2017年5月10日水曜日

★★中国の将来を完全に変えた炒飯調理とナパーム空爆



今日の中国が一歩間違えば北朝鮮同様になっていた可能性があるということですね。しかし朝鮮民族は悲運に苦しめられており、二国がちがう道筋についたことが歴史の大きなわかれめであったことがわかります。しかし歴史を都合の良い形に平気で塗り替える、信じ込む傾向は両国で似ていますね。
Egg Fried Rice and an Air Strike Altered China’s History

Egg Fried Rice and an Air Strike Altered China’s History玉子炒飯と空爆が中国の歴史を永久に変えた

A U.S. bombing run wiped out Mao Zedong's dynasty when his son was cooking breakfast 米軍爆撃が毛沢東の世襲の夢を奪った。息子は朝食を作っていた


May 7, 2017 Sebastien Roblin


  1. 前途有望な若者が戦争で馬鹿げた形で生命を奪われる例は多い。これは北朝鮮も高く称賛する人物の死で中国の将来が変わってしまったという話だ。
  2. 彭徳懐Peng Dehuai将軍の新任書記に妙な点があると杨迪Yang Di 将軍が気付いた。若い将校はロシア語通訳官のくせに幕僚会議の途中で口をさしはさむだけでなく梁興初Liang Xingchu第38軍団司令官に戦術の指導までしていた。そこまでやっても彭徳懐(人民解放軍朝鮮志願部隊総司令官)は何ら叱責しない。彭徳懐が中国将棋で一度打った手を取り消す悪癖を示すと通訳官がいら立ちを隠さない態度を見せた。
  3. 楊は直属の上司Ding Ganru将軍に若者の行いに不満を伝えたところ、つまらないことは言うなと止められた。後になって、楊も事実を知った。書記官は毛岸英Mao Anying、毛主席の実子で中国のトップを約束された人物だった。

ソ連へ

  1. 毛岸英の出自で母親の楊開慧Yang Kaihuiは避けて通れない。楊開慧の父は毛沢東を同じ湖南出身者として助けた。毛沢東は楊開慧の美貌と政治思想にひかれ、ふたりは1920年に結婚し長沙で所帯を持つ。実は楊は毛沢東の四人の妻のうち二番目で最初の妻は本人の意思とは関係なく結婚させられたがすぐ死んでいる。
  2. 楊は子宝三人に恵まれた。岸英、岸青、岸竜の男の子ばかりだ。毛沢東は遠隔地で楊がいながら遊撃隊の狙撃名手の賀子珍He Zizhenと結婚してしまう。
  3. 1930年、共産勢力が長沙で敗れると国民党の軍閥何鍵 He Jian が楊開慧を逮捕する。毛沢東の情報開示を拒み、楊開慧は息子たちの目前で銃殺された。息子たちは上海で不良となり、岸竜は赤痢で短い生涯を閉じ、岸青は警察に拷問を受け生涯を通じ精神を病んだ。
  4. 共産勢力は残った毛沢東の子息をソ連に1936年に送った。各国共産主義者の子弟と寄宿舎で学んだ岸英はロシア名セルゲイ・ユン・フを名乗り、流ちょうなロシア語を話すようになる。継母の賀子珍もロシアで合流し戦闘の傷手当を受ける間に毛沢東は四番目で最後の妻江青 Qing Jiangと結婚した。
  5. モスクワのフルンゼ軍事大学で学んだ毛岸英はスターリンに第二次大戦中の赤軍で戦いたいと懇請し第一白ロシア戦線で砲兵隊に従軍し、ポーランド、チェコへの進軍に加わった。
  6. 1946年1月に父から延安へ戻るよう命じられたのはこれ以上ロシアに残せば中国人というよりロシア人になると恐れたためだ。毛岸英は聞く耳を持たず父へのカルト的人気さえ批判する人物だった。父により地方の肥料工場へ送られた。比較的単純な作業に従事しながら1949年に劉松林Liu Songlinと結婚する。劉の両親も国民党との内戦で死亡していた。
ソ連軍制服を着た毛岸英
Mao Anying in a Soviet uniform. Photo via Wikimedia

朝食時の戦死

  1. 毛沢東は中国の支配を1949年に掌握し、その関心は分断された南北朝鮮に向けられた。米国は国民党を支援しており、毛沢東は南朝鮮が米軍の反攻の足場となるのを阻止しようとした。
  2. 毛沢東は1950年の北朝鮮による韓国侵攻を手助けしたものの計画はすぐに裏目に出る。国連軍の反抗攻勢で北朝鮮が消滅寸前になり、さらに鴨緑江を超え中国内部にまで侵攻する勢いだった。
  3. 米大統領ハリー・トルーマンにはその意図はなかったが、在韓米軍総司令官ダグラス・マッカーサー元帥は実現を願っていた。
  4. そのため毛沢東は大規模な「志願軍」を彭徳懐将軍の指揮のもと組織し事態改善を図った。中国軍は北朝鮮国境を1950年10月に越えて冬攻勢で国連軍を撃退するつもりだった。戦闘は人海戦術のため多大な人的損害が生まれた。
  5. 岸英は志願軍入りを求め、歩兵隊従軍を願っていた。だが彭徳懐は毛沢東の息子が戦死するのは見たくないとして、岸英をロシア語通訳官として劉書記の仮名で司令部付きにした。司令部は中国北東部をはさんだ東倉郡にあり米軍空襲を避けて金鉱の中にあった。この時点で米航空戦力は戦線のいたるところで活発で共産軍兵士や車両が安全に移動できるのは夜間に限られていた。
  6. ただし双発の RF-61Cレポーター(P-61ブラックウィドー夜間戦闘機の写真偵察型)が11月24日夜に司令部の所在を数時間にわたり探っていた。彭徳懐は所在がばれることを恐れ全幕僚に地下に隠れるよう命じ、調理も夜間限定とし煙の目視を避けた。
  7. 司令部幕僚は午前4時に勤務開始だったが、岸英は眠り込んでいた。午前9時に起床し朝食が欲しくなり幕僚仲間に彭徳懐の居室にあるストーブで卵入り炒飯を作るよう命じた。居室は地上の建物にある。戦場では卵は貴重品で北朝鮮側から彭徳懐への贈答品として届いていた。
  8. 楊将軍の回想録では建物から煙が出ているのに気づき、岸英に敵の注意を引く前に火を消せと注意したとある。岸英の一行は楊に調理が終わればすぐ火を消すから心配するな、あっちへ行けと言ってきた。
  9. 午前10時、米空軍B-26インヴェーダー4機編隊が軍団本部の爆撃を開始した。岸英の友人Cheng Puだけが窓から飛び出たが、岸英は取り巻きとベッドやテーブルの下に隠れた。その建物から煙が出ているので屋内にとどまるのは賢明とはいいかねる行動だった。
  10. ナパーム弾をヴェトナム戦で使われて知ったという人が多いが、実は第二次大戦中から投下されており、朝鮮戦争で多用されていた。
  11. 一発が司令部を直撃し、炎が建物を包んだ。楊は大火を恐れず建物に入り、岸英の焼け焦げた遺体を見つける。識別できたのはソ連製腕時計が溶けて見つかったためだ。遺体は他の犠牲者とともに北朝鮮内の解放軍墓地に埋葬された。
  12. 彭徳懐は毛沢東の息子の死を二か月にわたり報告せず、1951年1月にやっと電報を一通送った。毛沢東は知らせを聞きその日は終日沈みこみ喫煙を続け、家系が「終わった」とため息をついたと述べる筋もある。
  13. 彭徳懐は毛沢東の面前で謝罪したが、毛の返答はかたくなで「正規兵が一名戦死したに過ぎない。息子だからと言って特別扱いはふさわしくない」と述べた。 のちに岸英の死に触れ「犠牲なくして勝利は得られない」と述べている。
B-26Bインヴェーダーがナパーム爆弾を北朝鮮に投下している。 1951年5月。.U.S. Air Force photo

諸説あふれる

  1. 楊将軍の回想録で卵入り炒飯の話があるが、Ding将軍への1985年インタビューやその他中国軍将校の回想では相違点がある。
  2. 南アフリカ空軍第18戦闘爆撃隊のP-51マスタングが岸英を殺したとの説がある。ただし、南アフリカ空軍は確かに朝鮮でナパーム弾を多用していたが、単発のP-51と大型で双発のB-26を見間違うのはあり得ない話だ。
  3. 卵入り炒飯の話は中国国内でよく知られているが、快く思わない向きもある。間一髪で助かったCheng Puは話は虚偽で戦場では卵など手に入らなかったと述べている。もう一人作家のCheng Xiは中国テレビで毛岸英はリンゴの皮を炒めていたと述べる。歴史家Yuan Jiangは揚げパンと粥を温めていたと主張する。
  4. 岸英の戦死はあまりにも尋常でなく、馬鹿げている余り、政府としても英雄的な物語にできなかったのか理由が見えてこないほどだ。岸英の生涯を描いた劇が北京で2013年に上演されたが演出家は自身の調査で岸英は司令部で文書を取りに行く途中で戦死したとした。別の脚色では岸英を毎日夜遅くまで仕事に取り組む人物としており、楊将軍が描いたあまやかされた王子で防衛体制を無視した人物とあまりにもかけ離れている。
  5. さらに噂が流れており、岸英の朝鮮での戦死は中国内部でお膳立てされたもので毛沢東四番目の妻江青が命じたとする説がある。たしかに岸英の未亡人劉松林も岸英の死で江青が「しごく満足した」と述べている。ただし江青は岸英の朝鮮志願軍入りに反対しており、岸英暗殺説の証拠はない。

実現しなかった道

  1. 岸英の死で毛の家系による中国支配の芽は摘まれた。兄弟の岸青は精神病のため対象外だった。岸青は結局結婚し2007年に死亡した。岸青の息子毛新宇Mao Xinyuは人民解放軍少将だが目立つことのない人物だ。
  2. 毛沢東の娘二名の婿も政治面で高位についていない。賀子珍とは娘2名と息子3名が別にいるが戦時中に死亡あるいは不明になっている。
  3. 毛沢東に岸英を後継者にする願望があれば成功していたのではないか。中国共産党は世襲を原則として認めていないが、毛沢東のカルト的人気は絶大であり、本人は1960年代に生まれた党改革を快く思っていなかった。そこで文化大革命を単独で始めたのだ。
  4. 革命指導者であり政治のまとめ役としての成功を背にしながら毛沢東は国の統治では悲惨な成果しかあげていない。五か年計画の旗の下で農業生産は大失敗に終わり、1950年代に数千万人が餓死した。
  5. 1960年代の文化大革命により大学教育は機能しなくなり、10年間ほどこのままで、共産党内の派閥間で血の闘争が生まれた。要職の解任、公の場での罵倒、政治家・専門職数万名の拷問、後者は国の運営方法を知っているだけに大きな損失になった。
  6. 毛沢東最後の妻江青が夫の権力の後押しを四人組とともにすすめ、政治ライバルのみならず個人的に気に入らない人物に暴力をふるった。毛沢東の政策の危険性をあえて口にした政治指導部は権力の座を奪われ、遠隔地の農場に送られたりした。
  7. その被害者のひとりが彭徳懐で長年の責め苦にも耐えられず後年になり名誉回復された。一部には毛沢東は岸英の戦死で高名の将軍を許せなかったのだという声があるが、廬山会議(1959年)で毛沢東を名指しで批判したことが遠因とされている。
紅衛兵に捕まった彭徳懐Peng Dehuai in the hands of Mao’s Red Guards. Photo via Wikimedia

  1. 北朝鮮は隣国の虐殺対象が政治エリート層に及んだことを注視していた。毛沢東支配下の中国は二十年間にわたりカリスマ指導者が独裁権力を行使した場合の専制国家の最悪面を示し、行政を司る官僚や政治エリートはいつも毛沢東の気まぐれや急進的な政策に振り回されていた。
  2. 毛岸英が生存していたらどんな指導者になっていたかは知りようがないし、どんな価値観を示していたかもわかりようがないが、父の政治思想を継承したら、事実上の毛王朝が生まれ中国はどうしようもない状態で血の内部抗争の陰謀がはびこり、ちょうど現在の北朝鮮の金一族支配下の様相を呈していたのではないか。現在の北朝鮮は孤立し圧政に国民が苦しんでいる。
  3. 毛沢東が1976年に死去し一か月がたち、クーデターで江青と四人組が放逐された。江青は服役後の1991年に自殺した。新しく権力の座についた指導層は毛沢東を「7割正しく3割誤っていた」とし、改革開放政策により中国を大国の座に導いた。
  4. 今日の中国も一党支配の専制国家であることに変わりないが共産党は内部で権力を争う集団に分断されている。しかし現在の最高指導者は中国共産党中央委員会総書記の肩書で全国人民代表会議で5年任期で選出される。複雑で不透明な仕組みにより特定の有力人物が主席の座に一生しがみつくのを防いでいる。
  5. 北朝鮮では今日でも毛岸英は英雄扱いだ。戦場で命を犠牲にしたとの賛辞もある一方で、権力承継が実現しなかったことに感謝する中国人もいる。■

2017年5月9日火曜日

★★★トマホーク巡航ミサイルを日本が導入検討へ



なるほどイージスアショア導入はトマホーク導入も視野に入れていたのですね。ここで役所的にイージスアショアをまず導入してから、トマホークをとプログラム的に考えては時間ばかり消費します。かといって専守防衛の域を出る装備だと感情的な反対ばかり出ても困まります。これまで軍事面の情報、思考は無視してきたツケでしょうか。反対党には日本国防のあるべき姿で考えてもらいたいのですが、きっとどこかの誰かが「北朝鮮先制攻撃手段」だとレッテルを貼ってくるのでしょうね。成熟した議論を期待しつつ、早期の導入を願います。

DOD

Japan May Buy Tomahawks For Retaliatory Strikes On North Korean Missile Sites 日本が北朝鮮ミサイル発射施設への報復攻撃用に巡航ミサイルを導入する可能性が浮上

The system could be paired with the Aegis Ashore anti-ballistic missile system that Japan is also interested in acquiring. 日本が導入を検討中のイージスアショア弾道ミサイル迎撃システムと組み合わせが可能

BY TYLER ROGOWAYMAY 8, 2017


  1. 日本がイージスアショア導入を真剣に検討中と先週末に伝えたばかりだが、日本がトマホーク巡航ミサイルの導入も検討していることが明らかになった。スタンドオフ報復攻撃手段として北朝鮮のミサイル発射地点を攻撃する想定だ。日本の戦略状況を見ると完璧な選択の観があるが、「専守防衛」という日本のとってきた姿勢から大きな変化となる。
  2. 日本政府上層部に出回っている緊急提案では弾道ミサイル迎撃だけでは不十分で北朝鮮のミサイル発射能力自体を反撃対象とすべきとの意見だ。ここでスタンドオフ対地攻撃ミサイルの存在が浮上する。いったんミサイルが発射されれば、日本はトマホークの牙でミサイル発射地点、要員や支援施設を攻撃する。北朝鮮軍事指揮命令通信拠点も攻撃対象に加わるだろう。
マーク 41 VLSからのトマホーク発射の瞬間 USN
  1. 日本が攻撃兵器とみなされる装備を堂々と導入すれば、日本の軍事力増強を問題視する勢力の怒りを買うのは必至だ。イージスシステム水上艦のマーク41垂直発射管に装填されれば議論の火に油を注ぐことになりそうだ。導入が想定される艦は世界有数の戦力を有しており、日本から遠く離れた地点にも展開できる。トマホークの射程は1,000マイルあり日本は世界各地の陸上目標の多くも攻撃対象にできることになる。
  2. そこで対応策は日本国内の固定発射装置にミサイルを導入することだ。水上艦に導入すれば兵力投射となるためだ。これでミサイルを報復手段としてのみ投入する既定方針に合う。言い換えれば日本は先制攻撃は決して選択しないということだ。
  3. 日本がイージスアショアを陸上固定ミサイル防衛能力の手段として導入すれば一石二鳥だ。イージスアショアも同じマーク41垂直発射管VLSを流用しており、米海軍水上艦ではこれでBGM-109トマホークを運用している。米海軍の駆逐艦巡洋艦と同様に日本もトマホークをイージスアショア施設で運用すればよい。
  4. 戦術版トマホークの最新型は通称「Tac-Tom]で飛翔中に攻撃目標を再設定可能なうえ、滞空しながら敵目標攻撃命令を待つことができる。移動目標の攻撃も可能だ。弾道ミサイルがTEL輸送起立発射装備で運用された場合に有望な攻撃能力になる。
  5. 日本本土から北朝鮮国境までは一番近くで310マイルなのでTac-TomにはTELが活動している地点やその他発射施設のある地区上空を十分な時間で滞空待機できる。パイロットを危険にさらすことなく、航空自衛隊の新型機、弾薬装備、訓練は不要だ。
  6. イージスアショアがなくても日本には陸上配備トマホークをスタンドアローンのマーク41VLSに指揮統制装備と組み合わせて配備は可能だ。独立運用でトマホークを運用することも四発搭載輸送起立発射装備の導入で可能だ。米陸軍ではトマホーク派生型のBGM-109Gグリフォンで同じ装備を導入していた。(中距離核兵器削減条約で現在は供用されていない) だがトマホークをイージスアショアに統合して運用するのが最大効果を上げながら、政治的に微妙な同装備の導入につながるのだろう。
BGM-109G Gryphon TEL DOD
  1. 抑止力としてトマホークを導入すれば日本は北朝鮮に対して自国防衛力と反撃力を同時に確保することが可能となる。北朝鮮には一層の圧力となり近隣国攻撃に慎重となり、日本海へミサイルを撃ち込むのも控えるようになるだろう。
  2. イージスアショアと組み合わせれば日本には完ぺきな選択となろう。巡航ミサイルがもっと高速かつ迅速に発射できれば北朝鮮のTELに有効に対抗できる。だがこのためには日本はきわめて正確な情報でミサイル発射地点を把握しなければ迅速な攻撃は不可能だ。このため衛星データで発射を探知し飛翔を追跡する能力が必要だが、これを有するのは米国のみだ。日本も独自に朝鮮半島を監視する同様の能力の衛星を打ち上げようとすれば非常に大きな予算措置が必要になる。
  3. マッハ2.5程度の飛翔速度が可能な巡航ミサイルがあれば日本本土から北朝鮮国境地帯には最短10分で到達可能となる。だが発射前にに敵の脅威内容を分類し指揮命令系統の認証を受ける間に北朝鮮のTELは移動しているだろう。またこの速度のミサイルだと距離、ペイロード、さらに滞空待機能力を犠牲にし、目標再設定能力も望めない。
  4. そうなるとトマホークは戦術、戦略両面での複雑な条件を解決する有効な選択肢になる。トマホーク単体では有事の際に北朝鮮によるミサイル攻撃続行能力を除去できないが、イージスアショアと組み合わせて有効な防衛力・抑止力をの同時に実現できる。同じ結論を安倍晋三政権が下すか見守りたい。■

★F-35Aから操縦を開始する新世代パイロット養成を開始した米空軍



F-35でキャリアを始める新世代のパイロット養成を米空軍が開始しました。航空自衛隊ではこうはいかないでしょうね、導入機数が全く違いますからね。米空軍はF-35に相当の賭けをしているようですが、失望することのないよう祈るばかりです。

米空軍初のF-35AライトニングII基礎訓練課程学生パイロットがルーク空軍基地で2017年2月8日に初めて実機で空に飛んだ。B課程学生は経験豊かな第61戦闘飛行隊の教官パイロットが指導中で、課程を修了すれば初のF-35戦闘パイロットになる。 (Courtesy Photo via AF.mil)

What It’s Like Training Brand-New Air Force Pilots on the F-35A 米空軍のF-35Aの新規パイロット養成課程の内容は


DefensetechPOSTED BY: ORIANA PAWLYK MAY 4, 2017

  1. 米空軍は最若年パイロットを最新かつ最高水準の性能を有するF-35A共用打撃戦闘機で訓練している。
  2. 少尉から中尉六名がF-35の「B課程」つまり基礎操縦訓練をルーク空軍基地(アリゾナ州)で受講中だ。このパイロットたちはライトニングII以外の機材は経験がない。
  3. 「新規学生を他機の経験がないまま訓練すると効果が高いです。まっさらな素材でスポンジのように吸収が早いですからね。先を見越した戦術をすべて教えていきます」とイアン・オステリチャー大尉(第61戦闘飛行隊、B課程飛行教官)が言う。
  4. 「目標は生徒を訓練課程八か月に放り込み、戦闘準備をさせて実戦飛行隊を準備することです」とオステリチャー大尉はMilitary.com取材で答えている。
  5. 米空軍唯一のJSF実戦部隊はヒル空軍基地(ユタ州)にあり、同基地から8機がヨーロッパに移動し初の戦闘訓練展開中だ。
  6. 一年間の通常訓練を受けた新規パイロットは昨年12月にユタに移動し、基本システム、シミュレーション、武器取り扱い訓練で同機搭載のエイビオニクスを習熟した。2月に機体をはじめて飛行させた。
  7. 訓練課程の141日でパイロットは学科300時間、シミュレーター訓練(46時間から80時間)を経てF-35の実機操縦を35時間学ぶと大尉は説明。
  8. 教官にはオーストラリアパイロット4名もいる。オーストラリアもF-35を導入中だ
  9. 第62戦闘飛行隊は61隊の姉妹部隊で6名の訓練を今週開始したところだ。61隊は9月に次の組を迎える。
  10. 同飛行隊は年間60名のパイロットを養成すると大尉は説明してくれた。
  11. 訓練課程の最終段階数週間で戦術航空迎撃や戦闘操縦、ドッグファイトを取りあげ、「ミッションシステム各種を使いながら戦術迎撃の課題に挑戦する」のだという。
  12. オステリチャー大尉によればドッグファイトに重点を置いていないが、このシナリオにでは「各パイロット学生に一通りの技能を与えないと生き残れませんから」という。
  13. 課程の最後にはパイロットは「視程外」訓練に入る。接近阻止領域拒否A2ADの環境が今後増える中で避けられない想定だ。
  14. 「空対地支援、航空阻止、敵防空制圧に取り組みますが、最後が課程のハイライトですね」と大尉は言い、空対空戦ではF-16ファイティングファルコンが相手をする。
  15. 課程修了後のパイロットはヒルAFBで新戦闘航空隊編成を待つ。
  16. 学生パイロットに別機種の経験がないことが一つの課題で、パイロットは毎日を一歩ずつ学んでいると大尉は述べる。「F-35をそつなく飛ばせるのですが、必要なミッションの実施が一番の課題です」
  17. 養成課程で不合格になるのは安全面の理由が一番多いという。例として「安全に離着陸できないと困ります。きつい着陸が多いのです」とオステリチャー大尉は述べる。あるいはパイロットが「訓練バブル」と呼ぶ他の機体から1,000フィート内に入ることがあり、「教官に接近しすぎて訓練規則を破ることになります」
  18. 訓練学生は8月の卒業までに真価を発揮する必要に迫られる。
  19. ルーク基地には2022年までにF-35が144機そろう。米空軍は計1,763機を導入する。そこでF-35パイロットを急増することが空軍の最大の課題だ。
  20. オステリチャー大尉自身はA-10サンダーボルトの操縦からはじめた。2010年のことだ。
  21. 「ずっとA-10を操縦して退役まで数千時間を稼ぐつもりでしたが、今や教官パイロットはA-10、F-16、F-15上がりばかりでF-35の専門家となっていますよ」「最重要ミッションは戦闘部隊としての空軍に早く準備させることです」■

2017年5月8日月曜日

北朝鮮によるEMP攻撃は米国では可能性が低いが....



本当にそうでしょうか。20キロ半径の地域が被害を受けるのあれば、東京あるいはソウルの金融経済中心地を狙った攻撃で経済活動はマヒし交通通信機能も大きく傷つきます。自暴自棄になった北朝鮮が虎の子の核弾頭を高高度で爆発させない保証はないのでは。あくまでも米国が(今のところ)安全と言ってるにしか聞こえないのですが。

A North Korean Nuclear EMP Attack? … Unlikely

北朝鮮による核EMP攻撃の可能性は低い
38 North offers informed analysis of events in and around the DPRK.By Jack Liu
05 May 2017

北朝鮮が米国に向け電磁パルス(EMP)攻撃を実行するのではとの報道があり、直近のミサイル発射実験失敗もEMP攻撃の一環を示すと見る向きがある。ただし、北朝鮮によるEMP攻撃の可能性は薄い。もっと大型の核兵器とミサイル能力の向上がないと北米を攻撃できないからだ。
EMPの何を懸念すべきか
米国を狙ったEMP攻撃脅威の評価をまとめた委員会[1]の報告書は以下述べている。
高高度での核爆発からEMP信号が発生し、広範囲な地域へ核爆発と同時に到達する。ブロードバンドで高振幅のEMPが精密電子装置を広範囲かつ長時間にわたり破損させ、米国社会の基盤たるインフラストラクチャーが破壊される。
パルス効果は精密なデバイスに直接入り、または送電系統にサージ電流として入る。

下図はEMPの三段階をE1からE3の形で時間による変化を一般化したものだ。[2] このうちE1段階の破壊効果が一番大きい。残りは最初の段階の100分の一程度の被害を生じさせる。
Figure 1. The three phases of an EMP threat.
EMP Graph 17 0504
E1段階は非常に短いが強力な電磁場を生み、導体に高電圧を与える。装置の電圧限界を超えないど破損は発生しないが、非常に早く発生するため通常の保護装置でコンピューターや通信機器を守れない。ただし、この段階のEMPに対抗できる特殊保護装置の導入が進んでおり、重要装置をEMPから守ることは可能だ。
E1段階でガンマ放射線が核爆発後直後10ナノ秒(1ナノ秒は10億分の一秒)に大気中の原子から電子をはぎ取ることで発生する。電子はほぼ光速で移動し爆発下の場所に届く。地球自体の磁場により電子の移動方向が変わり直角で電磁場に到達するため非常に大規模電磁パルスが短時間で地域に降り注ぐ。
E2段階はガンマ光線と爆発で出る中性子の衝突によるガンマ放出で発生する。発生は電磁パルス発生後の1マイクロ秒から1秒にわたり持続し、落雷時に発生する電磁パルスと似ている。落雷による被害の防止策が広く普及していることからE2段階のパルスは対応が一番楽とみられる。[3]
E3段階のパルスは速度が遅く10秒から数百秒にわたり持続する。核爆発により地球の磁場が乱れることから発生するが、磁場はその後回復する。この段階は大規模な太陽フレアで発生する磁場嵐と極めて似ており長い導体内に電流を発生させ、送電系統で被害を起こす可能性がある。
問題なのは規模だ
核爆発が大きければ、影響を受ける地域も広くなる。核爆発で発生するEMPに関する研究は大部分が非公表扱いだが、カリフォーニア高等技術専門校のD・ハフェマイスターの論文で核爆発の大きさと影響を受ける地域の距離関係がわかる記述がある。同論文では以下のように想定している。
  • 爆発は完全な球状とする(現実には必ずしもこうならない)
  • 地球の磁場は考慮に入れない
  • ガンマ光線は爆発エネルギーの0.3パーセント相当で爆発後10ナノ秒で放出されたとする
  • 直後のガンマ光線からほぼ光速移動する電子が発生し、E1段階のEMP効果が生まれるとする
  • E1段階での電界被害発生の閾値は15千ボルト/メートル以上とする

上記の仮定で数字を入れるのは妥当といえよう。その結果は驚くほど簡単だ。D=Yとなり、Dが被害が及ぶ最大距離(キロメートル)でYは爆発威力(キロトン)だ。20キロトン核爆発を適正高度で実施すれば、EMP被害の最大距離は20キロとなる。1メガトン(1,000キロトン)爆弾なら1,000キロまで被害が及ぶ。北朝鮮が現在までのところ実験した最大の核爆発は20キロトン程度とみられる。
結論
EMPの物理原則と北朝鮮の現状の核開発状況を考慮すれば、報道にあるような北朝鮮のEMP攻撃ですべてお終いというのはおおげさといえる[4]。北朝鮮の核実験ではこれまでのところ大規模なEMP被害を生む核威力は確認されていない。また爆弾の保有数が少ない北朝鮮がEMP兵器開発専用の核実験を行うのは非現実的だ。
————–
[1] John Foster, et al., Report of the Commission to Assess the Threat to the United States from Electromagnetic Pulse (EMP) Attack—Critical National Infrastructures, April 2008.
[2] Edward Savage, James Gilbert, William Radasky. The Early-Time (E1) High-Altitude Electromagnetic Pulse (HEMP) and Its Impact on the U.S. Power Grid, Meta-R-320, Prepared for Oak Ridge National Lab., Jan 2010.
[3] 米EMP検討会は「総じて重要インフラ施設ではすでに落雷による予想被害に対応した保護措置があることから深刻な問題ではないといえよう。最も警戒すべきリスクはシナジー効果であり、E2段階が第一段階のほぼ直後に発生し、保護制御機能が第一段階で破壊されている可能性があるため第二段階で生まれるエネルギーが流れ込み損傷を発生するることにつながる」
[4] 1950年代初頭に地表核爆発実験が米国ではおこなれており、爆発規模は北朝鮮実験の規模とほぼ同等だった。ネヴァダ核実験場はラスヴェガスから65マイルしか離れていないが、停電の報告はない。カジノは通常通り営業を続けている。放射性降下物の方が大きな問題だった」

★★大規模戦に備える米陸軍の切り札は内部シンクタンクだ



DoD photo
リトアニアで演習する米陸軍とハンガリー軍。

16年も対ゲリラ戦に費やしてきてロシア等の脅威から大規模交戦に対応する体制ができていないのに気付き愕然としているのが米陸軍の現状でしょう。予算が厳しい際に節約ののりしろにされてはたまらないというのが陸軍の立場でしょう。国防とはバランスをとった戦力整備が必要なはずで、その意味で米陸軍が自ら「考える」課程を重視し始めたのは心強いことで数年後に大きな成果が出そうです。変化に適応できる組織になれるかが問われています。考えることがなければ行動は変わりません。では陸上自衛隊は?

Army Chief’s Thinktank Studies Major War 陸軍参謀総長のシンクタンクで次の大規模戦闘に備える米陸軍

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on May 01, 2017 at 2:16 PM
ARMY WAR COLLEGE: 米陸軍参謀総長が何を考えているのかを知りたければ、ペンタゴンに尋ねても無駄だ。ワシントンDCから数時間北へ移動し、ペンシルバニア郊外に入りゲティスバーグ古戦場を経由して陸軍大学校へ行くべきだ。静かなカーライルにある。
  1. ここ数年同大学校の影響は衰退していたが、現在はマーク・A・ミリー大将の個人用シンクタンクになり、陸軍の中で異例の予算増をうけ大国間の本格戦争の研究という緊急課題に取り組んでいる。直近の図上演習では国名を伏せた「ほぼ同格の戦力を持つ国」との戦闘を想定し、別の研究では陸軍予備役、州軍も動員した全面戦を想定している。陸軍大学校では6月にも同様の大国想定の図上演習をミリー参謀総長出席の下で行う。
Army photoMaj. Gen. William Rapp

  1. 「参謀総長の要求は厳しいですね。同等戦力を持つ大国との図上演習は能力面でのギャップ解消の必要があるためでギャップを陸軍上層部に認識してもらいます」とイラク、アフガニスタンで戦歴を残し2014年から大学校校長を務めるウィリアム・ラップ少将が述べる。「対ゲリラ戦は学生全員が熟知しているが90年代当時は大国相手の本格戦を想定して部隊を繰り返しNTC(陸軍演習センター)に送っていた」
  2. 「ミリー将軍は陸軍大学校の検討で面倒な問題の解決を期待している」とラップ少将は記者に語った。「現在のところ、陸軍は検討作業の大部はシンクタンクにを外部委託している。当校は陸軍内部に思考力を参謀総長や陸軍全体に提供する」
  3. ミリー参謀総長は陸軍大学校にプロジェクト8つを命じている。①大国同士の戦闘 ②第三相殺戦略によるハイテク戦闘 ③戦略リスク評価 ④国防総省改革 ⑤戦略立案 ⑥グローバルプレゼンスと危機対応 ⑦アジア太平洋再バランス ⑧アフリカにおける協力国づくり である。このうち第三相殺戦略だけで学生14名を投入し、全員が経験豊かな将校で論文執筆、ブリーフィング、著作により2035年から2050年を展望した陸軍の作戦、組織、指揮統制、倫理規範をまとめる。学生、教官ともに陸軍俸給で動くためRAND研究所の陸軍研究センターの十分の一の費用で済むとラップ少将は説明している。
  4. 陸軍の現実課題に取り組むのは陸軍大学校の学生たる大佐級将校には良い教育機会となる。ほぼ全員が戦術面で経験豊かだが戦略立案の経験が限られるとラップ少将が説明してくれた。「参謀総長には重要で深刻な問題に学生が取り組んでいます」
Center for Strategic & Budgetary Assessmentsロシアのミサイル攻撃に対するバルト海地域・ポーランドの防衛構想 (CSBA graphic)
  1. 陸軍大学校はいつもここまで活発ではない。目まぐるしい軍務とは別の眠ったような場所と言われてきた。将官昇進を控えた大佐連にとって時間つぶしで休みをとる場所ともいう。大学校は参謀総長直属だったが、2003年に教導司令部(TRADOC)の指揮下に入り、10年後に再びミリーの前任者により参謀総長の下に戻された。
  2. 現時点の大学校はTADOCとは別だが、共同作業は密接に行っている。ラップ少将はTRADOC隷下の陸軍大学副総長も兼ねる。大学校がTRADOCの「下請け」もたびたび行っている。契約企業が行っていた作業を大学校学生が行い、指揮官、参謀総長他高官の役をシミュレーションで行っている。今年の演習はやはり国名なしだがロシアを思い起こす互角の相手にした大規模戦を想定する。
  3. 陸軍大学校では「動員演習」も始め、陸軍予備役、州軍の隊員を迅速動員して大規模長期戦闘に備える体制を試した。「第二次大戦終結後、完全動員体制は一度もない」とラップ少将は説明。「1942年と同様に奇跡を起こせるだろうか。率直に言って無理です」演習でわかったのは集結地点、動員手順、鉄道輸送能力などいろいろな問題点で、今後の検討と予算手当が必要だ。しかもこれは「完全動員」であって「総動員体制」であれば徴兵となり「一層困難な課題」だという。

Army photo
PACMAN-I 実験(ハワイ)でパニッシャー無人車について歩く兵士。
  1. 陸軍大学校は仮定問題だけ検討しているわけではない。世界各地の実戦部隊の司令部に補佐官を派遣しており、太平洋軍の例では作戦案起草を助け、ナイジェリアでは国軍の幕僚学校立ち上げを支援している。「教官陣には現実の戦闘司令部の感触を維持させ、司令部には代償なしで優秀な思考力を提供している」(ラップ少将)
  2. 生徒となる有望な大佐連に加えて、昨年から大学校は将官向けに継続学習の長期課程を提供している。「とても良い発想で高い価値があるものの時間がかかるのが欠点」とラップ少将は述べ、将官にどうしても不足しがちな部分だと指摘。
  3. 「重複部分をそぎ落としました。将官向けに必要な教育内容を再構成して単なる教養課程ではありません。教室にこもって一日中議論することを一週間続けるわけではありません」とラップ少将は述べ、将官も事例研究に格闘し、論文を書き、記者も招かれたように報道陣の面前で持論を守り通す課程もある。(記者は手ぐすねしなかった)
  4. 「狭い枠組みから抜け出さないといけない」とラップ少将は述べ、15年にもわたり内乱鎮圧作戦に忙殺されてきた米陸軍を言及している。将官、大佐級は「これまでより厳しく創造的に自らの使命を考え直す必要があります」「知的好奇心をなくしたまま自分の考えが絶対と信じれば現実世界に落胆させられるだけです」■

2017年5月7日日曜日

★★トランプ政権になり戦闘機ビジネスで強気になったボーイングディフェンス



オーバーステアな会社ですね。悲観論から楽観論へすぐ変わりました。PCAとも呼ばれる空軍向けかF/A-XX海軍版の次期主力戦闘機のいずれかあるいは双方でボーイングが受注できるかが今後の注目点でしょう。スーパーホーネット、イーグル共にSLEPしながらあるいは追加型を投入して今後も供用が続くのではないでしょうか。

Super Hornet Block III: Boeing
Aerospace Daily & Defense Report

In Trump Era, Boeing Defense CEO Bullish On Fighters

トランプ大統領の登場で戦闘機ビジネスに強気姿勢のボーイングディフェンスCEO
May 2, 2017 Lara Seligman | Aerospace Daily & Defense Report


ARLINGTON, Virginia—ドナルド・トランプ大統領による新しい状況の下でボーイング防衛部門トップが同社戦闘機に明るい将来を期待している。
  1. ボーイング防衛宇宙安全保障(BDS)の社長兼CEOリーアン・キャレットは昨年はAviation Weekに戦闘機は六つある同社主要事業ではないと語っていたが、今は戦闘機事業に大いに期待しているようだ。
  2. 「戦闘機は今後も中核事業です」とキャレットは5月2日にAviation Week編集陣にBDS本社で語った。「業界でトップに立ちたい六大事業が別にありますが、だからと言って戦闘機ビジネス撤退はありえません」
  3. 昨年6月にキャレットはボーイングが戦闘機事業を縮小する含みで発言し、本人のCEO指名は「ボーイング・ディフェンス新出発の証」と言っていた。
  4. 「戦闘機ビジネスで当社がトップを目指すと言ったら頭がおかしいといわれそうですね。現実を見つめましょう。当社はJSFで負けたのです」
  5. ボーイングの戦闘機事業は昨年は今と大違いだった。F-15、F/A-18ともに受注が見えず、セントルイスの戦闘機組立てラインは2020年までに閉鎖の見込みだった。
  6. 今や両機種とも最低でも2020年代末まで生産のめどがつき、性能改修案もあり、国際販売もクウェート、カタールで成約し、米国の新規発注も大いに可能性が見えてきた。
  7. 何が違いを生んだのか。過去11か月で世界の政治環境の変化が大きいとキャレットは説明する。従来と違う脅威の様相があらわれ、過去と違う軍装備が必要になっている。脅威内容は今後も変化していくと新政権主要関係者が認識を共有している。
  8. そこに大統領自身も含まれる。トランプは新型「ブロックIII」仕様スーパーホーネット大量発注を検討中と今年初めに述べた。「軍を大幅再建する。F-18スーパーホーネットを使い続けても問題はない」とトランプはボーイングのサウスカロライナ事業所で演説した。「大量発注を真剣に検討中だ」
  9. 一方で上下両院予算委員会は2017年の国防支出1.2兆ドルにスーパーホーネット12機の追加調達979百万ドルを認めている。
  10. キャレットは「ブロックIII」スーパーホーネット後年度調達で何をトランプ政権との協議で詳細はほとんど明かさなかったが、「適正な性能を持った適正な製品が顧客のニーズに合うのはよいこと」と述べている。「心の底では海軍がF/A-18運用を断念するとは思えません。世界情勢が変化する中で同機が必要な時が必ず来ます」
  11. キャレットはスーパーホーネットとロッキード・マーティンF-35の競合は重要視していない。当選直後のトランプがF-35中止をほのめかし、「同等の性能を有する」F/A-18調達を主張したが、キャレットは「『どちらか』の問題ではなく『ともに』供用すべき問題でしょう」とし、F/A-18とF-15が「補完的効果を」F-35に与えると強調している。
  12. 当面のボーイングは既存機種の保持、近代化に力を入れつつ、新技術に投資し次世代戦闘機開発に取り組むとキャレットは述べた。ただ米空軍が狙う次期主力戦闘機の侵攻制空戦闘機構想で同社が投入を狙う技術の詳細については言及を避けた。■

★★イタリア製F-35B一号機がロールアウト!



なるほどイタリアのFACOは順調に作業を進めている模様です。対する小牧FACOでは一号機を組み立て中で今年中にロールアウト予定と聞いています。イタリアが119機分の作業があるのに対し小牧は38機というのはいかにも少ないですね。

Italy rolls out first F-35B assembled outside US米国外初のイタリアがF-35Bをロールアウト、米国外で初の同型完成機に

By: Tom Kington, May 5, 2017 (Photo Credit: Aeronautica Militare)

米国外で初の組立例となったF-35Bがイタリアで完成し、ロールアウト式典が同国将官を招き開催された。
  1. 同機BL-1は8月に初飛行し、イタリア国防省に11月引き渡すとロッキード・マーティンが発表。2018年にイタリア人パイロットがパタクセントリヴァー(メリーランド州)まで回送し「電磁環境証明」交付を受ける。同時に米国内でパイロット訓練に投入される。イタリア向けF-35B二号機の引き渡しは2018年11月予定。
  2. イタリア北部カメリ基地内に設置されたFACO最終組立て検査施設からF-35Aは7機が引き渡し済み。うち3機がイタリア南部アメンドーラ空軍基地で飛行中で残る4機はルーク空軍基地(アリゾナ)で訓練に投入中で飛行時間は合計100時間を超え、イタリア空軍のB-767給油機による空中給油も実施し、他にユーロファイター、M-346練習機、新導入のガルフストリーム空中早期警戒機とも一緒に飛んでいる。
  3. カメリから今年はアメンドーラに2機納入予定でうち一機が7月、残りは第四四半期引き渡しとなる。カメリ製のF-35Aが昨年2月に大西洋横断飛行をしたのも大きな出来事だった。
  4. カメリは米国外唯一のF-35B組み立てラインとなり30機をイタリア空軍・海軍向けに製造する。あわせてF-35Aはイタリア空軍向けに60機、オランダ空軍向けに29機を組み立てる。
  5. ロッキード・マーティンは同施設に800名を配置中だ。施設はイタリア政府が所有し運営はイタリア国営防衛企業レオナルドがロッキードと提携して行っている。
  6. 2014年にカメリ基地が米国防総省によりヨーロッパ地区向けF-35の重整備・修理・分解点検・改修作業施設に指定された。
  7. ここまでの成果が生まれている反面、イタリア航空宇宙産業団体会長ジュイド・クロセットは米国が「約束を破り」当初のイタリアで行うはずだった整備作業の多くを英国に移管したと非難している。
  8. F-35向け予算の支出がイタリア国内で微妙な政治問題になっている。2008年の世界的金融危機の影響をまだ抜けきらないイタリアで、与党民主党は同機事業で批判を浴び、来年上半期に総選挙が予定される中で同機の問題を取り上げたくない姿勢だ。■

★★★イージスアショア導入でミサイル防衛体制強化を目指す日本




LEAH GARTON—MISSILE DEFENSE AGENCY

防衛大綱にまで記述している以上イージスアショアの導入は固いところです。が、文中に指摘あるように対外有償軍事援助=販売として許認可を持つのは米政府ですので、今後の米中関係など他の影響も考慮すべきでしょう。ただし、中国の反対意見は無視するとしても、中国が沖縄と同様に国内反対派に火をつけることのほうが怖い気がしますが。

Japan May Acquire Aegis Ashore To Defend Itself From North Korean Missiles日本がイージスアショア導入を検討中。北朝鮮ミサイル防衛を目指す。

The system is especially well suited for Japan's strategic needs, but China would not be pleased with seeing it setup on Japanese shores.日本の戦略的ニーズにぴったりだが、導入されれば中国がたまっていないだろう。

BY TYLER ROGOWAYMAY 5, 2017

  1. 日本がイージスアショアミサイル防衛装備の導入で北朝鮮弾道ミサイル脅威に効果的対応が可能になるか検討を急いでいる。
  2. THAAD導入も検討したがイージスアショアの有効距離が大きいことで日本の地理条件に合い戦略上の狙いにも合致すると判断した。またイージスアショアが日本のミサイル防衛能力装備の水上艦と相互運用性がありセンサー、発射装置、迎撃体、運用方法を共通化できることも好条件だ。
  3. 価格も問題だ。ジャパンタイムズは「THAAD一個部隊は1,250億円で全土防衛に6隊が必要だ。イージスアショアは800億円程度で二個編成で同じ面積をカバーできる」と伝えている。イージスアショアはPAC-3ペイトリオット部隊と陸上配備ミサイル防衛の二重構成とし、短距離、中距離弾道ミサイルが大気圏再突入後に迎撃する。
イージスアショアはルーマニアのデヴェセルに導入済みだ。AP
  1. 日本の地理条件を考えればイージスアショア導入が極めて妥当だ。日本はイージス駆逐艦6隻を保有し内四隻が弾道ミサイル防衛対応である。残る二隻も2018年までに同様の能力を獲得する。各艦の任務はイージスアショアと極めて似ているが日本海にたえず展開するためには隻数がもっと必要だ。
  2. 高価な多用途装備なだけに、各艦を警戒任務のみで展開するのでは高性能のもちぐされとなる。そこに日本西方にイージスアショア二個部隊を配備する意味があり、高性能駆逐艦の展開圧力を緩和しもっと柔軟な防衛体制がとれるようになる。
あたご級イージス駆逐艦あしがら USN
  1. 例を挙げれば緊張が高まった場合に、イージス駆逐艦一隻ないし二隻をイージスアショアに加えて配備すればよい。データリンクを介して相互運用が可能でネットワーク化したチームとして運用できる。情報共有で脅威の優先順位を決め、標的ごとにミサイルを割り振る。イージスアショアが何らかの理由で稼働できないときは海上自衛隊からもう一隻を急派し臨時補強策とできる。
  2. あたご級駆逐艦一隻の値段でイージスアショアが二隊手に入り、北朝鮮弾道ミサイルの脅威に常時警戒できるわけだ。
  3. 米軍が展開中のポーランド、ルーマニアのイージスアショアでは二次的に防空能力も実現している。改修により各ミサイル施設は巡航ミサイルや航空機も標的にできる。
  4. ゆくゆくイージスアショアは現行のSM-3迎撃ミサイルに加えSM-6も運用するだろう。SM-6は弾道ミサイル、通常型航空機両用で日本のイージスアショア基地は沿岸防空施設ともなり哨戒機や艦船等のデータを活用し威力を上げるだろう。
DOD
  1. イージスアショアは海上用のイージスBMD対応戦闘システムと互換性がり、SM-6を大気圏外でも標的に迎撃させられる。
  2. 日本が検討の結果、イージスアショア導入を最終決定するまで時間がかかりそうだが、導入となれば中国が不快に感じるのは当然だろう。THAAD配備は恒久施設でなく、交戦範囲も狭く特化した性能といえるが韓国に配備しただけで中国は大問題と騒いでいる。日本西方にイージスアショア施設が二か所生まれればTHAAD以上の反応は必至だ。中国は自国の核抑止力の実効性が薄れると主張するだろう。
  3. トランプ政権が中国と良好な関係の維持を目指していることから政治的に微妙な問題を生みかねないイージスアショアの日本売却を米政府がどうとらえるかは興味深い点だ。とくに現在は北朝鮮抑え込みで米国が中国に前例のない動きを強く迫っている段階だ。その意味で日本がイージスアショア導入を検討するだけでも中国は北朝鮮に緊張緩和を強く求める動きに出ざるを得なくなる。そうなれば悪い話ではないではないか。■