2016年2月15日月曜日

中国の軍拡でアジア太平洋の軍備調達は急成長中(日本、韓国、シンガポール等)


ちょっと事実錯誤の部分もありますが、中国の周辺国がおしなべて軍事装備の整備に動いているのは事実です。
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Asian Procurement Takes Cue From Chinese Modernization

By Wendell Minnick, Defense News11:50 a.m. EST February 13, 2016

CHINA-WWII-PARADE(Photo: Greg Baker/AFP via Getty Images)

TAIWAN — 中国の進める装備近代化がアジア各国の防衛装備調達を動機づけている。中国は第五世代戦闘機を開発する一方でロシアからSu-35を導入し、国産空母を建造し、弾道ミサイル軍の戦力拡大に向かい、南シナ海の支配を狙い、台湾進攻と日本が実効支配する尖閣諸島の占拠をほのめかしている。
  1. 「中国が南シナ海の軍事化に走り、日本への敵意をあらわにするのを横目で見る各国が防衛装備を追加調達して強力で強圧的な中国に対する保険を考えるのは当然でしょう」と語るのはリチャード・ビッツィンガー(シンガポールのラジャラトナム国際研究校の主任研究員)だ。
  2. 中国は伝統的に数の威力を求めてきたが、ここにきて技術面でも域内主要国と肩を並べるようになってきたと指摘するのはダグラス・バリー(ロンドンの国際戦略問題研究所の主任研究員)だ。
  3. 「成都J-10、瀋陽J-11にロシア製Su-35がそろえば2020年代に十分通用する戦闘機の基盤が完成します。域内の各国空軍は対抗上高性能機材に投資するのか、スタンドオフ兵器への依存を高めるのか選択を迫られるでしょう」(バリー)
  4. 中国のたくらみ以外に北朝鮮がミサイル・核兵器の開発で常軌を逸した脅かしに直面する各国の反応はさまざまで、韓国、台湾、シンガポールがF-16の耐用年数延長改修に向かう一方、国産戦闘機開発に韓国がKF-Xで日本がステルスX-2心神で挑み、そのほかにも台湾の国産防空戦闘機で性能改修を図る動きがある。
  5. ビッツィンガーは中国空軍の最新装備を心配するのは各国にとりごく自然だとし、自国空軍基地がまず攻撃対象になると憂慮しているという。このことから短距離離陸垂直着陸機のF-35Bや改修ずみAV-8ハリアー、V-22オスプレイ輸送機への需要が高まっている。
  6. F-35Bはオーストラリア、日本、韓国が導入予定で(?)シンガポールもまもなくここに加わる見込みだ。台湾もF-35Bを希望しているが、政治的な事情で実現しそうにない。北京が相当のロビー活動をワシントンで展開しているためだ。
  7. 台湾からはブロック50/52のF-16C/Dを導入して老朽化してきたミラージュ2000とF-5を更新したいとの要望が出たが米政府は拒絶しており、アナリストの間ではこれ以上の高性能機を台湾に提供すれば中国が黙っていないとみる向きが多い。当然F-35がその対象だ。かわりに米政府筋によれば台湾に改修ずみAV-8の提示をするという。
  8. 各国が垂直飛行可能な機材に目をつけるのは中国が弾道ミサイル・巡航ミサイルを強化しているためだ。台湾のシナリオでは中国は短距離弾道ミサイル1,400発を発射して空軍基地を粉砕し、指揮命令系統を破壊し、地上の対空陣地を壊滅させる。これに対して防空力の維持に有効な策はひとつだけで、F-35Bあるいは再生AV-8を導入し、台湾中部の山岳地方に機体を隠すことだけだ。
  9. 中国が島しょ部分への脅かしをかけてきたことで垂直着陸輸送機への関心が高まっている。長距離を高速飛行し兵員・物資を輸送するためにティルトローターのベル=ボーイングV-22オスプレイを発注したのは日本だが、韓国とシンガポールも関心を示している。オスプレイはシンガポール航空ショー(2月16日ぁら21日まで)で展示される。
  10. 弾道ミサイルの脅威は中国だけでなく北朝鮮からもあり、地上配備の防空ミサイル装備への関心が高くなっている。ここには最終段階高高度地域防衛(THAAD)が韓国向けに、また新型ペイトリオット性能改修-3(PAC-3)が日本と台湾向けにある。
  11. 台湾は西海岸に沿って高性能緒距離早期警戒レーダーを最近導入したばかりで、中国内陸まで監視し、ミサイルだけでなく戦闘機の動きもモニターする。日本は信号情報収集(SIGINT)やレーダー監視設備を琉球諸島に強化している。
  12. 台湾のSIGINT体制は世界でも高性能な部類に入り、米NSA(国家安全保障局)は台湾の国家安全保障局(NSB)と共同で高周波方向探知アンテナ施設を台北北方の陽明山Yangmingshan Mountainで運用中だ。またNSBは独自にアンテナ施設を北部の林口Linkou と南部の檳榔村Betel Nut Villageに設置した。
  13. NSAを退職した筋によれば米国が集める中国関連の信号情報の7割は台湾で得たものだという。
  14. 航空ショー主催者によればアジア太平洋の防衛予算は2018年までに19パーセント増えて6,120億ドル規模に膨れ上がるという。■

無人飛行船でミサイル防衛まで期待するJLENSは再稼働に向かっているとNORADが発表



After Blimp's Wild Ride, JLENS Program Will Fly Again, NORAD Says

By Jen Judson, Defense News 4:10 p.m. EST February 11, 2016

US Army's Joint Land Attack Cruise Defense Elevated Sensor System (JLENS) launch(Photo: Senior Airman Tiffany DeNault/US Air Force)
WASHINGTON — 共用陸上攻撃・巡航ミサイル防衛用空中ネットセンサーシステムJoint Land Attack Cruise Missile Defense Elevated Netted Sensor System (JLENS)はメリーランドで制御不能となり、係留用ケーブルをひきずったままペンシルバニア方向へ漂流する事件を昨年秋に発生させたが、運用試験は再開に向かうようだ。
  1. 事故調査の報告書がまとまり、関係機関の間でJLENSは再開の調整にはいった。火器管制用飛行船の新造追加、人員訓練、提言内容の実施の他予算の増額が必要と北米防空司令部(NORAD)および米北方軍の報道官べス・スミス少佐がDefense Newsに述べている。
  2. JLENSはメリーランド州アバディーンの実験施設で係留から外れ、ペンシルベニアへ漂流した。途中の送電線を係留ロープが切断し広範囲で停電が発生している。追跡にF-16が2機発進し、ペンシルバニア州内の移動を見守った。途中で内部の気体が漏れはじめ高度を下げ、最終的にゆっくりと着地した。州軍が発砲し、飛行船を完全にしぼませた。
  3. JLENSはレイセオンが製作し、火器管制用と測定用の飛行船二機で構成し、三年間の運用実験に入っていた。
  4. 同システムは多数の小舟艇や移動体を追跡するとともに巡航ミサイル探知も行う構想で、ヴァージニア州ノーフォークからボストンまで一度に「見る」能力がある。米陸軍は現在の二機以上を導入するのか、メリーランドでずっと係留したままにするのかを演習で決めるはずだった。
  5. 陸軍戦闘即応センターと巡航ミサイル防衛システムの共用防衛装備準備室が出した結論はJLENS漂流の原因は設計上の瑕疵ではなく、設計、運用上の人的ミス、手順上の問題が複合したためととスミス少佐は説明。
  6. 尾部フィン内の空気圧が低下し事故が発生したと分かったとスミス少佐は紹介。低下の原因は「パイロットチューブ、つまり気圧感知装置の作動不良」だという。気圧が低下した飛行船は空中で不安定になった。
  7. 「空力効率がなくなった反面抗力がふえたことで係留ケーブルに張力が増し切断に至った」(スミス)
  8. 調査結果は軍内部に伝わり、アシュ・カーター国防長官も説明を受けた。長官もJLENSの運用試験継続を認めている。
  9. NORADおよびNORTHCOM司令官ビル・ゴートニー海軍大将は声明文で「JLENSは他にはない巡航ミサイル防衛機能を我が国の統合防空システムのうち首都地区で実現するもの。同事業を継続することが国益上最善の選択である。事故調査で原因を詳しく調べたため、同飛行船の安全な運航再開にめどがついたと確信している」と発表。
  10. 次は議会がJLENSをどうするか決定する番だ。予算は2016年度に30百万ドル削減されている。その結果、使える資金は10.5百万ドルしかない。削減理由は「テスト日程の遅延」だった。
  11. オバマ大統領の2017年度予算要求ではJLENSに45.5百万ドルを求め実戦演習の実施を想定している。陸軍が2018年度にはわずか6.7百万ドルの予算を計上する予定になっているのが注目される。同年度は実験演習の最終年度だ。
  12. 2017年度予算要求では「新規装備の訓練、JLENS演習の実施によりNORAD/NORTHCOMのノーブルイーグル作戦を支援すること、および政府によるJLENS演習の実施支援」の想定がわかる。
  13. 前回の事故で破損した装備の補修や対策の実施に予算が必要だ。また保管中のJLENSの「再稼働」も予算に含まれると予算要求文書は述べる。■

2016年2月14日日曜日

★米海軍>UCLASS取りやめ、空中給油無人機とF-35C追加調達せざるを得ない苦しい事情


あれだけ騒いだUCLASS仕様を巡る議論が蓋をあければ給油機にするとの決定で落ち着くのかどうか。予算が厳しいことはわかりますが、マケイン議員はじめ議会が黙っていないでしょう。ただし、下の高官(どうもワーク副長官ではないかと思います)の説明は極めてわかりやすいですね。もともとは空母運用機種を大幅に統一してきたのが悪いとは思いますが、スーパーホーネットが給油任務に投入されているのは確かにもったいないことです。


Good-Bye, UCLASS; Hello, Unmanned Tanker, More F-35Cs In 2017 Budget

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on February 01, 2016 at 2:48 PM
PENTAGON: 米海軍のUCLASS無人機を巡る論争は長距離ステルス爆撃機とすべきか軽武装偵察機にすべきかでまとまらなかったが、国防総省がついに決断を下した。そのいずれでもなく、2017年度予算案では無人艦載空中給油機にするとしている。

  1. 「もうUCLASS(無人艦載攻撃偵察機)ではなくなる。空中給油機として空母部隊に編入する」と国防総省高官は語る。「F/A-18のE型F型を追加購入し、現在給油任務についている同型機を解放し、F-35も増やすのが直近の課題解決に一番役立つ」のだという。「給油任務にE型F型を投入するのは、ただでさえ戦闘機が不足する中で問題になっている」
  2. 「『空母に無人爆撃機は要らないのか』と聞いてくる向きもあるだろうが、確かに必要とはいえ、現時点では分析の結果、これが最善の解決策になると答えよう。予算が潤沢に確保できない」
  3. 空中給油機には通信中継能力もあり、偵察任務も実施できるはずだが、武装はない。機体はスーパーホーネットと同等だがステルス性能はなしとする。
  4. UCLASSが想定した敵領空内への侵入はせず、給油機は攻撃戦闘機を本来の任務に戻し、飛行距離を伸ばす効果を実現する。戦闘用無人機に資金を投入するかわりに有人戦闘機を多く購入する(2017年ではなく2018年に)ことで攻撃機材不足を補おうのが予算案の骨子だ。
  5. 「これがステルス機を最速で艦上配備できる案であり、空母の戦闘能力を長距離から実現する道だ」と上記高官は述べる。ロシアや中国の脅威が高まる中で「空母にステルス機を2020年代前半までにもっと配備する必要がある」とするが、完全な新型機を開発するには時間が足りない。
  6. そこで「F-35C調達を急ぐことにした。これについて『UCLASS一本に絞るべきだ』という向きもあろうが、その場合ステルス性能の艦上運用が遅れることになる」
  7. F-35Cは現在低率初期生産段階にあり、初飛行も完了しているが、無人攻撃機はまだ設計中だ。無人機の完成を待つよりも今使えるF-35を投入することが得策だと高官は語る。
  8. 「ステルス性能や攻撃能力がなくても無人機とF-35を空母に投入することが優先順位が高いと判断した。無人攻撃機の開発を続けるかの決定はもうしばらく先だ」
  9. 実際に予算は大変厳しく、F-35の優先順位は高いので、海軍はF/A-18E/Fを今年は購入する余裕がないが、有人攻撃機材の需要は高い。
  10. 「17年度予算では機材調達の余裕がなかった」という。かわりに2016年度予算でスーパーホーネット14機を調達する。このうち12機分は議会が追加したもので、2機は事故喪失の補充用だ。2018年にも14機を導入する。
  11. ではボーイングのセントルイス工場の生産ラインを2017年も維持する発注はあるのか。「クウェイトのF/A-18商談で穴が埋まるとみている」と同上高官は述べた。
  12. 長期的にはF/A-XXまたは次世代航空制圧機の導入を海軍は期待するが、ここでも有人か無人かを巡る仕様上の議論が活発化している。(海軍長官レイ・メイバスはF-35が海軍にとって「最後の有人攻撃戦闘機」となると公言している)なおF/A-XXの代替策分析作業(AOA)は先週正式に始まった。
  13. だがUCLASS構想の放棄は中国やロシアの高性能防空網を長距離ステルス機で突破するペンタゴンが目指す構想に矛盾しないか。また「第三相殺戦略」で自律型無人機や「ヒトマシンのチーム化」を目指す動きにも矛盾しないだろうか。
  14. 空軍が正式契約したステルス長距離打撃爆撃機がA2AD問題への答えだと高官は述べた。無人機分野では「現状の無人機とはまったくちがう各種機材がある。一部は予算で計上するが、ブラックとしてまったく計上されない機種もある」■

2016年2月13日土曜日

★★第三相殺戦略のカギとなるAIをDARPAはどう開発・活用しようとしているのか



ここにきてAI人工知能が良く出現するキーワードになってきました。第三相殺戦略ではマンマシンインターフェースが一つのカギなのでしょうね。それだけ戦闘状況が人智を超えた速さで進展する想定があるということでしょう。ロシアや中国は人体にチップを埋め込む手術を行っているようですが、米国は(今のところは)Aiによる最適選択肢の提示を目指しているようです。最後のオチはDARPAがインターネットの原型の開発元だということの反映ですね。それにしてもDARPAはすごいですね相当先の世界を見越しています。

Faster Than Thought: DARPA, Artificial Intelligence, & The Third Offset Strategy

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on February 11, 2016 at 4:00 AM

computerscreens
ARLINGTON: 国防高等研究プロジェクト庁 (DARPA) が開発中の人工知能はデータの洪水状態からヒトによる判断を助ける。戦闘中でも。このような「ヒト-マシン連携」は非公式にケンタウロスモデル the centaur model と呼ばれ、ハイテク時代の聖杯として国防総省が進めるロシア・中国対抗策としての第三相殺戦略で要となる。
  1. 「副長官と中身の濃い意見交換ができました」とオフセット構想の提唱者ボブ・ワーク国防副長官を言及して語るのはDARPA長官アラティ・プラバカールだ。「当方の進める事業の多くでこの技術の応用が可能です」と同戦略との関連を示唆する。たが個別具体的な技術より技術へどう向き合うかのほうが重要だ。
  2. 「まず第三相殺戦略の背景に国防総省が当庁の高度技術開発能力を再活性化する必要があると認識しています。以前と同様のことを以前と同様のやり方で進めていては目標にいつまでたっても到達できないというとらえかたです」(プラバカール長官)
  3. 「今の組織は一枚岩で各サブシステムがそれぞれ複雑になっており、問題が発生してもどこが原因なのか判明しにくいほどだ」とDARPA長官は言う。一枚岩体質では開発時間が延び、問題解決も遅れ、改修も長時間必要となるので、敵方nの迅速な進歩に対抗できない。そこでDARPAは新構想として「複雑な軍事機構を再考する」根本策を打ち出した。
  4. 兵器開発では戦闘機にせよ艦船にせよ何十年もかけて専用ソフトウェアと専用ハードウェアを一体化してきた。各装備ではソフトウェアのデバッグ作業が悪夢となり、問題の所在をさぐるのは「スパゲッティ」をほぐすのと同じだとプラバカールは表現する。
  5. そこで専用の高度統合システムを多数作るよりモジュールでオープンな構造とし、簡単に必要な要素をソフトウェアでもハードでも交換してもシステム全体をそのまま動くようにしたくなってくる。
  6. 高価な有人装備を少数整備するより「不均一」な有人無人装備を各種とりそろえるほうが良いはずだ。全長130フィートの自律運転ボートから使い捨ての手のひらサイズの無人機までだ。特定の目的や一定の部隊規模専用の構成より拡大縮小が可能なシステム構成にしておけば変化に対応できる。また送信地点、中継地点がわずかで分断されやすいネットワークよりも高度分散ネットワークなら物理的な攻撃や、ジャミング、ハッキングに強靭性を発揮できるはずだ。
  7. ただしジャミングやハッキングへの対抗は難しい。ネットワーク規模が大きくなればサイバー攻撃はそれだけ簡単になる。ネットワークを無線で構築すれば、電子戦で送信元を探られ、システムの作動を止められる可能性が高くなる。DARPAはそこで最新の研究成果を応用しようとする。
  8. そのプロジェクトがHACMS(高信頼度サイバー軍事システムズ)で「形式手法」と呼ばれる数学手法でサイバー上の弱点を見つけ解決をめざす。最近の事例ではHACMSチームが特殊作戦用のAH-6リトルバードのミッションコンピュータのソフトウェアで新しい「カーネル」を上書きしたという。
  9. ハッカー経験者で構成したレッドチームが侵入できなず、HACMSのソースコードを部分公開したが、侵入個所を見つけられなかった。
  10. 「各システムは完全に『ハッキング不可能』ではない」とプラバカールは警告する。「だがあきらかに攻撃する側は数学的に証明可能な方法で封じ込めることができる」
  11. DARPAは電子戦にも新手法を応用する。航空機が未知の信号を傍受すると、例えば敵のレーダー、あるいは未知の無線交信でも、データを記録し、基地まで持って帰るのが通例だ。そこで専門家が数か月あるいは数か年かけて敵システムを理解し、対抗策を考え出す。レーダーが個別に作動し簡単に性能更新ができない時代はこれでよかった。だが今日では送信はデジタル化されており、ソフトウェアで簡単に波形変更が実施できる。信号がどんどん変化していくのに対応するために「認知電子戦」では人工知能がリアルタイムで送信を探知、分類、対抗措置づくりを進める。
  12. 「ヒトの対応よりずっと早くしたいのです」とプラバカールは言う。「このためにまずリアルタイムで全スペクトラムを走査し、つぎに人工知能のもっとも素晴らしい機能であるマシン学習能力も使い、『強化学習』reinforcement learningのような技法で敵が電磁分野で何をしているかを学び、搭載ジャマーに敵より先手を打たせるのです」
  13. 自動制御防衛は防空、ミサイル防衛で実用化ずみで、海軍イージス艦はヒトの頭脳では処理できないほど多数の目標が一度に高速で飛来するとミサイルを自動発射する仕組みになっている。
  14. ではヒトの役目は何になるのか。マシンに強力な兵器の使用を判断させたいと思う者はいない。すくなくとも米国には。だが戦闘があまりにも迅速に展開し、ヒトの頭脳では処理しきれないほど複雑化したら、戦闘の指揮を司令官が実施できるのだろうか。
  15. 「情報すべてを与えてヒトの頭脳に過負荷をかけたくないはずです。決断に必要な情報だけがほしいはずです」というのはDARPAのスティーブン・ウォーカー副局長だ。状況の推移に応じてコンピュータにすべてを追わせ、敵味方とわず、有人無人装備すべての動きを把握させる。解析させ、「とるべきアクションを二案ないし三案」提示させヒトが選ぶ。
  16. そこで記者が手をあげた。ちょっと待って、ワシントンに長くいれば、「意思決定者」とは実は幕僚や補佐官の操り人形にすぎず、彼らが選択すべき案を上司にまず示し、最適案の太鼓判を押しているではないのか。提案されている構想ではコンピュータに幕僚の役を振り、ヒトは不運な主犯となるのではないか。指揮官がコンピュータの言うことをそのまま聞くと限らないのでは。
  17. 「ご質問は問題の核心に触れています」とプラバカールは率直に発言した。「マシンシステムの能力を向上させれば、返ってくる答えに対するヒトの信頼の問題、実際の状況に即して観察しているのか、どんな選択の幅を提示してくるかが大事になります」
  18. 「この新しい波の背後にあるのがAIです」と局長は続け、ペンタゴンによるその活用が求められる。「しかし、深層学習deep learning の大部分で理論的な土台がまだ確立されていない事実もありますが、各種システムが従来の常識で受け入れられない解決策を提示しているのも事実です。なぜならシステムが文脈と無関係に作動しているからです」
  19. その例はアップルのSiri音声作動ソフトウェアだ。「最初はSiriに驚かされるものです」とプラバカールは言う。「でも質問を三つもすれば、つまらなく感じるはずです」(ちなみに記者の子供たちはSiriが返す意味のない答えを楽しんでいる始末だ)
  20. DARPAにはすでにこの問題に対処する案があるとプラバカール長官は述べたが、「AIで新しい基礎の開発が始まればこの分野でもっと問題が見えてくるでしょう」という。
  21. 人工知能の新しい基礎とは何か? スケールが大きい話題に聞こえる。だが、そこはDARPAである。「目標は本当に高いのです」とプラバカールはユーモアたっぷりに述べた。「開発主査のひとりにこう言うのが好きなものがいます。『この職場ではインターネットを開発しなければ優評価は取れないぞ』と■


ロシアがシリアに持ち込んだ最新鋭防空装備に注目



Russian deployment of new Pantsyr to Syria confirmed

Jeremy Binnie, London and Nikolai Novichkov, Russia - IHS Jane's Defence Weekly
08 February 2016
新型レーダーを搭載したパンツィーリがフマイミム空軍基地で初めて確認された。RTが2月3日に放映した画像から。 Source: RT
ロシアが新型パンツィーリ Pantsyr 防空装備をシリアのフマイミム Humaymim 空軍基地に導入していたのがRTニュースチャンネルで2月3日に明らかになった。
  1. 同基地をパンツィーリS1で防御していたのは国防省が同装備の写った写真を昨年10月に昨年10月に公表して判明していた。RTはパンツィーリS2だとし、2015年に実戦化したとのロシア軍の説明を紹介している。
  2. RTの映像では新型双方向レーダー装備が導入されているのがわかる。また新型パンツイーリがロシア軍で供用されているのが写ったのはこれがはじめて。
  3. この形式の双方向性レーダー装備はすでにアルジェリア、イラクで導入しており、型式名称はパンツィーリS1だとロシア国内で2015年5月に開催のMAKS航空ショーで紹介していた。
  4. この装備の売りは各レーダーを正反対の方向に向けることで360度走査が可能になることだ。ただし、映像で見えるレーダーは回転しており、片方のレーダーしか作動させていなかった。
  5. パンツィーリをフマイミム基地に配備するのは長距離防空ミサイルS-400トリウームフ Triumph の運用を助ける近接防空の任に充て、巡航ミサイル他の精密誘導兵器へ対抗するためだ。
  6. ただし今のところS-400に新型40N6長距離ミサイルが搭載されているか確認できていない。■

2016年2月12日金曜日

★B-2の現況と進行中の性能改修策について



記事元サイトは航空宇宙専門ではなくスポーツ好きの男性用に軍事関連記事を掲載しているところのようですね。それでもこれだけの情報量があるのは感服ものでそれだけ米国民の国防関連情報のレベルが高いことを意味するのでしょうか。

 Special: Inside the Stealthy B-2 Bomber

KRIS OSBORN
Yesterday at 7:07 AM
B-2スピリット・ステルス爆撃機は2050年代まで運用すると空軍関係者は述べている。
「この機を操縦するのが夢でした。本当にスムーズです」とケント・ミケルソン少佐(第394戦闘訓練飛行隊、作戦部長)は本誌取材にこう答えている。

  1. B-2内部を取材する貴重な機会でミケルソン少佐は同機が1980年代に製造されたことを考慮しても現在でも高性能機のままだと述べた。ミケルソンはB-2でパイロット経験も豊富で2011年にはリビア空爆に参加している。
  2. 「2016年の現時点でも製造直後と同じ任務を遂行できるのは技術チームが優秀だった証拠です。近代化にも期待していますが、B-2で対応できないミッションはありません。まさに驚異的な技術の産物です」
  3. B-2のエイビオニクス、レーダー、通信装置は敵標的を高高度で遠隔地から識別し破壊する目的で搭載されている。「デジタル航空機といった趣で、一般にはグラスコックピットといわれるものを搭載しています」(ミケルソン)
  4. そのグラスコックピットには各種デジタル表示があり、そのひとつが合成開口レーダー(SAR)の情報で、機体下の地表の様子を示す。「SARで地表の様子が克明に表示され、パイロットは目標捕捉に使います」とミケルソンは説明してくれた。

  1. 「B-2は技術の点でB-52やB-1といった旧型機から大きく進んでいます。最高の技術を乗員に提供してくれます」(ミケルソン)
  2. 空軍は現在20機のB-2を運用中だが機材のほとんどはホワイトマン空軍基地(ミズーリ州)に配備している。高度50,000フィートまで到達し、40千ポンドのペイロードには通常弾頭に加え核兵器も運用可能だ。
  3. 運用開始は1980年代でイラク、リビア、アフガニスタンで実戦投入されている。空中給油なしで6千カイリの飛行が可能で、ミズーリからディエゴ・ガルシア島まで一気に移動し、そこからアフガニスタンに飛んだ。
  4. 「ホワイトマンを離陸しディエゴガルシア着陸はB-2でも最長の戦闘飛行となりました。アフガニスタン、イラク、リビアで効果的な任務を実施しています」
  5. B-2は二名運用の前提で射出座席も二名分しかない。乗員は一回40時間におよぶミッションの過酷さに耐える訓練を受けている。
  6. B-2乗員には「長時間用セット」を使う。折り畳み式寝台ほか長距離飛行の必需品がひとまとめになっているという。

B-2のミッション
  1. 冷戦が頂点時に設計されただけあり、B-2は探知されずにソ連防空網を潜り抜け攻撃する前提だった。このステルス技術は高周波「交戦」レーダーの探知を逃れ、同時に低周波の「監視」レーダーでも発見されないと業界専門家は解説する。
  2. B-2の役目は敵国領空で探知されることなく敵レーダーや防空網を破壊して「門を破り」友軍機にレーダーが無効な「回廊」を作り攻撃させることだ。
  3. ただし敵レーダーも大幅に性能向上しており、新型ではステルス機探知も可能になり、ネットワーク機能で高速コンピュータ処理の恩恵を受け、多数の周波数を駆使して長距離からの探知できるように進歩してきた。
  4. そこで米空軍はB-2を開発中の長距離打撃爆撃機(LRS-B)と一緒に2050年代まで運用するべくB-2の近代化改修を順次近代化改修中で、今後も有効性を維持するとミケルソンは説明してくれた。
  5. 改修の中心は防御管理システムと呼称される技術でB-2乗員に敵防空網の位置を教えるものだ。それによりB-2を探知できる敵防空体制の有効範囲外にとどまることができる。このシステムが利用可能になるのは2020年代中頃とミケルソンは説明。
  6. また通信手段はEHF極高周波衛星に切り替えている。通信能力の向上で乗員は大統領の攻撃命令を本土が核攻撃を受けても確実に受信できるようになる。
  7. 「これで有事の際は核攻撃、通常攻撃いずれでも通信が安全になります。利用可能な帯域が大幅に増えますので、データフロー速度が速くなります。この改良を心待ちにしています」(ミケルソン)
  8. 現在は広く使われているLINK-16とUHF、VHFのデータリンクを利用している。ミケルソンによればB-2は地上指揮命令所と交信可能で、同時にその他有人・無人機からの情報も受信できるという。
  9. ただし無人機の送る情報は今のところ地上指揮命令施設経由で受信する可能性が高い。つまり、付近を飛行する無人機の画像をリアルタイムで見られるようになる。
  10. また飛行制御処理プロセッサーも新型に交換し、機内の各コンピュータの能力をアップし新ソフトウェアを追加できるようにする。
  11. 現在は通常のケーブルだが、光ファイバーに更新する。これで機内の80年代では最新鋭だったコンピュータがデータ処理能力で限界に来ているのを回避できる。
  12. プロセッサー交換でエイビオニクスや機内コンピュータの性能は約1,000倍に引き上げられるという。交換作業は2016年中に完了し、費用は542百万ドルだ。

兵装の能力向上策
  1. また改装では次世代デジタル核兵器としてB-61 Mod12や長距離スタンドオフ兵器(LRSO)の空中発射式誘導核弾頭巡航ミサイルの運用も可能になるという。
  2. このうちB-61 Mod 12はB-61各型をまとめ誘導用の尾翼を追加するものだ。慣性航法システムを内蔵する。
  3. このほかB-61 Mod 11核兵器の搭載も実現するだろう。これは貫通効果を狙ったものだと空軍は説明。LRSOは今はB-52だけに搭載されている現行のALCM(空中発射式巡航ミサイル)に代わるものだ。
  4. 通常兵器の搭載では種類は幅広く、精密誘導式2,000ポンドの共用直接攻撃弾(JDAMs),
  5. 5,000ポンドのJDAMs、共用スタンドオフ兵器、共用空対地スタンドオフミサイルやGBU 28(5,000ポンドのバンカーバスター爆弾)などを選択可能だ。
  6. また長距離通常弾頭空対地スタンドオフ兵器(JASSM-EM 共用空対地スタンドオフミサイル拡大射程版)も運用の検討中だ。
  7. また開発中の30,000ポンドの大型貫通爆弾も一発搭載できる。「これはGBU-28にステロイド駐車したみたいなやつで地下深くの標的を破壊できます」とミケルソンは説明してくれた。■


アジア最大規模のシンガポール航空ショーは2月16日より開催


Asia's Biggest Air Show Set To Open in Singapore

By Wendell Minnick2:57 p.m. EST February 9, 2016
TAIPEI — アジア最大の航空ショーが2月16日からシンガポールのチャンギ展示場で開催される。商用機、軍用機の双方でアジア、北米、ヨーロッパの最新鋭機が展示される。
  1. ロッキード・マーティンはF-35ステルス戦闘機とF-16中途改修機(MLU)を出展する。韓国、台湾、シンガポールがMLUを発注しており、ノースロップ・グラマンのSABR(拡張可能機動ビームレーダー)を搭載する。SABRはアクティブ電子式スキャンアレイレーダーの一種だ。
  2. アグスタウェストランドーフィンメカニカは電動ティルトローター技術の実証機プロジェクトゼロを展示する。最初に2013年パリ航空ショーで公開されている。
  3. Defense Newsはショー事務局に頭角を現してきたソウルADEX、エアショーチャイナ(珠海)との違いを聞いてみた。事務局はシンガポールは依然としてアジア最大規模であり、世界有数の航空宇宙、防衛装備の展示会であると主張。2018年までに防衛予算はアジア太平洋全体で19パーセント伸び、6.120億ドル規模になると関係者は述べた。
  4. 「アジア太平洋諸国では急成長を背景に国家予算を装備調達と研究開発に重点的に配分しており、この地域は防衛装備品の主要市場になっただけでなく国防技術の革新や実用化で中心的な場所になっている」
  5. シンガポールショーの特徴として東西の軍用機が多く出展されることがあり、F-22ラプター、F-16、F-15、V-22、C-17グローブマスターIII、AH-64D攻撃ヘリ、韓国のブラックイーグルス所属のT-50B、ダッソー・ラファール戦闘機、マレーシア所属のSu-30MKMが見られる。
  6. 「当ショーでは各方面と連携し、エアバス、ベルヘリコプター、ボーイング、ボンバルディア、エンブラエルなどと最大限の機種ラインアップを展示します」とショーの広報資料はうたっている。「来訪者はビジネスジェット、商用機、、軍用機、輸送機から軍用ヘリ、民間ヘリ、さらに無人機まで各種機体を直接見ることができます」
  7. UAV分野ではイスラエルのヘルメス450とヘロン1、アエロヴォイロンメントのUAVと支援装備、エイジアンエアロスペースコンゴロメレイト、中航技进出口有限责任公司(CATIC)、ジェネラルアトミックス・エアロノーティカル・システムズ、インシティトゥパシフィック、ノースロップ・グラマン、SCHIEBEL、STエンジニアリング、UAVファクトリーLtd、アンマンドインテグレイテッドシステムズが出展するとみられる。
  8. CATIC含む中国企業が多大な関心を集めるだろう。西側アナリストの観点では中国の進める軍事装備近代化と海洋進出が域内の防衛装備調達とくに新規性能要求を引き上げている原動力だと映る。
  9. CATICは今年もシャーレとブースを設けるが、自社でブースまで構える中国系企業はす少ない。CATICは国営企業で航空防衛関連、民生製品の輸出販売を行っている。中国航空工業集団の傘下企業である。
  10. その他中国関連出展社にはDornier Seawingsがあり、ドイツのドルニエと中国に企業(社名不明、ともに江蘇省無錫市)の合弁企業である。同社は水陸両用機で多用途のシースターを展示する予定で、沿岸監視、巡視、緊急医療搬送、捜索救難、密輸防止、災害救助に活用できるという。中国政府は南シナ海進出に伴い、飛行艇への関心を強めている。
  11. Defense Newsは専門チームを派遣しショーを取材する。
  12. ショーの主催はイクスペリア・イヴェンツ社で、会場は同時に各国の航空業界にとって重要な商談の場になる。ショーの詳細については主催者ウェブサイトを参照されたい。■

2016年2月11日木曜日

中国に台湾進攻の能力なし、今のところは、との専門家見解発表




Atlantic Council Panel: China Likely Doesn’t Have the Ability to Invade Taiwan, Yet

By: John Grady
February 10, 2016 11:44 AM

Chinese amphibious warship Changbaishan deploys what appear to be several ZBD-05 infantry fighting vehicles as part of Joint Sea 2015 on Aug. 25, 2015. Chinese MoD Photo
揚陸艦 長白山 が ZBD-05歩兵戦闘艇多数を展開している。2015年8月25日撮影。Chinese MoD Photo

中国本土から見れば台湾への軍事行動で最大の障害は依然として台湾海峡で、台湾総統選挙で独立支持派が多数となった台湾政局があってもすぐに行動に出ることはないと安全保障の専門家が見ていることが2月9日に明らかになった。

  1. ワシントンDCの大西洋協議会で講演したトーマス・L・マクノーガー(ジョージタウン大教授)は陸軍主体の軍事組織構造を有し上陸作戦の経験がない中国には台湾進攻は「高リスク作戦」だという。

  1. 台湾海峡を横断して「中国が同時に展開できるのは二個師団」と教授は質問に答えた。だがその弱点の「克服に向かっている」とも答えた。

  1. ロジャー・クリフ(大西洋協議会のブレント・スコウクロフト国際安全保障研究センター研究員)からは中国は過去20年で国防支出を600パーセント増額したが、技術、補給、訓練、組織構造で「深刻な弱点」が残ったままだと指摘した。

  1. 例としてクリフは実戦装備の保守管理を紹介した。「整備工場へ送り返し」ているので作戦の継続は困難だ。また洋上補給や空中給油も弱点だという。

  1. 中国は1995年、それまでの「国土戦」方針を転換し、奇襲・謀略・間接侵略を中心に置くようになったが、組織は依然として中央統制型であり、「リスクを避け、創造性は勧奨していない」が「忠誠度と命令服従」は是としているという。有事にはクリフは中国の量的優位性が「組織上の欠陥を補う」可能性を認める。

  1. 20年前も台湾が初の総統選挙を実施した際に露骨な脅かしをかけた中国に対して米国は空母戦闘群二個を台湾海峡へ送ったが、中国はその位置を探知できなかった。台湾は米国と条約による関係はないが、中華人民共和国と国交樹立後、米議会は台湾関係法を成立させ、台湾への武器売却を可能とした。

  1. 北京は台湾併合に踏み来るのか、「問題はそこだ」とティファニー・マ(スコウクロフトセンター政治安全保障研究部長)は指摘する。中国が台湾に向かうとすれば「状況が中国に有利でなくなってきた」と感じるときか、米国に「油断」がある場合と述べた。

  1. 台湾の蔡英文Tsai Ing-wen次期政権は防衛力増備を続けると表明している。マクノーガーも香港が中国施政下に復帰してからの状況を見れば、「台湾が中国に復帰したいとは思わないはず」と述べる。台湾経済は活況を呈している。

  1. 中国が東シナ海、南シナ海で露骨な領土主張をしていることから台湾は域内の支持を一層期待できる状況にあるとマも述べた。

  1. マクノーガーは台湾は自国防衛体制の向上が必要で、米国は太平洋における基地戦略を見直す必要があるという。とくに日本国内の空軍基地の耐じん性向上が必要だという。

  1. クリフは台湾防衛では空からの侵攻と海上封鎖に備えるべきと進言。海防艦、潜水艦、機雷に加えF-16のような新鋭機材や移動式防空装備が必要だという。台湾はGDP3%を防衛に支出すると発表し40億ドルでディーゼル動力潜水艦8隻を建造するとしていたが、契約は未成立だ。

  1. 中国が台湾封鎖に踏み切れば米海軍の強力なプレゼンスを意識せざるを得なくなるだろうとマクノーガーは発言。台湾進攻の場合は「台湾住民の抵抗意識を軽視できなくなる」とマも述べた。■

2016年2月10日水曜日

米情報機関トップの考える脅威対象の序列が興味深いものになっています。


情報機関トップ二人が現在の課題、状況を国民にも伝わる形で述べる、これが民主主義でしょう。また行数の多さ、位置関係からどの問題を深刻に考えているかがよくわかります。北朝鮮についてもミサイル開発そのものよりもWMDの海外販売を米上院議員は憂慮していることがわかりますね。また北朝鮮に比べるとイランのほうが相当たちが悪いことがわかります。



National Intelligence Director Clapper: ISIS ‘Most Significant’ Non-State Threat to U.S., Allies

By: John Grady
February 9, 2016 5:36 PM

DIA Director James Clapper and Lt. Gen. Vincent Stewart on Feb. 9, 2016 before the Senate Armed Services Committee. C-SPAN Image
国家情報局長ジェイムズ・クラッパーと国防情報局局長ヴィンセント・スチュワート海兵隊中将が上院軍事委員会で証言した。2016年2月9日C-SPAN Image


米国や同盟国にとって最大の非国家勢力の脅威は依然イスラム国だと国家情報長官が上院軍事委員会で述べ、イスラム国が引き続き外国人戦闘員の勧誘やリビアはじめとする各地で勢力を拡大していることを理由に挙げた。

イスラム国
  1. イラク・シリアのイスラム国(ISISあるいはISIL)の脅威は「アルカイダを超えている」とジェイムズ・クラッパー長官は冒頭でまずこう述べた。
  2. これは2017年度予算案関連で委員会が初めて開いた公聴会で直面する脅威内容や軍事対応について意見を聞いた。
  3. 国防情報局長官ヴィンセント・スチュワート海兵隊中将はこう発言している。「もしイスラム国に立ち向かっているスンニ派を支援しないと、この人たちは死に絶えてしまう」 中将はシーア派が独占しているバグダッド政権にスンニ派も加えるべきだと主張。さもないと各派は「旗色を伺うか最悪の選択」としてイスラム国との協調に向かうだろうとした。
  4. 中将とクラッパー長官はともにイラクでの進展に楽観的な見方を紹介したが、スチュワートはモスルの今年中の奪回には否定的だ。モスルは人口250万人でイスラム国が占拠している。
  5. アラブ首長国とサウジアラビアから地上軍を派遣しイスラム国と対決すると発表が先週あったことについてクラッパー長官はUAEは「能力が高い軍部隊を保有しているが、規模が小さすぎる」とし、サウジにとっても介入は「課題になる」と紹介した。
  6. UAEとサウジはともにイランが支援するシーア派のフーシ反乱勢力とイエメンで戦っており、クラッパー長官は当面戦闘は続くとの見方を披露した。
  7. スチュワート中将からはロシアがシリアに軍事介入を開始してバシャル・アル・アサド政権の基盤が強化されたとし、「今後一年ほどは」この大勢に変化はないとの見方を紹介した。
  8. クラッパー長官はシリア内戦でこれまで25万人が死亡し、4.4百万人が難民になったと述べ、アサド政権側についたロシア、イランがこれまで以上にヒズボラはじめとする各派に矛先を向けていると発言。
イラン
  1. イランもロシアも現時点ではアサド政権のテコ入れで意見を共にしているが、クラッパー長官はロシアは「アサド以外に誰がいるのか」とアサドの延命を求め、ロシアの同盟国としてとどめおこうとするだろうと発言。
  2. イランが核兵器開発を制限する国際合意を守るだろうかとの問いにクラッパー長官は、肯定したものの「各情報機関」は「信用せず、確証を見守る」姿勢だと述べた。さらにもしイランが合意内容を違反すれば情報機関は探知することは確実とも答えている。さらにイランは遠心分離機などの開発も続けて合意の期限が来ればいつでも利用できるようにするはずとの見方を示した。
  3. イランの弾道ミサイル開発に関し、クラッパー長官は「制裁の実行が極めて重要」だとみており、同国が国連決議を繰り返し違反している事実を重視。国連決議ではミサイル開発のみならずテロリスト集団支援を禁じようとする。イランは2010年以降だけで140回のミサイル発射を行っており、その半分は核開発合意の交渉中だったという。直近の発射は国連決議へ「意図的な挑戦」したものと説明したが、弾道ミサイルは核兵器開発をめぐる交渉では対象になっていない。
  4. スチュワート中将からは制裁措置が解除になったがイランが直ちに新兵器開発に資金を投入するとは見ていないと発言。イラン政府のミサイル開発はすでに「すべての分野をカバーしている」がロシアの技術導入としてシリアで使用中の対空防衛システムの採用がありそうだと述べている。
ロシア
  1. ロシアについてはクラッパー長官は「プーチンはスターリン以降初めてロシア領土を拡大した指導者だ」とクリミア併合とウクライナ東部で分離派を支援していることを言及した。スチュワート中将もロシアの軍事活動は「引き続き歴史的な高水準」をシリア、ウクライナ、北極海で展開中と述べた。
  2. ただし原油価格の低落がロシア国内に少なからぬ影響を与えているとクラッパー長官は指摘し、ルーブル下落、失業の増加、インフレを例示したが、ロシアは依然として領土拡張政策を軍の近代化と併せて希求していると指摘。またロシアの軍装備近代化案では原油価格をバレル50ドルと想定していると紹介した。現在の原油価格はおよそ28ドル近辺だ。
  3. クレムリン指導部への支持は高水準なままだが、ロシア指導部が「大変憂慮している」のは経済動向が世論に影響し、指導層への大衆の態度が変化することだとクラッパー長官は述べた。また昨年のロシア経済は国内総生産で4%縮小していると紹介。
  4. 「ロシアはNATOに被害者妄想をいだき、封じ込められることを大いに憂慮している」とし、大国として米国と対等な地位を維持しておきたいモスクワの動きで「冷戦の悪循環に再度入りそう」と述べた。
北朝鮮
  1. 北朝鮮が衛星打ち上げ並びに核実験を実施したことで委員から北朝鮮が大量破壊兵器の海外販売に動かないか懸念が表明された。これに対しクラッパー長官はその懸念を共有しつつ、北朝鮮が今後数か月以内に原子炉運転を再開し、濃縮ウラニウム生産に入る可能性があると発言した。
  2. 長官は「心配なのはMANPADS(携帯防空システム)が航空部隊に大きな脅威になることだ」とし、サイバー分野ではロシアと中国が米国にとって最大の脅威だとも発言。
中国
  1. スチュワート中将は中国は引き続き南シナ海へ兵力投射をしており、軍装備も空と海を中心に近代化を進めていると指摘した。中将は中国は「世界最大規模かつ総合的なミサイル」開発をしており、対空母兵器や中距離弾道弾でグアムを標的にしようとしていると発言した。■