(AFGSC)広報官がAir Force Magazineに語っている。プラット&ホイットニーは既存エンジン改修を売り込んで新技術で効率の改良が実現し、整備時間も短縮化でき新規エンジン採用よりコストが低くなると訴えていた。
ただし、「空軍は既存エンジンのこれ以上の使用は無理と判断ずみ」とし、今のエンジンでは90年の稼働は不可能と考えている。
エンジン換装事業には後年度国防事業制度を使い15億ドルを投じる。だが総費用は公表されていない。2017年3月時点では70億ドルとの試算があった。
B-52は当初J57エンジンを搭載していた。写真は1950年代末のオファットAFBでの整備の様子。1961年にTF-33エンジンが導入された。Photo: USAF/AFA Library
USAFが2018年に作成した「爆撃機ベクトル」案ではB-52の供用期間延長事業はエンジン換装他も含め220億ドルとしていた。検討案では削減効果を100億ドルとはじき、「燃料費、整備費、整備人件費を2040年代まで積算した」との記述が文書にある。
公式にはB-52民生エンジン交換事業(CERP)の名称がつき、空軍は産業界と意見交換をしてきた。目標は「民生用の既成製品で生産中のエンジンを選定すること」と電子調達サイトにある。
76機あるB-52各機のTF-33エンジン8基の交換となると合計608基(さらに予備エンジンが加わる)となる。現行の双発用ポッドに格納する。
空軍は燃料消費効率で25ないし30%向上を期待し、航続距離が40パーセント伸びると期待する。また温室効果ガスの発生も減らせると期待している。
燃費効率が3割伸びる効果は「莫大」とローパーは述べ、コスト面に加え、航続距離や現場滞空できる時間が伸びる効果は大きいという。
コンピュータモデルによりコスト、性能の相互関係を比較できるとローパーは期待する。「ある企業から燃費3割改善だが価格が高い提案が出てきても他社案で効率はそこまで良くないが低価格提示があれば、選択は興味深い作業となる」
B-52エンジン換装は2007年に浮上。当時は同機を戦域大の電子戦に投入する構想で、スタンドオフジャマー(SOJ)としてでスタンドオフ兵器の発射後に機体を現場に残し、広域ジャミングを行わせ、海軍のEA-6やEA-8の投入を不要にする構想だった。新エンジンは航続距離とともにジャミング装備用の発電容量の確保で必要とされた。だがSOJ構想は結局実現されなかった。
2014年末に民生エンジンに換装すれば整備時間と燃料費を節約できるとわかり、空軍参謀副議長だったスティーブン・ウィルソン中将、AFGSC司令のロビン・ランド大将からエンジンのリース案が出てきた。
空軍はB-52のエンジン8基を大型ターボファン4基にする検討もしたが、技術面で課題がわかった。フラップや制御面との干渉、地上高の確保等の他、フライトテストも大々的に行う必要があり、兵装運用テストも必要となり、コックピットやスロットルが大幅改修され、ラダーも再設計対象となる。そこで8基のまま大型ビジネスジェット用のエンジンを選ぶことになった。
現在のエンジンは信頼性でTF-33よりはるかに優れ、一回搭載されれば途中で取り替える必要はない。対象となる規模のエンジンでは重整備平均時間は30千時間近くで、B-52に残る耐用期間を上回っている。
ルイジアナ州バークスデイルAFBでB-52エンジンを点検中。January 2018. Photo: A1C Sydney Campbell


長期間供用中のB-52では任務実施率は高く、各種兵装を搭載し高い効果を実現している。ただし、敵側に高性能防空体制がない場合には。ハイエンド戦でもB-52は敵の防空圏外からミサイル発射すればよい。また同機は核巡航ミサイル運用が可能な唯一の爆撃機であり、長距離スタンドオフ(LRSO)ミサイルの搭載も当面同機に限られる。
B-1、B-2はそれぞれ22年、30年も若い機体だがB-52より先に廃止される。それには以下の理由があると爆撃機ベクトル研究がまとめた。
  • B-52のミッション実行率は60パーセントだが、B-1、B-2ではそれぞれ40パーセント、35パーセントにとどまる。
  • B-52の時間あたり運航経費は70千ドルだが、B-2はほぼ2倍になる。ただしB-52のエンジン換装前の数字だ。
  • B-52Hは供用時間の大半を核運用の地上警戒待機ですごしており、機体構造は堅牢で数千時間の飛行が可能。
ただしB-52改修費用のすべてが予算化されていない。AFGSCでは上層部と予算折衝を続けている。
だがB-52は2050年でも飛行可能なのだろうか。機体表面や構造部品が50年経っても堅牢なことに驚くとAFGSCは言っており、エンジンとレーダーの更新があれば十分実用に耐えるという。
レーダー換装について「防御装備はいつも高性能にしておきたい」とし、その他エイビオニクスでも対応が必要だ。
B-52の改修作業は以前からあり、 Link 16 の搭載が完了しつつあり、CONECT「デジタルバックボーン」も完了に近づいている。VLF、AEHF通信装置も搭載され、機体内部兵装庫の改修は終わっているし、その他の改修予定もめどがついているという。
Sources: Rolls-Royce, Pratt & Whitney, and General Electric. Graphic by Mike Tsukamoto

エンジンの選択
製造メーカーで長年機体整備を支援してきたボーイングが新エンジン搭載作業をまとめるが、エンジン選択は空軍が行い、ボーイングは飛行性能や兵装搭載への影響で助言を与える。

プラット&ホイットニーは空軍がTF-33以外のエンジンで「最良の選択」は同社のPW815改修型という。ガルフストリームG600ビジネスジェットに搭載実績がある。
「当社は同機のエンジン、出力要求を知り尽くしており、他社の追随を許しません」と同社はAir Force Magazineに語っている「当社の提案内容は推進力、燃料消費、発電容量の要求内容すべて実現可能です」
GEエイビエーションからはCF34-10と新型「パスポート」エンジンのニ案がある。最終要求内容から絞り込みたいという。.
「CF34の信頼性が実証済み」とし、26百万時間の稼働実績を誇る。パスポートでは「燃料効率、航続距離、滞空時間」で前例のない性能が実現するとする。USAFの要求内容を見て一形式にするという。
ロールスロイスはエンジン換装案の発表前から手を上げており、BR725(軍用型はF130)が理想的な選択肢になると2017年にはやくも売り込んでいた。同社はガ
ス排気を95パーセント削減しながらUSAFの求める航続距離と燃料消費効率が実現できると述べている。
F130はRQ-4グローバルホーク、E-11 BACN,新型コンパスコール機にも搭載されており、後者はガルフストリーム650の特殊作戦用機材で空軍が供用中だ。
噂とは裏腹に、空軍は性能のみでエンジン選定しないという。逆にコスト面で各種の比較検討で選定するという。問題は「どのくらいの頻度で主翼から外す必要があるのか。補給処に予備を置いておく必要があるのか」だという。
TF-33の補給処はオクラホマ州のティンカーAFBで同エンジンの整備保守経費はここ11年で急上昇している。■
この記事は以下を再構成したものです。
Jan. 21, 2019

2020年6月1日月曜日

F-35各型で機体価格が軒並み低下、しかし60年間の総経費は1兆ドルのまま



  •  開発調達コストは7.1%減とペンタゴンがまとめた
  • 長期間にわたる供用、維持コストは7.8%増との試算


ッキード・マーティンF-35の機体価格に低下の兆しが見えてきた。開発調達費用の最新試算は7.1%減の3,978億ドルになった。


ただし議会、納税者は手放しで喜べない。66年間の運用維持総費用は1.182兆ドルとペンタゴンの昨年試算から7.8%上昇している。国防総省のF-35事業評価からBloomberg Newsがまとめた。


F-35事業管理室による調達費用低下試算は朗報の一つで、その他にも納期順守率の向上、パイロットの生命を脅かしかねない欠陥の解決、ソフトウェア不良の解決などがある。


報告書はまだ公表されていないが、F-35の海外販売見込を合計809機とし、昨年の764機から増加。


各種改良が進むF-35は国防予算削減の波から守られそうだ。Covid-19大量流行で連邦予算赤字は急増し、ペンタゴンも予算規模は2025年まで増加できる状況でないと見ている。


F-35の今後の予算見通しでは、2022年度の94機調達予定を9機削減するとある。94機調達は2023年度2024年度とし、2025年度は96機と見込む。2021年度要求が79機から拡大る。F-35で米軍向けと同盟国向け需要が3,200機の試算があり、このうち500機が引き渡し済みだ。空軍は計1,763機調達を目指し、米軍向け2,456機の中心となっている。


報告書作成の昨年12月時点でウィルスは大量流行していなかった。ロッキードは先週、Coovid-19の影響でF-35生産が一時的に減速と発表し、今年納入予定の141機で最大24機に遅延発生の可能性を明らかにした。


ペンタゴン評価ではロッキード及び協力企業のデータで年間生産実績をもとに製造機数を見直しており、調達費用を下げていることがわかる。F-35の米空軍向けA型の「フライアウェイ単価」は12.1百万ドル下がり、57.4百万ドルになった。ただし、エンジンは含まない。海兵隊向けB型は80百万ドルが72.1百万ドルになり、海軍のC型は79.5百万ドルから72.3百万ドルになった。


ただしこれで2077年までの供用期間中に発生する1兆ドルが減るわけではない。今後の見通しについて2019年3月、国防長官代行だったパトリック・シャナハンは「DoD史上最大の事業規模となり、機体維持経費は核兵器近代化事業とほぼ同額」と述べていた。■


この記事は以下を再構成したものです。



2020年5月29日 17:00 JST

2020年5月31日日曜日

パンデミック後のPRC⑦ 解放軍予算は最低の伸びとはいえ7%弱増、台湾へ圧力をかける



 

全国人民代表会議には習近平主席も参加し2020年5月22日に北京で開幕した。 (Kevin Frayer/Getty Images)


国は今年の国防予算を前年比で6.6パーセント増と30年で最低の成長率と発表した。

金額で昨年の1670億ドルが1782億ドルになる。この規模は米国に次ぎ第二位。伸びは最低とはいえ、110億ドルの予算増は中国のこれまでの実績でも第5位の規模だ。▶背後には人民解放軍PLAにCOVID-19パンデミックの影響を与えない意図が見える。中国経済は2020年第1四半期に対前年比で6.8パーセント縮小した。▶李克強首相は実質は政府のいいなりの人民代表会議開幕で演説し、PLAへの悪影響を否定した。▶「国防体制と軍の改革を進め、補給活動を強化し、革新的国防関連技術の開発を強化する」(李)。

李首相は台湾にも触れ、「独立を志向する分離主義の動きには断固反対しこれを抑える」とし、台湾住民に「本土に加わり、再統一の動きに合流せよ」と訴えた。▶意図的なのか李首相は台湾再統一で「平和的」との表現を避け、これまでの中国指導部が全人代で台湾に関し発言する際の常套句を使わなかった。中国は台湾再統一に際し武力行使を放棄していない。

李首相発言と同時に米国防長官マーク・エスパーは台湾を支持する米国の立場を再確認した。長官は米国は「台湾支持の公約を確実に守る」と述べ、台湾関係法の縛りもあり、台湾に必要な防衛装備を供給すると発言。▶米国務省は台湾向け潜水艦用大型魚雷18本を180百万ドルで売却する案件を21日木曜日に承認した。Mk 46 Mod 6高性能技術魚雷は台湾海軍潜水艦に搭載される。2017年には同様の兵装48点の売却があった。

台湾報道では台湾周辺で中国軍がパンデミックと無関係に活動を続け、中国艦艇航空機が国際空域、海域で定期的に活動している。中国は通常の訓練とするが、台湾政府は台湾への脅迫と見ている。■

この記事は以下を再構成したものです。


China announces $178.2 billion military budget


By: Mike Yeo    7 hours ago

米海軍:X-37で軌道上から地上へ送電の実験を行う


米海軍は巨大な太陽光パネルから地球上への送電を試行する。

国防総省発表に米宇宙軍がX-37B再利用可能スペースプレーンで宇宙空間実験を行うとあり、種子への放射線の影響を見る実験と、注目すべき内容ではない。

一方で、さりげなく目立たない形で海軍研究本部が太陽光エナジーを地球に送る活用方法を模索すると記述がある。マイクロウェーブエナジーに変換し地上へ送信すると広報資料にある。▶太陽光パネルをX-37Bに搭載し軌道上で太陽光エナジーを集めて地球へ送る構想だ。

宇宙からの送電実験

十分に作動する設計なら太陽光を収集し、莫大な量のエナジーを地球に送れる。宇宙空間なら雲に遮られることもなく発電効率が上がり、パネル上に埃もつかないはずだ。▶集めたエナジーは地球にマイクロウェーブとして転送する。エナジー収集のしくみは緊急時電源としてさらに軍事用途にも使える。▶移動困難地に展開する地上部隊も理論上は制限なしで莫大なエナジーが使えるようになる。燃料補給装備のトラック、タンク等が不要になる。▶さらに太陽光エナジーは軌道上の宇宙ステーション、スペースプレーンや衛星等に電源供給できる。

課題は

ただし、実現までに克服すべき課題がある。海軍研究本部のポール・ジャッフェ博士の説明では宇宙空間への打上げる費用が高額なことが一番だ。重量がかさめば多くの推進剤が必要となり費用も上がる。重量を最小限にするには内部部品を小型軽量化する必要があり、技術面で難易度が上がる。▶その他として太陽光収集だけの問題ではなく、衛星全般に共通する要素がある。いったん打ち上げれば、軌道周回中の衛星の速度は相当早くなる。別の軌道から地球上の任意地点にエナジー送信するのは難題となる。この目論見が実現可能となるかはわからないし、コストと技術上の課題も残る。■

この記事は以下を再構成したものです。


May 22, 2020  Topic: Technology  Region: Space  Blog Brand: The Buzz  Tags: AmericaU.S. NavySpace ForceSunSunlightSolar PowerSpace

Yes, the U.S. Navy Wants to Harvest the Sun’s Energy



Caleb Larson holds a Master of Public Policy degree from the Willy Brandt School of Public Policy. He lives in Berlin and writes on U.S. and Russian foreign and defense policy, German politics, and culture.

2020年5月30日土曜日

主張 少ないF-22「最重要航空機材」をフル活用すべき米空軍

    

デプチュラ退役中将とバーキー両名が「最重要軍事装備」と呼ぶF-22 (Air Force)




5月15日に訓練中のF-22ラプター1機の喪失事故が発生し、同機の配備規模で警鐘となった。

アフガニスタン、イラクでの対戦闘員作戦を重視しすぎたあまりF-22調達は187機と小規模で終了した。空軍の要求は381機だった。今や、両国での戦闘は過去となり、新しく国防戦略構想が出た中で、F-22の性能がさらに重要度を増している。

第5世代機の同機こそ最重要軍事装備であり、今回の事故喪失でF-22の性能向上改修には予算を全額計上し実施の必要を痛感している。これからもF-22に匹敵する性能を有する機材は米国でも他国でも生まれない。同機に関する予算管理、機材管理には現実を反映させねばならない。

F-22の主要任務は航空優勢の確保にある。これが軍事作戦の成功に不可欠なことは言うまでもない。同機は地上目標も精密攻撃可能な性能を有し、敵が優勢の環境でも情報収集監視偵察任務もこなせるが、なんといっても空対空戦の王者だ。各種の性能を実施でき、その全貌は公開されていないが、F-22はわが国の通常抑止力で最大効果を発揮する。他機種より小規模な部隊編成だが、他機種と比べようのない戦闘効果がF-22から生まれる。

ステルス、センサー技術、処理能力、卓越した飛行性能でF-22は他機種の追随を許さない。一部の機能だけ有する機体はあるが、F-22のように全て包括した機体は存在しない。ステルスにより敵機は接近攻撃がきわめてむずかしい。センサーと処理能力で戦闘空間の把握は驚くほど精密になる。速力と操縦性で同水準の機体はない。F-22の真価に疑問を呈する向きには同機の水準に近づこうと必死な各国の姿を見てもらいたい。いかにF-22が画期的かがわかる。

わが国にF-22がもっと多く必要な事実は実に単純明快だ。だがF-22生産ラインは閉鎖され数年が経過し、生産再開は容易ではない。F-35はもともとF-22の補完用であり、対地攻撃能力を充実させ、同機も今後の航空戦力整備で不可欠な機体だ。F-22配備数が小規模のため、F-35の年間調達規模が一層重要になっている。今後登場する制空戦闘機構想はなんとしても進める必要がある。

ただし、COVID-19関連の予算制約により新型機開発の遅れは必至だ。パワーポイント上ならいくらでも展開できるが、そんな理論面での作戦構想で具縦的な作戦能力に混乱を来してはならず、現在将来の課題に答えねばならない。F-16やF-15といった旧設計機へ資金投入しても、最新の要求水準に対応できない。こうした機体も重要な存在とはいえ、運用上の有益度で今後低下が止まらない。安全保障面の課題に答えられなくなるからだ。

このため制空権確保でF-22が重要手段となる。敵と武力衝突となればF-22が最前方に投入されるのは明らかだ。だからこそラプターの性能改修で予算確保が必要で、今後も同機の性能を維持する必要がある。F-22部隊の戦力維持で費用対効果が最大になるのは訓練や試験に投入されている最古参のF-22ブロック20の33機を実戦対応機材にすることだ。これで最小の予算投入で一個飛行隊の新設効果が生まれる。費用面を重視する向きには、F-22全機がフルに性能を発揮できない場合に代償を払う覚悟があるのか問いたい。代償とは戦略目標の放棄であり、深刻な戦力低下であり、国民多数の生命の喪失だ。

F-22生産の打ち切りは悲劇であり、その影響を今後も痛感していくことになるだろう。ただし、今の時点で重要なのは現在あるF-22の活用だ。旧型ブロック20各機の性能改修で完全な戦闘可能機体にすれば敵に大きなメッセージとなる。すべてはF-22の性能に行きつく。数字を最適化しよう。今日明日の安全保障面の課題から現状を下回る機数では許されない。■

この記事は以下を再構成したものです。

The F-22 imperative

Commentary

By: David A. Deptula and Douglas Birkey, Mitchell Institute 

David Deptula is a retired U.S. Air Force lieutenant general with more than 3,000 flying hours. He planned the Desert Storm air campaign, orchestrated air operations over Iraq and Afghanistan, and is now dean of the Mitchell Institute for Aerospace Power Studies. Douglas Birkey is the executive director of the Mitchell Institute, where he researches issues relating to the future of aerospace and national security.

地磁気減少と国家安全保障の関係:地球環境に大きな変化が起こる前兆か

大西洋上の問題だからと安閑としていられません。この惑星上の生命を守っているのは放射線から守るシールドがあってこそで、地磁気の減少でこのシールドが弱まれば、まずガンの発症が増えたり、地震が増えるでしょう。あるいは磁極逆転になるのか。人類の存続があやうくなるのでは

大西洋上空に地磁気が弱い箇所があり、ここ50年で規模を拡大しながら年間12マイル西に移動している。

南大西洋上空異常現象と呼ばれ、地球を守る磁場が消えれば、危険な太陽放射線にさらされる危険事態が発生しかねない。▶欧州宇宙局ESAは異常現象がここ5年で二方向に分離したと報告。一つがアフリカ南西の洋上で、もうひとつは南アメリカ方面だ。▶「南大西洋上空異常現象の東側部分は10年前に登場し、最近は大きく発達している」とドイツ地球科学研究所が指摘している。▶地磁気全体は200年でおよそ9%減少しているとESAはまとめている。▶異常現象が二分化した理由は科学陣でも解明していない。地球内部の核の動きとの関係の解明が急務という。

磁場の衰弱は衛星や宇宙機にも影響を与える。▶太陽光中の高電荷粒子が増えれば地球を守るシールドを通過しやすくなる。▶低地球軌道上の宇宙機や衛星が粒子を浴びればハードウェアの損傷や故障発生につながる。また内部の電子装備の機能が低下し、重要なデータ収集機能が遮断されたりコンピュータ部品の劣化が進む原因となる。

さらに国際宇宙ステーションの問題がある。2018年度の研究報告によれば異常現象部分を通過するとステーション内部の人員は「強度の放射線に数分間被爆する」とある。

地球の磁場は地表1800マイル下にある外核の流体状の鉄の渦巻移動が生んでいる。▶変化を正確に観測するためESAはSwarm衛星3機を利用している。■

この記事は以下を再構成したものです。
May 29, 2020  Topic: Space  Region: Space  Blog Brand: Techland  Tags: SatellitesSpaceSpace ForceMagnetic FieldEarthOrbit



Ethen Kim Lieser is a Science and Tech Editor who has held posts at Google, The Korea Herald, Lincoln Journal Star, AsianWeek and Arirang TV. He currently resides in Minneapolis.

2020年5月28日木曜日

パンデミック後のPRC⑥ 科学技術振興で反撃に出る米国

 

(Mark Schiefelbein/AP)



見対立があたりまえの米議会も中国への怒りで団結している。

米議会は1,000億ドルを全米科学財団に投じ人工知能、量子コンピュータ、高度通信技術、ロボット工学他の研究を促進させる。超党派提案で上院の民主党議員トップが仕切っている。
上院の民主党院内総務チャック・シューマー議員がまとめた無限のフロンティア法案では全米科学財団を全米科学技術財団に改名し、「DARPA並みの権限」を有する技術局を創設し研究開発契約を交付させる。5年間で1,000億ドルを投じる。
普段は分断ばかり目立つ議会だが、中国への怒りでひとつにまとまってきた。下院は水曜日にイスラム少数民族の人権抑圧に対し中国関係者を制裁する法案を、上院は香港で取締りを強める中国への懲罰を検討した。
シューマー法案にはトッド・ヤング(共、インディアナ)も共同発起人だ。下院版は下院軍事委員会メンバーのロー・ハナ(民、カリフォーニア)、マイク・ギャラガー(共、ウィスコンシン)両議員の共同提案。
「歴史的低金利の時代に官民連携で科学技術の大幅な進歩をめざし連邦政府に研究開発事業をさせる」と上記4名の議員はUSA Todayに意見表明している。
「わが国が回復に向かう中、中国が力をつけてきたのを意識すべきだ。強権的政治思想の中国指導部はこの機会を捉え米国を追い抜こうと技術革新へ支出を増やしており、米国民の将来の安全繁栄が脅かされかねない」
法案内容のまとめを見ると、提案にある技術局は以下の技術分野に重点的に資金を回す。
  • 人工知能と機械学習
  • 高性能コンピュータ処理、半導体、高性能コンピュータハードウェア
  • 量子コンピュータ、情報システム
  • ロボット工学、自動化、高性能製造技術
  • 自然環境災害の予防
  • 高性能通信技術
  • バイオテクノロジー、合成バイオロジー
  • 高度エナジー技術
  • サイバーセキュリティ、データ保存管理技術
  • 素材工学、その他重要分野に関連が深い工学や採掘技術
法案では100億ドルで国内少なくとも10箇所の技術ハブを選定し「中核技術の研究開発・製造のグローバルセンター」にするとある。
シューマー議員は原案を昨年11月に提示し、中国を意識した技術の「壮大なる挑戦」としてドナルド・トランプ大統領や上院多数派院内総務ミッチ・マッコンネル(共、ケンタッキー)の支持を得ていたものの、「全面的支援」ではなかったという。
議員スタッフによれば法案提案では2021年度国防認可法(NDAA)に同じ内容を盛り込ませようとしている。上院では6月初めに原案を準備する予定になっている。
シューマーは中国に厳しい態度で臨むトム・コットン上院議員ほか上院軍事委員会メンバーと国防認可法にフェンタニル制裁法を盛り込むことに成功した。同法のねらいは中国含む外国がフェンタニル等合成麻薬を蔓延させた際への対抗にある。
同法案が上程された2019年4月に上院版のNDAA法案もあり、ともに一ヶ月後に通過している。2020年度版NDAAは2019年12月に可決しているがやはりこの内容が盛り込まれていた。
同法案にはハンディキャップがいくつもつく。まず7,000億ドルというNDAA法案の値札を見れば進歩派民主党議員も保守派共和党議員同様に意気消沈するはずと議会スタッフのひとりは述べている。一方でCOVID-19関連対策を見れば議会も大盤振る舞いを許す姿勢を示している。
「現時点で1兆から3兆ドルを口にしており、1,000億ドルなど大金ではない」と同上議会スタッフは述べているのだが。■

この記事は以下を再構成したものです。

By: Joe Gould