2019年3月18日月曜日

ヴェネズエラへ米軍事介入が迫っているのか、航空機の動向から読み解くと....

ヴェネズエラ危機には日本の皆さんはご関心が薄いでしょうが、例によって中国が多大な貸付をしており、現政権の維持に躍起になっています。仮に米軍の軍事介入で債権がパーになれば一大事なので中国は米軍の動きに「猛烈反対」するはずで陽動作戦で西太平洋で何らかの動きを示さないとも限りません。したがって遠い国の話しと無視できないのです。


CIA Linked Plane Makes Brief Trip To Venezuela As American Diplomats Evacuate

ヴェネズエラに急派されたCIA関連機、米外交団撤収に投入されたのか


The CIA flight comes amid other mysterious aerial activity in and around the country and concerns of an impending American intervention.

CIA手配のフライト以外に不可思議な航空活動が同国周辺に見られるのは米軍事介入が近づいてきた証拠なのか


BY JOSEPH TREVITHICKMARCH 14, 2019


ALAN RADECKI VIA WIKIMEDIA


ェネズエラの政治経済危機でニコラ・マデューロ政権崩壊が近づくさなか中央情報局とつながる企業のロッキードL-100-30一機が首都カラカスに着陸した。同機の派遣はマイク・ポンペイオ国務長官が米外交団の全員撤収を命じたことを受けてだが、米国がマデューロ政権に挑戦する国民会議議長のフアン・グアイドの側に立ち軍事介入の備えに入ったのではとの懸念が強まってきた。
機体追跡サイトでL-100機の動きを真っ先に気づいた個人がある。C-130ハーキュリーズの民生仕様の同機は登録コードN3867Xで東部標準時8:00 AMごろカリブ海を南下し、二時間半後にカラカスへ降下を開始した。同機は1:20 PMごろヴェネズエラを出発した。
N3867Xの登録データを見るとT3D&H LLCというデラウェア州ウィルミントンの企業があらわれ、連邦航空局FAAによれば同社はCIAとつながりのあるフロリダのテッパー・エイビエーションTepper Aviationのフロント企業と理解されている。
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CIA linked Tepper Aviation Lockheed L-100 N3867X heading towards #PuertoRico
· 14h
CIA linked Tepper Aviation Lockheed L-100 N3867X heading towards #PuertoRico
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Really Interesting CIA linked Tepper Aviation Lockheed L-100 N3867X heading South over The Caribbean Sea pic.twitter.com/aiXXz9Ku7c
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CIA linked Tepper Aviation Lockheed L-100 N3867X heading #Caracas #Venezuela. The only explanation I see is the plane land as a diplomatic flight to repatriate  American embassy staff
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CIA linked Tepper aviation (T3D&H LLC front company) Lockheed L-100 N3867X currently currently descending for  Maiquetía #Caracas #Venezuela. I repeat again , I guess it lands as diplomatic flight.
· 12h
CIA linked Tepper aviation (T3D&H LLC front company) Lockheed L-100 N3867X currently currently descending for  Maiquetía #Caracas #Venezuela. I repeat again , I guess it lands as diplomatic flight.
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CIA linked Tepper aviation  Lockheed L-100 N3867X departed #Caracas #Venezuela pic.twitter.com/X5iOFk1wsv
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テッパーが中央情報局のアンゴラ反乱勢力UNITAの支援に関与しているとの報道が1989年にあり、イランコントラ事件関連の貨物を輸送したとあった。同年に同社保有のL-100の別機N9205Tがアンゴラで墜落し同社オーナーのバド・ペティに加え、米国人、西ドイツ陣、英国人のほかUNITA人員数名が死亡した。同機は武器輸送中との報道があった。


テッパーを米政府による特別事業と関連づけるメディア報道もあり、FAA記録ではN3867XはT3D&Hが南アフリカのSafairから2006年に取得したとある。


Embedded video
#ULTIMAHORA A las 10:40am aterrizó en el aeropuerto de Maiquetía un Hércules C-130 de la Fuerza Aérea de EEUU. Al mismo tiempo llegaban al terminal auxiliar varios vehículos con placas diplomáticas de EEUU. Llevan personal y carga.


Inicia #HILO...


同機は全面的に薄いグレイ塗色で識別記号等をつけず、ヴェネズエラで何をしていたのか不明だ。今回のフライトについて当方が照会したが中央情報局は記事執筆時点まで何ら回答していない。一つの可能性は同機がカラカスからの米国大使館関係者撤収に関わっていたことだ。
「米国は残る人員を @usembassyveから今週中に退去させる」とマイク・ポンペイオ国務長官が2019年3月11日にツイッター投稿した。「今回の決定は#Venezuela情勢悪化に伴い、米外交団が大使館に残ると米政策上に制約が生まれるとの判断からも下された」
2019年3月14日 1:30 PM、N3867Xがヴェネズエラを離陸するとポンペイオは再びツイッターで米外交関係者全員が同国を去ったと述べた


The U.S. will withdraw all remaining personnel from @usembassyve this week. This decision reflects the deteriorating situation in #Venezuela as well as the conclusion that the presence of U.S. diplomatic staff at the embassy has become a constraint on U.S. policy.
All remaining U.S. diplomats in #Venezuela have departed for the time being. We remain firm in our support for Venezuelan people and @jguaido and look forward to returning to a free & democratic Venezuela. #EstamosUnidosVE


また米政府がボーイング737をカリッタチャーターから借り上げ同じ目的に投入したのも判明した。同機は米国登録N331CKで2018年の米外交関係者のモスクワ退去時にも使われている。ロシアが英国内で元工作員セルゲイ・スクリパルを神経ガスで殺害に伴う措置だった。
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Kalitta Charters II  737 N331CK from #Miami heading  #Venezuela to withdraw all staff from #Caracas embassy
· 13h
I wonder what this plane is usually up to?
This plane was the one that repatriated part of the diplomatic delegation last month from Caracas, curiously also repatriated the staff of US embassy in Moscow after the Skripal case last year.
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CIAはこれまでも米大使館内や近隣で活動してきた。同局が職員を国務省の決定と同時に退去させた可能性はある。今のところ米政府職員の安全に関する事項で国務省が責任をとっている。.
別の可能性としてCIAが人員、装備、補給品を送り込み、同国内での活動強化に備えたというのがある。もともとインフラが脆弱なところに制裁措置が加わり同国では全国規模の停電があり物品強奪や基本サービスが消滅し、死亡案件の報告もある。同国内の米国政府施設に自家発電もあるが燃料補給は必要だ。
CIAが国務省関係者離脱で国内施設の追加的保安措置が必要と判斷した可能性もある。ただ外交官のカバーなくして同局が活動を継続するのは困難だ。これとテッパーエイビエーション機のタイミングを合わせると同機はCIA人員装備の撤収と関連しているほうが強く感じられ、同国への持ち込みではないはずだ。
N3867Xがヴェネズエラで何をしていたにせよ、同国内外で進行中の出来事へ関心が高まるのは必至だ。2019年2月7日、ヴェネズエラ当局はヴァレンシア市へ搬入された武器等を押収したと発表。同市はカラカスの西100キロにあり、ボーイング767(米民間機登録N881YV)がマイアミから飛来したという。
銃火器等が実際に同機内にあったのか確たる証拠はない。同機を保有するのはノースカロライナに本拠を置く 21 Airと同機をチャーターしたGPS-Airは共に事実関係を否定している。
21 Airの会長がジェミナイエアカーゴGemini AIr Cargoという別企業にも関係があるとの指摘に要注意だ。テッパーエイビエーションと同様にジェミナイエアカーゴはCIAや政府事業と関連があるともいわれる。
興味を引く点がある。フライト追跡サイトによればN881YVは2019年1月にヴァレンシアに定期的に飛んでいたが武器と言われるものの発見後に飛行を取りやめている。GPS-Airはその頃ヴェネズエラ向けに同機をチャーターする唯一の企業だと 21 Air は説明しているという。
さらに奇々怪々なのが 21 Airが別のボーイング767機登録番号N999YVをチャーターしオランダ領キュラソー島へ2019年2月21日運航したことで、同島には米軍が前方作戦施設を設け、ヴェネズエラが対象の人道救難援助にあたっていると伝えられている。だがこの機体が本当に現地にあった記録はないとカナダの飛行機船舶ウォッチャーSteffan Watkinsが述べている。同機には最近はどこにも飛行した記録はないという
"Workers load food and medicals aid for Venezuela from a US Boeing 767 (..) in Willemstad, Curacao in the Netherlands Antilles on February 21, 2019."
(Photo by @lacostacastro / AFP)
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21 Air LLC owns two planes, one of which I was tracking back and forth, the other one looked like it was not flying at all, in fact it hadn't been seen anywhere in over a year - until I looked at http://JetPhotos.net , after I saw the Getty image in use.https://www.jetphotos.com/info/767-23801
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N999YV | Boeing 767-241(ER)(BDSF) | 23801 | JetPhotos

N881YV (AC23C6) is the plane that the article was written abouthttps://registry.faa.gov/AircraftInquiry/NNum_results.aspx?NNumbertxt=881YV …
N999YV (ADF64C) is the plane with absolutely no flight history across multiple flight trackers - not just the ones that usually block stuff. It's a ghost plane. It's spoofing or not accurately reporting its identity, and it's not a military flight.https://registry.faa.gov/AircraftInquiry/NNum_results.aspx?NNumbertxt=999YV …


だからといってマデューロ転覆とグアイド支援を目指すCIA関連がヴェネズエラで実効力を上げている証拠にはならない。グアイドが自身で暫定大統領を宣言し、米国他南アメリカ数カ国が正式に承認したが、マデューロは米政府さらにCIAへ非難を繰り返しており、証拠をあげずに自身の政府転覆の企てがあると主張している。
マデューロは米国の他にコロンビアも自身の暗殺未遂で非難対象としており、同国が爆発物を搭載した無人機を2018年8月に飛来させたとする。また「米政府以外にはない」「ハイテク」機能があったとし、米国によるサイバー戦について触れていると見られるが、同国内電力網の機能停止の責任を追求している。米国は暗殺未遂、停電のいずれにも関与を否定している。
マデューロとグアイドの国家指導権を巡る危機状況が発生したのは2019年1月で同時にヴェネズエラ国内や周辺では民間企業が人員、資産の保全に神経質になった。マデューロが国庫から金塊を大量売却するとの報道もあり、同国への国際圧力に対抗する動きだというが単純に自身の富とするためかもしれない。
しかし 21 Air の767機の動きに加えテッパー・エイビエーションのL-100-30が今回飛来して米国がいよいよヴェネズエラ武力介入に近づいた証拠との危惧が強まった。2019年2月を境に米空軍のスパイ機RC-135V/Wリヴェットジョイントがヴェネズエラ北東沿岸沖を周回して定期的監視を始め、米海軍もEP-3EエアリアスIIを同じ区域に少なくとも一機送り込んでいる。
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USAF RC-135V 63-9792 SNOWY06 departed Offutt AFB for a surveillance mission off the #Venezuela coast.
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US Navy  EP-3E Aries II 156517 patrolling off the coast of #Venezuela


RC-135V/WとEP-3Eはともに高性能通信傍受機材で無線通信やレーダーの「発信源」を探知し、通信を聞き取る。交信内容を記録分析し、いわゆる「電子戦力編成」としてレーダー等の防空体制の現状を把握できる。
ポンペイオ長官発言で米外交団が現地に残留すると米政策遂行の「制約」になるというのは米大使館を維持すれば軍事作戦で不必要なリスクが生まれることだろう。ヴェネズエラの治安維持部隊が大使館を占拠し米国人を人質にして介入を回避しようとするかもしれない。国務省も同国内に残る米国人の生命の保証はモデューロや治安部隊の責任だと述べている。
GOOGLE EARTH
.カラカスの米国大使館の衛星写真


2019年1月にジョン・ボルトン国家安全保障担当補佐官が同じような懸念を抱いていることが発覚した。記者が補佐官が抱えるメモ用紙に「コロンビアへ5千名規模部隊派遣」とあったためだが、走り書きの真意は不明のままだ。
そんな中でドナルド・トランプ大統領がエリオット・エイブラムズをヴェネズエラ問題特別代表に任命したことで先の観測がますます強まった。エイブラムスは国務次官補として1980年代に物議を醸したラテンアメリカでのb米国活動に関与しており、イランコントラ事件では有罪判決を受け投獄されたがジョージ・H・W・ブッシュ大統領が恩赦を与えた。2019年3月12日、エイブラムズは記者団に「選択肢はすべて」テーブル上にあり米政府はヴェネズエラ危機に対応すると述べたばかりだ。
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"The president has said 'all options are on the table.' They are," Elliott Abrams, US special envoy for #Venezuela tells @StateDept reporters.


時同じくしてヴェネズエラ危機関連の米軍活動は情報収集と空軍輸送機の投入による人道援助物資の搬送が隣国コロンビアで活発になっている。軍事介入につながる戦闘部隊が現地で増強されている兆候はない。


USAF
コロンビアのククタで米軍要員が人道援助物資を空軍のC-17AグローブマスターIII輸送機から荷降ろし中。2019年2月。


N3867Xが突然ヴェネズエラに姿をあらわし、国務省残留人員を退去させたのか注目されるが米政策の新しい方向性を示しているようだ。本件には今後も目を光らせ進展あればすぐお伝えしたい。■

Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

2019年3月17日日曜日

主張 米海軍は日本とSSK部隊を共同運用すべきだ。日本から調達してもよい

ホームズ教授のいう第二次大戦式の大量建造は夢にすぎませんが、平時から戦力を着実に増強することには賛成です。16隻だった潜水艦部隊を今後日本は増やして20隻超にもっていきますが、同数の米通常型潜水艦が加わり30隻-40隻になればその三分の一程度つまり10隻強が日本近海のどこかにあるわけで相当の抑止力になります。日米合同潜水艦運用体制の整備には軽く20年かかりますから実施するなら早いほうがいいですね。空母、原子力潜水艦共に米海軍で確立された価値観なのでこれを打破するのは大変な負担になります。

Pay Attention: These Are the Submarines the U.S. Navy Needs

この潜水艦が米海軍に必要だ
Go silent, go diesel.
March 15, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: SubmarinesMilitaryTechnologyWorldSSKSSNChinaJapan
March 15, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: SubmarinesMilitaryTechnologyWorldSSKSSNChinaJapan

海軍がディーゼル電気推進潜水艦部隊を導入すべき理由は十分すぎるほどある。まずSSK部隊は西太平洋で抑止力になる。抑止力は艦の性能とともに明確な決意から生まれる。さらに大国として残ることになる。相手能力を打ち負かすのが困難とわかれば戦火を開いて敵は青ざめる。端的に言えば弾性を有する側が抑止力を発揮する。開戦となれば巧みに配置したディーゼル潜水艦が米国並びに同盟国、特に日本の立場を有利にするはずだ。
通常動力潜水艦の調達を再開すべきだ:SSK部隊は連合軍部隊の中核となる。艦体を海上自衛隊(JMSDF)と共通化し合同潜水艦部隊を編成し、問題海域に常駐させれば同盟国の防衛に米国がリスクを恐れていないと日本へ示せる。日本は常駐潜水艦部隊で米国への信頼を高め同盟関係が強化される。
言い方を変えれば米国が日本部隊と共同展開することで日本は孤立する恐れを抱かなり、太平洋で不穏な事態があっても米国が常にそばにいてくれるとわかるはずだ。同盟国友邦国を信頼する意味は米国にとって大きい。米国はアジアに領土がなく、戦略的足場がない。米海軍部隊の一部を多国籍部隊に編入すれば団結を強める効果が生まれ、米海軍は関係国の港湾アクセスが保証される。
戦略状況に適した潜水艦になる。各国の海軍戦略は中国やロシアの艦船活動を第一列島線内で抑えることが目的だ。原子力潜水艦推進派はディーゼル艦は海峡封鎖や狭い海域専用だとし、SSNの優位性を列挙してくるだろう。たとえば無制限の潜行や高速巡航性能だ。はい、証明終わりというわけだ。
だが実は違う。SSKでSSNと同じ性能を発揮する必要はなく、仕事を着実にこなし調達価格が安ければ良い。原子力潜水艦推進派にはディーゼル潜水艦が長く果たしてきた効果を低く見る傾向がある。米海軍太平洋艦隊の潜水艦部隊が第二次大戦中に日本帝国海軍を大いに苦しめたのがまさしく第一列島線が舞台だった。JMSDFも同様の戦術をソ連、中国相手に冷戦中に展開した。両国の海軍は列島線戦略で高い効果を上げ、しかも当時のディーゼル潜水艦は現在よりずっと初歩的な艦だった。史実を否定したSSK反対論には説得力がない。
連合軍潜水艦部隊にSSNの高速性能、無期限潜行能力は列島線防衛で不要だ。SSNが優れた性能を発揮するのは外洋での戦闘だが防御任務では過剰性能となり運用経費が高くつく。米日合同戦隊の潜水艦は水上艦と協調し封鎖線を引く。島しょ部にはミサイル装備の陸上部隊、上空は航空機が飛び、機雷敷設も計画的に行う。哨戒潜水艦はその中で静かに潜み、列島線沿いに姿を探知されずに攻撃の機会を待つ。
ディーゼル艦で上記全部がこなせる。連合軍に十分な数の哨戒艦があれば定期ローテーションで常時警戒待機できる。哨戒中の喪失艦の補充用に予備艦も必要だろう。米日合同部隊の潜水艦部隊に琉球諸島まで定期的配備できる隻数が必要だ。JMSDFは19隻に拡充する予定だが、本当はもっとほしいところだ。さらに十数隻の米国艦を加え合同布陣をしけば予備艦も含め十分な規模の潜水艦部隊が生まれ攻勢に転じても運用でき黄海や東シナ海、オホーツク海での水上艦攻撃を想定する。
当面はこれが整備できれば適正規模であり、SSNと比べてはるかに安価に整備できる。単価の違いは隻数が増えれば高くなる。日本が建造した最大規模のディーセル艦そうりゅう級の単価はは米海軍の最新鋭ヴァージニア級SSNの五分の一、すなわち6.31億ドル対32億ドルである。ただし米海軍が議会と建艦にからむと価格の差は1対4になるだろう。つまり米海軍はヴァージニア級3隻分の予算で12隻のディーゼル艦部隊が整備できる。
あるいはSSKの建造でSSNを削るより沿海域戦闘艦がSSK相手に意味のある攻撃力を発揮できないので一対一で取替てもよい。最新のLCSは単価6.46億ドルでそうりゅうの6.31億ドルに近い。LCSを断念しても(今年の国防予算要求では3隻を計上している)海軍に悪い話にならないはずだ。
ディーゼル艦配備には同盟国との政治、戦略地図、予算執行での効果も期待できる。戦闘では戦闘力の迅速回復が戦勝につながる可能性が最も高い。海洋戦略の師アルフレッド・セイヤー・マハンやJ・C・ワイリーも同じ意見だ。両名は米国が大国間戦闘の開戦時に甚大な被害を受けてもその後逆転すると予言した。これはトランプ時代のペンタゴンが想定する戦闘の推移と同じだ。
その結果どうなるか。軍と国防産業部門は開戦直後の中国やロシアの猛烈な第一撃を乗り切れる量の装備を準備する必要がある。ノックアウトされては元も子もない。その後戦力を再整備し、しかも迅速に進める必要がある。これで米軍は反抗を展開できる。では米海軍の潜水艦部隊が緒戦で損耗したら補充できるのか。米海軍が潜水艦戦闘力を確保するには潜水艦の大量建造が必要だ。
ただし原子炉や格納用の船体は短期建造できず経費も高い。ヴァージニア級を年間二隻建造するだけで造船所に負担となっているのは旧式オハイオ級弾道ミサイル原潜の建造も進行中のためだ。その結果、SSNの隻数は増えず戦時喪失分の補充など期待できない。平時に建造規模の維持に精一杯ならSSNの戦時喪失が現実のものとなった場合、建造能力に余裕はない。
このため通常動力SSKにも外洋での戦闘任務を与える可能性がある。米海軍も新造通常動力潜水艦を短期間かつ大量配備する方法を模索せざるを得なくなる。米国内ではディーゼル艦建造は1950年代以降行っていない。したがって海軍当局は日本との交渉でが同国で建造した艦の調達を検討すべきで、そうりゅう級で完成の域に達した艦設計、熟練した建造施設を活用すべきだ。米国内でディーゼル艦を日本企業の参画で建造する選択肢もある。あるいは両方実施しても良い。米国第一を主張する大統領と議会を言いくるめ従来と違う方向にもっていくにはすぐれた交渉術が必要だ。説得を始めよう。
抑止力と切迫する情勢からも必要だ。米海軍および政治指導部は必要な戦力整備を継続ししかも迅速に進める必要がある。戦闘力整備を遅々としたペースで展開すると敗北は必至となる。第二次大戦時の教訓が役立つ。枢軸国打倒に必要な物量のため米海軍艦艇の設計はあらゆる点で最高性能を求めなかった。米国には普通の戦力でも大量かつ迅速に艦艇が必要だった。
つまり適度な性能で設計は簡素であればよく、多彩な業者を生産に巻き込んだ。デトロイトの自動車工場がB-24爆撃機を毎時間一機完成させていた。米海軍も戦時喪失分を早く補うことを最優先し、一部に目をつぶった。当時の議会とフランクリン・ロウズベルト政権の指導力に助けられ、新造艦艇や航空機生産が真珠湾攻撃前から始まっていた。1940年の両洋艦隊法案が後押しした。
事前に戦力補充分の整備を進めることを今後の米海軍で合言葉にすべきだ。これにより予備戦力整備が生まれるのが利点で、艦隊指揮官は開戦の諸端から兵力を積極投入できる。損耗を心配して中途半端な運用をしなくてもよい。補充艦艇や機材がやってくるとわかれば指揮官はリスクをいとわなくなる。チェスター・ニミッツ大将が真珠湾攻撃の残余艦で1942年に空母強襲作戦を展開したのは1943年になれば新造艦が来るとわかっていたからだ。予備戦力があれば今ある装備を活用して勝利をおさめる確率が高くなる。
ということでディーゼル潜水艦の調達が既存原子力艦部隊の補強になることが外交、戦略、予算、作戦、戦術面からおわかりになったはずだ。是非実現しようではないか。■
James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and coauthor of Red Star over the Pacific .