2018年8月20日月曜日

☆三菱重工提唱の航空工業再編構想で日本の防衛関連事業はどうなるか



日本では表面に出ていない内容なので興味深いです。実現すれば民生部門のみならず防衛部門にも大きな影響がでそうです。防衛産業は今後大きな利益が見込めないとすればこうした再編は今後話題に上らざるを得ないでしょう。本記事はターミナル1が初出です。


Aviation Week & Space Technology

MHI Keeps Pushing Consolidation 航空工業再編成を狙う三菱重工

Aug 15, 2018
Bradley Perrett | Aviation Week & Space Technology


菱重工業 (MHI) は日本の航空工業統合構想を捨てていない。政府も構想を支持しており、航空機開発で競争力が将来強まる可能性が出てきた。
他方でMHIは航空機ビジネスで他社より一歩先を目指す動きも続けている。金属素材加工で同社は積極的に自動化を導入していると大宮英明会長は述べ、複合材分野でもこれまで以上に複雑な部品の製造をめざす。
ただし構想の具体的実現策はまだないと大宮会長はAviation Weekに述べた。だが大宮は構想を進めようとしている。航空機製造業の統合でコストが下がり、技術関連業務を統合すれば装置施設の重複を回避し技術や営業活動も共有できるという。管理費用も下がり、とくに共同事業体制より新規統合企業にした場合のほうが効果が大きくなる。
大宮は発電分野で日立製作所と三菱日立パワーシステムズを設立し事業統合した成功例をあげる。
MHIは川崎重工業 (KHI) 、スバルと並ぶ日本の航空機製造企業の雄だ。各社は航空機関連で海外民生需要や防衛省向け装備を製造している。MHIではMRJリージョナルジェットも開発中でYS-11につぐ国産旅客機の実現をめざしている。YS-11は1960年代70年代の事業だが大成功とはいえなかった。
スバルはMHI構想へのコメントを避け、KHIはAviation Weekの問い合わせに回答していない。
MHI構想は日本の航空システム製造業を統合企業体にする内容で経済産業省も同じ考えだ。「日本の航空産業は国際的に存在感を強めるべきだ」と同省は4月のAviation Week問い合わせに答えている。「次世代機事業に参画するためにも日本の航空産業は各社の強みを一つにまとめるべきで、機体サプライヤーの現状に甘んじるべきではない」
他方でMHIには独自の競争力強化構想がある。大宮会長はロボットに強いファナックと協力して進めている江波工場での自動化に言及した。同工場はボーイング777の機体パネルを製造する。ロボットが表皮を治具に載せるとパネルが完成する。(写真参照)これまでは手作業だった。
自動化の効果はコスト、品質(精度)、リードタイム(マシンには習熟化工程は不要なため)に現れると大宮会長は説明。また自動化で航空分野の投入人数が減り、2017-18年度末の比較すると2017年2月の6,600名が3割削減できたという
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ロボットがボーイング777の表皮を治具に乗せる。MHI広島工場 Credit: MHI


AIやIoTを品質保証工程に導入すると同社関係者は述べたが詳細は語らなかった。
MHIが苦労して体得した航空宇宙用途での複合材製造技術は低賃金各国では追随が困難な分野だ。そこで同社はライバル各社の先を進めるよう同技術をさらに伸展させる、と大宮会長は語る。そのひとつに現在はファスナーで組み合わせているような複雑形状の部品を一体成型にすることがあるという。これが実現すればファスナー分の重量の軽減にとどまらない。ボルトやリベットを使わなければ穴あけ加工分の厚み補正も不要となる。また素材変更で複合材の強化も狙うと大宮会長は述べた。
MHIの航空宇宙事業の大きな柱にボーイング787の外側ウィングボックス製造がある。ボーイングは同社の仕事に品質価格両面で大いに満足していると大宮会長が説明。
ただし同社も子会社の三菱航空機の実績には満足できない。MRJ開発がほぼ7年分遅れている。「MRJは大型投資案件となったが販売が芳しくない」と大宮は見る。同機の開発は2008年に始まったが一号機納入は2020年代なかごろになりそうだ。

.会長からは航空宇宙事業の課題として投資効果が相当期間にわたり結果を産まないことを指摘。MHIの原子力関連事業も同様の傾向がある。安全関連の基準が厳しいことが共通する。MHIの航空機、防衛、宇宙関連事業は年間売上60億ドルから70億ドルで電力関連事業に次ぐ規模になっている。■

★F-22対F-35「ドッグファイト」の実態とは



なるほどという感じですね。米-ノルウェー間の空戦演習と言っても映画の世界をそのまま想像してはいけないということですね。実に冷静な話です。


Top Gun Denied: Why the F-22 vs. F-35 'Dogfight' in Norway Is Not What You Think トップガンの世界と違う。F-22対F-35のノルウェー「ドッグファイト」は読者の考える内容ではない

August 17, 2018  


テルス第5世代戦闘機の米空軍ロッキード・マーティンF-22Aラプター二機が王立ノルウェー空軍のロッキード・マーティンF-35A共用打撃戦闘機二機とノルウェー上空で空戦演習を8月15日に行った。
演習の詳細情報は皆無と言っていいが今回の演習内容の推測は可能だ。
ノルウェーはラプターの恐るべき空対空戦闘能力に強く印象付けられている。「F-22は手強い相手だ」とノルウェー空軍でF-35に乗るモルテン・ハンシェ少佐がロイターに語っている。
ロイターはノルウェー側から米F-22との訓練で普段はありえないステルス新型機を相手に腕試しができたと聞き出している。つまりF-35は非ステルス機を相手に奇襲し「圧倒する」事が多いということだ。
プロの空軍部隊としてノルウェーはどちらが勝ったか明らかにしていないが驚くに値しない。通常は実施後に参加者に結果の説明がある。
米及びNATO同盟国の空軍部隊の作戦行動からわかることはごく限られるのが一般的だ。プロの空軍部隊というのはトップガンの映画から一般大衆が想像する直接対決はしないものであり、むしろプロの能力涵養に務めることが通常だ。そのため乗員のスキル、戦術向上、手順の習熟などを心がけるものだ。
他国の空軍部隊が参加すれば両国間のプロとしての関係を築くのが先だ。お互いの戦術や手順に親しめれば有事の際に役立つ。NATO加盟国の飛行要員としてノルウェーと米国が共に飛んだのは2011年のオデッセードーン作戦と同様だ。同盟国間の操縦士にとって国際演習で得られるものはとても大きい。
各国はそれぞれを交戦相手として訓練するのではなく、機体を味方の青軍と敵の赤軍に分けて飛行する。青軍は有事に使う戦術・手順を使い、空域や飛行距離で一定の制約を課せられる。一方で赤軍は敵戦術を再現する。このため今回のノルウェー演習はF-22がロシアのSu-35の役で、F-35が青軍だったのか、あるいはその逆だったはずだ。お互いの戦術・手順に習熟し学ぶことが目的だったはずだ。ただし保安上の制約が当然あっただろう。
保安上の制約がF-22部隊で厄介な問題になっている。ラプターパイロットは性能をフルに使うことが許されない事が多い。「F-22は各国部隊との関係構築のため空軍が派遣することが多い」と米会計検査院が指摘している。「ただし、保安手続きのためF-22固有の性能を明らかにすることへの配慮からパイロットは戦闘時と同じ操縦は許されておらず」、訓練効果が制約されてしまい、訓練でF-22パイロットに悪い癖がついてしまい、その後の訓練で矯正が必要となることがあると空軍関係者も認める。
真剣勝負の果たし合いの様相を示す唯一の機会が基本戦闘行動(BFM)訓練で通常は視界内交戦でこれが映画他で取り上げられる事が多い。機体や兵装の性能が重要だが、BFM交戦での勝利は個々のパイロットの技量と運に左右される。操縦性が高く、推力も豊富で兵装も多く搭載した機体が勝つことが多いが、最高の性能の機体が高度技量を持つパイロットの手にかかっても負けることがある。大事なのは結果から学び次回はへまをしないことだ。
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.

2018年8月19日日曜日

レーガン空母打撃群にきりしまが加わり日米訓練へ

こうした日米の訓練が着実に行われていることに心強いものを感じます。なお、日本には駆逐艦はないとのご指摘も頂戴していますが、本ブログでは一貫してDDGやDestroyerを駆逐艦とさせていただいています。国内向けに独特の言い回しをしつつ対外的には国際基準に合わせる二枚舌は受け入れがたいためです。ご容赦ください。


Ronald Reagan Carrier Strike Group Out on Patrol ロナルド・レーガン空母打撃群が哨戒行動に出港

August 17, 2018 1:47 PM

こんごう級誘導ミサイル駆逐艦JSきりしま(右)が空母USSロナルド・レーガン(CVN-76)と並んで航行している。 US Navy Photo


USSロナルド・レーガン(CVN-76)が横須賀を8月14日出港し、日米海軍演習水域のフィリピン海に向かった。レーガンは米空母唯一の前方配備艦。
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同艦はロナルド・レーガン空母打撃群(CSG)旗艦として前回のパトロールが終了した7月24日から母港の横須賀にあったが、洋上でタイコンデロガ級誘導ミサイル巡洋艦USSアンティータム(CG-54)、海上自衛隊艦艇と合流すると米太平洋艦隊は発表。アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦USSミリウス (DDG-69)も出港したとStars and Stripsが伝えている。
ミリウスは艦艇入れ替えとして5月に日本に到着し横須賀を母港にしている。ミリウスはイージスベイスライン9戦闘システムを搭載し防空、弾道ミサイル防衛、対水上戦、対潜戦でいずれも能力向上している。

日米両国間の人員能力向上策の一環として第六護衛隊司令がレーガンに同乗している。一方で両国海軍がアンティータム艦上で共同消防訓練を実施したことが米海軍ウェブサイトの広報写真でわかる。こんごう級駆逐艦JSきりしま(DDG-174)がレーガン空母打撃群に加わっている。

きりしまは弾道ミサイル防衛能力を備え、米海軍のイージスBMDミッションに初めて参加した艦であることが米ミサイル防衛庁でわかる。2006年にきりしまは弾道ミサイル標的の追尾に成功し、その後もテストでミサイル追尾迎撃に続けて成功している。■

ご参考
海上自衛隊 日米共同巡航訓練の実施に関するプレスリリース

HMSクイーンエリザベスが米東海岸でのF-35試験に向け出港



HMS Queen Elizabeth to sail to the United States for F-35 trials HMSクイーンエリザベスが米国に向け出港準備中でF-35試験に向かう

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August 13, 2018
母HMSクイーンエリザベスが米国に向け出港準備中でF-35の運用試験を行う
4ヶ月に及ぶWESTLANT 18配備で超大型空母の同艦は米国東海岸へ向かい英軍での新鋭機運用に道を開く試験を実施する。
長年に渡る訓練、試験、公試の努力が今回実を結ぶ。昨年は英側要員がUSSアメリカに乗艦し一週間にわたる海上開発試験第三段階(DT3)を行い、米海兵隊が同機を揚陸強襲艦から運用する最終試験となった。
BAEシステムズのテストパイロット、ピート・ウィルソンは次のように述べる。 「クイーンエリザベス艦上試験はDTを1から3まで一緒に実施するくらいの意味がある。同機の仕組みについては熟知しており、以前のテストで知り尽くしている」
同艦に着艦する機体は合同運用テストチームJOTT所属でF-35を低率初期生産から本格生産に移行することを目指すチームの機体だ。英空軍の第17試験評価飛行隊が合同運用テストチームのテストのうち10%を実施するはずだ。
着艦する機材のパイロットの大部分アメリカ人になるのは合同運用テストチームがアメリカ主体になっているためだ。
テストパイロットの一人と話したが、英国のテスト用機材は三機しかなく「オレンジ配線」機で飛行後解析用のデータ取り用だ。そのためHMSクイーンエリザベスで離着艦する機材は「大部分が米国所属機で英パイロットが操縦する」ことになりそうだ。
同機を操縦する英パイロットの一人はこうなった背景にテスト機材の手配はJOTTが取り仕切っているためとする。
「英国所属機が試験用に使えれば象徴的なのですが、全機がカリフォーニアのエドワーズAFBにあり、今回の試験を行う東海岸には皆無なのです」
「そのため一番経済的かつ効果的な選択肢はパックスリバー配備の米軍機材を使うことなのです。英テストパイロットが操縦するでしょうが米パイロットも合同テストチームの手配で飛ぶことになります」
HMSクイーンエリザベスは今週中に出港する。
コメント

さすが英国だけあって英国人による操縦にこだわっていますが、F-35事業はなんと言っても米国主導であり、まだ英国にはF-35Bも納入されていないので英国の虎の子空母に米パイロットが着艦する「屈辱」はしかたないのではないでしょうか。むしろ超大型空母はつくったものの自軍の運用機がないことのほうがおかしいですね。米海兵隊機材を同艦で運用する案はどうなったのでしょうか。現在の英国に超大型空母はいかにも身分不相応にも思えるのですがどうでしょう。(しかも二番艦プリンス・オブ・ウェールズも建造中ですよね)

2018年8月18日土曜日

アラスカの対岸までTu-160を飛ばしたロシア演習の意図は何か

ロシアも制裁措置が続き原油価格がちっとも上昇せず不満のはけ口を外国に向けつつあるのか、ずいぶんと大胆な挑発に出てきました。これは規模が違いますが北朝鮮のやり方と同じですね。当然日本が次に警戒しないといけないのは中国の動向でしょうね。航空自衛隊には当面つらい状況が続きます。

 

2 Russian Tu-160 supersonic nuclear-capable bombers drill near Alaska for the 'first time in history' ロシアのTu-160超音速核爆撃機二機がアラスカ近くで演習に「史上初」の参加をした


Russia's strategic bomber Tu-160 or White Swan, the largest supersonic bomber in the world, lands at Engels Air Base near Saratovロシアの戦略爆撃機Tu-160は白鳥とも呼ばれ世界最大の超音速爆撃機。写真はサラトフ近郊のエンゲルス航空基地に着陸した際の同機。Misha Japaridze/AP
  • ツボレフTu-160戦略爆撃機が二機でベーリング海峡をはさみアラスカに面するチュクチ半島で演習を展開したとロシア国防省が16日発表。
  • 各機はTu-95MS戦略爆撃機編隊、Il-78給油機部隊と演習したのちサラトフ基地に帰還
  • ロシアは重爆撃機に核兵器を搭載しアラスカ付近で作戦実施する能力を誇示した格好だ


ポレフTu-160超音速長距離核爆撃機の二機編隊がアラスカ近くで「史上初の」演習を実施し、ロシアに米領土近くで核爆撃機を運用する能力をあることを示した。ロシア国防省が8月16日に公表した。
Tu-160は標準型巡航ミサイル6発、短距離核ミサイル12発を搭載しマッハ2で飛行可能だ。今回はTu-95MS爆撃機二機とIl-78空中給油機とともに演習を展開したとThe Moscow Timesが伝えている。演習には10機が動員された。
このうちTu-160編隊はロシア南西部サラトフの本拠地から4千マイルを飛び、チュクチ半島に移動した。AP通信は同半島がベーリング海峡を波佐見アラスカの対岸だと説明している。
セルゲイ・コビラシュ中将の指揮で爆撃部隊はコミ演習地の標的へ攻撃訓練をおこなってから北極洋に抜けた。その後空中給油を受け基地に帰還した。
今回のフライトにTu-160が初めて参加したことに意義がある。生産再開した同機の海外哨戒飛行が増えているのは緊張の高まりに呼応しており、今回はアラスカ付近まで飛行したが、この前にもロシア爆撃機で同様の行動が確認されている。

今年5月にツポレフTu-95爆撃機がアラスカ西海岸の55マイル地点まで飛行してきたため米空軍のF-22ステルス戦闘機二機編隊がスクランプル発進したと The Washington Free Beaconが報道している。今回の爆撃機のフライトは米ロ間で緊張が高まる中で実施された点が特色だ。■

夢の対決、F-22とF-35のドッグファイトがノルウェーで実施された

F-22とF-35のドッグファイトがノルウェーで行われたようです。結果が今ひとつはっきりしない言い方になっているのは何か問題があったのでしょうか。気になります。それにしても不気味なロシアをめぐりヨーロッパで緊張が高まっていますね。

U.S. F-22 stealth jets simulate dogfights with Norway's F-35 warplanes米空軍F-22がノルウェーF-35とドッグファイトをシミュレートした演習を展開

Two F-22 Raptors from the 95th Fighter Squadron, 325th Fighter Wing, Tyndall Air Force Base, Fla., fly in formation and conduct training operations with two Royal Norwegian air force F-35A Lightning II aircraft during an air refueling over Norway, Aug. 15, 2018.Two325航空団(フロリダ州ティンダル空軍基地)第95戦闘機隊所属のF-22ラプター二機 がノルウェー王立空軍のF-35ライトニングII二機と編隊を組んで飛行した。ノルウェー上空での空中給油中に撮影。Aug. 15, 2018. US Air Force
  • NATO同盟関係の強化を狙った演習で米F-22がノルウェーF-35と模擬ドッグファイトをした
  • F-22はヨーロッパに短期間配備中13機から二機が参加した。訓練ミッションが今後も非公表地点で展開される
  • ノルウェー軍パイロットが模擬空戦をF-22相手に行った意義を語ってい

空軍のF-22ステルス戦闘機二機がノルウェーのF-35戦闘機これも二機と演習で模擬空戦を行った。
今回参加したF-22はヨーロッパに短期配備中の13機の一部でギリシアやポーランドを移動しながら演習を展開しているが今後の実施場所は非公表だ。
ノルウェーへの展開はわずか一日だったがNATO同盟各国のステルス戦の実践力をたかめるねらいがあると米空軍の欧州司令部で第五世代戦闘機導入を主担するレズリー・ハウク大佐がノルウェーで報道陣に語った。
今回の展開はロシアのクリミア併合(2014年)後のヨーロッパ同盟各国に対する米国の安全保障対策の一環でもある。
ロッキード・マーティンF-35は続々とヨーロッパに到着しており、史上最高額かつ最高性能の同機は熟成度を高めつつあるが、以前は費用上昇や技術上の課題に悩まされてきた。
「毎回の演習で即応体制が高まっており、どんな敵にも対応できるようになる」とハウク大佐はノルウェーのF-35(52機)の拠点となるオルランド基地で報道陣に語った。
ハウク大佐はドイツ南西部のラムスタイン航空基地に新設した拠点から40機が今年中にやってくる欧州向けF-35が円滑導入できるように尽力している。米軍F-35の第一陣は2021年に欧州配備される。
9月に入ると米国ならびにF-35運用七カ国(ノルウェー、デンマーク、イタリア、トルコ、イスラエル、英国、オランダ)が会議に集まり、実戦運用が今年5月にイスラエルで始まった同機について意見交換する。
米国にはすでに150機超が配備されており、パイロットに言わせると搭載センサー類により今までにない形で戦闘の全体像が把握できる。
ノルウェー空軍のモルテン・ハンシェ少佐はF-35に搭乗しており、今回のF-22との空戦体験の意義を評価し、とくに非ステルス機相手ならF-35が先手をとり主導権を握ることが多いと述べた。

ただし少佐は今回の空戦でどちらが勝者だったかは言及せず「F-22は非常に手強い相手だ」とだけ述べている。■

ブルーエンジェルズが(やっと)機種更新へ スーパーホーネット登場

さすがというか海軍協会はさらっと書いていますが、ここまでブルーエンジェルズの機種更新が遅れた背景にドロドロの事情があったようです。それはともあれ機体がスーパーホーネットになるのはいいのですが、意外に改修期間が長いですね。


After Years of Waiting, Blue Angels Set for ‘Super’ Upgrade 長年待たされたブルーエンジェルズに「スーパー」機種更新の機会がやってきた

August 14, 2018 6:22 PM • Updated: August 14, 2018 10:37 PM

The US Navy flight demonstration squadron, the Blue Angels, perform during the Vectren Dayton Air Show in Dayton, Ohio on June 23, 2018. US Navy Photo

界にその名をとどろかせる米海軍の飛行実演飛行隊ブルーエンジェルズが契約交付で大きな変化を受ける。


改装作業では作戦機材をブルーエンジェルズ専用の機材に改装する。通常の作戦機材とのちがいとして機首機関砲を除去しかわりに煙幕油ポッドをつける。塗装を一新し独特の青と金で再塗装する。民生用仕様の降着装置に取り替え、コックピット操縦桿にバネをつけ前方方向7ポンド圧を常時維持できるようにし編隊飛行や反転飛行の精度を上げる。

「それ以外は艦隊で供用中の機体と同一」とブルーエンジェルス広報資料にある。「ブルーエンジェルス各機は必要に応じいつでも72時間以内に実戦機材に復帰可能」とある。

ただし第一線機材をエリート飛行チーム用機材に転換するのは単純なプラグ差し込み作業と異なるとUSNI Newsは理解している。

F/A-18 E/F仕様には余分なスペースはなく、発煙装置を収める場所を確保するのは大変な仕事だ。長年使われている発煙装置はそのままスーパーホーネット機首に入らない。2016年には12百万ドルの契約で海軍はボーイング技術陣とこの問題の解決方法を模索した。

ブルーエンジェルス仕様のスーパーホーネット各機はボーイングのセントルイス工場で改装を受け作業の完成は2021年12月予定と国防総省の契約内容の公示にある。

完成すれば同チームの機材は1946年の創設以来11代目となる。ブルーエンジェルスは1986年の40周年にF/A-18A/B にそれまでのダグラスA-4Fスカイホークから機種転換していた。■

2019年度米国防予算が成立へ。宇宙軍はどうなる。2020年から再び予算削減?

Trump Takes NDAA Victory Lap, But 2020 Loomsトランプは国防予算成立を祝うが、2020年が影を落とす

With the two-year budget relief ending in 2020, and a new Space Force to fund, the good times might not last long. 

二カ年時限立法の緩和策が2020年終了し、宇宙軍創設となれば幸せなときは長く続かない

By PAUL MCLEARYon August 13, 2018 at 5:29 PM

Air Force photo
President Trump debarks Marine One. The fleet of VH-3 helicopters is old.
ナルド・トランプ大統領が2019年度国防予算法にフォートドラムで署名した。買い物リストには「新型の美しい」戦車、航空機、艦船、ヘリコプターがあり7,170億ドル予算で政府が調達に向かい、大統領は「これまで破滅的な予算削減が続いたがこれで軍を再建し、いまだかつてない形にする」のだという。
ただし問題が2つある。国防歳出法案で装備調達の支払いが可能となるが未成立のままだ。良い事態は長続きしない。
二カ年に渡る予算案を議会が承認したことで2018、2019年度は予算キャップが適用されないことになり、今年の防衛予算がペンタゴンとして当面最後の予算増となる可能性もある。
予算強制削減のキャップは2020年に再適用され、710億ドル削減が議会があらためて決議しない限り実施される。ここにマイク・ペンス副大統領も疑義を感じており月曜日に「ドナルド・トランプ政権下で国防予算削減の動きはなくなる」と述べている。中間選挙後に議会も何らかの動きを示すと思われる。ホワイトハウスは単純に予算だけを求めているが、承認できるのは議会だけだ。
上院多数派を束ねるミッチ・マコネルが上院民主党議員との合意内容が発表され、上院本会議での法案審査は今月後半とし、11月の中間選挙前に2019年度国防支出を成立させたいとする。
5月に発表されたアメリカン・エンタープライズ・インスティテュートのアナリスト、マッケンジー・イーグレンの報告書では2019年度法案の追加財源を「漸進的だが革命的ではない」とし、追加予算の87%が軍組織の人件費、作戦整備費用に流れ、冷戦時に開発された装備の費用にも使われ、「残りの大部分は研究開発用途だ」とする。
2019年度予算に未計上の大型案件が大統領提唱の宇宙軍創設で、パトリック・シャナハン国防副長官によれば2020年度予算に計上するとしているが、その段階でペンタゴン予算は横ばいとなっているはずだ。
「敵対勢力は宇宙の軍事化に着手している」とトランプは第10山岳師団将兵を前に述べ、「短期間で相手に追いつく。宇宙に米国のプレゼンスを示すだけでは不十分である。宇宙は米国が支配する」と話した。
ただし第六番目の軍事部門創設の議会売り込みは難しい仕事になる。 ’
FOX Newsに日曜日登場したジャック・リード上院議員は民主党上院軍事委員会の重鎮として宇宙軍へ懐疑的な意見を展開。「宇宙軍構想は再検討の必要がある。我が国への脅威は多方面で構成されているからだ。だが今のままの装備と行政組織で別組織を創設するのは望ましくない」
上院軍事委員会の共和党側ナンバー2のジム・インホフェ議員、下院軍事委員会戦術航空・陸戦小委員会の委員長マイク・ターナー議員も宇宙軍創設に懐疑的であり、ペンス副大統領も創設を決めるのは議会だけと先週ついに認めざるを得なくなった。■

コメント:トランプ大統領の言行がむちゃくちゃだ、慣例に反すると批判する向きがありますが、その頭の中には未来の設計図があるように思えます。しかし冷戦を経て肥大化した軍組織、軍事予算の使途を根本から変えるのは並大抵の仕事ではなく、また国防予算の前提が強い経済であることは自明の理です。宇宙軍構想の中身がいまいちわかりませんが、実現すれば画期的な組織機能が実現されるのではないでしょうか。

2018年8月17日金曜日

★中国が米軍に勝利できない理由

Analysis: Why China Would Lose a War Against America 中国が米軍に勝てない理由

Analysis: Why China Would Lose a War Against America
By Harry J. Kazianis, The National Interest


中両国で開戦となれば地獄が地上に出現する。第三次世界大戦の引き金になるやもしれない。核の応酬となれば死者は百万単位ではなく十億単位になるかもしれない。世界最大の経済規模を誇る両国の直接対決で世界経済は破滅に直面するはずだ。ただしこれが現実になるかは米中関係の対立点に依存する。ISIS、ウクライナ、シリアなどそれに比べれば取るに足らない程度の問題だ。米中関係が平和のまま進むかあるいは逆に向かうかが現在の最大の課題であると言ってもも過言ではない。
中国が有事に米軍・同盟国軍にどんな損害を与えるかをまとめた資料に目を通した。これまで20年に及ぶ大規模投資でPRCは三流軍事力保有国から世界第二位の軍事大国に登り上がっている。また装備では接近阻止領域拒否(A2AD)を念頭に置いている。中国は米国との戦争が発生した場合を想定し軍事力を整備しているようだ。近年の中国のモットーは「備えよ」だ。
同資料では有事における中国の課題を検討しているが非常に広範かつトップダウン形式で検討している。筆者はこれに対してシナリオ形式の分析に目を通した。中国には対米戦に投入可能な装備がたしかにあるが、大部分は極めて基本的な装備だ。PRCが史上最大の軍事大国と戦争状態に入れば恐るべき威力を発揮する米国装備を体験する事になる。本稿では中国が対米戦の戦場で敗退する理由を列挙したい。
たしかに中国は高性能兵器をソーセージを作るように生産している。空母キラーミサイル、空母群を建造中であり、第5世代戦闘機があり、原子力推進及び極めて静粛なディーゼル推進潜水艦、無人機、機雷などがある。
すべて優秀に見える。ただし紙の上で。
米国と開戦となれば中国はこれらの兵器を活用できるだろうか。疑問点は極めて単純である。そう、中国は強大な兵力目指して各種装備を開発導入している。ただし、兵員はすべての装備を戦争状態の圧力の中で使いこなせるのだろうか。世界最高の軍隊でも装備を使いこなせなければ勝利は収められないことは容易に想像がつく。
ソフト面(軍事演習や即応体制)の実態には驚くべきものがある。2012年夏の演習では戦略軍部隊が弾頭部を地下退避壕内で取り扱うストレスから15日間の演習期間通じて映画大会やカラオケパーティーにふけっていた。第9日目には「芸能兵」(PLA独特の用語で歌や踊りをする女性のこと)が招かれホームシックの兵員を慰める必要が生まれた。
こんな指摘もある。
​近年は一大宣伝活動で中国を軍事大国だと世界中に吹聴しているが、実は中国には職業軍人がいないことを世界はしばしば見落としがちである。米国、日本、韓国、台湾他地域内大国の軍事組織と異なり、PLAは職業軍人の組織ではない。むしろ、「党の軍隊」であり中国共産党(CCP)の武装組織である。実際にPLAの幹部は党員であり各部隊には政治将校が配属され、党の統制を維持している。同様にPLAの重大決定事項は党が決めるものであり、大きな影響を与えているのが政治将校であり、現場関係者ではない。
ではこうした事情のもとで対米開戦となり爆弾が落ちる中で迅速な意思決定が可能だろうか。中国は課題を理解しているのか。上記の2012年演習事例は例外的な出来事だったとしてもPLAが「党の軍隊」だというのは極めて重い事実だ。アメリカとの戦争でここからどんな意味を持ってくるだろうか。
中国軍は「統合作戦運用」を実施できるか
今日の軍事作戦では「共同運用」が威力を発揮する。情報共有しつつ、各部隊の戦闘を調整しながら多様な局面(空、海、宇宙、サイバー、陸上)で展開するのが軍事目標の実現では最善の方法だし、究極の戦力増強効果を生む。このため米国はじめ強国は相当の時間労力の他資源をここに投入している。
中国もこの目標に向け努力している。ただし強力な敵すなわち米国に対してどこまで効果的に統合運用を展開できるだろうか。多くは懐疑的だ。RANDコーポレーションは「中国の不完全な軍事近代化」と題する報告書で中国の共同作戦展開について疑義を隠そうともしない。
中国国内の戦略思考家の中にも統合共同作戦を望ましい形で展開する能力が不足していると認識する傾向があり、中国が直面する問題の第一は兵力投射能力にあり、陸上国境を遠く離れた地点ではまだ実施できない。また中国筋にはPLAの欠点として統合運用体制の欠如を上げる向きがあり、中国軍と米国はじめその他先進国の軍事組織の間に相当の乖離があることを示唆している。
また同報告書では訓練について言及しており、筆者が先に述べた点と重なる。
PLA文献から訓練体制が一貫して不十分であることがわかるが、従来よりも現実的な演習内容を試み、PLAの作戦能力を引き上げようとしているのも事実だ。さらに文献から戦闘支援体制の課題が一貫してあること、戦闘支援部隊の機能についても兵站面出欠点が度々指摘されている他、整備能力もその他刊行物で取り上げられている。
中国軍にイノベーションは期待できるのか
軍事技術面では先進性が鍵となる。米国は常時新しい防衛技術を生み出している。長期的展望での中国の課題はどこまで技術面で追随できるかだ。具体的には中国に先端軍事装備を国産開発する能力はあるのか。長期的展望、つまり10年20年の範囲で見れば対米戦争で中国にとってこれが最大の課題だろう。
中国が他国の装備を「借りて」自前装備を作ってきたのは周知のとおりだ。ものまねコピーというがリヴァースエンジニアリングが必要で簡単ではない。まずい形のコピーでは中国が戦場で困ることになる。次の十年で中国は国産開発で軍事ハードウェアを手に入れる必要がある。その例がジェットエンジンで現在の中国の精密度の水準では製造はおぼつかない。中国がイノベーションを維持し、他国より先をめざせば戦闘で成果が出てくる。果たして中国にこの課題が実現できるのかは時がたたないとわからない。
中国は1979年以降は本格戦闘の経験がない
最善の方法は実際に現場に移動し、実施することだ。しかも大量に。中国の課題とはウォーゲームよりも実際の戦闘を経験してこそ学習曲線が機能することだ。中国の最後の大規模戦闘は1979年にヴィエトナムと戦った一ヶ月しかない。
35年前の戦闘事例では対米戦の勝利はおぼつかない。実戦経験の欠如から別の課題が生まれる。中国との戦闘となれば米国に有利な状況が生まれる。米国がこの25年間に経験した戦役はA2AD戦ではなく、米軍は新装備を戦場で実際に試し、欠陥を直してきたのであり将来の戦闘に備え調整も行ってきた。例としてF-22をシリアに派遣する必要はなかったのだが戦場で運用経験を積むことに意味がある。これが中国にはない米国が有利な点だ。
米国は本当に優位なのか
問題解決で最良の方法は多様な角度から問題を見つめ直すことであり、シナリオだけ見ていてもだめだ。相手の本当の弱点はなにか。決意を持って望む敵に対抗する相手のことを実際の場面で考える必要がある。

中国の抱える課題が今後中長期的に米国を相手に戦闘した場合についてまわるのだ。それにとどまらず中国の大きなジレンマもある。つまり(紙の上だけで)軍事組織を整備してアメリカに対抗できるない。中国にこれが不可能と言っているのではない。中国は米軍・同盟国軍に大損害を戦闘で与えられるはずで、状況次第でその被害も変わる。つまり、今の所米国は頭一つ先を走っているといいたい。■