2020年10月3日土曜日

令和3年度防衛予算要求をDefense Newsはこう伝えています。

  

The Japan Maritime Self-Defense Force's helicopter carrier Kaga, right, and the Izumo are seen in Yokohama, south of Tokyo. (Yoshitaka Sugawara/Kyodo News via AP)

 

本の防衛予算はここ数年の傾向を受け次年度も増額され、中国の装備近代化とあわせ核兵器を保有する北朝鮮のミサイル開発をにらむ。

 

防衛省の次年度予算要求は550億ドル規模で、増額要求は8年連続の前年比8パーセント増で記録更新の規模となる。

 

義偉政権で初の防衛予算となる。前任の安倍晋三を継承し、防衛分野で日本の国際関与を強化する。

 

予算要求にロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機の追加調達があるのは想定どおりだ。防衛省は3.1億ドルでF-35Aを4機、2.5億ドルでF-35Bを2機調達したいとする。

 

日本はF-35Aを105機、F-35Bを42機調達する予定で、米国を除き最大のF-35運用国になる。F-35Bはヘリコプター駆逐艦いずもに搭載するため、2.2億ドルで、排気熱に耐える飛行甲板の強化と、前部構造の改修を進める。

 

The Japan Air Self-Defense Force's F-35A jets prepare to land at Misawa Air Base in Misawa, northern Japan, on Aug. 1, 2019. (Kyodo News via AP)The Japan Air Self-Defense Force's F-35A jets prepare to land at Misawa Air Base in Misawa, northern Japan, on Aug. 1, 2019. (Kyodo News via AP)

 

例年同様に防空ミサイル防衛能力の整備予算が盛り込んだ。3.7億ドルでペイトリオット高性能版-3のミサイル部分強化型を追加調達する。日本は地上配備イージスアショアの整備を白紙撤回したばかりで現在は別の選択肢を模索している。

 

予算要求では国内防衛産業向けに調達・研究両面で事業が想定され、6.44億ドルで川崎P-1対潜哨戒機3機、4.88億ドルでC-2輸送機を同社から2機調達する。

 

陸上自衛隊関連では1.8億ドルで16式車輪走行軌道戦闘車両25台を調達する。海上自衛隊は9.4億ドルでフリゲート艦2隻、6.5億ドルで新型攻撃型潜水艦一号艦を建造する。

 

次世代ステルス戦闘機の研究開発も5.6億ドルに増やし、別に1.1億ドルでレーダー、ミッションシステム統合などサブシステム開発を進める。

 

極超音速ミサイル開発に2.2億ドルを計上し、C-2原型の長距離スタンドオフ電子戦機材を1.4億ドルで開発す機内装備の調達に67百万ドルを要求。

 

宇宙サイバー空間部隊の研究運用、電子戦部隊新設にも予算を配分する。電子戦部隊は陸上自衛隊朝霞駐屯地に配備し、その他駐屯地にも2022年3月までに要員を配備完了する。沖縄含む南西部に重点をおき中国の海空での活動をにらむ。

 

こうした部隊は通信やGPS機能の妨害を狙う電磁攻撃の阻止が狙いだ。防衛省は66百万ドルでRC-2偵察機を調達し、2.18億ドルで敵無人機等による電磁攻撃の監視装備で研究を進める。

 

日本は宇宙作戦隊を航空自衛隊内部に今年5月に創設し、2023年から本格運用する。同隊は敵攻撃やデブリから日本の衛星群を守る監視活動が任務だ。同時に衛星の航法通信機能を地上各部隊に活用させる。監視衛星の設計打ち上げや米国との共通装備調達に6.8億ドルを要求した。

 

予算要求は財務省が査定中で、次年度予算は年末に発表の運びだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Japan reveals record-high budget request eyeing hypersonic tech, F-35s and more

By: Mike Yeo

Mari Yamaguchi of The Associated Press contributed to this report.


LEO衛星で全世界をカバーし、敵標的情報を「光速」で戦場に送る米陸軍の迅速攻撃構想

"Attacking at Speed": Army Project Convergence & Breakthrough Lightning-Fast War


甲戦闘車両がアリゾナの「直撃火力」ミッションで敵戦車を標的にする。車内には標的の照準情報が上空を飛ぶ無人機、ミニ無人機、ヘリコプターから無線で入るが、まず標的の詳細情報は高速移動する低高度衛星を運用するワシントン州から入ってきた。


陸軍のプロジェクト・コンヴァージェンス2020は実弾発射を伴う実験でアリゾナ砂漠で展開し、高性能衛星の力を借りて標的を迅速に探知しデータを転送し迅速な攻撃力を発揮するクロスドメイン攻撃の新しい形を試す。


小型高速の新世代低軌道(LEO)衛星はワシントン州のルイス・マッコード共用機地から運用されており、標的情報をリアルタイムでアリゾナ州ユマの演習実証地に送ってきた。かつてない高速長距離標的捕捉技術が現実のものとなった。


「ここで目にしたのはLEO衛星からの情報提供の第一段階だ。ワシントン州を経由して地上統制ステーションに送信された。地上ステーションがデータを中継した」と陸軍の戦闘能力開発本部を統括するジョン・ジョージ少将が現地で語った。


演習ではLEOと中高度地球周回軌道衛星の新技術を活用し、地球静止軌道(GEO)衛星の能力の上を行く「網目」ネットワークの増強を目指した。


「これまではGEOを活用してきた。LEO衛星だと衛星通信につきものの遅延を大幅に減らせる。かわりにデータスループットが増加する。戦術情報をより多くの地点で得られる利点がある」と専門家が語っている。


目標捕捉の迅速化技術がプロジェクトコンヴァージェンス2020で使われているが、その背景に陸軍は敵軍の捕捉及び交戦で「スピード」を重視しており、現行より相当加速しようとしている。ネットワーク対応衛星から無人機へ、ミニ無人機へ、さらに地上の攻撃手段へFIRESTROMの呼称のAIがデータを送ると陸軍の通常戦の在り方そのものが一変する。今回の演習に応用された技術はセンサーから発射兵器までの調整最適化を最小20秒で完了するが、これまでは20分が常識だった戦場の在り方が大きく変わる。


「宇宙配備センサーの情報を地上や空中に送るのは簡単かつ超高速で実施できそうだったが、実際は複雑な構成となり作動させるため何週間もコーディング作業が必要だった」と陸軍将来装備本部のロス・コフマン准将(次世代戦闘車両機能横断チーム長)が今回の演習場で語っている。


高速ネットワークのLEOの整備を陸軍、ペンタゴンが急いでおり、今後合計4,500基まで増強の予定がある。今まで約600基が配備されており、今後は毎月60基増やす。


「GEO利用が普通だった。それをMEOさらにLEOの利用まで広げてきたが、まだまだ発展途中だ。来年の演習までに北米地域は24時間週7日連続カバーでき、実証を続ける。4,500基すべての配備に二三年かかるが、ゆくゆく全世界をLEOでカバーする」と陸軍技術将校が語っている。


LEO衛星の利用はペンタゴンの目指す宇宙空間の活用方針に合致したものだ。宇宙装備の回復力と生存力を高い接続性とともに両立させる。LEO衛星の「ネットワーク化」で情報共有しながら対象地をきめ細かくカバーするのが宇宙の「ノード」で、ここから標的データを転送し連続追尾を実現する。


LEO衛星システムでは一部衛星が敵の攻撃で機能喪失しても機能を維持するねらいもある。このため冗長性が重要だ。有事には衛星ネットワークは敵の攻撃や妨害があってもミッション実施機能を維持する。

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「LEOにより回復力が実現し、ネットワーク維持も可能です。同じ通信内容が複数経路を通過するパス多様性を確保できるからです。これを使い戦術ネットワークを形成します」と上記陸軍技術将校は語る。


プロジェクトコンヴァージェンスの衛星ネットワークは今後も続く陸軍合同装備投入シークエンスの一部だ。コフマン准将の説明では宇宙空間や宇宙配備のセンサーは敵標的の侵入段階に活用される。次に来るのが分解段階で航空機により敵の長距離火砲を破壊し、最終段階が「活用」段階で地上軍が敵を攻撃した、というのが今回の演習の内容だった。■


この記事は以下を再構成したものです。


Army Seeks Thousands of High-Speed, Low Earth Orbit Satellites For Ground Attack

Kris Osborn

2020年9月29日


-- Kris Osborn is the Managing Editor of Warrior Maven and The Defense Editor of The National Interest --

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.

 

 

Army Tests Breakthrough Cloud-Enabled War at "Speed of Fires"

The Army Secretary described it as “making decisions at the speed of fires"

 

2020年10月1日木曜日

無人機を母機とする小型無人機スパローホークを発表したジェネラルアトミックス

 

ェネラルアトミックスの新型無人機は別の無人機を母機から発進回収される。 

米無人機製造分野で大きな存在感を誇るジェネラルアトミックスが開発中案件として新型無人機構想を発表した。同機はスパローホークスと呼ばれこれまでにない特徴を有する。

 

同社によればスパローホークは小型無人航空装備で「空中発射回収技術の実証機」として母機となる大型無人機ないし別機種から運用する。

 

小型無人機は母機の機能を拡張する役目を果たすと同社広報資料にある。ジェネラルアトミックス社長のデイヴィッド・アレクサンダーは「スパローホークによりMQ-9が搭載するセンサーの能力が拡大され、省人化を進めながらISR有効範囲が広がる】と説明。

 

同機はまだ量産に入っていないが、折り畳み式主翼で機体全体は180度回転し飛行中の空力学的効果を狙う。

 

 

ジェネラルアトミックス説明ではスパローホークはグレムリン事業で製造するとある。これはDARPAの極秘事業で「UAV複数を既存の爆撃機や輸送機から発進させるねらいがある。母機は戦闘機や小型の機体でも対応可能とし、敵防空網の外から発進させる。

 

DARPAの説明では「グレムリンはミッションを完了すると、C-130が空中で回収し基地に戻る。基地で要員は24時間以内に次のミッションへ送り出す」とある。

 

安価な小型消耗品扱いの戦闘機が登場すればその利点は明らかだ。保守点検費用以外に航空要員の生命の危険を減らすメリットには大きなものがある。

 

ジェネラルアトミックスはリーパー、プレデターのメーカーとして有名だ。両機は米国の海外戦闘ミッションで不可欠な存在だ。だが、両機は長年供用されており、そろそろ後継機種が必要となってきた。

 

ジェネラルアトミックスが公開したのはスパローホーク以外にもあり、同社発表の想像図を見るとこの無人機はステルス全翼機のようで同社には初の試みとなる。同社によればこの無人機の特徴は長時間滞空性能だという。

 

無人機の老舗ジェネラルアトミックスはステルス無人機、無人機を母機とする無人機のほかにも隠し玉があるように見える。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

Sparrowhawk: This Drone Can Be Launched from the Air and Recovered by a Mothership

 

September 30, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: DroneMilitaryTechnologyGeneral AtomicsWar

by Caleb LarsonCaleb Larson is a defense writer with the National Interest. He holds a Master of Public Policy and covers U.S. and Russian security, European defense issues, and German politics and culture.

Image: General Atomic


2020年9月30日水曜日

将来の戦闘で給油機をどうするかが課題。KC-46の武装化それとも大型戦闘機、あるいは小型無人給油機?

  

KC-46A

Credit: Boeing/Paul Weatherman

 

型の長距離戦闘機、ボーイングKC-46給油機の武装型、さらに無人小型ステルス給油機...これが米空軍上層部が検討中の内容と空軍次官補ウィル・ローパーが9月23日に明らかにした。

ローパーは調達、技術、兵站を担当し、新任の航空機動軍団司令ジャクリン・ヴァン・オヴォスト大将とKC-46の動向に注視していると述べた。トラブル続きの同機では空軍とボーイングが遠隔視覚システム2.0のアップグレードの完成に努力している。 

KC-46で問題解決すれば次の給油機に注力できるとローパーは述べ、実際の給油能力と現場が求める給油能力の差を解消したいとする。航空優勢が確保できない環境ではKC-46のような機体は大型すぎ、防御力も低いため脆弱性が隠しきれない。 

そこで生存性の高い機体で厳しい空域でも給油を提供できる機体がヴァン・オヴォスト大将との協議の焦点だったとローパーは紹介している。

「空軍の次の戦略課題は給油機を敵戦闘機から守る方法で、敵は給油機を撃墜すれば戦闘機、爆撃機多数を撃墜するのと同じ効果があるとわかっている」

ローパーは敵攻撃にさらされる給油機を一つのアーキテクチャアと考え、各種の選択肢を検討する。

そのひとつに給油機への依存を減らすことがあり、新型戦闘機の搭載燃料を増加させればよい。

「現行の戦闘機のサイズで今後の対応は難しい。さらにすべてがデジタルエンジニアリングになる中で将来の戦闘機の姿を想像すれば大型化が自然に出てくる」

もう一つの選択肢がKC-46の生存性を高めることで、これが可能なら前方進出が可能となる。 

「KC-46が大型機なので各種センサーや兵装を主翼下に搭載する余裕がある」「高価値機材の防御に戦闘機の哨戒飛行をあてられるのならこんなことはしない」(ローパー)

今後に向け別の形の給油機も必要だという。二つ選択が可能だ。ひとつはKC-46を上回るサイズの機体で搭載燃料をふやすことだが、実際は敵の手が届かない地点に留まることになる。もうひとつは小型無人ステルス「マイクロ給油機」で敵防空空域の内部に進出することだという。

「敵戦力が強い空域で航空戦力を展開するためには燃料を戦略的に理解する必要がある」とローパーは述べている。■

 

この記事は以下を再構成しました。

USAF Discussing Larger Fighters, Weaponized KC-46, Roper Says

Steve Trimble September 23, 2020


2020年9月29日火曜日

J-20まで台湾海峡に展開する中国の意図は「実戦」と日米両国へのけん制だ

 

 

国の戦闘機、対潜哨戒機、早期警戒機が台湾に接近するパトロール飛行を続けており、中国は「実戦」に向けた準備として台湾進攻をはじめようとしている。中国指導部は真剣なのだろうか。

中国はステルス戦闘機、対潜哨戒機、早期警戒機などを台湾に接近飛行させており、台湾進攻の「実戦」準備に入ったようだ。

 

共産党寄りの環球時報によればY-8対潜哨戒機、KJ-500早期警戒機、Y-9偵察機さらに第五世代ステルス戦闘機のJ-20が台湾付近を飛行しており、軍事行動の準備中という。「台湾軍情報を収集するのが目的で、あわせて米国、日本の動向とりわけ潜水艦や兵員移動、軍事基地の状況を把握し、PLAによる戦闘の準備をしている」とある。

 

同記事によればJ-20は台湾沖合500キロ地点を飛行し、台湾、米国双方の軍用機を数分で撃破できる状態だったという。さらにJ-20は台湾を15-20分で攻撃できる状態だったとある。

 

 

J-20は台湾の現役軍用機よりヒト世代先を行く気体であり、PLA侵攻時には一方的な勝利となると同紙にある。

 

他紙記事でも米軍日本軍が台湾防衛に出動しても中国軍の攻勢の前に敗退し、Y-8が米日両国の潜水艦を追尾するとある。

 

Y-9偵察機も敵軍の情報をつかみ、敵基地の情勢を探り、港湾、飛行場の様子が手に取るようにわかるからという。

 

では記事にある「実戦」とはどういう意味なのか。戦闘にむけたエスカレーションなのだろうか。

 

台湾と米国は中国侵攻の脅威を現実のものと感じてきた。今回の中国の動きにはエスカレーションの意図が明らかだ。偵察情報収集ミッションとJ-20の脅威が組み合わさり、挑発の意図に深刻なものだある。

 

ではどんな対抗策がとれるだろうか。

 

一つ思い浮かぶのはF-35Bを搭載した米強襲揚陸艦を付近に配備し、J-20に対抗しながら、中国偵察機の安全を脅かすことだ。

 

同地域でもう一つ忘れていけないのが米側が爆撃機タスクフォースを定期的に配備し、訓練や偵察パトロールを展開しておくことであり、米国が台湾と共同で接近してくる中国機を探知し迅速な迎撃態勢を維持することだ。■

 

 

この記事は以下を再構成したものです。中国はこのまま何もしないと張子の虎と笑われますので、何らかの手を打ってくるでしょう。タイミングはズバリ、11月の大統領選挙後です。この中で習主席を国賓として招こうと主張している人がいるのはどうしたもんでしょう。

 

Chinese J-20 Stealth Fighters are Flying Very Close to Taiwan

September 28, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: TaiwanChinaMilitaryDonald TrumpJ-20Stealth Fighters

by Kris Osborn

 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.

 


2020年9月28日月曜日

初期型ホーネットを2030年代まで使いまわせ、米海兵隊の各種性能改修案

 2030年代以降の米海兵隊の戦術航空機材 (TACAIR) はロッキード・マーティンF-35B、C型ライトニングIIに統一される。現在はマクダネルダグラスAV-8BハリヤーIIおよびボーイングF/A-18AからD型ホーネットも海兵隊の近接航空支援(CAS)に投入されている。現行案ではハリヤーIIは2028年度、ホーネットは2030年度に廃止される。

 

海兵隊のホーネットはA型からD型まで1980年代の製造で旧式化が目立つものの全機が性能改修を受ける。各機退役まで10年近く残る中で、選抜した84機は最終年度まで供用対象となる。

 

ホーネットは空対空、空対地両面で海兵隊で最優秀機材となっているがさらに一部機材は10千時間までの稼働を可能とすべく保守管理が施される。並行して新装備も導入され、ライトニング部隊がフル稼働する2030年までのつなぎ機材として十分に機能させる。

 

非公式に「クラシック」ホーネットと呼ばれる第一世代F/A-18はすでに米海軍では大型化したF/A-18E/Fに交代している。海軍から一部機材が海兵隊に提供され、2030年までの供用を期待されている。

 

JAMIE HUNTER

米海兵隊のホーネットは最大7個飛行隊に最新性能改修の実施を目指す。

 

 

F/A-18A-D事業管理部門(PMA)が今後の計画を積極的に検討しており、稼働率向上や機材保存に加え耐用年数末期予定点検(PMI)の再検討も行っている。年二回にわたり検討会を開き、海兵隊の現有ホーネットで今後も供用可能な機体の特定に努めている。

 

海兵隊上層部からホーネット攻撃機部隊に関し、大胆な案が出ている。その中心が数次にわたる改修で、最終的に飛行隊7個分の最良状態のホーネットを確保する。全機にレイセオンAN/APG-79(v)4アクティブ電子スキャンアレイレーダー(AESA)を搭載する。

 

このレーダーは Block 2/3のF/A-18E/FスーパーホーネットならびにEA-18Gグラウラーに搭載されているAN/APG-79(v)1が原型だ。クラシックホーネットにAESAを搭載する構想は長年にわたりあったが、新型機体防御装備ならびに精密誘導兵器を搭載すれば、ホーネットはハイエンドミッションに耐える機体になる。

 

ホーネットの兵装システム士官(WSO)だったマイケル・ペイヴィス中佐がパタクセント海軍基地でF/A18A-D事業にかかわり、The War Zone取材にこう述べている。「海兵隊の航空戦力整備案は海兵隊F/A-18A-D各型の今後の基礎となります。2030年の退役とF-35への機種転換でも重要な構想です。移行期間中もホーネットは海兵隊機材として空対空、空対地で最も多く運用される機体であることにかわりありません。このため同機の維持が必要であり、国防戦略構想でも各機を十分な威力を維持し稼働可能に維持する必要があります」

USMC

米海兵隊のF-35機種転換計画図。

 

 

「A-D各型を運用中の各飛行隊を今後は混成編成にしていきます。F/A-18Cを7機、F/A-18Dの5機として最小限の支出で最大の効果を実現します。F/A-18の設計寿命は6千飛行時間でしたが、8千時間まで延長が完了しています。長時間飛行ずみ機体の点検結果から、1万時間までの飛行が可能と判明しています。ただしこの点検は非常に高額で時間がかかり、作業中は機材が使用できなくなります。点検済み機材はAN/APG-79(v)4レーダー、AN/ALQ-214(v)5・AN/ALR-67電子戦装備を搭載し、最少の出費で最高の性能を実現します。あくまでも機体保持費用を下げながら性能を最高水準にするのがねらいです」

 

新編成の混合飛行隊構想は現役で残る海兵隊のホーネット飛行隊7個でF/A-18の想定ミッションをすべてこなすのが狙いだ。「人員面の問題が解決されますし、今後はホーネットWSOの新規訓練は終了します。ただしホーネット稼働中はキャリアフィールドは維持し、複座型のみで可能な前方航空統制官(機内)や戦術航空統制ミッションの能力開発を進めます」「全部隊にこれを広げれば、WSOの活用が可能となります。混成部隊ならではの人材活用策となります」(ペイヴィス中佐)

 

最良の状況の機材を選ぶ

 

海兵隊ホーネット各飛行隊はこの数年、稼働率問題に苦しんできた。要求を満たす機材数の確保が大変だった。2018年度版の海兵隊航空戦力整備案では「海兵隊所属機材は現時点で飛行隊11予備飛行隊1の編成である。この数年は修理のため稼働機数の不足に悩まされている。そこで海兵隊総司令部では臨時措置として第一線飛行隊を10個編成とし、て稼働率を維持しつつ現時点の作戦要求にこたえる体制とする。今後は点検等が終了し復帰する機体が増えるので12個飛行隊体制が2017年度第三四半期に実現の見込み」とある。

 

海軍システムズ本部がホーネット部隊の摩耗度を調査した際に大きな支えとなったのが飛行時間予測ツールで2030年まで支援コストを最小限にしながら機体の利用度を最大にできるとわかった。「この分析で性能改修が可能な機材が把握できた」とペイヴィス中佐が説明。「最高の常態の機体を抽出し、最少の保守管理費用で最大の効果を実現した。また生産ロット別に区別し、一定のロット番号以降の機体を改修対象にし、それ以下は対象外とした。F/A-18Cではロット15が境目でD型はロット14だった」「機体を個別に点検すると総飛行時間がわかり、どこまでの寿命が残っているか疲労度で把握した」とし、中でも主翼付け根の疲労度が大きな要素で交換が必要なのかで所要時間が変わり、センターバレル交換プラス(CBR+)は大きな出費となる。

 

2019年度海兵隊航空戦力整備計画では「F/A-18供用期間管理事業((SLMP)はセンターバレル交換プラス(CBR+)と長時間飛行機材(HFH) 点検事業で構成する。CBR+でロット17以前の機材の供用期間を延長し、HFH点検ではF/A-18A-D各型で8千時間超を実現する。HFH、CBR+と並行して供用期間延長事業(SLEP)では点検整備に加え技術変更点提言によりその他F/A-18A-D機材の飛行時間を1万時間に延長する。海軍航空兵力整備事業では飛行時間8千超の機体整備も計画する」とある。

 

ペイヴィス中佐は「機体疲労度を調べ、飛行時間累計からどこまでの性能改修が可能か検討し、CBR実施の必要度を判断することでCBR予測を大幅に減らしています。合計5回分のCBRを回避できた事例もあります。これでごく小規模の疲労対策で機材を1万時間稼働させられます」と述べる。「整備拠点には8千時間超のHRH点検対象機材が大量に残っています。可能な限り早く第一線部隊に戻したいので現在の作業工数は最高レベルになっていますが、このままでは完了は2030年になります。9千時間点検もありますが、これは軽微な内容です。

 

JAMIE HUNTER

ホーネット混成飛行隊体制で海兵隊はホーネット完全退役までWSOのキャリアを維持できる。

 

 

現役飛行隊に加え、予備飛行隊一個がフォートワース海軍航空基地/供用予備隊基地(テキサス州)におかれる。VMFA-112「カウボイズ」は旧式F/A-18+機材から低飛行時間機体のロット10および11のF/A-18Cに機種転換中で、後者はボーイングによりC+仕様に改修中だ。このプロジェクトは30機を当初対象にしていたが19機に削減された。「C+プログラムでこれまで7機が納入済みです。12機分の改修作業が残っており、VMFA-112飛行隊を『用途最終日』まで支援していきます」とペイヴィスは述べる。

 

F/A-18C+改修では多機能情報分配システム-小規模ターミナルMultifunctional Information Distribution System-Low Volume Terminal (MIDS-LVT) のデジタル通信機能、海軍航空乗員共通射出座席 Naval Aircrew Common Ejection Seat (NACES) 、共用ヘルメット搭載目標照準システム Joint Helmet-Mounted Cueing System (JHMCS)、戦術航空機用移動地図表示機能Tactical Aircraft Moving Map Capabilities (TAMMAC)や新型フルカラーコックピット表示装置を搭載する。

 

新装備による性能改修

こうした装備品の個別搭載に加えソフトウェアの「手直し」を作戦運用飛行事業Operational Flight Programs (OFP)として連続実施する。ここはLink-16データリンク、Gen4ライトニングポッド、レーダー航法機能の高度化があり、航空管制上の規程に合致するようになる。

 

電子戦機能の高度化でも一部機材への搭載が始まっている。「ALE-67(v)3レーダー警報受信機[RWR]に加え、ALQ-165 ASPJ(機内搭載防御用ジャマー)にALQ-214(v)5を付けて搭載しており、作業は進行中」とPMA-265でレーダー電子戦装備の整備を統括するビシャー・マフティ中佐が説明してくれた。

 

あらたに承認され今後登場する装備品に自動地上衝突回避システムAutomatic Ground Collision Avoidance System (Auto-GCAS)があり、ペイヴィス中佐によれば搭載は「可及的速やかに」なるという。NAVWARと呼ばれる改修予算が認められ2022年度に事業開始となり、2023年度2024年度にかけ続き、GPSと時間計測機能を加えるとペイヴィス中佐は述べた。これはジャミングに強いGPSで、一定の作戦シナリオで応用される。

 

兵装面の性能向上ではAIM-9XブロックII、AIM-120D高性能中距離空対空ミサイル(AMRAAM)、AGR-20A高性能精密命中兵器システム Advanced Precision Kill Weapon System (APKWS)の搭載があり、後者はハイドラ70無誘導ロケットにレーザー誘導装置を付け精密誘導弾にしたものだ。新装備に加え新型アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーを組み合わせるとホーネットの戦力は全く新しい水準になる。

 

AESAで戦闘能力が大きく引き上げられるだけでなく、可動部品が減ることで信頼性が高まる効果も期待できる。運用面での改善効果として探知能力が向上し探知範囲も広がり、巡航ミサイルのようなレーダー断面積が小さな標的の探知識別能力が向上するほか広い空域を迅速に走査できるのはAESAレーダーが機械式装置を使わないためだ。

 

ホーネットが搭載するAN/APG-73の換装を海兵隊は長年にわたり望んできた。レイセオンは当初2010年に当時APG-79(VX)の呼称だった同社製高性能レーダーに換装できるか検討した。しかし、案は2018年度海兵隊航空戦力整備案まで陽の目を見なかった。

 

RAYTHEON

レイセオン社員がAPG-79(v)4の装着適合性をチェックしている。

 

 

その他のレーダー候補にはノースロップのScalable Agile Beam Radar (SABR)があり、同社はホーネットへの搭載可能性チェックを2018年に行った。2019年1月にはレイセオンから発表があり、海兵隊より AN/APG-79(v)4の採用通知を受け、F/A-18C/D各機へ搭載が決まった。現時点の予算では同レーダー75基の調達が決まっている。海軍航空システムズ本部はレイセオンに30.2百万ドルの契約を交付し、2021年12月より9基を先行調達する。注目されるのはカナダも同型レーダーを自国のCF-18ホーネットの性能改修用に採用したことだ。

 

同レーダーの選択理由としてスーパーホーネットで搭載したAN/APG-79につながる装備品として費用対効果が優れ、ホーネットで搭載ずみのAN/APG-73用ソフトウェアとも互換性があることがあるとペイヴィス中佐は説明。スーパーホーネット、グラウラーで搭載のAPG-79(v)1 との互換性から新型レーダー換装の際のソフトウェア開発費用を抑える効果がある。「AESAによりサプライチェーンを整理できる」とマフティ中佐も述べている。「APG-79(v)1をスーパーホーネットに搭載し、(v)4は約90パーセントの共用性がある。今後用途廃止までの間のレーダー装備を十分維持できる」


JAMIE HUNTER

海兵隊はホーネットのコックピットディスプレイ改修の予算実現も期待している。

 

 

さらにその先にまだ予算化されていない改修作業もある。AN/ALR-67(v)5 RWRの改良がその一つだ。「コックピット内のディスプレイも旧式化しており整備が問題になっている。左右のデジタルディスプレイ表示装置、コックピット映像記録装置だ」とペイヴィス中佐は述べ、段階的改修の予定があるが予算化と計画化が必要という。

 

こうした案で初期型ホーネットは最強の戦力を発揮するようになる。F-35の配備案が先送りになる中、F/A-18が耐用年数を延長しながら性能改修を受けていけば海兵隊には頼りがいのある機材になる。

 

ただし海兵隊は既存ホーネットの型式名を変更する予定はない。むしろ、ペイヴィス中佐はF/A-18A-D フリートで各種の非公式名称が流布しているが、いずれも米海軍、海兵隊で正規名称と認識されていないと指摘する。「 F/A-18A-Dホーネットです。『レガシー』ではありません、『レジェンダリー』でも『クラシック』でもありません」という。■

 


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