9/11では当時から空軍戦闘機が迎撃に向かったとの話は流布していました。今回は当時のパイロットからの回想が紹介されていますが、セレブの話題など中心のメディアでこんな記事が出るところがアメリカの懐の深さでしょうね。
軍事航空、ISR、 無人機、サイバー、宇宙、安全保障、最新技術....防衛産業、軍事航空、軍用機、防衛関連宇宙開発等の最新技術動向を海外メディアからご紹介します。民間航空のニュースは「ターミナル1」をご覧ください。航空事故関連はT4へどうぞ。無断転載を禁じます。YouTubeでご利用の際はあらかじめご連絡ください。
2016年9月12日月曜日
9/11から15年。アメリカ的思考はその教訓をこうまとめる
うーん、どうなんでしょう。いかにもアメリカ的というか。これが3.11の15周年エッセイならこんなトーンの回想録が日本人に書けるでしょうか。思考の方向性が全く違う気がします。日本メディアが日本人の思考でまとめた記事とも全く違っているでしょう。ご参考までに。
9/11 Anniversary: 10 Lessons Learned From the 15-Year ‘Long War’
September 8, 2016
9/11当日に筆者は軍務にいたが、この15年で生活も国の動きも大きく変わってたとはとても思えない。
渦中にいたものには時間は早く流れた感が強いがその他国民にとっては過去の歴史の一部だろう。現在ヘリテージ財団でインターンをする若者は4歳5歳だった。この長期戦で得られた教訓は何なのか。
1. どの国も脆弱、民主体制も同様。アメリカの自由と開放さが攻撃を招いた。9/11のテロリストはアメリカを世界に紹介する制度を利用して入国している。これまでは2つの大洋が直接攻撃を防いできた。すべてのグローバル化がその仮定を変えてしまった。アメリカも他の国同様に外部から攻撃されることを示した。
2. アメリカの回復力は高い。9/11攻撃が他国で起こっていれば衝撃の脅威で服従させられただろう。だがアメリカは違う。たしかに動揺し、混乱させられたが直後数時間のことで、国家指導層は対応が早かった。米経済は崩壊せず、政府機構は機能不全にならず、世界各地からの軍撤退を求める声は殆ど出ずか細いものだった。困難にめげず頑張る姿勢がアメリカにあり、大混乱のあとも仕組みが機能しつづけていた。
3. 国家勢力相手の戦いより対テロリズム戦は長期戦になる。アメリカでは外交政策は期限付きで考えることが多い。特に軍事作戦が絡むとこの傾向が強い。第二次大戦は数年間でお終わり、ヴィエトナムは長かったが最終では終結した。テロとの戦いではまだ終結の兆しが見えない。オバマ大統領も「永久に戦い続けるわけに行かない」と述べたほどだが、残念ながら大統領は「敵も得点する」きまりを忘れているようだ。急進イスラム教徒のテロ集団はまだ野望を捨てておらず、こちらも見逃すわけに行かない。戦いは今後も続く。
4. 保安体制と市民の自由の双方を最大限実現する必要がアメリカにある。9/11直後は保安体制強化に傾いたのは追加攻撃の恐れがあり当然と言える。その後、方向は逆に向かった。今日でも議論は続いている。これはリベラル派対保守派の重箱の隅をつつくような論争ではない。アメリカを世界唯一の存在にしている精神、心の問題だ。確かに米国のような民主制度は権利を守り、開放佐を維持しているゆえに脆弱さがある。米指導層の課題は市民の生命財産を守りつつ自由を犠牲にしないことだ。これは簡単ではないし、疑問もう無だろうが、指導層に求められたもっとも重要なバランス作業だ。その意味で今も続く議論は継続すべきだ、どちらの方向に向かうにせよ。
5. アメリカ国民一人ひとりが原則を確認すべきだ。政治家の多くが重要課題を風向きが変わったかのごとく話す。政府高官の座についても安全保障対市民の自由問題ではコロコロと方向を変える。それぞれ「反対する前は賛成だった。反対の前は賛成だった」と表現される現象を示し、国民は重要課題を政治家だけには任せられないと感じている。アメリカ国民全員が関与する必要があり、したがって基本原則に親しんでおく必要がある。これは「プロ集団だけにまかせておけばいい」課題ではなく、全アメリカ人の課題だ。
6. 敵をみつけなくても良い時がある、筆者自身のことで恐縮だが、陸軍特殊部隊の幹部として世界中を駆け回り、9月11日にはバージニア州北部で私服のまま戦闘に入った。それ以前もアルカイダが宣戦布告していたが、その日初めて現実に直面したのだ。誰だってこれは望むことではなかったが、アメリカは対応を迫られたのだ。
7. 世界「最悪」かつ最良の軍が非対称の敵との戦い今も手こずっている 米軍は世界各所で叩く準備を整えておく必要があり、敵となる相手は多様だ。アメリカの権益はグローバルに分布し、敵も同様だ。kのためアルカイダのような想定外の課題に迅速かつ最適な対応が必要であり、今はこれがイスラム国になっているわけだ。さらにアメリカは規則に則って戦う。だが相手となる非対称勢力はこれをしない。だからこちらが変わる必要があるというのではないが、イデオロギーで動く敵は撲滅が困難だ。
8. アメリカ指導層には指導力が必要だ。傍観は望ましい選択肢ではない。指導力を発揮するとはまとめればこんなところだろう。米国民にこの先起こることへ準備させることであり、実態をぼやかしたり、正面から説明することを避けてはならない。事実を語る。事実を隠したり、論点を見えなく仕様としても失敗する。さらに信頼を失う。厳しい決断をすべきだ。指導層は選挙の洗礼を経て指導する立場になるのであり、票で生きているのではない。アメリカにとって正しいこと最善なことで生きるのだ。最後に憲法が与えた仕組みを活用することだ。ねじまげたり、闘争手段にしてはならぬ。アメリカの制度は単純ではないが、世界の統治機構としては最善の存在だ。政争に明け暮れず仕事をしてもらいたい。
9. アメリカ若年層は今でも最高。いつの世も若い世代は年長から不信の目を向けられるものだ。たしかに2000年世代はひとりひとりの関与の仕方が弱い。だがすばらしい個人も存在する。米軍に志願する若者は偉大な世代に属する。政府に加わり、各地で自らを犠牲にしてまで働く若者の数はアメリカを前進させる頼もしい力だ。
10. 最後にアメリカは完璧ではないが、国民は世界とともにアメリカが特別の存在であると承知し、役目を果たすことを期待している。マイク・ヘイデン将軍がアメリカがこの七年半にわたり指導性を発揮しなかったのは古典的映画になった「素晴らしきかな人生」のようだと表現した。絶望した主人公は本人がもし生きていなかったら全然異なっていた世界を見るのだ。ヒント、これはまずいことだ。アメリカは最良ではないが、この国は建国の父祖が独立宣言や憲法に盛り込んだ原則から生まれる役割を演じてきた。アメリカは独特の存在であり、指導性を示せねばならない。
.ここまで長く辛い15年だった。アメリカ人が誰も望まなかった犠牲と苦闘の時だった。そこからの教訓に耳を傾ければ、アメリカの時代はまだ終わったわけではないのがわかる。
2016年9月10日土曜日
★★自衛隊が真の意味で統合運用を実現する前に中国が日本領土に侵攻したらどうなるのか
ともすれば戦闘機や潜水艦、また戦闘車両など自衛隊の実力を評価しすぎる傾向にやや違和感を覚えていましたが、日本戦略研究フォーラムのニューシャム研究員の以下投稿には考えさせられるものがあります。自衛隊も日本の組織文化の産物であることを思い知らされますが、理想の姿には相当乖離していることがうかがえます。長年放置しておいたツケがいま来ているのでしょうか。言葉だけうわ繕いしておけばよい、という問題ではなく真剣に考えなくてはいけませんね。
Japan's Military Has Some Serious Problems (As China's Military Gets Stronger)
September 7, 2016
陸上自衛隊(GSDF)は恒例の富士総合火力演習を8月末に富士山周辺で実施した。GSDFは弾薬装備を多量に使用し隊員はヘリコプター、戦車はじめハードウェアを駆使した「戦闘状況」を再現した。
感動的な実演に来場者数万名は感銘を受けたが、目前でくりひろげられた高額な「カブキ」の下に深刻な国防上の欠陥があるとは気づかなかっただろう。
今年の演習は「島しょ部分奪回」シナリオを展開したが、内陸演習地では再現困難な内容だった。GSDFはいつも見せ場を作り、隊員のプロ意識が高いところを示そうとする。自衛隊(JSDF)は日本防衛を専門に編成されてきた部隊であると思いを新たにする来場者も多いだろう。
だが演習はGSDFやJSDF全体としての欠点を逆にさらけ出している。日本政府は欠点を是正し、中国の軍事力、野望の前に無力をさらけ出すことは避けなければならない。
言い換えれば日本政府が問題点を是正しないと戦略的な軍事敗北を喫するのは必至だろう。欠点は次のとおりである。
揚陸作戦能力整備に本気でないGSDF
GSDFが揚陸作戦整備を揚陸緊急展開大隊(ARDB)として整備しようとしている。中国は行動言動両面で日本の南西諸島を脅かしており、日本としても対応を迫られている。しかし、その内容には真剣さと及び腰の部分がまざりあっている。
GSDF上層部には機動揚陸部隊を海上自衛隊、航空自衛隊と連携して中国の南西諸島侵攻から守る構想に反対する向きが一部にある。
GSDF上層部には北海道をロシア侵攻から守る機甲部隊作戦への郷愁がまだ残る。この軋轢の中でGSDF改革を主張した中心的トップ二名が昨年早期退役を迫られた。惜しい人事だ。
ARDB構想など提案中の新企画は適切な内容だが海自および空自が適切な支援を提供できるのか、そもそも南西諸島想定の作戦内容が正しいものなのか疑念は残ったままだ。
道は遠いJSDFの「統合運用」
富士総火演はGSDF主役だが「島しょ部奪回」のシナリオでGSDFが「奪回」する能力があるのだろうか。海上自衛隊(MSDF)や航空自衛隊(ASDF)と連携して作戦が実施できるのだろうかとの疑問は残る。
その答えは「上手くいくはずがない」というものだ。
理由としてGSDF、MSDF、ASDFが「統合部隊」の訓練をしていないことがある。共同作戦の実施に各組織が抵抗するのが普通だ。
「統合性の欠如」にJSDFの根本的弱さが潜む。これが問題とわかっていても誰も手を打とうとしないのは不思議だ。もっとわからないのは各組織の幹部は同じ防衛大出身なのに卒業するや各組織のしきたりや伝統にすっかり囚われの身となり協力しないようになることだ。
それでもGSDFはMSDFと意味のある進展をここ数年示しており、ドーンブリッツ演習(南カリフォーニアで実施)他の演習で共同運用が見られる。とは言うもののこれだけでは不十分で、「島しょ奪回」シナリオを参観したものは痛感しているはずだ。ASDFも富士総火演にはF-2戦闘機を飛行させ、対艦ミサイルを「発射」する擬似攻撃を見せたが、これをもって近接航空支援だとはいえず、また共同作戦や揚陸作戦に多大な関心を有しているとも言えない。
各隊間の意思疎通は未発達
JSDF内部の「統合性」の弱さの表れが内部電子通信体制のお粗末さで深刻な影響を生んでいる。富士総火演でもASDFとMSDFが姿を見せていたとしても相互通話は困難だったはずだ。これも何ら新しい問題ではなく、解決もさほど困難ではない。
防衛支出規模は充分でない
安倍晋三首相の防衛予算増額方針はまやかしの増額で中身が乏しい。日本の防衛予算はこれまで必要水準から不足した規模が長年に渡り続き、深刻な状況にあった。つまり訓練予算が不足していた。たしかに「広報」の名目でGSDFが弾薬を多量に消費することががあるが、「本当の」演習には逆に弾薬が不足する始末で、「継戦備蓄」が適切なのか疑問が残るほどだ。防衛予算が十分でないため「訓練不足、飛行時間不足、兵装運用能力の不足、非現実的な演習、致命的な人員不足」という死の悪循環が発生する。
予算不足はJSDFでは常で、各隊は一層協力する意欲がなくなる。キレイ事とは別に各隊は予算をめぐり疑心暗鬼になっている。
GSDFは人目を引くハードウェアを富士総火演で見せたが、日本の防衛装備調達戦略はうまくできておらず、「要求を基本とする」形で防衛に必要な装備を開発あるいは調達することとしている。雇用対策と似通っており政府各省庁がバラバラに動くのと同じだが、JSDFには意見を求めていない。
日本の防衛調達方式とは「あれこれ少数調達して高い買い物とし、隣国が面倒をかけないことを祈り、いざと馴れば米軍が面倒を見てくれる」ことだと評する向きがある。
JSDFの根本的課題はわかりやすいし、解決方法も見えるが、実行は手に負えないほど困難なようだ。とはいえ提言は以下のように可能だ。
JSDFを「統合」せよ
真の「統合」運用能力をJSDFで実現することだ。日本の陸海空の各部隊は極めて優秀だ。そこで各隊に協調協力運用を求めればその効果は飛躍的に向上するはずだ。
十分な実力を有する誰かがこれを実現にもっていかなければならない。制服組にこの方針を支持しないものあらわれ、協力を拒めば、解任すべきだ。
「統合」運用へ向かわせる具体的なミッションが必要で、揚陸作戦がぴったりだ。そもそも揚陸作戦は「統合」作戦そのものだからだ。
防衛予算は増額しても正しく支出するように
防衛予算をどこまで増額すべきだろうか。今後五年間で50億ドル程度ではないか。日本側では「深刻な財政事情」でこの規模は不可能というだろう。この言い訳はアメリカ側には有効だが、50億ドルという規模は4兆ドルの経済規模を有する日本にとって大金ではない。防衛予算の適正規模は不必要な公共事業を二三件削ればすぐ確保できる。
日本政府は政策的に必要なら予算をいつも確保しているようだ。防衛予算の5%増額の財源がないと言いつつこれで何回目になるのかわからない景気刺激策に1,000億ドルを、さらにアフリカ支援に300億ドルを拠出している。
では増額分を何に使うべきか。まずJSDFの俸給水準ならびに生活環境を改善すべきだ。第三世界並みと言ってい良い水準だからだ。GSDF(ならびにJSDF全体で)の職業意識の高さには驚嘆させられる。長年にわたり過小な予算や意味のない制約を受け、日本政府機関、政界、学術団体、報道機関から軽視されてきたにもかかわらず。
次に訓練予算を適正化すべきだ。予算不足のため日本は国際演習他への招待を拒むのが普通になっている。
追加予算はハードウェア調達に使うべきではない。防衛産業はどの国でもスポンジ構造でどん丼予算を吸収してしまう。50億ドル上乗せすればハードウェアもあっという間に50億ドル値上がりする。日本の防衛調達に改革が必要なのも確かだが、予算を単に増やしても何の解決にもならない。
日本の防衛の「目を覚ます」
ここまでの視点に何ら新しいものはない。では日本が「眠りから覚めて」防衛体制を改善するまでにどのくらいかかるだろうか。中国の強硬な態度、野心、大幅に戦力を増強したPLA兵力が起爆剤となる。
アメリカはもっと大きな影響を与えることが可能で、必要なら日本を変えさせることができる。これまでは日本の努力が必要な水準以下でも不満を見せず、日本がアメリカに頼りきるようになったのは理解に難くない。世界最強の軍事力を得るのは年間500億ドルの価値があり、しかも実際には極少額でこれを手に入れている。
米政府、米軍の間に日本の防衛力への批判を差し控える不文律があるようだ。これも理解に苦しむとともに我慢できなくなる動きだ。「同盟関係」をほめたたえ、米国の「パートナー」をもちあげるのではなく、JSDF上層部の意見に耳を傾けておくべきだった。あるJSDF高官はこう語っている。「どこまま違っているのか教えてもらいたい。友達なら悪いこともいえるはず」
50年その状態が続いた結果、日米間では米海軍、MSDFは例外とし、本来あるべき共同作戦の実施能力と程遠いままだ。
富士総火演は野外の景色の中で演出たっぷりのショーを楽しむ機会だ。JSDFは自身で改革するつもりがあり、実施を許されれば比較的短期間で問題を解決できよう。ただし日本政府が必要資金を潤沢に提供する必要がある。
いつの日にか「自衛隊総合火力演習」が実際の島を使い、「島しょ奪回」を実演する日が来るかもしれない。三軍が正しく戦力を投入すれば、JSDFの真剣度がわかり、はじめて「任務遂行可能」と判定されよう。
だが時間がなくなりつつある。おそらく島しょ奪回演習が現実のものになるのはまもなくだろう。その時点でJSDFに手を入れてももう遅いのである。
Grant Newsham is a senior research fellow at the Japan Forum for Strategic Studies in Tokyo with 20 years of experience in Japan as a US diplomat, business executive, and as a US Marine Officer.
黒海上空でまたもや危険なロシアの嫌がらせ飛行、今回はP-8Aへ10フィートまで接近
ロシアの無分別な行為は中国とも重なり、日本も黒海やバルト海での事件を傍観しているだけではすまなくなりそうですが、今回は事故にならなかったのが奇跡といえそうです。このままいけば、しかしながら、深刻な事故が発生するのは時間の問題かもしれません。
Russian Fighter Came Within 10 Ft. of Navy Surveillance Plane Over Black Sea
By: Sam LaGrone
September 7, 2016 1:43 PM • Updated: September 7, 2016 6:37 PM
https://news.usni.org/2016/09/07/russian-fighter-came-within-10-ft-navy-surveillance-plane-black-sea
P-8A Poseidon. US Navy Photo
9月7日黒海上空で、ロシア戦闘機が米海軍偵察機に10フィートまで接近してきたと国防関係者がUSNI Newsへ伝えた。
- 事件は同日午前11時20分(現地時間)黒海上空の国際空域で米海軍P-8AポセイドンとスホイSu-27フランカー間で発生したとの声明文をUSNI Newsは入手した。
- 「迎撃行為はおよそ19分間続き、Su-27は当初はP-8Aに30フィートの距離をとっていたがその後10フィート未満まで接近し、極めて危険かつ無分別な行為だ」と声明文にある。
- 「このような危険行為に深く憂慮せざるを得ない。また不必要な緊張を両国間に招き、偶発あるいは誤解から深刻な人命損傷につながりかねない」
Russian Sukhoi Su-27 Flanker Fighter
- P-8A部隊は先月から同地区で運用中と海軍関係者がUSNI Newに伝えている。ロシア海軍が黒海で潜水艦部隊を増強する中での配備だ。ロシアは改良型キロ級潜水艦4隻を黒海に配備している。
- 2014年からロシアとNATO間のバルト海、黒海での艦船航空機の異常遭遇事件が多発している。
- 2014年にはUSSドナルド・クック(DDG-75)が黒海に入るとスホイSu-24フェンサー一機が同艦上空を繰り返し通過飛行した。
- 同年後半にはやはり黒海でカナダ海軍フリゲート艦HMSCトロントがSu-23フェンサー編隊に嫌がらせを受けた。
- 今年1月には米空軍RC-135Uコンバットセント電子偵察機が黒海上空でフランカーの迎撃を受け、ロシア側は2014年以来米偵察飛行が増加していと不満を表明した。「RC-135偵察機はほぼ毎日飛来している」とヴイクトール・ボンダレンコ上級大将(ロシア空軍最高司令官)は2014年に発言していた。「2014年はRC-135は延べ140機が飛来したが、2013年はわずか22機だった」■
2016年9月7日水曜日
歴史に残る機体11 MiG-25フォックスバットは巨大な張子の虎、函館空港着陸から40年
The pilot who stole a secret Soviet fighter jet
.
- By Stephen Dowling 5 September 2016
1976年9月6日、函館近くの雲の中から一機の航空機が出現した。同機は双発ジェット機だが函館空港でお馴染みの短距離旅客機とは全く違っていた。大型で灰色の機体には赤い星、ソ連のマークがついており、西側陣営で実機を見たものは誰もいなかった。
同機は函館空港に着陸したが滑走路が足りなかった。舗装路を外れ土を数百フィート掘り返しながらやっと停止した。
パイロットは操縦席から出るとピストルで威嚇射撃を二発撃った。空港隣接道路から写真を撮影したものがあったのだ。空港関係者が慌ててターミナルビルから駆けつけるまで数分かかったがパイロットは29歳の飛行中尉ヴィクトール・イヴァノヴィッチ・ベレンコでソ連防空軍所属だと名乗り亡命を申請した。
通常の亡命ではなかった。ベレンコは大使館に駆け込んだのでもなく、海外旅行中に脱走したのでもなかった。機体は400マイルほど飛行しており、今や日本の地方空港の滑走路端に鎮座している。機種はミコヤン-グレヴィッチMiG-25だ。ソ連が極秘扱いしてきた機体だ。ベレンコが来るまでは、だったが。
西側はMiG-25の存在を1970年頃に把握していた。スパイ衛星がソ連飛行基地で新型機が極秘テストされているのを探知。外観から高性能戦闘機のようで西側軍部は特に大きな主力に注目した。
大面積の主翼は戦闘機に極めて有益だ。揚力がつき、主翼にかかる機体重量を分散する効果があり、旋回が楽になる。ソ連ジェット戦闘機はこれに大型エンジン二基を組み合わせたようだった。どれだけ早いのか。米空軍機で対抗できるのだろうか。
同機はまず中東で目撃された。1971年3月のことでイスラエルが観測した奇妙な新型機はマッハ3.2まで加速し高度63千フィートまで上昇していた。イスラエルも米側情報機関もこんな機体は見たことがない。二番目の遭遇例ではイスラエル戦闘機が緊急発進したが追いつけなかった。
11月にイスラエルは謎の機体を待ち伏せし、ミサイルを30千フィート下から発射した。無駄に終わった。正体不明の機体は音速の三倍近くの速度でミサイルからゆうゆうと逃げていった。
ペンタゴンはこの事例から冷戦始まって以来の危機と認識し、問題のジェット機は衛星画像の機体と同一だと判明した。ソ連空軍に米空軍の手に余る機体が出現したのだ。
軍事力の解釈を誤った古典例だとスティーブン・トリンブル(米国版Flightglobal編集長)は語る。「外観で性能を過大評価したようだ」とし、「主翼の大きさと巨大な空気取り入れ口が原因だ。超高速も理解し、操縦性も高いと考えていた。前者は正解だったが後者はハズレだったのです」
米衛星とイスラエルレーダーは同一の機体MiG-25を捉えていた。同機は米側の整備しようとしていた1960年代の機体群、F-108戦闘機から、SR-71スパイ機さらに巨大なB-70に備えようとするソ連の回答だった。各機がマッハ3飛行という共通項を持っていた。
1950年代のソ連は航空技術で飛躍的進歩を示していた。爆撃機ではB-52に匹敵する機体を運用し、戦闘機はほとんどがMiG設計局の作で米側各機に迫る性能を示しながら、レーダーや電子製品はかなり劣っていた。だがマッハ2からマッハ3への進展は難易度が高い課題だ。だがソ連技術陣はこの挑戦を避けることが許されず、かつ迅速に実現する必要があった。
その課題に果敢に挑んだのがロスティスラフ・ベリヤコフ設計主任だった。高速新型戦闘機を飛ばすには莫大な推進力を生むエンジンが必要だ。ソ連のエンジン開発の中心人物トゥマンスキーが回答となるエンジンR-15ターボジェットを完成させていた。新型MiG機にはエンジン二基が必要で各11トンの推力を想定した。
MiG-25は第二次大戦時のランカスター爆撃機の全長とほぼ同じ (Credit: US Navy)
これだけ高速となると空気との摩擦熱量が莫大となる。ロッキードはSR-71ブラックバードをチタン製としたため高価かつ製造が困難になった。MiGは鋼鉄を素材とした。しかも多量に。MiG-25は手作業で溶接して機体を製造していた。
ロシアの軍事博物館各所には退役機が陳列してあり、当時の任務が理解できる。MiG-25は巨大な機体だ。全長64フィート(19.5メートル)で第二次大戦時のランカスター爆撃機よりわずか数フィート短いに過ぎない。これだけ大きいのはエンジン二基を搭載し、莫大な燃料を運ぶ必要があった。「MiG-25は燃料3万ポンド(約14トン)を搭載していました」(トリンブル)
重い鋼鉄製の機体としたことが主翼が大きくなった理由だ。米戦闘機とのドッグファイトには役立たないが、ともかく飛行できる。
MiG-25の設計思想は離陸後、マッハ2.5まで加速し地上レーダーがとらえた目標に接近するというものだった。50マイルまで近づくと機内レーダーが引き継ぎ、ミサイルを発射する。このミサイルも機体の大きさに応じて20フィード(6メートル)ほどの大きさだ。
米ブラックバードに対抗すべく作られたMiG-25には偵察機型もあり、非武装でカメラやセンサー多数を搭載した。ミサイルの重量分と目標捕捉レーダーがないため、機体は軽量となり、マッハ3.2まで加速可能だった。この機体をイスラエルは1971年に目撃していた。
だが1970年代初頭の米防衛トップはMiG-25の性能を知らずにコードネームの「フォックスバット」はつけていた。宇宙空間から撮影の不鮮明な写真やレーダー探知の輝点でしか姿を見られずMiG-25は謎の脅威のままだった。だがすべては現状に不満を覚えるソ連戦闘機乗りがコックピットのハッチを開けるまでのことだった。
ヴィクトール・ベレンコは模範的ソ連市民で第二次大戦終結直後にコーカサス山脈の麓で生まれた。軍務に就き戦闘機パイロットとなった。通常のソ連市民には不可能な役得を伴う仕事だ。
ベレンコの軍人証明書はワシントンDCのCIA博物館に展示中 (Credit: CIA Museum)
だがベレンコには不満があった。一児の父となった彼は離婚の危機にあった。ソ連社会の成り立ちそのものに疑問を抱き始める。またアメリカが本当にソ連政府が言うような悪魔的存在なのだろうか。「ソ連プロパガンダでは皆さんの社会を腐敗社会で没落中としていたのですよ」とベレンコはFull Context誌に1996年語っている。「だが疑問が心のなかに残っていました」
ベレンコは訓練中の新型戦闘機が脱出の鍵だと理解していた。配属先はチュグエフカ空軍基地でウラジオストック近郊だった。日本へはわずか400マイルである。新型MiGなら高高度を高速飛行できるが巨大な双発エンジンは飛行距離が短い。とても米空軍基地までは到達できない。9月6日にベレンコは同僚パイロットと訓練飛行に出かける。両機は武装をつけていない。ベレンコはおおまかな飛行経路を検討ずみ、燃料を満載していた。
洋上に出ると編隊を離れ、単独で日本に向けて航路をとった。
ソ連、日本の軍事レーダー探知を逃れるため、ベレンコは超低空飛行をする。海上およし100フィートだ。日本領空に侵入してから高度を一気に20千フィートに引き上げ、日本のレーダー荷姿を見させた。驚いた日本は国籍不明機へ呼びかけるものの、ベレンコは別の周波数へあわせていた。日本機がスクランブルするが、それまでにベレンコは厚い雲の中を飛行していた。日本のレーダーも捕捉を失う。
この時点でベレンコは勘で飛行しており、離陸前に叩き込んだ地図の記憶だけが頼りだった。千歳基地へ向かうつもりだったが、燃料が底をつきつつあり一番近くの空港に着陸するしかなかった。函館である。
日本はMiG-25が着陸して初めて迎撃対象機の正体を知ることになった。日本はいきなり亡命パイロットを迎えることになった。またジェット戦闘機が残った。西側情報機関が正体をつかめなかった機体だ。函館空港は突如として情報機関の活躍場所となり、CIAは幸運を信じられなかった。
「MiG-25機を分解し、部品を一つ一つ何週間もかけて検分しました。性能の実態を理解することができました」(トリンブル)
ソ連はペンタゴンが恐れたような「スーパー戦闘機」を作っていなかった、とスミソニアン協会航空学術員ロジャー・コナーは述べる。特別な任務の用途で製造されたつぶしの利かない機体だった。
「MiG-25は戦闘用機材として有益な存在でなかったのです。高価で取り扱いが大変な機体で、戦闘では大きな効果は挙げなかったでしょう」(コナー)
問題が他にもあった。マッハ3飛行はエンジン負担が並ではなかった。ロッキードSR-71ではこの問題をエンジン前方にコーンを設けることで解決し、エンジン部品の損壊を防いだ。取り入れた空気をエンジン後部から押し出して推力を増やす狙いもあった。
MiG-25のターボジェットエンジンは2,000マイル時(3,200キロ)を超えると不調となった。それだけの空流は燃料ポンプを圧倒し、一層多くの燃料がエンジンに供給される。同時にコンプレッサーが生む力は膨大でエンジン部品を飲み込むほどだ。MiGの機体そのものが損壊する。MiG-25パイロットはマッハ2.8を超えないよう注意されていた。イスラエルが1971年に追跡した機体はマッハ3.2を出して両エンジンを損壊している。
MiG-25の存在が明らかになり米国は新型機開発を始めた。その成果がF-15イーグルで高速飛行を狙いつつ同時に高度の操縦性を狙ったのはMiG-25の推定性能内容を実現したものだ。40年経ったが、F-15は今でも第一線で活躍中だ。
今になってみれば、MiG-25を西側があれだけ恐れたのは「張子の虎」だったのがわかる。搭載する大型レーダーは米国より数年間遅れた技術のあらわれで、半導体の代わりに旧式真空管が使われていた。(ただし真空管は核爆発で生まれる電磁パルスへは強い) 巨大なエンジン二基には多量の燃料が必要なため、MiG-25は短距離しか飛行できない。離陸は確かに早く、直線飛行を高速にこなしてミサイルを発射するか写真撮影するだけだ。ただそれだけなのである。
ソ連が長年世界から隠してきたMiG-25は部分的に再組み立てされ、船舶でソ連に返却された。日本はソ連に輸送費用並びに函館空港の損傷の弁償費用として4万ドルを請求した。
すぐにそれまで恐れられていたMiG-25にはSR-71を迎撃する能力がないことが判明した。
「MiGとSR-71の大きなちがいのひとつにSR-71が単に早いだけでなくマラソン選手のような存在だという点があります。MiGは短距離選手ですね。ボルトのような存在ですが、マラソン選手より遅いボルトです」(コナー)
成約があったがMiG-25は1,200機も生産された。「フォックスバット」はソ連陣営の空軍部隊の最上級機材とされ、世界で二番目に高速な機体を配備するプレミアム感覚とプロパガンダ効果を期待された。アルジェリア、シリアは現在も運用中とされ、インドは偵察機として25年間に渡りうまく活用してきたが2006年に部品不足のため退役している。
MiG-25のもたらす恐怖感が最大の効果だったとトリンブルも言う。「1976年まで米側は同機にはSR-71迎撃能力があると信じており、SR-71はソ連領空侵入を許されていませんでした。ソ連は自国上空の情報収集機飛行に神経質でしたしね」
MiG-31は MiG-25 の改良型といってよい機体だ (Credit: US Department of Defense)
ベレンコは結局ソ連に帰国せず、米国居住を認められ、ジミー・カーター大統領本人から市民権が与えられた。その後、航空工学技術者として米空軍向けコンサルタントとなった。
本人の軍人時代の身分証明書および日本海上空を飛行中に膝の上で殴り書きした紙幣がワシントンDCのCIA博物館に展示されている。
米F-15が出現したこともあり、ソ連技術陣にMiG-25の欠点を克服した新型機設計を急がせた。トリンブルによればここからMiGのライバルのスホイがSu-27シリーズを産んだという。同機は各種機体へ進化した。こちらのほうこそペンタゴンが1970年台早々に心配していた機体であり、最新型は世界最良の戦闘機だという。
MiG-25の物語はここで完結しなかった。大きく改良されMiG-31が生まれた。性能を引き上げたセンサーを搭載した戦闘きで強力なレーダーと改良型エンジンを搭載した。「MiG-31は基本的にはMiG-25で目指した姿を実現した機体です」(トリンブル) MiG-31は冷戦終結直前で実戦化され、数百機が今もロシアの広大な国境線を守っている。西側筋がMiG-31を観察する機会として航空ショーがあるが、内部構造は堅く秘密が守られている。
MiG-31パイロットで国外亡命しようというものは出ていない。■
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