2020年1月4日土曜日

ソレイマニ司令襲撃の背景と余波、無人機一機でこれだけの仕事をした、 イラク政府の動きも要注意

New Details About Strike On Top Iranian Commander Emerge As Americans Are Told To Flee Iraq (Updated)
Thousands of American troops are heading to the Middle East as Iraqi officials are mulling kicking the U.S. military out and amid Iranian threats.

BY JOSEPH TREVITHICKJANUARY 3, 2020


イク・ポンペイオ国務長官はイランのクッズ部隊司令官カセム・ソレイマニは米国に「差し迫った」脅威となっており、バグダッド国際空港近郊でSUV2台を狙った無人機攻撃は「米国人の生命を救った」と述べた。ただし前例のない米軍の行動へ反発も予想され、イラク政府が米軍を追い出す命令を出す可能性も増える中、国務省も米国市民になるべく早く同国を退去するよう求めている。米軍は域内に数千名規模の増派を正式に決めており、中東各国はイラン及びその代理勢力による対応に身構えている。

統合特殊作戦軍団の無人機一機、MQ-9リーパーとの報道がある、が今回のミッションを実行した。イラン政府はソレイマニとあわせイスラム革命防衛隊(IRGC)の有力者4名の死亡を確認した。クッズ部隊はIRGCの一部でテロ活動、軍事活動をイラン国外で実施する際の統制調整を担当する。「電子情報収集活動で得た極秘情報によれば偵察機他情報収集機材」が襲撃の立案に関わっていたとニューヨーク・タイムズが報じている。

ポンペイオ国務長官は1月3日のCNN出演で「どんな脅威だったのか詳細はお話できない」と述べたが脅威は「差し迫っていた」とし中東の米国権益が標的だったとのみ発言。「陰謀の防止のための行動だった。無作為のリスクはとても大きいと情報機関が評価した」とも述べ、「リスクのない形で情報は今後公開したい」とした。

ソレイマニ襲撃作戦の決定時期ははっきりしない。ニューヨーク・タイムズは実行の許可をホワイトハウスが与えたのは2019年12月27日のことでキルクークのK-1基地にロケット攻撃があり、民間請負業者関係者一名が死亡し、軍人数名が負傷した直後だったとする。ペンタゴンはソレイマニの死亡は本人の行いが原因であり、イラン政府がK-1基地襲撃を計画したと非難していた。襲撃後に米軍はイランの支援を受けK-1基地を攻撃したカタイブ・ヒズボラへ空爆を加えた。

サウスカロライナ選出(共)でトランプ大統領に近いリンゼー・グラム上院議員は1月3日にフォックスニューズで襲撃作戦の事前説明を「フロリダで」受けたと明かし、報道陣が同議員を2019年12月30日31日にトランプのマー・ア・ラゴ別荘で見かけており、作戦準備が事前に進んでいたことを示している。

このことからソレイマニ襲撃は12月31日の在バグダッド米大使館襲撃事件の前に実行が決まっていたことにある。米軍の説明ではソレイマニは大使館襲撃も指揮したとある。大使館襲撃は米軍空爆への抗議として実行され、カタイブ・ヒズボラはじめイランが支援する戦闘員集団がイラク政府の人民動員部隊(PMF)の傘下で動員され実行された。

襲撃を受け米軍は海兵隊危機対応部隊をクウェイトから派遣し、大使館の警備を強化した。また82空挺師団の人員も動員すると発表があり、緊急対応部隊(IRF)の呼称で体制を整備する。

航空機スポッターは飛行追跡ソフトを駆使し特殊作戦部隊がヨーロッパから中東に移動する様子を見つけた。大規模空輸作戦で人員装備を送り込み、米軍機他が各地の航空基地民間空港を経由して中東各地のほか、トルコへの飛来がまだ続いている。

米軍が数千名規模の増派をするので空輸活動は今後も続きそうだ。IRFの規模は4千から5千名だがさらに追加部隊の準備も進んでいる。

こうした動員でIRFが強化されるが米大使館襲撃で死傷者が発生しておらず、大使館の被害も外周部にとどまっていることを考えると過剰反応に見える。だが、イランおよびその代理勢力がソレイマニ襲撃を受けて示す反応を見れば当然に思える。カタイブ・ヒズボラの指導者でPMFを司る人民動員委員会の副委員長アブ・マディ・アル・ムハンディスも今回の無人機攻撃により死亡していることに注目だ。PMFではイラク国内のイラン支援勢力に報復を繰り返し呼びかけている。

「何らかの攻撃計画があるとわかれば先制攻撃で米軍部隊を守り、米国国民の生命を保護する」とマーク・エスパー国防長官は1月2日、ソレイマニ襲撃の前に報道陣に語っていた。

2019年12月初旬に米政府が中東の米国権益へイランおよび代理勢力による脅威が高まっているとの情報を掴んでいたことに注目すべきだ。同月中にイラク国内の米軍基地ロケット攻撃が11回あり、すべてイランとつながる戦闘員集団が実行した。

米政府はソレイマニを数十年に渡り監視しており、本人を狙う機会が検討されてきた。退役陸軍将軍スタンレー・マクリスタルによれば2007年のイラクでソレイマニを排除する選択に進まなかったと語る。当時マクリスタルは統合特殊作戦司令部の指揮官で政治的反動を恐れたという。クッズ部隊はイラク国内の戦闘集団を支援し米軍等に戦闘を仕掛けさせるほか、直接襲撃にも関与していた。
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翌年にシリアにいた本人の暗殺をCIAとモサドの提言をジョージ・W・ブッシュ大統領が拒否したといわれ、CIAとモサドはレバノンのヒズボラナンバー2のイマド・ムグニエをシリア首都ダマスカスで殺害した。

つまりソレイマニ殺害の場合の影響はすでにジョージ・W・ブッシュ政権時に考慮されていたことになる。事態を複雑にするのはイラク政府がイランと強いつながりがあり、今回の襲撃でイラク政府の代表者でもあるムハンディスが死亡していることだ。

イラク当局はカタイブ・ヒズボラへの米軍空爆を公然と批判しており、同国首相アディル・アブドゥルマーディは強い伍長の声明文を今回の襲撃事件語に発表した。「公職につくイラク軍事指導者を殺害したのはイラクへの攻撃であり、イラク国民が攻撃を受けたのと同じだ」「暗殺は米軍のイラク駐留条件に違反し、そもそもはグローバル規模の有志連合の一環としてイスラム国勢力に対する戦闘の訓練が役割のはずだ」「本日、議会に緊急会合を求め適切な立法措置によりイラクの威信、安全、主権の保持をめざす」

イラク国会内の親イラン勢力は米軍の退去を求めており、さらに声を上げそうだ。シーア派で影響力を有し物議を呼ぶムクタダ・アル・サドルはイラク政界にも影響力を持ち、今回の襲撃事件時にはイランにおり、2000年代にイラクで米主導の占領体制に挑戦したアル・マーディ部隊、アル・ヨム・アル-モウド戦闘集団の再編をめざすと宣言した。

.ポンペイオ国務長官はテロリストや先頭集団を中東全域で支援する首謀者ソレイマニの殺害により世界は安全になったと主張する。ただし、国務省はイラクから米国民の退去を検討中と言われ、バグダッドの米大使館には近づかないよう求める。米国人は可及的速やかにイラク国外に移動するよう求める緊急通告が出ている。

イランは三日間の服喪を決め、クッズ部隊の新司令にエスマイル・ガーニEsmail Ghaani准将を指名した。イラン政府は「激しい報復」を誓いこのままでは米国のみならず同盟国協力国へのなんらかの形の報復は避けられないようだ。なかでもイスラエルとサウジアラビアをイランは敵視している。

サウジアラビアから公式発表はまだないが、匿名筋が同国のアル・アラビヤ通信に「域内の安全に驚異となる作戦行動の事実を把握しており、テロリスト戦闘集団の脅威を集結冴えるためにも王国は事態を悪化させかねない行動を自制する」と述べている。

今回の襲撃事件には他の同盟国は関与しておらず米国による一方的行動であることは明白だ。英国は「すべての関係国によるエスカレーション回避」を求め、フランスも米作戦で世界は「より危険な」場所になったと述べた。

英仏にドイツ、ロシア、中国がイラン核開発合意に加わっている。襲撃事件でイランがさらに合意内容の違反に走り、イラン政府が制裁緩和他の譲歩を求める動きが加速すると各国は見ている。

一方でイランおよび代理勢力はイラクで死亡者の埋葬に気を取られているようだが事態のエスカレーション回避に向かうとは到底思えない。

トランプ大統領はイランとの戦争やテヘランの政権転覆は狙わないとする一方で必要ならイラン権益への攻撃続行を示唆しており、標的はすでに「把握済み」としている。■

2020年1月3日金曜日

緊急 イランの報復攻撃はどんな形態をとるのか 1月2日ソレイマニ司令官暗殺

お正月で頭がボケそうになっている日本ですが、世界はどんどん動いています。ゴーンが逃げ帰ったレバノンもこうやってみると随分危険な国ですね。イランの出方を固唾を呑んで見守るしか無いのですが、ひょっとすると長い混乱のはじまりかもしれません。攻撃の実際についてはそのうちに情報が出るのでお伝えできると思います。

 

Iran has vowed revenge on the US after Trump's airstrike killed its top military commander. Here's how it could do it.

Alexandra Ma 15 minutes ago

trump burning iran
トランプ大統領の写真を燃やす抗議者。テヘランの旧米国大使館の外で。2018年11月。 (Photo by Majid Saeedi/Getty Images)
  • イランの精鋭部隊クッズ部隊Quds Forceの司令官カセム・ソレイマニがドナルド・トランプ大統領の指令で実施された空爆で死亡したと国防総省は1月2日発表した。
  • イラン指導部は米国への報復を誓い、死亡した司令官を英雄扱いしている。
  • イランは軍事力で米国に劣るものの、ソレイマニの指導の下で通常兵器各種を開発し、米軍に打撃を与える装備もある。
  • 米国へのサイバー攻撃、テロ攻撃の他、域内の協力勢力を使い米軍基地を攻撃する可能性もある。以下、イランが実行する可能性のある攻撃内容をまとめた。
ラン指導部は米軍の空爆による損害と同等の報復を誓っている。ドナルド・トランプ大統領の命令によりイランはもっとも有能かつ広く慕われた軍指導者カセム・ソレイマニQassem Soleimaniを殺害された。
イラン外相モハマド・ジャヴェド・ザリフMohammad Javad Zarifは米国による行為を「国際テロ」と呼び、最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイAyatollah Ali Khameneiは「残酷な報復が控えている」と警告している。
今回の空爆はトランプによるイランへの宣戦布告と複数の外交専門家がとらえている。
イランに米軍と同等の軍事力はないが、ソレイマニの指導力のもとで通常兵器各種を開発しており、米軍に損害を与える可能性がある。以下考えられるイランによる報復攻撃の内容だ。

Qassem Soleimani Iran Revolutionary Guard
革命防衛隊カセム・ソレイマニ将軍、2016年9月テヘランにて (Office of the Iranian Supreme Leader via AP)


中東地区の米国人への攻撃

国防総省によればソレイマニは「イラク国内にとどまらず地域全般の米外交団や軍関係者を襲撃する案を積極的に進めていた」。
イランに米国民を襲撃する動機が増えたことになる。
「喫緊の課題はラク、シリア、レバノン、湾岸地区で大使館、部隊、人員の生命の安全をイ確保すること」とイスラエル駐在米大使を務めたダン・シャピロがツイッターで述べている。

soleimani iraq debris
バグダッド国際空港付近の道路上で燃え続ける攻撃の跡。イラク民兵組織によればロケット弾三発によるものという。2020年1月3日。 Iraqi Security Media Cell via Reuters

イスラエル、サウジアラビア、UAEへのロケット攻撃

別の対米攻撃方法に中東・湾岸地域の米及び米同盟国の部隊、軍事基地を攻撃することがある。
イランによる報復には「数波に渡るロケット攻撃をイスラエル、サウジ、またUAEに向けることがあり....域内基地に駐留する地上部隊も標的になる」と対テロ専門家デイヴィッド・キルクレンがコメントしている。キルクレンはデイヴィッド・ペトレアスCIA前長官と2007年から2008年にかけてイラク戦に関与していた。

サイバー戦、テロ攻撃、誘拐

イランによる攻撃には「非対称的かつ非通常型の攻撃をヨーロッパ、アフリカ、南アメリカや米本国で仕掛ける可能性」があるとキルクレンは見る。
考えられる形態にサイバー攻撃があり、ソレイマニ自身がその可能性を以前ほのめかしていた他、テロ襲撃、暗殺、誘拐がある。

ソレイマニに共鳴し報復したくてたまらない連中が多数ある

クッズ部隊はイランのイスラム防衛隊でも最精鋭でソレイマニは中東全域の各種戦闘員部隊を訓練して強い関係を培ってきた。
その一部が米ソレイマニ暗殺の仇を取ると早速公言している。
中東に分布するクッズ部隊の協力勢力は以下の通りである。
  • イラクのシーア派戦闘員組織は2003年の米軍侵攻以来一貫して米軍と戦闘を繰り広げている。アサイブ・アール・アルハクAsaib Ahl al-Haq、カテブ・ヒズボラKataeb Hezbollah民兵組織の他、バドル組織Badr Organizationがある。
  • レバノンに本拠地をおくヒズボラ民兵組織はクッズ部隊の支援を受け1980年代に発足した。同集団は数々の事件を引き起こした他、ロケット弾数万発を保有しており、米同盟国のイスラエルを容易に攻撃できる。現在のレバノン政府の要職はヒズボラが占めている。
  • シーア派フーシHouthi反乱勢力がイエメンにあり、サウジ主導の有志連合が代理戦争を展開している。昨年9月にフーシはサウジアラムコの石油精製施設攻撃を実行したと主張したが、サウジアラビアと米国はイランの犯行と断定した。イランはこれを否定した。
  • スンニ派の民兵組織ハマスHamasがガザ回廊に陣取っている。イランはハマスへの財政支援を2011年中止したが、実は軍事支援をその後も続けている。
ヒズボラ指導者ハッサン・ナスララHassan Nasrallahは1月3日午前の訓話でソレイマニの「道を引き継ぎ」、全世界の戦闘員に今回の攻撃の首謀者を罰するよう求めた。
なおソレイマニ襲撃でカテブ・ヒズボラ指導者のアブ・マーディ・アルムハンディスAbu Mahdi al-Muhandisも死亡したとAPが伝えている。
ソレイマニへの米軍攻撃は同人が率いる集団がバグダッドの米大使館を襲撃した直後に実行された。大使館への攻撃自体が前週のイラク、シリアへの米軍空爆でカテブ・ヒズボラの25名が死亡した事件への報復だった。
言い換えれば、イランが単独で米軍に挑戦しなくても、域内の協力勢力多数を使えばよい。
「今回の戦略的な影響は数ヶ月、数カ年にわたり残る」とシャピロ元大使はツイートした。「気を確かにし、深刻な状況に備え、我が方の人員や同盟国に必要な支援を与えるべきだ」■

ドイツ軍の即応体制の欠陥は解決されていないようです

自虐ネタではないのですからヨーロッパの雄ドイツにはNATO防衛体制の主力として責任を果たしてもらいたいものです。このネタはここ数年続いていますが、2030年代にやっと公約を実現するという政治決断にはなにか不健全なものを感じます。経済や安全保障で政権の正しい決断が必要だと改めて感じさせてくれます。緑の党でさえ、なにかおかしいと感じる状況は異常でしょう。日本も他山の石とすべきで、もし明日選挙があれば安全保障の決定を責任をもって下せる(下せそうな)政党を選択すべきでしょう。

Is Germany's Military Dying? ドイツ軍は機能不全におちいりつつあるのか

by David Axe 
January 2, 2020  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: GermanyArmyMilitaryNATO

2019年11月、ドイツ軍の新鋭攻撃・輸送ヘリコプターで戦闘投入可能なのは数機しかないとの報道があり、ドイツ軍の即応体制をめぐる状況の深刻さを示している。
現地報道によればドイツ陸軍が53機保有するタイガー攻撃ヘリで8機、NH-90輸送ヘリ99機で12機のみが実戦投入可能な状態だった。
各軍は主要装備の80%をいつでも出動できる体制に保つのが通例だ。米軍の戦闘飛行隊でも80%の目標を維持しようとしている。
高度なまで複雑な装備だとこれより低くても受容される。米海軍は11隻ある空母で危機状況発生後30日以内に6隻の展開をめざし、7隻目は90日後に出動させる。米空軍はB-2ステルス爆撃機20機のうち半分を急な事態展開に対応して出動させれば良いと考えているようだ。
これに対してドイツ陸軍ヘリコプターの即応体制は15%近くで低迷している。つまり作戦投入可能な機材が少ない。人員面にも影響が出る。「タイガーでここまで投入可能な機材が少ないとパイロット訓練にも影響が出る。この状況の放置は無責任だ」と語るのは緑の党のトビアス・リンドナーだ。
ドイツの即応体制の危機的状況は今始まった問題ではない。2018年には128機あるユーロファイター・タイフーン戦闘機のうち稼働可能な機体が10機しかない時期があった。同時期にトーネード戦闘爆撃機では93機中26機しか作戦投入できなかった。
タイフーン、トーネードの機数が確保できないとドイツ空軍はNATO加盟国として突発の危機的状況に対応すべく82機を高度即応体制に維持する義務が果たせない。ドイツ空軍参謀総長インゴ・ヘルハルツ中将も「ルフトヴァッフェは低潮な状態」と認めるほどだ。
問題は空軍だけではない。2018年度の議会宛報告書によればCH-53輸送ヘリコプターでは72機中わずか16機、A400輸送機15機では3機、レオパルド2戦車224両で105両、フリゲート艦13隻の5隻が即応体制にあった、とある。
最大の影響が生まれたのは潜水艦で、6隻のうち一隻も実戦投入できない状態だった。212型ディーゼル電気推進式潜水艦の一隻が軽微な事故に遭遇した。3隻は造船所で長期保守整備中で、2隻は港湾で係留され修理中だった。
ドイツ海軍関係者は補修部品の不足を嘆く。「冷戦中は新規装備導入と同時に部品セットを確保していたが、予算節約で今や部品在庫が全くない状態だ」とDefense Newsが海軍関係者の発言を伝えている。
アンヘラ・メルケル首相は防衛予算の対GDP比率をゆっくりと引き上げると公約しており、2030年代初頭にNATO目標の2%水準に達すると述べている。
その中でドイツ空軍が新型機の導入に向かうというのは現有機材の維持管理もできないなかで信じられない話だ。
ドイツ空軍はユーロファイター・タイフーン143機発注の最終号機を受領している。ただし、旧型機の更新用にタイフーンの追加発注となるかもしれない。
2019年末時点でドイツはタイフーン141機、トーネード74機を保有し、更にトーネードECRを30機運用していた。後者は特殊兵装とセンサーを搭載し危険な敵防空体制制圧つまりSEADミッションの機材だ。1980年代製のトーネードは後継機種が必要だ。タイフーンをこれに充てる案がある。新規生産分のタイフーンは旧型タイフーンの後を引き継ぐかもしれない。ドイツ政府がタイフーンを追加発注すればドイツのタイフーンは250機を超えそうだ。
ただし現在のような即応対応率のままでは実戦に投入可能な戦闘機が数十機になってしまいかねない。■
David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad.

2020年1月2日木曜日

次期CODとなるCMV-22オスプレイが完成

Behold The First Image Of A Navy CMV-22 Osprey That Will Replace The C-2 Greyhound C-2グレイハウンドの後継機CMV-22オスプレイが姿を現し始めた
The delivery of the first CMV-22B to the Navy for testing should occur soon, with the type slated to start its operational career in 2021.CMV-22B一号機はまもなく海軍に引き渡され、2021年に供用開始する

BY TYLER ROGOWAY AND JOSEPH TREVITHICKDECEMBER 10, 2019
THE WAR ZONE
CMV-22B Carried Onboard DeliveryBRADY KENDRICK



CMV-22Bオスプレイ空母艦上輸送機(COD)型開発が順調に進んでいる。長年活躍してきたグラマンC-2Aグレイハウンドがいよいよ退役に近づいてきた。代わってオスプレイがその役目を引き継ぐ。議論を呼んだ米海軍の決定だったが、そCMV-22Bの納入が近づいてきた。今回、海軍のCOD塗装を施したCMV-22B一号機の写真を入手した。写真はベルのアマリロ工場(テキサス)で航空写真家ブレイディ・ケンドリックが2019年12月10日に撮影したもの。

CMV-22Bで一番目立つ構造上の違いは燃料タンクが機体両側のスポンソン前方についたことだ。COD任務で必要な航続距離の実現のためで、空母打撃群が外洋に展開中でも対応する必要がある。


BRADY KENDRICK
機体改修の大まかな姿がわかる。


米海軍は2018年6月に39機を42億ドルでベルーボーイング共同事業体に発注し、CMV-22Bは順調に開発されてきた。さらにここに19機のMV-22Bが加わり、米海兵隊と日本向け、CV-22Bが米空軍向けに製造される。

2018年12月にCMV-22B初の運用部隊となる艦隊補給多用途飛行隊30(VRM-30)の編成式典をノースアイランド海軍航空基地(カリフォーニア)で行っており、搭乗員は海兵隊中型ティルトローター訓練飛行隊204(VMMT-204)で訓練を受けていた。

さらに2019年10月に艦隊補給多用途飛行団(COMVRMWING)がノースアイランドで編成され、海軍が予定するCMV-22B飛行隊三個を統括することになる。またVRM-40も編成に向かっており、VRM-50編成が承認されている。

ノースアイランドでは運用に当たり施設の改良が必要だ。滑走路、誘導路はオスプレイのエンジン排熱に耐える表面処理だ。すべてはC-2AグレイハウンドからCMV-22への機種転換検討で必要となり今後5年間かけて完成する。C-2A最終号機の用途廃止は2026年から2028年の予定。

CMV-22B一号機の納入が迫っているものの、同機の供用開始は2021年となり、海軍向けF-35CがUSSカール・ヴィンソンで供用開始するのと同じ時期となる。

「2021年の第一四半期を目標に安全運用ができるように飛行隊をまるまる使えるようにする」とVRM-30司令トレヴァー・ハーマン中佐が2019年6月にUSNI Newsに語っていた。

CMV-22BでF-35Cの空母運用を支援する必要があると海軍は一貫して主張してきた。C-2Aグレイハウンドでは共用打撃戦闘機のF135エンジンが搬送できないという。


USMC
F-135 を専用台車に載せて海兵隊のMV-22Bに搭載する実証が2015年に行われた。.


ここがCMV-22でC-2Aに交代させる構想で議論を呼んだ点だ。グレイハウンドではエンジンが運べないという海軍の言い分は正しい。ただし、CMV-22Bでの実施は複雑かつ手順で特殊器具も必要で誤差が許されない仕事になる。

また機内にスペースの余裕がないのも懸念材料だ。その他、艦上での機体取り回しや発艦・回収に時間がかかるため緊急時対応が心配だ。だがなんといってもCMV-22Bが自力で艦上を移動できないことが最大の懸念だ。

さらにグレイハウンドと異なりオスプレイは与圧がないため、上昇高度に限度があり、人員輸送時に制約が生まれる。悪天候を飛び越える飛行ができず、飛行経路が複雑となるし、天候のいかんにかかわらず発生する輸送任務にリスクが生まれる。

同時にCMV-22Bは空母以外の艦船からの運用も想定する点も、グレイハウンドと異なる。これまでのCODでは「ハブアンドスポーク」方式でCOD機で人員貨物を空母に運び、その後はヘリコプターで空母打撃群の他艦船に搬送していた。
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とはいえ、空母打撃群の補給活動ではC-2が姿を消し、CMV-22に交代することとなり、将来の空母艦上輸送機が姿を現し始めてきた。■

Contact the authors: Tyler@thedrive and Joe@thedrive.com

2020年1月1日水曜日

新年のごあいさつ:6百万PV突破、投稿数3.3千記事、そして2019年最も読まれた記事トップ5の発表です

恒例の年間最も読まれた記事のリストです。

2019年1月1日時点のPV合計は4,844,551でしたが、12月31日午後3時30分現在は6,077,821ですので概算1,233,270つまり延べ120万人の方にこのブログをご覧頂きました。ありがとうございました。ちなみに投稿件数は3,300件を超えています。

そこで2019年に最も読まれた記事トップ5の発表です。

第5位 $ロッキード株は買い? 小型核融合炉開発は遅れているものの着実に進んでいる#ロッキード・マーティン, スカンクワークス, 小型核融合炉CFR [4,128 PV]


第4位 次期戦闘機はNGFの呼称へ。日本独特の大型戦闘航空機になりそう#F-3, #NGF, #日本の安全保証 [8,172 PV]


第3位 ★F-15X構想は思ったより大規模になりそう ボーイングは二型式を固定価格で提案か#F-15. F-15X, #USAF, #ボーイング [8,854 PV]

第2位 あらためて日本のF-3開発状況をとりまとめてみましたが....#F-3, #日本の安全保障 [9,082 PV]

そして
第1位は.....

★★世界いかなる場所にも24時間以内に展開する「ラピッド・ラプター」構想の持つ意味とは#F-22, #USAF, ACC, F-22を対地攻撃に使う, ラピッド・ラプター [12,232 PV]

でした。


こうして見ると皆さんは戦闘機とくにF-3(NGF)、F-15EX、F-22へのご関心が強いですね。このブログでは翻訳の練習もありますが、日本では気づきにくい海外での動向とくに技術や地政学さらにISR機能について触れたいのですが、結果として皆さんのご関心にこびた投稿構造になっているのがわかります。

さあ、2020年はどうなりますかね。いままで2020年代が先に控える区切りだったのですが、これからは2030年代、2040年代という表現が中心になるでしょうね。次世代戦闘機は開発が遅れていけば、2040年代という言い方もでてくるでしょう。2040年代といえばB-52がこの頃にやっと退役するともいわれ、決してての届かない未来とは言えないかもしれません。

それはともかく2020年も一緒に動向を探っていきましょう。よろしくお願いします。









2019年12月31日火曜日

2019年最後の記事はやはり戦闘機! F-15EX導入を米国は後悔しないか

F-15EX導入は間違いだったのか、歴史を見ないとわかりませんが、
おかげで米国で次の戦闘機プロジェクトが遅れるのは確かでしょう。NGFが実現するとすれば、米国との共同作業がやはり一番現実的なのではないでしょうか。F-15Jでは今年は新しい動きもありましたね。ISRに主軸を起きたいのですが読者の皆さんはやはり戦闘機にご関心が高いようです。では皆様良いお年を。

Why Does Russia Want the United States to Buy the F-15EX Fighter? ロシアがF-15EX導入を米国に希望する理由とは

We shouldn't take Moscow's advice. モスクワの意見を聞く必要はない
by David Axe 
December 30, 2019  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-15 EXF-15F-32RussiaRussian Air ForceU.S. Air Force

Key point: Non-stealthy F-15s will be unable to compete against peer competitors like Russia and China. 非ステルスF-15ではロシア、中国の現有機材に対抗できない
F-15EXイーグル戦闘機をボーイングから調達しロッキード・マーティンF-35を補完するペンタゴン決定はいまだに議論のまとだ。国防総省は空軍に対しF-15EX合計8機を総額12億ドルで2020年度予算要求に盛り込ませた。
空軍はこれに加え136機を2020年代中に調達する。新造イーグルは1980年代製F-15Cを運用中9個飛行隊に配備する。各飛行隊は概ね米本土の防衛任務についている。
Air Force誌が両機種を比較を掲載している。
機体単価は80百万ドルと同じだが、共通点はそこまで。F-35はステルスだが、F-15は航続距離、速力、兵装搭載量で上を行く。
ロシアのS-400防空システムはF-35を20マイル地点で探知可能だが、F-15EXは200マイル地点で捕捉する、とAir Force誌は推定。
F-35は兵装22千ポンドを搭載し、上昇限度50千フィート、670マイルまで進出し、最高速度マッハ1.6だ。一方、F-15EXは29.5千ポンドの兵装搭載で、60千フィート、1,100マイルの戦闘行動半径、最高速はマッハ2.5だ。
時間あたり運行経費はF-35が35千ドル、F-15EXは27千ドルだ。
ただし、新造イーグルの利点は既存F-15飛行隊が短時間かつ安価に機種転換できることだ。
「F-15EXは製造中機材と米空軍は見ている。F-15C、Eとの部品共通性は70%で、既存の地上施設、シミュレーター他支援装備が全てそのまま流用できる」とAir Force誌はまとめている。
「機体単価は両機種ほぼ同じだが、F-15EXへの機種転換は数週間で終わるのに対し、F-35では数ヶ月ではすまない」
F-15EXはC型よりセンサーやエイビオニクス性能があがり、兵装搭載量も増える。F-15Cは金属疲労のため「2030年まで持たない」と空軍のデイヴィッド・クラム少将が Air Force誌取材に語っている。
これに対しF-15EX批判派にはロッキードが頼りの選挙区議員の他に専門家も名を連ねる。2020年度のF-35調達規模は48機の要求だが、これまで空軍は毎年80-100機を調達してきた。予算がない、というのが空軍の言い分だ。
空軍参謀総長デイヴィッド・ゴールドフェイン大将はF-15EX調達でF-35を1,700機以上調達する空軍の計画に影響は出ないとDefense Newsで述べている。「ともに補完し合う関係だ。それぞれ相手をもり立てる」
だが非ステルスのF-15では「国家防衛戦略で最大の懸念の脅威環境を生残れない」と語るのが元F-15パイロットのデイヴィッド・デプチュラ退役将官、ミッチェル航空宇宙研究所所長で、Forbesに2019年2月以下寄稿した。
「中国、ロシアが軍事力を急速に拡充し、米国の戦略優位性を脅かしている。空軍が既存機種の新型版を導入すれば費用対効果に優れた解決策と主張する向きが国防総省にあるが、原設計1960年代で生産開始が1970年代の機体だ。博物館行きとなっておかしくない機材を21世紀の戦闘に駆り出していいのか」
「空軍はF-15EX導入でF-35の1,736機調達予定に変更なしとするが、過去の歴史や予算要求の動向を見る限り、逆の結果になりそうだ」「2020年度予算要求では空軍のF-35の今後5年間の調達数は24機減」とAir Force誌は指摘している。■

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This piece was first featured in April 2019 and is being republished due to reader's interest.