国家防衛戦略構想が2018年1月より実施され三年近くになるが、国防長官もジム・マティスからマーク・エスパーに代わり、大国間競合に焦点を当てる構想で米軍の優先順位はどう変ったのだろうか。
この疑問に答える一つの方法が海軍省配下の装備の配備状況だ。特に空母打撃群と揚陸即応集団ならびに海兵遠征部隊が拡大ペルシア湾にどう展開してきたか。これまでの二十年は米軍並びに政策はこの地域に重点を置いてきた。バラク・オバマ大統領は「再バランス」としてアジア太平洋へ転換を図ろうとしたが、ロシアがクリミアを併合した2014年にヨーロッパへ再び注意を寄せた。ドナルド・トランプ大統領はこの筋道をさらに進め国防戦略構想をまとめ、中国、ロシアを明確に重点対象とした。マティス、エスパー両長官はこれに呼応した。
とはいえ、国家防衛戦略構想で米国防総省の兵力配備状況がわかるのか。つまるところ、同盟国および密接な安全保障上の協力国合計60か国を抱えた米国は多数の地域で多大な責任を課せられている。中でも中東にはどうしても多くを向けざるを得ない。
だが海軍関係の配備状況だけに目を向ければ、答えはイエスだ。ある程度までは。根本的な変化とはいえないものの、米海軍は中東への配備を減少させている。
2017年央以降の米海軍艦艇の配備状況を毎月まとめた米海軍協会の「フリートトラッカー」データベースを見れば、空母打撃群、揚陸即応集団の動きが従来のパターンと変化していることがわかる。相違点は二つで、これまで海軍はアデン湾から北インド洋までの範囲に空母打撃群を一個配備してきた。
2018年春から空母打撃群の配備が同地区にない期間が発生している。これは以前と異なる動きで国家防衛戦略の直接の影響と言われる。ペルシア湾に配備されるはずだった空母はバルト海へ向き、マティス長官のいう「戦略的には予測可能だが作戦上は予測不可能」な米軍の動きとなった。
ところが2019年にイランとの緊張が高まるとペルシア湾地区に空母戦力が不在な状態では不安となった。同年の冬、秋には不在だったが、6月に常時展開を再開した。国家防衛戦略の起草に携わったフランク・マッケンジー大将が米中央軍司令官となり空母プレゼンスを求めたためだ。今も重要なことでは変わりないが、重要度が下がってきた中東地区の実態は戦略構想と食い違うことがある。
その意味もあってか、中東地区では2019年冬から海兵隊の艦上待機はなくなっている。カシム・ソレイマニを殺害した2020年春に海兵揚陸集団一個を派遣したものの数か月で撤収させ、その後の配備はない。この部隊の航空支援兵力は空母打撃群の三分の一程度しかないが、二千名規模の海兵隊員を展開した。ミッションによっては意味のある兵力で海上石油施設や小艦艇の制圧にペルシア湾広域で効果を発揮するはずだ。このため、CENTCOM隷下の中東地区に次回揚陸集団が配備されても驚くにあたらない。
総体としては国防総省には二つの意味で賛辞を送りたい。ひとつは世界規模のコミットメントと同盟関係のある中で意味のある展開を維持していることであり、中東地区が戦略的な意味があるとはいえ、艦艇派遣を2割3割と減らし国家防衛戦略に対応すべく戦力展開に工夫していることだ。■
この記事は以下を再構成したものです。
How the U.S. Military is Prioritizing Great-Power Competition
September
25, 2020 Topic: Security Region: Americas Tags: PentagonMilitaryDefense DepartmentNavyObama
Michael
O’Hanlon is a senior fellow and the director of research of foreign policy at
the Brookings Institution.
Adam
Twardowski is a senior research assistant at Brookings, where he assists
O'Hanlon with his work on U.S. defense and foreign policy, as well as
Brookings' Project on International Order and Strategy, which focuses on
multilateralism and great power competition. He is a graduate of the Security
Studies Program at Georgetown.
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