2020年9月7日月曜日

発想力と大胆な資金投入がすごいぞ DARPAの奇想天外プロジェクトのごく一部をご紹介

 


The Legged Squad Support System (LS3) walks around the Kahuku Training Area July 10, 2014 during the Rim of the Pacific 2014 exercise. (U.S. Marine Corps photo by Sgt. Sarah Dietz/RELEASED)

脚走行分隊支援システム(LS3)が2014年のリムパック演習で走行実演をした。(U.S. Marine Corps photo by Sgt. Sarah Dietz/RELEASED)



宙から人体の脳組織に至るまで国防高等研究プロジェクト庁DARPAが助成した研究成果を軍が利用し、最新技術を使っている。


DARPAの功績にはインターネット、GPS、ステルス航空機がある一方で、設立以来62年の歴史に奇想天外な案件も多数見られる。


DARPAが他機関と一線を画すのは通常の調達ルールを使わないことで、研究者、イノベーターの採用、給与でも制約が少ない。またDARPAには予算執行上で制約も少なく、実現可能性が低い案件にも資金投入が可能で、軍のベンチャーキャピタルとして機能している。

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では、DARPAが「ハイリスク・ハイリターン」と分類した中で読者の関心を引きそうな案件を紹介していこう。



1. 植物を食べるロボット


正式名称「エナジー自律戦術ロボット」Energy Autonomous Tactical Robot (EATR)の本事業では植物が飼料のロボット開発を目指す。実現すれば監視用あるいは防御用で人員や通常のロボット装置より長期間補給なしで活動できる。


開発にあたるのはサイクロンパワーテクノロジーズ Cyclone Power Technologiesで「将来食糧危機が発生したらどうするのかという懸念があるのはわかるが、それは当社のミッションではない」と同社CEOハリー・ショールが述べている。


同プロジェクトが2015年に中止された前に、技術陣はEATRはバイオマス150ポンドで100マイルの移動が可能と試算していた。



2. 自己修復型の建築物


想像してほしい。兵員が軽量足場で建物や防御拠点を整備している。足場から耐久性のある素材がしみ込んでいく。この素材は損傷を受けても元通りに復旧する。



これがDARPAのエンジニアリング生体素材Engineering Living Materials事業の目指すゴールで自己修復可能な建築素材を実現する。3Dプリンターで器官組織を作成し、ハイブリッド素材として形状を保ち、細胞成長を支える効果を実現しようとしている。


「完成形の素材を補給するのではなく、原型を支給し現地資源を使い急速成長させる。また素材が生きているため、環境変化に対応が可能であり、損傷を受けても復旧する」とプロジェクト主幹ジャスティン・ガリヴァンが述べている。


3. 実験室培養の血液



血液の遺伝子組み換えblood pharminng とは人体からの採血ではなく、血球を実験室で作成する技術だ。DARPAの血液遺伝子組み換え事業では赤血球関連で製造効率を上げ費用を削減する狙いがあった。


成功すれば、戦場や世界各地の病院で輸血用血液が大量に利用可能となり、輸血による疾病発生リスクが減るはずだった。


2013年の報道発表では同事業により合成血液装置一式の費用が90千ドルから5千ドル未満に下がるとあったが、追加発表はない。最新の予算説明資料にはこの事業は掲載されていない。



4. サイボーグ昆虫


無人航空機はおおはやりだが、設計組立に人手が必要で高費用となる。では、飛ぶ生体にセンサーを乗せれば費用は発生しないのではないか。


DARPAのスパイ昆虫事業は2006年事業に掲載されており、昆虫に発信機を埋め込み監視活動に投入する構想だった。ハイブリッド昆虫マイクロ電子機械システム事業 Hybrid Insect Micro-Electro-Mechanical Systemsはミシガン大、コーネル大が担当した。数年後に研究陣は昆虫を制御するインターフェースの開発に成功した。


2009年にコーネル大は放射性物質を動力とする送信機をサイボーグ昆虫に埋め込んだと発表した。ニッケル同位体-23からセンサー、送信機に電力が供給されながら、人体には無害である。



5. 脳インプラントでPTSD治療を


DARPAは戦闘用装備品のみに主眼を置くわけではない。戦闘で発生する兵士への陰の部分でも解決策に資金投入している。


新治療方法を模索するシステムに基盤を置く神経科学Systems-Based Neurotechnology for Emerging Therapies事業では「インプラントで閉回路の診断および治療を確立し、精神神経疾患の対応、さらに治癒をめざす」とDARPAの報道資料にある。


この事業は脳インプラントでPTSDに悩む兵士を助けることをめざし、脳損傷、不安症、薬物濫用等にも対応する。ただし実施すると倫理問題がからむため、専門家が参加し、神経科学技術の安全な実施を目指している。



6. ロボット歩兵ロバ



重い装備品を運搬すると兵士の健康を害し、業務遂行にも影響が出る。このためDARPAはロボット工学分野の企業ボストンダイナミクス Boston Dynamicsと共同で脚走行分隊支援システム Legged Squad Support System (LS3)を実現させた。


400ポンド運搬可能なLS3は歩兵分隊と行動を共にする。DARPAウェブサイトでは事業の目標を「分隊と移動しながら分隊の任務遂行を妨げないロボットの開発」としている。


7.核爆発で推進する宇宙船


DARPAは宇宙旅行にも資金投入している。プロジェクトオライオンは1958年に始まり宇宙船の新型推進方法で研究が目的だった。仮説では原子爆弾の爆発力を前方推進の動力とすれば驚くべき速力が実現するはずだった。


ただし、1963年に部分各区実験禁止条約が成立し、宇宙空間で核爆発ができなくなったため同プロジェクトは解散した。


8. 機械仕掛けの象


1960年代、DARPAはヴィエトナムのジャングルでも自由に兵員物資を移動できる車両研究を開始した。


ハンニバルの先例から、DARPA研究員は象がぴったりだと判断した。そこからDARPA史上で最も悪名高いプロジェクトが生まれ、機械仕掛けの象の製作を目指した。成果物はサーボ機構で作動する脚で重量物を移動させるはずだった。


DARPA長官がこのプロジェクトの存在に気付き即座に中止させたのは議会筋が聞きつけ予算カットされては困ると判断したためとNew Scientistにある。■


この記事は以下を再構成したものです。


8 weird DARPA projects that make science fiction seem like real life


Harm Venhuizen


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