2016年1月27日水曜日

★★★日本>次期主力戦闘機用エンジンコア開発の最新状況



F-3のエンジン開発で相当の進展があった模様です。米国では本当に日本が第5世代戦闘機を作れるのか関係者が興味津々でながめつつ、日本の強み弱みを知る各位はいろいろコメントを出しています。(下参照) 当ブログとしてもほっておけない話題のため急遽掲載することにしました。前回大きな反響を呼んだ同じAviation Week発の記事と比較すると面白いでしょうね。(日本が目指す次期戦闘機はF-3) http://aviation-space-business.blogspot.jp/2012/10/f-3f-x.html

Japan Ready For Next Fighter Engine Core

Jan 21, 2016 Bradley Perrett | Aviation Week & Space Technology
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  1. 2030年投入をめざす国産戦闘機F-3用に、実証用エンジンコア製作が日本で続いている。低バイパス比ターボファンエンジンの素材研究は完了しており、新技術の実用化をめざし別チームは新型機の兵装庫を研究中だ。
  2. 実証エンジンではコア制作後にファンと低圧タービンの製造に移ると防衛省技術研究本部(TRDI)が説明している。IHIがエンジン製作にとりかかっており、その他技術要素と並行しF-3の実現成を目指す。.
  3. 機体製作には三菱重工業含む数社が参画し、性能諸元は2013年発表のF-3案に近いところに落ち着いており、飛行性能より航続距離と兵装運用量を重視する。最新の画像資料を見ると2013年提唱の案に極めて近いことがわかる。
  4. その設計案は25DMUと呼称され大型戦闘機で機体下部に兵装庫をもち、ラムジェット推進ミサイル6発を格納する。このミサイルはMBDA製メテオとほぼ同寸だ。主翼は大型で燃料搭載スペースを確保し、抗力を減らしているが、加速性能が犠牲になる。
防衛技術本部(TRDI)はF-3戦闘機の概念を2013年発表の25DMU
に近いものとしている。Credit: TRDI.
  1. TRDIは2014年時点の研究でこの形状が最適とする理由を上げている。鍵は長時間飛行性能で現場により長く滞空するほうが、高性能機より意味がある。この仕様でTRDIは非公開の設計案の検討を外部に依頼している。その結果としての26MDUでは大変更はないだろう。
  2. ただし公表図面では25MDUと次の二点が異なる。兵装庫に格納するミサイルが4発になっていること、コックピット下と前方にあった赤外線センサーが消えている点だ。
  3. TRDIはターボファンエンジン全体の完成で日程案は発表していない。前の発表では低圧圧縮機と低圧タービンの試作品を2017年度から開始するとしていた。(テストは2015年度に始まっている) 完全な形の試作エンジンは2018年度に実証し、その時点でF-3の製造に踏み切るかを政府が決断する。当然日本政府はまずエンジン開発の進展に期待しているはずだ。
  4. エンジンコアの中核になる圧縮機と燃焼室のテストは良好な結果を産んでいるとTRDIはするが、詳細は明らかにしていない。
  5. 三年前の時点で実証エンジンは推力15トン(33,000 lb.)で通常より小型形状とし抗力を減らすすとしていた。F-3は双発エンジンの想定だ。プラット&ホイットニーF119(ロッキード・マーティンF-22に搭載)と同様に日本もシャフト二本、六段高圧圧縮機で高圧低圧タービンは各一段構造で逆回転するエンジン開発をめざしている。
  6. TRDIは高圧タービンに入るガス温度は平均で1,800C(3,300F)と公表している。これまでの研究内容にはセラミックマトリックス複合材(CMC)があり、これは金属より高温に耐える素材で、タービンの側壁に応用できる。セラミックの補強材はカーボンシリコン繊維だろう。固定部分と回転部分のブレイドはニッケル素材の単結晶超合金で製造する。タービンディスクはローターのブレイドをとりつける場所で国産のニッケルコバルト超合金TMW-24で製造する。
  7. 5年前まで固定部分はCMCで、回転部分は金属製とするとしていた。日本国内の研究成果からTMW-24製のディスクは従来型の鋳造鍛造工程で製造可能で、通常用いられる粉体冶金工学技術に頼らなくても実現できる判明した。
  8. 研究者はTMW-24はディスク寿命1,000時間、遠心力630メガパスカルの条件で評価をした。この条件ではTWM-24は710Cまで加熱に耐え、2000年代にに粉末冶金工学で実現した730Cの実績に近い。また1970年代中頃の鋳造鍛造工程では690Cが限界だったので大きな進歩とTRDIはまとめている。ただし、タービンとしての性能は未確認である。
  9. 兵装庫の検討は2010年から始めており、2013年から各種試験を実施している。その結果として超音速飛行時に兵器を投射した際の空流速度と角度の組み合わせ条件がわかった。次の課題は兵器を投下する気孔構造の設計だ。
  10. 日本の技術陣は亜音速機として川崎重工業製P-1哨戒機の事例で兵器投下の仕組みと作動は理解しているが、超音速機からの投下ではコンピューターによる運動力学シミュレーションや風洞テストで超音速飛行中に兵装庫扉を開放した場合の研究をしている。風洞はマッハ2.5相当まで再現でき、2012年発表の報告書では兵器投下試験をマッハ1.4条件の風洞内で実施したとある。この速度は空対空ミサイル発射の条件なのだろう。同報告書では計11通りの空洞形状を検討したという。■


以下Aviation Week誌上に現れた同上記事へのコメント及びコメントへのコメント(訳は相当編集しています。)

  • ソフトウエアは大部分が米国からライセンス提供されるのでは。
  • 三菱はMRJ騒動があったが。
  • MRJは設計でつまづいた。日本が飛行用ソフトウェアでどこまで行ってるのかわからないがここが一番難易度が高いので、機械的稼働部分はできてもソフトウェアが無いと大変だ
  • F-35でソフトウェアで問題になっているのを見ると米国の劣勢は明らかで韓国が手を貸せないのか。中国も後発ながら急速に第五世代超音速巡航可能なJ-10の磨きをかけている。
  • いつもはリスクを恐れる日本が高性能ファンエンジンを開発でき、F-3に搭載できるのか興味をひかれる
  • エンジン開発は日本が想定するより長時間かつ多大な資金投入が必要になると思うよ。戦後日本はまだ国際エンジンを開発していない。GEまたはP&Wと提携することになるのが落ちだろう。
  • たしかに戦闘機用エンジンの国産開発は初めての経験になるが、日本には敬意を示したいのは大変に組織階層を重視しリスク回避するからで、米国企業と異なり、問題が発生すると解決には長時間がかかる。また戦闘機用エンジン開発・搭載の経験がないことで実用化までこぎつけるのは大変だろう。幸運を祈るが、日本側も今回の事業で「楽しい時間」を経験するのではないか。
  • 記事は通念重視で今回はそのとおりにならないと見ている。次の記事に期待。
  • 日本は米国を追い抜き第六世代戦闘機の機体とエンジンで進歩するかも。ただしソフトウェアは別で、少なくともこの事業では無理だろう。
  • 日本は素材と高度製造技術の二面で強みを発揮している
  • 航空機エンジンは素材革命で新しい局面に入りつつあり、高性能セラミックが金属合金の性能を凌駕しはじめた。日本はセラミクス分野で一歩先を行っており、すでに高性能部品を製造している。高性能セラミックスは高温高圧に耐えるタービンを実現し、従来より多くのエネルギーを活用する手段となる。ゼロから設計した新エンジンにセラミックスを応用することで日本はエンジンメーカーがかかえる問題を回避している。
  • セラミクスを活用するためには完全に新型エンジンにするのがよいが、既存メーカーだと技術革新が本当にうまくいくのか確認したいところだろう。リチウムバッテリーで革新性がうたわれたが当初は大きな混乱を呼んだのは記憶に新しい。
  • 日本は新型エンジンを小型に設定し立ち上げを容易にしたのは搭載機種が双発想定のためだろう。すごい。
  • エンジン以外にも同じことが言える。粉末冶金工法はとても高価だが、これに変わる技術が相当進んでいることを示している。
  • 日本では米国が悩む空軍、海軍、海兵隊STOVL機の各仕様の違いという課題は存在しないが、日本機はおそらく短距離離着陸性能を示すだろう。また長距離対応のBVRミサイルを搭載し、おそらく自衛用にレーザーも搭載するのではないか。搭載方法次第だがレーザーは360度全方位照射が可能だろう。
  • ソフトウェアは米国ライセンスになるのだろう
  • 米国や同盟国が同機をほしがるのではないか。機体、エンジン別でもよい。
  • ロッキード、ノースロップ、ボーイング、エアバス、BAEがライセンス生産しても驚かない
  • 武器輸出制限を解除したのと軌を一にしている。エンジンは海外でも大量の需要があるのではないか
  • ソフトウェアというが、日本が自国開発できないのは設計ソフトなのかエンジン制御ソフトのどちらなの?
  • 一番困難な部分はセンサー類、兵装システム、戦闘状況等を統合するソフトウェア開発だが日本が同機のIOC獲得時(2030年目標)に自国開発に成功する可能性は10%未満だ。
  • 機体制御やフライバイワイヤのソフトウェアは日本でも作れるが、完全国産にした場合は高価になりそうだし、日程に間に合わない。ライセンス供与受けたほうが早いだろう。
  • 兵站や補給活動も大切なはず。JSFでは自動ロジスティクス情報システム(ALIS)があり、真価をそのうちに発揮する。日本が独力で同じものを作るのは困難なはず。また互換性のないシステムを構築されても困る。ただ技術的にもっと簡単な部分では国産化は進むだろう。なんといっても日本側には十分な知識がある。
  • 設計用ソフトウェアではすでに商用システムがあり、日本がなぜこれを利用しないのか理解に苦しむ。ただしシミュレーションやデータは独自に進める必要は残るが。
  • 訓練用のシミュレーターでも独自に開発するつもりなのか、実績あるメーカーに外注するのか
  • 日本は分かれ道に立っている。従来の日本は何でも国内で自分で作ってきたので閉鎖系のシステムで強みを発揮してきた。だが新型機事業が成功すれば自国だけで作るよりも大きな事業規模、利益を手に入れる可能性がある。米国との連合では成功した実績があるがソフトウェアやシステム工学ではまだこれからだろう。
  • 日本人の考え方については先のコメントが上手く説明していると思う。
  • トルコ、韓国、スウェーデンそしてインドネシアも第五世代戦闘機に取り組んでいる。自国産業のみに依存すると試作段階にも到達しない。そこで各国が設計、開発、製造、維持管理を共有してスケールメリットを享受すればいいのではないか。
  • 第5世代戦闘機の定義がずいぶんとあいまいではないか。箱にそこそこのレーダー断面積性能をつけて飛ばすのは20世紀の話だ。戦闘威力と残存性を両立させるのは全く別の話だ。


大規模戦争抑止のため小規模対立が頻発? 海軍力プレゼンスを考える



これまでも大艦巨砲主義の時代から海軍艦艇の種類別バランスの問題はとりあげられており、グリナート前海軍作戦部長が強力な旗振り役となりLCSは代表に新しい海軍の姿を模索してきたのですが、直近でカーター長官がLCSを冷遇しはじめてから部妙な風向きになっています。空母戦闘群も減少していくでしょうし、そもそも米海軍だけで世界秩序を維持しようとする姿勢が現実にそぐわなくなっているのではないでしょうか。砂山理論というのは面白いのですが、安全保障でも有効なのでしょうか。

Many Ships = Few Wars: The Case For A Big Fleet

By Sydney J. Freedberg Jr. on January 22, 2016 at 4:07 PM

Aegis cruisers and destroyers.
Aegis cruisers and destroyers.

WASHINGTON: 国際紛争を地震に例えれば、小規模の揺れが続くほうが激甚震災よりマシだ。戦争で言えば世界大戦となる。社会科学では競合する勢力が2つ以上あれば、それぞれの差異は多くの小規模紛争により解消し全面戦争は回避できるとする。そこで海軍のプレゼンスを世界規模で展開することが望ましいと米海軍士官2名が最近論文を執筆している。
  1. 中国が南シナ海で露骨に示す動きのような挑発行為にしっかりと対処するためには多くの艦船が必要となる。多くの艦船を投入すれば相手方と相互の動きを監視することで大戦争勃発のリスクを低くすることができる。問題は米国にはそれだけの艦船数がないことだ。
  2. 「艦船隻数は平和維持に極めて重要だ」とジェリー・ヘンドリックス海軍大佐(退役)は記者に語る。共著者のベンジャミン・アームストロング中佐とともに「ここまで海軍が規模を縮小した状況はこれまでなかった。仕組みがバラバラになりかけている」
Jerry Hendrix
Jerry Hendrix

  1. 「海軍プレゼンスにより米国の権益の範囲と米国の決意の程が示され、意図をしっかりと理解させることで紛争勃発を防いでいる」とヘンドリックスとアームストロングは新しいアメリカの安全保障を考えるセンターの研究文献「プレゼンスの本質:海軍プレゼンスと国家戦略」The Presence Problem: Naval Presence and National Strategy” で記している。両著者はさらに「海軍・海兵隊の規模縮小による海軍力プレゼンスの減少は摩擦発生の可能性が増えることにつながり紛争や戦争勃発の可能性も増えそうだ。米国の権益がどこまでなのか疑念を持たれるためだ」
  2. ヘンドリックスとアームストロングは米海軍を巡る議論の核心をついている。予算が限られる中、海軍は小型艦多数で平時のプレゼンスを保つべきなのか、それとも強力な艦艇少数で戦争に備えるべきなのか。海軍の首脳陣や国防長官はバランスの維持に苦労しており、小型の沿海戦闘艦が特に議論の中心になっている。ヘンドリックスとアームストロングの主張はこの難しい決断の前にそもそもプレゼンスとは何か、そしてもちらん何のためのプレゼンスなのかをはっきりとしておくべきだと主張する。
  3. この点が知性ある整理ができていないのは実経験が不足しているためではない。米海軍は太平洋に1800年からほぼ一貫して艦船を配備している。南北戦争の時代でもエイブラハム・リンカン大統領は太平洋戦隊をそのまま残したのはプレゼンスの維持を念頭に置いていたためだと両著者は言う。テディ・ロウズベルトの「Great White Fleet」では戦艦をイタリアの災害援助に派遣している。海軍長官レイ・メイバスによれば世界各地でプレゼンスを示すことが「これまでで最大の功績」だという。
  4. なるほどプレゼンスは重要だが、なぜなのか。「海軍力のプレゼンスを巡る長い歴史の中でこの任務を遂行することの戦略や理論で議論はほとんどなかった」と両著者は論じている。「海軍のプレゼンスはいつもどの時点でも世界各地に派遣できる十分な隻数があることが前提のようだ」
  5. 事実、「プレゼンス」任務にあたる艦船は一貫して一つのミッションにあたるか、友好国との演習を展開して敵意を有する勢力へ決意の程を示す、人道援助を通じて善意を強化するなどの役割を果たしている。だが海軍の理論家は艦隊戦闘や戦時の護送任務や通商破壊を論じることはあっても戦争行為を思いとどまらせる作戦については触れないことが多い。
  6. 両著者の理論的の土台とは驚くべきことに1996年の砂の堆積コンピューターシミュレーションだ。砂山に砂粒を追加すれば、どれだけ慎重に手を動かしてもある時点で山は崩れる。バランス欠如が限界を超えるためだ。デンマークの物理学者ペール・ペックは砂の大規模崩壊を防ぐ最善策として小規模崩壊を連続発生させるのがよいとし、土台のテーブルに振動をゆるやかに与えるのが効果的と計算した。
  7. このベックの「自己編成型臨界性」“self-organizing criticality” モデルは複雑で災害発生に応用されており、地震、森林火災から戦争にまで広がっている。ヘンドリックスとアームストロングの比喩では世界規模の海軍力プレゼンスは砂山に連続して振動を与えるのと同じで一回で破滅的な結果を生む戦争を勃発させる代わりに多くの小規模事件を発生させて不安定さに対応することになるのだ。
  8. 「この理論からわかるのは各国間に相互作用の機会が多ければそれだけ各国の権益を示す機会も増えるので、主張の背後にある価値観や戦う目的が理解できる」とヘンドリックスは記者に語ってくれた。「相互作用があれば各国は緊張緩和を継続的に可能となり、破滅的な結果を招くことはないはずだ」.
  9. ではこの理論から艦隊戦力の編成方向がわかるのだろうか。議論の余地はあるが、「バランス」が重要だとわかり、これが海軍作戦部長に就任したジョン・リチャードソン大将の基本理念になっている。
  10. 「平和維持と戦争勝利の間には重要なバランスが存在する」とヘンドリックスは記者に語る。「もし高性能艦だけ建造すれば、予算が欠乏し十分な隻数をそろえて平和維持のため各地に派遣できなくなる。反対に低性能の小艦艇をたくさんすぎるほど建造したら、艦隊は戦闘に勝利をおさめる能力を失い、通常兵力抑止効果が犠牲になる。350隻ほどの艦隊規模は適性と思うが、LCSはあくまでも艦隊構成の中でバランスの一部という扱いだろう」■


2016年1月25日月曜日

米中海軍制服組トップ同士で続く直接対話はどんな結果を生み出すのか


信頼醸成が重要であることは言うまでもないのですが、結果が生まれないと困りますね。中国人もアメリカ人も原則だけを主張していても平行線のままだとわかっているはずですが。今年も中国はリムパックに招待されるようですね。(前回は演習参加とは別にスパイ船も派遣していました)

Top US, Chinese Admirals Confer

Christopher P. Cavas 4:25 p.m. EST January 20, 2016

US and Chinese naval leaders hold video teleconference


Chinese CNO Wu(Photo: MCC Sam Shavers, US Navy)

WASHINGTON — 米中の海軍制服組トップが二時間にわたるビデオ会議を1月19日に行っていたことが判明した。両国海軍間の定期的意見交換の一環だという。
  1. 海軍作戦部長(CNO)ジョン・リチャードソン大将と中国人民解放軍海軍トップの呉勝利Wu Shengli大将は「2015年を振り返り両国海軍の関係で多彩な出来事があった」と認識を共有し、2016年はさらなる進展を誓い合ったという。
  2. 関係者によればその他として艦船の寄港や人員の交流も話し合った。双方が海上偶発事故防止規定 Code for Unplanned Encounters at Sea (CUES)の適用場面が増えている中で「満足といっそうの振興」で合意したという。この規定は軍事対立の発生を予防するため米中が各国と取り決めたものだ。
  3. ビデオ会議の詳細は不明だが、両トップが今年夏に予定されているリムパック演習を取り上げたのではないかと見られる。中国は再度同演習に招聘を受ける予定だ。
  4. リチャードソンが呉とビデオ会議に臨むのはこれが三回目だ。初回は2015年晩夏でその時点でリチャードソンはCNO就任予定のため前任のジョナサン・グリナート大将に加わる形で参加した。二回目は昨年10月でUSSラッセンに南シナ海で中国が占拠する島嶼付近を航行させた直後のことだった。
  5. リチャードソンは声明文を発表しており、「話し合いは有意義だった。顔を突き合わせて相手の反応を見ながら率直な意見交換をすることが個人的つながりを生み、両国海軍にとって有意義な結果を今後も生むだろう」
  6. 先の米海軍関係者によれば両国海軍トップは今年後半にも初めて実際に会見することを検討したという。
  7. 「それまでに緊急事態が発生しなければ」次のビデオ会議は春遅くに予定されているという。■


2016年1月24日日曜日

★A-10退役が簡単に覆された理由

A-10退役を既定方針とした米空軍でしたが、状況の変化を理由に意外にあ簡単に方針を引っ込めたようです。F-35の配備が予定通り進んでいないこともあるのでしょうか。むしろ、シリアなど不穏な情勢が続く対ISIS攻撃であらためてA-10の威力が実証されたほうが大きいのでしょうね。しかし、CAS任務ではF-35でA-10の代替が本当につとまるのか、A-10といえども機体寿命にも限りがあり、今後厳しい現実に直面するのではないでしょうか。

USAF Vice Chief: ISIS, Russia Prompted Reconsideration of A-10 Retirement

By Lara Seligman, Defense News3:29 p.m. EST January 21, 2016
635889007509753392-A-10-scary.JPG(Photo: U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Janelle Patiño)
WASHINGTON — イスラム国の活動の広がりとロシアの復活がA-10ウォートホグ退役の原案を米空軍が再考した理由だと判明した。
  1. 1月24日放映予定のDefense News with Vago Muradianで単独インタビューに答えた空軍副参謀長ディヴィッド・ゴールドファイン大将はA-10退役の方針を決めた際に、世界の脅威環境は今と全く違っていたと語っている。A-10退役方針は2015年度予算要求で明らかになったが、ISやロシアの横暴な動きが出る前に作成された。
  2. 予算編成の理由から米空軍は二年前に兵力構成を計画する必要があるとゴールドファインは強調する。予算要求時から状況が変化することは多々あり、空軍は柔軟に新状況に対応を迫られる。
  3. 「A-10退役を決めた時点でISILは出現しておらず、その時点でイラクからは撤退済みでアフガニスタンからも大部分が撤収していたが、ロシアの復活はまだなかった」
  4. 来月にペンタゴンが提出する2017年度予算案でA-10退役案棚上げがあると伝えられている。
  5. 空軍上層部からもA-10退役の先送りを暗示する発言が先に出ていた。A-10は前線兵士にとって頼りになる存在で搭載するガトリング銃の響きは独特のものがあり、イラク、アフガニスタン、シリアで近接工区支援の必要性は高まっている。またリビアやイエメンといった問題地にも投入可能性があると航空戦闘軍団司令官ハーバート・「ホーク」・カーライル大将は言う。
  6. 「退役は少し先送りするのがいいと思う」とカーライル大将は国防記者の集まる朝食会で11月に発言していた。 「つまるところ現地に空軍力を送らねばならない。機体は退役を免れないが、A-10退役を少し先送りし機体を確保する案は検討価値があり、現時点で発揮している実力をこの先にも発揮させたい」
  7. 空軍原案ではA-10退役で浮く整備要員をF-35共用打撃戦闘機に回すはずだった。しかし中東でA-10への需要が高まっていることは空軍には深刻な事態だとカーライル大将は認める。

  1. 米空軍はこの先数年間にも厳しい決断に迫られるが、予算も厳しい状況にあるとゴールドファインは言う。
  2. 「将来の展望には現在の課題も無視できず、脅威事象が地域をまたがる傾向があり、将来の兵力構成のバランスをどう取るかが課題になる。ゼロサムゲームと言ってよい」
  3. 今回のA-10退役延期は議会と空軍の間に発生した激烈な意見対立が背景にある。ジョン・マケイン上院議員は上院軍事委員会委員長でA-10の強力な支持者でもあり、ペンタゴンが「早すぎる」退役を遅らせるとの報道を歓迎している。
  4. 「世界規模で混乱が発生する中で、近接航空支援用では最高の機体を後継機種がないまま時期尚早に退役させる余裕はないはずだ」とマケイン議員は1月13日に声明文を発表している。「オバマ政権が2017年度予算案を提出するが、A-10運用を継続できるよう原案を尊重してもらい、引き続き米軍兵士多数が危険な状況で勤務する中、その守りを維持してもらいたい」■


グアム沖合いで日米共同海軍演習


U.S., Japan navies conduct war games near Guam

By David Larter, Navy Times 5:42 p.m. EST January 21, 2016
USS Mustin(Photo: MC2 Christian Senyk/Navy)
グアム島近くで日米共同海軍演習が展開中で、日米同盟関係の深化を示している。
  1. 米海軍駆逐艦マスティンとマッキャンベルが海上自衛隊と対潜戦、接近する戦闘機への対処訓練を実施していると1月20日に報道発表があった。
  2. 演習には哨戒機、EA-18Gグラウラー編隊、潜水艦1隻が参加している。報道発表では潜水艦の所属は明示していない。
  3. グアム演習はGUAMEXの名称で海上自衛隊と毎年実施している。日本は安全保障上でこれまでより積極的な役割を果たしている。背景には中国が南シナ海で人工島を建設したり、東シナ海で防空識別圏を設定するなど挑発を繰り返していることがある。
  4. 日本は憲法解釈を変更し、安全保障を巡る状況の変化に対応し、米国含む各国軍との戦闘作戦に参画することが可能になった。
  5. 海上自衛隊関係者からは米海軍と共同で南シナ海のパトロールを開始したいとの発言があった。中国は海軍力を整備しており、国際海域を自国領土と主張し、衝突の可能性を自ら作っているというのが米国の見方だ。
  6. 第二次大戦終結により日本国憲法は軍事力の行使は自衛のためと限定してきた。これは帝国時代の日本が近隣諸国を軍事力で征服してきたことの反動だ。
  7. ただし今日の日本は世界有数規模の海軍兵力を有しており、120隻を有し、駆逐艦、水陸両用艦、攻撃潜水艦等を運用する。海上自衛隊が日本に配備している前方配備空母打撃群含む米艦船や各国部隊と共同作戦する日がやってきそうだ。■

2016年1月23日土曜日

身体能力を大幅に強化した兵士が出現する可能性

前回取り上げた人体強化兵士の話題ですが、次第に内容が判明してきました。正規軍はともかくテロ集団がこの技術を使えばどどんな惨事が発生するか、考えるだに恐ろしいことになります。記事で言うような国際会議で議論したとしても平気で無視する勢力が出るはずですから大変なことになりそうです。

「breaking defense」の画像検索結果

‘The Terminator Conundrum:’ VCJCS Selva On Thinking Weapons

By Colin Clark on January 21, 2016 at 6:04 PM

Terminator army: Warner Bros.
Terminator army from Terminator 3: Rise of the Machines Credit: Warner Bros.

WASHINGTON: 統合参謀本部副議長がインテリジェント兵器や強化型兵士の使用について国際議論が必要だと主張している。

  1. 「どこで線を引くのか、また誰が先に一線を越えるのか」とポール・セルヴァ大将は発言。マイクロエレクトロニクスの人体埋め込みの可能性をさしている。「人間としてこの一線を越える日がくるのか。そしてその実施にはじめて踏み切るのはだれか。これはきわめて倫理的な疑問だ」
  2. ペンタゴンは強化装甲、人工知能、超小型センサー、インテリジェント装具の開発に懸命であり、記者はセルヴァ大将に米国も同じ方向に進むのかとたずねてみた。実用化すれば兵士の能力は向上し、より早く走り、より高くジャンプし、暗闇でも目視でき、電子情報を収集し、長期間覚醒したままでいられる。これに対しセルヴァはロシアや中国に対抗して技術面で「大胆な変革」が必要としつつ、米軍がこの技術を先に実用化すれば人間性を問う「深刻な結果」を招くと慎重な姿勢だ。
Gen. Paul Selva
Gen. Paul Selva

  1. この技術は倫理人道上のみならず法律上も問題となる。映画ターミネーターのスカイネットを思い起こしてもらいたい。自ら考える兵器が人の命令とは別に勝手に作動したらどうなるか。セルヴァ大将は国際社会でこの問題を議題にすべきで国際法で認められる範囲内で成文化すべきだという。「国内、国際双方で議論が必要だ。敵対勢力がこの技術を実施したらどうなるか」と懸念を表明し、国際社会での検討を提案している。戦争行為を規定するジュネーブ協定のことのように聞こえるが、詳しくは述べていない。
  2. スティーブン・ホーキング、イーロン・マスク他1000名もの科学者、専門家が昨年7月に書簡を出し、人工知能を応用した兵器の禁止を訴えている。
  3. 「もし軍事大国のひとつがAI兵器開発で先行すれば世界中での軍拡になるのは必至で、技術開発の行き着くところは自律兵器がカラシニコフ銃のように普及することになる」
  4. 近い将来に実現する技術により何が可能になるのか。「一番実現の可能性が高いのがマイクロエレクトロニクスや人工知能を通信機能に組み合わせて大脳皮質に埋め込むこと、3Dプリント技術 additive manufacturingだ」とセルヴァは指摘し、脳信号で直接作動できる装具についても話している。「すでに試作品が完成しており、その作動は驚くべきものだ」とブルッキングス研究所で聴衆に紹介している。
  5. セルヴァからはペンタゴンに専用予算があり、第三相殺戦略構想の技術革新に使っていると紹介。ただし予算規模はあきらかにしなかった。
  6. 会場での質問に対してセルヴァは長距離打撃爆撃機に搭載する「各システムを制御するシステム」に触れている。「これまでで最高に複雑な地対空システムに対抗するもの」とし、開発段階でLRSBで「若干の初期不良があった」と述べたが、もちろん詳細には触れていない。■


2016年1月22日金曜日

ロシア空軍がSu-35S追加発注したのはT-50投入がさらに遅れるため


一見どうでもいいニュースに聞こえますが、重要なのはT-50 PAKFAが実戦化するのが2020年代以降にずれこむということで、原油価格低迷もありロシア経済がすでに低迷していると示唆していることです。

Russia Places New Order For 50 Su-35S Fighters

Jan 12, 2016Maxim Pyadushkin | Aerospace Daily & Defense Report

Sukhoi-35S: Aleksander Markin
MOSCOW — ロシア空軍はスホイ-35Sを50機以上、1,000億ルーブル(14億ドル)で発注する。ロシア業界筋関係者が伝えてきた。.
  1. 調達契約は昨年夏に調印済みと、スホイ親会社の合同航空機会社(UAC)の代表がAviation Weekに明かした。別の教会筋が経済日刊紙Vedomosti に発注の最終決定が遅れたのはロシア政府の2016年度予算の道筋がはっきりしなかったためだという。予算は12月中旬にやっとプーチン大統領が署名して発効した。
  2. 合同航空機代表によれば戦闘機は今年から年間10機のペースで引き渡すという。
  3. 単座型Su-35はSu-27フランカーの系列に属する最新型。以前のフランカー各型と比べるとエンジンが強力なNPOサトゥルンAL-41F-1Sに換装され、推力ベクトル制御と完全デジタル装備が特徴で、ティコミノフNIIPイルビス式フェイズドアレイレーダーも搭載される。ハードポイントは12箇所あり合計で8トンまでの兵装を搭載する。
  4. ロシア空軍はまず2009年にSu-35Sを48機発注しており、二年後に初号機が就役し、最終号機が昨年納入されたばかりだ。ロシア国防省の発表ではコモソモルスクオナムールの組立工場からカムチャツカ地方までフェリーフライトを今週実施したという。ロシア極東には拠点基地プリモリエがありそこまで移動した。
  5. Su-35はロシア軍にとって同じスホイのT-50代後世代戦闘機が登場するまでのつなぎの扱いだ。T-50の第一線配備は2020年より先になる模様で、ロシアの経済不振が原因だ。
  6. Su-35運用に加わるのは中国で、長年に渡る交渉の末に24機を20億ドルで調達する契約を昨年調印している。■

2016年1月17日日曜日

★台湾>AV-8ハリヤー取得の可能性

台湾に新政権が誕生し、中国の軍事力に台湾がどのように対抗していくのかが注目されます。まず中古ハリヤーの調達の可能性ですが、台湾は乗り気ではないようですね。どうせ導入するならF-35Bがほしいということですが、実現すれば米海兵隊につづき二番目のユーザーになるのですが、実現の可能性はどうなのでしょう。それにしても北京の圧力は米企業にも相当利いているようです。

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Despite Pressures From China, Taiwan Might Procure Harriers

By Wendell Minnick 5:15 p.m. EST January 16, 2016


TAIPEI — 台湾にAV-8ハリヤー取得の可能性が出てきた。米海兵隊がF-35Bへの機種転換を始めたためで米政府筋が認めた。
  1. ハリヤー各機は国防総省の余剰国攻防装備 Excess Defense Articles (EDA) として国防安全保障協力庁を通じ提供される。
  2. 台湾は垂直短距離離着陸(V/STOL)機を求めており、AV-8はこれに答える選択になる。有事には中国は台湾の各空軍基地を開戦数時間以内に破壊すると見られ、短距離弾道ミサイル1,400発を準備しているとの推定がある。そこでハリヤーのV/STOL能力があれば台湾空軍は内陸から航空作戦を継続できる。
  3. だが台湾空軍はAV-8に前向きではなく、むしろF-35B導入を希望している。
  4. 台湾の国防部報道官は超音速飛行、STOVL能力、ステルス性、見通し線外対応能力を持った機体が必要とし、AV-8も選択肢だが、「機体が老朽化しており、性能は今後の作戦要求に合致しない」と評した。
  5. V/STOL能力除くとハリヤーは亜音速機で、空対空戦能力が欠如していると台湾空軍の将官が述べている。「能力が限られているため台湾は同機を導入しないのではないか。改修コストも高く、支援補給も大変だ」
  6. 台湾在住の国防専門家Erich ShihはAV-8調達は「ばかげている」と見る。「作戦半径が極めて短く、中古機では維持費や部品調達が高くなり、さらにエンジンはとても複雑な構造だ」からだという。台湾国防部筋は米政府がF-16C/D戦闘機の台湾向け販売を拒否していることから高性能のF-35の譲渡は実現困難だと見ている。
  7. それでも台湾空軍はF-35取得をめざしており、米政府が認めない可能性は理解していないとErich Shihは言う。
  8. 台湾がF-35Bに執着している様子は台湾空軍が同機をあしらったパッチをすでに作成していることでもわかる。このパッチは2013年から出回っている。
In 2013, this collectible patch began to appear in

  1. Defense Newsは2002年に台湾がペンタゴンに送った趣意書の写しを入手し、F-35Bの機体価格および導入可能性を当時台湾経済文化部(事実上の在ワシントン大使館)の国防調達部長Wang Chi-linが求めていたことがわかった。台湾が早い段階からF-35BのSTOVL能力に関心を示していたことがわかる。
  2. 「台湾の非先制攻撃方針を逆手に、敵(中国本土)は中華民国空軍の各基地への初回攻撃を最優先事項としているはずで、台湾は侵攻軍の撃退が困難になる。短距離離着陸能力がない機材では空軍力が使えなくなる」
  3. 「敵の初回ミサイル攻撃や特殊部隊攻撃で空軍基地が使用不可能になっても効果的な対応能力を確保しておくことが同機取得の主な理由だ」
  4. 元米空軍関係者によるとペンタゴンは台湾向けにF-35のブリーフィングしており、出席した台湾軍将校はその内容に「感銘」したという。ただし、ブリーフィング以上の要望にはこたえていないという。
  5. 台湾が求めたF-16C/D戦闘機売却を米政府は無視しており、その意図は明白だと米政府関係者は言う。「F-16取得がむりなら、F-35も同様だ」 中国政府はF-16新造機を台湾に販売するのは「最後の一線」だとしていた。
  6. AV-8Bのメーカー、ボーイングにも面倒なことになる。同機の再整備についてコメントを求めたが同社はこれをはねのけた。「ご想像のとおり、台湾向け販売の可能性については何も申し上げることはありません」(ボーイングディフェンスでアジア太平洋地区を担当するケン・モートン)
  7. モートンの発言は驚くに値しない。こ中国政府はボーイングへ台湾向け販売の停止を求めており、同社は台湾事務所を2006年に閉鎖した。ボーイングからはDefense Newsに対して繰り返し同社のAH-64アパッチ攻撃ヘリの台湾向け販売を記事にしないよう求めてきている。ボーイングは中国の民間航空需要に相当の投資と営業実績があり、中国政府はこれを利用してボーイングはじめ米企業へ台湾向け防衛装備の販売をやめるよう働きかけている。■


2016年1月16日土曜日

★★ノースロップ>次世代戦闘機はサイバー回復機能を搭載する




今のところ第六世代戦闘機(この用語が正しいのでしょうか)について中身が一番伝わってくるのがノースロップ・グラマンのようです。生き残りをかけて次期戦闘機事業の獲得を狙っているようです。今回の内容からは同社の目指す方向が見えてきます。

Northrop Lays Out Vision for ‘Cyber Resilient’ Next-Gen Fighter

Lara Seligman 12:51 p.m. EST January 15, 2016
http://www.defensenews.com/story/defense/air-space/strike/2016/01/15/northrop-cyber-resilient-next-gen-fighter/78833308/
635884555563533319-NGAD-2.jpg(Photo: Northrop Grumman)
PALMDALE, Calif — ノースロップ・グラマンはF-35共用打撃戦闘機事業に参画しながら、次世代の機体構想を練っている。
  1. ノースロップで航空宇宙部門を統率するトム・ヴァイス社長は長距離無人戦闘機構想を今週発表して、レーザー兵器と高性能「サイバー回復力」“cyber resiliency” を搭載し、今よりネット化が進む2030年代の脅威対象に対抗する構想だという。
  2. ペンタゴンは第六世代戦闘機の初期構想作成にとりかかっており、空軍F-22と海軍のF/A-18の後継機づくりを2030年代の想定で進める。昨年はじめに空軍は将来の航空優越性確保に必要な技術要素の検討作業を開始している。
  3. 産業界も次の競作の準備を開始した。ロッキード・マーティンは第五世代戦闘機F-35で主契約企業だが、次代の戦闘機構想の作成にとりかかったと伝えられ、ボーイングはこっそりとモックアップ案数例を発表している。
  4. ノースロップはF-35で協力企業であり同時に第六世代戦闘機では主契約企業の地位をめざすとヴァイス社長は報道陣に1月14日話している。同社は次世代戦闘機の性能指標の決定を目指した研究を始めていると同社で技術研究と高度設計事業を担当するクリス・ヘルナンデスが述べている。
  5. ヴァイス社長発言は同社が主催したカリフォーニア州の同社施設査察旅行ででたもの。Defense Newsは旅費、宿泊費を同社から受け取っている。
  6. ペンタゴンがこれから解決すべき問題に機体のデータと通信内容の保全がある。これからはサイバーハッキングがあたりまえになる。サイバー攻撃をすべて回避することは不可能だ。かわりに侵入を探知し、被害の発生を防ぐ、とヴァイスは言う。
  7. 「人体は感染を受けやすいが、皮膚表面で感染をすべて食い止めるのは不可能だ。感染した場合に身体が反応する」とヴァイスは言う。「人体には素晴らしい機能があり白血球がウィルスを攻撃し、制御して身体に害が広がるのを防いでいる。2030年には同様のシステムが実用化しているだろう」 次世代の制空戦闘機にはデジタル版の白血球が搭載され、システムがサイバー感染しても広がるのを防げるとヴァイスは見る。
  8. もう一つ業界が考えているのは速度と航続距離の完璧なバランスだ。速度と飛行特性はこれまで戦闘機で最重要視されてきたが、ヘルナンデスによれば将来の機体では速度を犠牲にしても航続距離を重視するという。飛行距離は利用可能な基地が世界各地で減る中でもっと重要になっていくというのだ。 「飛行距離と速度は直交関係にある。亜音速機は超音速機よりずっと飛行時間が長い。次世代戦闘機でも超音速飛行性能はあるだどうが、現在の戦闘機ほどの速さには及ばないだろう。その分航続距離が重視されるからだ」
Northrop Grumman's rendering of a sixth-generationNorthrop Grumman's rendering of a sixth-generation fighter jet (Photo: Northrop Grumman)
  1. 第六世代機の課題には機体での熱制御もある。超音速飛行、指向性エネルギー兵器が排出する熱の処理だ。ここに高出力レーザー兵器が加わると熱制御はもっとむずかしくなるとヴァイスは指摘する。現在の熱制御のレベルは「不十分」と言う。
  2. 「高出力レーザー兵器システムを超音速機に搭載して発熱が発生しないとは誰も期待できない」とヴァイス社長は述べた。「そのため相当の時間をかけて熱の再利用を図る方法を模索していくことになりそうだ」
  3. ペンタゴンと業界はこれとは別に第六世代戦闘機がそもそも有人機になる必要があるのかで答えを模索することになる。答えはそんなに簡単ではないとヴァイスは言う。多分物理的に機内に乗員が入ることはないだろうが、遠隔操作でミッションをこなすのだろう。「ジェット機に人をこれからも乗せるのか、それとも人をミッションにあてておくのか。本当にコックピットに人が乗り込む必要があるのかで答えはそのうち出そうだ」
  4. 未来の飛行隊は有人機と自動飛行機の組合せで無人機を統率する「ミッション指揮官」が隊を指揮するのではないかとヘルナンデスは言う。
  5. だがロボットは頭脳のかわりにはならず、人間にはソフトウェア改訂がなくても最新の情報に適応できるとヴァイスは指摘する。そこでノースロップが取り組んでいるのは自ら学習して進化できるソフトウェアでリアルタイムで意思決定できる機能だという。
  6. この技術は第六世代機には間に合わないかもしれないが、その後の改修で搭載できるかもしれないとヘルナンデスは言う。
  7. 「生身のパイロットに何か新しいことを教えるときにわざわざ脳を取り替える必要はないでしょう。ならば、学習機能のついた機械もできるのでは。進化できる機械が可能ではないでしょうか」(ヴァイス)■

なるほど、人工知能、マンマシンインターフェース、自律飛行、排熱の再利用技術など新しい次元の課題がそこまできているということですね。ノースロップが費用負担した報道陣向けツアーであることをちゃんと記するのは良いことだと思います。


主張:F-35、LRS-Bにコスト削減圧力を求める、 F-15E後継機としての登用は可能か



Opinion: Keeping F-35, Bomber Contractors’ Feet To The Fire

Jan 8, 2016 Daniel Z. Katz | Aviation Week & Space Technology

F-15E後継機需要をてこにF-35とLRS-B両事業で競争圧力をかけておくことが可能なはずだ。Credit: USAF Airman 1st Class Joshua Kleinholz

経済学では競争があれば最低価格で最高の製品が手に入ると教える。残念ながら軍用機調達の世界ではこれはあてはまらないようだ。米軍最大の調達事業はF-35共用打撃戦闘機(ロッキード・マーティン)と長距離打撃爆撃機(LRS-B)(ノースロップ・グラマン)だが今後20年以上にわたり、競争状態は発生しない見込みだ。

  1. しかし両事業で競争の圧力をかけることは可能。F-15Eストライク・イーグルの後継機問題により、上記大型事業二件でも費用を最小限に抑え、最大の性能を実現させる効果が生まれる。
  2. だがペンタゴンがこれだけの効果を最初から実現できるだろうか。国防総省がまず期待するのは技術開発・生産準備檀家で、単一契約企業体を選定し、提案書通りの技術を実現する段階だ。生産関連契約多数が成立すると別の契約企業が入り込んできて作業進展が遅れるとこけおどしをかける。
  3. 契約の仕組みで知恵を使えば契約企業の実績が悪くても影響を緩和できるはずだ。ただし一定の限度までだが。業界内で競争状態が製造期間中ずっと存在すればその結果で高い製品品質と低価格が実現する前例は僅かだが存在する。米会計検査院はF-16で二番目のエンジン選択肢を準備したことで納税者の負担は2割も減ったと確認している。
  4. 残念ながらF-35、LRS-Bのいずれにも競争状態はないままだ。F-35では日程からの遅れは6年分になっており、機体単価はほぼ5割上昇したが空軍のF-16、海兵隊のAV-8Bそれぞれで他に選択肢はなく、海軍も有人戦闘機でステルス機の選択肢がない。LRS-Bの方ではもう少しまともな成果が出ることを期待するばかりだが、現在出ているボーイングによる不服申請の手続きが終われば、やはり無競争状態になってしまう。競合相手がいればコストを中核的な比較条件にし、空軍内部の迅速戦略整備室が納期と予算の目標に合致した事業展開を進めたはずだ。だが現実にはB-52やB-1の後継機としてはLRS-Bを100機生産する以外にない。
  5. 少しでも競争環境を生む圧力をF-35やLRS-Bで実現できないだろうか。そこでF-15Eの後継機問題が出てくる。米空軍はF-15E217機対象に改修作業中だが、完成すれば2040年頃までは実用に耐える攻撃戦闘機として稼働できる。
  6. さいわいにF-35もLRS-Bもその頃には生産がほぼ最終段階に達しているはずだ。ペイロードや機体コストを考えると両機種とも攻撃機として投入が可能なはずだ。最新資料ではF-35Aの機体調達単価は2037年で83.5百万ドル、また1,763機の平均では103百万ドルになるという。LRS-Bではほとんど資料が公開されていないが、例外的に上限価格帯は判明している。まず100機分の平均調達単価は607百万ドル(ただし2016年度貨幣価値で)である。つまりLRS-Bは単純に言ってF-35Aの六倍高いことになる。ペイロードの比較はもっとむずかしい。LRS-Bの性能諸元が非公開のためだが、LRS-BのウェポンベイでB-1Bが搭載する2,000ポンド爆弾が運用可能であるはずなので、爆弾搭載量でF-35Aの4.8倍だ。
  7. 無論、性能が優先する。LRS-Bが航続距離でF-35Aを大きく引き離し、ステルス性能も高く、より多くを搭載できる。一方で、LRS-Bが空対空ミサイルを搭載する可能性は少ないし、超音速まで一気に加速することもないだろう。そうなるとどちらを取るかは簡単ではないが、いずれか一方、あるいは両機種がF-15Eの任務を引き継ぐことは可能だ。
  8. 効果は大きい。F-35Aを200機追加生産するのか、LRS-Bをあと40機生産すれば200億ドル規模の事業になる。政府にとっての利点はすぐに発生する。ロッキードとノースロップはともに既存事業で遅延や費用超過を発生させればF-15E後継機の受注が遠のくことを理解できるはずだ。
  9. これ以外の機体が登場する可能性として第六世代戦闘機またはステルス無人戦闘航空機がF-15E後継機の候補になるかもしれない。仮に新型機が時宜にかなった形で生産に入れば、選択肢が広がり、競争が活性化される。ペンタゴンはまずF-15E後継機としてF-35とLRS-Bを候補として考えると発表すれば、両機種の事業で競争圧力が生まれることになる。これを実施すれば納税者にも数十億ドルの節減効果が生まれるとともに高性能の機体が手に入る事になるはずだ。■
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ドワイト・Z・カッツはAviation Week Intelligence and Data Servicesで国防アナリスト次席を務めるが、米陸軍で特殊部隊隊員として従軍のあと、国防長官官房で勤務した経験がある。