スキップしてメイン コンテンツに移動

★中国が米軍に勝利できない理由

Analysis: Why China Would Lose a War Against America 中国が米軍に勝てない理由

Analysis: Why China Would Lose a War Against America
By Harry J. Kazianis, The National Interest


中両国で開戦となれば地獄が地上に出現する。第三次世界大戦の引き金になるやもしれない。核の応酬となれば死者は百万単位ではなく十億単位になるかもしれない。世界最大の経済規模を誇る両国の直接対決で世界経済は破滅に直面するはずだ。ただしこれが現実になるかは米中関係の対立点に依存する。ISIS、ウクライナ、シリアなどそれに比べれば取るに足らない程度の問題だ。米中関係が平和のまま進むかあるいは逆に向かうかが現在の最大の課題であると言ってもも過言ではない。
中国が有事に米軍・同盟国軍にどんな損害を与えるかをまとめた資料に目を通した。これまで20年に及ぶ大規模投資でPRCは三流軍事力保有国から世界第二位の軍事大国に登り上がっている。また装備では接近阻止領域拒否(A2AD)を念頭に置いている。中国は米国との戦争が発生した場合を想定し軍事力を整備しているようだ。近年の中国のモットーは「備えよ」だ。
同資料では有事における中国の課題を検討しているが非常に広範かつトップダウン形式で検討している。筆者はこれに対してシナリオ形式の分析に目を通した。中国には対米戦に投入可能な装備がたしかにあるが、大部分は極めて基本的な装備だ。PRCが史上最大の軍事大国と戦争状態に入れば恐るべき威力を発揮する米国装備を体験する事になる。本稿では中国が対米戦の戦場で敗退する理由を列挙したい。
たしかに中国は高性能兵器をソーセージを作るように生産している。空母キラーミサイル、空母群を建造中であり、第5世代戦闘機があり、原子力推進及び極めて静粛なディーゼル推進潜水艦、無人機、機雷などがある。
すべて優秀に見える。ただし紙の上で。
米国と開戦となれば中国はこれらの兵器を活用できるだろうか。疑問点は極めて単純である。そう、中国は強大な兵力目指して各種装備を開発導入している。ただし、兵員はすべての装備を戦争状態の圧力の中で使いこなせるのだろうか。世界最高の軍隊でも装備を使いこなせなければ勝利は収められないことは容易に想像がつく。
ソフト面(軍事演習や即応体制)の実態には驚くべきものがある。2012年夏の演習では戦略軍部隊が弾頭部を地下退避壕内で取り扱うストレスから15日間の演習期間通じて映画大会やカラオケパーティーにふけっていた。第9日目には「芸能兵」(PLA独特の用語で歌や踊りをする女性のこと)が招かれホームシックの兵員を慰める必要が生まれた。
こんな指摘もある。
​近年は一大宣伝活動で中国を軍事大国だと世界中に吹聴しているが、実は中国には職業軍人がいないことを世界はしばしば見落としがちである。米国、日本、韓国、台湾他地域内大国の軍事組織と異なり、PLAは職業軍人の組織ではない。むしろ、「党の軍隊」であり中国共産党(CCP)の武装組織である。実際にPLAの幹部は党員であり各部隊には政治将校が配属され、党の統制を維持している。同様にPLAの重大決定事項は党が決めるものであり、大きな影響を与えているのが政治将校であり、現場関係者ではない。
ではこうした事情のもとで対米開戦となり爆弾が落ちる中で迅速な意思決定が可能だろうか。中国は課題を理解しているのか。上記の2012年演習事例は例外的な出来事だったとしてもPLAが「党の軍隊」だというのは極めて重い事実だ。アメリカとの戦争でここからどんな意味を持ってくるだろうか。
中国軍は「統合作戦運用」を実施できるか
今日の軍事作戦では「共同運用」が威力を発揮する。情報共有しつつ、各部隊の戦闘を調整しながら多様な局面(空、海、宇宙、サイバー、陸上)で展開するのが軍事目標の実現では最善の方法だし、究極の戦力増強効果を生む。このため米国はじめ強国は相当の時間労力の他資源をここに投入している。
中国もこの目標に向け努力している。ただし強力な敵すなわち米国に対してどこまで効果的に統合運用を展開できるだろうか。多くは懐疑的だ。RANDコーポレーションは「中国の不完全な軍事近代化」と題する報告書で中国の共同作戦展開について疑義を隠そうともしない。
中国国内の戦略思考家の中にも統合共同作戦を望ましい形で展開する能力が不足していると認識する傾向があり、中国が直面する問題の第一は兵力投射能力にあり、陸上国境を遠く離れた地点ではまだ実施できない。また中国筋にはPLAの欠点として統合運用体制の欠如を上げる向きがあり、中国軍と米国はじめその他先進国の軍事組織の間に相当の乖離があることを示唆している。
また同報告書では訓練について言及しており、筆者が先に述べた点と重なる。
PLA文献から訓練体制が一貫して不十分であることがわかるが、従来よりも現実的な演習内容を試み、PLAの作戦能力を引き上げようとしているのも事実だ。さらに文献から戦闘支援体制の課題が一貫してあること、戦闘支援部隊の機能についても兵站面出欠点が度々指摘されている他、整備能力もその他刊行物で取り上げられている。
中国軍にイノベーションは期待できるのか
軍事技術面では先進性が鍵となる。米国は常時新しい防衛技術を生み出している。長期的展望での中国の課題はどこまで技術面で追随できるかだ。具体的には中国に先端軍事装備を国産開発する能力はあるのか。長期的展望、つまり10年20年の範囲で見れば対米戦争で中国にとってこれが最大の課題だろう。
中国が他国の装備を「借りて」自前装備を作ってきたのは周知のとおりだ。ものまねコピーというがリヴァースエンジニアリングが必要で簡単ではない。まずい形のコピーでは中国が戦場で困ることになる。次の十年で中国は国産開発で軍事ハードウェアを手に入れる必要がある。その例がジェットエンジンで現在の中国の精密度の水準では製造はおぼつかない。中国がイノベーションを維持し、他国より先をめざせば戦闘で成果が出てくる。果たして中国にこの課題が実現できるのかは時がたたないとわからない。
中国は1979年以降は本格戦闘の経験がない
最善の方法は実際に現場に移動し、実施することだ。しかも大量に。中国の課題とはウォーゲームよりも実際の戦闘を経験してこそ学習曲線が機能することだ。中国の最後の大規模戦闘は1979年にヴィエトナムと戦った一ヶ月しかない。
35年前の戦闘事例では対米戦の勝利はおぼつかない。実戦経験の欠如から別の課題が生まれる。中国との戦闘となれば米国に有利な状況が生まれる。米国がこの25年間に経験した戦役はA2AD戦ではなく、米軍は新装備を戦場で実際に試し、欠陥を直してきたのであり将来の戦闘に備え調整も行ってきた。例としてF-22をシリアに派遣する必要はなかったのだが戦場で運用経験を積むことに意味がある。これが中国にはない米国が有利な点だ。
米国は本当に優位なのか
問題解決で最良の方法は多様な角度から問題を見つめ直すことであり、シナリオだけ見ていてもだめだ。相手の本当の弱点はなにか。決意を持って望む敵に対抗する相手のことを実際の場面で考える必要がある。

中国の抱える課題が今後中長期的に米国を相手に戦闘した場合についてまわるのだ。それにとどまらず中国の大きなジレンマもある。つまり(紙の上だけで)軍事組織を整備してアメリカに対抗できるない。中国にこれが不可能と言っているのではない。中国は米軍・同盟国軍に大損害を戦闘で与えられるはずで、状況次第でその被害も変わる。つまり、今の所米国は頭一つ先を走っているといいたい。■

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ