2017年5月6日土曜日

★★米空母への攻撃手段四点と対抗策:空母撃沈は可能なのか




就航前艦ジェラルド・R・フォードが自力で初の建造所公試で外海に向かう。フォードは米スーパー空母の新型一号艦。Photo credit: United States Department of Defense

かつての戦艦同様に現在の航空母艦はすでに実効力を失っているのではないかと長年批判されていますが、今回の朝鮮危機で示されているように今でもその威容は十分に威嚇力があり、搭載機も北朝鮮程度の一線機材を上回る規模です。では空母は無敵なのかといわれればそうでもなく、それだけにいろいろな対策を加えればさらに巨大艦になっていきます。ロシア、中国、北朝鮮、イランが記事にあるような攻撃手段を研究しているはずなので今後さらに技術が進歩していくでしょう。

What It Would Really Take To Sink A Modern Aircraft Carrier

Robert Farley

  1. 現代の空母は米国による支配、覇権、平和、そして帝国の象徴である。しかし全長1,000フィート排水量10万トンの空母は格好の標的なのだろうか。アメリカの国力の象徴は時代遅れで脆弱な鉄の塊に過ぎないのだろうか。
  2. 米国が超大型空母運用を続けるべきかの議論があるが結論は出ていない。空母を沈めるのは困難でも不可能ではない。カギを握るのは何をどのように投入するかであり、敵が誰なのかという点だ。空母を沈めたいのであれば以下を参照されたい。対抗措置も述べる。

現代の空母の歴史


  1. 米国防部門では1940年代末から空母無用論が戦わされている。第二次大戦で空母は海軍戦で決定的な存在になった。戦後の技術開発で空母の残存性に疑問がついた。精密誘導ミサイルは無人カミカゼ攻撃といってよく潜水艦の性能向上で空母の防御は不可能と言われ始めた。さらに核兵器がここに加わった。
  2. 空母を核攻撃すればゲームオーバーである。核攻撃すればなんでもおしまいだ。
  3. 空母の将来を巡る危機の最初が1949年の「提督たちの反乱」事件で、米空軍が空母は脆弱であり予算支出は不適切と主張したため海軍首脳部が反論した。
  4. 最終的に海軍は「スーパー空母」を中心に冷戦期の戦力を構築した。一号艦がUSSフォレスタル(CV-59)で1955年のことで、最新のUSSジェラルド・R・フォード(CVN-78)まで続いている。
  5. 各艦は非常に高額となり戦力集中は脆弱性となった。冷戦中、冷戦後ともに分析が大量に行われ、海軍が巨大艦にこたわることへ批判が集まった。小型で安価な艦で同じ任務の実施が可能との議論が生まれた。
  6. 同時期にソ連は多大な時間と予算を投入して米空母攻撃手段を求めてきた。現在は中国の接近阻止領域拒否では米空母を中心にとらえている。

航空母艦の重要性


  1. 空母攻撃用に開発された兵器すべての根本的問題は偵察機材との情報リンクであり、空母を発見し攻撃部隊に伝えることだ。潜水艦、航空機、水上艦は遠距離では位置がわからなければ空母を撃破できない。そして陸上基地と違い、空母はたえず移動している。
  2. 超音速巡航ミサイルでも最大射程で発射すれば目標地点到達は20分後になり、その間に空母は最大速度なら10マイル移動する。10万トンの巨大空母は最高30ノット超と意外に高速航行が可能でここに原子力推進の意味がある。
  3. 水上艦や潜水艦の攻撃手段は独自に空母を探知できないことだ。他の手段からのデータに依存する。このため攻撃決定に時間と不確定要素が加わる。米国は三十年かけて偵察攻撃一体化をめざし、偵察通信機能を重複したキルチェーンを実用化しており、リアルタイムで情報を高性能センサー機材(衛星、海中聴音装置、無人機、警備艇等)から通信ノード(衛星、航空機)経由で艦船、航空機、潜水艦に伝えミサイルを発射し目標まで誘導するシステムを構築した。
  4. ここまでの能力を実用化している国は他にない。ただしロシア、中国も実用化を目指している。では敵勢力が空母撃沈を目指しどんな手段を講じてくるのか、その対策は何かを以下見てみよう。

魚雷


  1. 現代の魚雷の直撃を受けた空母は皆無で、9万トン艦が魚雷攻撃を受けてどうなるかを示す材料がない。米海軍は用途廃止したキティーホーク級空母USSアメリカを標的に各種水中兵器の効果を2005年に試したが、テスト結果は非公表扱いだ。
  2. 第二次大戦中に潜水艦により沈んだ空母は計8隻あり、国籍では日本、米国と英国だ。始まりは1939年のHMSカレジアスであった。冷戦時に米海軍はソ連原子力潜水艦を空母戦闘群への主要脅威ととらえていた。空母を仕留めるには潜水艦は護衛艦を回避し哨戒機に捕まらずに静止したままあるいは空母通過を待つ状態で待機する、あるいは空母に気づかれずに近づく必要がある。公海では後者はまず実施できない。空母は現在の潜水艦とほぼ同じ速度で移動するためだ。
  3. 各国海軍は標準的なホーミング魚雷の射程を公表していないが、最大35マイルから40マイルというのが大方の筋の見方だ。現代の魚雷は艦の真下で爆発することで竜骨を折り致命的な浸水を起こす。ロシア海軍は超高速魚雷を開発したが、実用化されているのかまたその効果も疑わしい。

対抗策

  1. 潜水艦対策の中心は潜水艦に攻撃位置を取らせないことだ。これまでは多様な手段で潜水艦を探知撃破する手段があり、艦載対潜哨戒機、護衛艦運用のヘリコプター、陸上発進の航空機や護衛部隊(水上艦、潜水艦)が対応してきた。
  2. 冷戦時の米海軍はソ連潜水艦探知および攻撃に相当の自信を有しており、空母を北極海や太平洋に進出させてソ連国内を攻撃する手段として活用する構想があった。
  3. だが米海軍の対潜戦(ASW)能力は冷戦後に衰退している。S-3ヴァイキング哨戒機、オリバー・ハザード・ペリー級フリゲートの退役がその口火だった。一方でロシアもソ連時代より少ない潜水艦しか運用せず、中国の原子力潜水艦は静粛性に難があり追尾は容易だった。ディーゼル潜水艦は静粛だが航続距離が短く、空母作戦海域で長時間待機できず、空母戦闘群に匹敵する速度もない。
  4. 潜水艦は指揮統制システムとリンクが困難で、航空機や水上艦とは違う。このため情報があっても対応に時間がかかりやすい。とはいえ、一定数の潜水艦を巧妙に配置すれば空母打撃群にも脅威となる。潜水艦、水上艦では最後の手段としてホーミング魚雷を混乱させるべく、ノイズメーカー、デコイで魚雷をかわそうとする。ロシアや中国はこれに対して航跡追尾型の魚雷を配備している。

巡航ミサイル


  1. 海軍向け巡航ミサイルの初の実戦投入は第二次大戦中でドイツ空軍機が精密誘導グライダー爆弾を連合軍、イタリア軍艦船を攻撃している。冷戦時にはソ連は巡航ミサイルで米空母戦闘群の攻撃を狙い、潜水艦、水上艦、航空機各種を開発した。Tu-22「バックファイヤー」爆撃機は米空母攻撃の巡航ミサイル母機として専用開発された。中国も同様に各種巡航ミサイルを各種手段で運用する構想だ。巡航ミサイルは海面すれすれを飛翔して探知を逃れ、最終段階で一気に上昇し最大限の攻撃効果を狙うことが多い。対空ミサイルや防空戦闘機による対応は不可能ではないものの困難になる。巡航ミサイルはプログラミングが発射前に必要で指定地点に向かってから標的を識別選別するのが普通であるが、一部ミサイルでは高度機能がついており長距離でも標的を自ら探知し攻撃が可能だ。

対抗策

  1. 魚雷と同様に巡航ミサイル攻撃の回避策は発射母体を空母そばに近づけないことだ。水上艦なら容易で、中国あるいはロシア水上艦が発射できる地点に近づく前に米航空戦力により撃破されるのは確実だ。潜水艦発射の巡航ミサイルの場合は複雑とはいえ、同じ考え方が適用できる。潜水艦が発射地点に到達する前に撃破する。航空機から発射の巡航ミサイルALCMsはこれと違う問題で、航空機は高度と地球の湾曲のため潜水艦や水上艦より遠隔地から空母打撃群を探知できる。航空機対策として空母打撃群は対空ミサイルや戦闘機による戦闘哨戒飛行に頼らざるを得ない。
  2. 冷戦時には米ソで手の込んだゲームになった。ソ連は爆撃機発進のため良質な情報を必要とし爆撃機多数は損失覚悟だった。米海軍はおとり戦術でソ連に大量発進をさせソ連戦力を無駄にさせる、あるいは離陸をさせまいとした。F-14トムキャットが開発されALCM対策に投入すべく巨大なレーダーと長距離空対空ミサイルを搭載し、空母戦闘群を長距離で防御する体制が生まれた。
  3. だがF-14はもはやなく、空母航空隊は航空哨戒任務を依然つづけているものの敵爆撃機迎撃以外に無人機や哨戒機にも目を光らせる必要があり空母の居場所をリアルタイムで伝わるのを防いでいる。
  4. 巡航ミサイルで空母を攻撃した事例はないが、小型艦艇では巡航ミサイル攻撃で実際の被害が生まれている。イラン-イラク戦争で対艦ミサイルが大々的に使われたが、大型石油タンカー攻撃に失敗することが多かった。だが巡航ミサイル一発で空母の飛行甲板が被害を受ければ沈没は免れても戦力は大幅に低下する。

高速艇


  1. 小型舟艇が大型艦に脅威となるとわかっていたが、ペンタゴンのまとめたミレニアムチャレンジ2002演習でこの問題が大きな関心を集めた。同演習では小舟艇に自殺攻撃をさせて米海軍部隊に大損害が発生する想定だった。「赤」軍の戦略はアルカイダによるUSSコール攻撃事例(2000年)をもとにし、イランの小舟艇活用事例(イラン-イラク戦)も参考にした。
  2. 演習の審判役はついに赤軍戦術を中止させざるを得なくなった。米軍に攻撃のチャンスを与えるためだった。相当の爆薬を搭載する小舟艇ではスーパー空母の撃沈には苦労するだろうが空母は処理に労力をとられ戦力は一定時間低下する。

対抗策

  1. 小舟艇は航続距離が足りず公海上で空母を探知攻撃するのは困難だ。空母打撃群を発見しても重装備のヘリコプターや護衛艦艇の攻撃をかいくぐって接近する必要があり、ファランクス砲が小舟艇を木っ端みじんに粉砕するだろう。そうなると小舟艇の脅威可能性は空母が静止中あるいは狭い海峡を通過中の奇襲攻撃だろう。深刻な内容ではあるが、現実問題として空母の将来そのものを左右する脅威ではない。

弾道ミサイル


  1. 2000年末に中国がDF-21中距離弾道ミサイルで移動目標攻撃技術を開発中との情報が浮上してきた。ミサイルは最終接近段階で制御可能で移動中の空母も高い精度で狙えるという触れ込みだった。米情報分析部門はDF-21D対艦弾道ミサイル(ASBM)は半径900マイルを攻撃可能と評価した。だがもっと大事なのは高速で降下する弾頭の運動エネルギーだけで空母を破壊できることでこれを受ければミッションは放棄せざるをえなくなる。そこまでの注目を集めなかったが、ロシアのイスカンダルM短距離弾道ミサイル(SRBM)も同じ狙いがあるようだ。
  2. テストされていない兵器は存在しないのと同じだ。DF-21Dの場合は発射テストこそ実施されていないものの現実的な運用テストを受けている。テストでは中国軍が空母の居場所を探知しミサイルを命中させる能力があることを示す意味がある。ただし今までのところPLAが運用に必要な訓練を行った兆候はない。中国はDF-21用と思われる偵察衛星複数を打ち上げたが戦時状況では衛星の信頼性は保証がない。中国がさらに長距離型の対艦攻撃弾道ミサイル開発に着手しても、位置捕捉関連の問題が増えるだけだろう。

対抗策
  1. 米海軍はそれでもASBM脅威を深刻にとらえて攻撃・防御手段の組み合わせで対抗する。攻撃面では敵弾道ミサイル発射基地を武力対決の初期段階で攻撃する構想があるが、標的が移動式あるいは硬化施設の場合に攻撃効果は疑問だ。電子攻撃で敵センサーを使用不可能にし目標データを発射基地に転送さえなくする方法も想定されている。
  2. 防御面では運動、電子両面でASBMへ対抗する。運動面では迎撃ミサイル(レイセオンSM-3スタンダードミサイル)をイージス装備護衛艦艇から発射し空母接近前にASBMを撃破する。電子では最終誘導システムを狙い空母接近前に無効にする。
  3. ただし実際の状況を想定したテストが実施されておらず各対抗手段の効果をあらかじめ把握することができない。戦術状況に左右される。早期警戒がどこまで可能か、目標までの距離、飛来するミサイルの数など、その場の状況で毎回条件が変わる。だがDF-21ASBMを多数発射してきた場合は一部は迎撃でき、別に被害を発生させないまま海中落下するものもあるが、一部は米艦船を直撃する可能性があるものと想定すべきだ。空母がその標的になる可能性もある。

まとめ

  1. 開戦となれば中国あるいはロシアは自国に最も有利な条件で米空母を攻撃してくるはずで奇襲攻撃になるかもしれない。米側を混乱させるべく装備多数を投入し防衛体制を圧倒するはずだ。自国への攻撃を避けるため米空母打撃群をできる限り遠隔地に追いやりたいはずだ。そうなると米海軍(さらに米政府、一般国民)は上記対抗措置をすべて真剣に検討すべきだ。
  2. 敵側に空母撃沈可能な魚雷やミサイルがあることから空母の脆弱性議論につながる。空母を狙うのは困難な仕事であり、多額の予算が必要だ。
  3. だが米空母打撃群を自軍の艦艇で攻撃しようとすれば自殺攻撃になるのは必至で、ここから米空母撃破の試行に疑問が二つ生じる。実施可能なのか、可能としても実施する価値が本当にあるのか、である。

Rob Farley teaches national security and defense courses at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. He is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force, and the Battleship Book. Find him on twitter @drfarls.


資料 北朝鮮ミサイル発射回数(1984-)


これはわかりやすいので共有します。金正恩が権力の座についてからの増加が明白ですね。
North Korea missile test chart
Every missile launch conducted by North Korea since 1984. Mike Nudelman/Business Insider

Here are all the missile tests conducted by North Korea since 1984

北朝鮮の1984年以降ミサイル発射テストの全体像
5月1日に米空軍はB-1爆撃機二機を朝鮮半島上空で飛行させた。数日前に北朝鮮は弾道ミサイル発射を実施したばかりだった。
2017年だけで北朝鮮は計8回のミサイル発射をしており、うち3回は失敗だった。これでも直近三年よりはるかに少ない。2016年は24回、2015年が15回、2014年は19回だった。  
1984年以来のミサイル発射回数を集計したのが上のグラフだ。■

2017年5月5日金曜日

★★マレーシアに海自P-3C無償供与、何とか実現してもらいたい



これはいいニュースですね。マレーシアと日本の連携強化になり、機材の有効活用にもなります。機材譲渡にあわせて訓練や保守管理も日本が行えばさらに実効性があがります。同様の動きがフィリピンやヴェトナムでも出ればいいですね。政府間の動きの後は民間企業が積極的に動けばいいのです。
海上自衛隊のP-3C哨戒機

Japan seeks to give patrol planes to Malaysia


Retired Self-Defense Force aircraft would watch over South China Sea
マレーシアに哨戒機を供与する日本の狙いは退役自衛隊機で南シナ海監視の強化だ
Nikkei Asian ReviewMay 5, 2017 2:15 am JST

TOKYO -- 日本政府が退役ずみ哨戒機をマレーシアに寄贈する検討に入っており、同国により南シナ海での中国による海洋進出を警戒させる狙いがある
国会で防衛省基本法の改正が審議中で装備品を無償提供できるようにする。現在は国有財産の譲渡には何らかの代償が法律上で求められている。改正になればマレーシアが初の適用例となり、海上自衛隊が使用してきたP-3C哨戒機が対象となる。
P-3Cにはレーダー他の装備があり不審船や潜水艦を探知監視する能力がある。川崎重工業がロッキードからのライセンスで生産していた。海上自衛隊は同型機を60機ほど運用していたが15千飛行時間に達した機体から順次用途廃止にする方針だ。
防衛装備庁によればマレーシアからP-3Cの希望が伝えられてきたという。日本は退役機材を改修して引き渡す予定で高性能レーダー等の防衛機密装備は取り外す。
政府はマレーシア側と短期間で機材譲渡を合意したい意向だ。譲渡では日本の方針と整合性として透明かつ安全保障に関連し国際法との合致が求められる。
日本は機材、技術が中国の手に入らないよう万全を期す検討を行い、譲渡前に米国から武器取引規制で認可も得る。機材が米国原産のためだ。
日本はASEAN東南アジア諸国連合と国防協力を深めているのは日本同様に中国の南シナ海進出へ懸念しているためだ。すでにフィリピン、インドネシアと同様の取り決めがあり、ミャンマーやカンボジアは国土インフラや緊急援助と並んで防衛力基盤整備でも日本から援助を受けている。■


ロシア機のアラスカ接近で初めて戦闘機エスコートを確認


ロシアの動きが気になるところです。日本にも東京急行のパターンで防空体制を探るような動きをしていますね。ベアがどこまで補修を受けているかわかりませんが、機体寿命が長くないのではと思います。それでも日米の動きを探るけん制の効果があるとクレムリンは判断しているのでしょうか。

ツポレフTu-95MSベア戦略爆撃機、モスクワの戦勝70周年記念での飛行中。Host photo agency / RIA Novosti

U.S. intercepts Russian bombers, fighter jets near Alaska

アラスカ沖で迎撃したロシア爆撃機には戦闘機エスコートが付いていた
By STEFAN BECKET CBS NEWS May 4, 2017, 11:21 AM

WASHINGTON -- 米戦闘機編隊がロシア軍用機複数をアラスカ沖の米領空そばで迎撃した5月3日の事件は米ロ両国の航空機遭遇で最新の出来事になった。
  1. 米政府関係者がCBSニュース安全保障担当記者デイヴィッド・マーティンに事件を確認し、遭遇はあくまでも安全かつ規律の取れた形で発生したと述べた。ロシア機による米領空侵犯はなかったとも述べた。
  2. 該当のロシア機はTu-95ベア爆撃機二機で4月からアラスカ近辺まで飛行を繰り返している機種だ。今回は初めてSu-35戦闘機二機が随行しているとマーティンが伝えている。米関係者は該当機は前日にシベリアの前線基地に居るのが確認されていると語った。
  3. フォックスニュースは迎撃したのは米空軍F-22ステルス戦闘機二基で水曜日午後9時ごろの出来事と伝えている。
  4. 4月には4日にわたりロシア爆撃機、偵察機が米領空付近まで飛行しており、連続したのは2014年以来初めてだ。
  5. ロシアがパトロール飛行を再開した理由を関係者はいろいろな理由があると解説している。ひとつは飛行再開はトランプ政権によるシリア空軍基地攻撃が4月にあったことへの対応という。ロシアはシリアの盟友として攻撃を強く非難していた。
  6. もう一つの説明としてロシア長距離爆撃機部隊はほぼ二年間にわたり飛行を停止し深刻な保守点検問題に取り組んでいたが、今や飛行可能となり訓練をしているとする。
  7. 米政府関係者は両方とも正しいかもしれないとだけ述べている。
  8. トランプ大統領はプーチン大統領に電話会談を火曜日に行っている。また7月初めにはドイツのハンブルグで初の直接会談の予定がある。■

★歴史に残らなかった機体(7)ノースアメリカンXB-70



歴史に残らなかった機体シリーズです。歴史に残った機体よりもどこか魅力を感じしてしまうのは機体の悲しい出自のためでしょうか。戦闘機より早く高く飛べればソ連侵入は簡単だぜ、とパワー全開の思想で始まったのがXB-70ですね。完成したらもう使い道がない機体になったというのは機体の大きさもあり恐竜のような存在でしょうか。

The National Interest

XB-70 Valkyrie: The Largest and Fastest American Mega Bomber Ever Built XB-70ヴァルキリーは米爆撃機史上最大、最高速の機体

May 3, 2017

  1. ノースアメリカンXB-70ヴァルキリーは米国で最大かつ最高速の爆撃機だった。ただ巨大なマッハ3.0飛行可能な六発機は量産されなかった。唯一残る試作機は今日もオハイオ州デイトンの空軍博物館で展示中だが、本来交替する対象のB-52は今も現役だ。
  2. XB-70構想の出発は1950年代でもっと高速で高高度を飛びソ連防空網をかいくぐれる爆撃機で核兵器を投下する機体が求められた。当時の防空手段は戦闘機と対空砲火で防空砲は効果がほぼなく、迎撃機は爆撃機の性能向上に追随するのに苦労していた。
  3. だが地対空ミサイル(SAM)の出現で状況は防衛側に有利に傾く。米空軍もソ連のSAMの進展は認識していたが、フランシス・ゲイ・パウワーズが操縦するU-2スパイ機がソ連上空を飛行中に撃墜された1960年5月1日までペンタゴンは真剣に脅威をとらえていなかった。それでもXB-70開発はそのまま続けられた。
  4. ソ連のSAMの脅威が現実のものなり、ペンタゴンも低高度侵入を模索しはじめた。低空侵入ではレーダー探知の下を飛び、地形を有利に使って防衛側に時間的余裕を減らす。さらに大陸間弾道ミサイルの実用化で有人爆撃機依存が減った。当時の軍事戦略思考家は爆撃機ではソ連侵攻は無理と考えていた。ジョン・F・ケネディ大統領はXB-70開発中止を1961年3月28日に決断した。
  5. 一方でXB-70を使ったテストは継続した。初飛行は1964年9月21日でパームデールからエドワーズ空軍基地まで飛んだ。だが一号機は失望を生んだ。マッハ2.5超で方向安定性が低くなる傾向が見つかり、マッハ3.0超の飛行は一回しかない。二号機は1965年7月17日に初飛行し、超音速飛行の安定度を高めるため主翼に上反角5度がついた。
  6. 悲劇は1966年6月8日に発生した。XB-70試作二号機が空中でF-104Nチェース機と衝突した。二名が死亡し一名が重傷だった。二号機の喪失は一号機より性能が高いため、大きな痛手となった。ただしテストは1969年2月4日まで続き、一号機は83回のフライトで160時間16分を計上し、二号機は46回のフライトで92時間22分を飛行したとNASAが発表している。
  7. XB-70は当時としては驚異の技術の結晶だったが、登場した時期を間違えた機体だった。登場時点で弾道ミサイルが有人爆撃機に交替すると思われるようになり、開発の時期で高速高高度飛行ではソ連の地対空ミサイルや新型戦闘機への有効な防御手段ではなくなった。
  8. とどめを刺したのが同機の途方もない価格とミッション実行の柔軟性の欠如だった。採用されていてもB-70は低空飛行任務に不向きだっただろう。現在開発中の長距離打撃爆撃機B-21がこの点で有効な機体であるよう祈るばかりである。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.


北朝鮮が建設中の人工島はICBM発射施設か



軍事施設なら攻撃されれば簡単に破壊されてしまいます。他の軍事施設が地下に構築されているのと大きく違い、目的が違う気がするのですがどうでしょう。とはいえ、デブの独裁者も今や何も隠せないということですね。

North Korea islands北朝鮮が建設中の人工島の衛星画像。軍事施設を収容する可能性がある。 Google Earth and Strategic Sentinel


North Korea is building artificial islands that could be used for missile launches

  • Daniel Brown
  1. 北朝鮮が黄海で人工島複数を建設中で軍事施設の様相が見えてきたとロサンジェルスタイムズが5月3日報じている。
  2. 衛星画像では建設は五年前から始まっており、場所はピョンヤンから北西70マイルのソハエであり、同地は大陸間弾道ミサイルの研究開発の中心でもある。
  3. およそ五年前に同地点の三つの島はごつごつした岩だらけで植生も見られたが、別の二つの島は砂洲だった。2016年12月には各島で軍事施設と思われるものが見られ、道路が拡張され長方形のコンクリート構造物も確認できた。
  4. ただし島ごとに構造物は大きさも形状も異なり、目的がはっきりしない。ミサイル発射施設になるのか対空砲陣地になるのか対艦ミサイルを装備するのか。あるいは単純に耕作地になるのかもしれない。
  5. 各島の道路が曲がりくねっているのは輸送起立発射台を使うためかもしれない。長方形構造体の一部が明るい色なのは耐熱セメントで打上げ台用かもしれない。
  6. ただし島でTEL輸送起立発射装備を使うのは賢明ではない。対空ミサイル陣地なら理屈があうが衛星画像からは明白に言えない。
  7. だが専門家によれば島に視察用施設があるのは金正恩がミサイル発射を見守るためではないかという。VIP用施設があるということは軍事施設なのだという。金正恩は建設中施設の視察をよく行う。
  8. 専門家は視察を想定していることから軍事目的の施設の可能性があると指摘する。ただし北朝鮮は施設に二重の目的を持たせることが多いと指摘する別の専門家もいる。軍事施設で同時に農業用であることも普通だという。
  9. 一部の島は北朝鮮が進める魚、あひる、牡蠣養殖に適合しているようにも見える。また北朝鮮は民間空港からもミサイルテストを行っている。
  10. 中国も南シナ海の領有を正当化するため人工島多数を建設している。中国政府は各島は純粋に民生目的のみとくりかえし主張するものの、衛星画像で軍事装備があると判明している。■

2017年5月4日木曜日

トランプ-金トップ会談が実現する可能性



硬軟取り混ぜて対応なのか。トランプ大統領の思考が周囲より先行しすぎて大変だという例ですね。取引が好きな大統領なので意外に結果を引き出してしまうかもしれません。軍事対決を期待していた向きには肩透かしになるかもしれません。金正恩がトランプと波長があえば目的を共通理解できるかもしれません。一層事情が複雑になってきました。

Kim Jong-un

North Korean leader Kim Jong Un. Wong Maye-E/AP


Here's what a Trump-Kim Jong Un meeting could actually look like トランプ-金会談が実現すればこうなる

Associated PressTed Anthony, Associated Press
BANGKOK —一方のコーナーは予測不可能な独裁者、常軌を外れ怒りやすく三代続けて一族で70年間にわたる常に世界一の強国だと言い続けてきた国を支配している。もう一方のコーナーには毒舌の米大統領、就任後100日が過ぎたばかりの自由世界の盟主で何でも口にしかねない人物が予想もつかない場面でいきなり和解の言葉を発した。
  1. 5月1日にドナルド・トランプの口から出たのは北朝鮮指導者金正恩に和解を求める言葉であった。金正恩は長らく米国の軽蔑と警戒の対象である。トランプは「明らかに実に頭の切れる奴だ」と述べている。
  2. さらにこんな発言もあった。「本人に会いたい。絶対実現したい。光栄に思うだろう」
  3. 世界がこれに驚いた。どういうことなのか。外交史上でもこのように内緒話が急発展する事例はない。
  4. 実現しなかった例もある。ローズヴェルトは第二次大戦中にヒトラーと会談していない。ジョージ・ブッシュ(父子ともに)がサダム・フセインをホワイトハウスに招いたことはない。一方実現した例もある。ケネディはフルシチョフとウィーンで会った。中の雪解けの象徴としてニクソンは北京を訪ね、米毛沢東にそのまま向かった。
  5. 今となれば過去事例は当たり前に見えるが、当時は現在のようなインターネット社会でなく即座に拡散するソーシャルメディアの効力をトランプは熟知しているからこそ多用しているのだろう。
  6. にらみ合い中の指導者二人が顔を合わせれば大きな可能性が生まれるが、本当に実現すれば裏方には悪夢となる。
  7. 今回の観測気球の意味が正しく受け止められればどのように実現されるだろうか。現時点で考えられる想定は以下の通りだ。
会見場所はどこか
  1. 可能性があるのが軍事境界線地帯でドラマ性が高い場所となる。交渉テーブルをはさみ、片方が北、反対が南だ。
  2. ここで会談する利点は保安体制がすでにあることだ。地球上で一番厳しい保安状況と言ってよい。中国国内の可能性も低いが存在する。
  3. だがそれ以外の可能性はどうだろうか。中立で有名なスイスはどうか。今は国内を出ることのない金正恩だが以前スイスで学んでいる。ホワイトハウスの可能性もある。トランプはエジプト、トルコの大統領をすでに招いており、両名ともアメリカの価値観とかけ離れた人物だ。もちろんこれはまず起こりえないし、実施になれば物議をかもすだろうが、奇妙なことはよく起こる。
  4. あるいは予想外の場所、だれも知らない場所かもしれない。1989年のこと、ジョージ・H・W・ブッシュはソ連指導者ミハイル・ゴルバチェフとマルタ沖合の軍艦で会談している。その結果、ソ連と東ヨーロッパに変化が生まれた。マルタ島は急に関心の的となり、ヤルタと同義語になった。ローズヴェルト、チャーチル、スターリンが1945年に会談したクリミヤ半島の地名でヨーロッパの戦後像が検討された。
  5. 米本国も微妙な会談の場所になっている。キャンプデイヴィッドはカーター政権時代にイスラエルのメナヘム・ベギンとエジプトのアンワール・サダトの首脳会談会場になった。そんな例は枚挙にいとまない。1905年にはセオドア・ロウズヴェルトが日露両国の和平の仲介をしたのはニューイングランドの寒村という考えにくい場所だった。最近でもオハイオ州デイトンというあり得ない場所がボスニア戦争終結の平和条約締結地となっている。ただしいずれの場合も交戦中の他国を招いた米国自体は戦争に加担していない。
  6. 平壌はどうか。前例はある。マデリン・オルブライト国務長官や小泉純一郎首相、さらに有名バスケットボール選手デニス・ロッドマンまでが同地を訪れている。金の家系に海外旅行を嫌う傾向があるのは自分の手で状況を掌握できなくなるのを忌避しているのだろう。
  7. どの場合でもDMZ以外の場所でトランプ-金会談が高度警戒態勢の下で実現すればその開催場所は永遠とはいかないが長くその性質を変えるだろう。
何を話すのか
  1. 普通は北朝鮮の核廃棄が最初の議題と考えるはずだ。だが予測困難な指導者二人なので確実とは言えない。
  2. トランプのこれまでのスタイルを見れば、実際の交渉が始まる前に相互理解に時間が必要だろう。だが主要議題がすぐに中心になる。
  3. その例に北朝鮮援助があり、同国は何度も瀬戸際工作をしてまで窮状を訴え援助への関心を喚起してきた経緯がある。韓国との関係もある。武器テストの問題ではミサイルや核が中心で米国中国も韓国同様に不快感を表明している。

どんな反応が出るか

  1. 不確定要素は韓国、ロシアそしてもちろん中国だ。長年にわたり北の守護者だった中国がここにきて警戒心といら立ちを隠せなくなっている。
  2. 韓国の場合は首脳会談は存続を問われる機会となる。北の軍事能力が精度と火力双方で南を大規模破壊できることで異論は少ないが、韓国を軍事的に保護する米国が北と直接会談すれば中身がない会談であっても韓国にはきびしい安全保障上の意味が出てくる。
  3. 中国は自国影響圏内に米国の介入を嫌い、南シナ海領有権を巡ってはすでに米国と意見が対立しているが、台湾問題が絶えず背景にある。中国はここにきて韓国に甘言を示し、習近平主席が2014年にソウル訪問をしたのは北に対するメッセージであった。だが中国はTHAADが韓国国内に配備されるのを恐れ、現在は再び両国間に緊張が戻っている。
  4. こうした背景の中で開くトランプ-金会談では中国の巻き込みが必須であり、中国の北への圧力へ期待せざるを得ない。トランプ政権がこのことを一貫して主張している。だが通常の思考が必ずしも成立しない。トランプの予測破りの就任式前の台湾総統への電話が一例だ。
  5. そしてロシアの指導者ウラジミール・プーチンが会談の行方を遠巻きながら慎重かつ神経質に見守るはずだ。首脳会談が実現すればロシアの対中国、米国、そして北朝鮮との関係は変わってしまうだろう。
  6. メディアの反応も忘れてならない。明らかに会談は今年一番の目立つ出来事になるだろう。絶好の報道機会となり数百の報道機関が殺到するはずだ。サミットやオリンピックなみのインフラが必要となる。

会談の意義は

  1. 政治面の意義はともかくドナルド・トランプと金正恩の直接会談は21世紀最大のドラマの場面となる。開催場所がどこであろうと。
  2. 三つの意味が同時進行する。ドナルド・トランプが率いる米国と政権の目指す方向。金一族が北朝鮮を支配してきた気まぐれかつ他に例のない統治手法、そして東アジア内の安全保障と防衛体制だ。
  3. 大きな意義があり、騒々しい事態になる。どこか非現実的で予測不可能で重要な機会になる。金正恩とドナルド・トランプという世界を変える力を持つ指導者二名にはすべて全く違和感のないことだが。
  4. そうなると期待したくなくなるかもしれない。火曜日午後に北朝鮮国営通信社が以下を配信してている。なんといっても同国の正式名称は朝鮮民主主義人民共和国なのだ。「トランプ政権は米国で発足したばかりでDPRKを二つの点で挑発しているが競合相手のことは何も知らないのだ」■
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Ted Anthony, director of Asia-Pacific News for The Associated Press, is based in Bangkok, Thailand. He has covered Asia for nearly a decade over his career and traveled to North Korea six times since 2014. Follow him on Twitter at @anthonyted

★長距離識別レーダーは北朝鮮ミサイル迎撃に重要な技術になる



北朝鮮問題は長期化の兆しを見せていますが、忘れてならないのがロシア、中国ももっと大量のミサイルで狙いをつけていることです。ミサイル自体に防御、欺瞞技術が導入されつつあるので迎撃側も対応しなければなりません。迎撃ミサイルも無尽蔵ではないので有効に活用しなければなりません。そのために正確な情報をより早く遠隔地点で入手する必要があります。今回の技術はその意味で有望と思われます。
ロッキードの両面長距離識別レーダーはアラスカに配備され北朝鮮ミサイルの早期探知に投入される。Lockheed Martin
Aerospace Daily & Defense Report

Lockheed Advances North Korea-facing Radar

ロッキード新型レーダーは北朝鮮対応に効果を発揮する
Apr 25, 2017 James Drew | Aerospace Daily & Defense Report



  1. トランプ政権が北朝鮮の核弾道ミサイル開発で米本土を狙うことを警戒する中、ロッキード・マーティン開発の新型レーダーがミサイル攻撃の阻止手段になるはずで、詳細設計段階に入りつつある。
  2. 完全新型のソリッドステート両極型超高周波レーダーはミサイル防衛庁が2015年発注し弾道ミサイル迎撃弾を大気圏上層部で迎撃させる際の誘導が目的で、とくに北朝鮮ミサイルを想定している。
  3. ロッキードは18月のシステム段階設計開発を経て、長距離識別レーダーLong-Range Discrimination Radar (LRDR) の重要部品・製造工程が成熟化し技術即応段階6に入ったと発表。つまり想定される環境下で端末間のモデリング、実証が完了したということだ。
  4. 重要な初期設計段階を終えLRDRの2020年配備にめどがついた。この年になると平壌はICBM能力を整備し核弾頭小型化でミサイル装着が実現していると予想されている。
  5. 巨大な両面レーダー構造体はアラスカのクリア空軍基地から西をにらみ、北朝鮮のみならずロシア、中国も警戒する。米軍にはロシア、中国の大量ミサイル攻撃を食い止める迎撃ミサイルが足りないので、MDAは北朝鮮の脅威に対応する。
  6. LRDRは米グローバル弾道ミサイル防衛ネットワークの一部となり標的データをボーイング製地上配備中間飛翔段階防衛装備に提供する。これはサイロ44個に配備した迎撃ミサイルでアラスカとカリフォーニアに展開している。
  7. ロッキードでLRDRを担当するチャンドラ・マーシャル部長は4月20日の報道向け説明会で設計審査が3月に終わり、MDAおよび国防長官官房が参加したと述べた。次の山場は9月の重要設計審査で、その2ヶ月後に最終設計審査の予定。
  8. 審査ではロッキード製レーダーが本格生産に円滑に移行でき、技術問題なく現地配備できるかを見る。マーシャル部長によれば本格生産は2018年春の予定だ。
  9. 開発テストの支援用にロッキードは縮小型の試作機とソリッドステートレーダーを組み合わせた施設をニュージャージー州ムーアスタウンに建設した。試験項目のほぼ9割がムーアスタウンで完結し、主要部品は2019年にアラスカに移し、実戦配備に入る。
  10. 「このレーダー性能でかぎとなるのが 弾道ミサイルの長距離探知判別能力です。このレーダーは現時点の各種レーダー両極型により従来より判別能力がまして飛翔軌道の情報も細かく正確に出せます」(マーシャル)
  11. この高周波Sバンドアンテナはソリッドステートの窒化ガリウム (GaN) 部品を使い長距離でも高出力のまま標的識別が可能。ミサイル、弾頭以外にチャフやおとり装置を区別できるので迎撃ミサイルは確実に真の目標を狙える。これで迎撃ミサイル発射数を減らし迎撃の可能性は高く維持できる。
  12. ロッキードはLRDR事業を2015年に784百万ドルで受注し、開発、製造、テストの各段階を行う。事業は全て予算内だという。
  13. 同レーダーにはロッキード製の艦船用のイージス戦闘システムの技術が流用されており、イージスアショアや宇宙フェンス技術も使われている。マーシャル部長はLRDRは小型化し陸上、海上への転用も可能だという。
  14. トランプ政権が米ミサイル防衛態勢拡張を決めれば、ロッキードはLRDR施設を必要な分生産できる態勢にあるという。「海上陸上両面で必要なソリューションを提供できます」とマーシャル部長は述べた。■

2017年5月3日水曜日

★★なぜ いずも を護衛任務につけたのか、これからどこへ向かうのか



なるほどいずもを単艦で米補給艦リチャード・E・バード(T-AKE-4)を護衛すると聞いて違和感がありましたが、こういう事情なのですね。報道では四国沖から分かれて南方海域に向かうなんて言っていますが、ここでは逆に日本海に抜かうのではと大胆に予測しています。はたしてどうなるでしょうか。

Japan Koreas TensionREN ONUMA—AP

Japan's Biggest Helicopter Carrier To Provide Escort For US Supply Ship

日本最大のヘリコプター空母が米補給艦を護衛

The Izumo will bring its potent anti-submarine capabilities to protect the US supply vessel.

いずもの対潜能力で米補給艦を守る

BY TYLER ROGOWAYMAY 1, 2017

  1. 日本が最新かつ最大のヘリコプター空母いずもを米補給艦の護衛に派遣した。補給艦は東京から南下し日本海に入りカール・ヴィンソン空母打撃群に合流すると思われる。その時点でいずもは朝鮮半島沖合で展開する各国海軍部隊による演習に参加する可能性が大で北朝鮮へ圧力をかけ金正恩がミサイル発射や核実験に踏み切った際に即応する狙いがある。
  2. このミッションにはどこか妙な感じがある。米補給艦は通常は護衛なしで移動しており、今回は力を示威し各国部隊との共同運用体制の確認が目的のはずだ。また有事の際に同等の能力を有する敵が相手なら脅威が皆無のシーレーンはなく潜水艦の活動がとくに脅威になるものだ。

いずも AP
  1. 補給物資、予備部品、ジェット燃料他の補給が止まれば米スーパー空母や揚陸強襲艦は無用の長物になるし、護衛艦艇も海域にとどまるため大量の燃料補給が必要だ。「兵站で戦勝は決まる」といわれ、米補給艦が自由に必要な地点に向かうことが最重要な要素だが武力衝突が発生すれば大きなこれが課題となる。
  2. そこでいずもの能力が効果を発揮する。同艦は対潜任務に特化し、搭載ヘリコプター部隊で艦の周囲に対潜スクリーンを敷ける。また機雷対策、監視、指揮統制他の能力に加え予備燃料から他の誘導ミサイル駆逐艦に航空燃料を補給できる。
ひゅうがはSH-60Kを運用する USN
  1. いずも級は先行ひゅうが級より艦体が大きくなったが、やはり「ヘリコプター護衛艦」で、補給艦の護衛任務ならひゅうが級が適任のはずである。ひゅうがは満載排水量19千トンでいずも級の27千トンより小さい分だけヘリコプター搭載もいずもの28機より少ない20機だ。だがひゅうがにはマーク41垂直発射管システム(VLS)が二基搭載されており自艦で防空能力があり、随行艦も守れる。16発のVLSにはRIM-162改良型シースパロウミサイル (ESSMs)、RUM-139垂直発射式ASROCロケット推進対潜魚雷も搭載できる。
停泊中のひゅうが、甲板後方にマーク41VLS二基があるのがわかる AP
  1. この二つの装備と対潜ヘリコプター部隊でひゅうが級には自艦ならびに護衛対象の艦艇に対潜、対空能力を提供する。ESSMによりひゅうがはイージス駆逐艦の助けなしに脅威環境に乗り込むことが可能だ。
  2. 護衛任務は相当の労力を消費し、米海軍はこの種のミッションの実施体制ができていない。ひゅうが級が高度の対潜能力とならび広域防空も可能なのが効果を上げる要素だ。また追加護衛艦艇なしで単独行動できる。
  3. だが大型のいずも級にVLSは搭載されておらず、ローリング・エアフレイムミサイルとファランクスCIWSの近接自艦防御装備しかない。ミッション時は護衛艦艇があるのを前提にしたためだろう。ただ同艦の海兵搭載能力は400名で軽車両なら50台を搭載する。日本の海軍作戦用回転翼機はSH-60とMCH-101が主力だが、いずもなら自衛隊のヘリコプターはいずれも運用できる。チヌークやアパッチも発着でき大輸送力に加え必要なら攻撃力も展開可能だ。
着岸操艦中のいずも AP
  1. 北朝鮮には海上作戦中艦艇に現実の脅威となる航空戦力はないが、沿岸防衛体制を強化する兆しがあり、Kh-35対艦ミサイルを国産化している。ミサイル海防艦や少数の大型水上戦闘艦は旧式ソ連製装備を使っており、対艦巡航ミサイルも旧式で敵に接近しないと命中がおぼつかない。ミサイルをあてずっぽうで発射する一か八かの勝負に出ることになり結果は誰にもわからない。
  2. いずもでは強力なレーダー、デコイ、電子戦、早期警戒で近接防御は十分に行えるはずだ。ただし、いずもは北朝鮮沿岸に近づくことなはく、護衛対象とともに北朝鮮水上艦艇の脅威を受けることは僅少だ。
  3. 脅威になるのは北朝鮮の旧式とはいえ大量のディーゼル電気推進式潜水艦部隊だ。北朝鮮戦力で一番過小評価されている部隊だろう。この潜水艦部隊が「高ノイズ」で「錆びている」としても数の威力が質を凌駕する。以前も北朝鮮が潜水艦部隊を突然一斉に展開したことがあり、米韓等との対決が高まれば潜水艦多数を同時運用できる体制ではないか。
  4. 低性能ではあるが潜水艦部隊は空母打撃群には十分危険な存在で、韓国海軍や海上自衛隊の対潜部隊があるとはいえ、無防備で護衛のない補給艦や油槽艦が同じ海域に移動すれば状況は全く変わる。
  5. 北朝鮮が米、韓他の補給艦に魚雷攻撃をしかければ一気にエスカレーションになるが前例がないわけではなく、最悪の事態に備えた訓練を実施するのは悪い案ではない。ここにいずもミッションの意義がある。いずもがカール・ヴィンソン空母打撃群や各国水上艦艇と合流する可能性もある。
海上自衛隊のひゅうが USN
  1. このミッションでいずもの三か月間にわたる南シナ海以遠への展開が開始となるのかは不明だ。発表では5月初旬に開始すると見られていた。
  2. フランスもミストラル級揚陸強襲艦のミストラルを世界を半周させて派遣し、佐世保に寄港している。
フランス海軍のミストラル AP
  1. ミストラルは英海軍ヘリコプターも搭載しており、テニアン島で多国間揚陸演習を数週間後に実施する。その後、南シナ海に向かう予定だが、朝鮮半島情勢次第では変更の可能性が十分ある。■
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