2018年11月18日日曜日

Y-20が中国のグローバル大国志向に果たす役割に注目すべきである


This Not-So-Scary Picture Should Terrify the U.S. Military

一見無害なこの写真が米軍を震え上がらせる

Just how many Y-20s the PLAAF has ordered remains a mystery—at least eight are known to have entered service by 2018. The Y-20’s cost also remains obscure, with numbers ranging from $160 to $250 million floated. PLAAFが同機を何機発注しているかは不明のままだ。すくなくとも8機が2018年までに納入されたと判明している。機材価格もはっきりしないが、160百万ドルから250百万ドルの範囲といわれる。

by Sebastien Roblin

November 12, 2018  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaMilitaryTechnologyWorldY-20PLAAF



国がグローバル大国に近づこうとする中、往時の米国同様の装備調達が続いており、中でも大型輸送機での拡充が目を引く。新型Y-20輸送機は米C-17の生産が終了した現時点で製造中機体として世界最大の輸送機だ。

米空軍が運用中の輸送機材は600機ほどで、C-130ハーキュリーズ、C-17グローブマスター、C-5ギャラクシーの各型がある。人民解放軍空軍PLAAFには145機ほどしかない。そのうち43機あるY-7は六トンしか運べない。グローバルかつ「戦略的」輸送能力ではロシアから導入したIl-76MDの22機があり、53トンを運べる。リビア内戦が2011年に勃発し、PLAAFは自国民退避にIl-76を4機派遣した。

現在の中国ではアフリカでの軍事展開の必要が増えており、インド洋、太平洋での軍事基地、同盟国への補給任務も同様だ。だが戦略輸送能力が必要な背景には本国近辺の事情もある。2005年の四川大地震を受けてPLAAFは被災地への貨物輸送に奔走した。

そのわずか一年後に西安航空機が新型大型輸送機開発を開始した。それまでの中国貨物機はすべてソ連機のコピーあるいは輸入機材だったが、西安はアントノフ設計局の支援を仰いだ。ウクライナの同社からターボプロップAn-70の拡大、ジェット化案が提示された。中国が六十四トンの大型99A戦車を開発し設計案に手を加える必要が生まれた。

開発はJH-7戦闘爆撃機を開発したTang Changhongの手に委ねられた。開発チームは設計で3Dモデリング技法を全面採用し、3Dプリンターに混合材料を投入した。またrelational design 技法で機体の「骨格」モデルを作成し、一方の形状を変更すれば自動的に残りの部分の修正が完了した。この手法で機体開発・製造時間を30から75%短縮できたと伝えられ、2013年1月に試作機が初飛行できた。

四発機となり広い胴体から「太っちょ娘」の愛称がついた。なお、公式名称はKunpengである。110トンにおよぶ機体だが未整地滑走路運用も可能で最前線近くへ進出できる。600ないし700メートルで離陸可能という報道がある。ただしY-20の特徴は航続距離の長さにあり、貨物満載で2,700マイル(4,300キロ)、中程度軽程度の貨物なら7,200キロから9,900キロ飛べ、最大時速は575マイル(920キロ)だ。

Y-20は最大72.5トンの貨物搭載量があり、Il-76を上回るが、C-17の85.5トンには及ばない。それでも99型戦車一両の運搬には十分だし、軽装甲車両なら一度に数両を搭載できる。パラシュート投下可能なZBD.-03先頭車両は三両を搭載できる。

ただし難点がある。中国機の例に漏れず、国産ターボファンエンジンだ。Y-20には今のところロシア製のソロヴィエフD-30ターボファンを搭載し最大貨物搭載量を55トンに制限している。だが性能諸元を見ると大出力の瀋陽WS-20高バイパス比ターボファンに換装するようで、推力が24千ポンドから28千ポンドへ引き上がる。だがWS-20は高バイパス比版のWS-10Aエンジン(Taihang)でJ-11戦闘機搭載エンジンを改装したものだ。同エンジンは性能、信頼性両面の欠陥で悪名高い。

PLAAFはY-20の2機をまず第12輸送連隊(四川省成都)に2016年7月に導入した。2018年5月に初の落下傘兵降下、貨物投下を実施した。

長距離輸送以外にも中国は同機を空中給油機また早期警戒機として活用するのはほぼ確実だ。給油機として投入されれば戦力増強効果を発揮し、H-6K戦略爆撃機の航続距離を伸ばし、太平洋地区全域が作戦範囲に入るだろう。

Y-20の長距離性能があれば海洋哨戒機・対潜機材として、さらに電子線機材やスパイ機として理想的だ。ただし、一部任務では機材が大きすぎる場合もある。現時点での欠陥は空中給油を受けられないことだ。

中国では同機に固体ロケットを搭載し衛星の迅速打ち上げに流用する構想が出ている。また空中発射レーザーで弾道ミサイル防衛にも利用できるとする意見も出ている。西安航空機では民生型も開発し輸出も進めたいとし、スリランカから照会を受けている。

PLAAFが同機を何機発注しているかは不明のままだ。すくなくとも8機が2018年までに納入されたと判明している。機材価格もはっきりしないが、160百万ドルから250百万ドルの範囲といわれる。
2016年にはAVIC関係者 Zhu Qianが中国にはY-20が最低1,000機必要と発言して驚かせる事態が発生。世界各地で飛行中の大型輸送機の合計はこの数より少ない。もちろん発言はメーカーの意見であり中国軍の見解ではない。国防大学が先に発表した研究結果はY-20が400機が必要としていたが、それでも相当の規模だ。
だが中国国防アナリストのXu Yonglingが人民日報に語った内容ではY-20発注規模は100機未満とし、今後5ないし10年すればより高性能の機材が登場するという。AVICでは米C-5ギャラクシーあるいはアントノフAn-225に匹敵する超大型機の開発も想定しているという。An-225は世界最大の実用輸送機でペイロード最大は275トンもある。中国は同型一機をウクライナから購入している。
Y-20及び後継機は中国の軍事政治両面の国力投影能力を着実に伸ばす手段になり、とかく注目を集めがちのステルス戦闘機や空母より意味のある存在かもしれない。ステルス機や空母はハイテク装備を有する敵との大規模戦で実力を発揮する。だが輸送機が大量にあれば超大国への道を目指す中国の台頭を日常的に見せつけられる。迅速展開した部隊の活動を維持する、あるいは人道援助を世界各地で展開できる。同時にこれまで米国や欧州各国が果たしてきた「世界統治」ミッションに中国も加わることになるからだ。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

2018年11月17日土曜日

気になるボーイングのロングビーチ工場売却。C-17生産再開は可能性なし

Boeing Is Selling Off Its Historic C-17 Production Line Facility In Long Beach ボーイングがC-17生産にも使った歴史あるロングビーチ工場を売却

The property could be attractive to space launch and other aerospace firms, but there are also proposals to completely transform the area. 宇宙打ち上げ始め航空宇宙企業に魅力ある物件になるがその他にも再開発構想がある

BY JOSEPH TREVITHICKNOVEMBER 7, 2018
USAF


ーイングがカリフォーニア州ロングビーチの生産施設売却に動いている。同施設はC-17AグローブマスターIII輸送機を製造した場所で、売却が実現すれば同社は南カリフォーニアでの軍用機連続生産を終了するとともに米空軍で高まる同機の生産再開の芽もつまれることになる。敷地はヴァージン・オービットスペースXのような宇宙打ち上げ企業にも魅力となるだろうし、その他の再開発構想もある。
ボーイング(本社シカゴ)は同施設売却を2018年11月5日に公示した。ロングビーチ空港に隣接する4百万平方フィート(約37万平方メートル)の敷地内に組立工場(110万平方フィート、約10万平方メートル)がありC-17を280機あまり米空軍やその他国向けに生産した場所だ。今の所売却希望価格は不明だ。
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マクダネル・ダグラスがC-17を開発し同地で生産を1991年開始した。ボーイングが同社を1997年に買収し、グローブマスターIII生産施設を引き継いだ。
ロングビーチ施設には第二次大戦前まで遡る長い歴史があり、ダグラスは戦時中にボーイングB-17爆撃機後期型を同地で受託生産した。戦後も機体生産が続き、1980年代にはマクダネル・ダグラスMD-80旅客機が同工場で生産された。
USAF
米空軍のC-17.


ボーイングは今後も南カリフォーニアでC-17関連の整備その他支援を行うが、ロングビーチ工場はグローブマスターIII最終号機が完成した2015年以降は未利用のままだった。米空軍が空輸能力拡充を必要とし同機の生産再開が話題に上っていたがこれで事実上雲散霧消してしまう。
RANDコーポレーションによる2012年の詳細検討では数年間の空白後はC-17生産再開は80億ドル近くになると結論づけ燃料消費改良型150機を新規生産する想定だった。RANDはボーイングはロングビーチ以外で生産すると仮定していた。2008年時点で同社はグローブマスターIII生産終了後に別の機種生産にロングビーチ工場は使うのは効率が悪いと判断していたようだ。
BOEING
2010年のコンセプトでは燃料消費改良型C-17(C-17FE)をC-17原型と比較していた。


ボーイングは購入希望の第一回締切を2018年12月初旬に設定とロサンジェルス・タイムズが伝えており、広大な敷地に関心を示す向きが誰かまだわからない。
宇宙打ち上げ企業が関心を示すのは大型ハンガーの他作業スペースがあるからだが、2012年にボーイングは旧マクダネル・ダグラス施設のダグラスパークを不動産デベロッパーに売却した実績がある
GOOGLE EARTH
ロングビーチ空港。C-17を生産ていた施設が左に見える。衛星画像は 2015年撮影で生産工場横にC-17一機が見える。


大富豪リチャード・ブランソンの多国籍企業ヴァージン・グループ傘下のヴァージン・オービットが同上地点に本社を構える。同社は小型衛星を軌道に乗せるべく空中発射方式ロケット(呼称ローンチャーワン)を開発中で改装したボーイング747旅客機(呼称コスミック・ガール)を母機に使う。
2018年10月24日、ヴァージン・オービットはローンチャーワンをコスミック・ガールに初めて搭載し、11月後半に初の発射を目指す。作業はロングビーチ空港で行った。
ヴァージン・オービットが空港隣接の敷地を拠点にほしいというのは十分理解できるし、大規模の航空関連施設も事業にぴったりだ。ブランソンには購入希望出て維持できる資金が十分ある。
だがスペースX(本社は近隣のカリフォーニア州ホーソン)も関心を寄せるはずだ。
不動産デベロッパーが企業向け集合オフィス用地に転換する可能性もある。グーグルがハワード・ヒューズが巨大飛行艇「スプルース・グース」の格納庫だったロサンジェルス施設を購入し、現在、事業所用に変える作業を進めている。
HOLLIDAY FENOGLIO FOWLER
ヒューズ航空機がスプルース・グース飛行艇を製造したハンガーがグーグルの「ハンガー」事務棟に改装されるとこうなる。


ロング・ビーチ市も同敷地を購入して都市再開発プロジェクト「グローブマスター・コリド」にしたいとする。これは商用公的施設の複合体で公園他レクリエーション空間も同時に確保する構想だ。
「ボーイングと地域社会にとって最適の選択肢を検討しているところです」とボーイング広報C.J.ノーザムが2018年6月に報道陣に語っている。「詳細は今お話できませんが」
はたしてこの物件が今後も航空宇宙産業に関連して使われるのか、それとも名前だけ残すことになるのか興味あるところだ。いずれにせよボーイングに同工場でC-17生産再開の予定がないことは確かだ。■

Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

2018年11月16日金曜日

☆高性能機に進化したF/A-18Cの歴史をたどる



Why the F/A-18C Hornet Was Truly One of a KindF/A-18Cが比類ない機体になった理由とは



November 10, 2018  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz Tags: F-18F-18CU.S. Air ForceHornetF-35


As the U.S. increasingly places its faith in a fewer range of platforms, it can only hope the F-35 will prove itself at least half as adaptable, reliable, and versatile as the Hornet was.米国で今後の供用機種が減る中、F-35でもせめてホーネットの半分程度は適合性、信頼性、多芸ぶりを示してもらいたいところだ
April 12, 2018


クダネル・ダグラスF/A-18Cホーネットが米海軍での供用を2018年4月に終了した。攻撃戦闘機第34飛行隊 (VFA-34)の「ブルーブラスターズ」が「レガシー」ホーネットの海軍における最後の運用部隊となった。USSカール・ヴィンソン(CVN-70)が同機を運用した最後の空母となった。海兵隊は同機をしばらく供用するが、海軍はF/A-18E/Fスーパーホーネットとロッキード・マーティンF-35CライトニングIIを将来の航空隊機種と位置づけている。


ホーネットの設計は実証ずみだが、実際は何度も改修を受けている。今年初めに退役したF/A-18C型は三十年前に初登場した機体と大幅に異なる。


ホーネットは1983年にF/A-18AおよびB型として供用を開始した。単座のA型は海軍・海兵隊の第一線飛行隊に導入され、B型は主に訓練に投入された。精密攻撃能力で名を上げたとはいえ、最初から成功したわけではない。A/B型でAGM-62ウォールアイTV誘導爆弾の利用はAN/AWW-9データリンクポッドと併用が前提だった。そうでないとホーネットは汎用爆弾やクラスター爆弾を運用するだけの平凡な爆撃機になった。


その後の改修でAGM-65マーヴェリック赤外線誘導ミサイル、AGM-84ハープーン対艦ミサイル、AGM-88HARM対レーダーミサイルの運用が可能となった。改修対象はロット10、11機体でF/A-18C、D型として1987年に登場した。D型は複座で海兵隊が使用し、後席に兵装システム士官(WSO)が攻撃任務あるいは前線航空統制(FAC)任務にあたった。


だがなんと言っても大幅な能力向上は「戦闘攻撃機」として「攻撃」能力の獲得だった。1989年11月にロット12のF/A-18C/Dに「夜間攻撃」型ホーネットの呼称がつき、暗視ゴーブル運用型コックピット、夜間低空飛行能力が実現し、ヒューズAN/AAR-50熱画像航法装備 (TINS)を格納したポッド、デジタル地図表示、カラー多用途ディスプレイ(MFDs)も搭載され、これまでの緑色ディスプレイと交代しヘッドアップディスプレイ(HUD)も導入した。新型機はその後F/A-18C(N)の制式名称がついた。


翌年にホーネットで新型AGM-84Eスタンドオフ対地攻撃ミサイル(SLAM)の運用が可能となった。これは1991年の砂漠の嵐作戦で初めて実戦投入された。その後の改修でAN/APG-65 AN/ARC-210 HAVE QUICK/SINCGARS VHF/FM通信装置が導入され、エンジンも効率が良いF404-GE-402に換装された。最後に1993年のロット16からAN/APG-65 レーダーが大幅改修され、APG-73の名称となり「情報量、メモリー容量を増大」させ信頼性を上げ整備が容易になった。並行して新型ミサイルAIM-120AMRAAMの運用が始まり、視界外距離(BVR)での交戦能力が実現した。APG-73はF/A-18E/Fにも当初搭載されていた。


ただしホーネットは精密攻撃の実現に苦労した。マーヴェリックやウォールアイの運用は初期型から実現していたものの、レーザー誘導爆弾(LGB)の利用に制限がついていた。このためホーネット導入後も冷戦終結後の海軍航空部隊で全天候で完全武装の攻撃機として供用されていたのはグラマンA-6Eイントルーダーだった。


AN/AAS-38NITEホーク用の前方監視赤外線(FLIR) ポッドはF/A-18専用に開発されホーネットとほぼ同時に艦隊に導入された。だが初期生産モデルにはレーザーが装着されなかった。そのため別機(例 TRAMを装備したA-6E)や地上FACに標的を識別してもらう必要があった。またAN/ASQ-173レーザースポット追尾装置で標的情報を受信するポッドでハードポイントがひとつ占領され、その分兵装あるいは燃料搭載量が減る。このためF/A-18ではGBUシリーズのレーザー誘導爆弾運用に厳しい制約がつき通常爆弾を運用するのが普通だった。


だが1989年登場した「夜間攻撃型」ホーネットではレーザー照準捕捉測距装置 (LTD/R)がつき、自機で標的捕捉追尾ができるようになった。ただし依然としてASQ-173で二次的情報の利用が必要だった。その後四年間でAAS-38AがC/D型に完全導入された。ただし海軍の第一線ホーネット部隊がF/A-18C(N)に完全移行しLGB運用能力を実現するまで時間がかかった。1990年代中頃にAAS-38Bがロット17機材に搭載されレーザー照準装置が導入された。これでF/A-18単独で標的を捕捉しつつレーザーを活用できるようになった。


NITEホークでは低解像度画像と信頼性が難関だった。新型標的捕捉ポッドの模索が始まり、AN/ASQ-228ターミネーターII高性能標的捕捉FLIR(ATFLIR)が登場した。これで画像の解像度が上がり、高高度かつ長距離での対応が可能となり2000年代に導入が始まった。その後NITEホークにかわりスーパーホーネットの標的捕捉ポッドが供用開始された。ATFLIRは2010年代に入ってもAN/AAQ-28(V)4ライトニングで機能が補完され1K画像で最高水準が実現し、接続性が向上してデジタル処理も高度化している。このポッドは海兵隊機で今後も使われる予定だ。


F/A-18の運用・進化の経緯をみると 米航空戦力を振り返って興味深い事実が見えてくる。精密攻撃能力の性能は触れ込みこそ高かったが、実用化は1991年の湾岸戦争まで待たねばならなかった。海軍、海兵隊がここに加わったのは比較的遅く90年代中頃でとくにLGB投下が航空隊全般で可能となったのは遅い。ただ米空軍でも精密攻撃能力を「軽戦闘機」扱いのジェネラル・ダイナミクスF-16ファイティング・ファルコンでも相当の時間が必要だった。世紀が変わる頃になってもPGM能力はF-15Eストライクイーグル、F-117Aナイトホーク、F-111アードヴァークに限定されていた。対照的に現時点の米戦闘機材すべてで精密攻撃能力が実現しており、B-1BやB-52Hといった重爆撃機でも同様だ。

ホーネットは最重要なテスト証明の機会にもなっている。当初の構想と異なる環境やシナリオに人員、機材ともに投入されると適合、改良、課題解決が都度試され、結果として真のシステムの実力が実現するものだ。F/A-18の場合では米海軍海兵隊に加え世界数カ国の空軍部隊が運用しつつ改良が進んだ。米国で今後の供用機種が減る中、F-35でもせめてホーネットの半分程度の適合性、信頼性、多芸ぶりは示してもらいたいところだ。■

Edward Chang is a freelance defense, military, and foreign policy writer. His writing has appeared in The National Interest, The American Conservative, and War Is Boring.
Image: Wikimedia

2018年11月15日木曜日

★F-35開発は実は順調ではない? 信じられない向きはこのメモを見てください



Memo: Troubled $1.5 Trillion F-35 Program Has Another Big Problem トラブル続きの総額1.5兆ドルF-35事業に別の難関が

November 10, 2018  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35MilitaryTechnologyAir Force


ラブルが絶えないF-35事業は総額1.5兆ドル規模になったが重要な戦闘能力試験段階に進める状況にないとペンタゴンのテスト部門責任者が内部メモで8月に伝えていたことが国防情報センターの政府監視プロジェクトPOGOで明らかになった。そのとおりだとペンタゴン史上最大の調達事業となった同機開発がまたも停滞する可能性が生まれる。
同メモは2018年8月24日付けで進展が遅れており重要な戦闘能力評価段階の初期作戦能力試験評価(IOT&E)が開始できない状態と記している。POGOによれば軍関係者は開発段階が完了したかのように見せるべく実際は致命的な設計上の不具合なのに進展していると表記し何も対策していないという。
IOT&Eは調達事業で法規上は最後の関門で本格生産前に完了する必要がある。連邦法によればこの作業は作戦試験評価部門長が事業の必要事項すべてを満たしていると書面で伝えないと開始できないことになっている。
作戦試験評価部長のロバート・ベーラーはソフトウェア問題の解決までIOT&E開始を遅らせている。ベーラーのメモでは機体の主要ソフトウェア、ミッションデータファイル各種・自動兵站情報システム(ALIS)、テスト場のインフラ関係ソフトウェアを全てアプデートするまで試験は開始できないとある。
このメモからは個別問題が解決可能なのかわからないが、これまでの試験報告で「F-35がAIM-120を運用する際に致命的技術欠陥がある」と伝えられており、パイロットが機関砲を発射すると「標的への射程方向が偏る」事象も報告され「常時地上目標に命中させられない」とある。
ペーラーはF-35の次期主要ソフトウェアでは重要な戦闘任務につながる攻撃、対空、制空、電子戦の能力追加が必要と記した。ミッションデータファイルは各種地図、脅威対象の電子特徴、敵装備の配備状況のほか敵味方識別につながる友軍装備情報が入る。ALISはトラブル続きだが整備補給ネットワークとなり診断機能、サプライチェーン管理、整備支援を組み込んでいる。これまでのテストでALISが機能するのは「ALIS管理者、整備要員が大幅に手動作業」する場合のみと判明している。
軍関係者は2018年9月15日をIOT&E開始の期限と設定していたが、ベーラーは相当の圧力のもとでも開始期日をおよそ二ヶ月遅らせそれまでにソフトウェアの改定が手に入ると期待する。
この例から政府機能監視機能の重要な意義が見える。議会は1983年に作戦試験部門をペンタゴンに立ち上げ、議会関係者に新型兵器装備の正確な性能情報が入るようにした。この部門が生まれる前は議会に届いた情報は官僚主義のフィルターを通したもののみで各装備の本格生産の前に正しく評価する情報は皆無だった。
本格生産開始は戦闘能力試験とともにあくまでも性能そのものを基礎とすべきであり、事前設定の日程ありきではないはずだ。試験機に実戦で使用に耐えないソフトウェアや装備を搭載しても意味がなく、実戦想定の評価をしない装備を納入すればパイロットが危険になる。今回、試験評価部長が契約企業より先に軍関係者に実態を伝えてくれたことは喜ばしい。■
Dan Grazier is the Jack Shanahan Military Fellow at the Center for Defense Information at the Project On Government Oversight (where this first appeared).

コメント:F-35に全幅の信頼をおく向きにはこの記事は受け入れられないでしょう。ソフトウェアは百万行規模と言われ、手直しするだけでも大変です。しかも今回指摘のあるようにソフトウェアは一種類だけではないということで大変な作業になりそうですので事業費はさらに膨らみますね。機体が完成しても使えない装備のママの張子の虎では意味がありませんし、今後相当の期間にわたり戦力増強のアップグレードを繰り返すF-35はこれまでの機体のコンセプトを超えたシステムとして認識すべきなのでしょうが、何度も繰り返しているように西側自由世界の防衛力を骨抜きにしかねない存在だと思います。F-35懐疑派は今や少数になっているようですがあえて意見を述べました。

2018年11月14日水曜日

★海上自衛隊>3,900トン新型フリゲート艦建造へ

MHI to build two new multirole frigates for JMSDF 三菱重工が海上自衛隊向け新型多用途フリゲート艦二隻の建造を受注

Kosuke Takahashi, Tokyo - IHS Jane's Defence Weekly
02 November 2018
  
MHIが防衛省から受注したJMSDF向け新型多用途フリゲート艦のコンピュータ・グラフィック。 Source: MHI


菱重工業(MHI)から防衛省(MoD)より海上自衛隊 (JMSDF)向け新型多用途フリゲート艦4隻中最初の二隻建造を受注したと発表が11月1日あった。
MHIは契約金額規模を明らかにしていないが、MoDは2018年度予算で922億円で2隻建造分を計上している。JMSDF引き渡しは2022年3月の予定。
今年8月には995億円で残る二隻建造の概算要求がMoDから出た。こちらは2023年3月引き渡しの想定だが契約は未交付だ。
MHIのフリゲート設計提案は三井造船(MES)およびジャパンマリンユナイテッド案を抑えて採択された。ただしMESがMHIの主契約企業に選定されている。


排水量3,900トン、全長130メートル、全幅13メートルでMHI長崎造船所で一号艦を建造し、二号艦はMESの玉野事業所で建造される。


MoDによれば新型フリゲート艦は日本周辺の海域における監視活動とともに多機能艦として対機雷戦も行う。従来は掃海艇で行ってきた任務だ。


兵装ではヘリコプター1機を搭載し、無人水上・水中機(USV/UUV)も運用する他、海上用に改装した中SAM改中距離対空ミサイル、5インチ(127ミリ)62口径砲一門、垂直発射装備、対艦ミサイル、シーRAM近接攻撃装備も搭載する。

コメント:海上自衛隊では30FFMの名称が使われています。FF=フリゲートにM=対機雷戦能力がつくのは無人機技術があってこそのことですね。コストパフォーマンスに優れた艦になりそうですが、まず4隻建造するのは手直ししながら建造する構想なのでしょうか。乗員100名というのは今後を睨むとあと一段の省人化が必要ではなりですかね。

2018年11月13日火曜日

韓国向けA330給油機一号機のフェリー飛行完了

RoKAF’s first A330 MRTT arrives in South Korea for acceptance trials 韓国空軍向けA330 MRTT初号機が韓国に到着

Gabriel Dominguez, London - IHS Jane's Defence Weekly
12 November 2018
  
スペイン・へターフェを離陸する韓国向けエアバスA330MRTT初号機。 Source: Airbus

国空軍(RoKAF)が4機発注していたエアバスA330多用途給油輸送機(MRTT)の初号機が韓国釜山の金海 Gimhae航空基地に到着し、受領公試が行われる。
エアバスはエアバスとRokAF混合乗員が同機を操縦し、エアバスの最終組立ラインのあるスペイン・へターフェからカナダ・ヴァンクーヴァー経由でフェリーフライトを完了したと11月12日に発表。
同機は金海で地上及び飛行テスト各種を受ける。RoKAFはエアバス派遣のチームから正式な同機納入まで支援を受けると同社は述べつつ、テスト期間の長さについては言及していない。
A330MRTT四機の納入完了は2019年末の見込み。供用開始でRoKAFの北朝鮮攻撃で有効範囲が広がり、朝鮮半島外での作戦も視野に入る。
韓国は2015年にA330 MRTTを4兆ウォン(12億ドル)で採用し、ボーイング案、イスラエル航空宇宙工業(IAI)案を退けた。ボーイングはKC-46Aペガサス、IAIはボーイング767-300多任務給油輸送機(MMTT)案を提示していた。■

コメント:さて韓国空軍は念願の空中給油機で何をするのでしょうか。同国政府を見ると早く北朝鮮に統合されたいと思っているとしか見えませんが、さすがに国防の第一線を担う軍は違う味方をしているのでは。しかし相互の見解の相違が度を越すと何十年ぶりで軍事クーデターも発生しかねませんが。軍も「国民感情」の前に屈服することはないよう祈るしかありません。A330を選択したのは日本のKC-46の後追いはしたくないという理由だったら笑止千万ですね。

民主党が過半数となった米下院は国防政策にどんな影響を与えるのか


Democratic House Hurts Space Corps, Nuke Modernization, & Pentagon Topline 民主党多数となった米下院で宇宙軍創設、核兵器近代化、ペンタゴン予算に暗雲

By MARK CANCIANon November 09, 2018

NASA photo
主党が下院で多数議席を奪還したことで国防総省で大きな影響が三点生まれる。トランプ大統領が優先順位をつける新型核兵器開発、宇宙軍創設はともに見通しがつかなくなり、国防予算は減少に転じ、逆に監視監督機能はどんどん強化されるだろう。
悪影響と好影響
一番大きく痛手を受けそうなのが核兵器近代化で下院軍事委員会委員長就任が予想されるアダム・スミス議員はじめ民主党員は不要、過剰かつ不安定につながると批判している。
オバマ大統領が核兵器近代化を新START条約調印の見返りに支持したのは近代化で兵器数を減らせばそれだけ米国の安全保障につながるという理屈だった。つまりオバマ構想に盛り込まれなかった内容が脆弱で、特に低出力核兵器、長距離スタンドオフ巡航ミサイル(LRSO)がここにあてはまる。低出力兵器が危険と言われるのは通常戦から核戦争へのエスカレートが容易になるとするためだ。巡航ミサイルが無用と言うのは米爆撃機にはB61のように出力調整型爆弾がすでに搭載されているからで、推進派はB-52のような非ステルス機には長距離兵器が敵標的の撃破に不可欠と主張する。
ミニットマンICBMの後継となる地上配備戦略抑止力兵器も民主党の攻撃対象となりそうだ。だがこれもオバマ政権が承認していたのになぜこうなるのか。兵力管理専門家から地上配備ミサイルは攻撃第一波の前に脆弱であり、不安定化要素になるとの批判がある。というのは大統領に「今使わなければ負ける」と強迫観念にとらわれる可能性が生まれるからだ。コロンビア級弾道ミサイル潜水艦はそのまま残るだろう。核抑止力三本柱の中で潜水艦が残存性が一番高いと言われるからだ。B-21爆撃機も残りそうなのは通常兵器運用能力が高いからだが配備は遅れるかもしれない。
トランプ大統領がめざす宇宙軍構想も挫折しそうだ。賛成派、反対派で意見が分かれる中、戦略的な捉え方の前に大統領個人の構想という事実があり、大統領も共和党マイク・ロジャース下院議員の構想を借用したに過ぎない。ロジャース議員は戦略部隊小委員会で影響力を減少させる。民主党多数となった下院が目に見える形で政治的勝利をトランプに与えるとは考えにくい。
逆に追い風を受けるのは社会文化領域だ。トランスジェンダー隊員は支援を期待できる。また女性向け事業でも同様だ。性的嫌がらせへの保護が拡充されるだろうが、直近の国防予算認可法でもこの内容の一部が取り込まれている
Cancian/CSIS graphic
国防総省予算の時系列変化(実績=実線、予測=点線) Graphic by Mark Cancian, Center for Strategic & International Studies
国防予算が削減されるのはほぼ確実
前出のスミス議員は軍事委員会委員長就任を目され、国防予算が巨額すぎるとかねてから発言している。民主党議員で同様の発言をしている例は少ないが、国防は選挙の争点ではなく、あえて自ら物議を醸す発言に踏み切る候補は皆無であったことを考えると、各議員には意見を出す余地があるようだ。
ただし選挙公約から明らかに民主党は左寄りに変化しており、国内向け事業に巨額予算を投入するとある。上院は共和党が多数のため予算案がそのまま通過できないとしても民主党が国防関連を予算上の競合支出項目と見るのは確実だろう。
つまり、これまで五年間ほど民主党は国防支出への賛成の条件として国内向け支出増を求めてきている。
共和党指導部は国防予算増を求める国防タカ派に「平衡」原則で対応してきた。タカ派は依然として強力な存在であり政府機能の停止を回避し多数党としての面目を傷つけるのを防いできた。国防タカ派は平衡効果として海外緊急作戦(OCO)の予算項目を使ってきた。
目が話せないのが民主党内左派の動きだ。仮に国防予算にかこつけて妊娠中絶、海外派兵、移民対策など自らの主張を盛り込ませる動きにでればすべてが前に進めなくなる。だが可能性が高いのは平衡状態が続くことで、国防予算増額の条件で国内案件への予算手当を求めてくるだろう。共和党内の予算均衡強硬派が勢いを失い少数党内の少数派になったため、今後は予算赤字はだれも気にしなくなるのではないか。
ただしトランプ政権で予算を統括するティーパーティからOMB長官に転じたミック・マルヴェニーは別だ。トランプ大統領から総額300億ドルの減額を2020年予算案に求めた人物だ。これは当初想定の4パーセント削減に相当し、2019年の歳出案比で2.3パーセント減になる。その他エネルギー省の安全保障関連費目も加えれば330億ドルになる。つまり国防予算は今や左派右派双方からの攻撃を受けており、2019年度予算がピークになる。
Courtesy of the Office of Rep. Smith
アダム・スミス下院議員

監視の目が強まる
反対党が議会内の予算執行と政府活動の監視が手ぬるいと政権支持派を批判するのは常だ。公聴会で反対党に政権を公然と批判する仕組みが提供され、政権を揺さぶり、短期的には無理でも長い目で法案づくりの基礎にできる。下院を支配する民主党は疑義の提示だけでなく公聴会テーマも選択できるようになった。対立を招きそうな大きなテーマ2つがある。軍事力行使とサウジアラビア支援だ。
ブッシュ、オバマ、トランプと三政権が海外紛争介入を正当化してきたのは2001年以来毎年の軍事力行使認可法が根拠だ。批判派は現在の作戦多数は9/11直後の狂乱状態で法案で想定外の事態だとする。したがって今後の認可で公聴会や討議が必至だろう。民主党に軍事作戦を批判する舞台が生まれ、特にアフガニスタンでは20年にも渡り大きな成功がないだけに批判の的となりそうだ。
もうひとつの緊張要因がサウジアラビア支援で特に同国がイェメン介入していることが問題だ。カショギ記者殺害で関係が悪化している。そのため下院公聴会でサウジ向け武器販売が取り上げられれば武器販売全体に議論が拡大する可能性がある。
最後に専門家予想では下院内閣委員会はトランプ大統領のビジネス関係の調査に乗り出すという。国防関連の委員会も同じ動きをするか不明だが一部は加わるかもしれない。
つい9月まで国防関連は予算案が会計年度前に通過するなど順風満帆だったし、今後の予算見通しも適切と見られていた。今やすべて見えなくなっている。この状況で希望の光はあるのか。各シンクタンクが今後分析を出してくるはずだ。またお伝えしたい。■

コメント:下院で民主党が多数となったと反トランプの論調のメディアが大喜びしているようですが、議決で党による拘束がない米国では単純に与党野党と区別できないのです。当方は野党という言葉に疑義を感じるので反対党と訳出しました。この結果は今後10年の国防力後退を生み、米国人に深い傷を与えるでしょうし、なんと言っても安堵するのはロシア、中国、イランといった望ましくない勢力でしょう。中国が今回の選挙結果にどれだけの影響力を行使シたのかシなかったかの検証は別途でてくるはずですが、左派がいつまでも左派のままでは日米ともに「民主党」とは厄介な存在(すくなくとも安全保障上で)なようですね。