日本の防衛省は毎年、防衛白書で周辺の戦略的環境を調査し、対応を説明している。最新版によると、中国に対し日本が大きくレベルアップしているのがわかる。
『防衛白書2023』で最も驚くべき統計は、自衛隊への予算投入だ。今後5年で、日本は自衛隊に直近5年間の支出実績の2.5倍以上を費やす。17.2兆円から43.5兆円、つまり約3070億ドルに引き上げる。すごい。
太平洋の闘士を作る
日本軍は長い間、うらやましいほどコンパクトな軍隊だった。そして今、日本軍は本格的軍事組織になろうとしている。これは歴史との決別だ。第二次世界大戦後数十年間、日本はアジアや世界の世論を和らげるため、防衛予算をGDPの1%に抑えてきた。日本は本質的に無防備な社会であり、新たな帝国主義的征服は行えないと自認してきた。だが、中国、北朝鮮、ロシアの好戦的な態度のおかげで、自粛の時代は終わった。
北京、平壌、モスクワは、自らの失策を後悔することになるかもしれない。
総額だけでなく、防衛費の方向性にも目を向けなければならない。浜田靖一防衛大臣によれば、日本は2つの優先事項に重点を置くという。「第一に、運用率を向上させ、弾薬を十分に確保し、主要防衛施設の回復力を向上させる投資を加速させることにより、現在の装備を最大限に有効活用する」。
東京が目指しているのは、単なる戦力増強だけではない。日本が望んでいるのは、現在の軍備の性能を最大限に引き出すこと、弾倉の厚みを増すこと、つまり長期交戦における持続力を高めること、攻撃に耐えられるよう防衛インフラを強化・多様化すること、新型長距離精密兵装への投資である。遠距離からパンチを繰り出し、激しい打撃を受けても崩れることなく吸収する能力を増幅させる。
その結果、より屈強な戦士となり、よりよく分散されたファイターとなる。防衛白書は、「南西地域の防衛体制の強化」が依然として継続的な課題と指摘している。つまり、航空自衛隊と陸上自衛隊の偵察部隊と対艦・対空ミサイル部隊を琉球列島に沿って配備することだ。琉球列島は、九州の最南端に位置する本島から、その中間に位置する沖縄を経て、台湾のすぐ北で終わる弧を描く島々だ。
南西諸島の要塞化の意義は、防御的な理由と攻撃的な理由の2つに大別できる。第一の優先事項は、海や空からの攻撃から日本の領土、海域、空を守ることである。従って、自衛隊の配備は純粋に防衛的な機能を果たす。
第二に、この島々は、日本とアメリカの同盟国に、中国海域と西太平洋の間の海上・航空移動に対する海上バリケードに変える選択肢を与える。島々の部隊と連携する海上部隊と航空部隊は、これらの海域へ通過する海峡を閉鎖ができる。こうして自衛隊は、日本の地盤を保持しながら敵対勢力を封じ込めることができる。
アクセス拒否が中国への堅実な戦略
第一列島線内に敵対勢力を閉じ込めることは、敵対勢力が切実に必要とする機動スペースを奪うことになる。ここで問題になるのは、人民解放軍海軍と人民解放軍空軍だ。
このような封鎖は中国商船隊を自国海域に閉じ込め、海上貿易を抑制し、北京が日本や台湾、あるいは他の近隣諸国を虐待した場合に経済的打撃を与える。要するに、日本の海洋戦略は、列島地理学、軍事技術、同盟政治を抑止効果に利用し、最悪の場合は戦闘に持ち込むことを目的としているのだ。
浜田防衛大臣が言うように、「『自分の国は自分で守る』努力をし、抑止力を高めることが不可欠」なのだ。つまり、相手に『日本を攻撃しても目的は達成できない』と思わせる必要がある」。
これは健全な戦略だ。プロイセンの軍学者カール・フォン・クラウゼヴィッツは、戦場での完全勝利は、成功への直接的な道筋を描くものとしたが、成功に不可欠な要素ではないと述べている。ある戦闘員が他の戦闘員に勝つには、敵指導者に勝てない、あるいは犠牲を払っても勝つことはできないと理解させる必要がある。理性的な敵対者なら、望みのない大義を引き受けるより、身を引く。
つまり、戦わずして勝つことは可能なのである。日本と日米同盟が島嶼防衛戦略の背後に鋼鉄を置けば、中国共産党のような捕食者を抑止する確率を高めることである。
ホームでのアドバンテージ競争
スポーツのレンズを通してこの問題を見ればどうなるか。ホームチームがビジターチームに対し優位に立つことは、海戦の礎石である。アクセス拒否とエリア拒否の論理だ: ホームチームは戦闘現場に近く、軍事的に意味のある資源の大部分を近くに持ち、物理的、人的な地形を熟知している。この重要性は広く理解されている。中国は、米国チームが競技場にアクセスするのを拒否し、あるいは競技場に到着してからの努力を妨げようとするという、これと同じ単純な教訓に基づいて対米戦略を構築してきた。
しかし、日本と中国の場合、地理的な条件により、2つのホームチームが同じフィールドに隣接している。ここで両チームは、何世紀にもわたり激しい戦いを繰り広げてきた。日本は中国よりも人口が少なく、経済規模も小さいが、地理的な優位性やその他の優位性を誇る。とりわけ、日本列島は中国が公海にアクセスする際の障害となる。とはいえ、西太平洋へのアクセスと領域拒否の論理は、どちらにも通用する。
さらに、スポーツに例えるなら、自衛隊は準ホーム、準アウェーのチーム、つまり東アジアに常時前方展開する米軍統合部隊のサポートを享受している。自衛隊だけではない。
アジアのホームチーム同士が対戦するとき、アドバンテージはどちらにあるのか?日本は賭けている。■
Japan's Military Is Getting Ready to Take on a Rising China - 19FortyFive
By James Holmes
Author Expertise
Dr. James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the U.S. Naval War College and a Distinguished Fellow at the Brute Krulak Center for Innovation & Future Warfare, Marine Corps University. The views voiced here are his alone.
日本の防衛戦略と、それに基づく戦術は、ホームズ先生が言う通り賢明なのだろうか。
返信削除防衛費が増大するのは、肥大するPLA相手ならば当然としても、先端兵器、高価な対象兵器に依存し過ぎでなかろうか。この辺りは、様々な工夫が可能と思える。
CCP/PLAが目標とする台湾占領と、その後の西太平洋進出を抑止するためだけならば、台湾海峡と、東・南シナ海のチョークポイントを押さえれば十分かもしれない。そのための装備は、多くを先端兵器にする必要は無いのかもしれない。むしろ、旧来の非対象兵器を如何に有効に使うことにより、先端兵器もより有効性を増すと考える。
中国の地理的閉塞性は、PLAに常に大きな制約を課し、逆にアクセス拒否を行う周辺国に多大な優位性を与える。どんなにPLAが質的、量的に優位になったとしても、この状況は、中国が周辺国を占領しない限り変わらない。
CCPが台湾侵攻を行うか、否かの判断は、とてつもない損害を被り、客観的に不可能だと評価したとしても、増長し、慢心する指導者が強行し、失敗する例は、中国の歴史にいくらでもある。台湾侵攻の失敗は、その例に加わることになるかもしれない。
現在、中国は経済が長期衰退の途に入り、国力は低下する一方と考えられているが、「中華の夢」を実現したい習は、国内問題に行き詰れば、血迷うかもしれず、この辺りの将来予測はかなり難しい。ホームズ先生の考えを聞きたいものだ。
個人的には、習は、国内問題にのめりこみ、失敗して「血と蜂蜜のプー」になり、第2文化大革命を目指すも失脚して平和が訪れる、と考える。いや、考えたい。