2020年9月7日月曜日

発想力と大胆な資金投入がすごいぞ DARPAの奇想天外プロジェクトのごく一部をご紹介

 


The Legged Squad Support System (LS3) walks around the Kahuku Training Area July 10, 2014 during the Rim of the Pacific 2014 exercise. (U.S. Marine Corps photo by Sgt. Sarah Dietz/RELEASED)

脚走行分隊支援システム(LS3)が2014年のリムパック演習で走行実演をした。(U.S. Marine Corps photo by Sgt. Sarah Dietz/RELEASED)



宙から人体の脳組織に至るまで国防高等研究プロジェクト庁DARPAが助成した研究成果を軍が利用し、最新技術を使っている。


DARPAの功績にはインターネット、GPS、ステルス航空機がある一方で、設立以来62年の歴史に奇想天外な案件も多数見られる。


DARPAが他機関と一線を画すのは通常の調達ルールを使わないことで、研究者、イノベーターの採用、給与でも制約が少ない。またDARPAには予算執行上で制約も少なく、実現可能性が低い案件にも資金投入が可能で、軍のベンチャーキャピタルとして機能している。

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では、DARPAが「ハイリスク・ハイリターン」と分類した中で読者の関心を引きそうな案件を紹介していこう。



1. 植物を食べるロボット


正式名称「エナジー自律戦術ロボット」Energy Autonomous Tactical Robot (EATR)の本事業では植物が飼料のロボット開発を目指す。実現すれば監視用あるいは防御用で人員や通常のロボット装置より長期間補給なしで活動できる。


開発にあたるのはサイクロンパワーテクノロジーズ Cyclone Power Technologiesで「将来食糧危機が発生したらどうするのかという懸念があるのはわかるが、それは当社のミッションではない」と同社CEOハリー・ショールが述べている。


同プロジェクトが2015年に中止された前に、技術陣はEATRはバイオマス150ポンドで100マイルの移動が可能と試算していた。



2. 自己修復型の建築物


想像してほしい。兵員が軽量足場で建物や防御拠点を整備している。足場から耐久性のある素材がしみ込んでいく。この素材は損傷を受けても元通りに復旧する。



これがDARPAのエンジニアリング生体素材Engineering Living Materials事業の目指すゴールで自己修復可能な建築素材を実現する。3Dプリンターで器官組織を作成し、ハイブリッド素材として形状を保ち、細胞成長を支える効果を実現しようとしている。


「完成形の素材を補給するのではなく、原型を支給し現地資源を使い急速成長させる。また素材が生きているため、環境変化に対応が可能であり、損傷を受けても復旧する」とプロジェクト主幹ジャスティン・ガリヴァンが述べている。


3. 実験室培養の血液



血液の遺伝子組み換えblood pharminng とは人体からの採血ではなく、血球を実験室で作成する技術だ。DARPAの血液遺伝子組み換え事業では赤血球関連で製造効率を上げ費用を削減する狙いがあった。


成功すれば、戦場や世界各地の病院で輸血用血液が大量に利用可能となり、輸血による疾病発生リスクが減るはずだった。


2013年の報道発表では同事業により合成血液装置一式の費用が90千ドルから5千ドル未満に下がるとあったが、追加発表はない。最新の予算説明資料にはこの事業は掲載されていない。



4. サイボーグ昆虫


無人航空機はおおはやりだが、設計組立に人手が必要で高費用となる。では、飛ぶ生体にセンサーを乗せれば費用は発生しないのではないか。


DARPAのスパイ昆虫事業は2006年事業に掲載されており、昆虫に発信機を埋め込み監視活動に投入する構想だった。ハイブリッド昆虫マイクロ電子機械システム事業 Hybrid Insect Micro-Electro-Mechanical Systemsはミシガン大、コーネル大が担当した。数年後に研究陣は昆虫を制御するインターフェースの開発に成功した。


2009年にコーネル大は放射性物質を動力とする送信機をサイボーグ昆虫に埋め込んだと発表した。ニッケル同位体-23からセンサー、送信機に電力が供給されながら、人体には無害である。



5. 脳インプラントでPTSD治療を


DARPAは戦闘用装備品のみに主眼を置くわけではない。戦闘で発生する兵士への陰の部分でも解決策に資金投入している。


新治療方法を模索するシステムに基盤を置く神経科学Systems-Based Neurotechnology for Emerging Therapies事業では「インプラントで閉回路の診断および治療を確立し、精神神経疾患の対応、さらに治癒をめざす」とDARPAの報道資料にある。


この事業は脳インプラントでPTSDに悩む兵士を助けることをめざし、脳損傷、不安症、薬物濫用等にも対応する。ただし実施すると倫理問題がからむため、専門家が参加し、神経科学技術の安全な実施を目指している。



6. ロボット歩兵ロバ



重い装備品を運搬すると兵士の健康を害し、業務遂行にも影響が出る。このためDARPAはロボット工学分野の企業ボストンダイナミクス Boston Dynamicsと共同で脚走行分隊支援システム Legged Squad Support System (LS3)を実現させた。


400ポンド運搬可能なLS3は歩兵分隊と行動を共にする。DARPAウェブサイトでは事業の目標を「分隊と移動しながら分隊の任務遂行を妨げないロボットの開発」としている。


7.核爆発で推進する宇宙船


DARPAは宇宙旅行にも資金投入している。プロジェクトオライオンは1958年に始まり宇宙船の新型推進方法で研究が目的だった。仮説では原子爆弾の爆発力を前方推進の動力とすれば驚くべき速力が実現するはずだった。


ただし、1963年に部分各区実験禁止条約が成立し、宇宙空間で核爆発ができなくなったため同プロジェクトは解散した。


8. 機械仕掛けの象


1960年代、DARPAはヴィエトナムのジャングルでも自由に兵員物資を移動できる車両研究を開始した。


ハンニバルの先例から、DARPA研究員は象がぴったりだと判断した。そこからDARPA史上で最も悪名高いプロジェクトが生まれ、機械仕掛けの象の製作を目指した。成果物はサーボ機構で作動する脚で重量物を移動させるはずだった。


DARPA長官がこのプロジェクトの存在に気付き即座に中止させたのは議会筋が聞きつけ予算カットされては困ると判断したためとNew Scientistにある。■


この記事は以下を再構成したものです。


8 weird DARPA projects that make science fiction seem like real life


Harm Venhuizen


2020年9月6日日曜日

F-15JSI改修に見えるステルス、非ステルス機同時運用構想は日米が共有している

 F-15JはF-35と併用して大威力を発揮する機体となる。

本は最高45億ドルでボーイングF-15J合計98機を大幅改修し、「日本向けスーパー迎撃機」(JSI) 仕様とする案件で米国務省の承認を2019年10月末に受けた。

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JSIは日本が導入中のロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機と併用され、相互補完の関係になる。一方で米空軍は独自にF-15、F-35混成運用を模索している。

 

日米の空軍がステルス、非ステルス機材の長所短所をバランスさせようとしているわけだ。

 

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通常型なら探知されてもステルス戦闘機なら回避できるが、あくまでも兵装を機内搭載の場合だ。ただし、ステルス機は兵装庫で燃料搭載量が犠牲となり、航続距離が短く、ペイロードも非ステルス機より少ない。

 

他方で非ステルス機は最新の「極超音速」ミサイルも含む兵装を大量搭載できる。

 

両国政府はバランスのとれた機材編成の重要性を実感しつつある。こうして見ればF-15近代化改修が突飛な発想ではないことがわかる。

 

JSI改修は広範囲で、レイセオン製AN/APG-82(V)1アクティブ電子スキャンアレイレーダー、BAEシステムズ製AN/ALQ-239デジタル電子戦装備(レーダージャマー)を含む。また新型ミサイルも導入する。

 

「日本にはAESAシーカーがつく高性能AAM-4Bがある。ただ日本が米製AIM-120AMRAAMの導入も検討中との報道もある」と War Zoneのジョセフ・トレヴィシックが以下伝えている。

AIM-120はAAM-4Bより小型で交戦距離も短いというが、F-15JのJSI仕様にAIM-120を多数搭載することに意味がある。性能不足を数で補えるからだ。それ以外に日本は欧州のミサイル共同事業体MBDAの英国事業部と共用新型空対空ミサイルの開発にあたっており、シーカー他部品をAAM-4Bから流用しながらMBDAのラムジェット推進ミーティアの機構を取り入れるといわれる。

 

日本はF-35A(105機)、F-35B(42機)を発注しており、米英両国に次ぐ第三位の導入規模となる。2020年代中ごろの日本の戦闘機部隊はF-35とF-15JSIが中心となる。

 

「F-15JのJSI仕様機はF-35Aとの組み合わせで効果を発揮し、防空出撃で重宝されるはずだ。F-35との併用では、F-35が先を飛び標的情報を非ステルス機に伝え、非ステルス機の兵装搭載量が威力を発揮するはず」(トレヴィシック)

 

米空軍も同様にF-15とF-35の同時運用を狙い、新規生産のF-15EXを144機発注し1980年代製造のF-15Cを更新する。同時にF-35も導入しステルス機1000機超の運用とする。

 

F-15EXは「F-15C/D部隊がこなしているミッション範囲を広げるユニークな機材になる可能性がある」とWar Zoneのタイラー・ロゴウェイが伝えている。

 

「兵装運搬トラックとして、極超音速巡航ミサイルや超長距離空対空ミサイルのような大型兵器の搭載機として、さらに無人機編隊の統制用に、また第五世代機と第四世代機間の通信中継機として戦闘空域で重宝されるはずだ」

 

わずか数年前まではこれからは全ステルス機編成になるとの見方が主流だったが、今や混合編成が常識になりつつある。日米以外にもロシアや中国もステルス機調達は小規模としつつ非ステルス機材で改修を進めている。■

 

この記事は以下を再編成したものです。

 

A F-15J “Super Interceptor” Could Be Just What Japan's Air Force Needs

September 4, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: F-15JapanF-15 FighterMilitaryTechnology

A F-15J “Super Interceptor” Could Be Just What Japan's Air Force Needs

by David Axe 

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This article first appeared in 2019.

Image: Wikipedia


英陸軍が戦車部隊を縮小中。全廃も視野に入っている模様。105年の運用実績に幕が下りる?

 国は戦車保有数を削減中で、多数車両は20年にわたり性能改修を受けていない。

英陸軍が史上初の「タンク」を戦闘投入して今月は104周年となる。投入の一年前にウィンストン・チャーチルが陸上艦艇 Landships 委員会を発足させ、戦車原型の開発が始まった。同委員会は全地形を移動可能な大型車輪付き「陸上艦」自重300トンの開発を統括しようとした。

 

同構想は大胆すぎるとわかり、一号戦車はドイツ帝国のウィルヘルム三世皇帝を侮蔑し「リトルウィリー」と呼称されたが、当初構想から大幅縮小され、かつ非武装だった。そこからほぼ一年かけてMk I戦車として改良された。当時は開発対象を欺瞞するため、車両に「タンク」の名称がつき、清水を戦線へ運搬する容器に誤認させようとした。1915年12月に「タンク」が公式採用され、陸上艦委員会はタンク補給委員会に呼称変更された。戦車はソンムの戦いで実戦デビューした。

 

以来一世紀が経過したが、戦車を最初に実戦投入した同じ国が戦車を全廃しようとしている。昨年、ペニー・モーダント国防相(当時)は戦車は時代遅れと発言し、英陸軍のチャレンジャー2戦車は20年余り大規模改修を受けていないと述べていた。

 

 

戦車配備数の削減がすでに始まっている。英陸軍はチャレンジャー2戦車500両を運用していたが、現在227両ほどになっており、多数は保管状態に置かれている。さらに148両に削減の可能性があり、戦車連隊はわずか2個になりそうだ。各連隊には56両程度が配備され、その他は訓練・予備車両となる。

 

英陸軍の選択肢にはチャレンジャー2近代化改修として砲塔主砲の更改もあったが、ドイツのレパード2導入の構想もあり、もともと100年あまり前に対ドイツ戦を想定し戦車を開発した国がドイツ製戦車を採用する可能性があるのは皮肉なことだ。

 

現在の議論は新型戦車の開発にとどまらず、英軍がNATO軍事同盟でど果たすべき役割という根本問題に焦点が集まっている。

 

英陸軍の戦車連隊が二個のみとなるが、チャレンジャー2戦車がウォリアー戦闘車両(28トン)と併用される。ウォリアーは歩兵を戦場に移動させながら軽装甲車両なら十分対抗できる。ただし、ウォリアー(700両)でも近代化改修が予算超過と遅延に直面している。

 

英国が戦車全廃に踏み切っても初の国とならない。オランダ陸軍は戦車部隊を廃止し、予備数両が残るのみだ。オランダ軍歩兵部隊はドイツ陸軍の装甲部隊に編入されている。

 

米海兵隊も今年初めに戦車部隊は全廃し、砲兵隊も三分の一削減する案を発表し、今後は揚陸作戦を主眼に置く軽装備で戦闘部隊となる。

 

英陸軍も戦車の必要性を感じるだろうが、戦闘状況の変化をにらんで決断するだろう。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Will the British Army Retire the Tank After 105 Years?

September 3, 2020  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: TanksUnited KingdomRoyal ArmyNATORussiaMilitary

Will the British Army Retire the Tank After 105 Years?

by Peter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com


2020年9月5日土曜日

三井E&Sがヴィエトナム向け艦艇建造へ

 井E&Sの造船部門はマレーシアの投資会社T7グローバルバハドの海洋部門と共同でヴィエトナム人民海軍(VPN)、ヴィエトナム沿岸警備隊(VCG)向け艦艇の建造を狙う。

 


 

Japan’s Mitsui Engineering & Shipbuilding, which in January launched Japan’s third Hibiki-class ocean surveillance ship (pictured), has signed an agreement with Malaysian firm T7 Marine to explore naval vessel opportunities in Vietnam. (JMSDF)

三井E&Sはひびき級海洋観測艦三号艦あきを1月に進水させた。 (JMSDF)

 

 

T7は完全子会社のT7マリーンが事業に参画し、三井と商機を探るとし、まずVPN、VCG向けの建造を手掛けると発表。

 

両社の合意覚書によれば、それぞれの知見を活かし、ヴィエトナム向け艦艇建造で受注を目指すほか、同国で他の商機も模索する。契約は3年間有効で延長も可能。


今回の事案は日本がめざす東南アジア向け防衛装備輸出拡大の一環だ。

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同社は2019年に海上自衛隊に向け遠洋哨戒艦艇12隻の建造計画を提示していた。また今年1月にひびき級海洋観測艦の三号艦を進水させている。ひびき級は先に二隻が1990年代に供用開始している。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Mitsui, T7 sign deal to supply naval vessels to Vietnam

04 SEPTEMBER 2020

by Jon Grevatt

 


2020年9月3日木曜日

SCS内の中国の不法軍事施設は米軍攻撃で瞬殺される (もしそうならざまあみろ、だ)

 国が南シナ海で構築した人工島には一定の軍事的意義があるとはいえ、水路及び海底資源の確保という政治的主張の一部としての意味のほうが大きい。だがいったん戦闘が始まれば、各島の価値は急落する。

 

 

南シナ海(SCS)に構築した各島を中国は守り切れるだろうか。

 

第二次大戦中の日本は各島の支配で戦略的優位性を発見したものの、米国を各島攻略に分散させることには失敗した。時間が経つにつれ、各島は戦略的な負債になり、日本は糧食、燃料、装備等の補給に追われることになった。SCS内の各島は中国に好都合な立地とはいえ、中国軍に真の価値を生む資産になれるだろうか。答えは肯定的だが、実際に戦闘開始となれば価値は急落するだろう。

 

中国は何を構築したのか

 

中国はSCS各地に軍事施設を構築し、特にスプラトリー、パラセル両諸島に多い。このうち、スプラトリーではスビ、ミスチーフ、フィアリークロスに滑走路を構築したほか、ミサイル陣地、レーダー、インフラ施設が造成されそうだ。パラセルではウッディー島に大規模施設を構築し、その他の場所にヘリコプター施設、レーダー基地を設けた。中国の建設工事は続いており、将来の軍事プレゼンスが拡大しそうだ。大規模基地のあるスビ、ミスチーフ、フィアリークロス、ウッディクロスには軍用機施設が備わり、戦闘機、大型哨戒機に使える。ミサイル陣地、レーダー、航空機による中国軍事力は南シナ海全域に届く勢いだ。

 

ミサイルに注目

 

一部の島はSAM装備の拠点になり、125マイル射程のHQ-9以外にロシア製S-400が導入されそうだ。また地上発射式巡航ミサイル(GLCM)も配備されよう。こうしたミサイルで南シナ海は米艦船、航空機に危険な場所となる。あるいは防空装備の不足を痛感する事態になる。SAMにネットワークやレーダーが接続されれば、敵機は相当の電子戦支援がないと接近できなくなる。GLCMで中国のA2/ADネットワークが強化され、潜水艦、艦艇、航空機からの発射を上回る威力を発揮できる。

 

だが戦闘となればミサイル拠点が残存できなくなるのは公然の秘密だ。陸上配備ミサイルが航空攻撃から生き残るために丘陵地、森林、他自然条件を使い隠れる。だが人工島にはこうした条件は皆無で、人工島といえども協調攻撃の前には無力となる。さらにミサイル発射装置には燃料、電力、弾薬等の切れ目ない補給活動が必要だが、撃ちあいとなれば中国がこうした補給を確実に実施できるか不明だ。

 

航空施設は簡単に排除できる

 

大型拠点があるSCS内四か所に軍用機施設が整備された。だが高性能戦闘機よりも哨戒機、電子戦機、早期警戒機の運用が重要となる。こうした機材を有効に使えば中国のA2/ADバブルは拡大でき、標的データをミサイル陣地や水上艦、さらに中国本土へ送信できる。戦闘機が展開すればSCS上空はさらに危険な場所となり、巡航ミサイルにより米艦艇の接近を阻める。

 

だが戦闘攻撃を受けた飛行施設の有効性は修理用資材、装備がどこまで使えるかで変わる。中国がSCSで構築した各基地が米軍ミサイル攻撃や爆撃を受けても機能できるか不明だ。大型基地には航空機の退避施設もあるが、こうしたシェルターが米軍の協調攻撃を受けてもそのまま残るかは大いに疑問だ。

 

レーダーも脆弱な攻撃目標になる

 

SAM、GLSM、戦闘機材は正確な標的データがあってこそ威力を発揮できる。重要なのはSCS各島のレーダー施設だ。各施設は脆弱とはいえ、中国に正確な戦闘状況を伝える貴重な存在となる。すべて機能すれば中国の防衛体制の有効性が増大する。

 

だがレーダー施設は米軍攻撃の前に脆弱だ。ミサイル攻撃、電子戦、サイバー攻撃、あるいは特殊部隊の襲撃もありうる。有事になれば中国はいきなりレーダーネットワークにアクセスできなくなりそうだ。それでもレーダーネットワークは比較的低予算で米軍のSCS突入を困難にする存在となる。

 

補給活動が中国に維持できるか

 

SCS各島における中国軍事力の発揮は中国本土と安全に通信できることが条件となる。中国が構築した人工島の多くでは補給品備蓄ができないか、攻撃の前に安全に確保できなくなる。各島には燃料、装備、弾薬類の補給が必要なため、中国の伸びきった補給部隊に相当の負担となる。PLAN、PLAAFが戦火にさらされた各島への補給作戦にリスクを押しても実施することにさしたる関心を示さなくなれば、SCS内各島の軍事的価値はマイナスとなる。中国にとって不幸なのは、島嶼戦の本質や補給体制のため各陣地を維持したくても、きわめて短期間しか可能でなくなることだ。

 

水上艦対要塞の戦いになっても

 

ネルソン卿が述べている。「要塞に戦いを挑む軍艦は愚かだ」。だが、水上艦が陸上拠点に優位となる状況もある。SCS内の中国の各島は移動できないし、軍事装備品や貯蔵品を隠す場所もない。米国はSCS内の各島の軍事施設を綿密に把握し、各島へ向かう軍事装備品の海上輸送も追尾できるだろう。これで各島は水上艦、潜水艦、航空機からの攻撃に極度なまで脆弱となる。ミサイルにはリアルタイムの標的データは必要でない。

 

米国に必要なのはズムワルト級駆逐艦に搭載予定だった高性能主砲装備で下した決定を覆すことだ。この主砲用の砲弾があればズムワルト級各艦は長距離から中国の各島を攻撃可能となり、深刻かつ復旧不能な損害を比較的安価に実現できる。これがないままだと各島には本来もっと重要な標的に残すべき巡航ミサイル多数を振り向ける必要がある。

 

SCS内各島には軍事的な意義も一部あるものの、むしろ水路や海底資源の保有を主張する政治的な道具としての方が重要だ。軍事的には中国のA2/ADシステムの薄い外皮となる。一定の条件があれば、この薄皮で米国の航行の自由を脅かせるが、米国の海軍空軍部隊からすれば排除は容易なことだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Are China's South China Sea Islands More Trouble Than They're Worth?

September 2, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: South China SeaPLAPLANPeople's Liberation ArmyBeijingIslandsMilitaryTechnology

by Robert Farley 

 

Robert Farley, a frequent contributor to TNI, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government. This first appeared in 2018.


2020年9月2日水曜日

主張:次期自民党政権に防衛政策の継続を期待する。しかし、中朝の脅威の前に今のままでいいのか。

 日本はここ数年、防衛力近代化に走ってきた。次期首相も同じ路線を守るだろうか。だが中国の軍事力拡充にそれで十分だろうか。

 

西太平洋の安全保障環境は米国ならびに同盟国、友邦国に厳しくなっている。中国は域内支配を狙い、世界規模で兵力投射している。北朝鮮は弾道ミサイル、核弾頭双方の増強をいっこうに止めていない。中国、北朝鮮双方を抑止し、両国の軍事強硬策を止めるため、米国は域内での防衛姿勢を質量双方で変えつつある。米国の同盟国特に日本も同じ路線で努力が必要だ。だが、日本は正しい形で予算投入していくだろうか。 

 

西太平洋で力のバランスが急速に変わりつつある。中国は「大国」にふさわしい軍事力を整備し米国を追い抜こうとしている。そのためハイテク装備の実現に注力している。その狙いが米国から優位性を奪い、また米国の弱点をつくことなのは明白だ。人民解放軍(PLA)は長距離攻撃能力の整備を急進展している。PLA空軍は第五世代ステルス戦闘機を運用中で、新型長距離戦略爆撃機も加わる。PLAには長距離精密誘導弾道ミサイル巡航ミサイルが多数あり、なかでもDF-21は米空母攻撃を念頭に開発されたといわれる。通常弾頭付きミサイルは大量一斉攻撃に投入され、敵軍を緒戦で撃破するのが狙いだ。PLA海軍は攻撃型潜水艦、空母、ミサイル駆逐艦、大型揚陸強襲艦を急速に増やしている。

 

対抗する米軍は兵力構成や作戦構想を大きく変えつつある。最終目的は域内各地で部隊を迅速展開し、機動性を高めた統合部隊を各ドメインで戦力を発揮できるようにすることだ。海兵隊の遠征高機能拠点運用 Expeditionary Advanced Base Operationsは小規模ながら高機動編成の部隊を敵軍近くで移動させしつづけ、同時に長距離火力で攻撃する構想で、米国がめざす将来のハイテク戦そのものといえる。

 

米軍は新型高性能装備の導入でこうした部隊を支援する。中でも重要なのが長距離精密攻撃手段の長距離空対地ミサイル、トマホーク巡航ミサイルブロックV、陸軍の精密攻撃ミサイルだ。ミサイル防衛も重要で、陸上配備のイージスアショアやTHAADがあり、海上配備ではイージス弾道ミサイル防衛装備に新型SPY-6レーダーが導入される。

 

米国の同盟各国も中国の脅威を意識し、こうした安全保障対策の変化を共有しており、国防支出を増やしており、装備近代化を急いでいる。なかでもF-35共用打撃戦闘機の導入が日本、オーストラリア、韓国で配始まっている。

 

米同盟国としての日本の重要性は過大評価しても足りない。日本はインド太平洋で他に代えがたい役割を果たしており、その理由に同国の地理条件のほか経済力以外に、米国との緊密な関係がある。米空軍、海軍、海兵隊が日本に配備されているのはこの特別な地理条件のためだ。

 

安倍晋三首相のもと日本政府は中国、北朝鮮の脅威への抑止効果を安全視保障上の第一優先事項としてきた。自衛隊各部隊を質量双方で向上せつつ、マルチドメインでの作戦実施能力を整備してきた。

 

ここ数年の日本は装備近代化を大幅に進め、国土や周辺海域の防衛能力向上に加え遠隔地への兵力投射能力も整備してきた。F-35は147機を導入するとともにV-22ティルトローター輸送機、KC-46A空中給油機、AH-64アパッチガンシップ、ペイトリオット防空ミサイルを米国から導入する。配備中のF-15Jの大部分に新型電子装備とあわせ高性能兵装を搭載する。

 

さらに日本は国産防衛装備品の拡充も進めている。自衛隊はいずも級二隻を小型空母に改装し短距離離陸垂直着陸型F-35Bを搭載する。また第六世代戦闘機の開発を開始し、現行のF-2の後継機とする。また米国と共同開発で低軌道周回型のミサイル警戒衛星を開発する。

 

問題なのが本土ミサイル防衛体制で、イージスアショアを二か所に導入する決定が下されたが、防衛省は導入停止を発表した。中国、北朝鮮の弾道ミサイル脅威の増大を考えると、日本はミサイル防衛を真剣に考える段階に来ていると言えよう。

 

安倍政権の終焉となった今こそ安全保障で日本が果たすべき役割をインド太平洋の構図の中で真剣に考えるべきだ。率直にいって日本に中国北朝鮮へ抑止効果を発揮する意図があるのなら現行の努力では不足だ。これまでの努力を土台に未来を描く必要がある。具体的には中国あるいは北朝鮮による攻撃をかわし、または減衰させる能力が必要だし、米国や同盟国による軍事対応までは時間を稼ぐ必要がある。追加予算を効果的に投じれば、日本は「不沈空母」となる。これは第二次大戦中に英国が果たした役割である。

 

これは動的静的双方での防衛体制整備にしっかりと予算を投入しつつ、中国北朝鮮の航空機やミサイル攻撃へ対応することを意味する。同時に敵作戦を妨害するべく長距離攻撃作戦も実施すべきだ。一部にはさらにその先の「積極的否定」として日本を攻撃に耐えられるようにする防衛能力と合わせ本土周辺からさらに遠くを狙い、敵攻撃力を減衰させる攻撃能力が必要と主張する向きもある。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Can Japan Continue To Grow Into The Military Ally The U.S. Needs?September 1, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: JapanMilitaryJSDFShinzo AbeF-35China

by Dan Goure


Dan Gouré, Ph.D., is a vice president at the public-policy research think tank Lexington Institute. Goure has a background in the public sector and U.S. federal government, most recently serving as a member of the 2001 Department of Defense Transition Team. You can follow him on Twitter at @dgoure and the Lexington Institute @LexNextDC. Read his full bio here.


2020年8月31日月曜日

これもおかしい。タイが中国から通常型潜水艦を調達して海賊対策に投入??

  

タイは2015年にS26Tディーゼル電気推進式潜水艦三隻の導入を決めた。写真はS26Tの原型元級の前身宋級。(SteKrueBe/WikiMedia Commons)

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イが潜水艦二隻を中国から追加導入の意向を示したことで、同国内に波紋が広がっている。最大野党はコロナウィルスで経済が打撃を受ける中で調達を進めていいのかと懸念を示している。

 

潜水艦の有効性に疑問を呈す批判派に対し、王立タイ海軍は8月31日記者会見を開き、導入の正統性を訴えた。

 

タイは2015年にS26Tディーゼル電気推進潜水艦三隻の導入を決めた。同型は中国の039型元級の輸出版だ。一号艦を390百万ドルで2017年に調印し、引き渡しを2024年に想定する。

 

議会小委員会は残る2隻の調達を717百万ドルでめざす政府原案を議長の一票という僅差で承認している。

 

報道機関向け説明会で調達を正当化しようと海軍参謀総長シティポン・マスカセム大将Adm. Sittiporn Maskasemは国防戦略の一環で潜水艦多数が必要と述べた。続いてプレゼンテーションでは周辺国で潜水艦導入が続き、実際に稼働開始しているため今回の調達が必要と説明した。

 

だがシンガポールのS・ラジャラトナム国際研究所の研究員コリン・コーCollin Kohは「そもそも潜水艦が同国の防衛やになぜ必要なのか説得力は低い」と述べ、「お隣に負けてはと見栄を張る」ことが導入の唯一の理由だとツイッターで解説していた。他国と同等の装備品を買わないと出遅れるとの恐れて正当化しようというのだ。

 

潜水艦が抑止効果を生み、実戦で威力を発揮することはコーも認めるが、タイ海軍の説明に疑問点が残ると指摘する。そのひとつが海賊対策に投入する、不法漁業者取締り用、さらに人道援助任務災害救難に投入するというものだ。

 

国際観光客に大きく依存するタイ経済はCOVID-19で旅行そのものができず制限されて大打撃を受けている。最も楽観的な予測でも今年タイへ入国の旅行客は8百万人に過ぎず、2019年実績の19百万人に遠く及ばない。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Thai submarine purchase hits rough seas By: Mike Yeo