2023年8月15日火曜日

中国が輸送機Y-20をタンカーに改装したことへ注目。これまで空中給油を重視してこなかったPLAが航空優勢を南シナ海さらにその先に広げるとどうなるか。

 中国軍はYU-20タンカーとJ-15空母艦載戦闘機による太平洋上空での空中給油能力を実証した


国人民解放軍空軍はY-20貨物機をタンカーに改造している。


中国人民解放軍(PLA)空軍のYU-20タンカー機とPLA海軍のJ-15空母艦載戦闘機が、初の空中給油訓練を実施した。専門家は水曜日、同演習は中国人民解放軍各軍間の体系的な統合を示し、中国の航空母艦の能力を高めるだろう、と述べた。


太平洋におけるアメリカと連合軍の戦術的航空優勢への影響


この開発が今後数年で成熟し、より大規模なタンカー・フリートに拡大すれば、太平洋における米国の大規模な航空優勢を侵食する可能性がある。


前方配置された米海軍強襲揚陸艦は、F-35B15機を搭載でき、空母に搭載されたF-35Cもあることから、米海軍と同盟国は、中国による台湾への揚陸攻撃に対し、対抗、破壊、あるいは完全阻止する態勢を整えているとの見方は、非現実的とはいえない。アメリカが攻撃型潜水艦の高度な艦隊を使用し、日本と韓国もF-35部隊を集結させることができれば、これは特に当てはまる。


日本は350億ドルという巨額でF-35を購入し、シンガポールと韓国もF-35を運用している。したがって、米海軍が前方配置されれば、米国と同盟国がすぐに航空優勢を確立できる可能性が高い。ネットワーク化された米海軍と同盟国の第5世代航空機は、空中で中国海軍と空軍を圧倒するのに十分な位置にあると思われる。中国のJ-20は陸上からしか発進できず、J-31空母発進の第5世代航空機は十分な数が存在しない。そのため、水陸両用攻撃で十分な航空支援を確立するのは難しい。米海軍は、空母の二重運用や、太平洋戦域での多国間戦闘訓練や準備など、太平洋における前方プレゼンスを高め続けている。


しかし、中国が太平洋戦域における航空戦力不足を補うことに成功した場合、こうした背景がすべて怪しくなる。Y-20は以前から存在していたが、タンカー改造はここ数年だ。このことが意味するのは、タンカー部隊が急成長し、空母運用される第5世代J-31が大量に出現すれば、PLAは太平洋における米国と同盟国の航空優勢への挑戦を提示できるかもしれない。 具体的には、十分な数が存在すると思われるJ-20陸上発進型第5世代機が航続距離を倍増させ、洋上でアメリカや同盟国の航空戦力に挑戦すれば、航空優勢は一変する可能性がある。確かに、中国がこの能力を整備するには時間がかかるだろう。しかし、PLAは民軍融合と産業基盤により、非常に迅速に兵器プラットフォームを製造することで知られている。従って、中国の進歩次第では、米国の航空優位は縮まるか、少なくとも想定より早く脅威にさらされることになるかもしれない。 


これは、中国のJ-20やJ-31が本当に米国の第5世代航空機に対抗できる能力を持つ場合にのみ言えることで、まだ知られていないし、完全に確立されているわけでもない。とはいえ、中国の新たなタンカーや戦闘機の航続距離は、太平洋における戦術的・戦略的状況や、この地域の全体的なパワーバランスに大きな影響を与える可能性があるため、国防総省は非常に深刻に受け止めている。


Y-20のようなタンカーは、陸上型J-20、空母運用J-31、陸上および空母から運用される第4世代航空機の到達距離を倍増させる可能性がある。


Y-20貨物機は中国のT99戦車も輸送できる

Y-20の登場により、人民解放軍は間もなく、アップグレードされたY-20貨物機で実物大の中国主力戦車を空輸できるようになる。


中国政府が支援するGlobal Timesによれば、WS-20エンジンを搭載した新しいY-20は、大推力で運用でき、より短い滑走路で離着陸できるという。Y-20が部隊、装備品、物資、武器、さらには戦車のような大型プラットフォーム配備に役立つ戦術的なシナリオが増えることは間違いない。


国産エンジンを搭載したY-20は、主戦車のような重装備を搭載しながら、燃料補給のために中継飛行場に立ち寄ることなく、長距離飛行や大陸間飛行が可能になる」と、数年前の『グローバル・タイムズ』の報道は述べている。


この新型機は、中国のT99主力戦車を空輸できると伝えられている。同機は、オーストリアで開催されるAirpower22航空ショーで登場する。


マルチドメインな中国の脅威

Y-20は戦車など大殺傷力のある陸上兵力を輸送できるだけでなく、中国紙はPLAがプラットフォームを「収束」させる能力について言及している。


初の空中給油訓練では、J-15戦闘機が給油プローブをYU-20空中給油機のドローグに正確に接続した。訓練は海上で行われたこと以外、場所は明らかにされていない。


さらにもうひとつ、戦術的・戦略的脅威となりうるのは、PLAが米軍のマルチ・ドメイン作戦能力をコピーし、複製しているように見えることだ。


長年にわたり、中国軍は米軍の技術をコピーしたり盗んだりするだけでなく、マルチドメイン訓練、「ネットワーク化」された共同戦闘準備、空と陸の作戦シナジーなどを通じて、米軍の戦術を模倣しているように見える。PLAがこのネットワーキングをどの程度進化させ、米国の全領域統合指揮統制の取り組みにどの程度匹敵させることができるのか、はっきりしないが、この傾向は気になるし、かなり目につく。議会メンバーも同様に気づいている。軍事・戦術空陸委員会のメンバーであるロブ・ウィットマン議員は、進行中の超党派の中国脅威委員会に関する最近のディスカッションで本誌に語った。

 

米陸軍のM1Abrams戦車は船で海外に展開する必要がある。大型戦車の航空配備は、攻撃のスケジュールを飛躍的に短縮し、重機械化部隊の攻撃時間を大幅に短縮すできる。


米陸軍が迅速な反応展開の可能性に重きを置いているのは、遠征戦を最適化する能力とも言えるが、エイブラムスのような重車両が単純に空路で移動できないというロジスティクス上の現実が大きく影響している。この事情は、陸軍が空中投下可能な機動保護火力軽戦車車両の開発を急ピッチで進めている理由を説明するのに役立つ。主要な脅威や何らかの大規模な陸上戦がすぐに緊急に必要になった場合、装甲部隊を戦闘に投入することが即座に優先事項となるだろう。■


Chinese YU-20 Tanker Refuels Carrier-Based J-15, Massively Increases Pacific Threat - Warrior Maven: Center for Military Modernization

The Chinese military has now demonstrated aerial refueling in waters over the Pacific with its YU-20 Tanker and a J-15 carrier-based fighter jet

By Kris Osborn, President, Center for Military Modernization



Kris Osborn is the President of Warrior Maven – Center for Military Modernization. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master's Degree in Comparative Literature from Columbia University.


ロシアが勝てない理由に軍内部の汚職まん延があった。プーチンはウクライナの腐敗を侵攻理由にあげていたのだが。ただし、腐敗はウクライナでも深刻な問題。

 2022年2月21日、ウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ侵攻決断の動機に汚職腐敗を挙げた

ーチンは侵攻前夜のテレビ演説でウクライナの腐敗に苦言を呈し、ウクライナの「腐敗防止国家機関、国家反腐敗局、反腐敗専門検察庁、反腐敗高等裁判所」による反腐敗行動がもたらす危険性を指摘し、各機関は米国の操り人形だと主張した。

ウクライナ活動家が主張しているように、ウクライナの汚職撲滅の進展がプーチンを恐れさせている。それは理解できる。ウクライナの汚職との闘いは、プーチンとの闘いと同じくらい重要かもしれない。

汚職と軍の敗北の関係

ウクライナは強大なロシアの属国として発展してきたが、ロシアの腐敗した影響力で抑えられていた。親ロシア派のオリガルヒのネットワークがウクライナ社会で比類ない影響力を握っていた。クレムリンがこれらのオリガルヒを支配することで、モスクワは政府に影響を与え、親ロシア政策を推進できた。

プーチンのウクライナに対する腐敗した支配力は、2014年のマイダン革命で弱まり始めた。マイダン革命は、滑稽なほど腐敗したヴィクトル・ヤヌコヴィッチを打倒し、大統領官邸は、ライオンの剥製、海賊船が浮かぶレストラン、純金のパンなど、横領による不条理な収益で埋め尽くされた姿が暴露サれた。それ以来、ウクライナは汚職との闘いで実質的な進歩を遂げ、EUとNATOへの加盟を目指すウクライナにとって極めて重要な取り組みである。

プーチンは汚職撲滅の努力を、ロシアの影響力への脅威とみなした。支配力を維持するため、プーチンは軍事力に頼った。2014年のマイダン革命後、「ネオナチ」によるクーデターという架空の主張を受け、プーチンはクリミアとウクライナ東部にロシアの特殊部隊を送り込んだ。そして2022年、ロシアはウクライナに全面侵攻し、民主的に選出されたウクライナ政府を倒そうとした。

ロシアの侵攻は、兵站、戦略のミス、さらに一般的な無能さにより阻止され、押し戻された。しかし、問題の根底には、ロシアがウクライナを感染させ支配していたのと同じ病、すなわち腐敗があった。2022年、トランスペアレンシー・インターナショナルは、「ロシアの国防部門は、国防機関の政策、予算、活動、買収に対する外部からの監視が極めて限定的であるため、腐敗のリスクが高い」と指摘した。ロシアは2022年に、GDPの4.3%にあたる620億ドルを軍事費に費やした。しかし、さまざまなロシア政府関係者や専門家は、国防予算の少なくとも20%、場合によっては50%が内部窃盗や汚職により失われていると見積もっている。ボリス・エリツィン政権下の元ロシア検事総長ユーリー・スクラトフは、軍部はロシア政府機構で最も腐敗していると主張している。

トップダウンの問題

ウクライナ軍部の汚職も伝統的に非常に多いが、戦時中に重要な物資を盗み出す本能は、家庭や家族を守る軍隊とは異なるようだ。加えて、ウクライナは米国やその同盟国から提供された武器や弾薬で戦うことが多くなっており、ウクライナの防衛産業基盤における腐敗の潜在的な影響は緩和されている。

ロシアの軍事調達は特に腐敗しやすい。例えば、巡洋艦ピョートル大帝のスキャンダルでは、艦の修理に、数年にわたって数百万ドルの契約を多数獲得した偽の船舶修理工場が関与していたが、実際には1隻も修理していなかった。同様に、ロシアの軍用無線機「アザート」の調達も腐敗の犠牲となったようで、安価な中国製代替部品が使われ、180億ルーブルの予算の3分の1が横領で失われている。ロシア軍は、完全に暗号化された最新の無線機の代わりに、安価な無線機やトランシーバーでやりくりしなければならないことが多く、ウクライナ軍はこれを盗聴し砲撃のための位置追跡に悪用している。

しかし、汚職は調達だけではない。横領や接待の文化は戦場にまで浸透している。例えば、ロシアの少将が人工衛星購入のため2500万ドルを横領したように、高級将校は軍事予算を盗む。同様に、ロシアの大佐がT-90戦車のエンジンを盗んで逮捕された。補給将校は軍用品を質入れする。何千着もの防護服がアビト(ロシアのeBay)で売られていた。下級将校は部隊を建設作業に貸し出し、部下の戦闘ボーナスを懐に入れる。その代わり、最下層の徴兵兵は地面に固定されていない物資を売る。例えば、2022年の侵攻前夜、キーウに向かう高速道路の道路脇に戦車やトラックが立ち並ぶ中、兵士たちは車両燃料を闇市場で売り払っていた。

腐敗の果実

2022年、ロシア兵がウクライナに侵入するとすぐ、この腐敗の果実があらわになった。整備不良の車両や戦車(重要な防護装甲を失ったものもある)は故障や燃料切れで大量に破壊された。歩兵の多くは防護服を着用しておらず、防弾チョッキはプレートがくり抜かれて売られていた。一般兵は防寒着が足りず、兵士多数が賞味期限を7年も過ぎた食料を受け取った。数え切れないほどの兵士たちが、自分のために物資や軍服を購入し、防護服や医薬品、銃の照準器までオンラインでクラウドソーシングすることになった。侵攻作戦は、汚職による死に見舞われた。ワグネル・グループの元チーフであるエフゲニー・プリゴージンのような強硬なナショナリストでさえ、国防部門の腐敗がもたらす破滅的な影響に声を荒げざるを得なくなっている。

しかし、汚職はプーチンや他の意思決定者たちからほとんど隠されていたため、二重のダメージを受けた。プーチンが軍幹部の不正を知っていたのは確かだが、彼の生意気な行動と機密解除されたアメリカの情報に基づいて、彼は軍部における接待の深さと広さを知らなかったようだ。そのため、プーチンと彼のアドバイザーたちは、軍の能力について基本的に不正確で誇張されたイメージを与えられ、迅速な勝利が不可能な軍隊でウクライナに侵攻し、さらに、軍を複数軸に分散させ、最初の激しい砲撃を見送るという失態を犯した。孫子の言葉とは裏腹に、ロシアは敵も自分も知らなかったのだ。

汚職の一掃へ

ウクライナにおけるロシアの戦争は、汚職の、汚職による、汚職のためのものだ。プーチンの腐敗を減退させた軍隊は、ますます西側に向かいつつあるウクライナに対するクレムリンの腐敗した影響力を守るため戦っている。ウクライナも二正面戦争を戦っている。ロシア軍を撃退すると同時に、ウクライナは自国の腐敗したオリガルヒや政府高官の活動に対処している。ウクライナ側は、この面で重要な進展を遂げている(失策も犯している)。この1年で、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は多数の汚職官僚を逮捕し、親ロシア派オリガルヒ多数を国外追放または制圧した。

しかし、まだ多くが手つかずだ。この戦争に勝つためには、ウクライナは汚職と軍事の両方の戦場で勝利しなければならない。だからこそ、ワシントンとその同盟国は、キーウの汚職撲滅を支援することが、援助と西側の多国籍同盟への加盟の不可欠の前提条件となる。西側諸国は、軍事・財政援助を継続的な腐敗防止改革と結びつけなければならないし、EUはウクライナ加盟に透明性と良好な統治を条件とし続けなければならない。戦場でも密室でも、ウクライナはロシアとその深謀遠慮から解放されなければならない。■

The Corruption War: Russia Is Losing the War for the Same Reason It Started It - 19FortyFive

By

Elaine Dezenski and Ted Shepherd


Author Expertise 

Elaine Dezenski is senior director and head of the Center on Economic and Financial Power (CEFP) at the Foundation for Defense of Democracies (FDD) and former acting and deputy assistant secretary for policy at the Department of Homeland Security.

Ted Shepherd is a CEFP research intern and a rising junior at Yale University majoring in History and Global Affairs.


2023年8月14日月曜日

A-10がウクライナで活躍する余地は本当にあるのだろうか。

 米軍、地上軍兵士、議会によるA-10への崇敬の念はとどまるところを知らないようだ。この近接航空支援機は戦闘実績で有名になった

チタン製の外皮を持つ「空飛ぶ戦車」が、地上砲火を吸収し、損傷しても飛び続けることができることに疑問の余地はない。 本誌はかつて、片翼だけのA-10で生還した湾岸戦争の有名なパイロットと話したことがある。機体は機能したまま、小さな奇跡と呼べるような形で帰還した。パイロットは生き延びた。

A-10へのロビー活動や支持はとどまるところを知らないようだが、空軍はもう何年も前から、CAS任務にはF-35のような高速固定翼機を優先し、A-10を「段階的に廃止」しようとしてきた。なぜか? F-35は小火器による攻撃を吸収し、地上部隊のすぐ近くを低速飛行して敵を攻撃できるだろうか?おそらく、大規模で効果的なCAS任務を遂行する必要はないだろう。

空軍がこのアイデアを採用した理由のひとつは、新型対空兵器の登場によってA-10の効果が薄れる可能性があるからではないか?

A-10はウクライナに行くべきか、それとも新型対空兵器の前に脆弱になるのか?

A-10は脆弱になっているか?

ロシア軍が「スティンガー」のような肩から発射する対空兵器を何発保有しているかは不明であり、A-10は地上戦エリアに接近し低速で飛行できる。

つまりA-10は、遠距離防空が届きにくい地域、たとえば遠すぎる地域や近接戦闘の上空を攻撃する能力を持っている可能性がある。

A-10は30ミリ砲とチタン製の外皮でほとんどホバリングでき、地上からの砲火の中を飛ぶことができる。A-10には冗長性が組み込まれており、一部のシステムが破壊されたり使用不能になっても飛行を続けることができる。例えば、A-10には電子機器、エイビオニクス、冷却システムが追加されており、機体が損傷を受けても機能を継続できるようになっている。

ロシアは、S-400やS-500のような高度な防空ミサイルを運用し、遠距離から戦闘機を狙うことで知られている。

しかし、前進する地上部隊に近接航空支援を提供する、300フィート(約1.5メートル)をゆっくり飛行するA-10を標的にできるだろうか?S-400はドローン、ヘリコプター、戦闘機を30kmの距離まで破壊することができ、A-10の攻撃もできるかもしれない。ロシアのS-400とS-500の多くは移動式発射台に搭載されており、進撃する地上部隊を支援するために危険度の高い地域に移動できる。

このことを考えると、A-10はロシアの防空施設が集中していない地域では非常に有効である可能性が高く、したがって同機はロシアの防空施設の前に過度に脆弱であるのが証明されるかもしれない。

さらに、ウクライナ、ロシア双方が制空権を確保していないため、A-10がリスクの高い地域で地上部隊を攻撃するのを目撃された場合、ロシアの戦闘機に対し脆弱になる可能性があることも複雑な要因だ。

A-10はチタン製の外殻を持ち、「空飛ぶ戦車」の別称があるが、地上火器や対空兵器の進歩を考えれば、脆弱になっているかもしれない。例えば、MANPAD肩撃ち対空兵器やRPGのような見通し線上の兵器は、A-10を脅かすのに十分かもしれない。

基本的に、今日の兵器庫には小火器以外にもA-10を攻撃できる兵器がたくさんあり、単純に10年以上前に比べて航空機が脆弱になったという事情もある。

米空軍が長年、A-10の分離・退役を提唱し、代わりに高速で機動性に優れたF-35を近接航空支援任務に使用するよう主張してきたのは、こうした要因によるものだろう。

これらすべての変数を考慮すると、ウクライナにA-10を派遣することは有用であり、多少なりとも価値があるように思える。しかし、多くの複雑な要因があるため、ロシアの防空や近隣の戦闘機がない状況でないと有効性が限定されるかもしれない。

この有名な「空飛ぶ戦車」が敵の攻撃から救ってくれたと感謝する地上部隊から、A-10は何世代にもわたり尊敬され、大切にされ、讃えられてきた。この機体の将来が何十年にもわたる議論の対象となってきたが、その戦闘性能について疑問の余地はほぼない。

ウォーソッグは、敵砲火に直面している地上部隊を支援するために、ほとんど「ホバリング」状態で低速飛行できることで知られている。機首の真下に30ミリ砲を装備し、機体前方から真正面から攻撃できるため、その殺傷能力は大幅に向上している。

空軍の言い分は正しいのか?CASにF-35は投入可能なのか?

同機の効果を説明する要素はいくつかあるが、その大きな理由は機体の生存性にある。強力に強化されたチタン製外皮を持つA-10は、小火器攻撃を吸収し、作戦効果を維持できるよう作られている。電子機器、エンジン、武器などのシステムが二重化されており、敵攻撃で重要なシステムが破壊されても、機体は飛行を続けることができる。

あるA-10パイロットは、筆者とのディスカッションで詳しく説明し、A-10は敵の攻撃によってデジタル・ディスプレイや照準システムが破壊されても飛行し、攻撃することさえできると説明した。

「コンピューターや計算機、照準ポッド、ヘッドアップディスプレイをすべて失っても、劣化したシステムで機体を目標に向け、撃つことができる。我々は実際にその訓練を受けている」と、元A-10パイロットのライアン・ヘイデン中佐(第23戦闘機群副隊長、ムーディ基地)は、数年前のインタビューで本誌に語っている。

しかし、冗長性と生存性は、航空機がその作戦上の殺傷力を維持できる程度に重要であり、ヘイデンは30ミリ砲を中心に説明した。

「30ミリ砲には7本の砲身がある。航空機の発射方法に合わせ中央に配置されている。砲身は中心線に沿っている。機体を地面に向けて撃つことができる。空対地攻撃用に設計されている」とヘイデンは説明した。

装弾数1150発の30ミリ砲は、1秒間に70発を発射できる。

A-10は、GPS誘導の統合直接攻撃弾を含む武器をフル装備している。GBU38、GBU31、GBU54、Mk82、Mk84、AGM-65、AIM-9サイドワインダー・ミサイルやロケット弾のほか、照明弾、ジャマー・ポッド、その他の防護措置も搭載している。

同機は16,000ポンドの各種兵器を搭載することができ、8発は主翼の下、3発は胴体の下二搭載できる。照準、航法、精度に関して言えば、ミッション・コンピューティングの強化は、A-10プラットフォーム用の新しい兵器システムを可能にすることによって、A-10の戦闘性能をアップグレードする上で極めて重要であることが証明される可能性がある。

A-10 to Ukraine? Is the Famous A-10 Warthog Becoming Obsolete Due to New Weapons? - Warrior Maven: Center for Military Modernization

by Kris Osborn, President, Center for Military Modernization

Kris Osborn is the Military Affairs Editor of 19FortyFive and President of Warrior Maven – Center for Military Modernization. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master’s Degree in Comparative Literature from Columbia University.  This was originally posted on 19FortyFive.com as part of a syndication agreement to publish their content. You can find more of their content at 19FortyFive.com.


2023年8月13日日曜日

ウクライナ向けM1A1エイブラムズ第一陣の改修が完了し、秋までに現地搬送の見通し

 The Pentagon has approved delivery of M1A1 Abrams tanks to Ukraine.

USMC


米国がウクライナに供与を約束したM1A1エイブラムス主力戦車31両が改修完了し、引渡し準備が整った




国がウクライナに提供するエイブラムス戦車の最初の車両は週末に出荷が承認され、秋口までにウクライナに到着する予定であると、陸軍調達チーフのダグ・ブッシュが8月7日月曜日に記者団に語った。


「最後の一式は、週末に米国政府か生産施設に正式に受け入れられた。とブッシュ氏。ウクライナに送られる31両のエイブラムス戦車(旧型M1A1型)は、数カ月前から改修と出荷準備が進められていた。


戦車の準備は整ったとはいえ、「弾薬、予備部品、燃料設備、修理設備など、戦車に付随するすべてのものとともに」ウクライナに送られなければならない。「つまり、戦車だけではない」。


エイブラムス戦車を 秋までに部隊レベルに投入するのが目標だ、とブッシュは言う。具体的な時期や月までは明言しなかった。先月、ポリティコは、戦車は9月に戦場に到着するだろうと報じていた。


ブッシュは、ポリティコ記事に言及することなく、「これまで言われてきたことは、今でも正確だと思う。そのスケジュールは間違いなく予定通りだ」。


ジョー・バイデン大統領は1月にエイブラムスをウクライナに引き渡すことを承認した。別の記者会見で、国防総省の最高報道官は、ウクライナが劣化ウラン弾も手に入れるかどうかで決定事項はないと述べた。

「現時点では、戦車弾薬のいかなる種類に関しても、提供するものも発表するものもない」とパット・ライダー空軍准将は語った。


イギリス政府はチャレンジャー2戦車用に劣化ウラン(DU)を含む120mm戦車弾薬をウクライナに送っているのを3月明らかにした。


エイブラムス戦車はまだ到着していないが、ウクライナはチャレンジャーと寄贈されたレオパルド2戦車、そしてブラッドレー戦闘車を使用している。「私たちはレオパルド戦車を贈り物としてもらいました。「実際、非常に近代的な兵器を搭載した非常に強力なマシンだ。私たちの隊列を攻撃するはずだった戦車を破壊した近代的な光学機器だ。

「われわれが受け取る西側の装備は、保有中のソ連時代装備品より......一桁高い」と彼は言った。■


Ukraine Situation Report: M1A1 Abrams Tanks Approved For Shipment

BYHOWARD ALTMAN|PUBLISHED AUG 7, 2023 9:05 PM EDT

THE WAR ZONE


2023年8月12日土曜日

台湾危機の際に参戦のメリットデメリットを冷静に考えるとこうなる....という退役米陸軍中佐の主張を御覧ください。

 


 2024年の台湾総統候補の頼清徳副総統が土曜日に訪米し、アメリカ政府高官と会談する。 中国はこの訪問を「灰色のサイが突進してくるようなものだ」と警告している。中国では、この比喩を使うのは大きな明白な脅威を示すときだ。 

 このような言葉が示すように、米中間の緊張は緊張したままである。北京の将来の戦闘準備は加速し続けており、ワシントンは中国との戦争の是非を熟考しなければならない。

 アメリカの議会や大統領にとって、通常戦争をするという決断は、最も悲惨な状況、つまり、アメリカが攻撃を受けたか、差し迫った攻撃を受ける恐れがあり、紛争を解決するための外交的・平和的手段がすべて尽きた場合にのみ下されるべき、ということが信条であるはずだ。わが国、国民、同盟国に対する直接攻撃以外のいかなる状況においても、米国はそのような決定を、国の安全、存続可能性、繁栄を確保するために設けられた最も厳格な基準に照らして判断すべきである。


台湾 戦争の選択か拒否の決断に影響を与える基礎知識

立法府と行政府は、戦争を選択する前に満たすべき要素がある。これらの譲れない基準は明白であるべきだが、過去数十年間のワシントンの意思決定はそうではないことを示している。

 第一に、米指導部は、現代において互角の国力を有する国やそれに近い相手との戦争には犠牲が伴うことを理解しなければならない。米国は軍服を着た男女と国防資産の何割かを失うことになり、経済への影響も大きくなる。米国が勝利する最良のシナリオであっても、すべてのカテゴリーで回復への道のりは不確実で痛みを伴うだろう。指導部は、米国が敗北する可能性もあることを認識しなければならない。

 第二に、指導部は、米国が戦争を選択しなかった場合と比較して、戦争をすることが状況を改善する可能性があるかどうか冷静に計算しなければならない。この基本評価を怠ることこそ、第二次世界大戦以降、米政府が選択した戦争における最大の失敗のひとつである。

 過去半世紀、アメリカは、戦うコストと交戦しないコストを天秤にかけることなく、戦争を選択してきた。ベトナム戦争、イラクの自由作戦、20年にわたるアフガニスタンでの大失敗、2011年のリビア攻撃、2014年のシリア侵攻、イエメンとの戦争におけるサウジアラビアへの支援、アフリカ大陸での永続的な軍事行動などである。

 こうした紛争はいずれもワシントンに強制されたものではない。すべて自ら選んだことであり、米国が被った代償は天文学的である。その恩恵は微々たるものであり、あるいはまったくない。

 しかし、これらの選択した戦争による人的・経済的コストは高いが、指導部が賢明でない中国との戦争を選択した場合、米国が被る可能性のある結果とは比べものにならない。


戦争拒否のコスト

多くの識者やアナリストは、戦わないことのコストは、戦うことを拒否するコストよりも大きいと指摘している。その理由は、理論的なもので、実現の可能性は低い。しかし、米国と西側世界にとって不干渉のコストに関する議論のいくつかは、真正であり、取り上げる価値がある。そのひとつは、世界経済への影響は深刻で、単なる不況を超えて、新たな恐慌をもたらすというものだ。筆者に言わせれば、その結果はあり得ることで、単なる可能性ではない。

 シタデルの創設者でヘッジファンドの億万長者ケン・グリフィンは昨年、CNBCの取材に対し、米国が台湾製半導体チップへのアクセスを失った場合、それが戦争によるものであれ、その他の混乱によるものであれ、「米国のGDPへの打撃はおそらく5%から10%という桁になるだろう。即座に大恐慌になる」。ジェームズ・クレバリー英外相は、台湾海峡をめぐる戦争は「日経アジアによれば、2兆6000億ドル相当の世界貿易を破壊するだろう」と警告した。米国が戦おうが戦うまいが、中国と台湾の間で戦争が起きれば、それは現実に起こりうる。

 アメリカが参戦しないもう一つの代償としてよく言われるのは、中国に不沈空母を渡すことになり、北京はより遠く太平洋にまで力を及ぼすことができるようになるということだ。一方、アメリカの信用は失墜する。軍事的には、中国が台湾を領有することは確かに戦術的メリットはあるが、戦略的な決定力はない。中国軍が太平洋におよそ100マイル進むだけで、アメリカ西海岸からはまだ6,699マイルも離れている。

 これでアメリカの信頼が失われるという主張は弱々しい。日本、韓国、オーストラリアなど同盟国とは異なり、アメリカは台湾と相互防衛条約を結んでいない。破壊的な戦争から手を引くことは、ワシントンの約束を破ることにはならない。

 戦いから手を引くことで、米国は軍事力を完全に維持できる。中国軍は軍事力の大幅な破壊を被り、修復に数十年かかるだろう。中国軍はインド太平洋全域で米国よりはるかに弱いままだ。戦争を辞退する「コスト」のひとつは、アメリカの国家安全保障が中国と対照的に強化されることである。条約相手国に対するアメリカの強さの信頼性は、低下するどころか高まるだろう。

 中国が台湾を攻撃した場合の世界経済秩序への影響は深刻で、専門家が警告しているように最悪になる可能性がある。しかし、アメリカの軍事介入を主張する人たちがほとんど誰も取り上げたがらない厳しい現実は、戦いを選択することで、アメリカは経済的損失と国家安全保障能力の低下を同時に被るということである。このような二重損失から立ち直ることはできないかもしれない。


戦闘を選択した場合のコスト

台湾をめぐって中国と戦う選択することを主張する人々の多くは、アメリカの全面介入によって中国の乗っ取りが防げる可能性が高いことを示す数多くのウォーゲーム・シミュレーションを指摘する。彼らは、いわゆる勝利でさえ、いかなる利益よりはるかに高い代償を伴うことを無視しすぎている。戦略国際問題研究所CSISは1月、中国と台湾の間で台湾海峡戦争が起こり、アメリカが台湾側に参戦した場合のコンピューターシミュレーションを24回繰り返した結果を発表した。その結果は悲痛なものだった。

 中国が決定的な勝利を収めたケースはなかった。純粋にスコアボードだけを見れば、ワシントンが台北のために戦うことを政策として掲げるべきだという考えを裏付けるものだと見るする人もいるかもしれない。しかし、防衛に成功したことで米国が被った代償は破滅的だった。うち18回で、アメリカは平均484機の戦闘機、14隻の軍艦(少なくとも2隻の精鋭空母を含む)、数万人のアメリカ軍人を失った。この結果でさえも、実際の戦争では通用しないかもしれない仮定に基づいている。

 CSISの研究によれば、中国の成功を防ぐには、米国が「中国の防衛圏外から中国艦隊を迅速かつ集団的に攻撃できる」ことが前提となっている。しかし、この研究が別に指摘しているように、アメリカは主要攻撃ミサイルを「1週間以内に」使い果たしてしまう。もし中国が数カ月間戦闘を維持できる弾薬や軍需物資を備蓄していれば、アメリカはさらに高い損害を被り、中国人民解放軍の作戦の妨害はできなくなるだろう。中国は成功するかもしれない。

 かけがえのない甚大な損失を被りながら、アメリカが中国の勝利を防げないという結果は、縁の下の力持ち的な可能性からはほど遠い。それはアメリカの威信に深刻な損失を与え、世界の他の場所でアメリカの利益を守る能力に深刻なダメージを与えるだろう。先に述べた中国の攻撃による経済的影響も有効である。

 ここで、中国と台湾の戦争に介入した場合のアメリカのコストを計算してみよう。

 米国の軍事力は著しく低下し、その回復には数十年と数兆ドルを要するだろう。最も訓練され、経験豊かな数千人の空軍兵士、海兵隊員、海軍隊員、兵士が失われ、補充に何世代もかかるだろう。米国経済は深刻な恐慌に陥るだろう。

 米国が中国による台湾征服の阻止に成功すれば、その代償は大きい。中国が勝利すれば、アメリカはさらに、同盟国や敵対国の間で深刻な評判の失墜を被る。歴史が示すように、大国がこのような深刻な軍事的・経済的損失を被った場合、完全に立ち直ることはめったにない。

 戦争に保証や予測はない。ロシア・ウクライナ戦争を見るまでもない。しかし、最先端の計算ツールを使い、米中戦争で起こりうる結果の範囲を合理的に評価すれば、アメリカが北京と戦うことを選択するリスクは、どのようなシナリオでも高すぎるとわかる。したがって、いかなる賢明な評価によっても、アメリカは台湾のために中国と戦争すべきではない。


賢明な選択のメリット

現在、米国政府にとって最も賢明な行動は、海峡の両岸、そして北京とワシントンの間で、現状維持を支持することである。戦略的曖昧さは、何十年もの間、米国と台湾双方の利益に貢献し、台湾がインド太平洋における民主主義の砦となり、経済大国となることを可能にしてきた。台湾国民の多数は完全独立を望んでいるが、大多数は単に、自分たちの好きなように生活し、経済的利益を増進するため放っておかれるよう望んでいるだけだ。

 米国も同様に、経済面でも安全保障面でも現状維持から利益を得ている。現状維持により、米国は中国との7000億ドル近い相互貿易を継続し、台湾のチップ製造技術を支援し、その恩恵を受け、インド太平洋の平和を維持できる。戦争が起これば、この有益なバランスが崩れる。戦争になれば、アメリカは多大な犠牲を払う道を選ぶのか、それとも破滅的な犠牲を払う可能性があるかが問題となる。

 しかし、北京がある日、台湾を征服しようとする選択をしたとしても、ワシントンの手が縛られることはない。北京の負担を増やす方法はある。ワシントンは中国に制裁を科すことができ、戦闘による損失と合わせて、経済的負担をさらに重くできる。米指導部は、この地域の同盟国との関係を強化し、どこかが攻撃された場合、すべての同盟国が団結し、相互の義務を果たす準備ができるようにすることができる。また、北京をさらに孤立させ、戦闘行為をますます困難で高価なものにするため取りうる外交的行動も数多くある。

 経済的・外交的行動では、台湾を侵略や戦争による損失の可能性から救うことはできない、と即座に反論する人がいるかもしれない。そのような批判は有効である。台湾を救うことはできないだろう。しかし、厳しい真実は、北京が最終的に戦争を選択した場合、米国が介入しようがしまいが、侵略してくるということだ。

 中国が戦争を選択すれば、アメリカにとって「良い」選択はない。しかし、大統領と議会は、アメリカの自由、安全、繁栄を守る最善の決定を下す義務がある。良い選択がなくても、避けるべき悪い選択はある。中国と台湾の戦争に介入することで米国が被る代償は、非常に破壊的なものから完全な軍事的敗北まで、さまざまなものが考えられる。

 台湾海峡でPLAが敗北するとしても、アメリカは計り知れない損失を被るだろう。米国が戦前並の世界的な影響力とパワーを取り戻せるかどうかもわからない。■


What Should America Do if China Invades Taiwan? - 19FortyFive


By

Daniel Davis

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Daniel L. Davis is a Senior Fellow for Defense Priorities and a former Lt. Col. in the U.S. Army who deployed into combat zones four times. He is the author of “The Eleventh Hour in 2020 America.” He is a 19FortyFive Contributing Editor. 


2023年8月11日金曜日

防衛白書を読んだホームズ教授の感想。日本の防衛戦略は賢明。歴史的な転換に追い込んだのは中国、ロシア、北朝鮮だ。

 


本の防衛省は毎年、防衛白書で周辺の戦略的環境を調査し、対応を説明している。最新版によると、中国に対し日本が大きくレベルアップしているのがわかる。

『防衛白書2023』で最も驚くべき統計は、自衛隊への予算投入だ。今後5年で、日本は自衛隊に直近5年間の支出実績の2.5倍以上を費やす。17.2兆円から43.5兆円、つまり約3070億ドルに引き上げる。すごい。

太平洋の闘士を作る

日本軍は長い間、うらやましいほどコンパクトな軍隊だった。そして今、日本軍は本格的軍事組織になろうとしている。これは歴史との決別だ。第二次世界大戦後数十年間、日本はアジアや世界の世論を和らげるため、防衛予算をGDPの1%に抑えてきた。日本は本質的に無防備な社会であり、新たな帝国主義的征服は行えないと自認してきた。だが、中国、北朝鮮、ロシアの好戦的な態度のおかげで、自粛の時代は終わった。

北京、平壌、モスクワは、自らの失策を後悔することになるかもしれない。

総額だけでなく、防衛費の方向性にも目を向けなければならない。浜田靖一防衛大臣によれば、日本は2つの優先事項に重点を置くという。「第一に、運用率を向上させ、弾薬を十分に確保し、主要防衛施設の回復力を向上させる投資を加速させることにより、現在の装備を最大限に有効活用する」。

東京が目指しているのは、単なる戦力増強だけではない。日本が望んでいるのは、現在の軍備の性能を最大限に引き出すこと、弾倉の厚みを増すこと、つまり長期交戦における持続力を高めること、攻撃に耐えられるよう防衛インフラを強化・多様化すること、新型長距離精密兵装への投資である。遠距離からパンチを繰り出し、激しい打撃を受けても崩れることなく吸収する能力を増幅させる。

その結果、より屈強な戦士となり、よりよく分散されたファイターとなる。防衛白書は、「南西地域の防衛体制の強化」が依然として継続的な課題と指摘している。つまり、航空自衛隊と陸上自衛隊の偵察部隊と対艦・対空ミサイル部隊を琉球列島に沿って配備することだ。琉球列島は、九州の最南端に位置する本島から、その中間に位置する沖縄を経て、台湾のすぐ北で終わる弧を描く島々だ。

南西諸島の要塞化の意義は、防御的な理由と攻撃的な理由の2つに大別できる。第一の優先事項は、海や空からの攻撃から日本の領土、海域、空を守ることである。従って、自衛隊の配備は純粋に防衛的な機能を果たす。

第二に、この島々は、日本とアメリカの同盟国に、中国海域と西太平洋の間の海上・航空移動に対する海上バリケードに変える選択肢を与える。島々の部隊と連携する海上部隊と航空部隊は、これらの海域へ通過する海峡を閉鎖ができる。こうして自衛隊は、日本の地盤を保持しながら敵対勢力を封じ込めることができる。

アクセス拒否が中国への堅実な戦略

第一列島線内に敵対勢力を閉じ込めることは、敵対勢力が切実に必要とする機動スペースを奪うことになる。ここで問題になるのは、人民解放軍海軍と人民解放軍空軍だ。

このような封鎖は中国商船隊を自国海域に閉じ込め、海上貿易を抑制し、北京が日本や台湾、あるいは他の近隣諸国を虐待した場合に経済的打撃を与える。要するに、日本の海洋戦略は、列島地理学、軍事技術、同盟政治を抑止効果に利用し、最悪の場合は戦闘に持ち込むことを目的としているのだ。

浜田防衛大臣が言うように、「『自分の国は自分で守る』努力をし、抑止力を高めることが不可欠」なのだ。つまり、相手に『日本を攻撃しても目的は達成できない』と思わせる必要がある」。

これは健全な戦略だ。プロイセンの軍学者カール・フォン・クラウゼヴィッツは、戦場での完全勝利は、成功への直接的な道筋を描くものとしたが、成功に不可欠な要素ではないと述べている。ある戦闘員が他の戦闘員に勝つには、敵指導者に勝てない、あるいは犠牲を払っても勝つことはできないと理解させる必要がある。理性的な敵対者なら、望みのない大義を引き受けるより、身を引く。

つまり、戦わずして勝つことは可能なのである。日本と日米同盟が島嶼防衛戦略の背後に鋼鉄を置けば、中国共産党のような捕食者を抑止する確率を高めることである。

ホームでのアドバンテージ競争

スポーツのレンズを通してこの問題を見ればどうなるか。ホームチームがビジターチームに対し優位に立つことは、海戦の礎石である。アクセス拒否とエリア拒否の論理だ: ホームチームは戦闘現場に近く、軍事的に意味のある資源の大部分を近くに持ち、物理的、人的な地形を熟知している。この重要性は広く理解されている。中国は、米国チームが競技場にアクセスするのを拒否し、あるいは競技場に到着してからの努力を妨げようとするという、これと同じ単純な教訓に基づいて対米戦略を構築してきた。

しかし、日本と中国の場合、地理的な条件により、2つのホームチームが同じフィールドに隣接している。ここで両チームは、何世紀にもわたり激しい戦いを繰り広げてきた。日本は中国よりも人口が少なく、経済規模も小さいが、地理的な優位性やその他の優位性を誇る。とりわけ、日本列島は中国が公海にアクセスする際の障害となる。とはいえ、西太平洋へのアクセスと領域拒否の論理は、どちらにも通用する。

さらに、スポーツに例えるなら、自衛隊は準ホーム、準アウェーのチーム、つまり東アジアに常時前方展開する米軍統合部隊のサポートを享受している。自衛隊だけではない。

アジアのホームチーム同士が対戦するとき、アドバンテージはどちらにあるのか?日本は賭けている。■

Japan's Military Is Getting Ready to Take on a Rising China - 19FortyFive

By James Holmes


Author Expertise 

Dr. James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the U.S. Naval War College and a Distinguished Fellow at the Brute Krulak Center for Innovation & Future Warfare, Marine Corps University. The views voiced here are his alone.