2020年9月7日月曜日

歴史に残る機体(28) F-4ファントムはいまだに供用するところもあるが誕生から60年が経過している

 歴史に残る機体(28)マクダネル・ダグラスF-4

 

 

クダネル・ダグラスF-4ファントムIIは伝説の域に入る機体だ。ヴィエトナム戦争を象徴する機体であり、第三世代ジェット戦闘機の典型となった同機は1960年代に供用開始し、5千機超が生産された大型超音速戦闘機だ。今日でも供用中であり、一部空軍では実戦部隊に配属されている。

 ファントムにはヴィエトナム戦でエンジン推力にあぐらをかいた不器用な乱暴者で使う兵装も旧式だったとの定評がある。

これは公正ではない。

 

 

ファントムの基本欠陥は1970年までに是正され、最近もエイビオニクス、兵装面で現在の水準まで引き上げられている。近代化改修したファントムはトルコ、ギリシアの両空軍で供用中で、F-15と同程度の性能でありながら、はるかに安価に実現している。

 

実戦で洗礼を浴びる

 1958年に登場したF-4は革命的な設計で数々の航空記録を樹立した。

 空虚重量が30千ポンドで大型J79エンジン双発により優秀な推力を実現し、これだけの機体でもマッハ2、時速1,473マイルで飛行できた(できる)。 

 初期のファントムは18千ポンドの爆弾等を搭載でき、これは第二次大戦時のB-17の三倍に相当した。後席の兵装士官が高性能レーダーや兵装運用システムを担当してパイロットは操縦に専念できた。

 さらに、F-4には地上運用型、空母運用型双方があり、米空軍、海軍、海兵隊で供用された。三軍共通機材の例はF-35までなかった。

 ただし、軽量のMiG-17やMiG-21と北ヴィエトナムで空戦に臨むと、ファントムに被撃墜機が発生した。朝鮮戦争では米空軍は一機撃墜されるても敵機6機ないし10機を撃墜していたが、ヴィエトナム戦では2対1程度に縮小していた。(ファントム以外の米軍機全体での数字)

F-4の問題は機体に機関砲が搭載されていないことだった。空対空ミサイルに全面的に頼っていたためで、レーダー誘導方式のAIM-7スパロー、熱追尾式AIM-9サイドワインダー、旧式AIM-4ファルコンを搭載した。

 初期のミサイル性能がひどいことに空軍は気づいていなかった。

 検証したところ、ヴィエトナム時代のAIM-7では45パーセント、AIM-9では37パーセントしか発射に成功あるいはロックオンできず、退避行動をとると撃墜可能性はそれぞれ8パーセント、15パーセントに落ちると判明した。ファルコンに至ってはさらに悪く、その後供用を終了した。

 北ヴィエトナムのMiG-21には機関砲、ミサイルがともに搭載されており、重量が大きいF-4に速力、機動性で勝った。米パイロットが至近距離のドッグファイト訓練は行ってなかったのは、空軍が空対空戦は長距離ミサイル攻撃になると想定してきたためだった。

 さらにファントムのJ79エンジンは濃い黒煙を発し、機体サイズとあわせ空中で発見は容易で遠距離から標的になった。他方で交戦規則により米パイロットは未確認目標が視認距離外にあれば攻撃を禁じられていた。これでせっかくのミサイル性能も発揮できなくなった。

 

改良策

だが、F-4の問題点は解決されていった。空対空ミサイル技術は大幅に向上し、後期型のスパロー、サイドワインダーに反映された。F-4EではついにM161ヴァルカン機関砲が搭載された。.

 それ以前は外部ガンポッドを搭載して対応するファントムがあったが、大きな振動が発生していた。

 1972年、フィル・ハンドレー少佐のF-4がMiG-19を機関砲で撃墜したのが超音速域での銃撃による撃墜事例で唯一のものとなっている。

 空軍はF-4E全機に主翼スラットを搭載し、操縦性を大幅に改良した。新型J79エンジンでは黒煙問題の解決を狙った。

 対照的に米海軍は航空戦闘機動訓練の欠如が原因ととらえ、トップガン訓練を1968年に開始した。海軍パイロットはキルレシオで優秀な結果を残しており、7機を喪失したが40機を撃墜している。 

 空軍のファントム全体では107機を撃墜したが、33機を喪失している。海兵隊は3機撃墜したとする。地上砲火で三軍で474機のファントムを喪失したのはファントムに対地攻撃も担当させたためだ。

 派生型が二種類生まれた。RF-4写真偵察機とワイルドウィーゼルで、後者は敵の地対空ミサイル防空体制の撃破を専門とした。米軍のファントム実戦投入は砂漠の嵐作戦が最後となり、1996年に用途廃止した。ペンタゴンは一部機材を無人標的機QF-4に改修した。

 

中東のファントム

 ファントムは世界中で供用された。特にイスラエルではエジプト、シリアを相手に116機の撃墜記録を達成した。

 1973年のヨムキッパー戦争(第四次中東戦争)ではエジプト空軍のMiG編隊がオフィール航空基地を急襲し、離陸できたのはファントム二機しかなかったが、7機の撃墜に成功した。.

 イスラエルのファントムの第一の標的はアラブ側の地対空ミサイル陣地だった。SAMによりイスラエルはファントム36機を喪失している。

 イスラエルのファントムで最後の奉公となったはレバノン戦で、新型F-15やF-16のエスコートを受けたファントム編隊は一日でベカー警告内のシリア軍SAM陣地30か所を全部撃破したが一機の喪失もなかった。

 イランは革命前に米国より225機のF-4を受領し、イラン戦闘機部隊の中核となり9年にわたり続いたイラクとの戦争に投入した。イランのファントムはイラクMiGに善戦したほか、長距離攻撃も実施した。ただし、空対空ミサイルの成果については疑問の余地がある。

 

21世紀のファントム

ファントムをF-15イーグルと比較してみよう。

 F-15の供用開始は1975年で第四世代戦闘機として今日まで近代空軍力の中心的存在だ。F-15は意図的にF-4とは別の路線の高機動性を誇る機体になっている。

 レバノンでF-15、F-16が初の戦闘投入された1982年にイーグルはシリアの第三世代機80機超を撃墜しながら被撃墜機は皆無だった。

 第四世代戦闘機の優秀性が実証されたのが湾岸戦争で、イラク戦闘機が撃墜に成功した第四世代戦闘機はF/A-18ホーネット一機に過ぎないが、第三世代機では33機を撃墜している。F-4は新しい環境に対応できるのだろうか。

 簡単である。第四世代機で搭載したハードウェアと同じものを搭載すればよいのだ。

 トルコ空軍、ギリシア空軍で供用中のファントムには新型パルスドップラーレーダーが搭載され、「ルックダウン、シュートダウン」攻撃がF-4で可能となった。従来は高高度飛行中はレーダーによる低空飛行中の機体探知は困難な仕事だった。レーダー波が地上に反射してクラッターが発生するためだ田。アクティブドップラーレーダーだと地表クラッターの影響を受けない。

 近代改修型F-4では各種近代装備を運用でき、AIM-120C AMRAAM空対空ミサイル(射程65マイル)、AGM-65マーベリック精密誘導弾、スパロー後期型、サイドワインダーミサイルがそれぞれ搭載可能だ。

 現代の戦闘航空機材はウェポン搭載手段にすぎず、こうした装備を運用できるF-4は第四世代機のF-15、Su-27と同様の攻撃任務をこなせる。

 だが電子装備や計器類は陳腐化しているのではないか。必ずしもそうではない。たとえば、近代化改修型のF-4にはヘッズアップディスプレイ(HUDs)がつき、パイロットは視線を落として計器盤をチェックする必要がなくなった。

 ドイツは改修型F-4Fを2013年まで運用し、将来のため機材を保管している。韓国にはF-4Eが71機があるが、改修は一部にとどまる。日本もF-4EJ改を同数保有し、パルスドップラーレーダーと対艦ミサイルを搭載する。イスラエルはファントム改装をいち早く1980年代に開始し、ファントム2000クルナス(ハンマー)と呼んだ。イスラエル企業はギリシアのピースイカルスファントム41機にANPG-65パルスドップラーレーダーを搭載し、AMRAAMミサイル運用を可能とした。

 イスラエルはトルコにもターミネーター2020事業で協力しており、主翼にストレーカーを追加し操縦性能を向上させている。

 同機改修では配線20キロメートル分を交換し重量1,600ポンドの軽量化に成功した。トルコ向け機材ではセンサー、電子装備も一新している。またぺイヴウェイ爆弾、HARM対レーダーミサイルやポパイミサイル(3千ポンド級、射程48マイル)の運用が可能だ。

 ターミネーター各機は基本的に対地攻撃が任務だが悪評もある。クルド人組織PKKの戦闘員をトルコ国内、イラクで2015年から2016年にかけ爆撃した。RF-4偵察機がシリアで2012年に撃墜され、F-4三機が2015年に墜落しており、トルコ国内では「空飛ぶ棺」と揶揄されている。

 イラン空軍はF-4D、Eの76機とRF-4の6機が作戦投入可能と2009年に述べていた。同国はロシア製中国製の空対地、対艦ミサイルの運用を可能とする改修を実施したようだ。ただし、中古品のAIM-7スパローを今も使っている。イランのF-14トムキャット同様にF-4でも部品入手は密輸に頼っている。

 イランのファントムはイラク国内のイスラム国標的を2014年12月に空爆し、ペルシア湾上空で米軍機との追いかけっこをしている。

 性能強化されたとはいえ改修版F-4は本当に第四世代機と同等といえるのか。21世紀でも供用中のファントムで空対空戦は一回も発生していないが、ギリシアのF-16と撃墜に至らないドッグファイトは発生している。

 また中国のSu-27と2010年の演習で模擬空戦を行い、ネット上の情報ではゼロ対8機と優秀な成績だったという。

 主翼スラットを追加したファントムがきつい旋回をこなし、180度方向展開をする様子を映像で見ると、F-15並みの機体操縦が実現しているが、F-4では旋回完了まで7-8秒かかっているのがわかる。F-15が操縦性では一歩上を行く。

 だからと言って改修型F-4がその後登場した機体より優れた設計であるとの証明にならないが、第四世代機の機体重量と比べ相当大きな重量の機体の飛行制御が可能とわかる。

 ファントムの1958年初飛行時、その60年後にも第一線で活躍している姿を想像できたものは皆無に近かったのではないか。■

 

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

America's F-4 Phantom: Taking On the World's Best Fighters (At 60 Years Old)

 

March 5, 2018  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-4 PhantomMilitaryTechnologyWorldU.S.Air Force

by Sebastien Roblin

 


発想力と大胆な資金投入がすごいぞ DARPAの奇想天外プロジェクトのごく一部をご紹介

 


The Legged Squad Support System (LS3) walks around the Kahuku Training Area July 10, 2014 during the Rim of the Pacific 2014 exercise. (U.S. Marine Corps photo by Sgt. Sarah Dietz/RELEASED)

脚走行分隊支援システム(LS3)が2014年のリムパック演習で走行実演をした。(U.S. Marine Corps photo by Sgt. Sarah Dietz/RELEASED)



宙から人体の脳組織に至るまで国防高等研究プロジェクト庁DARPAが助成した研究成果を軍が利用し、最新技術を使っている。


DARPAの功績にはインターネット、GPS、ステルス航空機がある一方で、設立以来62年の歴史に奇想天外な案件も多数見られる。


DARPAが他機関と一線を画すのは通常の調達ルールを使わないことで、研究者、イノベーターの採用、給与でも制約が少ない。またDARPAには予算執行上で制約も少なく、実現可能性が低い案件にも資金投入が可能で、軍のベンチャーキャピタルとして機能している。

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では、DARPAが「ハイリスク・ハイリターン」と分類した中で読者の関心を引きそうな案件を紹介していこう。



1. 植物を食べるロボット


正式名称「エナジー自律戦術ロボット」Energy Autonomous Tactical Robot (EATR)の本事業では植物が飼料のロボット開発を目指す。実現すれば監視用あるいは防御用で人員や通常のロボット装置より長期間補給なしで活動できる。


開発にあたるのはサイクロンパワーテクノロジーズ Cyclone Power Technologiesで「将来食糧危機が発生したらどうするのかという懸念があるのはわかるが、それは当社のミッションではない」と同社CEOハリー・ショールが述べている。


同プロジェクトが2015年に中止された前に、技術陣はEATRはバイオマス150ポンドで100マイルの移動が可能と試算していた。



2. 自己修復型の建築物


想像してほしい。兵員が軽量足場で建物や防御拠点を整備している。足場から耐久性のある素材がしみ込んでいく。この素材は損傷を受けても元通りに復旧する。



これがDARPAのエンジニアリング生体素材Engineering Living Materials事業の目指すゴールで自己修復可能な建築素材を実現する。3Dプリンターで器官組織を作成し、ハイブリッド素材として形状を保ち、細胞成長を支える効果を実現しようとしている。


「完成形の素材を補給するのではなく、原型を支給し現地資源を使い急速成長させる。また素材が生きているため、環境変化に対応が可能であり、損傷を受けても復旧する」とプロジェクト主幹ジャスティン・ガリヴァンが述べている。


3. 実験室培養の血液



血液の遺伝子組み換えblood pharminng とは人体からの採血ではなく、血球を実験室で作成する技術だ。DARPAの血液遺伝子組み換え事業では赤血球関連で製造効率を上げ費用を削減する狙いがあった。


成功すれば、戦場や世界各地の病院で輸血用血液が大量に利用可能となり、輸血による疾病発生リスクが減るはずだった。


2013年の報道発表では同事業により合成血液装置一式の費用が90千ドルから5千ドル未満に下がるとあったが、追加発表はない。最新の予算説明資料にはこの事業は掲載されていない。



4. サイボーグ昆虫


無人航空機はおおはやりだが、設計組立に人手が必要で高費用となる。では、飛ぶ生体にセンサーを乗せれば費用は発生しないのではないか。


DARPAのスパイ昆虫事業は2006年事業に掲載されており、昆虫に発信機を埋め込み監視活動に投入する構想だった。ハイブリッド昆虫マイクロ電子機械システム事業 Hybrid Insect Micro-Electro-Mechanical Systemsはミシガン大、コーネル大が担当した。数年後に研究陣は昆虫を制御するインターフェースの開発に成功した。


2009年にコーネル大は放射性物質を動力とする送信機をサイボーグ昆虫に埋め込んだと発表した。ニッケル同位体-23からセンサー、送信機に電力が供給されながら、人体には無害である。



5. 脳インプラントでPTSD治療を


DARPAは戦闘用装備品のみに主眼を置くわけではない。戦闘で発生する兵士への陰の部分でも解決策に資金投入している。


新治療方法を模索するシステムに基盤を置く神経科学Systems-Based Neurotechnology for Emerging Therapies事業では「インプラントで閉回路の診断および治療を確立し、精神神経疾患の対応、さらに治癒をめざす」とDARPAの報道資料にある。


この事業は脳インプラントでPTSDに悩む兵士を助けることをめざし、脳損傷、不安症、薬物濫用等にも対応する。ただし実施すると倫理問題がからむため、専門家が参加し、神経科学技術の安全な実施を目指している。



6. ロボット歩兵ロバ



重い装備品を運搬すると兵士の健康を害し、業務遂行にも影響が出る。このためDARPAはロボット工学分野の企業ボストンダイナミクス Boston Dynamicsと共同で脚走行分隊支援システム Legged Squad Support System (LS3)を実現させた。


400ポンド運搬可能なLS3は歩兵分隊と行動を共にする。DARPAウェブサイトでは事業の目標を「分隊と移動しながら分隊の任務遂行を妨げないロボットの開発」としている。


7.核爆発で推進する宇宙船


DARPAは宇宙旅行にも資金投入している。プロジェクトオライオンは1958年に始まり宇宙船の新型推進方法で研究が目的だった。仮説では原子爆弾の爆発力を前方推進の動力とすれば驚くべき速力が実現するはずだった。


ただし、1963年に部分各区実験禁止条約が成立し、宇宙空間で核爆発ができなくなったため同プロジェクトは解散した。


8. 機械仕掛けの象


1960年代、DARPAはヴィエトナムのジャングルでも自由に兵員物資を移動できる車両研究を開始した。


ハンニバルの先例から、DARPA研究員は象がぴったりだと判断した。そこからDARPA史上で最も悪名高いプロジェクトが生まれ、機械仕掛けの象の製作を目指した。成果物はサーボ機構で作動する脚で重量物を移動させるはずだった。


DARPA長官がこのプロジェクトの存在に気付き即座に中止させたのは議会筋が聞きつけ予算カットされては困ると判断したためとNew Scientistにある。■


この記事は以下を再構成したものです。


8 weird DARPA projects that make science fiction seem like real life


Harm Venhuizen


2020年9月6日日曜日

F-15JSI改修に見えるステルス、非ステルス機同時運用構想は日米が共有している

 F-15JはF-35と併用して大威力を発揮する機体となる。

本は最高45億ドルでボーイングF-15J合計98機を大幅改修し、「日本向けスーパー迎撃機」(JSI) 仕様とする案件で米国務省の承認を2019年10月末に受けた。

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JSIは日本が導入中のロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機と併用され、相互補完の関係になる。一方で米空軍は独自にF-15、F-35混成運用を模索している。

 

日米の空軍がステルス、非ステルス機材の長所短所をバランスさせようとしているわけだ。

 

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通常型なら探知されてもステルス戦闘機なら回避できるが、あくまでも兵装を機内搭載の場合だ。ただし、ステルス機は兵装庫で燃料搭載量が犠牲となり、航続距離が短く、ペイロードも非ステルス機より少ない。

 

他方で非ステルス機は最新の「極超音速」ミサイルも含む兵装を大量搭載できる。

 

両国政府はバランスのとれた機材編成の重要性を実感しつつある。こうして見ればF-15近代化改修が突飛な発想ではないことがわかる。

 

JSI改修は広範囲で、レイセオン製AN/APG-82(V)1アクティブ電子スキャンアレイレーダー、BAEシステムズ製AN/ALQ-239デジタル電子戦装備(レーダージャマー)を含む。また新型ミサイルも導入する。

 

「日本にはAESAシーカーがつく高性能AAM-4Bがある。ただ日本が米製AIM-120AMRAAMの導入も検討中との報道もある」と War Zoneのジョセフ・トレヴィシックが以下伝えている。

AIM-120はAAM-4Bより小型で交戦距離も短いというが、F-15JのJSI仕様にAIM-120を多数搭載することに意味がある。性能不足を数で補えるからだ。それ以外に日本は欧州のミサイル共同事業体MBDAの英国事業部と共用新型空対空ミサイルの開発にあたっており、シーカー他部品をAAM-4Bから流用しながらMBDAのラムジェット推進ミーティアの機構を取り入れるといわれる。

 

日本はF-35A(105機)、F-35B(42機)を発注しており、米英両国に次ぐ第三位の導入規模となる。2020年代中ごろの日本の戦闘機部隊はF-35とF-15JSIが中心となる。

 

「F-15JのJSI仕様機はF-35Aとの組み合わせで効果を発揮し、防空出撃で重宝されるはずだ。F-35との併用では、F-35が先を飛び標的情報を非ステルス機に伝え、非ステルス機の兵装搭載量が威力を発揮するはず」(トレヴィシック)

 

米空軍も同様にF-15とF-35の同時運用を狙い、新規生産のF-15EXを144機発注し1980年代製造のF-15Cを更新する。同時にF-35も導入しステルス機1000機超の運用とする。

 

F-15EXは「F-15C/D部隊がこなしているミッション範囲を広げるユニークな機材になる可能性がある」とWar Zoneのタイラー・ロゴウェイが伝えている。

 

「兵装運搬トラックとして、極超音速巡航ミサイルや超長距離空対空ミサイルのような大型兵器の搭載機として、さらに無人機編隊の統制用に、また第五世代機と第四世代機間の通信中継機として戦闘空域で重宝されるはずだ」

 

わずか数年前まではこれからは全ステルス機編成になるとの見方が主流だったが、今や混合編成が常識になりつつある。日米以外にもロシアや中国もステルス機調達は小規模としつつ非ステルス機材で改修を進めている。■

 

この記事は以下を再編成したものです。

 

A F-15J “Super Interceptor” Could Be Just What Japan's Air Force Needs

September 4, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: F-15JapanF-15 FighterMilitaryTechnology

A F-15J “Super Interceptor” Could Be Just What Japan's Air Force Needs

by David Axe 

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This article first appeared in 2019.

Image: Wikipedia


英陸軍が戦車部隊を縮小中。全廃も視野に入っている模様。105年の運用実績に幕が下りる?

 国は戦車保有数を削減中で、多数車両は20年にわたり性能改修を受けていない。

英陸軍が史上初の「タンク」を戦闘投入して今月は104周年となる。投入の一年前にウィンストン・チャーチルが陸上艦艇 Landships 委員会を発足させ、戦車原型の開発が始まった。同委員会は全地形を移動可能な大型車輪付き「陸上艦」自重300トンの開発を統括しようとした。

 

同構想は大胆すぎるとわかり、一号戦車はドイツ帝国のウィルヘルム三世皇帝を侮蔑し「リトルウィリー」と呼称されたが、当初構想から大幅縮小され、かつ非武装だった。そこからほぼ一年かけてMk I戦車として改良された。当時は開発対象を欺瞞するため、車両に「タンク」の名称がつき、清水を戦線へ運搬する容器に誤認させようとした。1915年12月に「タンク」が公式採用され、陸上艦委員会はタンク補給委員会に呼称変更された。戦車はソンムの戦いで実戦デビューした。

 

以来一世紀が経過したが、戦車を最初に実戦投入した同じ国が戦車を全廃しようとしている。昨年、ペニー・モーダント国防相(当時)は戦車は時代遅れと発言し、英陸軍のチャレンジャー2戦車は20年余り大規模改修を受けていないと述べていた。

 

 

戦車配備数の削減がすでに始まっている。英陸軍はチャレンジャー2戦車500両を運用していたが、現在227両ほどになっており、多数は保管状態に置かれている。さらに148両に削減の可能性があり、戦車連隊はわずか2個になりそうだ。各連隊には56両程度が配備され、その他は訓練・予備車両となる。

 

英陸軍の選択肢にはチャレンジャー2近代化改修として砲塔主砲の更改もあったが、ドイツのレパード2導入の構想もあり、もともと100年あまり前に対ドイツ戦を想定し戦車を開発した国がドイツ製戦車を採用する可能性があるのは皮肉なことだ。

 

現在の議論は新型戦車の開発にとどまらず、英軍がNATO軍事同盟でど果たすべき役割という根本問題に焦点が集まっている。

 

英陸軍の戦車連隊が二個のみとなるが、チャレンジャー2戦車がウォリアー戦闘車両(28トン)と併用される。ウォリアーは歩兵を戦場に移動させながら軽装甲車両なら十分対抗できる。ただし、ウォリアー(700両)でも近代化改修が予算超過と遅延に直面している。

 

英国が戦車全廃に踏み切っても初の国とならない。オランダ陸軍は戦車部隊を廃止し、予備数両が残るのみだ。オランダ軍歩兵部隊はドイツ陸軍の装甲部隊に編入されている。

 

米海兵隊も今年初めに戦車部隊は全廃し、砲兵隊も三分の一削減する案を発表し、今後は揚陸作戦を主眼に置く軽装備で戦闘部隊となる。

 

英陸軍も戦車の必要性を感じるだろうが、戦闘状況の変化をにらんで決断するだろう。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Will the British Army Retire the Tank After 105 Years?

September 3, 2020  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: TanksUnited KingdomRoyal ArmyNATORussiaMilitary

Will the British Army Retire the Tank After 105 Years?

by Peter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com


2020年9月5日土曜日

三井E&Sがヴィエトナム向け艦艇建造へ

 井E&Sの造船部門はマレーシアの投資会社T7グローバルバハドの海洋部門と共同でヴィエトナム人民海軍(VPN)、ヴィエトナム沿岸警備隊(VCG)向け艦艇の建造を狙う。

 


 

Japan’s Mitsui Engineering & Shipbuilding, which in January launched Japan’s third Hibiki-class ocean surveillance ship (pictured), has signed an agreement with Malaysian firm T7 Marine to explore naval vessel opportunities in Vietnam. (JMSDF)

三井E&Sはひびき級海洋観測艦三号艦あきを1月に進水させた。 (JMSDF)

 

 

T7は完全子会社のT7マリーンが事業に参画し、三井と商機を探るとし、まずVPN、VCG向けの建造を手掛けると発表。

 

両社の合意覚書によれば、それぞれの知見を活かし、ヴィエトナム向け艦艇建造で受注を目指すほか、同国で他の商機も模索する。契約は3年間有効で延長も可能。


今回の事案は日本がめざす東南アジア向け防衛装備輸出拡大の一環だ。

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同社は2019年に海上自衛隊に向け遠洋哨戒艦艇12隻の建造計画を提示していた。また今年1月にひびき級海洋観測艦の三号艦を進水させている。ひびき級は先に二隻が1990年代に供用開始している。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Mitsui, T7 sign deal to supply naval vessels to Vietnam

04 SEPTEMBER 2020

by Jon Grevatt

 


2020年9月3日木曜日

SCS内の中国の不法軍事施設は米軍攻撃で瞬殺される (もしそうならざまあみろ、だ)

 国が南シナ海で構築した人工島には一定の軍事的意義があるとはいえ、水路及び海底資源の確保という政治的主張の一部としての意味のほうが大きい。だがいったん戦闘が始まれば、各島の価値は急落する。

 

 

南シナ海(SCS)に構築した各島を中国は守り切れるだろうか。

 

第二次大戦中の日本は各島の支配で戦略的優位性を発見したものの、米国を各島攻略に分散させることには失敗した。時間が経つにつれ、各島は戦略的な負債になり、日本は糧食、燃料、装備等の補給に追われることになった。SCS内の各島は中国に好都合な立地とはいえ、中国軍に真の価値を生む資産になれるだろうか。答えは肯定的だが、実際に戦闘開始となれば価値は急落するだろう。

 

中国は何を構築したのか

 

中国はSCS各地に軍事施設を構築し、特にスプラトリー、パラセル両諸島に多い。このうち、スプラトリーではスビ、ミスチーフ、フィアリークロスに滑走路を構築したほか、ミサイル陣地、レーダー、インフラ施設が造成されそうだ。パラセルではウッディー島に大規模施設を構築し、その他の場所にヘリコプター施設、レーダー基地を設けた。中国の建設工事は続いており、将来の軍事プレゼンスが拡大しそうだ。大規模基地のあるスビ、ミスチーフ、フィアリークロス、ウッディクロスには軍用機施設が備わり、戦闘機、大型哨戒機に使える。ミサイル陣地、レーダー、航空機による中国軍事力は南シナ海全域に届く勢いだ。

 

ミサイルに注目

 

一部の島はSAM装備の拠点になり、125マイル射程のHQ-9以外にロシア製S-400が導入されそうだ。また地上発射式巡航ミサイル(GLCM)も配備されよう。こうしたミサイルで南シナ海は米艦船、航空機に危険な場所となる。あるいは防空装備の不足を痛感する事態になる。SAMにネットワークやレーダーが接続されれば、敵機は相当の電子戦支援がないと接近できなくなる。GLCMで中国のA2/ADネットワークが強化され、潜水艦、艦艇、航空機からの発射を上回る威力を発揮できる。

 

だが戦闘となればミサイル拠点が残存できなくなるのは公然の秘密だ。陸上配備ミサイルが航空攻撃から生き残るために丘陵地、森林、他自然条件を使い隠れる。だが人工島にはこうした条件は皆無で、人工島といえども協調攻撃の前には無力となる。さらにミサイル発射装置には燃料、電力、弾薬等の切れ目ない補給活動が必要だが、撃ちあいとなれば中国がこうした補給を確実に実施できるか不明だ。

 

航空施設は簡単に排除できる

 

大型拠点があるSCS内四か所に軍用機施設が整備された。だが高性能戦闘機よりも哨戒機、電子戦機、早期警戒機の運用が重要となる。こうした機材を有効に使えば中国のA2/ADバブルは拡大でき、標的データをミサイル陣地や水上艦、さらに中国本土へ送信できる。戦闘機が展開すればSCS上空はさらに危険な場所となり、巡航ミサイルにより米艦艇の接近を阻める。

 

だが戦闘攻撃を受けた飛行施設の有効性は修理用資材、装備がどこまで使えるかで変わる。中国がSCSで構築した各基地が米軍ミサイル攻撃や爆撃を受けても機能できるか不明だ。大型基地には航空機の退避施設もあるが、こうしたシェルターが米軍の協調攻撃を受けてもそのまま残るかは大いに疑問だ。

 

レーダーも脆弱な攻撃目標になる

 

SAM、GLSM、戦闘機材は正確な標的データがあってこそ威力を発揮できる。重要なのはSCS各島のレーダー施設だ。各施設は脆弱とはいえ、中国に正確な戦闘状況を伝える貴重な存在となる。すべて機能すれば中国の防衛体制の有効性が増大する。

 

だがレーダー施設は米軍攻撃の前に脆弱だ。ミサイル攻撃、電子戦、サイバー攻撃、あるいは特殊部隊の襲撃もありうる。有事になれば中国はいきなりレーダーネットワークにアクセスできなくなりそうだ。それでもレーダーネットワークは比較的低予算で米軍のSCS突入を困難にする存在となる。

 

補給活動が中国に維持できるか

 

SCS各島における中国軍事力の発揮は中国本土と安全に通信できることが条件となる。中国が構築した人工島の多くでは補給品備蓄ができないか、攻撃の前に安全に確保できなくなる。各島には燃料、装備、弾薬類の補給が必要なため、中国の伸びきった補給部隊に相当の負担となる。PLAN、PLAAFが戦火にさらされた各島への補給作戦にリスクを押しても実施することにさしたる関心を示さなくなれば、SCS内各島の軍事的価値はマイナスとなる。中国にとって不幸なのは、島嶼戦の本質や補給体制のため各陣地を維持したくても、きわめて短期間しか可能でなくなることだ。

 

水上艦対要塞の戦いになっても

 

ネルソン卿が述べている。「要塞に戦いを挑む軍艦は愚かだ」。だが、水上艦が陸上拠点に優位となる状況もある。SCS内の中国の各島は移動できないし、軍事装備品や貯蔵品を隠す場所もない。米国はSCS内の各島の軍事施設を綿密に把握し、各島へ向かう軍事装備品の海上輸送も追尾できるだろう。これで各島は水上艦、潜水艦、航空機からの攻撃に極度なまで脆弱となる。ミサイルにはリアルタイムの標的データは必要でない。

 

米国に必要なのはズムワルト級駆逐艦に搭載予定だった高性能主砲装備で下した決定を覆すことだ。この主砲用の砲弾があればズムワルト級各艦は長距離から中国の各島を攻撃可能となり、深刻かつ復旧不能な損害を比較的安価に実現できる。これがないままだと各島には本来もっと重要な標的に残すべき巡航ミサイル多数を振り向ける必要がある。

 

SCS内各島には軍事的な意義も一部あるものの、むしろ水路や海底資源の保有を主張する政治的な道具としての方が重要だ。軍事的には中国のA2/ADシステムの薄い外皮となる。一定の条件があれば、この薄皮で米国の航行の自由を脅かせるが、米国の海軍空軍部隊からすれば排除は容易なことだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Are China's South China Sea Islands More Trouble Than They're Worth?

September 2, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: South China SeaPLAPLANPeople's Liberation ArmyBeijingIslandsMilitaryTechnology

by Robert Farley 

 

Robert Farley, a frequent contributor to TNI, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government. This first appeared in 2018.