2015年11月25日水曜日

★Su-24撃墜事件は今後どんな影響を与えるのか



今回の撃墜はトルコとしては忍耐を試された格好ですが、NATO軍という文脈で見ないと事実が見えなくなりますね。禍を持って福となるのか、それともロシアが突っぱねるのか、この数日が注目でしょう。陸上選手のドーピング問題でもロシアは当初西側の勝手な理屈だと反発していましたし、エジプトでのロシア旅客機墜落事件でも西側による爆弾テロ説を露骨に退けていましたが、結果は皆さんご承知のとおりです。

Analysis: Implications of Turkish Shoot Down of Russian Warplane

By: Cmdr. Daniel Dolan, USN (Retired)
November 24, 2015 2:19 PM • Updated: November 24, 2015 3:08 PM
A Russian Su-24 Fencer shortly after its was shot down by a Turkish F-16 on Nov. 24, 2015.
トルコ空軍により撃墜されたロシアのSu-24フェンサー。Nov. 24, 2015.


シリア国内の戦闘が24日火曜日新しい曲面に入った。トルコ空軍ロッキード・マーティンF-16 がロシア空軍スホイSu-24フェンサー戦闘爆撃機一機を撃墜したとの報道が入ったためだ。フェンサーは搭載能力が高く、友邦関係にあるバシャ・アルーアサド政権の支援にロシア軍は好んで投入している。同機は撃墜前にトルコ国境付近の目標を爆撃していたと伝えられている。

  1. 少なくとも3つの点は確実だ。問題のフェンサーは少なくとも10回にわたりトルコ航空管制官から同国空域を退去するよう警告を受けている。トルコ側はばレーダー画面を公表し、同機がトルコ領空に侵入していた証拠を見せる用意があるという。またロシア機はシリア国内のラタキア地方の北東部トルクメン居住地を攻撃していた。
  2. ロシアとトルコは緊張を高めていた。先月はトルコ空軍F-16がロシアのMiG-29戦闘機をインターセプトしている。同機はトルコ領空に侵入していた。また先週もBBC報道によればトルコ外務省がロシア大使を呼び、ロシア空軍が直ちに「無害なトルクメン村落」の爆撃を中止しないと「深刻な結果」を招くと警告している。これは今回の墜落地点付近のバイル・ブサク Bayir Bucak にある村落を指す。トルコ軍はロシア機撃墜を受け厳戒態勢に入っている。
  3. ロシア国防相セルゲイ・ショーグは当初は同機は「地上砲火により」撃墜されたと発言し、トルコ空軍F-16の存在を言及しなかった。ただし発生後数時間してからの発言はトルコが領空進入への非難をそらす目的があったようだ。
A Russian Sukhoi SU-24 Fencer.
ロシア空軍のSu-24フェンサー

  1. 外交の世界でエスカレーションが続いている。ロシア機が地上に激突する映像を見たロシア大統領ウラジミール・プーチンはトルコを「テロリスト共犯者」と呼んだ。ロシア外相セルゲイ・ラブロフは予定されていたトルコ訪問を取りやめた。
  2. 今回の事件はパリ襲撃事件を受けシリア航空作戦が激化する中で発生した。米、ロ、各国による空爆にフランス原子力空母シャルル・ドゴールが加わり、地中海東部から作戦を開始した。これでシリア・イラクを空爆中の国が更に増えた。ロシアが反アサド陣営を空爆目標に加えていること(ISISは入っていない)ことからNATOは強く反発している。また数週間前から今回のような事故の発生は必然と言われてきた。
  3. 軍用機が誘導ミサイルで撃墜される事例はこれまでまれだったが、NATOとセルビア軍の間で発生した旧ユーゴスラビア国内の紛争事件がある。セルビア軍の背後にはロシアの支援があり、NATO軍は数機を喪失している。英空軍ハリヤー一機、F-16数機、ロッキード・マーティンF-117ナイトホークも一機撃墜されている。
An undated photo of a Turkish Air Force F-16D.
トルコ空軍のF-16D

  1. 今日のNATO軍とロシアが支援するシリア国内勢力の目標が衝突しているのはバルカン半島の情勢と類似している。またチェック=バランスが働いて事態発生後も自制している点も似ている。望むらくは今後も同様な自制が働くことを願いたい。
  2. だがシリアではロシア軍がNATO軍と同じ地域で直接作戦行動している点は今までの歴史では発生していない事態だ。今回のSu-24はNATO軍が初めて公然と撃墜した初のロシア機であることにも注目すべきだ。
  3. 現時点でトルコ報道によるとロシア乗員は脱出に成功し生存しており、シリア国内のトルクメン系反アサド勢力が身柄を確保したという。トルコは乗員解放を交渉中だという。もし今回の事件がきっかけとなりNATO軍とロシア軍の間の調整、協調に繋がれば、ダーシュ(ISIS)への対抗作戦で最善の結果が生まれるのだが。■


2015年11月24日火曜日

★航空自衛隊>グローバルホーク3機を導入へ



当ブログでグローバルホーク導入の動きをはじめてお伝えしたのが2010年9月のことでしたから随分と時間がかかったことになります。実機の納入はこれからですが、自衛隊にも本格的なRPV(UAS)運用の時代がやってくることになりますね。南シナ海の動向を見ると本当はMQ-4トライトンのほうが使い勝手がいい気がするのですが、別途海上自衛隊が検討する日がくるのでしょうか。一方、中国は神経を尖らせるでしょうね。

US Approves $1.2B Global Hawk Sale to Japan

By Lara Seligman 4:20 p.m. EST November 23, 2015
WASHINGTON -- 米国務省はノースロップ・グラマンRQ-4グローバルホーク無人偵察システムズ合計3機の対日販売を認可した。国防安全保障協力庁(DSCA)が議会に11月19日付で通告していた。
  1. 対象はブロック30の機材で高性能統合センサー装置3基および航法システム16基を含み総額は12億ドル。
  2. 日本は監視偵察機材の拡充を図ってきた。とくに中国の動きに神経を尖らせている。防衛省はボーイングV-22オスプレイ、ノースロップのE-2Dホークアイとともにグローバルホークの導入を2014年に決めていた。
  3. 日本はジェネラルアトミックスのガーディアンERを退け、グローバルホークを航空自衛隊に導入する。
  4. 「今回提示のRQ-4販売事案は日本の情報収集・監視・偵察能力を大幅に拡充し、域内の脅威を継続して監視し、対策を打つことを日本に可能とする」とDSCA声明文が述べている。「航空自演隊は同機編入を容易に行うこ能力を有する」
  5. DSCA声明文は同機販売で日米の同盟関係がさらに強化され、中国の南シナ海進出で緊張が高まる中で対応に道を開くと表現。
  6. 「今回の販売は米国の外交政策、安全保障にも資するの。日本は東アジア有数の政治経済大国であり、西太平洋も含め米国の主要パートナーとして域内の平和と安定に重要な役割を果す」■


2015年11月22日日曜日

★Su-35を導入する中国が最新技術をコピーする可能性



石油価格の低迷で経済が苦しいロシアとしては軍事装備ぐらいしか輸出品がないので、中国向けのスホイ輸出はなんとしても実現したいのでしょう。背に腹は代えられないとはいえ、わずか24機だけの輸出はどう見ても胡散臭く、これまでの苦い経験から今回の最新鋭Su-35には安易なコピーを防ぐ工夫があるのではないでしょうか。日本にも火の粉がかかりそうな案件で目をそらしているわけにはいきませんね。

Russia-China Su-35 Deal Raises Reverse Engineering Issue

By Wendell Minnick 8:12 p.m. EST November 20, 2015
635836156624475829-DFN-Russia-China-su-35.jpg(Photo: United Aircraft Corp.)
ロシア製Su-35多任務戦闘機の初の輸出先は中国となったが、中国が同機技術をリバースエンジニアリングするのではとの懸念が出ている。前例があるためだ。
  1. 商談は20億ドルで24機売却でまとまったとロシア日刊紙コメルサントおよびTASS通信が伝えている。
  2. 中国は2006年から同機に関心を示してきたが、2012年珠海航空ショーで導入を真剣に考えているとロシア側が理解した。Su-35は2014年珠海ショーに展示され、契約成立は時間の問題と言われてきた。
  3. 中国は商談成立を確認していないが、政府系メディアの環球時報が契約調印を重要な一歩とみる中国航空軍事専門家の見解を紹介している。
  4. 実は中国向け機体の製作は正式契約調印前から始まっていると明かすのは中国軍事関係の専門家ワシリー・カシン(戦略技術分析センター)だ。
  5. 「引き渡しは来年遅くにはじまり、最終号機は2018年あるいは2017年遅くには納入されるだろう」とカシンは言う。契約は技術移転は含まないが、ロシア側は「中国製コックピット装備」の一部使用を認めているという。
  6. しかし24機しか調達しないことが逆に中国がリバースエンジニアリングで同機をコピーするとの観測を呼んでいる。Su-27Kの前例がある。1995年に中国は25億ドルを出して生産ライセンスを得てSu-27Kを200機生産することとした。同機はJ-11Aの呼称が与えられた。2006年にロシアは契約を破棄している。95機が完成した時点で中国がリバースエンジニアリングし、秘密のうちにJ-11Bとして中国製エイビオニクスと兵装を搭載して生産している。
  7. またSu-35が搭載する高性能エンジン、サトゥルンAL-117Sを中国がJ-20ステルス戦闘機に転用する恐れもある。なお同エンジンはロシアのステルス戦闘機T-50も搭載する。
  8. 「中国が24機購入する理由は技術を自分のものにするためだろう」と語るのはロジャー・クリフ(アトランティック・カウンシル主任研究員)だ。「Su-35の機体構造はSu-27やSu-30とさして変更がない。中国は両方とも導入済みだ。むしろ新技術として推力方向変更やパッシブ電子ッスキャンアレイレーダーや赤外線探知追跡システムを狙っているのでは」
  9. これに対しロンドンの国際戦略研究所の軍事航空担当の主任研究員ダグラス・バリーは中国がSu-35を小規模導入する理由は「比較研究をするため」だという。瀋陽J-11Dの開発が進んでおり、Su-35とほぼ同等になる見込みだ。中国空軍は両機種を逐一比較できるわけだ。
  10. 「エンジン技術の入手以外にも中国はSu-35の兵装技術にも触手を伸ばすだろう」(バリー)
  11. カシンはSu-35の内部構造に触れることは中国には大きなチャンスになると見る。Su-35はSu-27ファミリーの集大成であり、機体を改良し新型エンジン、新型エイビオニクスやレーダーを搭載する。これに対し中国のJ-11Dもアクティブ電子スキャンアレイレーダーを搭載する。
  12. カシンは「中期的には中国の空軍力整備には同機ファミリーの発展のほうがステルス機より重要だ」とJ-31やJ-20を念頭に発言。「Su-35飛行隊はこれからの大型戦闘機の方向性を示すものだ。どこまで国内調達でき、ロシアからの支援が必要な分野はどこかがわかるはずだ」
  13. クリフは新著で中国軍事力の現状と将来の評価をしており、Su-35導入で中国の技術獲得が心配されているが、一気には実現しないとみる。
  14. 「新技術導入の搭載例を購入しても自国で技術をものにすることにつながりません」という。その好例がAL-31エンジンでSu-27、Su-30が搭載している。
  15. 「中国はこのエンジン技術の研究をこの20年以上できたのに、いまだに国産高性能ターボファンエンジンを実用していません」■


2015年11月21日土曜日

速報>マリのホテル奪回作戦成功の背後に米軍特殊作戦要員


今回のホテル占拠事件は日本から見るとあっという間に解決した感がありますが、背後には着実に能力を向上させているアフリカ各国の治安維持の体制があるのですね。さらにそれを支える西側の努力があるわけです。こうなると貧困、無秩序といったネガティブなアフリカ観を変えていかないといけませんね。

US Special Operators Helped Mali Hotel Rescue: AFRICOM

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on November 20, 2015 at 12:02 PM

A Navy sailor instructs a Malian police officerマリ警察官を指導する米海軍水兵
WASHINGTON: マリ共和国バマコでホテル利用客の人質奪回作戦が今朝実施されたが、米特殊作戦要員2名が参加していたと米アフリカ軍団司令部報道官マーク・チーディー大佐が明らかにした。両名はマリで軍事顧問として先に入国していたので迅速に現地部隊の支援に回れた。奪回作戦を実施したのはマリ部隊だが、上記米側要員は少なくとも六名のアメリカ市民をテロリストが占拠したホテルから安全地点まで誘導する際に体を張って支援をしている。
  1. 「両名はドアを蹴り開けたわけではない」とチーディー大佐は強調している。「アメリカ市民の搬送を助けているが、全員がホテル外に出た段階でマリの特殊作戦部隊に助言を与えている。今回の功績はマリ特殊作戦部隊に与えられるべきだ」
  2. 米軍関係者はテロリスト集団に発砲しておらず、逆に銃撃を受けたわけでもない。世界各地で米軍は現地同盟国側に実際の作戦実施を任せるのが通例で今回はマリがドアを破ったわけだ。米軍は戦術上の助言や支援を提供し、無人機を飛ばすこともある。この作業分担が崩れて米軍人が発砲すればジョシュア・ホイーラー曹長がイラクでクルド人救難中に命を落としたような悲劇が発生しかねない。
  3. ともすれば米軍による中東空爆や中国が一方的に主張する海域に艦船を派遣した事例が世間の関心を集めがちだが、オバマ政権は小規模かつ非暴力の支援を現地側に提供する策にこだわっている。この方法に先鞭をつけたのは陸軍特殊作戦部隊だが、いまや陸軍主力部隊も価値を認めている。陸軍は普通科部隊を一部国に現地部隊と組み合わせる「域内合同部隊」として派遣している。
  4. その最初の事例がアフリカ軍団で、マリ首都バマコにあったのは少人数の米軍支援部隊でおそらくフランスも同様に現地部隊を支援しただろう。
  5. 「自分で全部実施できる技術や知識のあるところはないし、その装備もない」とデイヴィッド・ロドリゲス大将(ARFICOM司令官)が国防関連記者集団との朝食会で語っている。「その例外で自国内で完結しているのはアフリカでも統治状態が最悪のリビアとソマリアだ」
  6. 「一方でもっと能力のあるパートナー国は多い。高い能力を身に着けると、自分でやってみたくなるのが普通で、そこでわれわれは相手側の能力を高めることに真剣になる」
  7. アフリカ各国の軍部隊が米国に期待するのは訓練に加え情報収集、指揮統制の運用技術だとロドリゲス大将は説明。つまり、各国の人的諜報活動(HUMINT)は現地情報網を活用し、米側より先を行っているわけだ。
  8. これに対し米側の補給支援能力は高く評価されている。フランスでさえ米軍の輸送機、給油機なしでは広大な作戦地域で活動できない。米軍は設営技術、即席爆発物(IED)の解除方法の訓練に加え特殊作戦として直接行動や対テロ戦の訓練も行っている。
  9. 米軍が訓練を与えた対テロ部隊はカメルーン、チャド、ニジェールにあり、それぞれボコハラム・テロ集団と共同して戦っている。ナイジェリアおよびベニンも戦いに加わっており、アフリカ各国の背後には米仏英の情報チームが控える。同様に西側が支援する多国籍アフリカ対テロ部隊がソマリアとマリにある。
  10. ただしアフリカ側は単に西側から知識だけを得ているわけではない。多数の国に特定分野の専門家があり、隣国にお手本を示しているとロドリゲスは述べた。ボツワナとナミビアは麻薬や人身売買、武器の密輸対策で一歩先を行っており、モーリタニアは米国の支援で強力な情報収集・監視・偵察機能を整備した。今回マリはこの利用を要請した。モロッコには「強力な訓練能力」がある。
  11. 「アフリカ各国は共同で動いている。今後拡充するだろう」とロドリゲス大将は述べている。「自国部隊を編成し、訓練をすれば、相互に訓練をする能力が生まれるだろう。これが次の段階の目標だ」
  12. これは時間がかかり忍耐力を試される工程だが、米軍のわずかな投入で大きな成果が生まれる可能性がある。その例が本日バマコで示された。■

★★米空軍>F-15、F-16の新規生産案を検討中か

これもF-35調達による戦力構成のひずみを是正する動きなのでしょうか。日本にとっても参考になりそうな動きですね。F-15やF-16が新規生産機体としてもはたしていつまで頼れる戦力なのかわかりませんが。

U.S. Considers Up To 72 New F-15s Or F-16s

Nov 19, 2015 Bill Sweetman | Aerospace Daily & Defense Report

LONDON — 米空軍はボーイングF-15、ロッキード・マーティンF-16、またはボーイングF/A-18E/Fのいずれか新造72機の調達に乗り出す構えだ。これはF-35共用打撃戦闘機が予算問題のため予定通りの生産が確保できないためと空軍上層部ならびに業界関係者が当地で開催中のDefense IQ International Fighter Conference席上で述べた。
  1. F-15とF-16は2045年まで現役に残る見込みだが、その時点で完全新型機が登場しているはずで、F-16でもAESAレーダー他を搭載する近代化改修案が復活しつつある。
  2. 会議では講演者の氏名等は明かさないチャタムハウスルールが適用された。
  3. 米空軍はF-35が量産体制に入る直後で「年間48機の調達を何とか実現しようとしている」と空軍高官が述べた。計画では2020年に60機、その後80機と年間調達数を増やす。そのためF-15やF-16の就役期間は延長され、2020年代末の時点でもF-35やF-22より合計機数で上回る。
  4. そこで空軍の構想は三部構成の戦闘機部隊にすることだ。300機のF-16と一部のF-15に近代化を施し、「ハイエンド戦闘でF-35とF-22を補助する」一方で、それ以外の機体はローエンド作戦に投入する。これ以外に72機(戦闘航空団の規模)を調達し、戦力を維持しつつ新型性能を備えた機体を導入する。ただし、「検討したところ、実施するとF-35をまとめて調達するより高くつくとわかった」と上記高官は述べており、まだ最終決定ではないようだ。
  5. 業界関係者も空軍からF-15新造機の価格条件等の照会があったとを認め、あわせて既存機の耐用年数延長策や改修案の選択肢も尋ねられたという。後者には既存機体の主翼交換や胴体の再作成もある。一方で米空軍は米海軍と並行した機体整備企画を展開している。海軍はF-35Cの調達数を減らして浮いた予算でスーパーホーネットの耐用年数延長にあてる。
  6. 一方F-16では戦闘エイビオニクス性能拡張装備Combat Avionics Program Extension Suite (Capes) の名称で性能改修を試みたものの2015年度予算で中止になったが、この中核技術の開発は台湾空軍向けに継続中で、韓国とシンガポールも参画する見込みだ。米空軍は保有機材の一部に性能改修予算を要求すると上記空軍高官は紹介した。
  7. もうひとつ検討中の構想では空軍の電子戦能力拡充策としてF-15E一部機材にレイセオンの次世代ジャマーポッドを搭載すると高官は述べている。■


2015年11月20日金曜日

小型無人機の普及を睨み対抗手段を開発する防衛メーカーの動き




Companies Tout Weaponry To Destroy, Disrupt Small Drones

By Andrew Clevenger, Staff writer9:30 a.m. EST November 4, 2015
WASHINGTON — 民間用小型無人機の普及で軍民への脅威が高まる中、防衛企業数社が無人機への対抗手段を製品化し販売し始めた。手段にはレーザーから照準発射を簡単にしたものまで幅広い。
  1. ボーイングは小型レーザー兵器システムCompact Laser Weapon System (CLWS)で小型無人機を炎上させる実証に成功しており、強力な対抗手段を提供している。アパッチ攻撃ヘリからブラッドレー戦闘車両まで広く搭載可能で、小型無人機を最大3キロ地点から破壊できる。また無人機が搭載する情報収集監視偵察(ISR)用センサーを最大7キロ地点から無効にできる。
  2. 「それだけの距離でもISR機への対抗策として光学系装置を無効にできます」とジェシカ・エッツ(ボーイング戦略ミサイル防衛システムズ事業部)は語る。敵が四プロペラ式無人機に汎用カメラを搭載して多数運用してくれば同社の装備は経済的な対抗措置になるとエッツは言う。
  3. 相当の威力があるためボーイングのCLWSは軍事用途を一義的に想定した販売をしているとエッツは米陸軍協会のイベントで説明した。..
  4. バテルBattelleは軽量で携帯可能な装置を開発した。侵入してくる無人機を無線で妨害するが、付帯的な人的被害を発生させない。
  5. 「当社の妨害信号は遠隔操縦する相手の有効範囲外で無人機を乗っ取ります」とダン・スタム(バテルのDroneDefenderシステムの担当マネージャー)は言う。これが作動すると無人機は、同じ場所にホバリングする、出発地点に戻る、近くに着陸するのいずれとなるという。
  6. バテルの装置はライフルにアンテナをつけた形で数百メートルの有効射程がある。(同社は詳細を説明していない) 指向性があり、付近の電子装備を妨害しない。重量は15ポンド以下で一人で操作できる。
  7. ただし侵入してくる無人機を探知したり識別することはできない。だが見通し線で無人機を視認できればそこへ向け妨害信号を発射できる。同社はまず連邦政府機関を顧客に想定している。
  8. 「連邦政府機関にこの種の装置の使用を認める法律の整備が進行中です」とスタムは言う。
  9. ロッキード・マーティンはICARUSシステムを開発した。これは画像、音声、無線周波数を使い、好ましくないUASを探知、識別、利用不可能にする。
  10. 「無人機からの放射を探知し利用する装置です」とマイケル・パンチェンコ(ロッキード・マーティンのサイバーソリューションズ事業部)は語る。
  11. 特定の無人機に合わせた対応ができ、周囲の電子送信を妨害、阻害することはないという。
  12. 「最終目標は敵の無人機を飛行を付帯的損害を発生させずに防止することです。当社製品は正確無比な対策を提供します。味方の装備を妨害することはありません。民間機などに干渉しません」という。
  13. アナリストの試算では小型無人機市場は現在16億ドル規模だが急速に拡大中なので、2020年までに50億ドルにふくれあがるという。
  14. 「普及が進めば、悪意ある使用を敵が試みる機会が増えるでしょう。そこで探知し対抗する装備の需要も増えるはずです」(パンチェンコ)■

★ISのジハーディ・ジョン殺害はリーパー無人機が実行していた



Reaper Strike Likely Killed ‘Jihadi John’

by Brendan McGarry on November 13, 2015

米軍の無人機がシリアでイスラム国の処刑人「ジハーディ・ジョン」を殺害したと国防総省が報道機関に発表した。

  1. MQ-9リーパー1機が12日にラッカ近郊でモハメッド・エムワジ(27)を標的にヘルファイヤミサイルを発射した。エムワジは「ジハーディ・ジョン」として知られ、西側捕虜数名を処刑している。以上ペンタゴン報道官スティーブ・ウォーレン大佐が述べたとニューヨーク・タイムズが報道している。
  2. ウォーレン大佐は13日の定例記者会見でエムワジがこの攻撃で死亡したのは「十分なまでに確実」と述べている。
  3. MQ-9はジェネラル・アトミックス(本社サンディエゴ)製で中高高度で運用可能な無人機であり、空軍の無人攻撃手段の中核だ。2014年時点で空軍はリーパー153機を保有し、その平均機齢は3.6年だった。(空軍協会まとめ)
  4. MQ-9はMQ-1プレデターの拡大版でAGM-114 ヘルファイヤーミサイル、GBU-12ペイブウェイIIレーザー誘導爆弾、GBU-38共用直撃弾頭つきGPS誘導爆弾を組み合わせて搭載できる。
  5. 該当機は「長時間監視飛行」に投入されており、エムワジは攻撃の時点で自動車に乗車中だったとCNNが報じている。■


KC-46 空中給油テストの進捗状況


これまで遅れていたKC-46開発ですが、ここに来て順調にテストが進行しているようです。もう日本も同機導入を決めてしまいましたので、順調に進んでもらわないと困るのですが。空軍、海軍それぞれの保有機材に対応可能なので、就役すれば相互運用がまた一歩前進しますね。また少ない機材を有効に使うmultiplierの役目も期待できそうです。一方、中国からすれば目のかたきのような機材ですので当然同機を標的にしてくるはずなので、運用空域の選定や防護策など新しい対策も必要になってくるでしょう。

First KC-46 Pegasus Headed For Fuel Dock Testing

Nov 17, 2015 Amy Hillis | Aerospace Daily & Defense Report

Boeing

ボーイング関係者はKC-46給油機1号機(EMD-2)による燃料給油テストの二回目実施に備えている。同機には機体中央尾部に給油ブームと主翼にポッドをそれぞれ装着しており、初期段階の耐空証明が交付されている。
  1. KC-461号機による初回耐空テストは同機通算20回めのフライト(11月12日)で完了したとボーイング広報カロライン・ハッチソンが説明。フライトは6時間だったという。
  2. 初回耐空テストは燃料の空中給油を実際に開始する前の関門のひとつだ。米空軍は12月ないし1月初旬に実機による空中給油実証を行いたい意向だとデューク・リチャードソン准将(給油機事業担当)が9月に開催された空軍協会主催のシンポジウムで語っていた。
  3. 残るもう一つの関門が燃料ドックテストだ。ここでは燃料系統の制御の確認が中心で、燃料が滞り無く給油機から別の機体に移るかが焦点だ。
  4. リチャードソンによればEMD-2は先立つEMD-1(767-2Cを給油機仕様に改装)と同様に高い稼働率を期待しているという。EMD-2は9月25日に初飛行している。ブームは毎分1,200ガロンの給油能力があり、C-5輸送機の需要にも応える。またホース・ドローグ方式は毎分400ガロンだ。
  5. ボーイングがKC-46契約を獲得したのは2011年2月で、エアバスが提案したA330改装給油機との競争に競り勝った形だ。米政府は49億ドルを支出し、固定価格制度で開発契約をボーイングと結んだ。同社は開発日程を予定通り進めるため12億ドルの追加支出をしている。途中で配線と燃料系統で問題が見つかったためだ。
  6. リチャードソン准将によればKC-46から初めての給油を受けるのはF-16となる。また大型機のC-5やC-17への空中給油実証も行う。「高速ドローグ」はF/A-18へ、「低速ドローグ」はA-10を対象にテストする。またKC-46同士での空中給油も行うという。■

日本に二隻目の米空母が配備される日が来る可能性


まだ構想の段階ですが、空母部隊の隻数が増えない中、効率よく運用するためにはこのような考え方が急浮上してくるかもしれませんね。日本国内には賛否両論出てくると思いますが。

Two USN Carriers in Japan?

By Christopher P. Cavas 4:56 p.m. EST November 18, 2015


WASHINGTON —.米海軍が世界各地で任務を展開する中、立案部門は艦艇、航空機、人員の作戦投入時間をこれまでより有効に活用する検討をしており、その一つの解決策として日本に空母を2隻配備すればよいと主張する有力なアナリストが現れた。
  1. 日本に空母二隻を配備すれば西太平洋における空母需要に答えられるというのはブライアン・クラーク(戦略予算評価センター、海軍問題研究員)で、みずからの検討結果を連邦議会で報道陣に発表している。
  2. 「西海岸からの移動時間分の節約だけで空母の投入時間が2割増えます」とクラークは研究成果を紹介し、二隻配備すれば年間通じ常時少なくとも1隻が利用できるほか、4ヶ月間は2隻投入できるという。
  3. 米海軍は前方配備海軍部隊 forward-deployed naval force (FDNF) を日本に長年展開しており、空母1隻を維持している。現在はUSSロナルド・レーガンで昨年まではジョージ・ワシントンだった。巡洋艦、駆逐艦他に加え、4隻で構成する揚陸部隊もあり、横須賀と佐世保を母港とし、沖縄には第31海兵隊遠征部隊が駐留する。
  4. 空母航空隊は厚木海軍航空基地にあるが、2隻体制にしても、もうい一隊の追加配備は必要ないとクラークは見る。なお、同隊は岩国海兵隊航空基地に移動することになっており、規模の大きい同基地なら航空機をより多く配備できる。
  5. 二個飛行隊にするかわりに一個隊を増強すれば良いというのがその根拠だ。または二個飛行隊にしても規模を減らせば良い。または通常は戦闘機飛行隊4をつけるところを3個にすればよい。F/A-18CおよびF/A-18E/Fの機数が不足していることもある。
  6. クラークはその他水上艦の増強は必要を感じていないが、巡洋艦1隻を追加すれば空母護衛用の対空防御が強化できるとする。
  7. ただし、クラークはこの構想の実施には政治、運用上、予算上の課題の解決が必要だと認める。
  8. この提言は18日公表の報告書 “Deploying Beyond Their Means”に盛り込まれており、米海軍・海兵隊の高い作戦上の要求にどう応えるかを論じている
  9. 日本に空母1隻を追加する以外にクラークは揚陸即応体制部隊の追加配備が西太平洋で必要だと提言しており、その配備先はグアムとなろう。また第六艦隊のヨーロッパ方面作戦での空母ローテーションの再開も提案する。後者は冷戦終結で実施中止となり、以後アラビア湾地方が注目されてきた。
  10. 海軍は法律により空母11隻体制の維持を求められているが、現在は一時的に10隻になっている。
  11. 日本に空母2隻を配備すると西太平洋で通常任務は難なくこなせるとクラークは見ており、西海岸に配備の空母5隻が湾岸・インド洋を順番に担当し、大西洋岸に配備中の4隻をヨーロッパ方面に交代で派遣できるという。
  12. 各地で空母のプレゼンスを増やすことは「米国がアジア太平洋から撤退することはないとの決意を示す一方で、ヨーロッパ方面でのプレゼンスを回復することになる」という。
  13. ただし現時点で日本に空母追加配備する検討は海軍はしていない。この報告書を受けて海軍関係者は「日本へ前方配備で空母追加派遣する話題は全く存在していない」という。だが、議会の一部はこの構想を検討する可能性がある。
  14. 「空母前方配備を追加することは前からある構想だいが、空母に対する需要が高いことで実現の可能性が高まっている」と上院議員のスタッフが語っている。「報告書が提唱する効果でもっとも重要なのは太平洋に二隻目の空母を常駐の形で前方配備することで同盟各国、協力各国へ米側のコミットメントを示すことだ。平時だからこそ有事に効果を発揮する効果を厳しく見つめつつ、日本が配備案をどう受け止めるかを検討すべきだ」■

2015年11月18日水曜日

航行の自由作戦を実施したUSSラッセンに中国はどう対応したのか


オバマ政権がますますレイムダック状態担っていく中でこの人はひとり正論を主張している観がありますね。安全保障の思考ができる人には党派は関係ないという例でしょうか。政権の中で一人だけ浮き上がらないように祈るばかりですが。文中にある中国海軍の対応の実態については大いに関心をそそられますね。

US Defense Chief Jabs at Beijing in South China Sea Visit

Agence France-Presse 3:38 p.m. EST November 5, 2015


Ash Carter visits USS Theodore Roosevelt aircraft carrier
(Photo: Senior Master Sgt. Adrian Cadiz/DoD via AFP)


ABOARD THE USS THEODORE ROOSEVELT — アシュ・カーター国防長官は11月5日、南シナ海で米空母に乗艦し、同地域で緊張を醸し出している中国に一撃を加えた。

  1. カーター長官は、中国が人工島を建設する現場から150から200カイリ地点を遊弋する巨大空母USSローズベルトに乗艦した。
  2. 「中国の行いには大きな懸念が生じている」と長官は艦上で語った。同空母の存在は「アメリカの将来にとって極めて重要なこの地で米軍事力が不可欠な役割を果すことの象徴」と評した。
  3. 中国の建設工事をめぐり米中が対立している。
  4. 中国が島嶼部を拡張し、滑走路、燃料施設を建設するのは将来における中国軍事力のプレゼンスが世界交易上重要な地帯に示すことになる。.
  5. 米国は埋め立て工事の即刻中止を求めるとともに航行の自由は守られるべきと主張。
  6. カーター長官はオスプレイで同艦に到着し、およそ3時間を使い5,500名の乗組員に話しかけた。
  7. 長官は艦名の由来たる大統領に言及し、米国がこの地域に留まることの重要性、中国が「安全保障の仕組みの一部となること、一人歩きしないこと」を強調した。
  8. 「セオドア・ローズベルトのモットーは『ソフトに話すが棍棒は手放さい』だった。ソフトに話すとは相手とどこで合意ができるかを見極めることだ」とカーターは述べた。
  9. 「この地域が享受してきた長い間にわたる安定が損なわれるのなら恥ずかしいことであり、そのような事態が発生しないことを祈る」
  10. 中国が南シナ海のほぼ全域を自国領海と主張することから問題が生じている。マレーシア、フィリピン、ベトナム、ブルネイ、台湾も自国領海を主張しているが、中国ほど広範な主張にはなっていない。
  11. これまでも各国の利害が衝突する可能性が指摘されてきたが、中国の人工島建設は一気にその恐れを現実のものにしてしまった。.
  12. カーター長官の訪問はUSSラッセンがスプラトリー島嶼部での人工島から数カイリ地点を航行してから一週間後のことだ。
  13. 任務の実施で米国は航行の自由原則をあらためて主張した形だが、中国は自国領海と考えており、反発を呼んだ。
  14. 5日にUSSラッセンはUSSロウズベルトの左舷500メートルへ接近し、同艦の艦長ロバート・フランシス中佐はヘリコプターで空母に移動し、記者団に直接話した。
  15. 同艦長はUSSラッセンはスビ環礁から10キロ地点まで接近し、「クレーン数台や艦船を」目視できたという。
  16. USSラッセンは中国駆逐艦1隻に10日ほど追尾され、両艦は「いんぎんな」無線交信を交わしたという。
  17. 「相手側は『貴艦は中国領海内にある。航行の意図は何か。誤解の生じないように確認したい』と問いかけてきた」とフランシス中佐は述べた。
  18. それに対しUSSラッセンは「国際法の範囲内で行動中」と回答したという。
  19. 今週火曜日にカーター長官は中国国防相常万全Chang Wanquan と会談している。
  20. カーターは米国は今後も「飛行、航行、作戦を国際法が許す範囲でいかなる地点でも」継続すると常に伝え、南シナ海も例外ではないと述べたと米政府関係者が明かしている。
  21. 翌日に域内対話の場は終わったが、米国と中国の対立のため共同声明文に南シナ海を言及すべきかで後味の悪い場となった。結局、声明文発表は見送られた。■

2015年11月17日火曜日

LRS-B>ボーイング等の抗議により開発業務もストップ これでいいのか?



どうしても納得がいかないボーイング=ロッキード側が正式な不服申立てをしたため、空軍も対応してその間業務の実施を棚上げすることにしました。この分だけ時間とお金が無駄になるわけですが、結果としてLRS-Bの実現が遅れれば誰が利益を得るかは明らかですよね。

USAF Orders Northrop To Stop Work on LRS-B

Nov 9, 2015 Amy Hillis | Aerospace Daily & Defense Report

LRSB

米空軍はノースロップ・グラマンに対して長距離打撃爆撃機LRS-B関連業務の停止を指示した。これは不服申し立ての対象になった契約業務での標準手順にしたがったもの。
  1. 業務停止指示は11月6日付で送付されたと空軍報道官ロバート・リース少佐が述べた。同日はボーイングおよびロッキード・マーティンが契約交付結果に対する不服申し立てを会計検査院(GAO)に起こしたのと同日。
  2. ノースロップ・グラマン側はGAOが不服申し立てを審査する間は業務を続けるか言及を避けた。.
  3. 敗退した側は空軍が提案内容に伴うリスクを適正に評価しておらず、最新の生産方法・保守管理方法で事業支出額が低減するはずのところを無視していると申し立てている。また提案内容に空軍が不当にコストを上乗せしているとも主張。
  4. 二番目の論点はともかく、同チームがもっと大きな論点を提示していることに注目すべきだ。つまり選定作業全体が最初から間違っていたのかという点で、契約が成立してもコスト削減は実現しないのではないかという点だ。あたかも議会からペンタゴンの支出には厳しい目が向けられている。GAOはこの点では裁定をくだないが、議会は注目しそうだ。
  5. あらためてGAOがボーイングやロッキード・マーティンの主張を認めるかが注目される。これまでの例ではKC-X事業で不服申立ての結果、選定が再度仕切り直しとなり、さらに数年を空費している。他の例では即座に提案内容の再採点が行われている。
  6. 空軍はLRS-Bはまず通常兵器運用仕様として2020年代中頃の就役をめざすとしている。核兵器の初期作戦能力獲得には相当のテストと認証工程が必要で、就役は遅れる。セシル・ヘイニー提督(米戦略軍司令官)によれば核運用型の就役を2030年までに実現したいという。
  7. 空軍には業務停止を回避するため猶予措置の行使という選択肢もあった。しかし、この措置はあるシステムが順調に配備されないことで国家安全保障に支障が生じる場合のみ行使できるものだ。空軍があえて猶予措置に訴えなかったのは、行使した場合に政界からの干渉を回避するためだろう。■

2015年11月14日土曜日

LRS-Bでやはり不服申し立てをしたボーイング=ロッキードチーム

やはりというか、さすがというか、受注できなかったボーイング側からLRS-B選定手続きの妥当性をめぐり不服申し立てがされました。本当にその言い分が正しいのか、今度は会計検査院が検討することになりますが、空軍が慎重かつ適正に行った選定が覆されるとしたら大問題ですね。

「defense news」の画像検索結果Boeing Protests Northrop's Long Range Strike Bomber Contract
By Andrew Clevenger and Lara Seligman10:59 a.m. EST November 6, 2015
Northrop Grumman wins US Air Force LRS-B contract(Photo: Northrop Grumman)
WASHINGTON — 11月6日ボーイングはロッキード・マーティンと共同で政府会計検査院に次期長距離打撃爆撃機入札で国防総省がノースロップ・グラマンを採択した10月27日の結果へ正式に不服申し立てをした。検査院は100日間を上限として不服申し立て内容を検討し、裁定を下すことができる。
  1. ボーイングとロッキード・マーティンはLRS-B選定手続きを「根本的に間違っている」と共同声明で指摘した。具体的には価格審査で両社チームが提出した価格上昇を防ぐ提案内容が適正に評価されていないこと、ノースロップ・グラマンの執行能力に関するリスクを適正に評価していないことを取り上げている。
  2. ノースロップ・グラマンはB-2ステルス爆撃機のメーカーとして提示した511百万ドル(2010年価格)がペンタゴンの設定した550百万ドル(2010年価格)を下回ったことが採択の理由の一部といわれる。2016年度のドル価格換算するとそれぞれ563百万ドル、606百万ドルになる。
  3. キャピタルアルファパートナーズのアナリスト、バイロン・キャランは投資家向け通信で不服申し立て自体はなんら驚くべきことではないとし、逆の結果になっていたら、ノースロップが不服を申し立てていただろうとする。
  4. キャランの見立てではボーイング等の不服申し立てが採択される確率は15%だという。
  5. 「空軍はLRSーB選定結果に抗議が出ることは最初から想定していたのだろう。ボーイングは給油機事業でEADS採択結果を不服としその後受注に成功した実績があるが今回は調達選定の顔ぶれが空軍内で変わっている」
  6. レキシントン研究所で国防産業向けコンサルタントとアナリストを兼ねるローレン・トンプソンはボーイング、ロッキード両社と強いつながりがあり、不服申し立ての背景には空軍が選定基準を誤っているとの見方があるのだという。
  7. 機体価格および製造リスクの点で両提案は適正に評価を受けていない、という。空軍は、ボーイング側提案に盛り込んだ数々の技術革新による費用節減効果を正しく認めていないという。
  8. 「空軍は両提案の相違点を考慮していません。機体価格は極めて重要でかつボーイング側が提示した数々の優れた性能が採点に反映されていません」
  9. コスト面で現実的な検討を行うため空軍はB-2実績を参照したという。
  10. 「空軍の根拠は『あるべきコスト』で開発費用を前例から推測しており現在利用可能な数々の技術革新が生まれる前のデータを参照した」ためB-2が生産終了した2000年以降の技術進歩による価格低減効果を排除したというのだ。
  11. ボーイング/ロッキードチームは110億ドルを技術・生産開発(EMD)費用として提示したが、空軍の試算はEMDに214億ドルでリスクを製造メーカーから政府に転嫁するものだとトンプソンは述べた。
  12. ボーイングとしては不服申し立てで失うものはないが、得るものは大きい。LRS-B契約は期間全般で1,000億ドルを超える規模で数十年にわたり企業収入となる。逆にLRS-B受注に失敗すればボーイングの軍用機生産拠点セントルイス(ミズーリ州)は閉鎖に追い込まれるかもしれない。
  13. だがボーイングの抗議が聞き入れられる可能性は低い。国防調達関連の実績が最近公表されたが、国防関連の不服申して立てが採択されるのは2013年に2%にとどまっている。政府調達事業全般では4%となっているので、国防関連では相当に低い。
  14. さらに空軍も10年近くもめた空中給油機のトラブルの再発を防止したいのは明らかで、LRS-Bでは念入りに準備してきた。
  15. そこで空軍は費用試算を二機関で行っている。またペンタゴンの監察官がLRS-B調達手続きを監査したことは契約交付が厳密になっていることの表れだとするアナリストがいる。
  16. 選定結果発表で空軍長官デボラ・リー・ジェイムズは選定手続きが「入念かつ厳格であった」と強調している。「交付決定は慎重かつ厳格な手続きを経ており、空軍内の専門職が両提案を比較検討し、選定基準に準拠している」とジェイムズは発表の席上で記者団に語っている。「手続き全体は極めて高い透明性を持って国防総省内の内部統制を経て進められた」
  17. 空軍が最善を尽くしたにもかかわらず、不服申し立ての結果、事業推進が遅れ醜悪な広報合戦が発生することがボーイングが議会筋に大きな影響力をもっていることから想定される。
  18. ボーイングとロッキードは強力にロビー活動を展開する構えだ。ボーイングはミズーリ州代表議員の中でも、有力な民主党上院議員クレア・マッキャスキル、共和党上院議員ロイ・ブラントをあてにし、ロッキードはテキサス州議員団とくにフォートワース選出のケイ・グレンジャー、下院軍事委員会委員長ウィリアム・ソーンベリー両下院議員ともに共和党所属に期待する。
  19. 選定結果の公表を控え、国防調達工程の合理化について公聴会を終えた段階でソーンベリー議員はLRS-Bをめぐる不服申し立ての可能性を懸念し、調達事業が訴訟合戦に見舞われることにも同様に懸念した
  20. 毎回選定結果に不服申し立てが出てくること、また抗議をしても実質的に罰則がないことを記者団に指摘し、ソーンベリーは「この現状を変えねばならないと考える議員が増えており、議論を続けていく」と語った。■