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航空機の新しい開発製造方法となるデジタル技術の概要がわかってきた

 空軍が発表した次期戦闘機の試作型ではシミュレーション他デジタルツール各種が用いられており、米軍装備品の開発生産に新時代が到来したようだ。

 空軍が公表した次世代制空戦闘機(NGAD)の資料は中身がないに等しいが、飛行実証機材は記録を数々破ったようだ。判明しているのは空軍と社名未公表の契約企業が仮想空間で機体を設計したことで、従来の数分の一の時間で製造しテストにこぎつけたことだ。ちなみにF-35では製造だけで10年超が必要だった。

 「『eプレーン』で設計が短期間で可能となり、組立も短時間で完成し、テスト開始が早まり、データを量産機に反映できるようになった」と調達トップのウィル・ローパーが述べた。「事業のライフサイクルを通じデジタルスレッズすべてが加速化されている。加速すれば重要問題に集中できる。デジタルモデルに既知内容を放り込めばよい」

 仮想化自体は前からある。新しいのは計算能力の高さとデータの利用で現実物と一寸たがわぬデジタル版を作り、活用することだ。このデジタルツイニングdigital twinningは2002年のマイケル・グリーブス(ミシガン大プロダクトライフサイクル管理センター)による発表にさかのぼり、センサーの測定データで現物のデジタル版を作成するとあった。

 「このモデルの根本は各システムを二つのシステムで構成することにある。物理システムと仮想システムで後者は物理システムの全データを活用する」とグリーブスはその後2016年論文に著している。「つまりシステム同士を現実空間と仮想空間で鏡像関係あるいは双子関係にする」とあり、国防総省は次世代戦闘機の設計構想の探求に入っていると述べていた。

 NGADに関して空軍はF-35及びT-7訓練機のデータを活用し仮想試作機を開発してから物理的に飛行可能な機材を作成した。

 「今回の発表は『eプレーン』を製造して仮想空間で飛行させているだけでなく実寸大の飛行実証機材が完成済みで現実世界で飛行を開始しているというものです」(ローパー)

 さらに各種eプレーンの迅速製造に必要なデータが空軍にあり、既存機種の改良に加え完全新型機も手に入る能力があるという。ローパーはT-7の後継機ならテストは小規模で十分と述べている。 

 デジタルツイニング構想は空軍だけのものではない。アップルはiPhoneでこれを実施している。テスラは製造各車のデジタルツインを作成し、車両センサーがテスラに問題の発生を伝えてくると、修理工場での作業あるいはソフトウェア改修で解決できるかを区別してくれる。センサーデータはすべて新型車に反映され、現実世界での各現象が次の車両のもととなる。

 国防総省は宇宙空間にもこの応用を狙い、2018年4月に研究開発技術担当の次官補マイケル・グリフィン(当時)は議会で仮想化とシミュレーションを兵装、ネットワーク、装備の各分野に応用する必要を訴えていた。

 「わが方および敵勢力の装備のデータを共用シミュレーションで統合運用する能力を整備中で、高精度の評価がミッションレベルのシナリオで可能となれば、国防総省には各装備が実際にどこまでの威力があるのかが把握できるようになる」とグリフィンは発言していた。同年その後には国防総省に新デジタルエンジニアリング戦略の採択を急がせているとも発言していた。

 ペンタゴンはUptake社と契約を昨年結び、ブラッドレイ戦闘車両の仮想ツインで整備問題の予測予知の精度を上げようとしている。ローパーによれば将来は衛星から大陸間弾道ミサイルまで全装備の開発に同技術を応用するという。

 コンセプト提唱者グリーブスは最近になりデジタルツイニングの応用は空母他軍で必要とするほぼ全装備に広がっていると述べている。「仮想製品、現実製品を並べて見せたとしましょう。ほぼ全員がその違いは区別できないはずです」■

この記事は以下を再構成したものです。


The Virtual Tools That Built the Air Force’s New Fighter Prototype

“Digital twinning” is coming to a battlefield near you.

 

BY PATRICK TUCKER

TECHNOLOGY EDITOR

SEPTEMBER 15, 2020

 

先にお伝えしたeT-7Aというのは仮想空間上の機体名称の可能性が出てきましたね。今後はっきりするはずですが、まだ情報が錯そうしています。概念的には今回の記事で道筋がはっきりした気がします。

 

 


コメント

  1. >仮想化自体は前からある。新しいのは計算能力の高さとデータの利用で現実物と一寸たがわぬデジタル
    >版を作り、活用することだ。

    うーむ、つまり…eプレーンは、仮想空間に構築された寸分たがわぬ実機のコピーで、実機に先んじて飛行を開始するわけですね。デジタル大気、デジタル気流、デジタル気圧、デジタル重力の環境で。
    ちょっと考えただけでも、ものすごいコンピュータ・パワーが必要ですね。
    特定の飛行形態で機体構造の金具の一部が疲労破壊する、なんてのを検知しようと思えば、大気から機体に入る荷重、生じる応力の伝達、そして金具金属の性状までシミュレートできないと。
    もちろん、リアルタイムで計算するのではなくて、仮想飛行で得られたデータを各種ソフトで処理して後から検証するんでしょうが。いやはや!それでも、物理実機が作られるのを待つより速いのか。
    例えば、油圧配管で共振が起きる!とか、タイヤのグリップが足りない!とか…検知できるのか?できるんだろうなあ…ま、全部仮想空間でやる必要もないのか。実機で詰める細部が残っててもいいし。
    これに追いていく部品サプライヤーは、楽になるのか?大変になるのか?

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