米空軍向け次期戦闘機で実証機の存在が公表されたが、製造企業は謎だ。
空軍調達を仕切るウィル・ローパーは新型機について多くを語らず、すでに飛行しており、一部システムは飛行テスト中で、デジタルエンジニアリングで作成したとだけ述べている。
では謎解きの手がかりを見てみよう。まず試作機は次世代制空戦闘機(NGAD)事業の一部のようだ。
2015年1月、下院軍事委員会で当時の調達、技術、補給活動担当国防次官補フランク・ケンドールは新型機各種をエンジン技術とあわせ空軍、海軍向けにDARPA主導のプロジェクトで開発中と述べていた。
「ねらいは次世代の制空能力を有する機材の試作機を開発することで、Xプレーンと呼んでよい」とケンドールは述べていた。航空宇宙技術革新構想Aerospace Innovation Initiativeと呼ばれ、「技術開発とともに関連リスクを解消し、F-35に続く機体さらに高性能航空機材を実現するのがねらいだ」
「NGAD試作機メーカーの候補にボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンがあり、そのほかジェネラルアトミックスも設計した可能性があるが可能性は低い」とキャピタルアルファパートナーズのアナリスト、バイロン・キャランが記している。「テクストロンがスコーピオンで新設計案も一年で飛行させることが可能と証明したが、戦闘用機材にこの技術が応用できるようになったとは思えない」
エンジンはGEあるいはレイセオンテクノロジーズ傘下のプラット&ホイットニー製とキャランはみている。
ではNGAD戦闘機の製造元として可能性のある各社を見ていこう。
ボーイング
シカゴに本社を置く航空宇宙大手の同社はデジタルエンジニアリングに詳しく、スウェーデンのSaabと共同でT-7A訓練機の設計製造を一年未満で完了した実績がある。T-7Aのミッションコンピュータはサードパーティ製ソフトウェア、アプリが実行でき、アップグレードは容易だ。また設計は組立工程の簡易化もねらい、胴体前後部の組立ては15分で完了する。F/A-18スーパーホーネットの胴体組立は24時間かかるとボーイングディフェンスCEOリーアン・カレットが述べている。
ノースロップ・グラマン
ノースロップがスケイルド・コンポジッツ Scaled Compositesを子会社にしているのを知る向きは少ない。これは初の民間宇宙船スペースシップワンの設計を担当しXプライズ受賞の企業だ。米空軍向け練習機競作で同社も新型機を組立てたが、参加を見合わせた。
ノースロップはペンタゴンの極秘事業で受注が増えている。B-21ステルス爆撃機事業にキャッシュを相当投じていると思われるが、秘密資金がNGAD試験機にも流れている可能性が十分ある。
同社は地上配備戦略抑止力事業にも参加しており、新型大陸間弾道ミサイルとして冷戦時のミニットマンIIIの置き換えを狙う。ここでもデジタルデザインテクノロジーを使っているとローパーが述べている。
ロッキード・マーティン
同社の高性能技術開発事業(ADP)部門はスカンクワークスの名称のほうが知名度が高いが、ここがこれまで米軍向け超性能極秘機材を数々開発してきた。U-2、SR-71、F-117対地攻撃機があり、同社はF-22ラプター、F-35共用打撃戦闘機も製造してきた。
「ADPは各種事業で多忙だ....デジタルセンチュリーシリーズのほか、第六世代機さらに次世代機がある」とロッキード・マーティンエアロノーティクスおよび傘下のスカンクワークスを率いるミシェル・エヴァンスが述べている。
エヴァンスは民生技術や民間手法を防衛用途に流用するロッキードの試みスタードライブ Stardriveについて以下述べている。「モデルをもとにしたシステムのエンジニアリングをソフトウェアのアジャイル開発やデータ分析やAIにどう応用するかを考えている」「こうした技術から想定外の機会が生まれ今後の装備品の開発期間を大幅短縮するでしょう」
その他企業Someone else
興味深い可能性として新型機は一社のみの製品とならないことがある。デジタルデザインツールの長所として新興企業でもこれまではひとつかみの既成企業のみが独占してきた市場に参入可能となるとローパーが力説している。その例として7月に空軍が有人機に随行可能な無人機開発をもとめたところ18社が応募してきた。
「大手企業の関心度は高いのは予想通りだが、小規模企業からも同様の藩王がある」と空軍物資本部を率いるアーノルド・バンチ大将が記者向けリモート会見で明らかにしている。「デジタルキャンペーンでデジタルエンジニアリングを進めればこれまでより広範囲の企業に門戸が開き、これまで不可能だった企業も参加できるようになるはずだ」■
この記事は以下を再構成したものです。
Who is Secretly Building the USAF’s New Fighter?
Officials are mum, so here’s a roundup of clues.
GLOBAL BUSINESS EDITOR
SEPTEMBER 16, 2020
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