イスラエル軍が防衛技術を加速させようと、デュアルユースのスタートアップ企業を優先扱いしている
イスラエルMoDの研究開発担当官が、イスラエルのハイテク産業と米国との協力について説明した。
イスラエル国防省MoDは、小規模な新興企業、特に民生防衛双方に利用できるデュアルユース技術を製造する企業を支援する必要性を認識している。
国防省の国防研究開発局(DDR&D)の企画・経済・IT部門の責任者ニル・ワインゴールド大佐Col. Nir Weingoldは、Breaking Defenseに語った。「新興企業が民間市場に目を向けているため、我々は民間市場と競争関係にある。このため民生能力を国防分野の研究開発に転換したい」。
その一環で、2019年にDDR&DはイノフェンスInnofenseと呼ぶプログラムを創設し、新興企業の資金調達を支援するイノベーションセンターとした。ワインゴールドのプレゼンテーションによると、イノフェンスはベンチャーキャピタル(VC)のネットワークと協力し、スカウティング、商業技術への接触、「アクセラレーション」を支援する。これまでに43社がこのプログラムを 「卒業」し、新しい企業を受け入れる第4期生となっている。
『Breaking Defense』は今月、ワインゴールドにイノフェンスの技術パイプラインの重要性、優秀な人材を確保する努力、そして技術導入を加速させるイスラエルの広範なモメンタム戦略について話を聞いた。大佐のオフィスには、ラファエル製のファイアフライ浮遊弾の模型など、イスラエル国防軍をデジタルと現代の戦場の最前線に位置づけるようなテクノロジーの例が飾られていた。
「テクノロジーに全力を注いでいます」とワインゴールドは言う。
これには、バイオコンバージェンス、レーザー、AI、サイバー、防空などの優先課題が含まれる。イスラエルはすでにレーザー防空、カーメル・プログラムと呼ばれるオプションで有人運用する装甲車を開発しており、指向性IR対策航空機保護などのシステムにも取り組んでいる。イスラエル国防省のDDR&Dは、防衛関連技術分野で優秀な学生を採用するため、TalpiotやPsagotといったプログラムを創設している。
イノフェンスの現場
ワインゴールド大佐は、DDR&Dの目標は、技術的優位性と質的軍事的優位性を常時維持しながら、技術的独立性と、初期の基礎研究から技術準備レベル、研究開発(R&D)、本格的開発(FSD)までをワンストップで行うこと だと説明した。
「これは、防衛と並行して民間市場を含む新市場を開拓し、VCや大企業など民間セクターを設計パートナーとして支援するために、政府部門や他省庁とデュアルユースのスタートアップ企業が協力するものである」と彼は述べた。
新興企業にとって、防衛分野で仕事をする上での課題は、調達時間の長さであり、これはアメリカのシリコンバレーでもよく知られた問題である。研究から製品化までのこの「死の谷」こそ、MoDがデュアルユースの新興企業に乗り越えさせたい落とし穴なのだ。
ヴァインゴールド大佐は、新興企業は疾走することを望むものであり、たとえイスラエル国防軍が新技術の獲得が早いとしても、こうした企業のニーズに応えなければならないと指摘した。同省のスライドによれば、はこのギャップを埋める手助けをし、お役所仕事を切り抜け、カナダのAWZベンチャーズやチャータード・グループのようなVCと企業を結びつけようとしている。
イノフェンスは各ラウンドで新興企業16社を受け入れている。これまでの43社のうち、防衛のみを目的とした企業は5社にも満たない、とワインゴールド氏は言う。
新興企業が、民間用途だけでなく軍事用途にも使える技術を生み出すには、例えばAIやアルゴリズムが必要かもしれない。ワインゴールド大佐によれば、防衛に直接関係ないように見えるグリーンエネルギーなども重要なものだという。
大佐は、AI攻撃を扱うDeepKeep、2019年に設立され、現在はラファエルと協力しているWonder Roboticsなどの企業の例を挙げた。またイスラエルには、スマート・シューターやエクステンドなど、近年アメリカで成功を収めている小規模企業も多いという。
海外の友人との協力
米国との連携も重要だ。海軍のタスクフォース59、空軍のタスクフォース99、陸軍のタスクフォース39のような新しい無人システムの使用に特化した部隊を含む。
「共同作業部会があり、アメリカは我々の最大の同盟国であり友人である。米国がイスラエルを支援してくれていることに感謝している。ミサイル防衛やその他の分野において、30年以上にわたって実りある協力関係を築いてきた。それを当然だとは思っていません」。
ワインゴールドによれば、国防総省のハイディ・シュウ研究開発次官とイスラエルのダニエル・ゴールドDDR&D部長のレベルでワーキンググループが少なくとも7つあるという。
民主主義防衛財団のアナリスト、ブラッドリー・ボウマンは、アメリカとイスラエルは技術開発で緊密に協力しているかもしれないが、多くの場合、エルサレムのニーズはワシントンのニーズよりも緊急性が高い、と指摘している。
「イスラエルはしばしば、コンセプトから実戦配備された能力へ迅速に移行している。「イスラエルは定期的に攻撃を仕掛けてくる敵に囲まれており、実戦配備の遅れはイスラエル国民にとって死活問題に発展しかねない。この現実が、イスラエルの防衛組織に敏捷性という美徳を生み出している」。
ボウマンは、2021年11月に設立された米・イスラエル作戦技術作業部会のような、その他の米・イスラエル防衛技術イニシアティブにも言及した。同作業部会は米国とイスラエルで主要な会議を開催し、人工知能/オートノミー、指向性エネルギー、対無人航空機システム、バイオテクノロジー、統合ネットワーク・システム・オブ・システム、極超音速能力に焦点を当てた6つのサブ作業部会を設置している。
作業部会が両国に共通する軍事的要件を特定し、両軍の兵器システムの研究、開発、調達、実戦配備を可能な限り迅速かつ経済的に行うための統合計画を策定すれば、イスラエルはアメリカのスケールメリットから恩恵を受け、アメリカはイスラエルの調達の俊敏性から恩恵を受けられる、とボウマンは述べた。
イスラエルにおける国防イノベーションの将来
イスラエルのイノフェンス・イノベーション・センターを通過した企業は、およそ5万ドルと4カ月でコンセプトの実証を行うことができる。
参加企業は機密扱いがない環境で働くため、厳しい規制に縛られることはない。次のレベルに進めば、受注したり、プロジェクト開発を続けたり、VCから資金を得たり、イスラエルの3大防衛企業エルビット、ラファエル、IAIと仕事をすることになるかもしれない。
「マッチメイキングをしています。知識やノウハウを創造・開発し、最先端の兵器システムや能力を開発する能力を持つ企業で、質的な軍事的優位性を維持しようとしています」。
20年前から大きな飛躍である、と彼は言う。多くのハイテク企業がイスラエルにオフィスや研究開発センターを開設し、投資にも大きな波が押し寄せている。
ワインゴールド大佐によると、昨年は約100人の投資家がイノフェンスのイベントに招待され、新興企業の能力を見学したという。
「このデモンストレーション・デーのような、新しい能力やスタートアップを紹介するイベントをもっと計画しています」。
「休むことができず、リードと技術を維持するため、速く、さらに速く走り続ける必要があると思います」と彼は言った。ワインゴールドは、特にUAVにおけるイスラエルの現在のリーダーシップを指摘した。イスラエルがアイアンドームに追加し、航空機にも搭載をめざすレーザーについて、地上ベースのアイアンビームは 「すぐに」準備が整うだろうと述べた。■
How Israel’s military is prioritizing dual-use start-ups to accelerate defense tech
In an interview with Breaking Defense, senior MoD R&D official Col. Nir Weingold explained Jerusalem’s push into the nation’s tech industry, and its collaboration with the US.
on July 28, 2023 at 1:38 PM
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