2024年2月4日日曜日

M10ブッカー軽戦車の登場と米陸軍の戦闘構想に注目。ウクライナ戦を横目に台湾での戦闘も視野に入れていると言われるが実態は....?

久しぶりに復活した「軽戦車」のM10ですが、自重41トン、主砲105mmと堂々たる存在です。(陸自の10式は44トン、120mm砲)ただし、現在目にしているのは初期型の姿であり、今後の検討次第では大きくその姿を変えていくかもしれません。これまでのストライカーやブラッドレーでは明らかに戦闘力不足だと判断した米陸軍はM10をあくまでも歩兵部隊の支援装備と位置づけているようです。今後の進化に注目です。The War Zone記事からのご紹介です。


(U.S. Army photo by Bernardo Fuller)


陸軍の新型M10ブッカー軽戦車の実際の使われ方

ブッカーはミニ・エイブラムスのように見えるかもしれないが、その役割は特に歩兵支援であり、M1が戦うよりもずっと前に戦闘態勢に入ることができる。

来のある日、アメリカは戦争状態にある。第82空挺師団は敵地への強行侵入を命じられた。まず飛行場を占拠し、その周辺を確保した後、作戦は次の段階へ移り、戦闘態勢の装甲車両が空輸される。

このシナリオでC-17から出てくる最初の装甲車両はM10ブッカー戦闘車両となる。同『戦車』がどのように開発されたかについて深い知識を持つ専門家が本誌に語ってくれた。

105ミリ主砲を搭載したブッカーは、120ミリ砲を搭載したM1エイブラムス主力戦車の火力はない。また、装甲もそれほど厚くない。しかし、消費する燃料ははるかに少なく、後方支援もはるかに小さくできる一方で、敵の装甲、掩体壕、陣地を破壊するパンチを与えることができる。

The M10 Booker Combat Vehicle will soon begin testing by soldiers.

Soldiers will soon begin operational testing and evaluations of the M10 Booker Combat Vehicle (U.S. Army photo) U.S. Army

専門家は匿名を条件に、「おそらくもっと重要なのは、エイブラムスよりもかなり速く」安全な飛行場まで移動し、戦闘に参加できることだ、と語った。

ブッカーの重量は41トンで、エイブラムスより約40%軽い。寸法が小さく、重いサイドスカートもないため、C-17グローブマスターIII1機で2両を輸送し、エイブラムスより迅速に必要な場所で戦闘態勢を整えることができる、と専門家は言う。

70トン以上のエイブラムスはC-17に1両しか搭載できない。

エイブラムズの場合、輸送機への搭載前に、乗員はサイドスカートを外さなければならない。この作業に何時間もかかるし、M-88ハーキュリーズのような大型の回収車が必要だ。ハーキュリーズのサイズと重量はエイブラムスに匹敵する。

つまり、M10は「すぐに飛び立つ準備ができており、そのための専用空輸がある」ということだ。「エイブラムスは、戦闘地域に到着する前の準備に何日もかかる」。

しかし、前提はM10ブッカーが大規模に実戦配備されることで、これは数年先の話だ。

ブッカーで戦闘はこう変わる

米陸軍で40年ぶりの新設計車両となったブッカーは、今春ノースカロライナ州のフォート・リバティに納入される。82師団の機動防護火力Mobile Protected Firepower(MPF)試験分遣隊は命令を待っているところだと、専門家は言う。ブッカーの開発プログラムを指揮するジェフリー・ノーマン准将Brig. Gen. Geoffrey Normanは、本誌に次のように語った。

実戦配備されれば、M1エイブラムス主力戦車の砲塔の派生型に105ミリM35主砲を搭載した追跡装甲車が陸軍に提供されることになる。また、M1A2システム強化パッケージ・バージョン3(SEPv3)と同じ火器管制システムを搭載している。ブッカーはさらに7.62mm同軸機関砲と50口径指揮官用機関砲を装備している。

MTU 8v199 TE-22、800馬力のディーゼルエンジンとアリソン・トランスミッションでブッカーは最高時速約40マイルで走行できる。

ブッカーは、他の米軍装甲車に使用されているシステム、爆発反応装甲(ERA)タイルによる追加防御はオプションとする。ノーマン准将は、「M10では、戦術状況に応じてERAを装備する」と説明した。

しかし、ブッカーにモジュラー・アクティブ・プロテクション・システム(MAPS)は搭載されないと准将は付け加えた。「M10ブッカーの初期設計は完了し、車両は現在少量生産されている。「M10には統合型アクティブ・プロテクション・システムは含まれていない」。陸軍は一貫して国内外から最高のAPSを評価しており、将来的にM10にそれらのシステムのいずれかを装備することを選択する可能性があるが、現在はプログラムされていない。

APSを搭載しないことに加え、M10は少なくとも当初は対戦車誘導弾やドローン機能を搭載しない。これら2つの機能の重要性を考えると、陸軍がブッカーに何ができるのか、どのように使用されるのかをもっと知るにつれて、それは変わる可能性がある。

ノーマン准将によれば、陸軍は間もなく車両と部隊をマッチングさせ、その性能と最適な使用方法を決定し始めるという。

初期運用試験と評価[OT&E]は2025会計年度初頭に終了する、とノーマン准将は言う。「この試験から得られた分析結果は、M10の設計を検証し、将来的なシステムアップグレードの可能性の基礎を築くために使用される。

そのテストから得られた教訓が、陸軍の戦い方を変えるかもしれない、とノーマン准将は過去に語っている。

ノーマン准将は10月に開催されたAUSA会議で、「騎乗陣形に変革をもたらす。これまでとは違う戦い方、これまでとは違う組織編成となる。そのため、これまでと違う訓練が必要になる。だから、われわれがやっていることの根底にあるのは、ここで得たものが必ずしも未来につながるとは限らないという考え方や原則だ」。

M10は、2026年の晩夏に第82師団で第一部隊装備の地位を獲得するとノーマン准将は予測している。

他の軽師団への配備もほぼ同時期に開始される、と専門家は言う。現在の計画では、第101空挺師団は2027会計年度の第2四半期までにブッカーの受領を開始する。その数カ月後には、州兵部隊がブッカーの受領を開始する。

それでも、議会調査局(CRS)によれば、陸軍が現在求めている504両のブッカーの大部分は、もっと後にならないと届かない。

CRSによると、陸軍は2030年までに4個大隊配備を計画しており、2035年までに大半の導入が完了する想定だという。価格は1両あたり約1300万ドルと予想され、総額約65億ドルになる。

このプログラムのライフサイクルコストは、維持費、施設建設費、人件費を含め、総額170億ドルとDefense Newsは報じている。

軽戦車の復活

軽戦車による機動防護火力(MPF)プログラムとして、陸軍は2023年6月14日にMPFをM10ブッカー歩兵突撃車両として正式採用すると発表した。

ブッカー戦闘車両は「アメリカの英雄2名にちなみ命名された」とノーマン准将が説明する。「第二次世界大戦の1943年4月、チュニジアのトブルク近郊での行動により名誉勲章を授与された歩兵ロバート・D・ブッカー。イラクの自由作戦で戦車兵二等軍曹ステボン・A・ブッカーがバグダッド近郊で勲十字章を授与された」。

「陸軍はM10戦闘車の命名にあたり、歩兵と装甲兵を意図的に選びました。M10は、火力と歩兵の敏捷性を融合させ、兵士と指揮官に、将来の戦いに勝利するための新たな能力を提供します」。

陸軍では1997年にベトナム時代のM551A1シェリダン軽戦車を退役させて以来、歩兵部隊に配属可能で比較的軽量で機動性があり、大型砲を搭載した重装甲の射撃プラットフォームが不足していた。

アフガニスタンとイラクでの20年にわたる反乱勢力平定作戦の間、エイブラムスとブラッドレー戦闘車やストライカー装甲車のような装甲車両のギャップを埋める車両の必要性はほとんどなかった。移動式砲システムのストライカー改良型には105mm砲が搭載されていたが、年代物の砲とオートローダーに問題があったため、陸軍は2021年に処分した。同車両はブッカーよりもはるかに防御力が低く、車輪走行式のため、M10なら可能な場所に簡単に行くことができなかった。

現在、歩兵旅団戦闘チーム(IBCT)には、移動火力支援のために、50口径M2機関銃、40mmMk19自動擲弾発射機、TOW対戦車ミサイルで武装した軽戦術車(ハンヴィー、統合軽戦術車(JLTV)に置き換えられつつある)があるだけだ。

しかし、中国やロシアとの競争が激化するなか、陸軍は2000年代半ばにシェリダンの後継装備を模索し始めた。

「新たな脅威環境下で第82空挺師団を早期に派遣するには、装甲旅団戦闘団(ABCT)の到着を待つ中で、防衛と攻撃を可能にする機動砲システム(MGS)を再び保有する必要がある」と装甲専門家は言う。

この種の装甲車の必要性は、2014年にロシアがウクライナ東部に侵攻し、クリミアを不法併合したことで明らかになった。重装甲を装備した従来の相手と戦うには米国の能力を向上させる必要があるとの警鐘だった。

2015年、陸軍はそのような車両を開発するためMPFプログラムを開始した。

目標は、バンカーやその他の陣地を破壊し、建物に避難する敵軍を攻撃し、敵の各種装甲車両を撃破できる車両の製造だったと、専門家は言う。重機関銃から榴散弾砲弾、腹部地雷、即席爆発装置(IED)まで、さまざまな脅威から保護する必要があった。先に述べたように、グローブマスター機内に収まるほど軽量である必要もあった。

陸軍は2018年12月17日、セクション804ミドルティア獲得(MTA)迅速試作車両製造契約をBAEシステムズとジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ(GDLS)に交付した。それぞれ3億7500万ドル以上と3億3500万ドル以上の価値があった。

GDLSのエントリーは、M1エイブラムス戦車に由来する砲塔を備えた同社のグリフィンIIがベースだった。BAEシステムズはM8ビュフォード装甲砲システム(AGS)軽戦車をベースとした。同戦車は1980年代に陸軍向けに別プログラムで開発されたが、最終的には1996年に中止された。

MPFの開発プロセスに詳しい現役の陸軍砲手に話を聞くと、GDLSバージョンに懸念を示し、BAEシステムズには気に入る点がたくさんあると語った。

「GDLSバージョンより軽量で、最も軽い構成だと20トンを切る。オートローダーを装備し、乗員はGDLSのモデルより少ない3人だった。しかし、最も印象的だったのは、修理のしやすさだった。BAEシステムズの車両は、エンジンへのアクセスが格段によかったモーターをスライドさせて取り外すだけで、修理ができる。何かが壊滅的に壊れても、頭上リフトのようなものは必要ない」。

対照的に、ブッカーは、そのレベルの修理作業が必要な場合、モーターを持ち上げるクレーンを装備した8x8 Heavy Expanded Mobility Tactical Truck(HEMTT)のような車両を必要とすると、装甲専門家は説明した。

「MPFは陸軍で新規の能力であり、軽機動部隊で敵に勝利が可能となる」と、次世代戦闘車クロスファンクショナルチームのディレクターであるロス・コフマン陸軍大将は評価プロセスについて語った。「兵士数名のタッチポイントを通じて、兵士たちは試作品を操作し、設計チームに重要なフィードバックを提供した。

迅速試作テストプログラムが終了した数日後、2022年6月にGDLSは最大11億4000万ドルの契約を獲得し、96両の初期少量生産(ILRP)を受注した。

陸軍がGDLSを採用したのは、エイブラムスとの部品の共通性が少なからずあったからだ、と同上の砲手は言う。さらに、BAEシステムズは「コロナウィルスで試作品生産に遅れが生じ、兵士評価用のシステムをGDLSより数カ月遅れて納入した」とディフェンス・ニュースは報じている。

国防総省の運用試験評価局長(DOT&E)は、2023年1月の分析で「MPFは、歩兵旅団の作戦を支援する運用上の有効性、信頼性、可用性の達成に向けて満足のいく進捗を示した。「MPFはエイブラムス戦車と火器管制部品多数を共有している。砲塔が類似しているため、MPFの乗員は既存のエイブラムスのシミュレーターで訓練することができ、MPFをサポートするために必要となる整備士要員の車両固有の訓練を減らすことができる。

しかし、兵器開発プロセスの常として、問題や脆弱性が発覚したという。「開発テストでは、MPFの主砲発射時に高レベルの有毒ガスが発生することが判明し、砲塔内のガスの蓄積を緩和するため、砲撃時の乗員手順で修正が必要となった」。

さらに、報告書によると、「作戦上現実的な脅威を使用した実弾射撃試験により、脆弱性が明らかになった」。しかし、その詳細は機密扱いである。

報告書は4点の修正を勧告し、最終的に達成された:

  • 主砲発射時に発生する高レベルの有毒ガスを減らすため、システム設計の修正を引き続き実施すること。

  • 車両冷却システムの改善を継続し、予防保守点検と整備に要する時間を短縮する。

  • 2022年4月に発表のDOT&E運用評価報告書の機密付属文書に記載された生存性に関する勧告に引き続き取り組むこと。

  • リアルタイム傷害評価能力を向上させ、バンカーや壁などの非車両目標に対する目標効果を再現し、戦闘のリアリズムと訓練価値を向上させる。

GDLSは、2023年7月にブッカー26両のILRP第2段階購入のため、2億5660万ドルの契約修正を受けた。

歩兵部隊での期待

ブッカーが到着すれば、師団の戦力となると装甲専門家は語る。選抜された「軽」師団(歩兵師団、第82空挺師団、第101空挺師団を含む)には、4個小隊で構成の3個中隊による大隊が配備される。各小隊にはブッカー4両が配置される。さらに、中隊長と幹部が各1両を受け持つ。

陸軍は現在、旅団戦闘チーム(BCT)を主な統合兵科編成としており、通常、各師団に3チームが配属されている。陸軍にはIBCT、ABCT、ストライカー旅団戦闘チーム(SBCT)の3種類のBCTがあり、各チームに3,900人から4,100人の兵士がいる。

師団司令部は「脅威と任務に基づいて」戦闘車両をIBCTに割り当てる。「小隊単位から大隊単位まで可能だ」。

エイブラムスはABCTに所属するが、ブッカーは歩兵部隊に所属する。これは大きな利点になると専門家は言う。

歩兵は「自分たちのために直接機能する資産を持つことになる」と彼は指摘し、戦闘状況への迅速な対応とより良い統合をもたらすと付け加えた。

ブッカー乗員は歩兵と一緒に訓練を受けるため、「お互いの能力を最大限に発揮し、お互いの弱点を軽減することができる」。逆に、「M1エイブラムス戦車は、軽歩兵中隊に土壇場で現れルソン剤で、お互いに協力した経験がない。

陸軍はブッカーを意図的に軽戦車と呼ばないようにしているが、装甲専門家の意見は異なる。「砲塔がある。光学系と105ミリ主砲がある」。

台湾、ウクライナ、そしてガザ

ブッカーが実戦でテストされるのは先のことだが、実際に起こった、あるいは予測されるシナリオの中に、ブッカーの運用で教訓を与えてくれるものがある。

陸軍は世界各地の戦闘作戦を継続的に研究している。現在の作戦では、歩兵と装甲兵からなり、間接火力、工兵、維持兵力、支援兵力からなる複合兵力の必要性が確認されている。M10は、軽歩兵部隊と統合された統合兵科チームで軽装甲能力を提供する。

ブッカーは台湾の地上戦で貴重なプラットフォームとなる、と装甲専門家は説明してくれた。台湾の約3分の2は険しい山地である。中国本土に面する人口密度の高い西部には、平地から起伏のある平野が広がる。M10はエイブラムスより小型であるため、戦闘の舞台となる狭く制限の多い市街地での機動性に優れる。重量問題でエイブラムスが渡れないような橋でも通過でき、はるかに軽い兵站フットプリントで運用できる。

さらに、105ミリ主砲は、「大部分の中国の装備に対応できるほど強力だ 」と彼は付け加えた。

この車両は、理論的にはウクライナ、特にドネツク州のアヴディフカやバフムート周辺のような都市部でも役に立つだろう。そこでの戦闘の多くは、アヴディフカのコークス工場跡のような瓦礫の中で行われている。

「ウクライナの歩兵が制限された地形を移動する際に、ブッカーが併用されるのは目に見えている」と専門家は言う。

それでも、台湾やウクライナのシナリオや、イスラエルのガザでの厳しい市街戦でも、軽量で防御力の高いブッカーは、エイブラムスやイスラエル国防軍(IDF)のメルカバ戦車より脆弱だろう。ハマスがイスラエル軍車両に対して使用している各種ロケット砲がその脅威を浮き彫りにしており、話を聞いた専門家によれば、ブッカーへのERAとMAPS搭載は、市街地戦では不可欠だという。

ザポリツィア州のロボティネ・ヴェルボベ峡谷や、アヴディフカの市街地から外れた農地など、ウクライナで見られるような開けた地形は、ブッカーにとって難易度が高い。

歩兵が先に移動して状況を判断し、ブッカーを呼び寄せるか、交戦した場合に生存性が高まる地域に配置しなければならない。

このような状況は、ウクライナとロシアの戦車やその他の装甲車にとって困難な挑戦であることが証明されている。ウクライナにとっては、ロシアが構築した大量の地雷原を突破する難題もある。

M10は「燃料をそれほど消費しないので」戦場に長くとどまることができるだろう、と専門家は言う。しかし、M1エイブラムスのように行動し始め、M10ブッカーを保有する部隊が通常の戦車と考えるようになれば、その保護レベルゆえに問題が生じるかもしれない。あくまでもブッカーは歩兵に火力支援と機動性を提供する装備なのだ。

このため、ブッカーを小型版のM1と考えるのは正しくない。

「M10ブッカー戦闘車両は、歩兵部隊に、有機的で、機動性が高く、防護が万全で、大口径の精密な直接射撃能力を提供する」とノーマンは言う。「M10は、敵の重機関銃、準備された陣地や野戦要塞、軽装甲車に直面しても、軽歩兵部隊の攻撃と勢いの維持を可能にする。防衛面では、M10は軽歩兵部隊を保護し、攻撃してくる敵軍を撃破するための大口径直射能力を提供する。

「すべての場合において、M10を装備した即応部隊は、高度に保護されたまま、高速で移動する追跡機動性を必要とする状況に対応し、大口径砲を使い、米軍とパートナー部隊を支援することができる 」。

陸軍はすでに、ブッカーをどう活用するかの基本的なドクトリンを策定中だが、フォート・リバティで最初の部隊が訓練を開始後に今年末か来年初めに終了する運用試験評価段階で最新車両に対する陸軍の理解がさらに深まることになる。

これらの経験が、2030年代に本格使用される同車両の将来の使用を形作ることになる。

ロシアがヨーロッパを直接脅かし、中国が域外へ野心を抱き、北朝鮮が暴言をますます好戦的にしながらミサイル能力を向上させ、中東が再び危機に陥っているなど、世界中の安全保障状況が悪化していることを考えれば、ブッカーが次の主要戦闘に適した車両になるかはまだ不明だ。しかし、陸軍は明らかにブッカーが必要となると考えている。ブッカーの使用方法に関する現在の考え方が、時間経過とともにどこまで変化していくのか、興味深く見守りたい。■

How The Army's New M10 Booker Light Tank Will Actually Be Used

BYHOWARD ALTMAN|PUBLISHED JAN 30, 2024 9:25 AM EST

LANDNEWS & FEATURES



 

2024年2月3日土曜日

米軍が報復攻撃を開始し、B-1が精密爆弾をイラク、シリアのイランおよび現地戦闘員集団の拠点を投下した。攻撃は今後も続くというが、バイデンの優柔不断がまた発揮された。

先週日曜日の事件に対する対応としては今回もバイデンの決断が遅かった感がありますが、米軍が報復攻撃を開始しました。しかも、今回で終わりではなく、必要に応じ継続していくと公言しています。問題はイランでしょうね。しかし、情報が交錯しているようです。The War Zone記事からのご紹介です。

B-1b strikes Iranian backed targets

USAF SCREENCAP


ヨルダンで米兵3人が死亡、数十人が負傷した無人機攻撃への報復として、米国は攻撃を開始した

国は、1月28日にヨルダンで米兵3名を殺害したドローン攻撃への報復として、待望の攻撃を開始した。

攻撃は米空軍のB-1B爆撃機によって行われたとポリティコは報じた。今回の攻撃は、予想される多くの攻撃の最初のものである。

米国は、イスラム革命防衛隊員や、イランが支援する代理組織カタイブ・ヒズボラやイラクのイスラム抵抗組織に反撃すると述べた。攻撃は、イスラエルとハマスの戦争をきっかけに始まった。

米軍はイラクとシリアでイラン代理勢力に攻撃を行ったことはあるが、これほど大規模なものはなかった。

イラン指導層は、自分たちはヨルダンにおける攻撃に関与していないと主張し、攻撃されれば報復すると脅している。米情報機関からは、テヘランがこれらのグループを実際にどの程度コントロールしているのか疑問の声さえ上がっている。しかし木曜日、ロイド・オースティン米国防長官は、それは問題ではないと述べた。

「これらはイランの代理グループだ。「イランが資金を提供し、場合によっては高度な通常兵器を訓練している。そのような支援がなければ、このようなことは起こらない」。

しかし、ニューヨーク・タイムズの木曜日報道によると、イランはこれらの攻撃を見越して、全軍を厳戒態勢に置き、地対空防衛システムを作動させ、弾道ミサイルをイラクとの国境沿いに配置した。

Three U.S. troops were killed and more than two dozen injured by an Iranian-backed militia drone strike on Tower 22.

Three U.S. soldiers were killed and more than 40 wounded in a drone strike on Tower 22 in Jordan. Google Earth image

1月28日にヨルダンのタワー22が攻撃され、ウィリアム・J・リバーズ軍曹、ケネディ・L・サンダース軍曹、ブリーナ・A・モフェット軍曹が死亡し他に40人以上の兵士が負傷した事例に対する報復攻撃についてのニュースが漏れるにつれ、イラクとシリアのイスラム革命防衛隊員とイラン代理勢力は、散り散りになり始めた。

更新:東部午後5時6分

中東司令部は声明を発表した:

「2月2日午後4時(米東部時間)、米中央軍(CENTCOM)はイラクとシリアでイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)クッズ部隊と関連民兵組織に対する空爆を行った。米軍は、米国から飛来した長距離爆撃機を含む多数の航空機で、85以上の標的を空爆した。空爆には精密弾125発以上が使用された。空爆対象の施設には、米軍や連合軍に対する攻撃を助長した民兵組織やIRGCの支援を受けた指揮統制センター、情報センター、ロケット弾、ミサイル、無人航空機の保管庫、兵站や弾薬のサプライチェーン施設などが含まれていた」。

ホワイトハウスも声明を発表した。


中東における米軍作戦に関するジョー・バイデン大統領の声明文

先週日曜日米軍兵士三名がヨルダンにおいてイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)が支援する戦闘員集団が発進させたドローン一機により殺害された。本日未明、ドーバー空軍基地において自分は栄誉ある米国人の帰国を見届け、それぞれの遺族と話した。

本日午後、自分の指示で米軍部隊がイラク、シリア国内の施設を標的とした攻撃を遂行した。IRGCおよび関係先頭集団が米軍攻撃に使用した施設である。

こちらからの反応はこれで終わりではない。こちらが選定した日時、場所で攻撃を続ける。

米国は中東における武力衝突を求めておらず、これは世界のいずれの場所でも同じである。ただし、米国に危害を加えようとするものに告げる。米国人に危害を与えれば、静観したままでいることはない。


更新:東部時間午後5時15分

イラクのアルカイムにある軍需倉庫を空爆したとされる映像がソーシャルメディアに続々とアップされている。

U.S. Strikes Back At Iranian-Backed Militia Targets In Iraq, Syria

BYHOWARD ALTMAN, JOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED FEB 2, 2024 4:59 PM EST


2024年2月2日金曜日

ロシアがバルト海でGPS妨害を露骨に行っている事実にNATOの忍耐力が試されている。国際合意を無視するロシアには相応の報いが下りて当然ではないだろうか。

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A screengrab of reported navigation issues in the airspace over eastern Europe on Jan. 19, 2023. (GPSJam screengrab)


ウクライナ戦争は、安価な無人航空機の使用からこれまでにない規模の情報戦まで、現代の戦場における新戦術を前面に押し出した。しかし、同時に最新の電子戦も展開されている。ロシアによる可能性が高い、危険な干渉らしきものについて米大統領による国家宇宙ベース測位ナビゲーション・タイミング国家諮問委員会のメンバー、デイナ・ゴワードDana Gowardが分析した。

開されている航空機追跡データベースによると、1カ月以上前から、バルト海沿岸地域を飛行する航空機は、GPS信号への各種干渉を経験している。場合によっては、GPS受信機が電子的に捕捉されたり、航空機が意図したルートから何マイルも外れているように「スプーフィング」されたりしているようだ。

妨害やなりすましは以前からあるが、この地域ではほぼ毎日何らかの妨害が行われており、定期的に広範かつ重大な妨害が行われている。ウクライナ侵攻を支援するNATO諸国への嫌がらせとして、ロシアがこの活動の背後にいることはほぼ間違いないとされてきた。

このような妨害行為は、何千機もの民間航空機に危険を及ぼすものであるが、国際的な圧力は今のところ妨害行為を止めることができないため、NATOは相応の行動をとる時期に来ている。

12月25日と26日、ポーランド北部とスウェーデン南部の広い範囲が影響を受けた。翌週の大晦日には、フィンランド南東部の広い範囲で航空機の乱れが報告された。1月10日、13日、16日にはポーランドの北半分が主な標的となった。19日には、スウェーデン南部とポーランド北部が影響を受けた。直近では1月24日にエストニアとラトビアが標的となった。

いずれの場合も、妨害は民間航空機が搭載する航空安全ADS-Bシステムによって検知され、ウェブサイトGPSJam.orgに表示された。

テキサス大学ラジオナビゲーション研究所の大学院生ザック・クレメンツによるクリスマス妨害の分析。クレメンツ氏はGPSの妨害について研究しており、地球低軌道上の衛星から発生源を突き止めることに関して発表している[PDF]。


インタビューで彼は、広範囲に広がる送信機多数が関与していると判断したと述べた。あるものはGPS信号を妨害してサービスを拒否していた。しかし、少なくとも1個の送信機は、航空機を偽装し、計器が実際の位置から遠く離れ、円を描いて飛行しているように見せていた。

「サークル・スプーフィング」現象は、船舶では頻繁に観察されてきたが、航空では今回が初めての報告であった。

クレメンツによれば、ロシア国内がスプーフィングの発生源であることは間違いないという。「航空機がスプーフィングによる影響を受け始めた地点と、航空機が本物のGPSを取り戻した地点から、スプーファーはロシア西部のどこかにいることがわかる。「興味深いことに、航空機がスプーフィングされた場所は、ロシアの退役したスモレンスク軍事空軍基地から約1キロの野原である」。

スタンフォード大学のジクシー・リュウ大学院研究員は、クリスマスの妨害にはほぼ間違いなく多くの妨害機が関与していることを筆者に確認した。以前の研究でリュウは、ADS-Bデータを使ってGPS妨害の発生源を地理的に特定している。

モスクワは広範囲に及ぶ妨害行為を否定していると報じられているが、ウクライナのメディアは、「...2023年12月中旬以降、ロシアのバルチック艦隊の部隊がカリニングラード州でEW(電子戦)システムBorisoglebsk-2を使って演習を行っている 」と報じている。

米国とポーランドのアナリストによれば、この干渉は、国境付近で西側の影響力が強まっていることに対するロシアの対応の一環だという。12月中旬、米軍とポーランド軍はポーランド北部でイージス対ミサイルシステムを作動させた。その直後、トルコ議会はスウェーデンのNATO加盟に道を開く行動を開始した。

ロシアのこのような反応は前例がないわけではない。2022年、ウラジーミル・プーチン大統領はフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟しようとするならばと脅した。その後、フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領はジョー・バイデン米大統領と会談し、防衛関係の改善を話し合った。その後間もなく、フィンランド南部、カリニングラード、ロシア、バルト海近辺の上空を飛ぶ飛行機がGPS妨害を報告し始めたと『ガーディアン』紙が報じた。

最近の妨害やなりすまし事件でポーランドに焦点が当たっているのは、ポーランドの新しいアメリカ製対ミサイル・システムの重要性を軽視しようとするロシアの努力かもしれない。同様の妨害は、米国がウクライナに供給した精密兵器の多くにも及んでいる。ポーランドのイージス施設はGPSではなく高出力レーダーを主に使用しているとはいえ、今回の干渉はシステムに対する国民の信頼を損なう狙いの可能性がある。

また、一部オブザーバーは、ポーランドでの干渉が戦略的なスワウキ・ギャップを通る道路にも及んでいると指摘している。ポーランドのリトアニア国境に平行する全長40マイルのこのルートは、ロシアの盟友ベラルーシとバルト海に面したロシアのカリニングラードを直接結んでいる。軍事アナリストは以前から、この地域はヨーロッパの陸上紛争で重要地点になると考えてきた。

これらの攻撃は、国際空域や海域を航行する他国の航空機や船舶を標的にしてきた。また、NATO加盟国の主権領土やインフラにも影響を及ぼしている。

さらに、生命と財産に多大なリスクをもたらしている。

大手国際航空会社の上級機長ジョー・バーンズは、「GPS信号が利用できなかったり、何らかの形で危険にさらされたりすると、大きなリスクにさらされる」と語った。バーンズ機長はまた、GPSとその関連問題についてアメリカ政府に助言を与える委員会のメンバーでもある。「GPSへの干渉は事故のリスクを高め、ほとんどの場合システムの速度を落とし、フライトをより長く、より高くする」。

GPS信号への偶発的な干渉は、2019年にアイダホ州サンバレーで民間旅客機の墜落を引き起こしかけた。航空関係者はその後、国際民間航空機関(ICAO)にGPS妨害を緊急課題として挙げた。翌年、ICAOはすべての国に対し、この問題の重大性に留意し、適切な行動をとるよう呼びかけた。国際海事機関も同様の呼びかけを行っている。

安全上の懸念に加え、GPSやその他の衛星信号への意図的な干渉は、国連の国際電気通信連合(ITU)の全加盟国によって合意された国際法および規制に違反する。2022年の通達でITUは、2021年に記録された航空関連の衛星ナビゲーション干渉万件以上の事例を挙げている。同通達は、このような行為が有害な干渉に対する規則に違反することを強調し、次のように述べている。「......一般に『GNSS(全地球航法衛星システム)ジャマー』と呼ばれる装置や、航空機に有害な干渉を引き起こす可能性のあるその他の違法な干渉装置の使用は、無線規の第15.1号によって禁止されている......」。

国際社会は、バルト海で見られるような電子戦が戦争であることを認識しなければならない。そして、宣戦布告がないにもかかわらず、ロシアは他国、特にNATO加盟国を標的とした一連の低レベル攻撃を意図的かつ組織的に行っている。

国際機関による話し合いや宣言が機能していないことも明らかだ。問題は悪化するばかりだ。

NATOと国際社会には、適切かつ比例的な対応で選択肢があり、速やかに検討され、採用されるべきである。例えば、新しい衛星の周波数割当てはITUが管理している。他国の衛星の信号を日常的に妨害していると判明した国に対して、新たな割り当てを拒否することは適切であると思われ、良い第一歩となる。

増大するこの問題が大きな犠牲者を出したり、NATOが直接関与する武力紛争に発展する前に、より断固とした明白な行動をとる必要がある。■

ダナ・ゴワードは、レジリエント・ナビゲーション・タイミング財団の会長であり、米国大統領の宇宙ベースのポジショニング・ナビゲーション・タイミング国家諮問委員会のメンバーである。元米国沿岸警備隊海上輸送システム部長。


Dana Goward is the president of the Resilient Navigation and Timing Foundation and a member of the US Presidents’s National Space-Based Positioning Navigation and Timing National Advisory Board. He formerly served as the Director of Marine Transportation Systems for the US Coast Guard.

https://breakingdefense.com/2024/01/as-baltics-see-spike-in-gps-jamming-nato-must-respond/


米国の対外軍事装備品の売却、2023年度は809億ドルに急増  米国防衛産業株は買いか

 世界各地の安全保障への不安で、米国の防衛産業が好況のようです。FMS制度を使った売上が大幅増。Breaking Defense記事からのご紹介です。

Air Force photo

An Army M1 Abrams tank is loaded onto an Air Force C-17 transport. (Air Force photo)

23年度の外国向け武器販売・納入額は前年度比で55%増になった。

国務省の発表によると、米国の国防企業は昨年、対外軍事販売プログラムの下で809億ドル相当の兵器を他国に引き渡し、契約を交わした。

約810億ドルという数字は2023会計年度(2022年10月から2023年9月)のものである。ウクライナ戦争が激化し、友好国が近代化努力を加速させる方法を模索する中、バイデン政権が太平洋の同盟国を支援する後押しを続けたためである。22年度は519億ドルだった。

810億ドルに含まれるのは、同盟国やパートナー国からの資金による武器売却623億ドル、対外軍事資金プログラムを通じて契約された40億ドル、地雷除去や対テロリズムなどの項目を含む「その他」プログラムラインの147億ドルである。

昨年度の大型FMS案件には、ポーランドへのAH-64Eアパッチ・ヘリコプター96機と高機動砲兵ロケット・システム(HIMARS)100億ドル、ドイツへのCH-47Fチヌーク・ヘリコプター85億ドル、チェコへのF-35航空機と軍需品56億2000万ドルなどが含まれる。

FY23のFMSに加え、政権はFY22の総額1,536億ドルから2.5%増となる1,575億ドルの商業直接販売を昨年許可した。内訳は以下の通り:

  • F-35の主翼アセンブリとサブアセンブリ製造でイタリアに28億ドル

  • GE製F414-INS6エンジン・ハードウェア製造でインドへ18億ドル

  • 韓国にF100推進システムと予備部品用で12億ドル

米国はすでに24年度において、トルコ向けの推定230億ドルのF-16とギリシャ向けの推定86億ドルのF-35を承認し、以前は56億ドル相当と見積もられていたチェコ共和国向けの別のF-35契約を最終決定するなど、高額な潜在的取引の数々が承認ずみだ。■

US Foreign Military Sales deals mushroomed to $80.9 billion in 2023 - Breaking Defense

By   ASHLEY ROQUE

on January 30, 2024 at 1:57 PM


2024年2月1日木曜日

F-35を運用する日米韓豪そしてシンガポールで太平洋の自由と繁栄を守る半円形の「空の壁」を形成せよ

 中国も見方を変えれば出口を西側に押さえられているわけで、その分だけ海洋進出にはずみがついているわけですが、F-35が圧倒的な威力をみせれば中国に対する空の『壁』ができると極めて楽観的な見方をしているのがWarrior Mavenの記事です。ま、フィリピンが重要な前線基地になり、日本も関与すれば台湾は大陸の魔手に落ちないのではないかと思いますが、ものごとはそんなに単純ではないでしょう。しかし、時間が立つにつれPLAが張子の虎だとばれてしまうので、北京もひょっとすると思い切った動きにでるかもしれません。

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米海軍、日本、韓国、オーストラリア、シンガポールはすべてF-35保有国だ

海軍、日本、韓国、オーストラリア、シンガポールはすべてF-35保有国であり、第5世代機による米軍連合が数年以内に中国を「包囲」できる可能性が出てきた。

F-35のような単一のプラットフォームや兵器システムが特別な影響を及ぼすと考えるのは珍しい。しかし、太平洋戦域で増加するF-35の多国籍軍は、大規模なマルチドメイン戦争システムの中で運用される場合、この地域の抑止力方程式に広範囲かつ多次元的な影響を与える可能性が高まっている。

F-35が日本やその他の地域に到着するにつれ、太平洋を囲む完全な半円形の防衛リングの実現はまだ数年先かもしれない。しかし、F-35の配備国を地図で見るだけで、米軍が同盟国と第5世代の「壁」で太平洋全域の中国を文字通り「包囲」できることを示唆している。シンガポール、オーストラリア、韓国、日本、そして前方で運用されるアメリカのF-35は、ステルス性を持ち、ネットワーク化された第5世代のISR、照準、攻撃機として機能する可能性がある。また、あまり認識されていないが、この方程式にまだ存在しない可能性として、最適な位置にあるフィリピンがある。フィリピンにおける米軍のプレゼンスが拡大している今、そこに米軍のF-35を駐留させてはどうだろうか?

太平洋全域におけるF-35の拡大は、重要な変数数点のため、正確に爆発的と表現することができる。日本は350億ドルという巨額規模でF-35を獲得し、大規模な海上配備と陸上配備の第5世代JSFを太平洋全域に拡大するネットワークにもたらした。オーストラリアと韓国もF-35保有国であり、あまり知られていないが重要な国であるシンガポールもF-35購入を増やしている。これらの国々と空母や揚陸艦から運用される海上ベースの米海軍F-35とを組み合わせれば、文字通りネットワーク化されたF-35機の輪で太平洋を「包囲」できる。F-35のマルチ・ファンクション・データ・リンク(MADL)により、太平洋戦域全体で各国のF-35が安全かつシームレスにデータを共有できるようになるため、この見通しは計り知れないほど強化される。これは、日本と韓国のF-35が日本海と朝鮮半島に沿って制空権を求めることができることを意味する。日本のF-35が日本の最南端から離陸すれば、台湾の北空域を確保し、給油すれば台湾空域内に到達できる。前方に配置されたアメリカの空母と揚陸艦は、台湾の西で重要な位置を占めることができ、第5世代機が太平洋の中央部と南東部のどこで活動するかによって、台湾または南シナ海の一部の攻撃範囲内に配置される。シンガポールが中国抑止のF-35連合を支持する気になれば、シンガポール空軍は南西太平洋の空域を中国の航空攻撃から守ることができる。シンガポールはF-35の購入数を12機まで増やしたばかりであり、同国のF-35は南東太平洋のオーストラリアのF-35と接続することで、太平洋全域で制空権の輪を完成させることができる。

日本のF-35が大量に整備されるまで数年かかるかもしれないが、海上自衛隊は、日本のミニ空母で台湾上空まで日本の南をカバーできる海上ベースのF-35Bを取得中である。

フィリピンにF-35を配備する?

太平洋全域におけるF-35の存在感の高まりと並んで、米国とフィリピンの大規模な協力関係の強化は、中国抑止にむけた協力関係において最も決定的な要素となる可能性がある。フィリピンは最近、米国との防衛協力強化協定(EDCA)を拡大し、米軍のアクセスを可能にする4カ所を新たに追加した。戦略的にも地理的にも、フィリピンは間違いなく台湾に最も接近しやすい位置にある。スタ・アナのカミロ・オシアス海軍基地、カガヤン州のラルロ空港、イサベラ州ガムのキャンプ・メルコール・デラクルス、パラワン近くのバラバック島だ。

フィリピン北部は台湾上空から数百マイル、せいぜい400~600海里の距離に過ぎず、陸上運用型F-35Aの攻撃範囲内にある。米軍のF-35はフィリピン軍と訓練を行っているが、おそらくもっと多くの機体が、フィリピンの新しい米軍基地に恒久的に駐留する可能性がある。米空軍は現在300機以上のF-35を運用しており、F-35の大部隊を台湾防衛の射程圏内に置くことは、給油を必要とせず、太平洋における前例のない航空戦力の投射をもたらすからだ。PLA空軍はおよそ120機のJ-20を運用していると考えられている。J-20がF-35に匹敵すると仮定すると、その性能は検証されておらず、かなり疑問が残るが、J-20は陸上配備で、F-35より大きく、間違いなく機動性が劣る。この種の対戦における未知の要素は、J-20のセンサー、ミッション・システム、コンピューティング、武器、照準がF-35にどこまで匹敵するのかであることは明らかだろう。これは最も重要な問題に思われるが、たとえ同等であったとしても、中国のJ-20部隊は、フィリピンを拠点とするアメリカのF-35で強化された、アメリカ、日本、韓国、シンガポールの多国籍軍F-35部隊には劣るだろう。米領グアムは台湾から東に1,700km以上離れており、空中給油でのアクセスは困難だが不可能ではない。フィリピンにおける米軍のプレゼンスが拡大しているのだから、米軍のF-35やF-22をフィリピンに駐留させるのはどうだろうか?

というのも、南シナ海のかなり南側から朝鮮半島の北側、そして日本海にまたがるF-35の半円の真ん中の隙間を埋めるからだ。シンガポールから北日本まで、F-35の多国籍半円は、台湾を防衛し、太平洋全域にわたる中国の攻撃を抑止または撃退するために大きな影響を与える、保護的な制空権圏を提供することができる。

この半円の最も重要な補強要素は、間違いなく米海軍の第5世代航空戦力の前方配置だろう。米空母は50機以上のF-35Cを発艦させることができ、アメリカ級揚陸艦は20機を運用できる。これにより、洋上発進の第5世代航空戦力は、太平洋全域でネットワーク化された同盟国のF-35の強固で侵入不可能な「壁」を完成させることができる。

マルチ・ドメイン・センサーとしてのF-35

F-35は、攻撃プラットフォーム、センサー・ノード、ISRプラットフォーム、フライング・コンピューター・システム、空中ゲートウェイ、近隣のドローンの小グループを運用する母機として運用される。F-35はすでに、陸軍の統合戦闘指揮システムや海軍の対艦巡航ミサイル防衛システム(NIFC-CA)で空中センサーとして運用され、重要なミサイル防衛能力を発揮している。これらの事例において、F-35は重要な照準および空中センサー・ノードとして作動し、脅威の特定と、時間的な影響を受けやすい情報を艦船および陸地の火器管制システムに「中継」することで、指揮官が最適な対応、防御、反撃を決定するための、より長い時間的猶予を与えている。 F-35は、NIFC-CAとIBCSの両方において、空中ゲートウェイとして動作する能力を特に実証している。これは、地上レーダー、水上艦船、空中ドローン、衛星、および戦域全体に配置された指揮統制ハブ多数をつなぐ重要なリンクとして機能できることを意味する。つまりF-35は、ドローンに近い機能を実行したり、地上、空中、地上のノード間でターゲット・データを転送したり、あるいは発射前に空中から、あるいは地上で敵の弾道ミサイルを迎撃したり破壊したりする武器を使用することもできる。  

2020年、陸軍のプロジェクト・コンバージェンスで、米海兵隊のF-35Bが、地上部隊とリアルタイムで標的データを共有する能力を実証したように、陸上攻撃任務を支援する空と地上との接続性もまた、F-35の運用能力にとって重要である。■

Why Not Base F-35s in the Philippines? Form F-35 Semi-Circle Air "Wall" From Singapore & to Japan - Warrior Maven: Center for Military Modernization

By Kris Osborn, President, Center for Military Modernization

Kris Osborn is the President of Warrior Maven - Center for Military Modernization and Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.

https://warriormaven.com/china/why-not-base-f-35s-in-the-philippines-form-f-35-semi-circle-air-wall-from-singapore-to-japan



2024年1月31日水曜日

フーシ派ミサイルを発射前に撃破。米軍の探知、情報伝達、攻撃実施のサイクルは画期的な変化を遂げているようだ

 


発射前に撃破できたというのはいわゆるセンサー-シューター間の情報処理が大幅に高速化されていることを意味し、自衛を理由にすれば、敵の攻撃を未然に防ぐ能力がすでに実用化していることになります。あとは政治の決断だけですね。Breaking Defense記事は淡々と伝えていますが、ニュースの裏を考える必要がありますね。


Super Hornets from the aircraft carrier Dwight David Eisenhower struck Houthi missile installations today.U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Michael Battles


スーパーホーネットがフーシ派ミサイルを発射前に攻撃

アメリカが発射準備中のフーシ派のミサイルに対して先制攻撃を行ったのは、3日連続となった


国は1月18日、空母ドワイト・D・アイゼンハワーから発進したF/A-18E/Fスーパーホーネットでイエメンのフーシ派ミサイルに先制攻撃を行った。

「米中央軍司令部は、紅海南部に向け発射準備中のフーシ系対艦ミサイル2発を攻撃した。「米軍は午後3時40分(サヌア時間)頃、イエメンのフーシ支配地域でミサイルを確認し、この地域の商船と米海軍艦船に差し迫った脅威があると判断した。米軍はその後、自衛のためミサイルを攻撃し、破壊した」。

 これは、フーシが紅海地域の船舶を攻撃し始めて以来、イエメンのフーシの標的に対する5回目の攻撃であり、米国が発射準備中のミサイルを攻撃したのは3日連続である。

 米国は水曜日にフーシ派のミサイル14発に先制攻撃を行い、火曜日にもフーシ派の対艦弾道ミサイル4発にも先制攻撃を行った。13日、アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦USSカーニーはトマホーク陸上攻撃ミサイルでフーシのレーダーサイトを攻撃した。これは、12日にアメリカとイギリスの航空機、水上艦船、潜水艦がイエメンのフーシ支配下にある28カ所の60以上の標的を攻撃した。

 木曜日未明、ジョー・バイデン大統領は記者団から、フーシ派に対する攻撃は機能しているのかと質問された。

 「うまくいっているとは、フーシ派を阻止できているという意味かだって?」バイデンは一瞬自問し、「いいえ。攻撃は継続するのか、というならそうだ」。

 木曜午後の記者会見で、この発言への回答を求められた国防総省のサブリナ・シン副報道局長は、本誌含む記者団に対し、国防総省は「フーシがただちに停止するとは言っていない。それは彼らが決断し、計算しなければならないことだ。やめることが彼らのためになる。木曜日以来、彼らの能力を低下させ、著しく混乱させ、破壊することができたのは見ての通りだ」。

 同海域で別の船舶が攻撃をうけたとの情報もあるが、当局はすぐには確認できなかった。

 さらに、木曜日にバグダッド近郊で米軍のMQ-9リーパー無人偵察機が撃墜されたという報道を、シンも中米中央司令部も確認していない。

 確認されれば、10月7日のイスラエルとハマスの戦争開始以来、2機目の撃墜となる。イエメンのフーシ派武装勢力が11月8日未明に同国沖でリーパーを撃墜したと報じられている。■


Red Sea Ship Attacks Continue After Super Hornets Strike Missiles


BYHOWARD ALTMAN|PUBLISHED JAN 18, 2024 3:48 PM EST

THE WAR ZONE