2019年3月21日木曜日

カンボジアでの中国開発は軍事基地建設が真の狙いではないか

ASEANは結束力も弱く、中国としては自国にたなびくカンボジア、ラオスあたりを借金漬けにして言うことを聞かせたいのでしょう。南シナ海は軍事化しないなどと平気で嘘を言える国ですから信用できませんが、本当にカンボジアに軍事拠点ができれば、大変なことになります。本当に中国はいろいろお騒がせなことをしてくれますね。


Is Cambodia’s Koh Kong project for Chinese tourists – or China’s military? カンボジア・コッコン開発は中国旅行者向け事業か中国の軍事利用が目的なのか

  • 中国企業Union Development Groupによる開発は順調なようだ
  • 滑走路が異常に長い空港、港湾浚渫工事を見ると中国の軍事拠点づくりではないかと疑う向きがある


Published: 7:03am, 5 Mar, 2019


A satellite image of the suspiciously long runway at the airport in Koh Kong. Photo: Handout
衛星画像に現れたコッコンの怪しい大型滑走路。Photo: Handout


国が海外で大金を気前良く使う自国旅行客向けに海外観光地の開発に関心を示すのは極めて普通のことで、カンボジア沿岸にカジノ、ゴルフ場、豪華リゾートの開発が進んでいる。


カンボジアはコッコン地方の一等地および全海岸線の2割に相当する部分で中国企業Union Development Group(UDG)に観光業のメッカの建設を許可し、賃貸料は年間百万ドルと破格の条件だ。


これは表向きの説明だ。今回の条件があまりにも虫がよく、中国には別の思惑があるのではないかとの見方が出ている。中国は軍事利用をねらっているのではないか。


こうした見方が広がってきたのは欧州宇宙機関が配信した衛星画像で建設中の滑走路が民間機向けに不要なほど長いと判明したためだ。


カンボジア側は大深度港湾開発は中国の軍事利用の意図と無関係と繰り返し説明しているが、滑走路が浮上して軍民両用の狙いがあるのではとの疑いが強まっている。


「滑走路は3,400メートルでプノンペン国際空港より長く、中国空軍の機材全部が運用可能」と戦略国際研究所のアジア海洋透明性確保事業の責任者グレゴリー・ポーリングが述べている。


「純然たる民間用ならこんなに場所に建設するのは妙だ。近くにあるのはコッコンカジノ・リゾートだけだ」(ポーリング) コッコンの建設工事はここ数ヶ月止まったままとの報道がある。


事業が軍事用途なのかについてポーリングは「火は見えないが煙はたくさん出ている」としつつ「東南アジアで中国の軍事力展開を受け入れる国がはカンボジアだ」と述べた。


Sceptical: US Vice-President Mike Pence is concerned the Koh Kong project has a military use. Photo: AFP
米副大統領マイク・ペンスはコッコン事業に軍事利用の狙いがあると疑う Photo: AFP


衛星画像から滑走路建設が見えるが、マイク・ペンス副大統領がカンボジア首相フン・センに軍事転用への懸念を伝える書簡が昨年11月に送っている。


滑走路はその後ほぼ完成しており、連邦航空局がボーイング787-900に推奨する2,800メートルを大幅に超えている。


UDGは民間企業とはいえ、事業は政府肝いりとの疑いが持たれている。元副首相で一帯一路構想を推進する张高丽Zhang Gaoliが同事業を初期段階から支援し、同社とカンボジア政府の合意形成を取り仕切っていた。また現地には中国共産党関係者が繰り返し視察しており、政治協商会議副議長王钦敏Wang Qinmin もその一人だ。


民間事業だが実態には疑念が強い。西側軍事専門家のひとりは「UDGは対象地区の商業価値について一貫した見方がないようだ。おそらく軍用も視野に入れている」と述べる。


カンボジア国防省報道官Chum Socheatに連絡を試みたが接触できず同国政府報道官Phay Siphanはカンボジア政府の監督の有無について「わからない」と答えた。


だがNaresuan大学の研究員ポール・チェンバースはフン・センが中国に海軍基地設置を認めようとしているとカンボジア政府高官がこっそり話してくれたと本誌に述べている。


チェンバースはコッコン事業を中国がラオス、スリランカで進める事業になぞらえた。スリランカは Hambantota港の使用権を中国に99年有効で貸与している。これは同国が同港湾建設で中国の貸付に返済不能となったためだ。


Controversial: the Chinese controlled port in Hambantota, Sri Lanka. Photo: AFP
スリランカのハムバントタ港は中国の支配におちた. Photo: AFP

「スリランカは中国依存度を高めすぎたあまり港湾を中国に手渡すはめになった。同じことがカンボジアでも起こりうる」(チェンバース)


カンボジアへの経済援助で2016年の中国は36パーセントを占め、海外投資では30パーセントだった。昨年に中国は5.58億ドル追加しコメ40万トンを輸入すると約束した。EUや米国が人権問題からカンボジアへ制裁措置を取る中、カンボジアは中国依存をさらに高めそうだ。


UDGの事業用地はカンボジアに契約終了の2108年に返還されるが、中国が恒久的所有権を主張すると見る向きもある。


スティムソンセンターの中国研究部門長Yun SunはUDG港湾施設には「軍事転用の余地がある」とし、「中国がジブチ、スリランカ、パキスタン、ビルマで行ってきた軍民両用型開発のパターンそのものだ」という。
.
中国をめぐり紛糾は避けられない。


コッコン開発プロジェクトの場所は戦略的な位置にあり領土問題やマラッカ海峡経由のエネルギー輸入といった微妙な問題につながる南シナ海とちかく、台湾も無関係ではない。


港湾施設はタイで構想がある運河をはさみ、中国はマラッカ海峡を通らずにエネルギー資源の輸入が可能となる。さらに軍事基地として中国は南シナ海ににらみを効かせる。


Chinese Premier Li Keqiang hosts Cambodian Prime Minister Hun Sen at the Great Hall of the People in Beijing. Photo: AFP
中国首相李克強がカンボジア首相フン・センの北京訪問を人民大会堂で迎えた。 Photo: AFP


前出チェンバースはカンボジアが中国と軍事的つながりを強化しており、中国軍艦の寄港、両国部隊の軍事演習が増えているのは中国がカンボジアに軍事面で関心を見せている証拠だとする。


フン・センは軍事基地設置は同国憲法違反と発言していたが、チェンバースは中国に法治主義はあてはまらないという。


土地使用権の付与は法的に疑わしい。書類上の面積より三倍も大きく、しかも国立公園内にある。前述のSunは「フン・センは憲法違反を無理やり合憲といいくるめるのでは」


ジブチで中国が利用した抜け穴がある。コッコンには軍事基地はないと否定しながらフン・センに外国軍隊は国連ミッション除き置けないという。ジブチの中国基地は海賊対策のUN活動支援用という説明だが、UNは同基地に干渉できず、中国は自由に同基地を利用している。


チェンバースは中国からの投資や援助の増加でフン・センが「中国の路線に傾いている」と警句している。


「米国等が神経質になるのはカンボジア政府が意図的かつ無邪気に中国依存をどんどん強めており、気がつくとカンボジアが東南アジアで中国の軍事経済両面の中心地になることだ」(チェンバース)


このパターンだと軍事基地化が次の段階なのは明らか、とチェンバースは言い、実現すれば米中の地政学面の対立を激化させるという。


チェンバースによればカンボジア政府関係者は大部分がフン・センの中国服従路線を喜んで受け入れ利益を得ようとしており、反対勢力に流れを止める力はないという。■

2019年3月20日水曜日

欧州共同保有空母構想が絶対に実現しない理由

ドイツ連邦軍の装備稼働状況がひどくなっているのはここ数年の話ですが改善の知らせが入ってきませんね。昨年はF-35導入を主張した空軍トップが事実上更迭させられましたが、シビリアンコントロールをいいことに国防に無理解むしろ嫌悪する頭でっかちの政治家がドイツ国防の弱体化を招いている気がします。国民の9割が自衛隊を支持、と日本の首相は喜んで発言していましたが、国会では半分近く、教職員では過半数以上が反対の姿勢では。指導者はその国の有権者の資質のあらわれとはよく行ったもので、国を滅ぼしかねなくなっても思考行動が変わらない人がトップに立てば悲劇そのものです。

Here's A Crazy Idea: A European Union Aircraft Carrier 

欧州連合の空母整備が正気の沙汰とは思えない理由

Why? We explain.

イツはひょっとしたらブレグジットへの復讐として英国商船隊を北大西洋で再び撃沈しようというのか。
でなければ、ドイツで頂上に立とうという政治家が航空母艦保有を欧州連合に求めたことは筋が通らない。
キリスト教民主同盟総裁アンネグレート・クランプ=カレンバウアーはアンゲラ・メルケル首相の後継者と目され、このたびヨーロッパ各国共同による空母建造を提唱し波紋を招いた。
「ドイツとフランスはすでに次世代の戦闘機開発で共同作業を始めている」とドイツ紙ディ・ベルトに寄稿し、「次のステップは象徴プロジェクトとして欧州共同保有の航空母艦一隻を建造し欧州連合の世界的な役割として平和と安全の護り手としての姿を示そうではないか」と述べた。
メルケルはこの構想に賛同しているようだ。「それだけの装備が欧州に生まれれば素晴らしい、喜んで実現たい」
皮肉にもクランプ=カレンバウアーはフランス大統領エマヌエル・マクロンの欧州統合強化提言は退けている。「欧州各国の主権を認めたままで欧州に超国家はありえない」とした。
それでも欧州共通防衛政策が生まれる余地は残っており、欧州安全保障理事会に英国も席を連ねている。欧州共同保有航空母艦も同様だ。
クランプ=カレンバウアーでさえ欧州空母構想を「象徴的存在」と述べている。空母一隻を整備する価値は陸上機材で届かない場所近くに移動航空基地として回航し運用することにある。これに関心を有するのはグローバルに権益を希求する一部諸国のみで米ロ中以外に欧州では英仏両国は空母を運用中だ。HMSクイーン・エリザベスは中国への警告として派遣される。フランスのシャルル・ド・ゴールならびに提案中の後継艦はフランスがまだ残す植民地への権益の存在を知らしめている。
だが欧州のその他国には軍艦を海外に定期派遣していない、海軍部隊が小規模、内陸国で海軍が不要の国もある。空母一隻ではロシアと東ヨーロッパ、北ヨーロッパ、バルト海での武力衝突に効果はたかがしれている。必要なのは防衛体制の整備であり、護衛艦船の建造でありバルト海地方でロシアの海空軍攻勢に耐えることであり、ロシアの極超音速ミサイルK-300Pバスティオンのような存在に対応することだ。米海軍でさえあれだけの予算や資源がありながらスーパー空母の生き残りを心配している。欧州が米フォード級空母(130億ドル)を超える戦力と残存性を備えた空母を設計建造できるとは思えない。
欧州の権益は地中海だ。2018年に英仏両国が米国に加わりシリア政府施設に空爆とミサイル攻撃を加えた。陸上基地機材はキプロスやイタリアから出撃した。欧州連合は地中海を渡って押し寄せる不法移民の流れを止めたいとする。空母を沿岸警備に投入すれば非常に高くつく。
.問題の本質は空母の効用ではなくヨーロッパは何を断念するかだ。ドイツ軍の稼働体制は劣悪でタイフーンジェット戦闘機は地上に待機し、艦船は出港できず陸軍部隊の装備はお粗末で冷戦時代の数分の一の戦力しかない。NATOでGDP比で2パーセント以上を国防予算に支出する加盟国は少ない。それだけ負担すれば空母、艦載機、護衛艦の建造予算は残らない。最大のロシア脅威はミサイルやサイバー戦だが空母では対応不能だ。
欧州空母が実現しても疑問が残る。どの国が指揮するのか。どこで建造し、どの国が建造するのか、どこの機材を搭載するのか。フランスは独自にラファールM艦載機を整備し、英国はF-35採用を決めている。空母はどこの指揮統制下に入り危険な任務に向かわされるのか。
.欧州各国で英本土上陸シーライオン作戦を再び実施するのでない限り空母建造は愚行だ。■
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook .

歴史に残らなかった機体(13) ベルP-59は初の米ジェット戦闘機。だがその性能は....

歴史に残らなかった機体(13)
P-59は初の米国製ジェット機ですが実戦に耐える性能はなかったため歴史残らなかった、といってもいいのでは。現在のブラック機体につながる考え方がもう1940年代にあったのですね。では現在のプラック事業では一体どんな機体がこれから登場するのでしょうか。楽しみです。




Meet the Bell XP-59A Fighter Jet: America’s First Jet Plane

これが米初のジェット戦闘機ベルXP-59だ

What can it do on the battlefield? 戦場で活躍できたのか

画は秘密裏に行われ製作は極秘施設内で進められた。
その結果生まれたのが第二次大戦に間に合うよう完成した米国初のジェット戦闘機だが、そこから歯車が狂い始めた。
陸軍航空隊(AAF)司令ヘンリー・H・「ハップ」・アーノルド少将はベル航空機(ニューヨーク州バッファロー)に秘密プロジェクトMX 397の実施を命じた。同社社長ラリー・ベル以下社内でもごくわずかのみがこれが米初のジェット戦闘機になることを知らされ、名称はすぐXP-59Aとなった。ドイツ、イタリア、英国が米国に先行してジェット航空機製造に着手しており、米国は通常より早く開発すべく科学ノウハウを活用しつつ秘密裏の作業を開始した。
プロジェクトのほぼ全部に偽名がつけられ、ドイツや日本の諜報員に正体を探られないようにした。エンジン開発にあたったジェネラル・エレクトリックは英国技術者フランク・ホイットルから援助を得て「予備部品」と称した。P-59は陸軍式の「追撃機」名称の軍用機で番号は以前計画のみに終わった機体のものを再利用し関心を集めないよう工作した。
なぜベルだったのかWhy Bell Labs?
技術作業の大半はジェネラル・エレクトリック所有の建屋内で行われたが、特徴のない外観だった為選ばれた。同社はその後ホイットルの許可を得たコピー品だったにもかかわらず同社のエンジンがその後の各種機材に搭載されたエンジンがここから生まれたと自慢した。
だがベルが選定された理由がはっきりしない。同社のP-39、P-63は凡庸だった。ベンジャミン・W・チャイドロー准将はアーノルドの幕僚として英米協力体制で戦闘機用ジェットエンジン開発を統括し、以下書き残している。「ベルには他社とつながりのない施設があり、完全『極秘』扱いで作業開始がすぐ可能だった」
開発環境
ラリー・ベルは航空会社幹部でありながら飛行を嫌っていた。XP-59Aプロジェクト主任に同社主任テストパイロットのロバート・M・スタンレーを選任した。飛ぶのは好きだが経営管理を嫌う人物だった。1942年6月にスタンレーが引き継ぎXP-59Aを聞いたこともない遠隔地へ運搬する準備に入った。
その場所とはミューロック陸軍飛行場でサンバーナディノとシャドウ山脈の間にあり同地に入植したコーラム兄弟の名を反対に綴ったのが地名の所以だ。チャイドロー准将はロサンジェルスから地獄への一里塚とよんだ。遠隔地でありロジャース乾湖の硬い地面があった。1942年中頃に技術陣が同地に赴任したが、カリフォーニアの砂漠へ転勤を命じられた理由は聞かされていなかった。今日ではミューロックはエドワーズ空軍基地と改称され、当時のような遠隔地ではない。
ロバート・スタンレーからXP-59Aの潜在力は大きいと報告が入った。とはいえ初飛行を見てスタンレーはこれで実戦に入れるのか疑問を持った。XP-59Aは実験戦闘機で愛称エアラコメットがついたもののプロペラ戦闘機のノースアメリカンP-51マスタングやヴォートF4Uコルセアより低速かつ操縦性能も劣った。
射撃性能
だがプロペラが機首にないエアラコメットではブラウニングM2.50口径機関銃三門とM-10 37mm機関砲一門を機首に集め進行方向から正面に発射できた。これによりXP-59Aはプロペラ戦闘機より強力な射撃を実現したが初期テストでは射撃安定性が劣ることがわかった。射撃すると機体全体が振動するとスタンレーが報告してきた。
1943年に入るとX-59Aは5機がミューロックとライトフィールド(オハイオ州)でテストを実施した。陸軍航空隊は300機を発注し、9個飛行隊編成に十分な規模だった。XP-59Aでは日独の戦闘機に対抗は無理と判斷されると生産は66機に削減された。内訳はXP-59Aが三機、YP-59A(13機),P-59A(20機)、P-59B(30機)で各型の相違はわずかでジェネラルレクトリック製エンジンも順次改良された。
XP-59Aの写真は一切公開されず、竣工したばかりのペンタゴンからもプロジェクトの詳細の説明はなかった。これはロッキードが当時開発中のP-80でも同様だった。
1940年代の「ブラック事業」
XP-59AとP-80は今日でいうところの「ブラック事業」の一環で、通常予算説明書のどこにも説明がなく、議会でその存在を知らされたのはごく一部だった。存在は1944年末まで公開されなかった。エアラコメットの陸路運送中には偽プロペラをつけ、機首はシートで隠し推進方式の秘密を守った。
1945年6月に陸軍航空隊は412戦闘機群をミューロックに立ち上げた。だが大戦はその後終結し、部隊はカリフォーニア州リバーサイド近くのマーチ飛行場に移動した。その地でエアラコメットが実戦投入出来る戦闘機ではないことが誰の目にも明らかになった。P-80が飛行を開始し遥かに優れた性能を見せつけたからだ。さらに新型戦闘機の設計案が思考中で、その中には不滅の存在ノースアメリカンF-86セイバーもあった。かつてはトップシークレットだったエアラコメット各機も今やジェット機操縦の基礎をパイロットに伝える教材になってしまった。
412群のユージン・A・ウィンク大尉はエアラコメットを初めて操縦したパイロットの一人で、それまでリパブリックP-47サンダーボルトを欧州戦線で飛ばし頑丈な同機を頼もしく思っていた。対照的に「エアラコメットは薄っぺらく壊れやすそうだった」と回想し、「小回りが効きドッグファイトでどんな効果があるだろうかと思った」としている。
空軍は同機の最後の機体を1949年に退役させ、当初こそ高い期待のもと新しい道を開いたが失望に終わった同機は姿を消したのであった。■
Originally Published November 15, 2018.

This article originally appeared on the Warfare History Network.

2019年3月19日火曜日

★★世界いかなる場所にも24時間以内に展開する「ラピッド・ラプター」構想の持つ意味とは

F-22を制空戦闘機としてのみ見ているとこの記事の趣旨が理解できないと思います。たしかにシリア戦線で戦闘デビューしたラプターは当初こそ何ができるんだと揶揄されても仕方ない存在でしたが、戦術の改良と訓練により対地攻撃能力も開花させたのでしょうね。配備機数が少ないこともあり大量投入は不可能なので、初回に効果の高いパンチを敵にお見舞いすると言う構想のようです。



"Rapid Raptor": The Air Force Can Attack Anywhere with a Stealth F-22 in 24 Hours 米空軍は「ラピッド・ラプター」構想でF-22を24時間以内に世界の任意の場所へ派遣し攻撃する

March 13, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22RaptorF-22 RaptorMilitaryTechnologyWorld


空軍は「ラピッド・ラプター」でF-22の四機編隊の迅速派遣をめざす。文字通り世界いかなる場所にも24時間以内到達を目標とし、急速に展開する世界情勢に対応する。
構想自体は数年前から存在し、F-22の4機、乗員、C-17による支援、燃料、整備、兵装を迅速に世界各地に派遣し、高速攻撃、第一撃を実施するのが狙いと空軍関係者が述べる。
F-22の即応体制はひとえに新ソフトウェアの実現にかかっており、ソフトウェアを順次連続改良する「パイプライン」方式を目指している。
「ソフトウェアに古臭いルールを適用する余地はない。これまで違う形のソフトウェア開発が必要だ。F-22では従来型の調達方法を引き渡しまで継続する流れとして再編した」とウィリアム・ローパー空軍次官補(調達技術補給担当)が空軍協会主催のシンポジウムで語っている。
「迅速調達」でソフトウェアに重点を置く空軍はF-22で新型兵器二点を有効化した。機体、兵装、搭載方法やセンサーといったハードウェアすべてをソフトウェアで性能向上するのがF-22の基本設計思想だ。
2つの新兵器は既成装備の高性能版でAIM-9X空対空ミサイルとAIM 120-Dだ。
速いペースでソフトウェアを中心とする戦略の狙いは「ラピッド・ラプター」を強化し配備中のF-22部隊で最適の威力が発揮できるよう維持することにある。
F-22を「第一撃」兵器にする
第一攻撃手段にF-22ラプターを使う意義は大きいと専門家は見ており、ステルスと空対空戦闘技術で強固に防衛された敵領空で攻撃を仕掛けることが可能だからだ。
空からの攻撃が必要となる緊急事態の大部分でF-22が第一陣として攻撃力を発揮する想定で、敵空軍力の脅威を排除しステルスを生かし敵防空体制の破壊が期待される。これで「空の回廊」を作りその他機材に道を開く。F-22は高高度ステルス爆撃任務の想定はないが敵戦闘機さらに防空体制の破壊には最適である。
ラプターは第四世代機のF-15やF-18と運用する設計思想で空爆部隊に道を開くのみでなく搭載する長距離センサーで標的探知し第四世代機の攻撃を誘導する役目もある。
ラピッド・ラプター構想は空軍太平洋司令部がまず提唱し航空戦闘軍団(ACC)が世界規模に拡大したと空軍は説明している。
「ACCのラピッド・ラプター構想はPACAFの原案が戦域範囲だったのを世界規模に拡大したものだ」とACC広報係が昨年Warrior Mavenに伝えてきた。
ラピッド・ラプター構想の一環でACCがF-22をヨーロッパに前方配備したのは2015年と2016年のことだった。ヨーロッパでのラピッド・ラプターはペンタゴンのめざす拡大ヨーロッパ政策の一環として抑止力に重点をおく部隊を各地に配備しつつ同盟国間の「団結」「共同作戦体制」にむけ各種演習を展開するDoDとNATOの狙いと軌を一つにする。
ロシアの動向に対応する部隊として誇示する以外にこうした演習で「機動性」と迅速な展開配備を見せる戦略的な意味がある。
空軍関係者がラピッド・ラプターで特定国を狙う意図はないと慎重に説明するが、ヨーロッパ展開にはロシアとの緊張が厳として存在する以上、対抗措置として大きな意義がある。
また大国同士の大規模武力衝突に24時間以内に対応する以外にラピッド・ラプターには想定外の遠隔地や「厳しい」標的への対地攻撃の想定もある。
世界の任意の場所で攻撃の必要が突如発生すれば、F-22の小規模編隊が現地に向かう。ここで大事なのは近年の世界規模の戦闘環境を考えるとF-22による対地攻撃あるいは近接航空支援が重要度を増している点だ。
これまでF-22は速力、操縦性、ドッグファイトでの優位性から制空戦闘機として見られることが多かったが、イラク、アフガニスタンでの空対地攻撃の実績から同機の対地攻撃能力が強く認識されている。
F-22は近接航空支援でA-10にはなれないが、搭載20mm機関砲で対ISIS攻撃に投入されたと関係者が述べている。アフガニスタンでもタリバン施設の攻撃で実績をあげたという。
こうしたミッションを実行すべく、F-22は対地攻撃専門の共用直接攻撃爆弾GBU 32やGBU 39、小口径爆弾の運用も可能となっている。
Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army - Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.
Some background portions of this story first appeared last year.

This first appeared in Warrior Maven here.

2019年3月18日月曜日

イスラエル独自の仕様、運用構想のF-35Iアディールはどこが違うのか

イスラエルで独自に発展する装備品が多いのは、もちろん同国の科学技術の基盤もありますが、開発時にイスラエルに必要な装備の機能を目的から考えて構築する思考力だと当方は見ています。日本にも参考となる事業は多いのですが、われわれが考え方から変えていかないと表面だけの模倣に終わりかねません。イスラエルとの協力もはじまっているとききますが、思考の面から良い影響を受けてわれわれ自身の思考を鍛えたいものです。


Stealth on Steroids: Meet Israel’s F-35I Adir (An F-35 Like No Other)

ステロイドステルス:イスラエルのF-35Iアディールは全く別のF-35だ

F-35I Adir—or “Mighty Ones”—will be the only F-35 variant to enter service heavily tailored to a foreign country’s specifications.
F-35Iアディール(「強者」)ほど使用国の要求仕様にあわせ大幅改修された例はない
March 17, 2019  Topic: Security  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz  Tags: IsraelF-35MilitaryTechnologyWorldWorld

2018年5月22日、イスラエル空軍司令官アミカム・ノーキンがF-35Iステルスを戦闘ミッション二例に投入したと発表した。F-35による初の実戦作戦だったのは確実だ。
イスラエルのF-35Iアディール(「強者」)ほど海外仕様にあわせ大幅改修された機体はない。カナダ向けCF-35で空中給油用プローブと氷結滑走路用のドローグパラシュート装着案があったがカナダ政府が導入を取り消し実現していない。
第4世代ジェット戦闘機のSu-30、F-15、F-16で輸出用改修は普通にあり、現地製のエイビオニクス、兵装を搭載したり改修で該当国の空軍の方針や戦略的状況を反映している。イスラエルでもF-15Iラアム(「雷電」)や複座F-16Iスーファの例がある。またイスラエルでは導入後も国内改修してきた。その例がF-15Aイーグルで爆弾投下能力を付与しイラクのオシラク原子炉を破壊した。
だがロッキード・マーティンは特定国仕様にあわせたF-35改修は受け付けていない。これに対しイスラエルは例外扱いを求めた。同国はF-35開発に参画していないが、50機を急いで発注し、自国に有利な購入条件の交渉を開始したのは同国内でF-35主翼ほか高性能ヘルメットが製造されることもある。さらに本格的整備施設がイスラエル航空工業内に設置された。
2017年12月にまず9機のF-35が第一線配備され、2018年は6機が加わった。同国は二個飛行隊を編成し、さらに25機追加で三番目の飛行隊も編成するオプションを有する。ただし最近の報道では第三飛行隊はF-15I追加調達を優先するため先送りとあり、ステルスより航続距離とペイロードを重視するようだ。イスラエルは初期製造分のF-35で一機あたり110百万ドルから125百万ドルと高額を支払っているが、そのうち85百万ドル程度に落ち着くといわれる。
イスラエルの第一陣19機はF-35Aが原型で、次に調達する31機はイスラエル製ハードウェアを搭載した真の意味のF-35Iになる。報道では全機をF-35Iと扱っているが、初期機材も後日イスラエルのオープンアーキテクチャ方式の指揮統制通信演算(C4)システムに改修される。
ライトニングの高性能機内コンピュータと地上の補給システムにはF-35運用国は手が出せない。F-35コンピュータのソースコードへのアクセスで改修を希望する向きが多いが、ロッキード・マーティンは自社営業方針並びに安全保障上の理由で完全アクセスを認めていない。
F-35Iではイスラエル製C4プログラムをロッキードの基本ソフトの「上で」走らせてこの問題を回避している。センサーからのデータを吸い上げ僚機と共有する機能がF-35の中核性能だ。イスラエルでは空軍と陸軍がデータリンクを共有しロケット発射位置や地対空ミサイル装備を追尾する機能が重要だ。
IDFでイスラエル製データリンクと防御用エイビオニクスのレーダージャミングポッドを活用できるようになった。関係者がAviation Weekに語ったところではIAFはF-35のレーダー断面積が小さい利点に「5年から10年」は敵が追随できないと見ている。ステルス機の探知方法はすでに存在しており、長距離赤外線センサー、電磁センサー、低帯域レーダーがありそれぞれ制約もあるものの、今後開発中の量子レーダーが加わるかもしれない。
そこでIDFは「プラグアンドプレイ」方式の防御対抗装備を柔軟に搭載したいとし、新型ジャミングポッドが開発されれば都度導入する。イスラエル企業のエルビットイスラエル航空宇宙工業がこうした新装備を開発中である。F-35の高度な「融合型」エイビオニクスによりソフトウェアにもプラグアンドプレイの利用を想定し、機体対応が必要となる。こうした追加装備は2020年以降に引き渡される後期型の機体下部や主翼前縁に搭載されるだろう。
イスラエルは外部燃料タンク二型式も開発中でF-35の航続距離を伸ばす。非ステルス425ガロン入り主翼下取り付けタンクをエルビット関連会社が開発し敵地に接近してから落下する想定だ。(取付用パイロンも放棄してステルス性を守るといわれる)またステルス性能が不要なミッションに使う。さらにIAIがロッキードと共同でボルト取り付け式の機体一体型燃料タンクを開発するとし、機体にかぶさるように装置しステルス性能や空力性能を劣化させないとする。
F-35I用にイスラエル開発の各種兵装搭載で認証が出る予定で機内兵装庫にパイソン-5短距離熱追尾空対空ミサイルやスパイスファミリーの滑空爆弾を搭載する。後者は電子光学、衛星、あるいは有人誘導で60マイルの有効射程がある。
F-35兵装で仕向地専用仕様はイスラエルに限ったことではない。英空軍・海軍向け機材はメテオ、ASM-132空対空ミサイルを、ノルウェイとオーストラリアではノルウェイ開発の対艦ミサイルの運用が可能となり、それぞれの任務で重要な機能を反映している。米国はNATO同盟国にB61核爆弾用に改修したF-35の採用を期待している。
イスラエルはアディールをどう使うのか
ノーキン司令官の発表でイスラエルの同機の活用構想が明らかになった。同国の潜在敵対勢力イラン、シリア、ヒズボラに同機が領空進入できるとわからせ、初弾が標的に落下するまで探知できないことも知らせた。
F-35は第4世代機と比べ飛行性能が凡庸との批判があり、ドッグファイトで不利と言われる。一方で同機支持派からはステルス、センサー、長距離ミサイルにより敵に接近せず強力防御された標的の攻撃に適した機材だとの意見が出ている。.
この攻撃能力特化がイスラエル空軍に意味がある。1948年以降、空対空戦闘ではほぼ敵なしだったが1973年のヨムキッパ戦争で地上防空装備により甚大な損害を喫した。それ以降のイスラエル軍機はレバノン、シリアを中心に敵SAM排除のため空爆に成功してきたが、2018年2月に10年ぶりに機体喪失が発生した。シリアのS-200ミサイルがF-16を撃墜したのだ。
ベンジャミン・ネタニヤフ首相は軍事力でイラン核開発を阻止すると公言し交渉による解決を一貫して退けてきた。イスラエルとしては米国による攻撃を期待するがF-35導入でイスラエルが空爆に踏み切る可能性がより現実的になった。
だがイスラエルが空爆しようとすればトルコ領空の横断が必要となり、あるいはヨルダン、シリアを通りイラク経由でイラン領空に侵入することになるが600マイルの距離がある。また標的施設はイラン国境線から内陸地にある。このため第4世代機では戦闘行動半径の制約で空中給油機を動員すれば空襲を知らせることになる。さらにイスラエル機がイラン防空網を打倒するには追加機材の投入も必要となる。
イスラエル機がトルコ領空に2007年侵入したのはシリア北部の原子炉攻撃の際のことだった。だが一回ならいざしらず外国領空を繰り返し侵犯するのは困難だ。そこでF-35がイラン防空体制を突破しその他国に探知されなければ攻撃部隊の規模を小さくできる。
イスラエルはF-35を追加調達し320機残るF-16の後継機種にする意向があるようで、まず最古参のF-16Aネッツを交替させるだろう。伝えられるところではイスラエルはF-35Bジャンプジェットの導入も検討しているらしい。F-35Bといえば小型空母や島しょ部からの運用を思い浮かべるがイスラエルの場合は分散配備で敵の基地攻撃による被害を避ける効果を期待する。だがF-35Bが空戦性能が劣りながら機体価格が高いためこの運用方法に疑問が残る。空軍より政界がF-35B導入に乗り気といわれる。
イスラエルには複座型F-35を求める声もあり、訓練用途意外に後席にウェポンシステム士官を乗せ精密誘導兵器運用をまかせパイロットには操縦に専念させたいとする。
イスラエルのアディール部隊は今後も見出しを飾るだろうが敵のレーダーには見えにくいはずだ。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring .