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軍用機への転用は? ボーイングが極超音速旅客機構想を発表。

Hypersonic airliner "may not be as hard as people think": Boeing CTO 

超音速旅客機は「みなさんが考えるほど困難ではない」とボーイングCTOが語る


Boeing

10 AUGUST, 2018
SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
BY: STEPHEN TRIMBLE
WASHINGTON DC

超音速旅客輸送はサイエンスフィクションとされることが多く、実現可能と見る向きは少ない。だがボーイングはその実現に向け動いており、しかも真剣だ。
「実際には考えられているほど実現は困難ではないかも」とボーイング最高技術責任者グレッグ・ヒスロップGreg Hyslopは、すかさず「難しいのは事実」といい添えた。
同社は極超音速旅客機構想を6月26日発表し、7月のファーンボロ航空ショーでも再度お披露目している。
超音速飛行の選択肢さえ2003年以来消えた業界で極超音速飛行を20-30年以内に実現させる提案は野心的と愚行の中間といえよう。
だがボーイングはスピード、素材、推進機関の組み合わせを見つけ、マッハ5で飛行可能な航空機は技術的に実現可能であり、商業的に利益を上げる事態が2040年頃に生まれると主張する。
さらに超音速飛行につきものの問題の解決方法も見つかったと同社は言う。M5.0程度で巡航する機体は高度90から95千フィートを飛ぶ。乗客は宇宙服を着用せず完全密閉された予圧客室に座る。そこで何らかの予圧が破られる事態が発生すれば大変なことになる。
「その事態は承知しており、対応を考えてみました」とボーイング上席技術研究員で極超音速技術の主任研究をつとめるケヴィン・ボウカットKevin Bowcuttが述べる。「全く新しい方法で客室内予圧を維持します」ボウカットはこれ以上詳しく説明してくれなかったが、減圧問題に技術的解決策があるとのことだ。
ボーイング構想の最高速度はマッハ5で極超音速の定義にあうが、それが理由ではない。ボーイングの解析では現在入手可能な機体構造、推進手段、燃料技術の限界はM5.0だという。
「現在使える技術や設計ツールで実現可能です。新規投資は不要です」(ボウカット)
一例がエンジンだ。M6.0機では超音速燃焼用のラムジェット(別名「スクラムジェット」のエンジンが必要だが、長年の研究開発にもかかわらず技術は成熟化していない。M5.0機ならその他の推進方法が使えるとボウカットは言う。
空気取り入れ式エンジンを搭載した歴代の有人機で最速機体はロッキード・マーティンSR-71Aでマッハ3.2をプラットアンドホイットニーJ58に基で実現した。同エンジンはターボラムジェットと呼ぶ特殊構造でM2まではターボジェットとして、その後は圧縮機からの空気をダクト誘導アフターバーナーへ送った。ラムジェットと構造が似た構造だ。
ボーイングの極超音速旅客機もターボラムジェット方式でJ58に手を入れたものを使うとボウカットは述べる。M2超で燃焼器の周囲に空気の一部を誘導するが、ボーイングでは高速度でエンジンコア周辺の空気の流れ全部をバイパスするのだろう。
ボウカットは極超音速機に詳しい。「X-51の父」と呼ばれる本人は1995年に同機を設計し、その後空軍研究開発本部が資金提供した。X-51ではJP-7燃料を使い、SR-71Aで使ったケロシン系の組成は同じだが燃焼系と冷却系の双方で用いる。ごく超音速旅客機はM5.0超の飛行は想定しないため、JP-7は不要とボウカットは述べる。標準ジェット-A燃料、液体メタンやそれらの複合燃料が民間機に使えそうだという。
またボーイングがM5.0を選んだのは機体構造材料の単純化のためだ。熱吸収式の特殊素材としてセラミック複合材やチタン合金が今日でも機体やエンジンに使われており表面温度は600°C (1,100°F)まで耐える。
M5.0だとM0.8程度で飛行する今日の旅客機の625%の速度となるとボウカットは説明。高速になればそれだけ困難な点があり、得られる成果も減る。たとえばM6.0機はボーイング構想より速力が2割しか伸びないが、チタンではなくニッケルが必要となりターボジェットではなく実証がまだのスクラムジェットが必要となる。
スピードが6倍になれば超音速旅客機の商業的価値も増える。
ヒスロップは極超音速飛行を超音速機のブリティッシュエアロスペース/エアロスパシアルのコンコードと比較する。コンコードは大西洋横断飛行を一日で二回こなし、クルーはそのまま乗務した。ただしブリティッシュ・エアウェイズエール・フランスともにこの利点を活用しなかった。これに対して極超音速旅客機は大西洋横断を一日四五回クルー交代なしで行えるという。機体の活用度を理由にエアラインは超音速飛行に超音速飛行より魅力を感じるはずという。
「これで経済面で意味が出る」とヒスロップは言う。「同じ機体を何回使えるかが経済性の鍵で高速飛行に可能性があり、大きな魅力の源になるかもしれません」■

コメント ボーイング発表の構造図では客室窓が見えますが極超音速機に窓が必要なのでしょうか。JALも出資して超音速機開発が進んでいると言われますが一気に極超音速機へ向かうのでしょうか。当然軍用機への転用も考えられますね。

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