2013年12月20日金曜日

レーザー兵器の実戦テストでUAS含む飛翔体の連続命中に成功---レーザー兵器は戦術的に有効な手段になるのか


US Army Vehicle-Mounted Laser Successfully Demonstrated Against UAS and Other Targets

UAS Vision December 16, 2013

U.S. Army Space and Missile Defense Command

Eric Shindelbower/Boeing
米陸軍の宇宙ミサイル防衛司令部ー米陸軍部隊戦略司令部U.S. Army Space and Missile Defense Command(SMDC)/Army Forces Strategic Command が合同で車両搭載型高出力エネルギーレーザー兵器による初の照射演習を行い迫撃砲弾90発以上、無人機数機をそれぞれ空中で捕捉迎撃することに成功した。
  1. 陸軍高出力エネルギーレーザー機動実証装置 Army High Energy Laser Mobile Demonstrator (HEL MD)のテストで11月18日と12月10日にホワイトサンズミサイル試射場(ニューメキシコ州)内の高出力エネルギーレーザーシステムテスト施設High Energy Laser Systems Test Facility (HELSTF) で実施した。
  2. これはHEL MDがフル出力で行った初の実証で装備構成はレーザー発生器、ビーム照準器を車両に搭載したもの。代理レーダー(高性能多モードレーダー)がレーザー光線を割り振り交戦を支援した。
  3. HEL MDは指向性エネルギーによりロケット弾、砲撃、迫撃弾、無人機、巡航ミサイル等に対する防衛能力を実証するプロジェクトとして開発中だ。HEL MDを統括しているのはSMDC技術センターだ。
  4. 迫撃弾と無人機(UAS)は米軍・同盟国部隊が実際の戦闘で遭遇する脅威の代表として選ばれた。
  5. システムの効果は低出力、中出力放射実験(2011年)で実証済みで、今回は高出力テストをHELSTFで行った。今回の実証で移動式ソリッドステイト方式レーザー兵器システムにより迫撃弾、UASに対応可能であることが確認され、同時にUASが搭載する情報収集・監視・偵察センサー類にも有効だとわかった。
  6. 今回のテストでは10 kWクラスのレーザーを使ったが、将来は50 kWクラスをHEL MD本体に搭載し、さらに100 kWに拡大される。作動を支援する熱および電力サブシステムも将来の出力強化に対応させ、有効射程距離は拡大させ照射時間を短縮するのが今後の課題だ。
  7. ビーム管制システムbeam control system (BCS)はドーム状で500馬力の大型高機動戦術トラックHeavy Expanded Mobility Tactical Truck (HEMTT)の屋根上のに搭載されている。ビーム照準器は360度回転可能で、鏡を使い方向を指示し、焦点をあわせる。レーザービームは光速(毎秒30万キロメートル)で移動し比類ない精度で命中する。
  8. 「HEL MDが迫撃弾、無人機に連続命中して破壊したのは今回がはじめてです。」とマイク・リン(ボーイング指向性エネルギーシステムズ副社長)Mike Rinn, Vice-President, Boeing Directed Energy Systemsは語る。
  9. 「かなりの成果です」と認めるのはテリー・バウアーTerry Bauer(高出力エナジーレーザー機動実証プロジェクトの陸軍責任者)だ。
  10. レーザー光線の外周はおよぞ25セント硬貨大。迫撃弾の直径は60ミリメートルで命中すると迫撃弾内部の構造が過熱され、空中で中程度の爆発を発生させる。
  11. 「命中すると金属片として本来の命中地点に落ちてきますが爆発せず地面に刺さるだけです。つまり、弾丸を石に変えるのと同じですね」(バウアー)
  12. UASが搭載したセンサー類機能がレーザーで無効になるのかに関心が集まっていたが、実際に搭載カメラの機能が止まり、次に尾翼を破損させるためレーザー照射がされた。「機体は墜落した」(バウアー)
  13. ペンタゴンで経費節約が叫ばれる中、レーザー兵器は低価格と陸軍関係者は発言し、「一発あたりコスト」はディーゼル燃料のコーヒーカップ相当と同じだという。2013年度で開発は7年目だが、予算はおどろくことに12.4百万ドルにすぎない。
  14. そうなると戦術的に使える兵器となる。なぜならレーザーは「連続破壊手段」になるからだとバウアーはいい、各目標を一発で迅速にし止めることが可能だという。
  15. 陸軍は来年早々に装備システムをフロリダのガルフコーストに移動させ「雨天曇天その他の条件」での作動を試すとバウアーは言う。ボーイングがHEL MD開発の主契約社になっている。


新年度防衛予算の概算要求内容をAviation Weekはどう伝えているか


Japan Increases Defense Spending

By Bill Sweetman william.sweetman@aviationweek.com
Source: AWIN First

aviationweek.com December 17, 2013

日本の2014年度防衛予算要求は前年比3%増で右よりの現政権が昨年12月に発足後の防衛費増加傾向が続いている。

  1. 重点項目で変化はなく、南西部島嶼の防衛で中国を想定、弾道ミサイル防衛では北朝鮮、そしてゲリラ特殊部隊の侵攻への対抗措置が挙げられている。特に後者はとかく存在を疑問視されやすい陸上部隊向けの項目であり、このたび公表された8輪駆動の戦闘車両(105mm砲搭載)が注目される。
  2. 離島防衛用に水陸両用部隊を新設し、米国製AAV7を2両試験調達する。ベル・ボーイングV-22オスプレイ他、空中早期警戒機の新機種導入の調査費目で小額ながら予算がついた。後者は現有のグラマンE-2C(沖縄に配備中)の代替機種検討で川崎重工業から四発ジェット機P-1哨戒機のAEW機改修案が出ている。
  3. 要求どおりなら来年度の大きな買い物リストにはロッキード・マーティンF-35A戦闘機計4機(693億円)、川崎P-1計4機(773億円)、25DD汎用護衛艦の二隻目(733億円)、そうりゅう型潜水艦の第10号艦(513億円)が含まれる。
  4. 研究開発で目をひくのは新型地上配備火器管制レーダーで中国製J-20等ステルス機へ対応すること、将来の国産ステルス戦闘機向け基礎技術として一体成型機体構造、小口径高出力ジェットエンジンがある。防衛省技術研究本部は24DMU(2012年式デジタルモックアップ)と呼称する戦闘機機体構想を10月末に公開している。
  5. この24DMUを見るとスホイT-50とノースロップYF-23を組み合わせたようで、技術研究本部によると構想は戦闘シミュレーションにより三菱F-2後継機の要求性能を決めたという

2013年12月19日木曜日

ブラジルが次期主力戦闘機にサーブ・グリペン導入を決定


速報です。ブラジルがグリペン導入を決定しました。これでボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットには逆風となるでしょうね。


Brazil Selects Gripen For F-X2 Requirement

By Anthony Osborne tony.osborne@aviationweek.com, Bill Sweetman william.sweetman@aviationweek.com
Source: AWIN First

aviationweek.com December 18, 2013


ブラジルは次世代戦闘機選定でサーブJAS 39Eグリペンを採択した。
  1. 12月18日の決定で足掛け12年の次期主力機選定が完了した。ブラジル空軍は新型グリペンE仕様36機を導入する。なお、同型はスウェーデン空軍も発注しており、スイスも選定している。.
  2. ブラジル国防省は同機のコストが一番低く、同国の求める性能水準を実現し、同時に技術移転により国内で同機を独力運用できることを期待できることが選定理由とする。
  3. 総額45億ドルで導入直後の支援・予備部品、訓練、シミュレーター装置、技術移転および産業協力を含む。契約は2014年12月までに発効する見込みで、一号機の同国到着は調印後48ヶ月後。 
  4. 選定の競合機にはダッソー・ラファール、ボーイング・スーパーホーネットもあったが、最終決定は大統領決裁とされ、各社に入札提案の期間延長を繰り返し求めてきた。
  5. ブラジルが運用する戦闘機材の老朽化は深刻で、ミラージュ2000は本年中に退役し、かわりにノースロップF-5EM/FM各型を近代化し飛行時間を延長している。あわせてヨルダンが運用していた旧型F-5をEM/FM仕様に改修しているが、各機も2025年には退役すると、残るのはアレニア・エンブラエル製A-1Mのみで、これも2023年までしか運用できない。
  6. グリペン陣営の主要参加企業にはジェネラルエレクトリックがあり、F414 エンジンを供給しており、Selex-EXはレイブンES-05レーダー、スカイワード-G赤外線探査追跡システム、敵味方識別装置を供給する。コックピットのディスプレイはエルビットのブラジル法人AEL Sistemasが供給。
  7. ブラジルが選定をしたのはスウェーデンの国防装備調達庁FMVが25億ドルでJAS39グリペンC型をE仕様に改装する契約をサーブに交付したのと同日だった。■



サイバー安全保障製品で存在感を増すロッキード


国家安全保障のためには個人情報保護に制限が加わることは必要なのでしょうか。当ブログはそう考えますが、まだ納得されない向きもあるでしょう。企業活動としてロッキード・マーティンは高度のIT技術で情報収集活動で大きなビジネスを獲得しているようです。


Lockheed Sees Strong Cyber Demand Despite NSA Scandal: CEO

By Reuters

aviationweek.com December 17, 2013

ロッキード・マーティンは米国政府向けIT製品の供給で最大の企業。国家安全保障局(NSA)の盗聴スキャンダルがあったが、サイバー安全保障関連の需要は引き続き堅調だという。
  1. 同社CEOマリリン・ヒューソン Marillyn Hewson がロイターに月曜日あかしたところではNSA問題で同社のIT製品やサイバー安全サービス製品の海外拡販に影響はないという。
  2. 「マイナスの影響は出ていません。米国政府ならびに海外政府からの当社サイバー技術への需要は堅調で同時に民間会社向けサポートの営業もしています」
  3. ロッキードはNSA向け、その他政府機関向け取引で最大の企業で政府の情報ネットワーク防護で培った専門技術を民間企業向けにも拡大しようとしている。
  4. 同社の技術実績が海外政府特に中東各国の関心を呼んでいる、というヒューソンは今年1月のCEO就任後四度目の中東訪問をする。
  5. ロッキードが海外取引拡大の中心と見るのは次の7カ国。英国、オーストラリア、カナダ、日本、イスラエル、アラブ首長国連邦、サウジアラビア。とくにF-35戦闘機が取引額増加で大きな牽引力を発揮しており、その他ミサイル防衛システム、C-130J輸送機もある中で、衛星技術と政府向けITサービスが急成長している。
  6. 7月に発足した同社の国際部門ロッキード・マーティン・インターナショナルLockheed Martin International,を率いるパット・デューワーPat Dewarはロイターに対し戦闘機はじめとする同社の防衛装備は世界各国で知名度が高いが、ITプロバイダーとしての存在を示す必要もあると見ていると語った。
  7. ヒューソンからはサイバー攻撃への世界各国の懸念か政府・民間向けに同社のサイバー関連事業拡大は可能と見ていると発言があった。
  8. 「エドワード・スノウデン事件がありましたが、現実に脅威がある限り需要も増え続けると見ています」としロッキードが提供しているのは単なる社員向け機密取り扱い許認可手続きを超えた高付加価値のミッション支援であることを明らかにした。「需要は加速化しています」
  9. 今週月曜日に米連邦裁判所が米国政府によるアメリカ国民の電話通話記録の収集は違法性の疑いが高いとの判決が出て、情報機関の正当性が試される展開になってきた。
  10. 英国紙ガーディアンは6月に毎日の電話通話記録数百万件について通話時間や通話回数で生のデータを秘密裏に収集する認可が米情報監視裁判所から出ていると報じた。ただし、ここで言うデータには通話内容そのものは含まれていないと米政府関係者は説明する。
  11. 人権擁護団体はこのデータベースを個人情報の侵害とし、中止を求める提訴をしているが、米政府はデータを把握する能力がアルカイダはじめとする戦闘集団との7年間にわたる戦いで不可欠であったとしている。■



2013年12月18日水曜日

ロシア空軍の装備近代化の進捗には注意が必要でしょう


ロシア軍の装備近代化がペースを上げています。その影響は近いうちに日本周辺にも現れるでしょう。とりあえずは既存の長距離爆撃機のELINTミッションが日本列島を取り囲む形で増えていることが気がかりです。そのあとにはPAK FAことT-50ステルス戦闘機が本当に実戦化されるかが注目ですね。


Pace Of Russian Rearmament Quickens

By Maxim Pyadushkin
Source: Aviation Week & Space Technology
December 16, 2013
Credit: Sukhoi

ロシア防空装備の近代化が進行中。中でも空軍は今後10年で4.5兆ルーブル(1,360億ドル)を投入し、旧ソ連時代の装備を一新する。
  1. 空軍は2020年までに機材の7割を交代させ、スホイT-50(F-35に匹敵する高性能機)、ステルス長距離爆撃機を調達するほか、地対空ミサイルも新型に切り替える。しかし、構想の資金裏づけが非現実的との指摘もある。
  2. 今のところ資金注入は予定通り進んでいる。プーチン大統領は軍関係者、メーカー幹部による説明を受け2010年に作成した調達案を先月下旬に承認している。説明会は調達案を公開方式で検証する初の例となり、ロシア経済の低迷とは裏腹に軍備拡張が順調に進んでいることを示した。.
  3. プーチン大統領によれば今年の空軍は固定翼機86機、回転翼機は100機を新規調達しているという。2014年は固定翼機は120機、ヘリコプター90機になる。これに対し2011年12年の合計で263機だった。
  4. 空軍の目論みは2020年時点で新型機比率を全体の7割1,600機にすることだ。
  5. 空軍が発注しているのはスホイSu-34戦闘爆撃機、 Su-30M2/SM多用途戦闘機であり、セルゲイ・ショイグ国防相Defense Minister Sergey Shoigu によれば今年はSu-34一個連隊を編成する。ボリソグレスクの訓練基地にはヤコブレフYak-130ジェット練習機の導入が始まっている。.
  6. 合同航空機製造会社 United Aircraft Corp. (UAC)のトップ、ミハイル・ポゴシャンMikhail PogosyanによればスホイT-50の公式性能評価テストが空軍で2014年に始まる。第一段階は2015年に完了するという。試作型5機合計の飛行回数は450回という。ロシア国防省より次期長距離爆撃機の性能要求が同社に9月に提示されている。
  7. 空軍は PAK DA プログラムでステルス爆撃機の開発を期待して、現状のツボレフTu-160ブラックジャック、Tu-95ベア、Tu-22M3バックファイヤー各爆撃機と2025から2030年にかけて交代させたい意向だ。一方稼働中の爆撃機には新型エイビオニクスや空中発射兵器を搭載し性能向上を図っている。UACではTu-160およびTu-95の改修型の工場内試験を完了し、空軍による公試用に機体を引き渡している。
  8. また空軍の空輸能力向上も調達計画の狙いだ。UACは11月にIl-76MD-90Aの公試を完了した。同機はIl-76輸送機の近代化改修型で最大離陸重量210トン、最大着陸重量170トン。空軍は39機発注しており、改修はすべてロシア国内で行う。同機の旧型はウズベキスタンで生産されている。UACは中型輸送機開発をインドと共同で開始している。
  9. 他方で防空軍にはS-400(SA-21グラウラー)長距離防空、弾道ミサイル迎撃ミサイルシステムが導入されている。今年は2個部隊に供給され、来年はさらに3部隊に納入するという。メーカーのアルマズ・アンティ Almaz-Antey は次世代モデルS-500を開発中で、2014年から性能実証を始めるとプーチン大統領が発表。
  10. 陳腐化してきたS-300PTおよびPS(SA-10グランブル)がこれまでの防空兵器でもっとも多く配備されてきたが、S-350ヴィチャーズ Vityaz 中距離移動型SAMに更新される。同ミサイルは今年夏に存在があきらかになったばかりで、これも2014年中に性能公試を完了し、2015年か16年より納入開始となる。.
  11. 防空軍には早期警戒レーダー網の拡充でミサイル対応力が増える。現在運用中のボロネーズ Voronezh ・モジュラー式レーダー基地が現在の三箇所から今後5年以内に7箇所に増える。.
  12. ただし国防アナリストの中には軍備更新案の実施に懐疑的な向きが少なくない。「予算が十分についても完全実施はありえないだろう。というのも必要な軍事産業施設の近代化と関連法規制が追いつかないため」と言い切るのはモスクワの国防シンクタンク 戦略・技術解析センターの副所長コンスタンティン・マキネンコ Konstantin Makienko, deputy director of the Center for Analysis of Strategies and Technologiesである。


2013年12月17日火曜日

低コスト軍用機をめざすスコーピオンが初飛行に成功



以前お伝えしていた低価格の実証機スコーピオンが無事初飛行にこぎつけました。Flightglobalによると国名不詳の海外顧客がすでに同機に関心を寄せているとのこと。高性能高価格があたりまえだった戦術航空機の常識を破る機体になるか、今後注目です。

Low-cost Scorpion fighter starts flight tests

Textron AirLand
By:   STEPHEN TRIMBLE WASHINGTON DC
Flightglobal, 13 December 2013

テキストロン・エアランド Textron AirLand のスコーピオンが12月12日に初飛行に成功し、二年間の型式証明取得プログラムが開始された。同時にローンチカスタマー(国名不明)との商談成立の可能性が高まっている。「わがチームにとって大きな意義がある。これまで23ヶ月集中しきた成果だ」と同社社長ビル・アンダーソン Bill Anderson は語った。
  1. 同社はテキストロンと新興会社エアランドの合弁事業体で海外顧客と商談が予定されている。この顧客は初飛行を見て商談を開始するとしていたとアンダーソンは語る。
  2. 購入可能性があるこの海外顧客以外に米軍のとの商談も予定されている。
  3. 同機は同社が自社費用で完成させ、低コストで現有機材を置き換える実証提案を狙うもの。機体価格は20百万ドル。一時間当たり運用コストを3,000ドル未満が目標で、フェアチャイルド・リパブリックA-10の12,000ドルを大幅に下回る。
  4. 初飛行はマッコーネル空軍基地(カンザス州)で1.4時間にわたり、降着装置をおろしたまま実施した。速度120-200kt (222-370km/h)で高度は10,000-15,000ft (3,050-4,570m)を記録した。
  5. テキストロン・エアランドは型式証明取得を柔軟に考え連邦航空局の型式証明と別に軍用滞空証明も必要に応じ取得する。
  6. エンジンはハネウェルTFE731ターボファン二基、巡航速度は450kt で最大1,360kg のペイロード(3,000lb)を翼下・内部に搭載する。
  7. 今後12ヶ月で500回のフライトテストを実施し、センサー、兵装テストも年末におこなう。
  8. 機体は既成製品で構成しモジュラー式設計で、複座仕様から単座あるいは無人機に変更できる。
  9. テキストロン傘下のセスナが複合材料で低コスト工法で製作し、いつでも大量生産できるという。テキストロン・エアランドの設計開始は二年足らず前にすぎない。■



2013年12月16日月曜日

KC-46A一号機の完成近づく


Boeing Joins First KC-46A Airframe

By Guy Norris
Source: Aerospace Daily & Defense Report

December 12, 2013

米空軍向け次期空中給油機KC-46Aになる767-2C一号機の胴体と主翼がボーイングのエヴァレット工場(ワシントン州)で結合された。.
  1. 米空軍は2011年2月に総額44億ドルでKC-46の技術・製造・開発 (EMD) 業務を同社に発注した。
  2. EMD契約で試作型4機を製造し、フライトテストに使用する。この4機も含めた18機を実戦配備型機体として2017年8月までに空軍に引き渡す。
  3. 一号機は40-32工場で組み立て中で、隣ではフェデックス向け767-300Fも組み立て中だ。-2Cとは給油機モデルの名称。ボーイングの767受注残は44機で、今後はKC-46生産が増え179機を空軍に2028年までに納入する。
  4. 主要構造部品の納品はは予定通りで、最初の4機は2014年中ごろに完成する、と同社副社長(機動、監視、交戦担当)ティム・ピータース Tim Peters, Boeing’s vice president for mobility, surveillance and engagement.は説明。
  5. 最終機体組み付けで胴体部分に主翼、水平安定板、垂直尾翼が接合され、主降着装置が取り付けられ、油圧、空気圧、電気の各系統も同時に取り付けられる。最終組み立て工程に移動する前に機体はジャッキで持ち上げられ、電源、油圧が入り、主翼・降着装置のテストを行う。給油機ならでは特殊装備として給油システム、あらかじめ結束してある油圧管などがある。
  6. ー2C一号機の初飛行は2014年6月の予定で、一方機体装備を完全搭載したKC-46Aの初飛行は2015年1月。767-200ERの基本設計にー2Cでは貨物搭載室の床を強化し、貨物搬入扉、他貨物機機能が加わり、コックピットは787を基にしており、燃料搭載量を増やすため補助タンクがあり、給油用に配管、配線がついている。
  7. ボーイングは4機を投入してFAAの型式証明を二部に分けて取得する。まず767-2C「臨時貨物機」の改正証明は空中給油装置他軍用エイビオニクス、防御装置をつけていない機体向けだ。その後完全装備したKC-46A用に追加型式証明(STC)を申請する。
  8. VH001は型式証明完了までは-2C仕様のままとし、VH002は上記STC手続きの開始前にKC-46Aとして完成させる。三号機VH003は-2Cの型式証明テストに、4号機はKC-46A二号機として完成させる。■

2013年12月11日水曜日

中国のADIZ設定の先にあるものは何か 

China Uses ADIZ As Part Of Buffer-Building Strategy

By Bradley Perrett
Source: Aviation Week & Space Technology

aviationweek.com December 09, 2013


中国が高圧的かつ異例な形で防空識別圏(ADIZ)を設定したのは同国への海上交通で実効支配を徐々に強化していく一環だ。心配なのは中国共産党が国際緊張を意図的に高め国内支持を強めようとしている点だ。
  1. 中国は周辺国へ自己主張を強めており、敵意をあらわにし外部を見る態度は国内政治向けに国力増強と国家主義を強化するためのもので、日本が大戦中の残虐行為を認めないことがこの傾向を助長している。
  2. 今のところ中国のADIZ内での民間航空は通常通り運航中で、日本の各社はフライトプラン提出を拒否しているが支障は発生していない。一方、米日韓の軍用機は中国の要求を完全に無視している。
  3. 「今後の執行が問題です」と語るのはシドニーのシンクタンク、レービ研究所Lowy Instituteのローリ・メドカフ Rory Medcalf(アジア海上安全保障専門家)だ。宣言後の中国は他国をどう自国要求に従わせるのか。
  4. 航空会社へは着陸拒否すれば遵守させられるが、その動きはない。中国が日系航空会社に中国運行を拒否すれば、日本も同様の報復措置に出て、世界第二、第三位の経済大国間で直行便が消滅する。
  5. これに対し軍用機に強制すると確実に危険がともなう。中国の主張する排他的経済水域内では中国海軍艦船が米海軍艦船に衝突してくる事例が発生しているが外国の軍事行動を排除しようとするものだ。が、空で同じ行動に出ると悲惨な結果になるのが、2001年に中国戦闘機パイロットが米海軍EP-3オライオン情報収集機に接近しすぎ衝突した事例だ。
  6. 11月23日の中国ADIZ宣言へ報道の関心は中国外交政策の不器用さに集まっている。ADIZ設定そのものは珍しくないが、中国の一方的宣言は他国との事前協議なく、日本との対立が解消されない中だった。一方で、中国のADIZ設定は自国の所有意識を重視しており、圏内を飛行する全航空機にフライトプラン提出を求めるもの。
  7. EEZ定義の拡大解釈も連想させ、ともにシドニー大ジョン・リーJohn Lee教授がいう中国のサラミソーセージ薄切り戦略の一部だという。つまりそれぞれの動きで中国は近隣の支配に向け次の段階をねらい、南シナ海でもEEZ内の経済権益を強化する動きがある。
  8. 東シナ海上空のADIZは「戦略的に賢明な動きだ。他国に中国の権威を受け入れさせ、次の手に拡大する一歩となる」とメドカフは言う。同空域を通過飛行する乗員がフライトプランを提出し指示通りの周波数で交信をすれば中国に屈することになる。
  9. 米国では下院軍事委員会海上兵力・軍事力投射小委員会の委員長ランディ・フォーブス(ヴァージニア州選出、共和党)Rep. Randy Forbes (R-Va.)が国家安全保障担当大統領補佐官スーザン・ライスNational Security Adviser Susan Rice に12月3日付けで書簡を送っており、FAAから中国の新政策に従うことを米系エアライン各社に勧奨しているのを見直すよう政府に要求している。「米国エアライン各社が中国ADIZに従えば、政府は中国による領空の国際的な概念の破壊に手を貸すことになる」
  10. 外部からは中国の動きは好戦的に映る。中国軍が日本艦船に射撃照準レーダー波を照射した事件もあった。しかし中国の観点では、近隣水域を実効支配し防衛上の緩衝地帯が生まれる、とシンガポールの南洋理工大学で中国外交政策を研究するLi Mingjian李明江は説明する。中国が主張するEEZ権益がその鍵だという。もし中国が所属をめぐり紛糾する韓国からインドネシアにかけてひろがる諸島、岩礁、砂州で中国領有を他国に認めさせれば、またもし外国軍の艦船、航空機がEEZに入るためには中国の許可が必要となれば、中国は自国の安全が確保されたと感じることができる。緩衝地帯はまだできていないが、サラミを薄切りにする動きは中国が外部から停止を求められるまではつづくだろう。
  11. だが、そもそもなぜ中国は巨大な緩衝地帯が必要なのか。外国軍事を何百キロ以内に配置させたくないと感じる国はほかにない。その答えは中国は西側諸国では第一次世界大戦で消滅した「自国と他国」を区別する心理構造をまだ残してることであり、「中国は国際的な仕組みの中で部外者扱いされていると感じている」と李は見る。中国が信頼できる友好国は少数で、パキスタンと北朝鮮くらいしかない。北朝鮮は中国にとって戦略的な緩衝地帯にもなっている。一般的な中国人はなんのためらいもなく、戦争の可能性特に日本との開戦を口にする。
  12. また中国人が理解ができないのが日本が1937年から45年にかけ中国中心に数百万人を殺害したのに西側諸国が日本を許していることだ。もし戦時中の虐殺行為を無反省にかつ記憶していないとしてドイツと共存するようロシアに求めたらどうなるか。
  13. 李が指摘するのは中国は自国の緩衝地帯へ批判を受け、自国の安全がおびやかされていると感じ、米国が北朝鮮体制を崩壊させようとし、台湾の独立を支持しており、日本と東南アジア各国に中国と領土問題で対立を煽っていると見ているとする。
  14. 現在進行中の緊張の裏には国内政治がある。中国外交の強硬策は、好んで現行方針になっているわけではない。中国国民は意図的に国家主義の扇動を受けているものの、自国の影響力が周囲にさらに増大することを望んでいる。外交で弱みを見せれば広範な国内批判の対象となる。
  15. 中国共産党の権力基盤は急速な経済成長と国家主義にあるといわれ、経済減速で指導層が国家主義的感情を引き上げようとどんな行動に出るのかが不安となる。同時に共産党には国民から産業公害から汚職にいたるまでの苦情が充満している。また、習近平政権が進める改革政策の破壊的な結果もここに加わるだろう。「中国指導層には弱みを示すのは実質的に不可能」と李は見ている。「新指導部は対外危機により国民をまとめる策が役に立たないと理解しており、改革を推進し国内政策を重視するだろう」
  16. そうなると危機を作り出す欲求がでてくる。この欲求は共産党の立場が弱体化するほど強くなるだろう。中国が緩衝地帯を確立しようと過激手段を選択すれば、あともどりができなくなってしまうだろう。■



スーパーホーネット、グラウラーで決断の時期が迫るボーイングは来年の3月に注目


Boeing Faces March Funding Decision On Super Hornet, Growler

By Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First

aviationweek.com December 09, 2013


F/A-18E/Fのメーカーであるボーイングは来年3月めどに米海軍が追加発注しない場合にスーパーホーネットおよびEA-18Gグラウラーの生産継続を自社資金ですべきか決定する。同社のスーパーホーネット担当副社長マイク・ギボンズ Mike Gibbons, the company’s Super Hornet vice president が明らかにした。
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  1. 発注分のホーネット/グラウラーの最終機がラインをロールオフするのは2016年の見込。
  2. 米海軍は追加発注に関心をもちながら、確約していない。同社は2015年度予算が議会に持ち込まれる2月になんらかの材料が出るかを注目し、セントルイス工場の生産ラインに自社費用を投入する無駄を回避したい意向だ。
  3. 「当社に生産ラインを維持する財務的余裕はあります」と同副社長は12月9日のホーネット35周年式典で発言。
  4. ボーイングは同機を年間48機生産中で、最新の機体単価は37百万ドルとギボンスは示すがここにジェネラルエレクトリック製エンジン2基および電子戦装備品を含めると(両方とも政府が同社に支給している装備)機体単価は50百万ドルになる。グラウラーはジャマー装備、特殊エイビオニクスで9百万ドル上乗せになる。2014年度予算では年間生産を36機に減ら要求をしているが予算案は議会が未可決のまま。
  5. ギボンスによればボーイングは年産24機まで削減しても機体単価はほぼ同額にする方法を検討中という。その裏にC-17で生産数を削減しつつ単価上昇を回避した経験がある。
  6. 同機にはマレーシア、デンマーク、ブラジル、カナダ、クウェート、ほか未公表の中東国家の引合が寄せられているが、各国とも発注を確定していない。
  7. 米海軍は発注分563機中490機のスーパーホーネット、135機中90機のグラウラーをそれぞれ受領済みと、フランク・モーレー大佐(海軍で同機担当) Capt. Frank Morley, program director for the Navy が同式典で明らかにした。オーストラリアが12機のスーパーホーネットをロッキード・マーティンF-35のつなぎで追加発注したことは、「ホーネット/グラウラーが今も有効な選択の証左」と同大佐は表現した。
  8. 海軍がF-35の初期作戦能力獲得を宣言するのは2019年2月の予定。その間は現有機材の一部にボーイングが「高性能スーパーホーネット」として提案する一体型燃料タンクconformal fuel tanks (CFTs) を装備する改良案を検討中。
  9. 他方で海軍は新型次世代ジャマー選定の仕切りなおし案に取り組んでいる。これはレイセオンが279百万ドルでいったん受注したのをBAEが抗議して再選定するもの。ドナルド・ガッズ海軍少将(航空部門開発担当) Rear Adm. Donald Gaddis, Navy program executive officer for aviation によれば海軍は抗議による遅れが発生したが新型ジャマーの初期作戦能力実現を2020年に当初どおり達成するという。■



2013年12月10日火曜日

RQ-180の存在についてさらに詳しく 米海軍協会ニュースより


Analysis: Secret UAV Revelation Raises More Questions than Answers

USNI News By: Dave Majumdar
Monday, December 9, 2013

航空専門誌Aviation Weekによれば高性能ステルス長距離戦略無人情報収集監視偵察機(ISR)、ノースロップ・グラマンRQ-180が存在し、2015年に配備開始となるという。
  1. 同記事は「国防・情報機関関係者」を引用しているが、米空軍も同様の開発計画を認めている。
  2. 新型ISR機が空軍の極秘テスト施設グルームレイク(ネヴァダ州)で開発中とのうわさは以前から流れていたが、詳細ははっきりせず、「ステルス型のグローバルホーク」とだけといわれてきた。機体は全翼機型でノースロップ・グラマンRQ-4グローバルホークとほぼ同寸だが、細長い主翼は高高度での効率を最大限に発揮する。「広帯域」ステルス性があるとされ、高低双方の周波数帯レーダーに対抗できるという。
  3. Aviation Week記事では国防関係者が匿名で語り、真実と思われるが、RQ-180が存在するとして、なぜペンタゴンはわざわざこの時期に同機の存在を認めるのか。.
  4. 理由は予算だ。極秘計画が漏れるのは特定の課題が達成された後が多い。今回はRQ-180の予算を確保し、RQ-4Bグローバルホークを中止を議会に認めさせるのが目的だろう。
  5. 米空軍は懐疑的な議会へグローバルホークの大部分の処分を認めさせようとしてきた。RQ-4Bが投入できるのは自由に飛行できる空域のみで、防空体制が確立された空域に入れない。これが米軍が太平洋地域に軸足を移動させる際に問題になった。空軍上層部は今年に入り極秘の機体の存在を認めてきた。
  6. 「よく考えもせずに公表はしない」と空軍副長官付けの軍代表チャールズ・デイビス中将は下院軍事委員会で4月に発言している。
  7. RQ-180は開発中の長距離打撃機材(LRS) ファミリーの一部らしい。空軍説明では「ファミリー」は爆撃機以外に、巡航ミサイル、通常弾頭つき即座全地球攻撃ミサイル、および電子攻撃用とISR用機材を含むという。
  8. RQ-180はISR任務と電子攻撃ミッションを担当する機材なのだろう。ただ同機が本当に存在するのかそれとも以前のオーロラ極超音速機のように単なるうわさなのかは時がたたないとわからない。■


2013年12月7日土曜日

特報 RQ-180ステルスISR無人機登場

Where Does RQ-180 Fit In Stealthy UAS History?

By Amy Butler abutler@aviationweek.com, Bill Sweetman william.sweetman@aviationweek.com
Source: AWIN

aviationweek.com December 06, 2013

イランが自国に侵入した米無人機を捕獲したと国営テレビで誇らしく宣伝したのは2011年12月のことで、その機体はロッキド・ーマーティンRQ-170センティネルで、米空軍がその二年前に存在を公表していた。
  1. だがRQ-170の存在は完全に秘匿されておらず、アフガニスタンからパキスタン、イラン上空に向けて飛行していたことが知られており、2008年にはカンダハール空軍基地で写真が撮影されている。さらに2011年のオサマ・ビン・ラディン殺害作戦にも同機が関与している。
  2. 同機が捕獲された事件にペンタゴンは黙殺を通した。その理由がいま明らかになった。国防関係、情報関係筋によればセンティネルは特定のミッションを意識し迅速に機体を開発プロジェクトの成果でそもそも長期間の運航は想定していなかったという。だが新型UASの存在があきらかになった。ノースロップ・グラマンRQ-180である。
  3. 同機のなりたちを理解するためには米空軍の描く無人機ファミリー開発計画を理解する必要がある。その一角に長距離攻撃ならびに情報収集監視偵察(ISR)用機材が含まれている。
  4. RQ-180の公表で空軍は次世代爆撃機(NGB)で想定されていた要求性能水準を引き下げることが可能となる。NGBは高コストが理由で2009年に中止され、その後を継いだ長距離打撃爆撃機(LRS-B)はコスト切り下げを目的に開発中でRQ-180初めとする無人機ファミリーと共通運用が想定する構想がある。
  5. ノースロップが同機開発契約を交付されたのは2008年であったと思われる。米空軍は当時の国防長官ロバート・ゲイツからイラク・アフガニスタン作戦でのISR機能の不足を指摘されていた。一方では防護が堅い北朝鮮やイランで情報不足が国防関係、情報機関で痛感されていた。
  6. 同時に空軍と海軍の間で共通ステルスUASを開発し、ISR任務と攻撃任務を陸上発進、艦上運用させる構想が挫折している。この構想は共通無人戦闘航空機システム(J-UCAS)と呼ばれ2005年に放棄された。海軍は独自に空母搭載型ISR機材を求めX-47BとしてUCAS実証機を完成させ、現在はその発展形として無人艦載情報収集攻撃機(Uclass)としてが開発中である。空軍は独自に極秘計画を進めており、その一端がRQ-180なのだろう。
  7. 現在は国防支出へ厳しい注文がついているが、RQ-180は順調に開発が進んでいる。極秘プロジェクト予算の削減はその他公表済み計画ととの比較では同じ率だと空軍長官代理エリック・ファニングは説明してる。「空軍入りしてはじめて極秘開発機を近くで見る機会隣、これまでの投資がうまく成果をあげていることがわかった。公表ずみ機材で削減した予算を極秘機開発に利用している」.
  8. イラク・アフガニスタンでは同盟側空軍部隊には地上からのたいした脅威は存在せず、米く群はISR機材にはステルス性を必要とせずビーチクラフトキングエアを回想したMC-12Wプロジェクトリバティやブルーデビル1情報収集機材で十分だった。
  9. 米空軍空中戦闘軍団司令官マイケル・ホステッジ大将は「信じられないほどのISR能力の機材を開発した」と9月に発言している。従来機とはちがい、強固な防衛体制をかいくぐる能力が必要となったのだという。
  10. マッハ3飛行ができるSR-71が1998年に現役を退くとペンタゴンには防衛体制が整備された敵上空を飛行して情報収集できる機材がなくなった。対空兵器の射程距離が長くなり、防空体制が統合される傾向の中で、高コストのブラックバードが博物館入りしている。1999年はRQ-3ダークスターUAS開発中止の年となっている。同機はロッキード・マーティンとボーイングが共同で開発していたが飛行安定性で問題が見つかったため防空体制が整備された空域での長時間作戦は実施で機体と判断されたのだ。
  11. 衛星により敵地の状況を探ることができるとはいえ、滞空して柔軟に運航できる航空機の能力はない。航空機の場合は飛行経路を変更して衛星の欠点である視覚の傾斜をある程度緩和できる。また敵側は衛星の通過時間を予測して偽装を行うことが可能だ。
  12. 超高速飛行が可能な機材の開発はロッキード・マーティンのSR-72含め開発が続いているが、調達の誤算や高リスク技術の導入には政策立案サイドはもううんざしている。
  13. そこでRQ-180がまもなく実戦配備になれば空軍がノースロップグラマン製グローバルホークで突如方針を変更した理由に根拠を与えることになる。同機は空軍のISR機材開発の中心的存在と一時は見られていたが、ブロック30が有人型U-2の後継機種と注目をされていた。U-2の7万フィートに匹敵する高高度飛行はできないが、グローバルホークは数日間滞空することが可能でパイロットの健康を心配する必要がない。実際に同機はアフガニスタンで支援作戦に投入されている。.
  14. ところが空軍はそのブロック30の調達中止を提示し、同機の運航コストを理由にあげているが、以前は高コストでも運用が必要と主張していた。同時にブロック30の電子光学レーダーセンサー装備の作動水準が低いことも理由に挙げているが、これについても以前は実用に耐えると主張していた。
  15. これはとりもなおさずグローバルホークの性能を上回るRQ-180が運用可能となったためだ。空軍はU-2を改修し今後もスタンドオフ情報収集機材として運用を続け、RQ-180に敵地侵入ミッションを担当させる。
  16. 各軍のミッション・機能検討の結果、米空軍は陸上配備型のステルス長距離飛行可能機材の開発の権限を与えられ、海軍はUclassで高性能ステルス性能と引き換えに高コストをどう回避するか苦労しているところだ。空軍がRQ-180の運用をすれば、海軍はUclassのコスト削減策でオプションが生まれる。
  17. おそらくこの内部検討の影響で海軍はUclassの要求性能、設計両面で遠慮がちだ。国防長官官房と統合参謀本部はUclassの想定運用を「紛争中」空域(ペンタゴン用語で防空体制があるものの最新式防空兵器は配備されていない空域のこと)のみとしているが、海軍はペンタゴンと異なり同機をもっと防空体制が重い空域でも十分生存できる設計を当然コストが高くなるとしても希望している。また、空軍はMQ-1プレデターおよびMQ-9リーパーの運用を今後も継続し、防空体制が未整備あるいは軽微な空域に投入する。いわゆるMQ-Xとのリーパー後継機は空軍の2012年度長期整備計画から姿を消しているが、これもRQ-180を中心に機体開発を整理しようしていることの証だろう。
  18. RQ-180で空軍が求めてきた高高度侵入能力が実証されれば、次の課題はプレデター/リーパー部隊の再編成および後継機種の開発に移るだろう。■

ram

2013年12月4日水曜日

韓国のF-35選択でF-15サイレントイーグルの運命はどうなるのか


Seoul’s F-35 Plans Thump F-15 Silent Eagle

By Bradley Perrett , Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com December 02, 2013
Credit: BOEING

韓国が装備編成を犠牲にしてまでも導入しようとするステルス機選定でF-35を指名したことはロッキード・マーティンにとっては朗報だがボーイングにとっては準ステルスF-15の販売の夢が砕かれることになる。
  1. .韓国は当初の予定60機に対し40機のF-35AをF-Xフェイズ3として導入する予定。残る20機は安全保障と財政状況両面から後日発注することとしており、F-35以外の機種選定もありうる。F-35に傾いた背景には韓国軍部が圧倒的に同機導入を支持していることがある。ただ予算の制約で購入数が三分の一減らされている。
  2. 成約の見込みが低いままボーイングはそれでもサイレントイーグルを残る20機として購入してもらえないか勧誘中。ボーイング・ディフェンス社長デニス・ミュレンバーグ Dennis Muilenburg は複数機種導入の可能性を示し、F-35選定決定後もその姿勢を崩していない。
  3. 「サイレントイーグルはまだ利用可能です。F-15性能改修のオプションのひとつです」と同社スポークスウーマン、カレン・フィンカッターは同社はまだ韓国政府から正式な結果通知を受けていないという。
  4. もうひとつの競合相手となったユーロファイターコンソーシアムも残る20機枠に同社のタイフーンを販売できる可能性は小さい。
  5. ロッキード・マーティンは同機の引渡しを2018年から4年間かけて実施する予定で、残る20機受注も期待している。
  6. 現地報道によれば韓国空軍のF-35選定は二週間前に決まっており、レーダー断面積の数値目標を立てていた。今回は8月のどんでん返しのあととして、再度要求性能水準を見直した結果であり、予算と選定手順を再度設定している。
  7. 韓国空軍上層部はF-35を望ましい選択と見ていたが、政府関係者によると空軍参謀総長が同機の引渡しがさらに遅れるようだとF-15選択に傾きかけたという。
  8. .FーXフェイズ3ではF-4ファントムとF-5タイガーの機材更新を目指している。先立つフェイズ1および2でF-15合計61機を導入している。
  9. 今回はハイエンドのステルス機が選択されたのはボーイングには打撃で、準ステルスのサイレント・イーグルが選定されれば生産ラインを維持できると目論んでいたためだ。ボーイングにはF/A-18E/Fスーパーホーネットしか残っておらず、低視認性改装を受けて同機がステルス機を求める各国でF-35への対抗馬としては唯一の存在になる。
  10. 「F-35A は開戦初期段階で敵を敗北に追い込む差をつけられる戦略的な兵器となる」と韓国聨合通信は参謀本部のことばを紹介している。「韓国軍は同機を効果的に使い敵の挑発に対処する」
  11. 残る20機がF-35になるのか、業界ではもう勝負はついているとの見方が強い。
  12. 先週は同時に韓国参謀本部が国産KF-X戦闘機開発の中期予算案を認めたことも注目すべきだ。これで同機がすぐに生き残るわけではないが、KF-Xには国内政治で反対論が手ごわく、2014年度予算に計上しているのも設計研究分のみだ。
  13. .韓国軍はKF-X開発が2020年までに完了することを希望していると聨合通信は匿名の取材源から伝えている。開発完了と第一線配備まで三年間しかないことについて説明が足りないが、2020年に同機が実戦配備できるとはとても思えない。計画では実寸大機体の開発から初飛行まで7年間しか想定しておらず、2015年までに機体開発が完了するのは不可能な状態だ。■