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主張:次期自民党政権に防衛政策の継続を期待する。しかし、中朝の脅威の前に今のままでいいのか。

 日本はここ数年、防衛力近代化に走ってきた。次期首相も同じ路線を守るだろうか。だが中国の軍事力拡充にそれで十分だろうか。

 

西太平洋の安全保障環境は米国ならびに同盟国、友邦国に厳しくなっている。中国は域内支配を狙い、世界規模で兵力投射している。北朝鮮は弾道ミサイル、核弾頭双方の増強をいっこうに止めていない。中国、北朝鮮双方を抑止し、両国の軍事強硬策を止めるため、米国は域内での防衛姿勢を質量双方で変えつつある。米国の同盟国特に日本も同じ路線で努力が必要だ。だが、日本は正しい形で予算投入していくだろうか。 

 

西太平洋で力のバランスが急速に変わりつつある。中国は「大国」にふさわしい軍事力を整備し米国を追い抜こうとしている。そのためハイテク装備の実現に注力している。その狙いが米国から優位性を奪い、また米国の弱点をつくことなのは明白だ。人民解放軍(PLA)は長距離攻撃能力の整備を急進展している。PLA空軍は第五世代ステルス戦闘機を運用中で、新型長距離戦略爆撃機も加わる。PLAには長距離精密誘導弾道ミサイル巡航ミサイルが多数あり、なかでもDF-21は米空母攻撃を念頭に開発されたといわれる。通常弾頭付きミサイルは大量一斉攻撃に投入され、敵軍を緒戦で撃破するのが狙いだ。PLA海軍は攻撃型潜水艦、空母、ミサイル駆逐艦、大型揚陸強襲艦を急速に増やしている。

 

対抗する米軍は兵力構成や作戦構想を大きく変えつつある。最終目的は域内各地で部隊を迅速展開し、機動性を高めた統合部隊を各ドメインで戦力を発揮できるようにすることだ。海兵隊の遠征高機能拠点運用 Expeditionary Advanced Base Operationsは小規模ながら高機動編成の部隊を敵軍近くで移動させしつづけ、同時に長距離火力で攻撃する構想で、米国がめざす将来のハイテク戦そのものといえる。

 

米軍は新型高性能装備の導入でこうした部隊を支援する。中でも重要なのが長距離精密攻撃手段の長距離空対地ミサイル、トマホーク巡航ミサイルブロックV、陸軍の精密攻撃ミサイルだ。ミサイル防衛も重要で、陸上配備のイージスアショアやTHAADがあり、海上配備ではイージス弾道ミサイル防衛装備に新型SPY-6レーダーが導入される。

 

米国の同盟各国も中国の脅威を意識し、こうした安全保障対策の変化を共有しており、国防支出を増やしており、装備近代化を急いでいる。なかでもF-35共用打撃戦闘機の導入が日本、オーストラリア、韓国で配始まっている。

 

米同盟国としての日本の重要性は過大評価しても足りない。日本はインド太平洋で他に代えがたい役割を果たしており、その理由に同国の地理条件のほか経済力以外に、米国との緊密な関係がある。米空軍、海軍、海兵隊が日本に配備されているのはこの特別な地理条件のためだ。

 

安倍晋三首相のもと日本政府は中国、北朝鮮の脅威への抑止効果を安全視保障上の第一優先事項としてきた。自衛隊各部隊を質量双方で向上せつつ、マルチドメインでの作戦実施能力を整備してきた。

 

ここ数年の日本は装備近代化を大幅に進め、国土や周辺海域の防衛能力向上に加え遠隔地への兵力投射能力も整備してきた。F-35は147機を導入するとともにV-22ティルトローター輸送機、KC-46A空中給油機、AH-64アパッチガンシップ、ペイトリオット防空ミサイルを米国から導入する。配備中のF-15Jの大部分に新型電子装備とあわせ高性能兵装を搭載する。

 

さらに日本は国産防衛装備品の拡充も進めている。自衛隊はいずも級二隻を小型空母に改装し短距離離陸垂直着陸型F-35Bを搭載する。また第六世代戦闘機の開発を開始し、現行のF-2の後継機とする。また米国と共同開発で低軌道周回型のミサイル警戒衛星を開発する。

 

問題なのが本土ミサイル防衛体制で、イージスアショアを二か所に導入する決定が下されたが、防衛省は導入停止を発表した。中国、北朝鮮の弾道ミサイル脅威の増大を考えると、日本はミサイル防衛を真剣に考える段階に来ていると言えよう。

 

安倍政権の終焉となった今こそ安全保障で日本が果たすべき役割をインド太平洋の構図の中で真剣に考えるべきだ。率直にいって日本に中国北朝鮮へ抑止効果を発揮する意図があるのなら現行の努力では不足だ。これまでの努力を土台に未来を描く必要がある。具体的には中国あるいは北朝鮮による攻撃をかわし、または減衰させる能力が必要だし、米国や同盟国による軍事対応までは時間を稼ぐ必要がある。追加予算を効果的に投じれば、日本は「不沈空母」となる。これは第二次大戦中に英国が果たした役割である。

 

これは動的静的双方での防衛体制整備にしっかりと予算を投入しつつ、中国北朝鮮の航空機やミサイル攻撃へ対応することを意味する。同時に敵作戦を妨害するべく長距離攻撃作戦も実施すべきだ。一部にはさらにその先の「積極的否定」として日本を攻撃に耐えられるようにする防衛能力と合わせ本土周辺からさらに遠くを狙い、敵攻撃力を減衰させる攻撃能力が必要と主張する向きもある。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Can Japan Continue To Grow Into The Military Ally The U.S. Needs?September 1, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: JapanMilitaryJSDFShinzo AbeF-35China

by Dan Goure


Dan Gouré, Ph.D., is a vice president at the public-policy research think tank Lexington Institute. Goure has a background in the public sector and U.S. federal government, most recently serving as a member of the 2001 Department of Defense Transition Team. You can follow him on Twitter at @dgoure and the Lexington Institute @LexNextDC. Read his full bio here.


コメント

  1. 大きく変わる変数は中韓だろう。米中の摩擦で尖閣・台湾が最前線になろうとしている。
    韓国は反米・親中を隠さなくなり、その影響で日韓関係は破綻した。
    西太平洋地域で存在感を落とす米を補完し、レッドチ-ムとなった韓国と対峙しなければならない。
    戦略・装備とも従来の延長戦上では対応できないだろう。

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  2. >率直にいって日本に中国北朝鮮へ抑止効果を発揮する意図があるのなら現行の努力では不足だ。
    >これまでの努力を土台に未来を描く必要がある。

    こと防衛に関しては、中国北朝鮮に対し、いったいどうしたいのか?どうしていくのか?
    何も決められない、決めたくないのが日本の政治です。プレゼンスをリスクと見ている。
    気持ちはわかりますよ、私も日本人ですから。今のように、なんとな~く装備を更新して、なんとな~く各国軍とお付き合いして、何とはなしに「今の状態」が続く事以外は想像できない。
    莫大な時間と予算を要する新型戦闘機や軽空母のような装備を開発する一方で、尖閣のような自国の小島に旗一本立てられない。
    イージスアショアだってそうです。本気で防衛に資すると判断して導入を決めたのなら、何が何でも問題に対処して配備したでしょう。でも、そうはなってない。
    高価な兵器を輸入してくれる政治家じゃなくて、方針を決めてくれる政治家が必要ですね。

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  3. ぼたんのちから2020年9月3日 16:04

    CCPが、中華思想による中華帝国主義を保持し、軍備を拡張する限り、日本は、誰が首相になっても(野党が政権を担うことはまず無い)、軍事的抑止力を強化せざるを得ない。近年、この傾向は、ますます強まるばかりであり、軍縮も望めない。その事実は、日米同盟や多国間連携の深化や、日本の軍事力強化を促すことになる。
    CCPは、少なくても東アジアにおいて、米国に代わる支配勢力になろうとし、続いて世界でも米国にとって代わろうとする野望を持っている。武漢肺炎の世界的流行の最中でもCCPは、その侵略的性格を一層露わにしている。
    日本は、単独でPLAを抑止することは益々困難となり、数的劣勢のみならず、質的優位も損なわれつつあり、軍事費の増大にも限度がある。この状況で日本が取り得る選択は、日米同盟の堅守しかない。また、米国は、世界覇権を維持するために中国正面での日本との同盟が不可欠となっている。日米は、互いに相手を必要としており、この状態は、CCPが崩壊するまで続くだろう。
    今のところ、幸いにもPLAに大きな欠点がいくつもあり、日本の国力と軍事力を鍛える時間的余裕はありそうだ。CCPの恣意的な対日姿勢に左右されず、着実に抑止力を高めることが肝心と考える。
    ところで、PLAが南シナ海に放ったミサイル4発のうち、2発が途中で落下したようですが、そうならば「対艦」であるかどうかよりも、別の問題を抱えているかもしれない。あるいは、米軍がGPS電波を乱してからかったかもしれない。

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