2022年4月9日土曜日

ウクライナ向け新レンドリース法が成立すれば武器等の供与が迅速に。ウクライナは武器提供を必死に請願。ロシアの人権委員会追放など急展開するウクライナ関係情報をお伝えします。

 

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An explosives sign marks the cordon around an aircraft in support of a security assistance mission between the U.S. and Ukraine at Dover Air Force Base, Delaware, May 24, 2021.

USAF

 

新レンドリース法案が成立すれば、兵器含む軍事装備品のウクライナ搬送が加速しそうだ

シアのウクライナ戦が8週目に入ろうとしている中、米上院は、第二次世界大戦中のレンドリース法のようなウクライナ向け新しい軍事支援メカニズムを確立する法案を可決した。成立すれば、米国政府からウクライナへの武器・弾薬などの安定供給が、飛躍的に増大する可能性が生まれる。

水曜日の夜遅く、アメリカ上院は、第二次世界大戦中のレンドリースプログラムをモデルとして、ウクライナに対する新たな軍事支援活動を確立する法案を可決した。この法案がジョー・バイデン大統領の署名で成立するためには、下院での可決が必要だ。

同法案が成立すれば、ウクライナへの新たな軍事支援の提供が大幅に加速されそうだ。米国政府はウクライナ軍に武器やその他物資を事実上貸与することが認められ、軍事援助の正式な譲渡とその支払い方法を規定する既存プロセスが不要となる。

ウクライナのドミトロ・クレバ外相はツイッターに「米国上院が『ウクライナ民主防衛レンドリース法』を可決したことに感謝する。ウクライナへの軍事装備の納入を促進するレンドリースプログラムに向けた重要な第一歩だ」と書き込んだ。「下院での迅速な可決および米国大統領による署名を期待している」。

ブリュッセルにあるNATO本部では、クレバ外相はこれと別に、ウクライナの国際的パートナー各国との今後の協議で3項目を議題としたと述べた。「武器、武器、武器 」だ。ウクライナ外相は、ウクライナは戦闘機、戦車などの装甲車両、防空システムの追加を続けて求めている、と付け加えた。

新たなレンドリースの可能性がなくても、米国やその他国は、対ロシア戦でウクライナに武器や資材を送り続けている。本日未明、統合参謀本部議長のマーク・ミリー米陸軍大将は、上院軍事委員会議員に対し、ウクライナ軍が2万5000台の対空兵器システムと6万台の対戦車兵器システムを受領したと述べた。多くは肩撃ちのシステムである。

ここにきて紛争の様相が変わってきたため、ウクライナ当局は、米国等に一層多くの援助を求めている。ロシア軍は現在、同国北部から部隊を撤退させ、東南部の目標に集中している。その結果、ウクライナ軍は国内の相当部分を解放でき、ロシア侵攻に抵抗しながら、複数前線で反撃を続けている。

これと別に、国連総会はこの紛争をめぐり、ロシアを人権理事会 Human Rights Councilから追放する決議をした。反対は24カ国、棄権は58カ国にとどまり、クレムリンの孤立ぶりを浮き彫りにした

(ロシア追放決議に反対した国)

 

米国はじめ92カ国の代表が本日未明、ロシアを国連人権理事会から除外する提案を動議にかけ、必要な3分の2の賛成を満たした。可決された決議は、「人権に対する重大かつ組織的な侵害を犯した理事国の人権理事会メンバーとしての権利を停止する」とある。

今日の投票に先立ち、ロシア当局は人権理事会からの追放に賛成する国との関係に悪影響が及ぶ可能性があると警告していた。

ウクライナ軍が北端のかなりの部分を奪還したため、ロシアの戦争犯罪の可能性を示す証拠が、ここ1週間ほどで、積み重なってきた。

民間人が処刑されたり、意図的に狙われたりしていることを示す強い証拠が含まれている。ロシア軍は、ウクライナ北部から撤退する際に、地雷やトリップワイヤーを含むその他のブービートラップをまいたと伝えられている。

ドイツ連邦情報局(BND)は、ロシア軍が民間人の処刑を議論する音声通信を傍受したと報じられている。また、ドイツ当局は、首都キーウ郊外のブチャでウクライナ人が虐殺された事件に、ロシア諜報機関と密接な関係にある民間軍事会社ワグナーWagnerの関与を疑っている。

戦争犯罪の疑惑のため、トルコにおけるウクライナとロシアの交渉は頓挫したと伝えられている。両国政府の関係者や仲介役のトルコは、紛争の外交的解決をめざす進展が遅々として進んでいないと述べている。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領のドミトリー・ペスコフDmitry Peskov私的報道官は、ウクライナ戦でロシア側に「大きな損失」があったと認め、「大きな悲劇だ」と付け加えた。ロシア政府は公式には軍人1,351人を失ったと認めただけで、数字はウクライナ、アメリカ、その他の外国政府当局の推定よりはるかに低い。

ロシア政府はウクライナと国境を接する西ベルゴロドBelgorod州の兵器庫が3月29日に爆発したのは、ウクライナの短距離弾道ミサイル「トーチカ-U」による攻撃だと発表している。また、ベルゴロド州は、3月31日夜から4月1日にかけて、ウクライナのMi-24ハインド攻撃ヘリコプターが石油貯蔵施設を越境攻撃したとロシア当局が発表した場所である。

ウクライナ東部ドンバス地域の一部からウクライナ市民を避難させる取り組みは、ロシアの空爆で鉄道路線が切断されており、停滞している。

ウクライナのミコライフ州知事ウィタリ・キムVitaliy Kimは、準軍事警察がロシア軍に向けてウクライナ製のRK-3コルサー対戦車誘導弾を使用する様子を映したビデオを公開した。ロシアの侵攻へのウクライナの抵抗勢力で注目され、直接標的にされている同知事は、「交通違反者」を裁いたと説明している。

側面に英語で「WOLVERINES」とスプレーで描かれた破損し放棄されたBMP-2歩兵戦闘車がウクライナで目撃されている。1984年公開の映画『レッド・ドーン』(邦題 若き勇者たち)を意識したと思われる。映画では、「ウルヴァリン」と名乗る10代の若者たちが、米国を侵略してきたソ連軍とゲリラ戦を行っている。

フィンランドのペッカ・ハーヴィスト Pekka Haavisto外相は、同国のNATO加盟の計画を、今後数週間以内に公の場で明確にすると述べている。フィンランド政府は、ウクライナ紛争を踏まえ、伝統的に中立的としてきた外交政策を積極的に見直している。■

Ukraine Situation Report: Senate Passes Bill To Create Weapons Lend-Lease Program For Ukraine

If the lend-lease bill becomes law, it would help accelerate deliveries of weapons and other military material to Ukraine.

BY JOSEPH TREVITHICK APRIL 7, 2022

主張 ロシアは大国ではない。大きな北朝鮮だ。

 

 

ーチン大統領はロシアの国力を破壊しており、ウクライナ戦争の誤算がロシアの衰退を早めている。プーチン本人は、これに気づいていないようだ。欧米の政府関係者は、プーチンが側近アドバイザーから嘘をつかれているとの疑いを強めている。また、プーチンは経済問題に関心が薄いようだ。対ロシア制裁を放置し、戦争が長引けば、ロシア経済がどこまで縮小するか把握していないようだ。

 今回の戦争がロシア崩壊の、ロシアが中堅国家に成り下がったことの原因だったと数年後に振り返ることになるかもしれない

 

プーチンはファシスト戦犯

プーチンが10年半で築いた体制は、権威主義、閉鎖性、超国家主義、抑圧性を一層強めた。プーチンは、混乱の1990年代からロシアの安定を取り戻そうと大統領職についた。ソ連崩壊後の「荒っぽい」資本主義を抑制するため、強硬策が必要だったのは間違いない。しかし、プーチンは権威主義に傾き、無期限に近く政権を維持するべく憲法を不正操作するに至った。

 プーチンはまた、西側への猜疑心を強めている。ロシア周辺での「カラー革命」に欧米の手が働いたと見ている。北朝鮮やイランの制裁逃れに手を貸した。中東、特にシリアで、軍が民間人に残虐行為を行い、荒っぽい役を演じた。今回のウクライナ都市部への砲撃も同様だ。

 国内では、偏執狂傾向が、ロシア社会の閉鎖、市民機関の抑圧、反対派の投獄、反対派メディアの排除などを引き起こしている。敵対する西側勢力にロシアが包囲されているとの好戦的なナショナリズムのイデオロギーが弾圧に伴っている。

 右派権威主義への傾斜はウクライナ戦争でピークに達したようだ。プーチンの過激な言動、帝国主義の公然たる受け入れ、戦争犯罪の容認によって、プーチンはファシストであるという意見が多く聞かれるようになった。

 

ロシア経済の腐敗、縮小

ロシアでの汚職の蔓延ぶりは有名な話だ。プーチンは当初、腐敗勢力を打破する姿勢に見えた。しかし、政権の利益のため逆に利用した。Transparency Internationalの汚職度スコアでロシアは常に上位にランクされている。

 汚職はロシアの経済成長を阻害するだけでなく、軍事力も低下させている。ハイテクを駆使した近代的な軍備は停滞経済では支えられない。社会の腐敗は必然的に軍部にも波及する。ウクライナにおけるロシア軍の兵站では、予備部品、燃料、軍需品の盗難や売買などが表面に出た。

 さらに制裁措置は懲罰の意味を有する。ロシアのGDPは現在世界第11位だが、エコノミストは今年だけでGDPの10〜15%の縮小を予測している。戦争が何年も続けば、ロシアは2年後にも世界経済のトップ20から脱落する。資本逃避と頭脳流出が加速し、中国への経済的依存も高まるだろう。

 

無謀な核の恫喝で孤立

プーチンは、ロシアの外交や世界経済からの孤立に対し、突飛な脅しや核兵器の言及で対抗している。プーチンは、ロシアは大国であるとの認識に固執している。しかし、ロシアに大国を名乗る経済力はなく、制裁で劇的に悪化しつつある。

 プーチンは、世界政治におけるロシアの重要性を主張する最後の手段として、核兵器のカードで対抗している。腐敗し、機能不全に陥った経済の重圧により、ロシア通常戦力が停滞するにつれ、核兵器の重視が高まっている。ロシアは、NATOや中国に匹敵する力が低下したため、核使用の閾値を下げた。

 ウクライナ戦争で、ロシアの通常戦力は外部が考えていたより弱いことを露呈してしまった。戦争が終結し、ロシアの経済基盤が大幅に縮小した後で、大国の威信をかけ、さらに戦略核兵器に傾倒する可能性がある。

 

北朝鮮としてのロシア

ウクライナ戦争後のロシアの状況によく似た国がある。偏執的で残忍な国家主義的指導者が従順な取り巻きに囲まれ、腐敗し機能不全の経済を持ち、世界多数国から嫌われ、恐れられ、孤立し、腐敗肥大した軍に支えられ、国際的威信のために核に傾き、突飛な脅威を与え、無謀にも核を振り回し、脱国したいと願う国民への弾圧に躊躇せず、極度なまでの国家主義思想、中国依存の国である。

 プーチンはロシアを大きな北朝鮮にしている。■

 

 

Russia is Turning into North Korea - 19FortyFive

By Robert Kelly

 

Dr. Robert E. Kelly (@Robert_E_Kelly; website) is a professor of international relations in the Department of Political Science at Pusan National University. Dr. Kelly is a 1945 Contributing Editor as well. 

 


2022年4月8日金曜日

この装備品はなぜ採用されなかったのか ヴォート1600は採用一歩前まで行ったF-16の海軍仕様だったが、採用されていれば....

 


F-16ファイティングファルコンは、40年以上にわたりアメリカ空軍で主力戦闘機として活躍しているが、空母搭載型がアメリカ海軍の主力戦闘機となるかと思われた時期があった。

 1974年初飛行し、4,600機が納入されているF-16はアメリカの航空支配の屋台骨であり続けている。F-16の幅広いマルチロール能力と圧倒的な性能は、映画「スター・ウォーズ」初公開された時点の機体にもかかわらず、今も世界トップクラスの戦闘機として知られている。


40年経っても健在だ (U.S. Air Force photo)


 F-16は米国、イスラエル、パキスタン、トルコ、エジプト、オランダ、ノルウェー、ベルギーなどで飛んでいる。しかし、この高性能な第4世代戦闘機が米国の超大型空母で供用される可能性があった。 1975年にF-16が空軍の新型戦闘機材(ACF)契約を獲得した直後、当時のジェームズ・シュレシンジャー国防長官は米海軍にも同機の採用を働きかけた。

 シュレシンジャー長官は、海軍もF-16を採用すれば、国防総省はF-16を大量調達でき、両軍の兵站が合理化できると考えた。

 この考え方は、最終的にF-35統合打撃戦闘機という悪夢の調達につながったが、F-16でも空軍、海軍、海兵隊、海外の異なるニーズを満たす単一の戦闘機プラットフォームとなる期待があった。もし、ヴォートのモデル1600(空母搭載型F-16)として就役していたら、F-16も失敗作になっていたかもしれない。


AIM-9サイドワインダーミサイルを搭載したYF-16(手前)とノースロップYF-17。(米海軍撮影:R.L.House)



F-16とF/A-18の前身が一度ならず対決していた

YF-16が空軍の主力戦闘機となる前に、まずノースロップYF-17という厳しい競争相手と戦わなければならなかった。YF-17は、制空戦闘機であるF-15イーグルに代わる低コスト戦闘機として開発された軽量試作戦闘機だった。F-15は大型で強力、かつ高価格であるため、多くの場面で必要以上の威力を発揮する。そこで、安価ながら高い能力を持つ戦闘機が、アメリカの戦闘機隊を補完することができると、軍上層部は考えていた。

 最終的にYF-16は、空軍のテストでノースロップYF-17を上回ったが、共に高性能な両機が契約をめぐり競合したのは最後ではなかった。海軍がF-16を空母用として検討するとノースロップYF-17と再び厳しい競争となった。

 F-16を製造したジェネラル・ダイナミクスもYF-17のノースロップ社、空母用戦闘機の製造経験はなかった。ジェネラル・ダイナミクスはヴォートと組み、新型のF-16ファイティング・ファルコンをヴォート・モデル1600とし、ノースロップはマクドネル・ダグラスと組み、YF-17を改良した。

 両戦闘機の新型は、当時の海軍の主要ニーズに重点を置いた。すなわち、迎撃任務用の長距離レーダーと、アメリカが重用してきた空対地戦闘作戦を支えるマルチロール能力だ。


vought 1600(Vought Aircraft)



F-16をヴォート1600にする

vought 1600サイドワインダーのパイロンを取り除き、空母収納のために主翼の折りたたみ機構を採用したヴォート1600の想像図。(米海軍)


vought 1600



F-16が戦闘機と同時に攻撃機として役割を見事に果たしている今日からすれば、奇妙に思えるが、F-16の当初コンセプトは、制空任務専用だった。「軽量戦闘機マフィア」と呼ばれるジェネラル・ダイナミクス設計陣は、新型戦闘機にありがちな「金メッキ」を新型機から遠ざけようとしたのである。「金メッキ」とは、火器管制レーダー、激しい戦闘空域を飛行するための電子対策、レーダー誘導ミサイル、地上攻撃能力など、今では第4、第5世代戦闘機の標準と考えられる要素だった。

 F-16Aが登場する頃には、AN/APG-66レーダーや地上攻撃能力など、「軽量戦闘機マフィア」が軽蔑する豪華装備も搭載されていた。しかし、レーダー誘導の空対空兵器はまだなく、熱探知型サイドワインダーミサイルが採用された。このように、F-16は海軍のニーズに対して、優れた候補とはいえ、まだ十分とは言えなかった。

 海軍のニーズに応えるべく、ヴォート1600はF-16Aより3フィートほど長く、翼幅は33フィート3インチと空軍の戦闘機よりも2フィートほど大きくなった。翼面積は269平方フィートになり、低速時安定性が向上した。胴体は少し平らで幅広になり、キャノピーはF-16と異なり、F-35同様に前方で開閉する設計になった。

 空母着艦用装備として、ヴォート1600の腹部には着陸フックなどの空母標準装備品と大型の着陸装置が必要となった。機体強度も向上し、目視外照準用のパルスドップラーレーダーも追加された。

 F-16をヴォート1600にするため必要な構造上の変更で、合計3,000ポンド以上の増加となった。その後、ヴォート1600は胴体や主翼にさらなる変更を加え完成した。V-1602は、主翼面積が399平方フィートとさらに大きくなり、エンジンも大型のGE F101となった。



2回目に福を引いたYF-17


海軍ニーズに合わせてF-16に変更を加えたものの、最終的にはノースロップとマクドネル・ダグラスのYF-17(後のF/A-18ホーネット、そしてその後継機であるブロックIIスーパーホーネット)に敗れることになった。

 YF-17は空軍には通用しなかったかもしれないが、海軍は航続距離と安全性から、この戦闘機のスケールアップ版に将来性を見出したのだ。


YF-17、F/A-18A、F/A-18Fのサイズ比較(WikiMedia Commons)


 ヴォート1600の低位置の空気取り入れ口は、空母飛行甲板で乗組員を吸い込まれかねない危険なものと考えられていた。この批判は以前にもあり、パイロットに人気の高いヴォートF-8クルーセーダーの大きく低いインテークは、乗組員を吸い込みかねないため「ゲイター」の異名をとっていた。

 重要なのは、F-16では軽量設計とレーダー専用兵器の不足で、空母打撃群に飛来する戦闘機や爆撃機を迎撃する全天候型作戦には不向きだったということだ。

 「私は、F-16が搭載する空対空ミサイルはAIM-9サイドワインダーだけであり、それは晴天時でのみ有効なミサイルであると指摘した」と元海軍作戦部長ジェームズ・L・ホロウェイ大将は、著書 "Aircraft Carriers at War: A Personal Retrospective of Korea, Vietnam, and the Soviet Confrontation "で、「雲の中では、AIM-7 スパロー IIIなどレーダーミサイルが必要だ」と説明している。

 「この能力は、レーダー誘導システムと大型パイロンとともに、F-18に組み込まれていたが、F-16は大規模な再設計と重量増加なしでは全天候型ミサイルシステムを搭載できない」。

 しかし、ホロウェイの書によると、ジェームズ・シュレシンジャー長官は、依然としてヴォート1600を海軍に押し付けようと固執していた。シュレシンジャーは論争に決着をつけるため、ホロウェイ提督を自分の執務室に招き、海軍の次期戦闘機について議論させた。シュレシンジャーはホロウェイに、執務室は狭いため部下を2人以上連れてきてはいけないと言ったにもかかわらず、ホロウェイが国防長官室に入ると、10人以上が提督を待っているのを見た。シュレシンジャーは数の力でヴォート1600を海軍に押し付けるつもりだった。

 しかしホロウェイは断固たる態度のまま、ヴォート1600は着艦時にエンジンを甲板にぶつけかねず、甲板と機体双方に損傷を与えるという技術者の懸念を強調した。国防長官室に参集した技術者陣が、この問題はパイロットの技量が向上すれば軽減されると主張すると、ホロウェイはいらだちをあらわにした。明らかに、戦闘機の設計上の欠点を補うためにパイロット技量を説く人は、夜間作戦で果てしなく続く荒波の中にかろうじて見える空母の上下する甲板に着陸したことがないのだろう。

 また、YF-17は双発エンジンのため、1つのエンジンに問題が発生した場合、空母に帰還できるか、不時着水するか選択が可能となる。



採用を逃したヴォート1600

最終的な決め手は、各機で想定した兵装だったかもしれない。F-16は大改造をしないと全天候型ミサイルシステムを搭載できないため、ヴォート1600は空母運用に対応できたとしても海軍の厳しいニーズに応えられなかっただろう。

 もちろん、F-16はその後、スパローミサイル、さらにAMRAAMを運用し、当時欠けていた能力を獲得した。もし、同じ機能がヴォート1600に搭載されていたら、ホーネットやスーパーホーネットが40年近くも使われることはなかったかもしれない。その代わりに、海軍はF-16とF-14トムキャットを空母から飛ばし、スーパーホーネットは軍事史に残る「もしもあの機体が採用されていたら」の戦闘機になっていただろう。


米海軍の空母に搭載される一歩前まで進んだ戦闘機は、ヴォート1600だけではない。F-117ナイトホークの大幅改良型が海軍に採用されそうになったことがある。数年後には、F-22ラプターが海軍の飛行甲板で運用されるところだった。■



Vought 1600: The plan to put the F-16 on America's carriers - Sandboxx

VOUGHT 1600: THE PLAN TO PUT THE F-16 ON AMERICA’S CARRIERS

Alex Hollings | April 7, 2022

Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.


2022年4月7日木曜日

ウクライナ戦争についてヨーロッパ、ロシアへの米国の知識の欠如で警鐘を鳴らすボルトン大使のエッセイを御覧ください。

 

John Bolton: Putin’s 30 Or 100 Year War For Ukraine

WRITTEN BYJohn Bolton

 

プーチンはウクライナを30年、100年戦争と見ている。

シアによる2度目のウクライナ侵攻から6週間、モスクワの圧倒的なまでの軍事的失敗へ西側諸国の関心の的だ。そのため、誤った認識が常識となりつつあり、今後の米国の政策が歪められ、現在より効果が下がる可能性がある。以下、あくまで例示であり、すべて網羅的する意図はない。

これはプーチンの戦争ではない、ロシアの戦争だ。西側諸国の指導者たちは、プーチン一人が侵略の責任を負うと考えることで、自ら欺いている。ロシア大統領として最終決定を下すのは当然だが、ウクライナ(ベラルーシなどかつてのソビエト共和国は言うに及ばず)は母なるロシアに返すべきだと熱く信じているのは、プーチン一人だけではない。

プーチンの顧問団の中核をなす「権力者」シロビキも同様で、「ウクライナは破綻した非合法国家だ」とを彼らから直接聞いたことがある。

クレムリン指導者たちは、失われた帝国を再び取り戻すことに30年にわたり執念を燃やしてきた。今日の戦争に関する報道は、しばしばクリミア併合やドンバス侵攻に関する2014年のニュース記事のように不気味で混乱したものに写るが、これは西側の歴史的無知と注意力の欠如を反映したものにすぎない。シロビキには血生臭い欠点が多数あるが、注意力は欠如していない。

米メディアやバイデン政権が、プーチンに対するロシア国民の支持が高まっているのを示す独立世論調査の結果に戸惑うのも無理はない。すべてのロシア人が、プーチンの非同盟主義を彼ほど深く感じているわけではない。しかし、十分多数の国民がプーチン支持を表明し、プーチン政権を脅かすものが何であれ、世論は政権を支えている。

プーチンはいかれているわけではない。情報が不十分で不正確で悩んでいるわけでもない。プーチンの顧問団のすべてが、真実を伝えるのを恐れて、ひれ伏し、自慢しているわけでもない。

バイデン政権による反対分析は、ロシアに対抗する情報戦の一部かもしれないが、クレムリンの実態を説明しきれていない。

独裁政権でも、ライバルの失敗を指摘し、彼らを悪者扱いするために十分な証拠を提供する補佐官は常に存在する。

アメリカ同様、ロシアにも複数の情報機関があり、官僚主義で影響力と注目度を競い合っている。それに、西側メディアの報道をモスクワに伝えるためにはロシア情報庁は不要だ。プーチン大統領に媚びる補佐官が、明らかな失敗の責任を負わされる人たちを庇っても、何の得にもならない。

ペンタゴンは、「プーチンは無知で少し頭がおかしい」とし、本人の情報不足がウクライナとロシア間の和平交渉の妨げにならないかと推測している。 モスクワにとって、交渉は単なるプロパガンダであり、好戦的な立場に合理性の美学を与えるものだ。 皮肉なことに、バイデン大統領はこのような話を一蹴した。「現時点では、確たる証拠がないため、あまり重視したくない」と述べたのである。

欧米はプーチンとその取り巻きがどれだけウクライナを重視しているか理解していかもしれないが、それはこちらの問題であって、向こうの問題ではない。これと同じ精神分析を2014年にも聞いたことがある。アンゲラ・メルケルらは、プーチンが 「現実から乖離している」と考えていると報じられた。現在米国にいる元プーチン側近のアドバイザー、アンドレイ・イラリオノフがメルケルを訂正した。 「西側諸国の人々は、プーチンが非合理的だとか、狂っていると考える。実は自分の論理で非常に合理的であり、準備も万端だ。現実離れしているのはプーチンではなく、欧米の方だ」。

この発言には真実がある。プーチンは何度も筆者に「あなたにはあなたの論理があり、我々には我々の論理がある」と語っていた。

問題の一端は、取り巻きではなく、プーチン自身にあるのかもしれない。彼は自分の先入観に反する厳しい事実を見過ごしたかもしれない。これは人間としてよくある失敗だ。しかし、アメリカが、プーチンは健全ではないと考えると、同じように重大な誤りとなる。さらに、ロシアの戦場での失敗は、軍部全体に蔓延する腐敗と無能に起因している可能性がある。 下級将校が部隊の戦力や即応性について虚偽報告を行い、給与や武器、配給、物資が闇市場に流れる「幽霊兵士」の存在が露呈している。20年間、ロシアは軍を改革し、近代化しようとしてきたが、ウクライナ紛争はその努力が成功とほど遠いものであったことを示している。

ロシアは戦略的ミスで大きな犠牲を払っているが、まだ敗戦したわけではない。ロシアは今回の侵攻を単独の目的で行っているのではない。クレムリンは、戦争の進展に応じて、選択肢を考えていたと思われる。キーウを占領し、ゼレンスキー政権を転覆させ、モスクワの支配下にあるクイスリング Quisling政権に置き換えることが、戦略上の最重要目標だったのだろう。 この戦略的失敗により、ロシアはウクライナで多くの機会を失い、その結果、モスクワは優先順位の高い目標を追求することになった。しかし、一度に多くをやろうとしたために、モスクワの到達目標は能力を大幅に上回り、広範囲にわたり失敗した。

広範囲にとしたが、致命的ではない。

将軍は常に前回の戦争を戦うという決まり文句がある。2014年、ロシアはほぼ発砲することなくクリミアを占領した。ウクライナ海軍の大部分がロシア側の手に渡った。ドンバス地方での戦闘はロシアにとって成功したとは言えないが、軍事的コストは高くなく、その後の欧米の制裁も効果的であった。モスクワの指導者たちは、2022年に同じようなシナリオを描いていたことは容易に想像できる。しかし、明らかに間違っていた。

さらに重要なのは、2月24日以降のロシアは戦力集中という基本的な軍事ドクトリンに違反したことだ。少数の重要目標を圧倒的兵力で狙うのではなく、モスクワは不十分な人員、火力、兵站で広範囲な攻撃を仕掛けた。ウクライナの英雄的抵抗は全く予想外であった。その結果、重要目標を達成できなかった。キーウ、ハルキフ、オデーサなどである。ロシア軍はウクライナ南部と東部で成功を収めたが、前進も圧倒的というにはほど遠い。

現在、ロシアは遅ればせながら、キーウ周辺やウクライナ北部都市から撤退し、おそらくベラルーシやロシアに戻り、再編成、強化、補給を行おうとしている。モスクワは北部で再挑戦するか、これらの軍を東部と南部に再展開することになる。グルジア、中東、その他の地域に展開する軍から援軍が到着している。メディアは、シリア兵がアサド政権に対するロシアのこれまでの好意に報いるため、ジュネーブ条約の講習を受けることなくウクライナに到着したと報じている。

クレムリンの現在の目標は、ウクライナ南部と東部の軍事的・政治的支配を最大化すること。ウクライナを完全征服する目標には、今のところ手が届かないが、それに代わる補助的な目標はたくさんある。 もしプーチンがこうした下位目標を達成できれば、ロシア国民に戦争は価値があったと説得し、欧米を「通常の」経済・政治関係へ復帰する誘導ができるだろう。

ほぼ間違いなく、第二段階の重要な目的は、ウクライナ国内で実質的にロシア寄りの地域を支配し、同国を二つに分割することである。クレムリンの目標は、ウクライナ南部、特に黒海の戦略的に重要な北部沿岸の支配と、ドニエプル川の東側からドニプロペトロフスク市、さらに北のロシア国境までのウクライナ東部である。大まかに言えば、(クリミアの他に)ウクライナの8つの州が関与している。ハリコフ、ルハンスク、ドネツク、ドニプロペトロフスク、ザポリジヤ、ケルソン、ミコライフ、オデーサの8州である。

これらの州は、ウクライナ語系、ウクライナ正教系、カトリック系が多い地域と比べ、ロシア語系、ロシア正教系が多い、あるいは実質的に多い。もちろん、これはクレムリンの見解であり、ウィルソン的な民族自決の実践に反する。ウクライナの人口分布はまだらであり、市民は宗教的忠誠心で両義的であったり葛藤があったりするため、こうした特徴づけは明確な線引きにならない。ロシアは領土すべてを征服できないかもしれないが、征服地が増えれば交渉力が強まる。

今のところ、ウクライナ東部におけるロシアの軍事的地位は比較的強固であり、「勝利」は十分に可能だ。しかし、黒海沿岸では、オデーサは今のところ手中にないようだ。しかし、モスクワが軍を再編し、陸海空を連携させ、欧米によるウクライナ軍への支援が不十分であれば、オデーサの奪取は可能であろう。 東部と南部の大部分が確保されたことで、ロシアは北部地域から撤退することで領土を「譲歩」できたが、もはや長期的には不可能だ。 プーチンは、西側諸国の関心と結束が弱まると期待している。そうなれば、ロシアを現在の国境付近とクリミアから追い出すことは不可能ではないにせよ、困難でコストのかかることになる。 占有物保有の原則Uti possidetisは依然として強力な外交的惰性の一形態である。

米国はリーダーシップを、NATOはパフォーマンスを強化する必要がある。NATOは完全に結束しているわけではない。

西側諸国は、ロシアに対する経済的な締め付けを強化し、ウクライナへの軍事支援を拡大・迅速化する上で、今より良い行動を取らなければならない。これまでのパフォーマンスはまちまちである。 同盟の結束に賛辞を送りながらも、西側諸国はほころびを見せている。英国・米国はハードウェアや情報の提供でリードしてきたが、フランスやドイツなどは遅れをとっており、ドイツの軍用ヘルメット5000個に始まり、30年以上前の旧東ドイツのシュトレーラ・ミサイルを提供したが機能しなかったなど失態が続いた。バイデン大統領は自ら率先した行動は示さず、議会や連合国の圧力を受けて遅ればせながら対応するか、まったく行動を起こさなかった。ポーランドのミグを譲渡する許可を出さない例もあった、

戦争が続く日々は、NATOの根本的で変えがたい恥を毎日示しているのを忘れてはならない。そもそも、信用がずたずたになりロシアを抑止できなかったこと(2008年のジョージア、2014年のウクライナ、2021年のアフガニスタン撤退)、選択的で不十分な制裁を通じて将来的に罰を与えるという著しく不十分な脅迫、まさに何もせずに米軍の可能性をも否定したバイデンの12月初旬の無理解があった。

このパターンは、早急に覆されなければならない。ロシアの失態を考えれば、ロシアがうまく一歩下がり、チャンスを待つreculer pour mieux sauteのに賭けるのは愚かだが、少なくともその可能性はある。 したがって、ウクライナ軍が(西側メディアによって不完全に伝えられた)緊張に耐えられなくなる前に、モスクワがその背中から離れるスローモーションの競争になっている可能性がある。 時間はモスクワの味方で、西側の補給努力が遅かったり不十分だと、破滅的な事態になりかねない。

欧米は制裁で統一できていない。欧州はロシアの石油とガスを買い続けており、中国、インドなどはロシア経済を支える金融のライフラインを提供中だ。制裁の実効性を高めるには、厳格な執行と、ロシアが作る抜け穴を塞ぐ強化が必要であろう。制裁体制は発表された日が最良の日であり、制裁実行国が少なくとも創造的でなければ、急速に低下する。歴史的に見ると、米国の制裁の実施と強化は明らかにまちまちであり、欧州は、礼儀正しく言えば、勤勉とは程遠い。現代史で最も効果的かつ包括的だった制裁は、1990年にクウェートに侵攻したイラクに課されたものだった。米国と同盟国が実施したが、それでもサダムの侵略軍を追い出すには不十分だった。

同盟にとって最大の試練は、モスクワが本格的な交渉に踏み切る瞬間に、外交的な結束を維持することであろう。シロビキは、西側諸国が金に弱いことを見抜いており、共産主義者の先達のようなイデオロギー的理由とは異なる。すでにフランスとドイツは、一方の勢力が決定的な勝利を収める前に軍事的な敵対関係を終わらせ、紛争を実質的に解決せず凍結する方法を模索している。確かにヨーロッパらしいアプローチであろう。しかし、もしロシアが今回の軍事的大失敗から少しでも勝利の香りを漂わせれば、ヨーロッパや世界、特に北京に大きな影響を与えるだろう。NATOの結束について語ると、ワシントンのエリート層の心は温まるかもしれないが、そのような話はすべて代償に見合うだけの価値がある。アメリカのリーダーシップとNATOのパフォーマンスは、これまで不十分だった。それを直視すべきだ。

明確な教訓として、アメリカ人は早合点してはいけない。これはヨーロッパの紛争である。三十年戦争や百年戦争を考えるべきだ。プーチンはそう考えている。■

John Bolton: Putin's 30 or 100 Year War For Ukraine - 19FortyFive

Ambassador John R. Bolton served as national security adviser under President Donald J. Trump. He is the author of “The Room Where It Happened: A White House Memoir.” You can follow him on Twitter: @AmbJohnBolto


ポーランドがM1エイブラムズ戦車250両を導入。今年から納入開始。ロシア侵攻のおそれに備え、米軍駐留の拡大、核兵器の受け入れまで容認する空気。

 

ーランドがM1A2 SEPv3 エイブラムズ戦車250両を購入した。ポーランドは隣国ウクライナがロシアによる侵攻を受けるのを見ながら、米国とエイブラムズ戦車導入で合意した。

発表された声明文では「ポーランド軍の戦力を強化し、侵攻を抑止する」としたポーランド国防相マリウス・ブラスザクMariusz Blaszczakの発言を引用している。

 

同国防相は同案件は47.5億ドル相当で、第一陣の28両が今年中に納入されると明らかにしている。ポーランド国防関係者は今回の調達で地上軍はT-14アルマータ主力戦車(MBT)含むロシアの最新戦車に対抗できるようになると強調。ポーランドの現有戦車で一番多いのはソ連時代のT-72だが、ドイツのレオパルド2A2、2A5型戦車も導入している。

 

ポーランドが導入するエイブラムズはM1A2 SEPv3で、全面的な改良を施し、新型通信装置、改良型赤外線FLIR装置による標的捕捉能力の向上、アクティブ・パッシブ双方の防御能力の追加に加え補助動力(APU)を備える。米陸軍向け納入が2017年に始まった。

 

ポーランド向けエイブラムズの調達案件は2月に国務省が承認しており、ロシアによるウクライナ侵攻(2月24日)の直前だった。ジョー・バイデン大統領が3月26日にワルシャワを訪問し、アンドレジ・ドゥーダAndrzej Duda大統領から調達の可能な限りの迅速化で要望を受けた。「契約によれば今年中にペイトリオットミサイルの第一陣が納入され、その後HIMARSロケット火砲装備、F-35の最新型が届けられる」とドゥーダ大統領は述べている。

 

ロシア侵攻を受けてNATOは東部方面の防衛体制を強化している。ポーランドの最大勢力政党の党首ヤロスロー・カジンスキJaroslaw Kaczynskiは米軍の駐留拡大を公然と求めている。「ポーランドとしては米軍の在欧駐留規模を現在の10万名を15万名まで増やしてもらえればロシアの侵攻の可能性が高まる中で心強い」とドイツ紙に述べており、「そのうち7.5万名は東部方面に展開し、ロシア国境沿いに配備してもらいたい。バルト諸国とポーランドに5万名を希望する」とした。カジンスキはポーランドが核兵器の展開も「受け入れる」としたが、現時点でその予定はない。■

 

Poland Buys 250 Abrams Tanks to Deter Russian Threats

by Mark Episkopos

April 6, 2022  Topic: M1 Abrams Tanks Poland  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: Russia-Ukraine WarPolandM1 AbramsM1 Abrams Tank. US ArmyCzech Military

https://nationalinterest.org/blog/buzz/poland-buys-250-abrams-tanks-deter-russian-threats-201688

 

Mark Episkopos is a national security reporter for the National Interest.

Image: Flickr/U.S. Army.