2022年4月6日水曜日

ライトニング空母構想の実証を進める米海兵隊・海軍。実際の作戦環境を想定し最適化を模索中。日本にも参考となるはず

 


海兵戦闘攻撃飛行隊(VMFA)211所属のF-35B ライトニングIIが強襲揚陸艦USSトリポリ(LHA-7)から発艦した April 2, 2022. US Navy Photo

 

強襲揚陸艦USSトリポリ艦上にて---海兵隊が4月2日記録を破った。F-35BライトニングII共用打撃戦闘機を16機も強襲揚陸艦に搭載したのだ。

 

曇天の下で甲板要員が海兵隊パイロットに発艦地点を示し、その他機体を海軍最新の大型強襲揚陸艦USSトリポリ(LHA-7)艦上で移動させた。今週は更に多くの機体が加わる。

 

各機は海兵隊戦闘攻撃飛行隊225「ヴァイキングス」と海兵隊戦闘攻撃飛行隊211「ウェイクアイランドアヴェンジャーズ」の機体で、ともにユマ海兵隊航空基地(アリゾナ)に駐屯している。さらにユマとニューリバー(ノースカロライナ)の海兵隊作戦試験評価飛行隊1の所属機も加わる。海兵隊はF/A-18ホーネットおよびAV-8BハリアーをF-35Bに交替させつつある。

 

とは言えトリポリにF-35B十数機を搭載し運用するのは記録更新や写真広報のためではない。同艦には500名の海兵隊員も乗る。関係者はUSNI Newsに今回のMAG-13訓練をトリポリで展開するのは大型艦と海兵隊機材により統合MAG(海兵航空集団)作戦を展開する一歩に過ぎないと語り、これまでにない動きとする。

 

「これまで20年にわたり展開されたのとは別の形になる。従来は飛行隊が中東に展開し各種任務にあたってきた」と説明するのはMAG-13司令チャド・ヴォーン大佐Col. Chad A. Vaughnだ。同集団もユマに本拠を置く。

 

今日の敵勢力は将来にわたり、特に空で米軍と対峙してきた敵を上回る存在になる。このため従来を上回る規模の共同作戦が必要となると関係者が認識している。

 

「未経験の技量のセットが必要となる」とヴォーン大佐はトリポリ艦上で艦長ジョエル・ラング大佐Capt. Joel Langに述べている。

 

昨年10月MAG-13は隷下飛行隊を砂漠統合現場演習でカリフォーニアのトゥウェンティナインパームズにある海兵隊航空地上戦闘センターに派遣した。「MAG司令部にとっても地上から戦闘の仕方を学ぶ機会になった」「可能な限り多くのF-35を投入し、同時にMAGパイロットと司令部が海上から戦闘を展開する方法を同時に訓練する機会になった」(ヴォーン)

 

海兵戦闘攻撃飛行隊(VMFA)211のF-35BライトニングIIがUSSトリポリ(LHA-2)に着艦した。April 1, 2022. US Navy Photo

 

トリポリの艦名をつけた以前の小型ヘリコプター強襲揚陸艦と同様にアメリカ級トリポリにはウェルデッキはないが、海兵隊航空作戦を想定した設計になっている。同艦にはLHD級大型強襲揚陸艦を上回る大型燃料貯蔵施設があり兵装庫も拡大しているほか、指揮統制通信機能も充実している。

 

「統合部隊司令やMEF指揮官が認可してくれれば本艦にもっと多くの機体を搭載できる。本艦は航空作戦にぴったりだ」(ウォーン)

 

「ライトニング空母」構想は海兵隊やF-35事業推進室が提唱してきた。「MAGの訓練で最適な機会になっている」とヴォーンは語り、VMX-1の作戦評価官がトリポリ艦上に今週加わり、F-35B運用のフィードバックを行う。

 

構想には前史がある。2003年3月のイラク侵攻で強襲揚陸艦USSバターン(LHD-5)、USSボンノムリシャール(LHD-6)に「ハリアー空母」の名がつき、AV-8Bハリアー攻撃機2個飛行隊を展開し、任務部隊51に提供した。米軍連合軍はバグダッドを目指していた。各艦はハリアー分遣隊を搭載したものの、海兵隊ヘリコプターが大勢を占めていた。

 

今回の海上演習には六ヶ月の準備期間が必要だった。ラング艦長は2020年9月よりトリポリ艦長で、今回の演習を乗員幕僚合わせ1,100名に実戦の予行となるよう事前にMAG-13と打ち合わせた。最大何機まで運用可能かを試すだけでなく、運用面で最適な機数上限を探る目的もある。

 

「どれが一番良い結果を出すのか確かめるべく、作戦環境を再現する。最も効率の高い方法を探る。海上部隊として威力を最大にする最適化でチームはやる気いっぱいです」(ラング)

 

強襲揚陸艦USSトリポリ(LHA-7)が太平洋を航行し海兵隊のライトニング空母構想の実証にあたった。 April 2, 2022. US Navy Photo

 

演習は一週間にわたり展開し、4月7日終了するが、MAG海兵隊員とトリポリ乗員は発艦、回収、移動、などF-35Bを艦上であらゆる面で試す。「MAGとして戦闘展開方法を学びつつあり、艦上からどう展開するのがいいのか、艦上で機体が多すぎて動きがとれなくなくなる事態を回避する方法を学んでいく」とヴォーン大佐は説明している。

 

ただしライトニング空母構想には疑問点も残る。F-35Bへの燃料補給が限定されること、E-2Dアドバンストホークアイのような早期警戒機を搭載していないことだ。USNI Newsでは今年後半に規模を拡大したテストが実施されると聞いている。

 

ヴォーンがこう付け加えた。「目標は海軍、海兵隊のチームがこの構想を採択することです。運用方法は確立ずみです」■

 

Marines Load Record 16 F-35Bs Aboard USS Tripoli Test of 'Lightning Carrier' Concept - USNI News

By: Gidget Fuentes

April 5, 2022 1:14 PM • Updated: April 5, 2022 3:17 PM



ライトニング空母構想は日本にも参考となりますね。しかし、強襲揚陸艦になんでも期待すればモンスターのような大型艦になり、結局正規空母と同じになってしまいます。ここは統合作戦として空軍機材で早期警戒任務にあたらせるとか、知恵の使い所ではないでしょうか。海軍だけ海兵隊だけで作戦が実施しにくくなっているのでしょうね。なお、アメリカ級は排水量5万トンとなかなかの艦容です。


2022年4月5日火曜日

なぜウクライナへF-16やF-15を供与しないのか----戦闘機よりも防空装備を提供したほうが高効果低リスクとなる理由。

 



クライナ空軍は公式ツイッターでF-16ファイティングファルコンやF-15イーグルのような西側機材をNATOに求めている。説明文にはウクライナ空軍にこうした機材がなければロシア空軍に対し優位に立てないとある。



ウクライナはパイロットを養成すれば米製ジェット戦闘機で実戦に参加できるとし、数週間の訓練で十分とするが、F-15やF-16で戦闘に臨むためには普通の訓練では十分とはいえない。新機材のコックピットで単なる操縦なら簡単だろうが、戦闘となると話は別だ。米国のパイロットでも他国より長い訓練をしているとはいえ生き残れる保証はない。まして戦闘に勝てるかは不明だ。


ウクライナ空軍にはあいにくだが、この要望は却下されそうだ。


ウクライナ空軍は自国が戦場となり、勝ち目がないといわれながら雄々しく戦い、領空を死守している。そこに米製第4世代高性能機材が加わればロシア軍を押し戻せると見る向きは多い。ことにロシア軍は東部のドンバスに中心を置き、部隊を移動させている。


だが真実は、ウクライナに多用途で実績あるF-16や航空優勢でチャンピオンのF-15を供与するとは一般で言うような簡単なことではない。リスクを考えればもっと低リスクの支援策より大きな恩恵が生まれるかといえばそうでもない。


ウクライナがF-15やF-16を要求する理由とはRed Flag - Changing With The Times > Nellis Air Force Base > Article Display米空軍の第64、65アグレッサー部隊のF-15イーグル、F-16ファイティングファルコン (U.S. Air Force photo by Master Sgt. Kevin Gruenwald)


ウクライナが西側に接近してきたとはいえ、軍事では多くがソ連時代の装備品で、空軍も例外ではない。F-15、F-16ともに1970年代から供用されているが、ウクライナではSu-27やMiG-29を運行している。ポーランドのMiG-29をウクライナへ融通する案が浮上したのは、ウクライナパイロットにも機種変換が一番容易な機種のためだ。


単純に就航開始時で比較すれば、ウクライナ機材は米ファイティングファルコンやイーグルより新しく、MiG-29がロシアで供用開始したのは1982年、Su-27は1985年なのに対し、F-16が1978年、F-15は1976年だ。


米空軍第114戦闘航空団のF-15CがスホイSu-27フランカーの機列の横を通過した。クリアスカイ18演習でウクライナのスタロコスティアンティニフ基地にカリフォーニアから移動した。 (U.S. Air National Guard photo by Tech. Sgt. Charles Vaughn)


しかしこの間、アメリカと同盟国は、第4世代戦闘機プラットフォームを更新し、極めて優秀な現代機へ変貌させてきた。こうした機体は、新型ステルス機のレーダー探知を回避する能力はないものの、激しい戦闘環境でも高い成果を上げる能力がある。


ロシア機も同様の改良が施し、今回の紛争ではウクライナの飛行士よりも明らかに優位に立っている。そのため、ウクライナは西側戦闘機の性能で、ウクライナ領空で優位性を得られると考えているのだ。


NATOの戦闘機が威力を発揮すると考えてよい理由がある。F-16は軽量な制空戦闘機であったが、その後マルチロールプラットフォームとして大きな価値を発揮している。F-15は素晴らしい評価を得ており、イーグルは現時代の(そしておそらく他の時代の)最も強力な制空権を発揮する戦闘機である。F-15は104戦全勝で喪失ゼロとの戦績を残しており、F-15のようなドッグファイトを得意とする戦闘機は他に存在しない。


ウクライナのパイロットはソ連時代の戦闘機に慣れているため、戦闘でF-16やF-15を効果的に使えるようになるには、慣れる必要がある。ウクライナは、2〜3週間で移行可能と言っているが、その可能性は極めて低い。だが、同国の厳しい状況を考えれば、実現可能かもしれない。


米空軍には戦闘機パイロット向けF-16ファイティング・ファルコンの操縦訓練コースがある。ただし、このコースの所要期間は6週間以上で、ウクライナのパイロットが訓練を短縮できる可能性はあるが、短期コース終了後に新型機の高性能を発揮できる可能性は低いだろう。


しかし、ウクライナは今回話題に上る航空機を運用したことがない。数機をウクライナの滑走路に着陸させ鍵を渡しても、戦闘で飛ばすには十分ではないだろう。実際、航空機をウクライナに持ち込むのは簡単なことだ。


米空軍は各機に整備要員25名を投入している

機種で異なるが、F-16のような低コストで運用可能な機体でも、運用に膨大なメンテナンスが必要で飛行時間1に対し整備時間16がかかる。


高度なまで専門化した航空機整備士は、修理はもちろんのこと、メンテナンスでも専門的な訓練を必要とする。


F-15Eストライク・イーグルやF-16Cファイティング・ファルコンを運用する米空軍の第332航空遠征隊によれば、航空機1機に対して25人の整備員が必要で、もちろん、より少ない人員でも維持可能だが、ハードな戦闘飛行では、通常の訓練飛行より多くの整備や修理が必要になることは間違いない。


これには、飛行前、飛行中、飛行後の安全確認(飛行中とは、任務続行のために出発する前に再武装するために着陸すること)を行う個人と、「バック・ショップ」と呼ばれる専門グループも含まれる。


これらの「バックショップ」整備士は、武器、誘導装置、推進装置の整備や修理など、より特殊な技術に特化する。こうした仕事は、空戦を継続するために不可欠だ。ソケットの位置を間違えたり、パネルの固定が甘かったりすると、致命的な墜落事故につながることもある


戦闘機を戦闘に飛ばすということは、能力の限界に挑戦し続けるということであり、機体やその他部品に多大なストレスを与えることを意味する。このような戦闘機を飛行状態に保つには、多大な訓練が必要である。空軍の戦術機整備士になるには、テキサス州ウィチタフォールズにあるシェパード空軍基地で5種類の上級訓練コースを修了しなければならない。基礎訓練に加え、各職務に特化した訓練を約18カ月かけ修了した後、各隊に配属され、その業務に完全に熟達するまでOJT(On-the-Job Training)が続けられる。


高度な訓練を受けた整備士は、航空機整備に必要な資材、特殊機器と大規模な物流事業に依存することになる。そのためには、特殊機材を置く場所から、欧米製部品をウクライナの滑走路に定期的に輸送する手段まで、ウクライナにまだない新しいインフラが必要となる。目標はNATO軍をウクライナに派遣せず、これらすべてを達成することである。

 仮にウクライナが数週間でF-16やF-15を使いこなせるまでパイロットを訓練できても、その間に機体整備員を十分に訓練できないだろう。しかし、仮にそれができても、武器に関して別の深刻なハードルに直面することになる。


しかし、アメリカのF-15やF-16などの戦闘機と、ウクライナのソ連時代の戦闘機とでは、搭載兵装がまったく違う。ロシアのR-27空対空ミサイルをF-16に装着して、引き金を引けばうまくいくというものではない。最新の空対空ミサイルや空対地ミサイル、さらには最新の爆弾は複雑な技術を利用しており、専用の取り付け金具と特別な訓練を受けた技術者が必要だ。航空機兵装システム専門家の養成にも綿密な訓練(空軍によると45〜86日分)が必要だ。


もちろん、ウクライナにも兵器技術者がいるので、機体の武装の仕方などについては時間はかからないかもしれないが、一朝一夕にできることではないのは確かだ。


しかし、同様に重要なのは、ウクライナが戦闘で真価を発揮するため、各機に専用弾薬を安定供給する必要があることだ。ウクライナは兵器について外部から供給を受けているため、このインフラ整備はすでに行われているが、ロシア軍が供給ラインを狙えば、ウクライナに兵器や部品の流れを維持するのはかなり困難になろう。


50th EARS refuel F-16s

(U.S. Air Force photo)


S-400 Triumpfのようなロシア製高性能防空システムの運用範囲は約250マイルで、ウクライナ戦闘機が領空を制圧するためには、ロシア国内の防空システム、さらにはベラルーシと交戦する必要が出てくる。実際にウクライナ当局者やパイロットが戦闘機の要求の一部として主張している。そうでなければ、ロシア領に近づきすぎたウクライナのジェット機は高性能防空装備で撃墜され続けることになる。


しかし、ウクライナがたF-15やF-16をロシアに送り込む必要がある最大の理由は、ロシアの防空システムではない。最大の理由は、ロシアによる空爆のほとんどは、ロシア領空を離れない航空機が行われ行っているからだ。



NORAD, Russian Air Force make history in combined efforts > Joint Base  Elmendorf-Richardson > News Articles

ロシアの Su-27 (U.S. Army photo by Maj. Michael Humphreys)


ウクライナはロシア国境に接しているため、ロシア軍は国境を越えてウクライナにミサイルを発射することなく、1日に数百回の出撃が可能である。同様に、ロシアの統合防空システムは、地球の裏側まで到達するため、AWACS(空中早期警戒管制システム)に大きく依存している。ウクライナのF-15やF-16は、ロシアの空爆を阻止しようとすれば、空爆を支援する戦闘機や爆撃機、AWACSと交戦するためロシア領空内に飛来せざるを得なくなる。


このことは、航空機だけでなく、その運用に必要な訓練や装備、弾薬をウクライナに供給するNATO諸国にとって問題となる。ウクライナのF-15やF-16がロシア領空に入れば、西側諸国が防衛的な支援をしているというよりも、ロシアに攻勢をかけるためウクライナに装備を供与したように見えるのは間違いない。ロシアに攻め入ることで、ロシア政府はウクライナを支援する施設やポーランドなどの物流供給ラインを攻撃し、米国製戦闘機による脅威を中和する反応に出る可能性があるため、紛争がウクライナの国境を越え拡大する可能性が劇的に高くなる。


ウクライナは更に戦闘機を喪失し、戦いは続く

NATOがウクライナにF-15やF-16を提供しても、ロシアの圧倒的な数的優位を相殺できる可能性はないだろう。ロシアは戦闘機を約1500機保有しており、世界第2位の空軍力を誇っている。ウクライナは開戦当初100機足らずだったが、今では50機近くになっている。ウクライナに西側の戦闘機を数十機提供しても(可能性は極めて低いが)、互角に渡り合うには十分ではないだろう。


その代わり、ウクライナのパイロットは、ロシアのパイロットと戦闘に入ることになる。そして、戦闘機を滑走路に着陸させ、ミサイル攻撃を繰り返し、数週間の訓練しか受けていない技術者や整備士が、戦闘機を極めて迅速に戦場に戻し、また同じことを圧倒的な勝算のもとに行わなければならない。これでは、戦闘機多数が墜落し、パイロット多数が死んだり、負傷したり、捕らえられたりすることになる。


ウクライナの飛行士たちが、少ない人数で大きな成果を上げる能力を発揮したように、事態が非常にうまくいったとしても、この戦闘機の流入(あわせて必要な訓練、装備、資材、弾薬のすべて)は、ロシア軍を自国領土に押し戻すだけの効果はない。ロシアはウクライナで15万人以上の兵力を運用している。


つまり、戦闘機提供はウクライナの国境を越えて紛争が拡大させる可能性はあるが、それだけでウクライナ国内の戦闘を終わらせることができるとも思えない。


ウクライナ防空豚が撃墜したロシアのSu-35は大4世代機として最先端の機材の一つ。(Ukrainian Ministry of Defense)


多くの指摘があるが、戦闘機を提供するよりも、防空システムを使ってウクライナ領空をコントロールするほうが、費用対効果は格段に高い。防空システムにはもちろん訓練やロジスティックスも必要だが、一部NATO加盟国が運用中のソ連のS-300のように、供用が長く続くシステムをウクライナに供給すれば、追加訓練や設備インフラがなくてもロシアの航空機や巡航ミサイルとも交戦できる。


これらのシステムは、戦闘機のようにロシア国内のロシア航空機と交戦はできないだろうが、より粘り強いオプションである理由の一つである。もちろん、以前ウクライナにMiG-29を送朗とした際と同様に、防空システム(と、それが発射する弾薬)の供給が限られていることが懸念される。

 最終的にウクライナがF-15やF-16を要求するのは、たとえ運用に苦労しても、ないよりはあったほうがいいに決まっているからだろう。しかし、これらの戦闘機がウクライナ防空に提供できる価値はかなり限られており、ウクライナ内外のロシアの防空網に狙われ、数で大きく劣る中で地上目標を空爆で攻撃しても、最も効果的で実行可能な支援方法とはいえないだろう。


ウクライナには多くの支援が必要だが、目的は紛争の拡大ではなく、ウクライナの人々を守ることとすべきだ。F-15やF-16をウクライナに提供すれば確かに助けになるが、ほかの選択肢と比較した場合、コストやリスクに見合う価値はない。■


Why can't NATO give Ukraine F-15s or F-16s? It's about more than pilot training - Sandboxx

Alex Hollings | April 4, 2022


Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.

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KC-46がIOC獲得前にヨーロッパで空中給油業務を展開中している。

 


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KC-46Aペガサス空中給油機がマコーネル空軍基地(カンザス州)を離陸し、スペインのモロン航空基地に向かった。 (US Air Force photo by Amn. William Lunn)


オープンソース情報では、今週ポーランドとドイツ上空でKC-46給油機の飛行が見つかっており、空軍当局は「実戦作戦任務」をサポートしているのを認めた。


こ1週間、ボーイングKC-46がドイツとポーランド上空でNATO東部戦線の強化にあたるアメリカの戦闘機や爆撃機へ燃料補給している。



 航空機動軍団(AMC)司令官のマイク・ミニハン大将Gen. Mike Minihanは3月10日、KC-46計4機の配備を承認していた。

 スペインのモロン空軍基地に220人の飛行士がいるとAMC報道官クリス・ハーバート大尉Capt. Chris HerbertがBreaking Defenseに確認した。

 KC-46は運用開始を正式宣言していないため、今回の「採用コンセプト演習」は、2023年の実戦配備に向けた準備を確実にするのが目的だ。

 ハーバート少佐は、「機材と人員はAMCの権限下に置かれている」としたが、「必要に応じ、広域での作戦任務を支援する」という。

 AMC報道官のダミアン・ピッカート大佐Col. Damien Pickartは、KC-46は在ヨーロッパ米空軍(USAFE)で東ヨーロッパでの作戦給油任務にあたっていると明らかにした。

 ピッカート大佐は、KC-46はNATO機やA-10など特定の米軍機への給油に制限されていると指摘した。しかし、TRANSCOM司令官のジャクリーン・ヴァン・オヴォスト大将 Gen. Jacqueline Van Ovostが木曜日に発表したように、85%以上の米軍機(最近ではステルス機のF-35とF-22)への燃料補給が認められている。

 AMCは、KC-46の任務遂行の詳細を明らかにしなかったが、オープンソースの飛行追跡ソフトウェアを使う航空機スポッターが発見している。

 ヨーロッパ上空の軍用機の飛行を追跡してきた元米空軍情報将校のリック・フランコーナRick Franconaは、3月13日にヨーロッパに向かうKC-46を最初に発見し、3月28日には再びタンカー活動をツイートし、KC-46がヨーロッパで最初の作戦給油ミッションを行っているのを示した。

 翌日、フランコーナは、コールサイン「PICO40」のKC-46がドイツ上空でB-52爆撃機に給油する様子をオープンソースの飛行情報としてツイートしている。

 この時点で、飛行機スポッター数名がKC-46の飛行活動をキャッチしていた。3月30日、あるスポッターはポーランド上空を旋回する2機のKC-46(呼称:PICO60、PICO61)の飛行経路をツイートした。

 今回の演習に参加したKC-46と飛行士は、カンザス州マコーネル空軍基地の第22空中給油隊と第931空中給油隊、ニューハンプシャー州ピーズ州軍航空隊基地の第157空中給油隊、ノースカロライナ州シーモア・ジョンソン空軍基地の第916空中給油隊で構成。

「KC-46Aは現在、ほとんどの任務遂行が承認されており、演習は完全な運用能力に向けた新たなステップとなります」とハーバートは述べた。「また、給油能力を高め、KC-135とKC-10を他の作戦任務のために解放できる」

 KC-46は、米欧州司令部やUSAFEから要請されたものではないと、ピカートは付け加えた。

 KC-46のヨーロッパでの運用は、コスト超過と長期のスケジュール遅延に悩まされつつ厳しい開発期間を経てきたタンカーへの信頼の表れである。

 同機プログラムは、開発期間中に合計54億ドルの税引き前費用を計上した。これは、ボーイング社が2011年にKC-46開発で獲得した49億ドルの契約よりも多い金だ。固定価格契約のため、ボーイング社はコスト超過相当を支払うことが確定している。

 一方で、給油中に受信機のビデオと赤外線画像をブームオペレーターに提供するリモートビジョンシステムの問題など、重大な欠陥数点の解決に取り組み続けている。

 空軍トップは、問題が解決されるまでKC-46の完全な運用開始を宣言しないと強調し、早くても2023年までかかるという。しかし、テストや演習で実証が続くにつれ、空軍は同機の運用を徐々に拡大している。

 「2019年1月以来、KC-46Aは米国内だけでなく、太平洋、中東、欧州の海外でも日常的に任務を遂行しています」「今回のヨーロッパへのKC-46Aの投入は、同機の完全運用能力に向け前進する中で重要なステップを意味します」(ハーバート)■


EXCLUSIVE: US KC-46 tankers operating on NATO's eastern front - Breaking Defense

By   VALERIE INSINNA

on April 01, 2022 at 3:30 PM


2022年4月4日月曜日

T-72などNATO加盟国に残るソ連製装備品がウクライナへ譲渡される。中でもポーランドが注目される。

 UKRAINE-RUSSIA-CRISIS-DEFENCE-T72, Tank, T-72, Russia, Invasion

AFP VIA GETTY IMAGES

 

シアとの戦闘が新たな局面を迎える中、NATO諸国に残るソ連時代のT-72戦車のウクライナへの譲渡を米国が仲介するとの報道が出てきた。

 ニューヨーク・タイムズ紙が最初に報じた。ウクライナ軍はソ連崩壊後、T-72を受け継いだが、T-72と並びT-64やT-80を好んで使ってきた。これらの戦車は、ロシア軍自身のT-72や他のタイプの戦車と対決してきた。

 この種の報告は今回が初めてではなく、ポーランドからMiG-29の譲渡が噂され、最終的にご破算となった。

 

PHOTO CREDIT SHOULD READ VASILY MAXIMOV/AFP VIA GETTY IMAGES

T-72は両軍が多用している。写真は親ロシア分離勢力の車両. 

 

 報道が正確なら、ウクライナ向け武器供与がエスカレートしたのは間違いない。主力戦車は列車やトレーラーで、あるいは自走で簡単に国境を越えることができる。

 さらに重要なのは、NATOが保有するT-72の数が、多いことだ。ポーランド、ブルガリア、スロバキアにはMiG-29が残っており、これらの空軍の能力を維持するための補充は大変なことである。しかし、NATOのT-72の多くは予備に回されているか、より高性能ではるかに近代的な西側戦車に置き換えずみだ。

 

USMC

ブルガリア軍の T-72s. 

 

 ブルガリア、チェコ共和国、ハンガリー、ポーランド、スロバキアはT-72戦車を運用中、あるいは貯蔵している。

 ほとんどは輸出モデルT-72Mの改良型で、ロシア地上軍のT-72B3ほどの大幅近代化は受けていない。ロシア軍の最新型は、旧式輸出型に比べ装甲、火器管制、自己防護システムなどが改善されている。しかし、破壊されたロシア軍の戦車を示す報道写真が急増しており、ウクライナ軍はロシア軍の装甲を破壊する能力を十分に持っていることが明らかだ。うち何台が戦車同士の戦果かは不明だ。

 ポーランドが供給元となり得る。ポーランド軍には2020年現在、400両近いT-72M1があり、すべて近代化改修済みだ。並行して、200両を超えるポーランドのPT-91トワーディ戦車もある。PT-91は、オリジナルのT-72より改良されたデジタル火器管制システム、独自の爆発反応装甲(ERA)、改良型パワープラントが特徴。PT-91の一部は新造され、その他はT-72M1からのアップグレードである。

 

POLISH MOD

ボーランドのT-72

 

 ポーランドは譲渡する戦車の穴を埋める代替戦車も用意している。同国は249両のレオパルド2戦車(そのほとんどが2A4および2A5型)を保有するだけでなく、米国設計のM1A2SEPv3戦車250両を発注中で、今年中に第一陣が到着する。

 ブルガリア、チェコ、スロバキアは、T-72Mに若干の改良を加え運用している。しかし、いずれも100台以上は稼働しておらず、ブルガリアのみ250台を貯蔵していると言われており、かなりの予備となっている。しかし、チェコ共和国は4月1日に発表した取引で、旧東ドイツ軍のBMP-1を改良した歩兵戦闘車Pbv-501を56台ウクライナに送ることにしている。

 

BRFBLAKE/WIKICOMMONS

チェコの改良型T-72

 

 この三国はポーランドと異なり、エイブラムス、レオパルド、チャレンジャーといった西側諸国の近代化戦車を購入していない。しかし、NATOの指導者たちは、ウクライナに旧型戦車を提供する見返りに新型戦車を提供するという、噂されているMiG-29とF-16の取引のような移転となり、甘受する可能性がある。

 ハンガリーはポーランド同様に、T-72M1約130両の非稼働状態で、34機が現役となっている。同時に、ソ連時代装備の一部を置き換えるために、ドイツから44両のレオパルド2A7の納入を待っており、予備と代替の両方が手元にある。しかし、そうした条件にもかかわらず、ハンガリーのオルバン Viktor Orban首相は他のNATO加盟国よりもモスクワとの関係が温厚であるため、譲渡の可能性は低い。

 T-72は、入手しやすさに加え、広く使われていることとメンテナンスのしやすさから、ウクライナに最適な選択と言える。比較的単純な設計のため、高度な訓練なくても戦場でサポートが可能で、ロシアは多くのT-72を放棄しウクライナが捕獲している。損傷しているものも多いが、スペアパーツ供給源として十分だ。また、ウクライナはT-72をアップグレードした経験も豊富だ。このように、容易に維持できる戦力の強化は非常に論理的な動きに思える。

 戦車がどこから来るか、どのようにウクライナの手に渡るかは別として、新規に加わる装甲車両は南部と東部の領土奪還に向けた最終的な反撃の基幹となり、ロシアの攻撃を鈍らせることができよう。■

 

 

Soviet-Era T-72 Tanks To Be Transferred To Ukraine From NATO Countries: Reports

Reports state that a U.S.-brokered transfer of T-72 tanks to Ukraine from NATO countries’ Soviet-era stocks is imminent. 

BY STETSON PAYNE APRIL 3, 2022

 


公開待たれるB-21レイダーと並行し、無人機版の開発構想を空軍長官が明らかにした.....

 

USAF/MODIFIED

 

米空軍長官がB-21と同様の航続距離を有する完全無人機版の構想を明らかにした

 

空軍は、B-21レイダーを補完する将来の無人爆撃機開発の可能性を模索しており、数年内で作業開始の可能性がある。このプロジェクトは、現在構想中の米空軍のスカイボーグ構想、DARPA国防高等プロジェクト計画局のAir Combat Evolutionプログラム、オーストラリアのAirpower Teaming System 「忠実なるウィングマン」無人機プロジェクトがめざす最先端の自律型無人機および人工知能システムに関する研究を活用する。

 

 

フランク・ケンドール空軍長官は、先週開催された空軍協会(AFA)シンポジウムの基調講演で、無人爆撃機のコンセプトを明らかにした。また、次世代航空優勢機材(NGAD)プログラムに無人戦闘機(UCAV)が存在していると強調した。ケンドール長官は、NGADの無人機版の開発状況は、「空軍の戦術的航空計画の一部とするには...時期尚早」と述べた。長官が言及した無人システムが、2021年12月に存在を明らかにされた機密無人機プロジェクトに関連しているかは不明だ。

 

NGADは「有人型と、低価格自律型無人戦闘機を組み合わせ、センサー、武器、その他のミッション機器を分散使用する」とケンドール長官は説明し、さらに、「システム多数で構成するシステム」コンセプトであり、個々の機材に焦点を当てる取り組みではない、と発言した。

 

ケンドール長官は、無人爆撃機コンセプトについて「まだ未完成」とし、「熟考が必要」と説明し、基本コンセプトを固める段階にあると述べた。

 

しかし、長官は、B-21は当初から任意有人飛行が可能な設計で、無人機版を言及しているわけではないと明らかにした。長官は、少なくとも現時点の無人爆撃機の基本想定は、レイダー同等の航続距離を持つとしながら、「ペイロードは未定」とした。

 

これと別に、B-21プログラムを担当する空軍の迅速戦力整備室Rapid Capabilities Office(RCO)の責任者ランドール・ウォルデンRandall Waldenは、Air Force Magazineに対し、ケンドール長官の無人爆撃機コンセプトは、レイダー同様の「航続距離、耐久性、スピード」が必須とした。

 

特に重要なのは、無人爆撃機を「作戦上価値があり、費用対効果が高い」機体にすることだとケンドール長官は発言した。2016年、空軍はまず100機のB-21の購入予算として約800億ドル、2022年ドルで940億ドルと見積もったが、この数字には開発費や運用・保守費は含まれていない。昨年、ブルームバーグは、100機購入し、2050年まで運用すると約2030億ドルかかるとの試算を報じた。だが試算は、長官が進めたい45機購入計画は考慮していないようだ。

 

「B-21の機体単価を半分以下にしたい。4分の1か8分の1にしたい」と、ケンドール長官は記者団に語った。「現時点で目標の最低ラインは、現在の価格帯の半分だ」と付け加えた。

 

「兵器システムと費用について豊かな経験がある」 空軍長官は、現在のコストの2分の1を目標とした理由を尋ねられて、このように述べた。2019年、2011年から2017年にかけて国防次官(調達・技術・兵站担当)を務めた後で、ケンドールは、B-21のスケジュールとコストに疑問を呈していた。

 

あらゆる観点でB-21は、先進的航空機として、予想コストとスケジュールを可能な限り守る模範的な調達プログラムとなっている。現在、生産段階の6機のうち1機の初期試作機は、初飛行に向けた校正テストに入っている。

 

RCOのウォルデンはAir Force Magazine取材に応じ、レイダーの推定単価は、2010年に中止となった次世代爆撃機プログラムの想定の約半分である明らかにした。

 

とはいえ、B-21より能力が多少劣っても、補完効果があり、ステルスの低コスト無人爆撃機に空軍が興味を持たないはずはない。このような航空機は、有人B-21と同時運用し、追加攻撃能力を提供したり、純粋な無人部隊として重要な効果を実現できる。

 

RCOのウォルデンは、「有人システムほど高価でない無人システムがリスクを多く負うことになる」とAir Force Magazineに説明し、B-21の前方を飛び「攻撃能力を拡張」できると付け加えた。同時に、将来のハイエンド紛争シナリオでステルスのレイダーの生存性を空軍がどう考えているかがわかる。

 

無人爆撃機が通常兵器のみの武装なら、ステルス性の高い侵攻機材が必要となるミッション多数に活用される可能性がある。これにより、空軍は、核三本柱の爆撃機部分となるB-21の総数を削減しながら、非抑止的任務に利用可能な高性能機材数を確保できる。

 

無人爆撃機は多機能機になるかもしれない。空軍は過去に、B-21のような機材を、半自動の「忠実なるウイングマン」無人機と協調運用する大型空対空プラットフォームとして使用する可能性を提起していた。強力な統合防空網を突破し、敵陣深くにステルスで侵入できる爆撃機サイズの無人機は、情報収集、監視、偵察(ISR)機材、あるいは電子戦機や通信中継機などに利用できる可能性を十分に備えている。レイダー自体も、多用途に投入されるという予想がある。

 

無人爆撃機に、スカイボーグとAir Combat Evolution (ACE) の作業を活用できるという指摘から、ケンドール長官が本当に注目しているのは、爆撃機版の「システム多数で構成するシステム」としてのNGADかも知れない。Skyborgの一部として無人機が開発されている一方で、ACEやその他の取り組みもあり、すべて、各種の有人・無人機用の拡張性のあるシステムと基礎技術開発に重きを置くものだ。

 

また、「各プログラムが具体的にどう移行していくかは、未整理だ」「しかし、明らかに、この方向に進むことを決めた際の全体像の一部だ」(ケンドール長官)

 

オーストラリアのATSプログラムも一部であるとするケンドール長官は、無人爆撃機が同盟国に輸出できるかとの疑問を提起している、B-21では極めて難しい。昨年、今後の太平洋地域における安全保障環境で、中国の脅威が増大することから、オーストラリアがレイダーを取得するべきという、議論が一部に出たのを思い出すと、二重に興味深い。

 

無人爆撃機コンセプトは進化し続けているが、ケンドール長官は、2024年予算から開発が具体化されることを望むと述べた。このプロジェクトは高度にまで機密案件なので、新情報が出るかは不明だ。

 

いずれにせよ、空軍が新無人化コンセプトを模索していることをケンドール自らが明らかにしたのは、重要な進展であり、空軍の爆撃機部隊の今後の姿に大きな影響を与える可能性がある。■

 

 

Stealth Bomber Drone To Complement The B-21 Raider Could Be Pushed Into Development Soon

The Secretary of the Air Force outlined a vision for a strictly unmanned aircraft with the same range as the B-21 stealth bomber.

BY JOSEPH TREVITHICK MARCH 8, 2022


よくわからないのですが、有人、無人機の組み合わせ用の「機能省略形」の機体になるのでしょうか。消耗覚悟の無人機ではないようですが、もともとLRS-Bとして構想されているのがB-21であり、有人爆撃機型以外のモデルを指しているのかもしれません。B-21は派生型含め相当数の調達事業になりそうですね。