2019年9月16日月曜日

各国でまだ現役のM60パットン戦車は近代化改修で親衛戦車に太刀打ちできるようになるのか

America's M60 Patton Tank: Can It Still Fight the World's Best (At Over 50 Years Old)? 50年前のM60パットン戦車で世界最高性能の戦車にまだ太刀打ちできるのか

Raytheon is offering an update to the Patton that makes it a killer (of tanks), but not a survivor. レイセオンがパットン改修で攻撃力を引き上げる構想を提示しているが残存性は期待できないようだ

1960年代製の戦車がどこまで性能向上できるのか。
M60パットンは1960年代1970年代の米陸軍戦車部隊の中心装備だった。その後M1エイブラムズに主役の座を譲り、いまも変わらない。ただし現在も合計5千両ものパットンが計19カ国の陸軍部隊で現役だ。今年初めにレイセオンがエンジン換装、火器管制装備、120ミリ主砲を中心とする供用期間延長パッケージ(SLEP)改修を提示した。
M60SLEPの競争相手がイスラエル軍事工業がすでに提供中のM60サブラ改修策だ。サブラはトルコでも供用中でM60Tの制式名称で、シリア北部で戦闘投入されている。一方で旧式パットンがイエメンで両陣営が使っている。
改修型パットンは速力や火力が向上するというが現在の戦場で十分な戦力を発揮できるのだろうか。
冷戦時の主力戦車vertisement
M60の出自を探るとM26パーシング重戦車にたどり着く。第二次大戦終了時にごく少数が実戦投入されたパーシングからパットンが生まれ、主砲90ミリでM46、M47、M48に発展した。M60は1960年に生まれた最終型だ。その狙いはソ連のT-54戦車への対抗で装甲の厚さと長射程M68主砲105ミリの採用だった。
自重50トンのM60は第三次世界大戦勃発に備え欧州に配備されたが、ヴィエトナム戦争には投入されなかった。ただし、橋梁設置の派生型が使われている。M48が北ヴィエトナムのPT-76やT-54を数少ない直接対決で葬っており、ドミニカではスウェーデン製戦車を相手にしている。
中東ではイスラエルがM60を第4次中東戦争で初投入し、ゴラン高原で敵に包囲された機甲旅団の救援に駆けつけた。シリアの3千両の装甲車両をなぶりものにした。一方で南部戦線ではりエジプトがスエズ運河に構築した橋頭堡攻撃に向かったM60がAT-3対戦車ミサイルによる被害をを受けた。パットンの全高が大きいことは標的にされやすく、前面に装備した油圧系統は装甲を破られると発火しやすかった。にもかかわらずイスラエル軍はパットンが気に入り2014年まで現役で使い、各種改装を行っている。
パットンは供用期間中に数々の改修を受けている。中でもM60A2「スターシップ」は155ミリ主砲でMGM-51シレイラ対戦車ミサイルも発射できたが、早々と退役したのは技術面の制約を解決できなかったためだ。最終型M60A3TTSは火器管制機能が改修され熱画像で夜間戦闘に効果を上げた。海兵隊のパットンでは爆発物反応型装甲も導入している。
ただし1980年代に入るとソ連がT-72戦車を大量輸出し、装甲や火力でパットンと互角あるいは上回る性能を示した。米国ではM1エイブラムズ戦車の導入が始まり、火力(120ミリ主砲)や複合材を多用した装甲で防御性能が飛躍的に伸びた。
米軍でM60を最後まで供用したのは海兵隊で1991年湾岸戦争ではクウェイトでおよそ100両のイラク戦車を撃破しながら、パットンの全損は1両のみだった。だがこれは敵側の訓練や戦術が劣っていたためで、まもなくしてパットンは米軍から姿を消した。
とはいえM60は今でも主力戦車の座についたままの国がある。エジプト(1,700両)、トルコ(932両)、台湾(450両)、サウジアラビア(450両)、モロッコ(427両)、タイ(178両)、バーレーン(180両)の各国である。
SLEP・サブレ両改修案の中身は
レイセオンのSLEP改修は火力と機動力の改良が主眼だ。
まず、旧式M68主砲は120mmのM256主砲に交換し、エイブラムスと同じ砲となる。これで1980年代製のT-72への対応に苦労したパットンが最新鋭戦車も撃破可能となる。さらに新型デジタル照準装備をM1A1Dから流用する。新型コンピュータにより砲手は走行中にも照準を当てることが可能となるのは大きな利点だ。そして砲塔の回転用の油圧系統は電気駆動式になり回転速度が上がりながら命中弾を受けての「炎上」の可能性が低くなった。
次にレイセオンはディーゼルエンジンを750馬力から950馬力に更新したので最高速度が40マイル時になり、新鋭戦車と肩を並べる。
レイセオンの試作戦車には結合型装甲もついておりロケット推進弾を跳ね返す効果があり、追加装甲板や補助出力で車体後部の冷却ファンを駆動する。ただし以上はSLEP改修の標準内容ではないようだ。
これに対してイスラエルのサブラII改修でも120ミリ主砲と新型照準コンピュータの組み合わせは同じでエンジンは1千馬力になり最高速度は時速34マイルになっている。SLEPと違うのはサブラも装甲をグレードアップしているが砲塔の形状を変えていることだ。また爆発物反応装甲を採用し、装甲板も追加搭載する。
仕様上良く似ているマガッチ7C戦車に装甲板を搭載し、ヒズボラのAT-3・サガー・ミサイルが18発命中しても残存できたとの報道があり、一発も貫通しなかったという。ただしサガーは1960年代製の装備であり新型ミサイルは爆発力貫通力も増強している。
改修はどこまで効果があるのか
エンジン強化でパットンはその他の装甲車両に遅れを取らずに前進できる。それでもM60の重量馬力比は見劣りがする。
120ミリ砲と新型火器管制装備でM60は今日稼働中の戦車なら大部分を中長距離から撃破できる。高性能のM829E3およびE4劣化ウラン弾があれば高性能反応型装甲にも対応できるのでが、この砲弾が利用できる運用国は少ない。そうなるとM60のSLEP改修はそこそこの戦車ハンターとなりそうだ。
ただし今日の戦車は敵戦車を相手にすることは少ない。相手は戦闘員集団が多く、長距離対戦車誘導ミサイルとしてコメットや短距離向けロケット推進手榴弾を装備している。こうした装備はM1はメルカバといった第一線戦車相手にも有効性を証明している。
パットンはM1あるいはメルカヴァより相当に脆弱である。さらに旧型T-72にも劣る。パットンの前面装甲は鋳鉄の旧式で圧延硬化装甲(RHA)では253ミリに相当する。新鋭戦車では複合材装甲を採用しており同じ重量で硬化は劇的に向上している。最新鋭M1A2の装甲は戦車砲弾には800ミリ相当とされる。
対照的に90年代製の120ミリ、サボー弾はRHA700ミリでも貫通するし、AT-17コメート対戦車ミサイルの貫通能力は1300ミリだ。
パットンは全高が大きく標的にされやすすく、主砲砲弾はまとめて配置されているため敵弾が貫通すると爆発しやすい。エイブラムズでは砲弾は離して配置している。
M60SLEPは装甲には手を付けない。サブラでは装甲も改修しており、トルコの実戦事例で改良型パットンが対戦車ミサイルにも耐えると判明している。
今年4月21日にトルコのM60Tがイラク・バシクエでISISのコメート対戦車ミサイルの攻撃を受け、損傷は受けたものの乗員は無事だった。とはいえ車両は作戦実行に耐えられなくなった。
8月にはこれと別にトルコのM60A3とM60Tがユーフラテス・シールド作戦でISISを戦闘せずにヤラブルス市街地から放逐してからクルド人部隊と戦闘に入った。クルド側はM60数両を長距離ミサイルで破壊し、トルコ陸軍に初めて死傷者が発生した。
トルコのM60Tサブラ戦車隊はISIS占拠の市街地に火砲を集中したためコメートミサイルの標的になった。乗員で助かったのは1名だけだった。さらにシリアでは少なくとも11両のパットンを喪失した。
だがもっと悪い結果がイエメンで発生し、フーシ反乱勢力とサウジアラビア陸軍の双方がパットンを投入し、合計22両以上が破壊されている。
性能改修したサブラでさえ損失を出しているのであり、SLEP改修では砲塔の油圧機構の除去以外に残存性で改良がない。また装甲の強度もサボ貫通弾に対しては不十分であり車両の防御が困難だ。
レイセオンは改修でパットンを戦車キラーにするが、残存性は追求してない。だが近代戦では兵員の生存が一層強く求められており、ロシアのT-14戦車が砲塔を無人化したほか高性能の防御機能を備えたのはこの傾向に従ったものだ。
パットンは火力により信頼を勝ち取ってきたが、死傷者は最小限にしつつ相手方にプロパガンダ勝利を収めさせないことが重要となっている今日では、装甲防御の古さが足を引っ張りかねない。■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

B-21を「バトルプレーン」とし敵戦闘機の駆逐を図る構想が出てきた


Could the New B-21 Stealth Bomber Become a 'Battleplane'?

B-21ステルス爆撃機が「バトルプレーン」になる可能性
Or, a bomber that can also do air-to-air combat? Is that a good idea?
そもそも爆撃機で空対空戦がこなせるのか。
September 14, 2019  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: B-21B-2Stealth BomberStealth FighterBattleplaneAir-to-Air Missiles
B-21について直近の報道をみると同機は米爆撃機として久しぶりに空対空戦闘に投入されるようだ。米空軍がそのまま進めれば、航空史の初期段階の主張が実現する。実際には1950年代、60年代に技術面運用面からこの構想は実現できなかった。だがB-21が「バトルプレーン」として実用に耐えるのか、あるいはせっかくの構想も官僚主義の前に消えてしまうのか、いずれにせよ新型爆撃機の残存性に関係する話題だ。
歴史
爆撃機の武装では必ず何かが犠牲になってきた。武装で重量が増えれば、後続距離、速力、ペイロードが減る。防御装備も空力特性で悪影響を生み、操縦性や速力が代償となった。にもかかわらず各国の空軍は初期から爆撃機の武装を進めてきた。第一次大戦中にロンドンを恐怖に陥れたゴータ爆撃機は英戦闘機からの防御を各種装甲で試みた。爆撃機の自衛能力を求める動きで転換点になったのがマーティンB-10で機関銃砲塔3箇所で異なる角度での防御をめざした。B-10を編隊運用すれば、理論上は攻撃してくる戦闘機に対抗でき、防衛側に相当の損耗を生じさせるはずだった。
全盛期
爆撃機の自衛能力を求める動きの全盛期が大戦間で米国および規模は落ちるが英国の理論家は十分に武装した爆撃機が編隊を組めば迎撃戦闘機を駆逐できるとしていた。防御力主張派は敵地上空まで爆撃機が飛び、ペイロードを投下しながら敵の防空戦闘機が損耗していくと主張した。
米空軍はこの理論をドイツ上空の昼間爆撃に応用したが、結果は良好とはいえなかった。ドイツ戦闘機の高速飛行性能と操縦性に加え、対空砲火が爆撃機編隊をバラバラにし、1機ずつ爆撃機が撃破された。また米爆撃機の機関銃は威力が足りずドイツ戦闘機を駆逐できなかった。逆にドイツ機が20mm機関砲をお見舞いしてきた。結局、USAFは援護戦闘機無しでの爆撃機の昼間運用は断念し、夜間爆撃に切り替えた後、P-51マスタング等を長距離援護につけた。
とはいえ爆撃以外の任務についた爆撃機もある。ドイツは軽爆撃機を夜間戦闘機に転用した。Ju-88やDo-217も同様に投入した。英空軍もデハヴィランド・モスキート軽爆撃機を夜間戦闘機に投入した。
衰退
大戦直後の爆撃機は防御装備をそのまま残していた。B-36ピースメイカーは20mm機関砲を尾部砲塔に装備し、B-47やB-52も同様だった。USAFがB-36を防御戦闘機用の母機にする実験をしたことは有名だ。だがジェット時代に入ると爆撃機の多くで防御装備は断念された。B-58ハスラーでは皆無、XB-70ヴァルキリーでも同様だった。迎撃機が機銃からミサイルによる攻撃に切り替えるや、爆撃機に機銃を搭載しても意味がなくなった。敵防空網に対抗する装備を搭載した最後の機体がB-52ストラトフォートレスで20mmヴァルカン砲を尾部に積んだ。B-52がヴィエトナム人民軍空軍のMiG-21を2機、ラインバッカーII作戦で撃墜下との記録がある。最後のMiG撃墜記録は1972年4月のB-52だった。
構想の再出発
B-1Bに空対空ミサイル発射装備を搭載する構想があったが、ミサイル発射後のレーダー誘導方式は不明である。同様にB-1Bをミサイルトラックにする構想もあり、「重武装機」としてミサイル多数を搭載しても、他機のセンサーに頼る必要があった。B-1Bの高速力と大量ペイロードで理想的な機体になるはずだ。
B-21を空対空戦に最適化する構想に合理性があるのは兵装・センサーの開発状況を鑑みてのことだ。B-21のような大型機体なら空対空ミサイル多数を搭載しながらステルスを維持できる。強力な搭載センサーで空戦状況を把握しながら戦闘と指揮統制を同時にこなせる。敵空域侵入のためステルスを重視し、速力は二の次とした。他方で戦闘機は依然として高速飛行性能を追求している。ミサイルを発射すればステルスを捨てることになるのは発射でアスペクト比が変わるためで、ミサイルの存在そのものも理由となる。戦闘機ではこの問題に対し発射後は直ちに高速で退避することで対応している。B-21では別の対応が必要となり、超長距離ミサイルを敵の有効射程外から発射するのではないか。
まとめ
USAFが敵地深部への侵攻作戦をステルスだけに任せることに躊躇しているのは、大型機がステルス機でも昼間には姿を隠すことができないことに加え、センサー技術の高性能化が止まらないためだ。このため自機の防御能力の復活には一定の訴求力がある。さらに戦闘機の単価が大幅に上がっている中で、爆撃機が防衛側を損耗する構想に魅力が感じられているのは事実だ。ではB-21が敵戦闘機を撃破する場面が実現すれば、1972年以来のこととなり敵の狩人を逆に狩ることになる。■

Robert Farley, a frequent contributor to The National Interest, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government.

コメント:ドッグファイトを念頭に進化してきた戦闘機の形態がなくなるとは思いませんが、もともと小型機では全域ステルスは物理的に不可能なはずです。また長距離ミサイルによる視界外戦闘が中心になれば、大型機の活躍の範囲が増えるわけで、B-21が切り込み隊長として有望なプラットフォームになるのは当然とも言えるでしょう。

2019年9月15日日曜日

KC-46で新たな設計不良が見つかり、貨物人員の輸送ができない状態になっている

Aerospace Daily & Defense Report

USAF Identifies Critical New KC-46 Design Flaw

Sep 12, 2019Steve Trimble | Aerospace Daily & Defense Report
KC-46A: Paul Weatherman

空軍がKC-46A給油機の設計で欠陥の可能性を新たにみつけ、解決策が確立・実施されるまで同機による貨物・人員輸送を禁止している。
同機床面に組み込んだ貨物固定ロックが不意に外れる事案が運用評価テスト中に発生したと航空機動軍団(AMC)が発表した。
空軍とボーイングが解決策を模索しているとAMCは発表。
貨物ロックが勝手に外れると飛行中に貨物あるいは人員の位置が変わり、機体の重心まで変更する可能性がある。
これに対応して空軍は同機について第三種未解決事案カテゴリー1不良報告を発出したとAMCは述べている。カテゴリー1不良とはリスクが認識され人命あるいは重要貨物が危険となる事態を指す。
今年1月、空軍はカテゴリー1事案が2例未解決のままKC-46受領に合意していた。
ボーイングは空軍資金で設計変更を給油用ブームの作動部分で行い、A-10やF-16など小型機対応の感度を引き上げている。
他方でボーイングから遠隔視認装備(RVS)の設計変更提案が出ており、ブーム操作員が給油作業中に遭遇したディスプレイ映像の歪み問題の解決をめざしている。ボーイングはRVSの設計変更は自社負担で行うとしている。■


コメント:KC-46でボーイングは相当に苦労しており、それだけによい機体にしてもらいたいものですが、もともと同機は固定価格での契約形態であり、コスト超過分はボーイングが負担するのが基本となっています。ではその帳消しはどうなるのか。同機導入を表明しているのが日本だけなので日本向け機材の価格がどこまで上昇するのか、納税者としては気になるところですね。

2019年9月14日土曜日

劣勢なイラン軍の戦力だが、潜水艦部隊には注意が必要だ



America Can Thank North Korea For Iran's Capable and Growing Submarine Force

The U.S. Navy is on notice.
September 13, 2019  Topic: Security  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz  Tags: IranMilitaryTechnologyWorldNavySubmarinesA2/ad
キーポイント:イラン軍の戦力は米軍に及ばないが、潜水艦は要注意だ。
国とイラン間の緊張は高いまま、毎週のように外交面で非難の応酬が発生している。

直近では革命防衛隊のホセイン・サラミ少将が問題発言をし、米空母の「弱点」のため米軍はペルシア湾でイランに挑戦できないとイラン議会で明言した。似たような発言はイラン高官や国営報道からよく出ており、イラン軍の能力に揺るぎない信頼をおいているようだ。

だがイランの通常戦力にどこまで威力があり、米軍の攻勢を食い止める実力が本当にあるのか。

The National Interest ではこれまでイランの空軍、水上艦部隊にこの質問を投げかけてきた。今回はイランが世界第四位の戦力と自慢し通常戦力の中心たる潜水艦部隊を取り上げる。

イラン潜水艦戦力でまず目をひくのはその規模で、海軍戦力で突出している。運用可能な海防艦、フリゲート艦、駆逐艦が合計10隻を超えないのに対して潜水艦は34隻もある。大部分は小型艦あるいは「沿海域用」ディーゼル電気推進艦で20隻近くが国産のガディール級だがここに北朝鮮が建造したユーゴ級が加わる。ガディール級は小型だが攻撃能力は侮れない。533ミリ発射管をイランが運用するキロ級潜水艦同様に搭載している。ただし、ガディール級は2門、キロ級は6門だ。

イランがミニ潜水艦を中心に装備するのは同国の戦略目標を考えれば理屈に合う。イランには世界各地への兵力投射能力は不要だし、中東全域でも同様だ。逆にペルシア湾だけ、もっといえばホルムズ海峡を制圧すればよい。ディーゼル電気推進艦の航続距離が短いとはいえペルシア湾の大きさや深度からすれば十分であり、敵水上艦を待ち伏せすればよい。

最近に入りイランが国産潜水艦建造の幅を広げ始めた。新型ファテ級はガディール級とキロ級の中間となる排水量600トンで、533mm魚雷発射管に加え対艦巡航ミサイルを潜航したまま発射できると国営通信が伝えている。

イラン海軍で潜水艦部隊が最も充実している。湾岸地域でのイランの地政学面の動きを考えると、この流れは続きそうだ。本格的な交戦の場合にイラン海軍が米海軍と互角に戦う可能性は極めて低いが、潜水艦が接近阻止領域拒否(A2/AD)の先鋒となる、あるいはペルシア湾内で米軍に奇襲飽和作戦を仕掛ける場合の主役となりそうだ。■

Mark Episkopos is a frequent contributor to The National Interest and serves as research assistant at the Center for the National Interest. Mark is also a PhD student in History at American University. This article first appeared earlier this year.

2019年9月1日日曜日

人口減少、高齢化の韓国に未来はない(日本は大丈夫か)


Korea's Future Is Dying (Thanks to Demographics) 未来がない韓国(人口構成が原因)

South Korea's demographic decline could lead to a structural slowdown that puts a permanent brake on growth
人口減少が韓国の構造的減速につながり高成長は未来永劫に期待できなくなる
August 31, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: Korea Watch  Tags: South KoreaDemographicsPopulationEconomyNational Security

国の生存を脅かしているのは北朝鮮だけではない。共産主義体制の北と緊張緩和に走る一方で日本との関係を気まずくしている韓国だが人口減に向かい経済も減速を免れず、高成長は二度と実現しなくなる。.
韓国政策当局者に頭が痛いのがこの度発表された政府資料で出生率の低下で人口減が早ければ2020年から始まるとある。
前回2016年発表の予測では人口ピークは2023年とあった。
それが今年3月の資料では今年が人口ピークの51百万人で、最悪のシナリオでは2067年に1972年水準の34百万人になるとある。
65歳以上の老年人口が2065年に全人口の半分となる。これは中程度の成長シナリオでの話だが、世界有数の老人国となり当然軍事力でも足かせとなる。
対照的に移民に寛容な米国、カナダ、オーストラリアの老齢人口は全体の四分の一以下にすぎない。
韓国女性の出生数が減少し、女性の生涯平均生涯出産数は2018年に記録更新の0.98にまで低下した。これは日本の1.43より低く、人口維持に必要な2.1に遠く及ばない。
韓国の老齢人口比率は2017年で14パーセントと日本の半分程度だった。労働人口の15歳から64歳は73パーセントだったが、2065年にわずか46%に減る。これは中程度成長シナリオの場合だが同時期の日本では51%の予想だ。
日本と同様に高齢化が若年人口の重荷となる。2015年調査では年齢が20歳から44歳男子で58%が未婚で女性では48%が未婚だった。
韓国統計局の試算では労働人口100人が支える若年人口、老年人口は2017年の36.7人が2067年には120.2人となる。国民年齢の中央値は2017年の42歳が2067年に62.2歳となる。
子育て費用、若年層の失業率の高止まり、仕事を持つ女性の負担、受験競争、就職難が背景にあると専門家が指摘する。
韓国でも女性の晩婚化が見られるのは高度教育やキャリア形成を優先しているためだ。最新データでは2018年中に出産した女性の3割超が35歳以上だった。
またOECD加盟国中で男女間賃金格差が最大になっている韓国では女性がキャリアを求めても受けられる見返りはあまりにも少なく、およそ四分の一が「結婚、出産、子育て」のため退職している。
成長の鈍化
人口減でも一人あたり国内総生産に成長の余地が残るのは日本と同様だが、高齢化が新たな投資を鈍らせ生産性も伸びず、最終的にGDP成長が減じる。
政府の観点では拡大する老齢人口を少ない人口で支えるのが財政上の難題となる。これは社会福祉支出が増える一方、税収が減るのためだ。
現代研究所の予測では韓国経済の成長余力は現在の2.7パーセントが「早ければ2030年に」1パーセントまで低下する。
ムーディーズ投資サービスから韓国、日本両国の信用格付けの低下および経済成長の鈍化に注意喚起がでている。政府部門の借り入れが増える中、借り入れ余地が減り、労働人口の成長が鈍り高齢化が顕著となるのは2030年代だという。「借り入れ余地の不足が浮上するのは2030年代のことで政府の財政力が減少する」
韓国メディアは「新生児危機のほうが通貨リスクより深刻」と警鐘を鳴らしている。韓国政府は117兆ウォン(970億ドル)を2016年から2018年にかけ投入し各種施策で出生率引き上げを引き上げようとしてきた。.
それでも人口高齢化の食い止めは韓国政府に難題のままだ。「経済成長の余地を伸ばすには女性に働きやすい労働環境、移民流入の緩和、投資環境改善策として規制緩和や新規産業の育成が必要だ」と専門家は見る。
退職者の増加が脅威となる見方もある。「このままだと年金制度が持たない。現行制度の抜本的見直しが必要だ。移民受け入れもその一つだ」
韓国が大量難民を歓迎すると見る向きには昨年のイエメン難民事例を見れば甘い期待が吹き飛ぶだろう。
内戦を逃れたイエメン難民561名が済州島に到着した。2015年中に到達した難民が89万名のドイツとは比較もできない規模だ。
済州島という隔離された環境にもかかわらず韓国ではヒステリーともいうべき反応が生まれ、難民受け入れ拒否を求める大統領嘆願書に70万名が署名した。という。
とはいえ政府の取り組みで傾向は逆転はしそうにない。北欧型の支援策でも出生率回復の長期的効果は限定的と見る専門家もいる。
再統一で高齢化は止まらない
では南北統一が実現すればこの問題は解決されるのか。
国連統計はそう見ていない。北の出生率も低下を開始したとみられ、現在でさえ1.9で人口維持に必要な水準を下回るだ。
先行事例がドイツで統一後の旧東ドイツで0.8へ急降下したとの報告がある。その後回復したものの、最高の州でも1.6と人口維持に足る水準を下回っている。
南北統一が朝鮮半島で進んで出生率が安定しても「北の出生率が急上昇する兆しは皆無」と専門家は見る。
人口減の韓国では軍事面でも課題が生まれる。現状は625千名が北の120万に対峙して国土を防衛している。
軍務につける若年層人口が減少すれば韓国軍は現状の兵力維持が困難となり同盟国が負担増を強いられるかも知れない。米国は28千名を韓国に駐留させている。.
国際通貨基金の指針予測では韓国のGDP成長率は昨年の2.%が2019年は外需の低迷で2.6%になる。その他2%成長を予測するものもある。”
IMFは「潜在成長力が減速し、人口構成が不利な状況となり生産性が伸びないのは同国の構造面で弱みがあるため」と注記している。
アジア四位の経済規模を有する韓国にとって人口減少傾向の逆転は北朝鮮への対応や日本との関係修復よりも難易度が高い。ちなみに日本では人口減が始まっているので韓国当局者は遠くまで出かけなくても自国の将来を垣間見ることができるのだ

Anthony Fensom is an Australia-based freelance writer and consultant with more than a decade of experience in Asia-Pacific financial/media industries.

イランで発生したロケット打ち上げ場爆発事故にトランプ大統領外例のツィート投稿

Aerospace Daily & Defense Report

Trump Releases Image Of Failed Iranian Launch

Aug 30, 2019Jen DiMascio | Aerospace Daily & Defense Report
U.S. Government
ナルド・トランプ大統領がイラン北部のイマム・ホメイイニ宇宙センターのロケット打上げ施設で発生した事故直後の画像を8月30日に公表し、米側の関与を否定し、イラン側に原因究明を求めるメッセージを送った。
今回爆発したサフィール打上げ機(SLV)は2017年に小型衛星4基を低地球軌道に送った実績がある。爆発は8月29日に発生した。
「イラン国内セミナン第一打上げ基地で発生したサフィールSLV打ち上げ準備中の悲劇的な事故に米国は関与していない」と大統領はツイートし、「イラン側に事故原因究明の幸運を祈る」と述べている。.
大統領が公表した画像では打上げ施設北側の被害が甚大で、支援車両、ガントリータワー、移動式起立打ち上げ車両、トレーラーに被害が確認できる。

衛星運用に詳しい筋は画像の撮影時間から国家偵察局が運用するUSA-224衛星が事故現場上空にいたのではないかとする。2011年打上げのUSA-224衛星とはKH-11スパイ衛星といわれ、冷戦時にリアルタイム映像を撮影する目的で開発され、現在はロッキード・マーティンが製造している。■

2019年8月28日水曜日

日本向けSM-3ブロックIIAミサイル売却案件を米国防安全保障協力庁が公表

Japan – Standard Missile-3 (SM-3) Block IIA Missiles


Media/Public Contact: 
pm-cpa@state.gov

国軍事装備販売として成立可能性のある日本政府向け73本上限のスタンダードミサイル-3(SM-3)ブロックIIA総額32.95億ドルの案件を国務省が承認する決定をした。国防安全保障協力庁が8月27日に本件を議会に通知する。
73本上限でスタンダードミサイル(SM-3)ブロックIIAミサイル購入の要望が日本政府から出ている。売却はMK29キャニスターを含み、梱包・取り扱い・貯蔵・輸送(PHS&T)キットも合わせて導入し、特殊任務空輸ミッション10回の費用も負担する。米政府と契約企業が技術支援・兵站業務を提供する。
今回提案の案件は英国の外交政策並びに国家安全保障に資するもので主要同盟国の安全保障状況を引き上げるクカあり、アジア太平洋地区の政治経済面での安定発展に資する。日本の防衛力整備は米国の国益上で死活的な意味を有する。
今回の提案案件が実現すれば日本の弾道ミサイル防衛能力が向上し、日本本土に加え日本駐留米軍将兵の防衛に役立つ。日本には追加ミサイルの運用は技術的に何ら支障はない。
今回の装備品販売で地域内の軍事力均衡が崩れることはない。
SM-3ブロックIIAの主契約企業はレイセオン・ミサイルシステムズ(アリゾナ州ツーソン)である。MK29キャニスターおよびPHS&Tの主契約企業はBAEシステムズ(ミネソタ州ミネアポリス)で、今回の売却提案で裏契約はない。
売却の実施には米政府および主契約企業代表者による技術審査、支援、実施状況視察のための来日がおよそ5年に渡り毎年実施される。
今回の売却で米国防の即応体制に悪影響は発生しない。

ここで示した売却の可能性のある案件公示は芳の定めにより必要とされたものだが売却が成立しているわけではない。■