2015年8月9日日曜日

上院軍事委員会で中国への態度を問われたリチャードソン大将


どうも後日の歴史家はオバマ政権が明確な態度を示さなかったことが西太平洋のバランスを中国有利にした原因だと批判しそうな気がします。中国の既成事実の積み上げに対して米、および同盟国側の抑止力が全く働いていないとの愕然たる事実があります。しかしそれはそれとしても言葉と言葉、知性と理性が真っ向勝負する上院の討論の雰囲気にはスリルを覚えざるを得ません。なおリチャードソン大将は無事上院審査を通過し、海軍作戦部長に就任できるようになりました。

Adm. Richardson Dodges SASC Questions On China

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 30, 2015 at 2:35 PM

Chinese artificial island landing strip
CAPITOL HILL: ジョン・リチャードソン海軍大将は上院審査を本日乗り切った。しかし大きな2つの問題が浮上し、政権と議会共和党議員の間に中国への見方で意見対立が深まっていることをあらためて示した。
リチャードソン大将は潜水艦勤務出身で次期海軍作戦部長に推挙されているが、上院軍事委員会メンバー各議員からの難しい質問を手際よく回避していた。米中核協力は中国の軍拡に貢献しているか、米国は中国による南シナ海領有にどう立ち向かうべきか等々で、リチャードソンは中国と米議会からの圧力の中いつまでも逃げの答弁はできなくなる。
トム・コットン上院議員は単刀直入に「提督、中国は敵ですか」と尋ねた。
Adm. John RichardsonAdm. John Richardson
これに対しリチャードソンは「中国は複雑な構造の国家です。実行している内容の多くは自国国民自身に敵対的な内容です」と述べ、南シナ海で進めている人工島の問題に言及している。
上院議員は、ではなぜ核兵器を運用する艦隊の編成を我々が助けなければならないのか、と聞いた。.
米政府にはレーガン時代から『1.2,3合意』と呼ぶ中国との民間核共同開発があり、当時は中国をロシアへの対抗勢力として利用しようとしていたのだった。この合意が更改時期に来ているが、コットン議員と保守派マーク・ルビオ議員が反対している。民生原子炉が中国へ引き渡されれば軍の手に落ちる、というのが理由だ。カーティス・ライトのAP-1000型ポンプが実際にウェスティングハウスの中国側提携先に手渡されている。本来はウェスティングハウス製の原子炉冷却用のポンプがわたった提携先は中国の新型原子力弾道ミサイル潜水艦のポンプを製造している。原子力潜水艦でポンプが一番大きな騒音を発生するので、ポンプの性能が向上すればそれだけ潜水艦の探知が困難になる。”
「この点については注意深く観察しています」とリチャードソンは原子力潜水艦畑出身でもあり、回答している。詳細は極めて技術的かつ極秘内容だと提督は続けたが、海軍は民間の原子力開発を「注意深く」観察している。「合意を廃棄するよりも、更新した新規合意のほうがましだ」という。
コットン議員が更に追求した。「PLA海軍が民間向け原子力技術を海軍用のシステムに流用するとの疑いあるいは事実確認があってもそうなのか」
「自信を持って合意がないままよりあったほうがましだと言えます」
提督が書面で準備した答弁書はもう少し詳細に触れている。「リスク(民生技術が軍用に転用されること)が全くないと言い切れないが、米中原子力エネルギー法のセクション123合意では米国が中国の原子力施設に立ち入ることを認めており、核の保安と安全でベスト・プラクティスを尊重する考え方の醸成を認めるほか、中国の不拡散政策が国際社会の非拡散方針と首尾一貫していることを確実にしている」 また米国製原子炉を世界で一番エネルギーが不足している国に売りつけることには魅力がある。
本日午前の聴聞会と書面回答の両方でリチャードソン大将は中国が進める南シナ海での土木事業は「安定を損なう効果」があるとする。ただし現政権がこの状況にどう対応しようとしているかについて提督は明確にせず、委員会は提督に明確に述べるよう求めたがやはり変わらなかった。
ホワイトハウスと太平洋軍の間に重要な問題で意見の不一致があるとの噂がある。つまり新規中国基地の12カイリ以内で飛行あるいは航行を実施すべきかどうかという問題だ。中国の主張は建設中の基地は永続的な施設であり、各島に居住民があるので周囲の海域は中国の領海かつ領空で12カイリすべての方向に広がるというものだ。米国は島は全て人工建造物であり、一時的な建造物にすぎない。つまり国際法上では他国の海上及び上空の通行権への影響は全く有さないとする。 中国は各建造物の12カイリ以内を飛行あるいは航行すれば自国主権への明白な挑戦だと明言している。
「12カイリ以内を航行するのは航海の自由原則を掲げ中国の人工島主張を排除するための重要な要素だ」とある上院議員のスタッフが記者に語った。「カーター国防長官がシンガポールで行った演説はすばらしかったが、今やその強い語調の演説を目で見える行動で支えるべき時だ」
「わが国の政策に混乱が見られる」とダン・サリバン上院議員は公聴会で発言している。同議員はシンガポールのシャングリラ会議の席上でこう発言していた。『カーター長官は今後も飛行、航行、作戦展開を国際法が許す範囲であればどこでも行うと発言していた。これは海中の岩礁を飛行場に変えても主権の主張はできず、飛行・航行の自由を制限できないという意味だ。しかしPACOMハリー・ハリス司令官がわずか2週間前にアスペン安全保障フォーラムで米政策では12カイリの制約を南シナ海全体で認めており、島嶼に加えすべての地形が対象だとしていると指摘している。
「この地域に海軍がプレゼンスを維持することがどうしても必要」とリチャードソン大将は発言。「しかし、合法的に形成された領土境界線を尊重する必要もある」
「つまりこれを認めるということなのか」とサリバン議員はフィアリークロス礁の上に建設された中国の滑走路の写真を指さした。
「相手方の主張のどの部分に合法性があるのか正確に検討したい」とリチャードソンは留保しようとした。「状況はどんどん動いています。主張も対立しています。真実を現地で確認し、明らかにしなければなりません」
「委員長」とサリバン議員はジョン・マケイン議員(オバマ政権の外交方針には賛同していない)に向いた。「記録に残すため一連の質問を提出し、米国の政策をはっきりさせたいと思います」
委員長は不機嫌に「がんばってください」と唸るように言った。■


★南シナ海>ベトナム漁船を追尾し衝突してきた中国海軍艦船



海洋法が定めるルールは世界各国が尊重するべきものですが、中国は別のようです。さらに海上衝突をしかけてくるというのはどういうメンタリティなのでしょうか。この報道は日本ではされていないようなので、お伝えすることにしました。中国国内で報道されているのか知りませんが、報道しても不当なベトナム漁船を排除した、とか都合のよい内容になっているのでしょうね。

Report: Chinese Navy Warship Rammed Two Vietnamese Fishing Vessels

By: Sam LaGrone
August 7, 2015 3:52 PMUpdated: August 7, 2015 4:14 PM

An undated photo of a Chinese Type Yuting II Type 072A tank landing ship (LST). PLAN Photo
An undated photo of a Chinese Type Yuting II Type 072A tank landing ship (LST). PLAN Photo


人民解放軍海軍(PLAN)の揚陸艦がスプラトリー諸島付近で7月にベトナム漁船2隻に意図的に衝突を試みたことが現地報道で伝えられているとし、海軍情報部は域内を通航する船舶に注意喚起している。

  1. 漁船乗組員の証言が Nguoi Lao Dong 現地新聞にあり、7月21日にスプラトリー諸島西15カイリ地点で「艦船番号994の中国船が突然姿を現し、警笛を鳴らしながら接近してきた」中国船は漁船に放水しつつ30分にわあたり追尾してきた。
  2. 「衝突しそうになったので遠ざかるよう操舵したが、なぞの艦はそのまま追跡してきて右舷側に衝突してきた」と船長Nguyen Nhat Ngocが同紙に語っている。同船長は重武装の中国艦は二回衝突をしてから追尾をやめたという。
  3. 「もうひとりの地元漁民Thanh Ninh によれば7月23日にも同様の攻撃を同じ中国艦(艦番号994)がしかけてきたという」(Thanh Nien新聞)
  4. 海軍情報局(ONI)によれば艦番号994は4,800トンの宇霆 Yuting II タイプ072A戦車揚陸艦の Daiyun Shan  (994)だ。同艦の全長は100メートル超。
Screen grab of ONI's Chinese ship identification guide. ONI Image
Screen grab of ONI’s Chinese ship identification guide. ONI Image


  1. 今回の報道は7月に発出されたONIによる世界対象の海運脅威報告(WTS)と照合している。その報告によればPLAN艦船とは断定していなかった。
  2. ベトナム漁業関係者は中国の海警および民間船舶との対立が2014年に中国がベトナム領海内に石油掘削施設を二ヶ月にわたり設置して以来増えているという。
  3. 「中国による挑発行為はベトナムが米国と高位レベルの接触を拡充する中で発生している」と The Diplomatが7月に報じている。
  4. ジョン・ケリー国務長官は8月6日に中国の南シナ海での進出ならびに同地域内のアクセスを制限しようとする動きを非難している。
  5. 「航海の自由、上空飛行の自由は国際海洋法上の基本部分だ」とケリー長官はクアラルンプールで開催中の東アジアサミットで発言しているとロイターが伝えている。「それぞれの自由を尊重するというが、ここにきて制約を加えようとする動きに警告をだしているところだ」
  6. 一方で中国はスプラトリー諸島内で埋め立て工事を続行しており、3千メートル級滑走路をフィリピンに近いフィアリークロス礁に建設中だ。■
 
 

関連

南シナ海で軍事衝突は発生するのか

ジェフ・ペンソン海軍中佐によれば近代中国の父鄧小平は南シナ海を「太古の時代からの」中国の領土と位置づけている。この20年ほど中国は南シナ海での軍事衝突を回避してきたが、情勢が緊張してきたのは間違いがない。


レイセオンSM-6>弾道ミサイル迎撃にも有効と実証に成功





Successful SM-6 Ballistic Missile Defense Test Set To Expand Capability of U.S. Guided Missile Fleet

By: Sam LaGrone
August 4, 2015 1:09 PM

A Raytheon SM-6 launched from an Aegis guided missile destroyer. US Navy Photo
レイセオン製SM-6が米海軍イージス駆逐艦から発射された  US Navy Photo

米海軍とミサイル防衛庁は改良型レイセオン・スタンダードミサイル-6(SM-6)が巡航ミサイル、航空機に加え弾道ミサイルにも有効に対処できると実証した。
  1. 先週行われた海上発射テストは太平洋ミサイル試射施設(PMRF)(ハワイ州カウアイ)で行われ、誘導ミサイル駆逐艦USSジョン・ポール・ジョーンズ(DDG-53)から発射されたSM-6 Dual Iが弾道ミサイル標的の迎撃に成功している。
  2. 「標的ミサイルの最終段階での防衛が実効性を証明しただけでなく多用途SM-6を海軍駆逐艦に搭載することの有効性も示した」とミサイル防衛庁長官ジェイムズ・シリング海軍中将が総括した。
  3. その後三日間でSM-6 Dual Iは航空機および巡航ミサイルの芸ゲkにも成功している。
  4. これまで海軍はSM-2ブロックIVを最終段階の弾道ミサイルに対応させてきたが、SM-6 Dual I 仕様では巡航ミサイルおよび航空機対応が可能なうえ最終段階の弾道ミサイル迎撃にも転用できる。
  5. 最終飛翔段階は「最後の迎撃チャンスだ。この段階での弾頭迎撃は困難であり、本来望ましくない。なぜなら失敗の余地が少なく、かつ迎撃が目標近くで発生するからだ」とMDAの説明文が言っている。
  6. 改良型SM-6は来年中に艦隊に配備される。
  7. 「米海軍司令官レベルは多様なミッションに柔軟に対応できる性能を求めている。これこそSM-6で実現できることだ」とレイセオンミサイルシステム社長テイラー・W・ローレンスが述べている。「来年中に配備されれば、世界で唯一の防空および弾道ミサイル防衛を海上で同時に実施する手段になる」
  8. 現時点でSM-6で最終段階のBMDが可能なのはベイスライン9仕様のイージス戦闘システム改修を受けた艦船だけで、航空機・巡航ミサイルの追尾と弾道ミサイル対応が同時に可能だ。
  9. SM-6で両方のミッションに対応可能となれば、貴重な艦内の垂直発射システムの空間を有効利用できる。.
  10. レイセオンは5月時点でSM-6を180発以上海軍に納入済みで、1,800発の発注を見越してすでに量産体制に入っている。■

2015年8月7日金曜日

核兵器の廃絶は逆に危険を招く。核抑止力の整備は今後も必要だ


平和は祈りさえすれば実現するものではありません。一方で戦争は天然災害とは違い、その気になれば防止できます。現実世界では核兵器があまりにも恐ろしい結果を生むために大規模戦闘の抑止力になってきたのが大国間の歴史です。これに対し核兵器全廃を主張する向きは独自の世界観を持っているようですが、逆に核兵器を全廃した場合の世界をどう考えるのでしょうか。また超大国による核兵器の応酬というこれまでの世界大戦観より非国家勢力による衝動的な核の使用があれば大変なことになります。広島の原爆記念日に日本では受けいられることのない主張ですが、あえて掲載することにします。

The Lessons of Hiroshima: We Still Need Nuclear Weapons

By BLAKE MCMAHON and ADAM LOWTHER on August 05, 2015 at 4:29 AM
米国が広島に原子爆弾を投下した70年前から戦争の形態は新時代に入った。8月6日の地上に出現した地獄は人類未経験の惨禍だった。
  1. 推定で広島の当時の人口38万人のうち最低9万人が爆発とともに死亡している。その後さらに数万人が放射線被曝で死亡している。東京大空襲ではもっと多くの死亡者が発生しているが、広島のように一度に死亡しているわけではない。
  2. 「リトルボーイ」爆弾が広島で、「ファットマン」が長崎で投下され、原子兵器の威力を見せつけた。ただし各爆弾の威力は15キロトン程度と今日の核兵器より相当小さい。
  3. 人道の見地から可能な手段を全て講じ今後の戦闘で核兵器が絶対に使われないようせねばならない。使用された場合の結果はあまりにも悲惨だ。
  4. 広島70回目の記念日を迎える中、核兵器全廃を主張する向きがある。「グローバルゼロ」運動などで、広島の惨状を伝え、核兵器削減・廃絶を訴えている。核兵器がなくなれば、使う可能性もなくなるというのがその主張だ。
  5. ただしその主張は過去の経験を正しく理解していない。
  6. 歴史、経験則そして論理から核兵器備蓄量を減らせば逆効果が生まれるといえる。核攻撃に踏み切ろうとする敵は想像を絶する反撃を覚悟せねばならないからだ。もしわが方の二次攻撃が敵に多大な損害を与えられないと、広島や長崎の例が示すように抑止力にならない。
  7. 冷戦が熱い戦闘にならなかったのは単に運の問題ではない。冷戦期に米国とソ連は危機状態のエスカレーションを多大な努力で回避してきた。自制できたのは核兵器の破壊効果が理解していた両陣営が慎重になっていたからだ。
  8. ソ連の崩壊で核兵器が不要になったわけではない。核廃絶論者の主張と反対に米国・同盟国の核兵器はより大きな役割を今後も果たすだろう。通常兵力の力不足を核兵器で補うべく、使用をためらわない敵が相手だからだ。もし米国が核抑止力の整備を怠れば通常戦は一気に核戦争に推移する。対照的に米国がグローバルゼロの先頭に立ち自国の兵器庫を空っぽにすれば悲惨な結果を招く。
  9. 世界各国に核兵力の放棄を説得すれば製造がなくなると考える空想の世界でさえも、歴史の教訓から平和な世界が到来するとは言えない。大国間の大規模戦闘を20世紀後半において核兵器が防止してきたのは事実だ。敵対する二大勢力が共に核兵器を保有すれば、核兵器応酬にエスカレートするのは必至なのでお互いに侵略行為はとれなくなる。
  10. 核兵器が破壊力の点ですざましい威力を持っているのは疑う余地がない。文明を完全に破壊する力がある。また放射線の効果はその後も続く。恐ろしい兵器であるからこそ今後も保有を続けなければならない。自制してきたからこそ人類は生き残ってきたことに疑いはない。
  11. 核兵器がすべての侵略行為を抑止するわけではない。だがもともとそのための存在ではない。核兵器の存在意義は敵の侵略行為を食い止め、米国・同盟国を守ることにある。脅威を発生させないことに価値がある。核兵器があるからこそ世界は安全で平和に保たれるのだ。
ブレイク・マクマホンは空軍研究所の研究員兼教授。アダム・ロウサーは空軍が新設した高等核抑止力研究スクールの所長。同スクールは戦略思考のエリートを養成することが目的。なお、本記事で表明した意見は原著者のものであり、米国空軍、国防総省、あるいは米国政府の公式見解を反映するものではない。■

2015年8月6日木曜日

オーストラリア>水上艦艇国内建造方針、次期潜水艦調達決定は数ヶ月以内


ここのところオーストラリア向け潜水艦案件はおおきな動きがありませんでしたが、まず水上艦は国内建造になりました。ということは国内での潜水艦建造は断念するのではないでしょうか。背景には複雑な国内事情があることがわかりますね。


Australia To Build New Naval Fleet in $65B Package

Agence France-Presse4:14 p.m. EDT August 4, 2015
SYDNEY — オーストラリアは890億オーストラリアドル(650億ドル)で新型フリゲート艦、巡視船を国内建造することを発表した。なお、次期潜水艦の海外調達先は「数ヶ月以内に」決定するとしている。
  1. 「建造継続」案ではフリゲート艦、巡視船、潜水艦の後継艦を今後20年で整備するとしており、国内で2,500名の雇用を実現する内容でトニー・アボット首相の言では「歴史的な発表」だという。
  2. 「歴代のオーストラリア政権は国内建造を続けると表明してきた」とアボット首相は報道陣に語った。「基本的に艦隊建造は国内で行い、中心は南オーストラリアとする」
  3. ただし首相は進行中の次世代潜水艦の海外調達先については多くを語らなかった。現行のコリンズ級潜水艦の退役は2026年から始まる。
  4. オーストラリア向け潜水艦はフランス、ドイツ、日本が受注を狙い、総額500億ドルとオーストラリアで史上最大の防衛調達事業になる。
  5. ただし、海外建造とした場合は国内産業の保護をめぐり国内で議論を巻き起こしていることもあり、契約交付は一筋縄ではいかない。
  6. 「これまで各国に国内建造にした場合の費用総額、国内国外建造を組み合わせた場合の価格、完全海外建造の価格開示を請求している」(アボット首相)「回答が今後数ヶ月で到着すれば、最終決定に入る」
  7. 今回の建艦事業は「次世代フリゲート」により現行のアンザック級を2020年に交代させるもの。また巡視船はアーミデイル級の後継艦となる。またケビン・アンドリュース国防相によれば「連続建造」を国内で維持することはオーストラリアの将来の海軍力が「わが国の戦略の中心であり、次回国防白書でも中心に取り上げる」ことの反映だという。
  8. 建艦案の発表は南オーストラリアの有権者向メッセージと受け止められている。同地は失業率が8.2%と最も高く同時に国内主要造船産業が集中している。■

中東>シリア作戦で新局面に入った米軍の作戦状況


シリアでの状況が大きく変わりそうですね。米国が支援する「穏健な」反乱勢力がどこまで有効なのか試されますが。地上では現地部隊に戦わせ、米軍は航空支援を行い、もって米地上部隊の派兵を回避するというのが現政権の考え方ですが、有効であることを祈るばかりです。

U.S. expands potential targets in Syria

By Andrew Tilghman, Staff writer4:49 p.m. EDT August 3, 2015
Possible syria operations(Photo: MC3 Anna Van Nuys/Navy)
米軍はシリア国内の爆撃を拡大し、アルカイダと連携するアル・ヌスラほか アサド政権支持派も攻撃対象に含めるとペンタゴンが発表した。
  1. 拡大は米国公約の穏健派シリア反乱勢力支援の一環で、米国は穏健派に訓練、機材供与を行っており、訓練を受けた穏健派がシリアの戦闘区域に復帰している。
  2. 「これらの一派は米国と共同し、米国の訓練を受けており、米国は防御的支援を提供する」とペンタゴン報道官ジェフ・デイヴィス大佐が3日明らかにした。
  3. シリア空爆を米国が開始して一年、米軍は初めて地上に友軍を得た。新シリア軍New Syrian Forces の名称でおよそ60名がIS戦闘分子との戦いに入ると期待されている。米軍は近接空中支援で新シリア軍の攻勢を助ける。
  4. シリア内戦は複雑な様相を示し、アメリカの支援を受けた反乱分子が他集団の攻撃を受ける可能性は高い。とくに アル・ヌスラあるいはアサド政権が危惧される。もしこの事態が発生すれば、米軍は「防御的火力支援」を提供すると約束しているとデイヴィスは言う。
  5. 「防御的目的に限り、米軍は対象を他の脅威から守ります」とし、「集団間の抗争状態は承知しており、必要な手段で該当部隊が目的を実行できるよう手配します」
  6. 新方針が先週金曜日に早速試された。新シリア軍がアルヌスラ戦線と思われる集団から攻撃を浴びたのだ。NSFは米軍への連絡手段で空爆を要請した。承認され、実施されたとデイヴィスは言う。
  7. 空爆は何ヶ月も米国がシリア反乱勢力に必要な火力で支援できるのかあいまいな形で終わっていた。ペンタゴントップからは反乱勢力の支援に前向きな姿勢が出ていたが、実施方法や近接航空支援の可否は明白にしていなかった。
  8. 新方針で米軍、有志連合軍はシリア大統領バシャ・アル・アサドに近い軍事勢力への対決が可能となる。米国はアサド政権に対し米軍の同盟勢力を攻撃した場合は爆撃を辞さないと警告している。
  9. ただし米軍指導層はアサド政権と直接対立は避けたいと考えている。なぜならシリア政府は有効な防空システムを維持しており、米軍機にも脅威となるためだ。
  10. 「アサド政権と交戦しているわけではありません。またアサド側に戦いを挑発するものでもない」(デイヴィス大佐)
  11. ホワイトハウスもアサド政権が邪魔しないことを希望するが、シリア政府と正式な合意がないこととも明らかにした。「合意とは考えていません」とホワイトハウス報道官ジョシュ・アーネストが記者団に3日語っている。「昨年秋にアサド政権にこちらの対ISIL作戦を邪魔しないよう警告してある」
  12. 「平行してISIL戦に訓練し装備を与えた反乱戦闘員にも警告した」とアーネスト報道官は説明。「今のところアサド政権は米国の警告に従っており、今後もそうさせる」
  13. シリア反乱軍に航空支援を提供するというミッションの拡大は米国・有志連合が隣接するトルコで作戦を拡大するのと軌を一つにしている。トルコは7月にインジルリク空軍基地から有人、無人軍用機の運用を認めた。これにより米軍機はシリア領空にこれまで早く、簡単に侵入できる。
  14. 新シリア軍はまだ規模が小さいが、米軍関係者はトルコ、ヨルダン、サウジアラビア、カタールの施設を活用して5,000名以上の養成を目指す。.
  15. ペンタゴンは既存反乱勢力のうち、数千名がこの訓練・供与事業の対象になると見ているが、そのうち多くは過激派集団との関係があったことで対象にならなかった背景がある。■

2015年8月5日水曜日

★★海上自衛隊>大胆な戦略方針転換の理由は中国



日本国内ではなかなか聞こえてこない海上自衛隊のトップの発言を米国経由で聞くというのは倒錯していると言わざるを得ません。内容自体はごく健全なものですが、このまま日本で(日本語で)発言すると問題が起こるのでしょうか。とすれば国内の言論空間にゆがみがあるということですね。日本の国益をどう捉えるかという問題ですが、思考がどこまで広がっているのかというもんだなのでしょうね。

Japan Looks South: China’s Rise Drives New Strategy

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on August 03, 2015 at 2:41 PM

WASHINGTON: 海上自衛隊トップが講演すれば話題は日本防衛についてだろうと予測するのが普通だろう。だが武居智久海上幕僚長が10ヶ月で三度目の訪米となった今回のワシントン講演で日本が戦略的視野を広げていることを示したのには、いささか驚かされた。日本がインド洋までを視野に入れ、南シナ海に特に関心を示す背景にはもちろん中国の存在がある。
  1. 日本を先に訪問していたアンドリュー・クレピネヴィックの発言を引用すると「脅威の高まりと米国への信頼のゆらぎがあいまって、また憲法第9条の再解釈により日本では安全保障への考え方が広がり、戦略的になった」のだ。
  2. 日本の新思考で特筆すべきことは何か。カーネギー平和財団の講演で武居海上幕僚長は北朝鮮、尖閣諸島、ロシアについて言及していない。幕僚長は「太平洋」とも言わず、より広範な「インド・太平洋」の語句を使っている。
  3. 東北アジアについて論じるかわりに、幕僚長はソマリアであいかわらず混乱が続いていること、イエメンの不安地度から依然アデン湾での海賊活動に現象の兆しがないこと、海上自衛隊が護衛艦艇と哨戒機を派遣していることを紹介した。また「ある国」が「不安と不信」を南シナ海で発生させていると、日本人らしからぬ強い語調で中国について話している。
  4. 「中国はスプラトリー諸島のサンゴ礁を急速に埋め立てており、各国の反対を無視している」と武居幕僚長は述べ、人工島が軍事基地として供用されるとの見解で「南シナ海全体が中国の軍事影響下に置かれる」とした。
  5. 「南シナ海はインド太平洋の経済の重心だ。シーレーンが各所に伸びており、『開かれて自由な航行』にとって南シナ海は死活的に重要な存在」と述べた。
  6. 島嶼国家である日本で戦略的に事実を認識するのは大きな一歩だ。これまで日本は憲法第9条を厳格に解釈し、戦争を放棄してきた。前の大戦の惨禍、とくに原子爆弾二発による破壊を受けて、日本の自衛隊はもっとも狭義の自国防衛に徹してきた。とくに北海道の防衛に主眼をおいたのはソ連侵攻を恐れての事だった。しかし、現在の総理大臣安倍晋三は第9条の解釈を改め「集団的安全保障」に道を開く法改正を物議を醸し出しつつ推進中だ。その狙いは日本が他国と共同して域内の脅威に対抗することにある。
  7. 「集団的自衛権が政治問題になっています。国内議論は集団的安全保障を巡って大きく意見がわかれています。民主党中心の野党は安倍を止めないと日本が戦争に巻き込まれる、果ては徴兵制につながると主張しています」と語るのは戦略国際研究所で日本専門家のニコラス・スゼチェイル Nicholas Szecheiyl だ。「ただしこれは情報がどれだけ共有されているかの問題だと見ています」とし、新法は日本をこれまで以上に他国と共同作戦できるようにするもの、単に米軍だけが想定ではない、とし、日米と東南アジア各国で「共通作戦構造」を中国の南シナ海進出に対抗するために発足させると見ている。
  8. これまでも日本艦艇を南シナ海で巡視させる案が出ているが、米第7艦隊司令官ロバート・トーマス中将自らが海上自衛隊が地域内の「安定化勢力」になると公言している。
  9. しかし中国は日本のいかなる行動に反対している。「中国は数カ月前に米海軍のプレゼンスが南シナ海にあっても共存できるが、日本は同地域に関係がないと表明している」とヘリテージ財団の中国専門家ディーン・チェンが解説している。
  10. 日本は南シナ海およびインド洋で防衛関係を構築中で、これは民主党時代からの継続。オーストラリアとは2007年に防衛協力協定を正式に締結しており、インドとも同様に2008年にしている。(チェンはこの協定にほとんど関心が集まっていないと指摘) 両国と日本は軍事演習を実施している。武居海将は西太平洋海軍シンポジウムをインド洋海軍シンポジウムと連携する提案を正式に表明している。
  11. 武居幕僚長は武器輸出が解禁され新しい協力の可能性が生まれたと強調している。フィリピンとベトナムに日本は巡視艇を供与しているが、両国とも中国と領有権をめぐり対立する最前線の国
  12. では日本自身の防衛装備はどうするのか。「今日の自衛隊は相当の実力をもっています」とチェンは見る。とくに海上自衛隊について「英海軍より規模、実力ともに大きく、例外は弾道ミサイル潜水艦だけだ」という。(英国は核兵器を保有しているが、日本は理解出来る理由のため整備していない)
  13. さらに武居海将は力強く発言している。「今や海自は質量ともに米海軍につぐ存在だ」
  14. だからといって日本が米国抜きで仕事ができるわけではない。「米軍のプレゼンスは現在も今後もインド太平洋地区での平和と安定のため必要だ」と海将は発言。どのようなプレゼンスをどうやって維持するかは米国が真剣に議論すべきことだ。■


2015年8月4日火曜日

★F-35は最後の有人戦闘機になるのか


同じロッキードのF-104も最後の有人戦闘機と言われていましたが、(こんなことを言っていたのは日本だけ?) どうもF-35が最後の有人機になる可能性は低いようです。

F-35 Lightning II - last of the manned fighters?

Gareth Jennings, London - IHS Jane's Defence Weekly
27 July 2015

(US Air Force)

米海兵隊はロッキード・マーティンF-35ライトニングII供用打撃戦闘機(JSF)の初期作戦能力獲得を7月末までに宣言する見込みだが、次の有人戦闘機があるのか、いいかえればJSFが最後の有人戦闘機になるかと多くの筋が問いかけている。
  1. 軍事航空にはこれまでも誤った予測があり、従来どおりの概念としての戦闘機は消滅すると何回も言われてきた。ヴォートF-8クルセイダーが1950年代中頃に開発され付けられたニックネームは「最後のガンファイター」で、以後の戦闘機はミサイルのみ搭載すると見られていた。
  2. 英国は更に先を行き、1957年の国防白書は大胆にも有人戦闘機は今後地対空ミサイルに置き換えると主張していた。これは全く誤った見解で代償は英国国防宇宙航空産業の衰退と高くついた。.
  3. 最近も今年4月に米海軍長官レイ・メイバスがF-35が「打撃戦闘機として海軍省が調達する最後の有人戦闘機になるのはほぼ確実」と発言している。
  4. 有人戦闘機が終焉を迎えるといわれてきたのは空対空、地対空ミサイルの開発が根拠だったが、今日では無人機技術が進展し、戦闘機パイロットの仕事を奪いかねない勢いだ。.
  5. 名称こそ無人航空機(UAVs)、無人航空システムズ、遠隔操縦航空機、遠隔操縦機システムズ、あるいは単にドローンといろいろあるが、無人機は戦場に初めて登場した1980年代から指数関数的に増加している。
  6. 無人機の先陣を切ったのはイスラエル国防軍で敵防空網を無力化する手段としてUAVを地対空ミサイルの前に飛ばせ有人戦闘機にミサイル陣地の場所を教える方法が生まれた。近年のUAVは情報収集・監視・偵察(ISR)用途でアフガニスタン、イラク、リピア、シリアで運用され、今後も別の国が加わるだろう。ISRに加え、攻撃力も付与され、用途はひろがり、性能も向上している。.
  7. 無人機の支持派は有人機と比較すれば、人的被害ゼロ、また開発、調達、運用、支援の各コストが低減できると主張している
  8. 確かにコックピットから地上基地に操縦を移せば、操縦パイロットを危険から解放することはできるが、それでも操作員に被害が出ないとは言い切れない。UAVパイロットが高レベルの精神病に罹患するとの報道はあり、「遠隔操作」戦争に長い期間さらされると、勤務時間内は戦闘員殺りくをし、帰宅すれば平常の家庭生活に戻るパターンを繰り返すうちに精神に異常をきたす例が報告されている。戦闘機パイロットは確かにもっと厳しい身体的危険にさらされるが、配備基地では同輩や仲間が支援する構造になっており、これは無人機操作員にはないぜいたくだ。
  9. また政治上の見地からはパイロットがコックピットで危険状態にさらされる方が望ましいといえる。UAVを投入すると大きな論争が発生する。その理由として運用国には全く危険がない状態なので投入の閾値が下がるという主張がある。反対派には無人機も有人機の交戦規則 (RoE) に従う点で違いはなく(各国の空軍では同じなのだが、CIAのような秘密組織が同じRoEを適用しているかは不明) 無人機の使用が「フェアでない」から道義にかなわないというのだ。有人機が同じミッションを実施しても哲学的な考察の余地はない。
  10. 有人機無人機で開発・調達・運用・支援の各コストを比較するとUAVの発達はF-35の開発時期と重なっているのが有人機にとっては不運としかいいようがない。F-35は国防産業で浪費と無駄の象徴とされている。
  11. 1.5兆ドルをF-35に投じることで(同機は歴史上最も効果な国防事業となった)UAVのほうが安上がりでコスト効果が高い解決方法だと言うのは実に易しいことだ。だがそんな比較は誤解の元となる。つまり比較自体がおかしいということだ。
  12. F-35は敵防空体制の中ですべての形式の戦闘を実施する設計で、UAVはISRや軽攻撃を比較的脅威度の少ない空域で実施する前提だ。無人機の妨害は極めて簡単にできる。たしかに次世代の無人機として敵防空体制の下でも作戦飛行できる構想が完成にちかづいており、米国の無人艦載監視偵察攻撃機(UCLASS)や英仏共同開発の次世代戦闘航空機システム(FCAS)さらにヨーロッパ共同開発のnEUROnがあるが、やはり他のUAVと同じ政治課題からは免れ得ない。
  13. また「無人」ということばも誤解を与えかねない。パイロットがいないのではなく地上に移動させただけだ。皮肉なことに今日の無人機の運用には有人機よりも多くの人員が必要だ。グリペン戦闘機の例ではパイロット一名でミッションを実施するが、無人機リーパーには二名が機体を空域に投入し、その後ミッション部分は別の二名あるいは三名のチーム(米国内)に任せて、再び最初のチームが機体回収にあたるので、5名が関与する。両機種にはほぼ同様のレベルのインフラ施設が必要であり、有人サポート体制が必要なので、UAVが宣伝するような人員減・支出減が本当に実現するのか判断できない。これはすくなくとも近い将来まで同じだ。
  14. メイバス長官がF-35が海軍最後の有人戦闘機になると発言しているが、ペンタゴンはすでにJSFの後継機種開発を始めている。ただし、無人機ではない。
  15. 米空軍及び海軍は第六世代戦闘機と呼称する新型機の開発を開始しており、次世代戦術航空機Next Generation Tactical Aircraft (Next Gen TACAIR) と呼んでいる。事業開始は2013年で、Next Gen TACAIRは国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)が主導し、次世代の制空戦闘システム・機材の開発を目指している。
  16. ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンの各社が第六世代戦闘機の競合に参加する意向を示しており、ボーイング、ロッキードは概念図を示しているが、ともに有人機だ。まだ概念段階だが、第五世代機と同様の特徴があるといわれる。ただし推進力、機体構造、エイビオニクスで未来的な進歩がある。F-35が最後の有人戦闘機になるのかという点について各第六世代機は選択的に有人になるといわれているので完全に無人機にはならない。
  17. 選択的に有人機になると完全な有人機あるいは無人機よりも利点があり、今後の戦闘機設計でひとつの道を示しているようだ。選択的有人操縦型にすれば両方の良い点をとり、無人機のクルーのリスクを減らす一方で有人機ならではの柔軟性と能力発揮を実現できる。
  18. Next Gen TACAIRの情報要求では選択的有人操縦型機を求めており、将来の高速航空機の方向性がひとつ打ち出されている。Next Gen TACAIRの初期作戦能力獲得時期は2030年ごろとされ、就役する新型機はF-35と並行して相当期間にわたり運用され、そのあとの機種に役目を譲るとしても戦闘機パイロットの役目がなくなる事態はまだ終わらない。■


★情報戦>スカッドミサイル発射の警報はツイッターから入手していた



詳細はわかりませんが、ソーシャルメディア全体からキーワードを抽出し、位置情報と組み合わせて特定のイベントの開始を事前に把握する仕組みがすでに稼働中だとうかがえます。当然NSAが大きく関係しているのでしょうね。みなさんもフェイスブックやツイッターの利用には注意が必要ですね。

New Intel Era: Tweet Alerts DIA To SCUD Launch, Not Spy Sats

By COLIN CLARK on July 31, 2015 at 1:11 PM
PENTAGON CITY: ソーシャルメディアは国際問題や安全保障にも影響を与えている。アラブの春はチュニジアで若者が焼身自殺したことが共有されて蜂起につながった。
だがソーシャルメディアが武器発見に有望なツールだとは考えもしないだろう。なんといってもスパイ衛星(DSPやSBIRS)があり、ミサイル発射の兆候に目を光らせており、レーダー衛星や各種航空機のAWACSやJSTARSが空と地上を見張っているのだ。
だが国防情報局のトップは情報関連の契約企業の聴衆に対し、イエメンのフーシ派が6月にスカッド・ミサイルをサウジアラビアを狙って発射したとの情報は宇宙配備赤外線システム(SBIRS)や旧式化しつつも信頼性の高いDSP衛星群が出所ではないと明らかにしている。
Lt. Gen. Vincent Stewart DIA
「最初の警告はハッシュタグ・SCUD・発射」のつぶやきが出たことで、それだけではミサイル発射場所は特定できなかったが、海兵隊中将ヴィンセント・スチュワート Lt. Gen. Vincent Stewart はその情報が元で衛星群、無人機他のアセットを動員し、発見に至ったことを明らかにした。「これが探索を開始した経緯だ」という。
中将はDIAがその他好ましくないことも発見したという。詳細は触れなかったが、DIAのネットワークを対諜報活動専門家が探ろうとしたという。
その他にも懸念事項があるという。局内の異動が少ないこと、年間5%しか局員が入れ替わっていない、分析が硬直化しており、とくにキューバ関連でその傾向が強いとし、世界の変化に対応していないことを指摘した。中将は分析官はしかるべき資格を取るべきとし、居心地が悪く感じるものはCIA他情報機関へ転籍すべきとまで言い放った。中将はCIAをくりかえしからかい、事情を知る聴衆の失笑を買っていたのは両機関が内輪で予算や人員をめぐり争奪戦をしているためだ。■


2015年8月3日月曜日

最大の防衛企業ロッキード・マーティンCEOに聞く


たしかヒューソンCEOはロッキードに技術畑で入社して上り上がった叩き上げですね。以下インタビューでは微妙な問題も出ていますが、さすがにうまく切り盛りしています。米国のジャーナリズムのきびしい問いかけ方法を日本も学ぶ必要があるのではないでしょうか。ブログ主としてはCFR(コンパクト核融合炉技術)はどうなったのかと聞きたくなるところですが。

Interview: Lockheed Martin's Marillyn Hewson

By Andrew Clevenger, Vago Muradian and Aaron Mehta 6:42 p.m. EDT July 27, 2015
hewson(Photo: Staff)
PARIS and WASHINGTON — 今年もロッキード・マーティンはDefense News恒例の100大国防企業のトップになり、ヘリコプター大手のシコルスキーの吸収合併で更に業績を拡大する勢いだ。会長、社長兼CEOのマリリン・ヒューソンは同社を2013年から率いており、ペンタゴンとの関係改善、社内企業文化の再強化、さらに今後の同社の戦略的位置づけの定義を図ってきた。インタビューは7月27日に行った。
シコルスキー買収の理由は。ロッキード・マーティンのビジネス戦略全体で変化が生まれつつあるのか。
シコルスキー買収は当社のビジネス拡大戦略の一環。当社の航空宇宙国防製品・技術の品揃えが広がり、国際的にも訴求力のあるヘリコプター・ソリューションを提供できる。商用ヘリコプターでも新しい可能性が出てくる。シコルスキーが今後もDoD(国防総省)向けに素晴らしい製品を供給し続けるためにも今回の決定が最善だと確信しており、以前より広範な経営資源を投入し安定性をますのでそのまま事業を継続していた場合よりも優れた業績を示せるはずだ。
シコルスキー買収でロッキードはヘリコプターおよびヘリコプター向け電子装備でトップメーカーに踊り出るが、一方で垂直統合が強まり、DoDが一次契約企業同士の合併を嫌う中で懸念も増える。DoDが今回の買収をどう考えていると思うか。
実はシコルスキーとロッキード・マーティンは競争の激しい市場で共同で事業を展開している。シコルスキーが加わることでロッキード・マーティンの製品群がヘリコプター部門の競争状態を減らす作用はない。なぜなら当社は今のところヘリコプターの設計製造に携わっていないからだ。今回の取引は相互補完的で垂直、水平いずれでも懸念を生じさせない。政府審査には堂々と対応するつもりだ。
合併案公表前にDoDとは話をしたのか。あるいは今からだったら承認をどう説得するか
当社では事業上で大きな変化がある際に発表しているが、今回も同様に当社の顧客には事前にニュースを伝えている。審査手続では必要な情報は提供する。今回の取引で競争状態が減少するとは思わず、逆にコストや技術革新でDoDの顧客にも良い影響が出ると自信を持っている。
IT部門、サイバー事業部門を売却する理由は何か。拡大する一方の事業だと見る向きが多いのに。
当社のITおよび技術サービシズ事業は世界クラスの性能を実現しており、業績は極めて良好だ。ただし、市場動向と顧客の優先事項が変化していることから、これらの事業がもっと大きな成果を発揮し、より成功をおさめることはロッキード・マーティンから離れても可能と判断した。民間向けサイバー部門事業が戦略的見直しの対象となり、政府向けサイバーセキュリティー事業は引き続きロッキード・マーティンの中にとどまる。
国防支出が最低水準になれば、市場の成長率はどうなるか。また2015年から2020年までに業績をどう拡大していくのか。
まず本当に底を打ったのか確信が持てない。今年の夏は予算案をめぐり熱い議論が戦わされるだろう。そのため行方を注視している。大統領の予算案が想定の予算上限を上回っていたことに救いを感じるが、世界規模の安全保障の課題が山積しているとの認識で、わが国の国防装備を近代化する必要がある中、強制予算削減で想定したキャップを上回る支出が必要だと一部議員は見ている。これ自体は勇気づけられる話だが、一気にそこまでいかないことも明らかで、さらに国防以外の分野でキャップ以上の支出が必要との政府の考えもある。したがって当面は静観したい。
今後の見通しとなると、特定の事業で成長を期待するのか、それとも複数の成長事業があるのか。
持続でき利益をもたらす成長を心がけている。そのため企業全体の成長が必要だ。国際市場に注力している。国際売上20%という目標は達成済みだ。さらに今後数年以内に25%になると見ている。ここは成長が見込める分野で同時に米国内でも国防予算が増加に転じると見ている。その場合、当社は最強の品揃えがあり、強い立場になる。
当社の最大の難関はもちろんF-35であり、当社の製品群で大きな位置を占める存在だが、順調に推移している。F-35をまとめ買いしたいとの顧客の声明を聞いているだろう。同機事業の安定度と成長可能性はその他ミサイル防衛、C-130Jに代表される航空機動性とともに当社の広範な製品群を構成する。市場の中での当社の立ち位置は良好で国内外で需要は伸びると見ている。
2017年めどに自社株式を買戻すといっているが、アナリスト多数がこの案を支持していない。効果があると信じているのか。
今後三年間を見越して当社のキャッシュ活用を考えると150億ドル相当の運用資金を想定し、株主には配当および買戻しの形で還元してきたい。直近の12年間で当社は配当を二桁成長させてきたのはご存知の通り。株式の再購入へ続く道だった。総発行株数を300百万株に減らすというのは自然な選択だ。ここまでは普通の選択だが、だからといって事業の成長発展に必要なキャッシュを減らすわけではない。資本財その他に必要なキャッシュは維持する。
社員やR&D活動、事業投資が維持できなくなるという意見にどう反応するか。また手持ち資本をどの分野に投資するのか
当社の戦略は強力だと確信している。株主には現金還元の形で約束を果たしていくが、同時に当社の事業への投資も継続する。それは研究開発部門だ。今後も投資をしていく。資本財の投資もあり、実験施設も新規開設しており、施設も拡張している。今後も変わらない。過剰設備と考える部分ではリストラも行っている。事業体制をそもそもの事業の目的に応じて整理するのは極めて自然な行為だ。また成長とともに雇用も同様に拡大していくべきだ。企業を成長させるのが大切で、顧客に喜ばれ、従業員にも良い対応が、株主にも良い結果を生むと思う。
ペンタゴンはシリコンバレーの各企業に寄り添うようだ。これで事業に対する考え方が変化するだろうか。また新規企業、イノベーション企業の役割をどう見るか。
国防産業なかんずく当社はイノベーターとして知られている。当社の生命線は技術開発だ。今後もイノベーション実現につながる投資を続ける。当社の第5世代戦闘機は最も洗練されて他に類のない存在だ。当社の衛星、宇宙機の能力をみてほしい。オライオンは外宇宙探索のすぐれた手段となる。
いいたいことは製品群を全体で見てほしいということだ。現時点の製品群の維持につながる投資をしているとともに長期にわたり製品への投資もしていることで顧客が求める内容を提供できる。当社もシリコンバレーを利用するが、民間会社なら普通にしていることだ。そのため現地にも進出しているし、世界中に進出している。
新技術向け投資はどうなのか
特定の機能性能のため各種の調達をしている。パロアルトにある当社の技術センターは相当高度な拠点だ。事業投資も活発に行っている。当社の試験設備を見てもらえば、5大事業分野でそれぞれ新技術を重視していることがわかるはず。同時に現行製品群についても改良や性能向上を図っている。C-130がその例で、初号機は1954年に引き渡したものだ。今はC-130Jに大量の受注があり世界各地から発注が相次いでいる。米国政府も複数年度調達をする。宇宙探査事業もあり、衛星もある。ミサイル技術では有効に資金を活用していると思う。共同事業の相手に投資することもある。企業買収はあり得る。市場にある技術を活用することができるし、社内開発もできる。
社内資源を機動的に使うため何を考えているのか、また現在は機動的に動いていると言えるか。考慮すべき要素があるか。
それは間違いない。コア技能を持つものを周辺事業に従事させる。最近の企業買収事案を見てもらえれば、サイバーセキュリティーではIndustrial Defenderを吸収しており、同社はこの分野で専門技術があり、制御機器の製造もしている。そこに当社のITサイバーセキュリティ部門を合同させてソリューションの幅を広げている。更に防衛部門や情報処理部門とも合同させることで当社の強みを実現している。従業員は112千名で、すべての分野を網羅している。技術的な解決策が必要なら、社内全体から最適な技術者を抽出できる。
社内の価値観をどう導いているのか。大企業でありながら機敏な行動を引き出し、顧客目線に立たせるため何を実施しているのか。
企業としてお客様が当社にとって中心の存在と考える。顧客に焦点を当てる。当社の仕事は顧客に価値を提供することだ。そのため顧客を思って動くことが従業員にも良い結果となるし、株主他にとっても同様だ。これが基本だ。その他、全社的に顧客に中心を合わせる社内文化を染み込ませている。なんといっても最高の優先順位がお客様だ。耳を傾け、何が欲しいのかを理解する。そのニーズにはちゃんと反応しなくてはいけない。それには行動をもってその実現にあたる。これは社内に浸透していると思う。
社内でも仕事の進め方に変化が生まれる。顧客中心の価値観になれば正しい方向に仕事が進むはずだ。問題は迅速さをもってよしとするにしてもイノベーションの風土が生まれていなければならない。なぜなら、イノベーションこそ当社の生命線であるからだ。イノベーションは顧客に提供する価値につながる。すべて顧客につながるのだ。またイノベーションを培う社内文化を形成するためには社員がベストを尽くせる環境を整備し、社員が自分の考えに耳を傾けてもらっていると感じられるようにすることだ。そうすれば社員が共同して最高の発想を前に進められる。また社員の側には採択の期待が増えるだろう。そのインプットから最高の発想が実現に向かう。
LRS-B受注に気をもんでいることと思う。業界には結果次第でまたM&Aが増えるとの見方があるが、今後の見通しにも影響が出るか、つまり受注成功、失敗で状況がかわるか。また昨今のM&Aの状況についても聞きたい。
当社はボーイングと組み、LRS-B受注を目指している。米空軍向け案件では最重要事業だ。空軍にとっても重要な投資分野である。ボーイングと共同事業を組めて光栄に感じている。両社とも相当の経験があり、社内の能力を引き出し、最良の結果になると確信している。
契約の成否による業界への影響だが、これは正直言って当方の頭のなかでは重要な事項ではない。当社には強力で広い範囲の製品群がある。たしかにLRS-Bは重要な事業だが、その他に重要事業は多くあり、LRS-Bは仮に受注に失敗しても業績に大きな影響を与えない。とはいえ、提携先とともに受注獲得を目指している。成長機会を追求し他社から抜け出る事を考えないといけない。
ペンタゴンからはIRAD(自社資金による研究開発)を求める声がある。支出資金は返金するという。このやり方に意見はあるか。逆にペンタゴンへの注文はないか
ケンドール副長官はBetter Buying Power 3.0で見落としている点が多いと思う。ただケンドールは聞く耳を持っており、業界とは透明性をもってどうやって進めていくかを考えているのも事実だ。実施の方法を詳細に考えていると思う。この点、業界は開かれた議論をしている。対話の結果、ケンドールは部下に課題処理を命じている。これは非常に前向きかつ傾聴していることの意味は大きい。議論もどうやって実現するかに焦点があっている。.
ケンドールが望んでいる内容、なぜこの話題に真剣になっているかがわかってきた。企業は長期的視野に焦点をあわせるべきで研究開発に投資をしてもらいたいのだろう。ただ投資しても結果がすぐに出ないこともある。そうなると追加投資が必要だ。技術がものになるまでは試行錯誤を繰り返すこともある。ケンドールが望むように業界にルールを押し付けるのは時期尚早だと思う。業界はケンドールに耳を傾け一緒に作業して悪い方向に向かわないようにしたい。
強制予算削減策について。業界は2015年下半期でこれをどう終わらせるつもりなのか。放っておくと大変なことになる。(継続決議が出るかもしれない)強制削減が復活しないとも限らない。業界として議員連にどう伝えるのか
自分自身も含め業界は毎日メッセージを伝えているつもり。また当社の顧客(米軍)も同様だ。メッセージは同じで顧客に話すのか、業界に話すのか、だ。顧客それぞれがきびしい安全保障の課題に直面する中で予算がなく装備近代化ができず、紛争を解決できていない。これは米国の安全保障上看過できない事態だ。強制削減措置は一律カットにつながり、戦略目標の軽重と無関係だ。なんといっても国民の保護がつとめであり、同盟国や友好国と一緒に悪者に対処しなければならない。そのための投入資源がないと、どこかを切らないといけない。即応体制を犠牲にするか、近代化をがまんすることになる。ただし近代化を先送りしたり、技術投資を怠れば取り返しの付かないギャップが生まれてしまう。
防衛産業にも影響が出る。そもそも顧客はどこから技術を入手するのだろうか。またどこで生産をさせるのだろうか。答えはみな業界だ。生産しなければ性能も手に入らない。これは国家にとって不幸だ。技術力を持った人材が減れば、技術開発やイノベーションも衰退し、軍事優越性の維持が困難になる。だからこそ国民の保護のためにも業界は最高の能力を維持するべきだ。
同時に議員の間にはこんなことを言っている向きがある。「業界に強制削減必要ない。ロッキードを見ろ、株を買い戻しているぞ」
ではこう言いたい。企業は自社を運営し業務上財務上の目標を達成する。事業をつくっていかねばならない。ビジネスの基盤に似合ったサイズビジネスにしないとコストは上昇しつづけ、システムは予算環境厳しい中で顧客に高嶺の花になり手が出なくなる。ウォール・ストリートからの資金流入を惹きつけられる仕事をしないと、研究開発に投じる資金が足りなくなり、結果として顧客、わが国に最良の性能を有する装備を提供できなくなる。そこで業界トップの我々の仕事は企業の成長を持続させ利益が出る形に維持することであり、投資家の資金をひきつけることであり、これで顧客に当社の有する最高の性能を有する解決策を提供できることになる。立法府も各社に同じことを期待しているはずで、企業運営で付加価値を実現することだ。■