2018年9月11日火曜日

J-20用国産エンジン量産に目処がつき、いよいよ機体本格生産か

China is about to finish the J-20's fifth-generation engine, and will soon begin mass producing the aircraft 中国はJ-20に第5世代戦闘機にふさわしいエンジンを完成させ、機体の本格生産に移りそうだ

Minnie Chan,

J-20 china stealth fighterJ-20 Wikimedia Commons via V587wiki
  • 中国のJ-20ステルス戦闘機用の新型エンジンが今年末までに本生産開始か
  • WS-15エンジン開発が遅れていたのはブレイド部分の過熱等の問題が原因だった
  • ただし問題は大部分解決済みで、本生産準備が整った



J-20ステルス戦闘機を名実ともに世界クラスに押し上げる新型エンジンの本生産が今年末までに準備完了となる。
WS-15エンジンは最新の単結晶タービンブレイドを使い、これまで開発中と伝えられてきたが、中国技術陣は本格生産への以降に苦慮していた。
ただし問題の本質は最高速度域でのブレイド過熱問題ですでに解決済みで高い歩留まりでの生産が視野に入ったとサウス・チャイナ・モーニング・ポストが伝えている。
中国がかねてからステルス戦闘機の実戦配備を急いでいるのは米国がF-22、F-35の配備をアジア太平洋で進めていることも意識してのことで米国との緊張も高まっていることが背景にある。
WS-15エンジンのJ-20への搭載の準備が年末までに完了する、と消息筋は述べている。
ただし「小さな問題」が残ったままだが、エンジンが「機体に搭載され稼働すれば」解決可能と同筋は述べる。
北京在住の軍事問題専門家Zhou Chenmingによれば中国は200機ないし300機のF-35をアジア太平洋で2025年までに展開すると見ており、「中国にもそれにに匹敵する規模のJ-20が必要だ、200機は最低必要だろう」と述べる。
別の軍事筋によればWS-15エンジンの技術問題はJ-20の本格生産開始前に解決が必要だと言う。
「現在J-20は20機配備中だがとても十分とは言えない」と同筋は述べ、「国産エンジンがJ-20の大量生産前に必要だ。これだけの高水準技術を供してくれる国はないので」
上記筋はそれぞれ国営中国中央テレビCCTVが4月に伝えた製造元の成都航空宇宙が同機生産で四番目のラインを2019年にも開設するとの報道の裏付けともなる。
CCTVは先月も中国空軍がJ-20パイロット養成課程を強化したと伝えていた。
人民解放軍からはJ-20が今年2月に戦闘配置されたと発表があり、その他第四世代機のJ-10、J-10やH-6K戦略爆撃機と共に運用中としていた。5月には台湾封じ込めの演習に同機も投入されていた。
ポスト紙では2月にJ-20には「つなぎ」エンジンが搭載されているとの記事があった。
軍事筋の一つからは今年末に開催される珠海の国際航空宇宙展示会で同機が一般公開されるのではとの指摘がある。展示会は隔年開催で今年は11月5日から11日開かれる。

2018年9月10日月曜日

米軍はシリア攻撃の準備に入った

化学兵器の運用、備蓄についてはロシアが頑なに否定しますが、実は北朝鮮が関与していたのではないでしょうか。ロシアは北朝鮮を使えば自国への非難を回避できますね。だとすれば地理的に離れているものの、シリア問題は北朝鮮問題と関連していることになりますが実態はいかがなのでしょうか。


Pentagon, White House consider military strike options on Syria ペンタゴンとホワイトハウスがシリア軍事攻撃オプションを検討中

By: Tara Copp 

北部イラク上空でシリア空爆を終えたF-15EストライクイーグルがKC-135ストラトタンカーから空中給油を受けている。 Sept. 23, 2014(Senior Airman Matthew Bruch/Air Force)


リア政府軍が化学兵器をイドリブで投入した場合に備えペンタゴンが軍事行動オプションをドナルド・トランプ大統領に提示する準備に入っている。ジョセフ・ダンフォード大将が統合参謀本部議長として9月8日に語っている。
「大統領から化学兵器が使用された場合の軍事対応策を求められている」とダンフォード大将は移動に同行した記者団に語った。「各選択肢の準備状況を報告済みだ」
米国が計画する反撃の対象地は戦闘で疲弊したシリアで米国とイランまたはロシアが支援する各勢力の権益がここに来て対立を明白にしており、そうした地域の一つを対象にする。
米海兵隊が南部の訓練基地アンタンフAn Tanf へ派遣されており、シリア政府寄りの勢力やロシアやイランの支援勢力への抑止効果を期待する。
実弾演習に海兵隊を派遣することでメッセージを送ったとダンフォード大将は述べる。
「増援効果として十分な戦力を持つ部隊が現地で演習をしながらアンタンフで必要なら支援効果を与える」
アンタンフでは空域侵入が日常のように発生しているが、ロシアとの軍事衝突回避ホットラインで未然に事態を回避してきた
The guided-missile cruiser USS Monterey (CG 61) fires a Tomahawk land attack missile April 14, 2018, as part of the military response to Syria's use of chemical weapons on April 7. (Mass Communication Specialist Seaman Trey Fowler/U.S. Navy via AP)
USSモントレー(CG 61)がトマホークミサイルを発射した。2018年4月14日。シリアが化学兵器を4月7日に使用したことへの対応策として。(Mass Communication Specialist Seaman Trey Fowler/U.S. Navy via AP)

昨年はイランの無人機数機、シリア戦闘機一機がアンタンフ付近の空域に侵入し米国がすべて撃墜している。
外交面では米国はシリア国内のミッションを拡大する構えで国務省はISIS打倒後も米軍部隊はシリア国内に残ると発表しており、シリアへのロシア、イランの影響力拡大防止のため米軍が残留するとの解釈を呼んでいる。
ダンフォード大将は米軍部隊の任務はISIS撃破にとどまらず現地の将来の政体の姿を模索するジュネーブ交渉を通じ国務省を助けることとする。
「何ら変更していない」とダンフォード大将は述べる。「ISIS撃滅を常に考えており、今後も再興させない方法を模索している」
これまで二度もアサド指揮下の部隊が反乱勢力が占拠する地点で塩素を民間人に使ってきたが、米国は都度アサド政権を攻撃してきた。
2017年には米駆逐艦二隻が巡航ミサイル数十発をシリア国内の航空基地に向け発射した。2018年4月にはシリア政府軍が反乱勢力支配下の村落を塩素攻撃したため米英仏艦船航空機がミサイル・爆弾攻撃をシリア政府の三拠点へ行った。この際も各施設が化学兵器製造に関連していることをつきとめている。

シリアはイドリブ県を大軍で包囲し推定20千ないし30千名のアルカイダまたはISIS関連部隊を追い詰めている。ダンフォード大将は上記は米国の推定値としながらも通常兵器ではそれだけの勢力の排除は困難でむしろ人道的に憂慮すべき事態を惹起するだけと指摘。

KC-46がFAA型式証明を取得

KC-46 achieves US FAA certification KC-46がFAA型式証明を取得

Pat Host, Washington, DC - IHS Jane's Defence Weekly
07 September 2018
  
Boeing on 4 September achieved a key milestone in the KC-46 programme when the US FAA granted the platform a supplemental type certificate. Source: Boeing

ーイングKC-46空中給油機が米連邦航空局FAAの型式証明を取得し10月の初納入へむけ大きな一歩となった。
KC-46ペガサス空中給油機にFAAが追加型式証明supplemental type certificate (STC)を交付したと同社から9月4日発表があった。
STCでKC-46の給油機能とミッション用エイビオニクスシステムがFAAの要求水準を満たすことが証明される。今回の交付でFAA型式証明取得作業は完了した。ボーイング広報からは10月の米空軍向け一号機引き渡しに向け準備中との発表が9月6日に出た。
STC取得にむけボーイングは各種実験、地上試験、飛行試験を2015年から展開していた。飛行試験ではKC-46のブーム、ドローグ双方による給油方法がFAAの求める型式証明基準に適合することを確認した。
STCはFAA耐空証明二種類のひとつで、ボーイングは原型の767-2C機材で改正型式証明 amended type certificate (ATC)を昨年12月に受けていた。両方の型式証明で同機機能の殆どが対象となるが、軍用機能は例外で別途FAA証明を取得する必要がある。
USAFから別途軍用機型式証明military type certificate (MTC)を得る必要があり、ボーイングは今後数ヶ月での取得を予定している。同社はMTC用の飛行テストを完了しており、空中給油、防御他軍用装備のテストを7月に行った。
ボーイングによればMTCは審査中で空軍承認に向かっているという。USAF広報官ホープ・クローニン大尉からはMTC手続き完了の具体的日程は決まっていないとの発言が9月6日にあった。

STC、MTC双方のテストには6機を投入し、延べ3,500フライト時間、1,361トンの燃料の空中給油をロッキード・マーティンF-16ファイティング・ファルコン、ボーイングF/A-18ホーネット、ボーイングAV-8BハリヤーII、ボーイングC-17グローブマスターIII、ノースロップ・グラマンA-10サンダーボルトII、ボーイングKC-10エクステンダー、ボーイングKC-135ストラトタンカーの各機に行ったほか、KC-46間でも実施した。■

FAAの型式証明が必要というのは原型が民間機のためなのでしょうか、中身がよくわかっていないため理解し難い話ではあります。なんとか今年中の納入実績をボーイングは実現できそうですね。

2018年9月5日水曜日

極超音速兵器開発で新たな役割を果たすB-52


ここに来てB-52の話題が増えていますね。極超音速ミサイル兵器は相当大きな外寸になりB-52での運用がピッタリなのでしょうが、ここまで役に立つ機体を1950年代に作ったことは本当に投資効率が高い事業ですね。歴史に残る機材の資格は十分と言えましょう。

Aviation Week & Space Technology

B-52 Readied For Intense Hypersonic Weapons Test And Deployment Role 極超音速兵器開発・運用の準備を進めるB-52

Aug 29, 2018Guy Norris | Aviation Week & Space Technology

B-52
極超音速兵器実証はX-51Aウェイヴライダーのテスト経験をベースにするはずだCredit: U.S. Air Force

B-52Hの主翼サイズと外部搭載能力が極超音速兵器テストの母機で決め手となり、今後始まる米空軍の第一世代極超音速攻撃兵器の実証、運用で同機に新たな役割が与えられる。
大幅改修策とエンジン換装案検討が進むB-52Hは2050年まで供用予定で米空軍は今後登場するノースロップ・グラマンB-21と長距離攻撃にB-52を活用する方針だ。B-21の投入は2020年代末の予定。B-52ではスタンドオフ能力を期待され、極超音速兵器を多数搭載する。
「極超音速が同時平行で開発中で、各種兵器構想の実証をめざします」とボーイング爆撃機事業主幹スコット・オートハウトが述べる。「B-52が極超音速技術の成熟化で中心的存在です」 
空軍はB-52を「2019年から2020年に実施する極超音速兵器実証で発射母機とする」とし、緊急性を鑑み、ペンタゴンで新たに生まれた804セクション調達手法で二方式の試作を加速化する。つまりロッキード・マーティンのAGM-183A空中発射方式迅速対応兵器 (ARRW) と極超音速通常型打撃兵器(HCSW)の二種だ。「どちらかがあるいは両方が成功すればB-52の極超音速兵器運用ミッションが一変することはなくても長距離攻撃能力は引き上げられる」と空軍は説明する。
短期的にはDARPAが戦術加速滑空技術(TBG)の実証を企画中で、このロケット推進のロッキード・マーティン超高速滑空機がAGM-183Aの母体となる。TBGは2019年にも飛行テストを開始する予定で、その後登場する迅速即応兵器の作戦運用開始は2021年が目標だ。固体ロケット推進方式のHCSWは2022年の作戦運用開始を期待される。
空軍が目指す極超音速兵器はスクラムジェットエンジンを使い、B-52母機がNASAの2000年代にX-43をテストしており、その後継たる空軍とボーイング共同開発のX-51Aが2010年から2013年にテストされた。ロッキード・マーティンのスカンク・ワークスはレイセオンとDARPA事業で類似コンセプトの極超音速空気吸い込み式兵器コンセプト (HAWC)を製作中だ。HAWCの採用案はB-52でテストを2020年に開始する。
最終仕様がどうなるかと別に「B-52の将来はこの兵器運用で更に伸びる」とオートハウトは述べる。「大型トラックであり大型装備を簡単に外部搭載可能で長距離運用できるので、2040年代2050年代まで重宝され今後の技術動向に対応できるはずです」
大型兵器の登場を予想するボーイングは空軍と「大型装備搭載案で新型パイロンを検討中」とオートハウトは說明する。B-52では重量10,150-lb.のAGM-28ハウンドドッグ超音速ミサイルや特殊ミッション用大型装備としてD-21ステルス無人機やX-15極超音速試験機を搭載の実績があるが、設計陣は高速兵器数発を搭載出来ないか検討中だ。

その動きのひとつとして6月に空軍物資本部が情報開示要求を発出していた。新しく外部搭載兵器用パイロンを開発しB-52の現行最大搭載能力10,000-lb.を 40,000 lbへ引き上げる。新設計パイロンは現行の改良型共通パイロン(1960年代から共用中)に手を加えたものになると見られる。「当時はそんな要求もなくここまで重い兵装の搭載を予想したものもいなかった」と空軍は説明しており、開発期間36-72ヶ月での実現を狙う。■

2018年9月4日火曜日

日本の防衛力の要となる人員を人口減高齢化社会の日本で確保するには思考の転換が必要だ

日本でも遅ればせながら無人装備の開発に拍車がかかってきたのは良い傾向でしょう。日本の防衛力維持にどれだけの人員が必要なのか。不足するなら技術でカバーできるのか。いや、やはり一定の人員数が必要なのか。いずれにせよ日本が今までとは違う社会になっているからこそ新しい思考、過去の延長線を断ち切れるたくましい思考が必要なのですが。

How to Make Japan's Military Great Againこの方法で日本の軍事力は再興する

Can the Self-Defense Forces’ (SDF) force level and structure sufficiently cope with the increased defense capability?自衛隊の戦力水準、構造は防衛力増強のニーズに応えられるのか
August 25, 2018  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: JapanSelf-Defense ForceChinaIndo-PacificU.S.-Japan Alliance
2017年12月15日、安倍晋三首相は共同通信編集者会議の席上でスピーチし、総選挙での勝利、アベノミクス、社会保障問題、北朝鮮、中国と多様な話題を取り上げた。その中で特に取り上げたのが防衛大綱(NDPG)の2018年内改訂で、日本の防衛装備調達を中期防(MTDP)として次の5年間に渡り定める内容となる。
スピーチで安倍首相が強調したのが改訂方針で「専守防衛を所与の条件としつつ国民の安全にとって真の意味で寄与する防衛能力を確認していきたい。既存装備をそのまま維持することはしない。日本を取り巻く安全保障環境の現実を重視する」とし、いよいよ今年は安全保障上で大きな変革の年になることを予感させた。
だが本質的な疑問はこの十年以上答えがないままでNDPG策定で解答が求められる。現在の自衛隊の戦力水準と構造で防衛能力の向上が十分可能だろうか。
2014年度防衛大綱、中期防での防衛力増強
現行の2014年版大綱では自衛隊の抑止力および即応力を数と質の両面で強調している。例として自衛隊は能力整備で海と空での優越性確保を重視しており、これを有効な抑止力ならびに即応体制の基本とし南西部における防衛力整備が含まれている。
この目標達成に向け2014年版NDPGおよびMTDPでは以下の主要対策を想定した。(A)駆逐艦を47隻体制(うちイージス駆逐艦6隻)から54隻(イージス駆逐艦8隻含む)に拡充 (B)潜水艦を16隻から22隻体制にする (C)戦闘機を260機から280機へ増強する (D)空輸飛行隊を1個飛行隊から3飛行隊へ増強する (E)水陸即応旅団1個の整備 を掲げていた。
2018年度執行が4月から始まったが現行MTDPで23あった調達項目のうち13で予算化され、駆逐艦5隻(うちイージス艦2隻)、潜水艦5隻、F-35A(23機)、水陸両用車両52台が対象だ。日本の防衛力整備は想定どおりに進んでおり、2018年版のNDPGとMTDPがこの12月に内容を更新する。
現在の自衛隊戦力構造はどうなっているのか
2017年3月31日時点で自衛隊の総人員は224,422名でうち6割が陸上自衛隊(GSDF)、19パーセントが海上自衛隊(MSDF)、また19パーセントが航空自衛隊(ASDF)、統合幕僚部(JSC)が2パーセントだった。充足率(実際の人数と必要人員数の比率)はGSDFが9割、MSDFで93パーセント、ASDFが92%、JSCが91パーセントで自衛隊全体としては91パーセントだった。各隊で人員不足とはいえ当面は十分と言える。では何が問題なのか。
深刻なのが一般隊員での不足がめだつことだ。MSDFの一般隊員には運用要員見習い、運用要員で構成されるが、幹部、上級隊員、一般隊員の各部門は2017年度で93-99パーセントの間だったが、一般隊員では69.5パーセントにとどまっていた。詳細は不明だが戦闘部隊での一般隊員が想定の7割程度になっていると想像できる。
自衛隊ではこの問題に長年に渡り対応策を模索してきた。これまでの防衛白書によれば充足比率は2008年から2017年の間に69から76パーセントの間を推移している。ただし艦船は100%の人員を確保してこそ所与の機能を発揮できることに留意する必要がある。
こうした状況で自衛隊は各隊を完全な形で機能する部隊にすべく考えられるすべての対策をとっている。2008年から海上自衛隊はソマリア沖海賊対策の国際協力に部隊派遣しており、現在も駆逐艦一隻が活動中だ。2011年5月19日の国会議事録によれば駆逐艦二隻を海外派遣するにあたってMSDFは各艦の人員充足率を最低でも9割とすると確約している。このため残る自衛艦で充足率が7割から8割に落ち込んでいる。つまり日本本土近くで活動する艦艇で人員が不足したままなので作業ロードが高くなっていることになる。
防衛力増強と隊員数の関係は
2015年以降にMSDFはいずも級ヘリコプター駆逐艦(乗員定数470名)二隻、あさひ級駆逐艦(同上230名)一隻、そうりゅう級潜水艦(同上65名)を就役させた。約1,430名の隊員が合計で必要だ。もちろん新規就役艦の裏には退役艦があることがわかる。ただ新規建造艦は大型化する傾向があり、いずも級が交代したしらね級ヘリコプター駆逐艦は乗員定数350名だったので単純に120名追加する必要がある。
今後就役する駆逐艦潜水艦はすでに予算手当がついていることに注意が必要だ。まや級イージス駆逐艦(350名)二隻、新型30DX水上艦(100名)二隻、そうりゅう級潜水艦(65名)3隻がある。これだけで995名が必要となる。
では海上自衛隊の隊員数は2014年から増えているのか。防衛白書を見るとそうではないとわかる。2014年度末の42,209名が2016年度末に42,136名に微増しているだけだ。そのため疑問は残ったままだ。海上自衛隊更に自衛隊全体は本当に機能できるのだろうか。
大幅な人口減がやってくる
2012年度を見ると自衛隊全体で平均毎年14千名が入隊し10千名が退官あるいは任期満了で去っている。このため毎年4千名が残り、自衛隊合計で224千名が227千名になった。ただし近年の経済回復傾向とあいまって出生率の低下傾向ならびに高学歴化のため自衛隊隊員募集の環境はきわめて厳しい。2017年度でいうと自衛隊は一般隊員として陸自に5,400名、海自1,100名、空自1,660名の募集目標を立てたがそれぞれ8割、6割、8割しか集めていない
更に大幅な人口減がやってくるのは確実であり、このため現在以上に隊員確保が困難になるのは避けられない。日本が超高齢社会に入っているとの指摘は出ており、人口減社会は現実のものだ。自衛隊入隊年齢の18歳から24歳人口のピークは1994年の17百万人だったが2016年度ではこれが6百万人35%減となった。2030年には適正年齢層は9百万人になりそうだ。
防衛省も各種対策を展開し、女性隊員の入隊を増やす(2016年度現在で6.1パーセント相当になった)ほか、今年10月より入隊可能年齢を延長する。だが日本には定年年齢の延長措置の検討が必要であり、元自衛官の再採用や女性隊員をさらに増やす必要もある。
今こそ自衛隊の人員構造を見直すべきだ
では将来の隊員不足に対応しつつ望ましい防衛力を自衛隊は確保できるのだろうか。スウェーデンがロシアの脅威に対応し徴兵制を復活させた。日本も同じ方法をとれないのか。答えは否である。理由は「憲法違反」だからだ。日本国憲法第18条では「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」とあり、現行政府の解釈では徴兵制は「服従の強制」とされている。安倍総理も2016年3月の国会でこの見解を認めた。
新技術はどうか。超高齢化社会、人口減少社会の日本では無人装備の研究開発が必要だ。防衛装備庁が防衛技術戦略構想を2016年8月発表しており、まさしくこの方向で今後20年間進むと示されている。今後の有望案件は無人水上艇(USV)と無人水中機(UUV)でそれぞれ一ヶ月以上連続投入可能という想定だ。このうちUUVは対艦ミサイルと魚雷を搭載する。米国も同様の研究をしており、日米共同体制のうえで大きな意味を持つことになるかもしれない。
こうした技術の開発は相当の長期間が必要だし簡単に運用可能に進めない。そのため今利用できる高性能兵器装備の調達が早道だろう。イージス・アショアを二箇所に導入する決定で日本本土全体をカバーできるとともに弾道ミサイル防衛運用での海上自衛隊の負担を軽減できる。イージス・アショアは陸上自衛隊が運用し、最初の施設は2023年に運用開始となる。
中国の海空軍事力の整備に直面する日本だが自衛隊員の数が現在も将来も不足する中で独自の海空防衛力増強が必要だ。新防衛大綱ではこの課題に取り組み解決策の提示が求められる。陸自6海自2空自2という現行の人員配置は1980年代中頃から変わっていないことが毎年の防衛白書からわかる。これを今変えるべきで、自衛隊員の比率変更こそ政策の柱とすべきだ。
各種報道によれば日本では陸海空の枠を超えた隊員勤務を検討しているという。現在、海上自衛隊には481箇所、航空自衛隊には392箇所の基地施設がありそれぞれの人員で警備保安をしている。これが検討中の新体制なら陸上自衛隊に海自、空自の基地を警備させ、その分で浮いた隊員が重要任務に割り当てられる。これはよいスタートとなり今後は各隊の枠を超えた運用が必須となろう。その例として陸上輸送、ISR、ミサイル防衛、サイバー、宇宙、電子戦がある。
インド太平洋を睨む米戦略への影響は
中国の軍事力拡大に同対応するかで米国では議論が盛んになっている。おもに3つの考え方がある。(1)米国の軍事力増強 (2)米軍のアジア撤退 (3)中国周辺国の軍事力増強 である。では日本が自衛隊隊員の再調整に成功するかがここで大きな意味を有する。仮に人口構造変化への対応に日本が失敗した場合、日本は防衛力増強ができない事態に直面し安全保障面で米国依存をさらに強める結果となるかもしれない。だが米軍にも独自のミスマッチ問題が人員数とふえるばかりの需要の間にあり、インド太平洋地区では事故が複数発生している。日本が自衛隊隊員構成の調整に失敗した場合に米国はどう対応すべきだろうか。新防衛大綱は12月に発表され、米国の政策決定層が注視するのは確実だ。
Dr. Aki Nakai is an adjunct faculty in the Pardee School of Global Studies at Boston University and the Political Science Program at Lesley University. His research interests lie in the intersection of international security and politics of the Indo-Pacific region.
Image: Wikipedia

2018年9月3日月曜日

MQ-25で変わる海軍航空戦力、2020年代中ごろに日本へ配備か

なるほどMQ-25は前方配備艦に優先導入されるわけですか。日本にも急に身近な機体になりそうですね。ジョージ・ワシントンが大修理を終えるのは2021年予定だとすれば辻褄があい、2020年台中頃に同機が配備されそうですね。日本ではまた例の筋が無人機導入に反対の声をあげないか心配です。しかしMQの呼称で給油機というのは妙ですね。普通ならKではないですか。これには別の意図があるのではないですか。

Aerospace Daily & Defense Report

U.S. Navy Awards Boeing Lucrative MQ-25 Contract 米海軍がボーイングにMQ-25契約を交付

Aug 30, 2018Lee Hudson | Aerospace Daily & Defense Report

Boeing

海軍がMQ-25Aスティングレイ艦載無人給油機でボーイングに契約交付し試作型4機が生産される。
総額805.2百万ドルでUAV試作機が製造されれば空母航空隊の給油機不足が解消され、F/A-18E/Fスーパーホーネットが給油機の役割から解放される。ボーイングには長期的に朗報となる。海軍はスティングレー72機を調達する。
今回は三社が採用をめぐりしのぎを削った。ボーイング、ジェネラルアトミクス・エアロノーティカルシステムズ(GA-ASI)、ロッキード・マーティンのスカンクワークスだ。海軍は1999年から実現を図り、2017年に要求内容を改訂し、各社がそれぞれ特色のあるコンセプトを提示した。
ボーイング、GA-ASIはともに主翼機体尾翼一体型のUAV案を、ロッキード・マーティン案は全翼機だった。
ボーイングは空母航空戦力で大手だがMQ-25Aでは開発取り消しとなった無人艦載偵察攻撃機(Uclass)の設計内容を流用した。GA-ASIはこれだけ複雑な機体の製造は初のため不利な立場で参画した。ロッキード・マーティンはF-35Cで海軍航空部門の経験がある。原型機の製造までしたのはボーイングのみだが、また飛行は実施していない。
海軍の予定ではMQ-25A開発機材の納入介しを2020年度とし、2021年度に初飛行させ、はやければ2024年にも第一線投入を開始したいとする。
Uclassでは空母運用型UAVとして攻撃機能、ステルス性能、情報収集監視偵察能力が期待されていた。
米海軍の調達トップHondo GeurtsによればMQ-25A要求性能の最終決定から一年で試作機契約を交付できると見ていた。今回は中核性能パラメーター(KPP)は2つに絞られ、各社は自由に要求内容の実現が追求できた。
MQ-25のKPP二項目は空母運用と空中給油能力だ。
2017年、海軍作戦部長はMQ-25、大口径水中移動手段、水上艦へのレーザー兵器システム搭載を優先調達事業と宣言した。同様の手法で誘導ミサイルフリゲート艦更新も進めている。
海軍は2019年度に719百万ドルをMQ-25の研究開発として要求した。海軍がシステム統合の役割を果たし、機体、空母、制御と通信接続を担当する。
2019年度国防予算認可法は8月13日に制定され、海軍はニミッツ級空母USSジョージ・ワシントン(CVN 73)でMQ-25運用を可能とする改修を行う。
CVN 73 は2017年から工期4年の核燃料交換・大修理(RCOH)に入っているのであわせて運用改修を行うべきとの提言が2019年度国防政策会議で報告されている。
「本会議はMQ-25は太平洋地区に優先配備されるべきと信じる。配備を可能とするべく、本会議はCVN 73が次期前方配備空母の候補であることを鑑み必要な改修改良をRCOH中に行い、MQ-25運用を可能な限り早く実現すべきと考える」
このため海軍のMQ-25改修はRCOH期間中に行えることになった。また議会関係者によれば同機を配備するのは前方配備空母のみとなると伝えてきた。

「今回の文言にはRCOH中のMQ-25改修や装備の完全配備を禁じる内容は入っていない。さらに会議参加者は海軍予算がこの点を考慮することを期待する」(同会議報告書

2018年9月2日日曜日

ロッキードはF-22/F-35ハイブリッド構想を米空軍にも売り込んでいた

Lockheed Pitching F-22/F-35 Hybrid to U.S. Air ForceロッキードがF-22/F-35ハイブリッド構想を米空軍にも売り込む

Two F-22 Raptors fly with two Norwegian F-35s in Norway.
  • BY MARCUS WEISGERBERGLOBAL BUSINESS EDITORREAD BIO
AUGUST 30, 2018
プターにJSFの頭脳を取り入れた新型機種の狙いは今後出現するはずのロシア、中国の脅威への対抗だ。
ロッキード・マーティンがひそやかに米空軍に新型F-22ラプターを売り込み中だ。機体にはF-35の搭載する新型ミッションエイビオニクスを盛り込み機体構造を一部変更している。

米軍や同盟国にロッキードはこれ以外のオプションも提示するねらいは軍関係者が今後登場すると見ているロシア、中国の脅威への対応だ。

「これはハイブリッド機になる」とデイヴィッド・デプチュラ空軍中将(退役)はミッチェル航空宇宙研究所所長としてコメントしている。「F-22でもF-35とも違う機体だ。両機種を合わせた存在だ。完全新型機の開発よりずっと早く実現できる」

新型機はロッキードが日本に提案中の機体と似ており、F-35の新型ミッションシステムと「その他ステルス塗装等の新技術」を盛り込むと詳しい筋が述べている。

「この提案には多大な可能性がある。すぐに飛びつくべきとは言わないが日本の視点で見れば国産機開発の代替案として国産機がF-22の性能に及ばないのであれば巨額を投じる意味がある。賢明な選択になるはずだ」(デプチュラ)

ロッキード広報は本件についてコメントを避けている。

今回の提案から思い出されるのは1990年代末にF/A-18ホーネットがスーパーホーネットへ進化した過程だ。低リスク事業としてF/A-18E/Fでは機体のほぼ全面改良が必要となった。新型主翼は当初こそトラブル続きだったが、最終的に成功作となった。

国家防衛戦略の一環で空軍が戦力編成を検討するタイミングでロッキード提案が出てきた。

今回の売り込みで長年の論争が再燃しそうだ。F-15含む第四世代戦闘機の改良型を調達するべきか、それとも高価かつ整備が大変なステルス塗装や電子装備を盛り込んだ新型機のほうがいいのか。

7月にはボーイングがF-15イーグルの新型機F-15Xを売り込み中との報道があり、ミサイル爆弾の搭載量増加と新型電子装備を採用するとある。F-22やF-35とちがうのはステルス性能がないことだが、同機支持派によれば電子戦等の装備で被撃墜性が下がるという。

非ステルス機導入に反対する向きからは国家安全保障戦略と関連するとの指摘が出ている。「統合運用では敵国の防空ミサイル防衛ネットワークの有効範囲に侵入し移動式兵力投射装備を破壊する能力が必要だ」「第四世代機でこのシナリオでの運用は無理だ。このため第5世代機の持つ作戦能力が必要だ」(ロッキード提案内容に詳しい筋)

デプチャラは改良型F-22を採用すれば米軍戦力は段階的に増強可能とし、未検証技術を採用した革新的設計の第六世代機の登場を待つ必要がなくなるという。

「空力特性、推進力、低視認性から見ればF-22を大幅に超える機体はまだ生まれていない」(デプチュラ)

米空軍は数億ドルで今後の戦闘機用各種技術を検討中だ。空軍では次世代航空優勢機あるいは侵攻制空機と呼んでいる。

その他の提案


ロッキードには米軍や同盟国向けに別提案もあり、指向性エネルギー兵器や電子攻撃手段をF-16、F-22、F-35に搭載する案やF-35の構造強化も含まれる。


「米軍が次世代航空優勢機材の実現に向かうのであれば選択肢は多々ある」とロッキードの戦略に詳しい筋が語る。

このうちロッキードがF-35改修で動いている。同上筋によれば同社はスカンクワークス本部があるパームデール(カリフォーニア州)で米海軍上層部に売り込みを図った。エンジン改修が中心で出力、燃料消費の双方で向上を図る。外観上に変更はない。

ロッキードではF-35調達規模の増加も売り込んでおり、2020年代にステルス機の増強を期待する。

「国家防衛戦略で掲げるシナリオのひとつで実際の戦闘となれば高リスク状況で第四世代機で大量損失が発生する。米国がこうしたシナリオで任務を実施できるか疑問だ」(同上筋)

F-35の年間生産数が80ないし100機となれば米軍戦闘機2,000機の8割が第5世代機になると同上筋は解説する。
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「該当シナリオは本質的に違う。目的達成の確率が高くなり損耗を低く抑えることを目指す内容だが第四世代機は危険にさらされる」。だがコストの問題が出てくる。空軍向けF-35Aの最新発注分で単価は90百万ドル程度だ。ペンタゴンは2020年までに80百万ドルに引き下げたいとする。

デプチュラはF-35価格の削減が続けばF-15やF-16の新型調達の論拠が減るという。

「空軍の立案部門は既存の相手方脅威のみならず将来登場する脅威への対応も望むはずだ。一部には財政上こちらが優位と見る向きがあるが、この議論は長く持たないと思う」

「個別の機体単価や既存機材の新型版の生産再開を進めればF-35の機体単価の変遷カーブに近くなる。空軍立案部で高齢化進む空軍の立て直しを図るとしたらどちらの案が効果が高いのか答えをだすのがむずかしいだろう」■

2018年8月31日金曜日

速報 米海軍MQ-25Aにボーイング案採用決まる

8月30日に結果が発表された米海軍向け無人艦載給油機MQ-25Aとしてボーイング提案が採択されました。 詳細は別途お伝えします。■