2020年9月27日日曜日

北朝鮮の国家ぐるみサイバー攻撃に金融はじめ産業界は対策を講じるべきだ。究極の対策は北朝鮮体制の転覆しかないのか。

 

 

朝鮮偵察総局の一派が金融機関に侵入し金銭を盗む動きが世界各国で再開しており、能力をさらに引き上げていると米サイバーセキュリティおよびインフラストラクチャセキュリティ局(CISA)が注意報を出しており、財務省、米サイバー司令部、FBIも注意喚起している。

 

ビーグルボイズBeagleBoyzと呼ばれる集団が2015年からの事件に関連しており、2016年にはバングラデシュ銀行が81百万ドルを窃盗された。合計被害額は20億ドルを超えると見られる。 

 

注意報では「ビーグルボイズによる銀行襲撃で各金融機関に深刻な営業リスクが発生しており、盗難被害や回復費用以外に信用喪失が怖い」「同様に懸念されるのがハッカー集団の手口が巧妙になっており、銀行はじめ金融機関の基幹コンピュータシステムが運転できなくなる事態が発生していることだ」と指摘。

 

ビーグルボイズの犯行は2018年に「FASTCash」として発覚した。これはATMから現金を盗む手口で、最新の注意報は「FASTCash 2.0、北朝鮮ビーグルボイズによる銀行襲撃」として大きく二つの進展があるとする。ハッカー集団はWindowsサーバー上のスイッチ操作用アプリケーションに侵入し、銀行間取引用の接続を狙うとある。

 

「北朝鮮ハッカー集団は戦術を巧みに変更して金融以外の業界にもサイバー犯罪をはたらいている」とCISAのサイバーセキュリティ部門次長のブライアン・ウェアが解説する。「CISAはその他関連機関と連絡を取りながらサイバー脅威の関連情報を具体的かつアクションが取れる形で適宜配信しています。目標は悪意あるサイバー作戦を妨害し、敗退させることで敵の先を行く形で最大のリスクに政府、民間で対応していくことにあります」

 

注意報の推奨内容にはオペレーティングシステムに最新のパッチを当てるといった一般的なものから金融機関に焦点をあてたATMや電子決済装置での注意点までを含む。

 

「財務省のサイバーセキュリティ・重要インフラ防護部門は政府、民間部門との連携でグローバル金融部門への北朝鮮等サイバー犯による脅威の低減に努めています。 チームとして動く必要があり連携と情報共有により金融業界のセキュリティと回復力を維持しています」と財務省のデイヴ・ラックメント次官補代理は語る。

 

手口としてはマルウェアを使うことが多く、ECCENTRICBANDWAGONの例ではログインしスクリーンキャプチャーで重要情報を得ている。連邦政府関係機関からマルウェアに対する注意喚起が以前からあり、リモートアクセスで被害機関を内側から操作した事例があるという。その例としてHOPLIGHTCROWDFLOUNDERがあり、類似形としてELECTRICFISHVIVACIOUSGIFTがある。注意報にはこうしたマルウェアの解説へのリンクがある。

 

しかしビーグルボイズとは極度なまで統制が取れた組織であると注意報にあり、銀行襲撃後も痕跡をきれいに消すため、捜査が困難だ。

 

国家レベルの実行犯ビーグルボイズが犯罪ハッキング集団を使いフィッシングでマルウェアを植え付けたり、セキュリティホールから攻撃を加えアクセスを確保する。犯行集団は入手物をビーグルボイズに渡すが、ビーグルボイズがこれを利用して実際の犯行に至るのは数か月後だ、と注意報にある。■

 

この記事は以下を再構成したものです

 

N. Korean Hackers Upgraded Their Financial-Theft Tools, Feds Warn

BY MARIAM BAKSH

AUGUST 28, 2020 08:00 AM ET


これでは制裁の効果があがりません。国民が植えようが異常な使命感に燃えるコンピューター知識に富んだ集団が倫理観なしで犯行に走り、その成果を国家に献上して地位を確保するいびつな構造が現在の北朝鮮の実態でしょう。こういう体制は崩す必要があります。中国に目が移りがちですが、北朝鮮も注目を集めようととんでもない行動に走るかもしれません。要注意です


新鋭英空母が米海兵隊F-35Bを搭載。英米両国は新しい安全保障協力の時代に入った。

 海軍空母HMSクイーン・エリザベスが英米両国のF-35Bを搭載した新しい運用段階に入った。英海軍、英空軍、米海兵隊が共同で新運用体制を準備してきた。

英空軍617飛行隊「ダムバスターズ」と米海兵隊戦闘攻撃飛行隊VMFA211「ウェイクアイランド・アヴェンジャーズ」の合計15機が同空母に搭載された。これと別に英海軍航空隊所属のマーリンヘリコプター8機もある。

各機は同艦に2020年9月22日から順次合流した。英国保有のF-35Bで作戦投入可能な機材は15機で、RAFマーハム基地に展開する。別に3機がエドワーズ空軍基地(カリフォーニア)でテスト評価作業に従事している。

F-35Bで最大の運用事例はUSSアメリカが太平洋を航行中の13機だった。海兵隊の「ライトニング空母」構想では強襲揚陸艦にF-35Bを16機から20機搭載する。

海兵隊は F-35Bの作戦能力獲得を2015年に宣言し、2018年から揚陸艦に搭載している。同年に海兵隊のF-35Bがアフガニスタンで初のF-35B実戦投入となった。

UK MINISTRY OF DEFENCE/CROWN COPYRIGHT

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実戦飛行隊二個から15機を集め空母に搭載するのは英国海軍航空部隊の戦力整備で大きな一歩だ。2010年に英戦略防衛安全保障検討で英海軍最後の固定翼機運用空母HMSアークロイヤルをハリヤージャンプジェット機と合わせ廃止したことからこの構想は生まれた。

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2隻建造される新型空母の一号艦HMSクイーン・エリザベスは2017年6月に初の外洋航海を実施し、スコットランド沖合で公試に入った。ライトニングの初運用は2018年9月の米東海岸沖合で、パタクセントリバー海軍航空基地の統合試験部隊の米海兵隊F-35Bだった。英軍機材の運用開始は2019年10月で同じく米東海岸沖合でのことだった。

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英国防省によればHMSクイーンエリザベス艦上の航空部隊は1983年のHMSハーミーズ以来で最大規模という。

排水量65千トンのHMSクイーンエリザベスはポーツマス軍港を2020年9月21日出港し、F-35Bを搭載し同盟国との演習に向かった。スコットランド北東の沖合で9月21日から10月15日までNATO最大規模の演習ジョイントウォリアーに加わる。

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同空母は英海軍艦艇7隻と同じ行動をとる。これは英主導のNATO空母打撃群構想が来年から実施されるのに先立つ準備作業となる。

「617飛行隊にはわくわくする瞬間となり、米海兵隊とHMSクイーンエリザベスでの来年の本格運用に備えます」と同飛行隊司令マーク・スパローが述べている。「英軍でこれだけの規模の運用は30年も前のことで第五世代機の空母運用としては初のことです。大型空母で高速ジェット機を運用する時代がもどってきました」

「ウェイクアイランド・アヴェンジャー隊は英乗組員、航空要員との業務に向け準備ができています。英軍の同僚と今後数か月を過ごし、大西洋両岸の海軍部隊として全力を尽くします。この重要な責務を同盟国の空母打撃力整備で果たせることに誇りを感じます」とVMFA-211司令ジョセフ・フレシャウアー中佐が語っている。

UK MINISTRY OF DEFENCE/CROWN COPYRIGHT

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英空母打撃群司令スティーブ・ムーアハウス准将は「英国の海軍力復活は今後も続き、新世代艦艇、潜水艦、航空機を投入していく。だがなんといっても意味のある戦闘力として集結させたのは今回がはじめてだ」と述べている。「HMSクイーンエリザベスは第五世代戦闘機航空部隊として最大規模の戦力を運用する。英海軍が主導するが、最も親密な同盟国から支援を受ける、この新空母打撃群はNATOに真の戦力となり、世界規模で役割を希求する英国の決意を改めて示すことになる」

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英空母航空部隊司令ジェイムズ・ブラックモア大佐はこう加える。「F-35Bの海上運用でUSMCに学ぶ点が多い。海兵隊は運用経験がこちらより長く、運用方法を共有できる。だがそれ以上の意味がある。大西洋同盟が動き、親密な同盟国が自国空母からの運用に加え、必要に応じそれぞれの空母から運用可能となるからだ。統合運用により危機、紛争、有事に柔軟な運用に道が開く」

HMSクイーン・エリザベスは10月末にポーツマスに帰港予定だ。F-35飛行隊二個とヘリコプター支援部隊を搭載した同空母により英国は空母打撃群戦力の再整備へ大きな一歩を踏み出した。■

この記事は以下を再構成したものです。日本も将来は英米の艦艇でF-35Bを運用する日が来るかもしれません。逆に日本の「軽空母」での米軍機運用も現実になるのかも。安倍政権が進めた日米同盟の強化が効果を発揮する日がくるでしょう。左巻きの人は戦争をする体制というかもしれませんが、これは抑止力です。平和を維持するためのコストととらえるべきでしょう。

Behold A British Carrier Carrying The Most Stealth Fighters Of Any Warship To Date

British and American F-35Bs have gone aboard HMS Queen Elizabeth for the latest phase of trials.

BY THOMAS NEWDICKSEPTEMBER 23, 2020

 


2020年9月26日土曜日

NGAD試作機のメーカーはどこなのか?

 空軍向け次期戦闘機で実証機の存在が公表されたが、製造企業は謎だ。

空軍調達を仕切るウィル・ローパーは新型機について多くを語らず、すでに飛行しており、一部システムは飛行テスト中で、デジタルエンジニアリングで作成したとだけ述べている。

では謎解きの手がかりを見てみよう。まず試作機は次世代制空戦闘機(NGAD)事業の一部のようだ。

2015年1月、下院軍事委員会で当時の調達、技術、補給活動担当国防次官補フランク・ケンドールは新型機各種をエンジン技術とあわせ空軍、海軍向けにDARPA主導のプロジェクトで開発中と述べていた。

「ねらいは次世代の制空能力を有する機材の試作機を開発することで、Xプレーンと呼んでよい」とケンドールは述べていた。航空宇宙技術革新構想Aerospace Innovation Initiativeと呼ばれ、「技術開発とともに関連リスクを解消し、F-35に続く機体さらに高性能航空機材を実現するのがねらいだ」

「NGAD試作機メーカーの候補にボーイングロッキード・マーティンノースロップ・グラマンがあり、そのほかジェネラルアトミックスも設計した可能性があるが可能性は低い」とキャピタルアルファパートナーズのアナリスト、バイロン・キャランが記している。「テクストロンがスコーピオンで新設計案も一年で飛行させることが可能と証明したが、戦闘用機材にこの技術が応用できるようになったとは思えない」

エンジンはGEあるいはレイセオンテクノロジーズ傘下のプラット&ホイットニー製とキャランはみている。

ではNGAD戦闘機の製造元として可能性のある各社を見ていこう。

ボーイング

シカゴに本社を置く航空宇宙大手の同社はデジタルエンジニアリングに詳しく、スウェーデンのSaabと共同でT-7A訓練機の設計製造を一年未満で完了した実績がある。T-7Aのミッションコンピュータはサードパーティ製ソフトウェア、アプリが実行でき、アップグレードは容易だ。また設計は組立工程の簡易化もねらい、胴体前後部の組立ては15分で完了する。F/A-18スーパーホーネットの胴体組立は24時間かかるとボーイングディフェンスCEOリーアン・カレットが述べている。

 

ノースロップ・グラマン

ノースロップがスケイルド・コンポジッツ Scaled Compositesを子会社にしているのを知る向きは少ない。これは初の民間宇宙船スペースシップワンの設計を担当しXプライズ受賞の企業だ。米空軍向け練習機競作で同社も新型機を組立てたが、参加を見合わせた。

ノースロップはペンタゴンの極秘事業で受注が増えている。B-21ステルス爆撃機事業にキャッシュを相当投じていると思われるが、秘密資金がNGAD試験機にも流れている可能性が十分ある。

同社は地上配備戦略抑止力事業にも参加しており、新型大陸間弾道ミサイルとして冷戦時のミニットマンIIIの置き換えを狙う。ここでもデジタルデザインテクノロジーを使っているとローパーが述べている。

ロッキード・マーティン

同社の高性能技術開発事業(ADP)部門はスカンクワークスの名称のほうが知名度が高いが、ここがこれまで米軍向け超性能極秘機材を数々開発してきた。U-2、SR-71、F-117対地攻撃機があり、同社はF-22ラプター、F-35共用打撃戦闘機も製造してきた。

「ADPは各種事業で多忙だ....デジタルセンチュリーシリーズのほか、第六世代機さらに次世代機がある」とロッキード・マーティンエアロノーティクスおよび傘下のスカンクワークスを率いるミシェル・エヴァンスが述べている。

エヴァンスは民生技術や民間手法を防衛用途に流用するロッキードの試みスタードライブ Stardriveについて以下述べている。「モデルをもとにしたシステムのエンジニアリングをソフトウェアのアジャイル開発やデータ分析やAIにどう応用するかを考えている」「こうした技術から想定外の機会が生まれ今後の装備品の開発期間を大幅短縮するでしょう」

その他企業Someone else

興味深い可能性として新型機は一社のみの製品とならないことがある。デジタルデザインツールの長所として新興企業でもこれまではひとつかみの既成企業のみが独占してきた市場に参入可能となるとローパーが力説している。その例として7月に空軍が有人機に随行可能な無人機開発をもとめたところ18社が応募してきた。

「大手企業の関心度は高いのは予想通りだが、小規模企業からも同様の藩王がある」と空軍物資本部を率いるアーノルド・バンチ大将が記者向けリモート会見で明らかにしている。「デジタルキャンペーンでデジタルエンジニアリングを進めればこれまでより広範囲の企業に門戸が開き、これまで不可能だった企業も参加できるようになるはずだ」■

 

この記事は以下を再構成したものです。

Who is Secretly Building the USAF’s New Fighter?

Officials are mum, so here’s a roundup of clues.

 

BY MARCUS WEISGERBER

GLOBAL BUSINESS EDITOR

SEPTEMBER 16, 2020

 

 


中東での米軍プレゼンスは減少中.....少なくとも海軍・海兵隊関係では

 

家防衛戦略構想が20181月より実施され三年近くになるが、国防長官もジム・マティスからマーク・エスパーに代わり、大国間競合に焦点を当てる構想で米軍の優先順位はどう変ったのだろうか。

この疑問に答える一つの方法が海軍省配下の装備の配備状況だ。特に空母打撃群と揚陸即応集団ならびに海兵遠征部隊が拡大ペルシア湾にどう展開してきたか。これまでの二十年は米軍並びに政策はこの地域に重点を置いてきた。バラク・オバマ大統領は「再バランス」としてアジア太平洋へ転換を図ろうとしたが、ロシアがクリミアを併合した2014年にヨーロッパへ再び注意を寄せた。ドナルド・トランプ大統領はこの筋道をさらに進め国防戦略構想をまとめ、中国、ロシアを明確に重点対象とした。マティス、エスパー両長官はこれに呼応した。

とはいえ、国家防衛戦略構想で米国防総省の兵力配備状況がわかるのか。つまるところ、同盟国および密接な安全保障上の協力国合計60か国を抱えた米国は多数の地域で多大な責任を課せられている。中でも中東にはどうしても多くを向けざるを得ない。

だが海軍関係の配備状況だけに目を向ければ、答えはイエスだ。ある程度までは。根本的な変化とはいえないものの、米海軍は中東への配備を減少させている。

2017年央以降の米海軍艦艇の配備状況を毎月まとめた米海軍協会の「フリートトラッカー」データベースを見れば、空母打撃群、揚陸即応集団の動きが従来のパターンと変化していることがわかる。相違点は二つで、これまで海軍はアデン湾から北インド洋までの範囲に空母打撃群を一個配備してきた。

2018年春から空母打撃群の配備が同地区にない期間が発生している。これは以前と異なる動きで国家防衛戦略の直接の影響と言われる。ペルシア湾に配備されるはずだった空母はバルト海へ向き、マティス長官のいう「戦略的には予測可能だが作戦上は予測不可能」な米軍の動きとなった。

ところが2019年にイランとの緊張が高まるとペルシア湾地区に空母戦力が不在な状態では不安となった。同年の冬、秋には不在だったが、6月に常時展開を再開した。国家防衛戦略の起草に携わったフランク・マッケンジー大将が米中央軍司令官となり空母プレゼンスを求めたためだ。今も重要なことでは変わりないが、重要度が下がってきた中東地区の実態は戦略構想と食い違うことがある。

その意味もあってか、中東地区では2019年冬から海兵隊の艦上待機はなくなっている。カシム・ソレイマニを殺害した2020年春に海兵揚陸集団一個を派遣したものの数か月で撤収させ、その後の配備はない。この部隊の航空支援兵力は空母打撃群の三分の一程度しかないが、二千名規模の海兵隊員を展開した。ミッションによっては意味のある兵力で海上石油施設や小艦艇の制圧にペルシア湾広域で効果を発揮するはずだ。このため、CENTCOM隷下の中東地区に次回揚陸集団が配備されても驚くにあたらない。

総体としては国防総省には二つの意味で賛辞を送りたい。ひとつは世界規模のコミットメントと同盟関係のある中で意味のある展開を維持していることであり、中東地区が戦略的な意味があるとはいえ、艦艇派遣を23割と減らし国家防衛戦略に対応すべく戦力展開に工夫していることだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

How the U.S. Military is Prioritizing Great-Power Competition

September 25, 2020  Topic: Security  Region: Americas  Tags: PentagonMilitaryDefense DepartmentNavyObama

by Michael O'Hanlon 

Michael O’Hanlon is a senior fellow and the director of research of foreign policy at the Brookings Institution.

Adam Twardowski is a senior research assistant at Brookings, where he assists O'Hanlon with his work on U.S. defense and foreign policy, as well as Brookings' Project on International Order and Strategy, which focuses on multilateralism and great power competition. He is a graduate of the Security Studies Program at Georgetown.

 

艦艇数が米海軍を上回ったPLANの実力は? 最新建造状況のまとめ

 https://www.reutersconnect.com/all?id=tag%3Areuters.com%2C2017%3Anewsml_RC11BCEFB440&share=true

 

国の艦艇建造が加速中だ。隻数で米海軍を上回る規模になった。

 

中国の新鋭艦建造では054A型、056型、052D型の各艦が今後3年以内に多数完成する。PLANは太平洋で米海軍にとって代わろうとし、水上艦建造は今以上に増え、空母、強襲揚陸艦も加わり、輸出も増えそうだ。

 

極端なほど早い中国の艦艇建造で人民解放軍海軍(PLAN)は注目の対象になっている。PLANは艦艇の近代化と拡張を同時に実現しつつある。建造規模は冷戦の頂点時もうまわり、空母から海防艦に至るまでここまで迅速に海軍力を整備した国はない。そのため、中国の海軍力に注視し何を目指しているか絶えず理解していく必要がある。

 

【空母では003型に注目】空母は二隻が供用しており、三隻目が建造中である。2017年に一号艦遼寧が海南島及び香港に二回にわたる長期航海を実施したと2018年度版中国の軍事力報告書が指摘している。このことは供用開始後3年が経過しても同艦はまだ海外寄港が皆無だということだ。

 

 

二号艦002型山東は外観寸法ともに遼寧と近く、通常動力艦でスキージャンプ式発艦方法も同じだ。艦橋がやや異なり、新型電子スキャンアレイレーダー(AESA) の搭載が目立つ。搭載機数もJ-15の20-30機と遼寧より増えている。

 

他方で三号艦003型は艦名不詳で上海で建造中だ。002型と異なり、モジュール方式(米国では「スーパーリフト」と呼ぶ)の建造で米海軍向け空母と同様の建造方式となっている。建造方式以外に新型空母は米空母同様の原子力推進となり、蒸気式あるいは電磁式カタパルトを採用したと伝えられる。

 

【075型強襲揚陸艦】正規空母以外でも075型強襲揚陸艦はヘリコプター運用が可能で米海軍ワスプ級に匹敵する。先に就役した071型ドック式揚陸艦に続く075型は全通飛行甲板、アイランド型艦橋をもち、輸送ヘリコプターの運用を想定している。さらに726型ホバークラフトも搭載する。075型は米強襲揚陸艦同様に固定翼垂直着陸機の運用も可能だが、今のところこの性能を有する機材は確認されていない。075型は2025年までに3隻建造される。

 

【055型は巡洋艦】ペンタゴンは新型055型を駆逐艦ではなく巡洋艦に分類している。055型の排水量は13千トンと巡洋艦を名乗る規模だ。米タイコンデロガ級巡洋艦と同様に055型で空母を敵の航空攻撃から防御するのを第一にした多任務艦のようだ。

 

055型巡洋艦の兵装は130ミリ主砲一門、垂直発射管112門で対空、対地、対艦、対潜任務をこなし、ヘリコプター二機を搭載する。055型は2018年7月に二隻が同時進水し、現在6隻が建造中だ。PLANは少なくとも8隻を整備するとみられる。

 

【056型】小型艦建造も急ピッチで、056/A海防艦は50隻目が進水している。056型は旧型フリゲート艦や037型海防艦の後継艦となる多用途艦となる。056型は対潜戦、船団護衛、戦力示威、監視、対空、対艦、対潜をこなす。その派生型056Aでは艦首と艦尾にデプスソナーを搭載し対潜装備を充実している。

 

056型は2012年に建造開始し、中国の建造所各地で1.5か月で一隻完成している。さらにここにバングラデシュ、ナイジェリア向け輸出仕様艦が加わると64隻という大量建造となる。

 

【短い建造期間】054A型、056型、052D型と中国艦の建造ペースは早く、1ないし3年で完成している。

 

これだけの建造能力があり、さらに建造予定が詰まっていると、次の建造艦種に関心が集まる。潜水艦の可能性があるが小型揚陸艦もある。とくに戦車十数両を搭載可能なLSTもある。中国軍事力の実態が外からは見えにくいため不詳のままだ。目指す目標が何であれ、中国はすでにアジア太平洋で主要軍事力を整備したことは間違いない。■

 

この記事は以下を再構成したものです

 

 

How to Tell How Powerful China's Navy Really Is


September 20, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaNavyMilitaryTechnologyWorldChinese NavyPLAN

How to Tell How Powerful China's Navy Really Is

by Kyle Mizokami

Kyle Mizokami is a writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he co-founded the defense and security blog Japan Security Watch.

Image: Reuters.



2020年9月23日水曜日

中国ミサイルからの防御体制を強化せよ。グアム、台湾、海兵隊のこれからの動きに注目。

 

イージスアショアの発射テスト 


「中国は弾道ミサイル攻撃で米国に大使大きく優勢だ」「地上配備巡航ミサイルも大きく優勢だ」


平洋地区の米軍基地が中国の弾道ミサイル大規模攻撃の脅威にさらされる中で、防御体制の整備が遅れているとインド太平洋軍司令官が中注意喚起している。


「中国は弾道ミサイルを米国に向け発射することで大きな優位性を発揮できる」とフィル・デイヴィドソン海軍大将がミサイル防衛推進連盟主催のオンライン討論会で発言した。「地上発射巡航ミサイルでも同様の優位性が中国にある。この攻撃力を考慮する必要がある」


米側の攻撃力増強よりもグアムにある大規模米軍基地の防御体制のほうが課題であり、米艦船、爆撃機、海兵隊の拠点としてグアムは長年重要な地位を占めている。


グアム防衛


「グアム防御だけでも数十億ドルの予算がかかる」と中国の攻撃手段に言及してデイヴィッドソン大将は発言。


弾道ミサイル、巡航ミサイルを食い止めるグアム防衛のか細い防衛線がをデイヴィッドソン大将が懸念し、くりかえしイージスアショアを同島に導入すべきと求めてきた。グアムにはTHAADが配備されているが北朝鮮をにらむ120度範囲でしか対応していない。「360度常時防御態勢が必要だ」とし、「突破不可能、無敵の防衛体制を構築するとは言っていない。実用に耐える抑止力がほしい」


同大将は現時点のグアム防御体制は不十分としながらも何年も待つつもりはない。「完璧対応のため完成が2035年2040年になるのでは困る。脅威は現実のものだ」としている。イージスアショアの17億ドル支出構想は以前から出ているが、同大将はグアムへの導入を2026年までに完了する提案を議会に出していた。


デイヴィッドソン大将は中国が「SAMによる万里の長城」を南シナ海に構築中と数年前に警告しており、同海域で中国の優位性に衰えの兆候はないとする。


デイヴィッドソンは「中国が地上発射方式の巡航ミサイルや通常弾頭ミサイルを大量に保有しており、さらに地上発射極超音速ミサイルの運用も始めれば域内全域をおさめる攻撃能力を備えることになる」とし、米国政府のみならず域内の同盟各国にも深刻な問題だとする。


米国はロシアとのINF条約脱退により新型攻撃ミサイルの開発が可能となり、従来の射程500キロ制約のない弾道ミサイル試作型のテストをすでに開始している。


デイヴィッドソン大将が求める太平洋地区の各基地の防衛策強化構想はペンタゴンの最大の優位性であり最大の弱点ともなる側面に光をあてることになる。つまり米海軍、海兵隊、空軍の数万名が地域内にちらばっていることだ。


こうした大型基地は中国精密兵器の射程内におさまっており、有事となれば数時間以内に中国精密攻撃の標的となるとデイヴィッドソン大将は懸念し、攻撃を受ければ米軍の対応にも深刻な影響が出る。


海兵隊、海軍の運用構想の変化


海兵隊は海軍とともに一部部隊を分散配備する案に取り組んでいる。これを率いるのが海兵隊総司令官デイヴィッド・バーガー大将だ。


バーガー大将は戦車部隊を全廃し、一部ヘリコプター飛行隊も解隊し、浮いた予算を精密火砲攻撃能力の整備に投じる沿岸地帯連隊に再編する構想を進めている。これは対空装備、また対艦装備品を統合した部隊を迅速展開する構想だ。海兵隊は海軍とともに軽量揚陸艦を30隻程度整備する構想を検討中で、供用中の揚陸用艦艇より相当小型のものとなる。


海兵隊ではF-35Bの燃料補給・装備再搭載に無人装備もテスト中で、遠隔操作で太平洋の激戦地区で運用する。今後は従来の米軍の海上、空中の支配力の退潮が予想される中で、迅速かつ予測不能な展開をめざす構想の一部となる。

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海軍では新型フリゲート艦建造に乗り出しており、今後は現行の沿海域戦闘艦より小さい海防艦の整備も検討する。


台湾向け武器売却  


米中両国が艦船航空機を南シナ海他に展開する中で域内に緊張が高まってきた。引火点となりそうなのが台湾だ。9月19日、中国は戦闘機爆撃機18機を台湾海峡に展開した。これはキース・クラッチ商務次官補が最高位の米高官でとして台湾に入り、李登輝元総統の告別式に参加したことへの対応だった。


米高官の訪台以外にも中国は米国の動きに神経をとがらせている。トランプ政権は新型兵装数億ドル相当を台湾へ売却するとし、従来は防御用に限定されていた以上の装備品売却に向かおうとしている。


検討中なのが空対地AGM-84Hミサイルで、F-16から発射し台湾海峡の中国艦船を攻撃したり、地上目標を撃破する。


トランプ政権はF-16の66機を80億ドルで台湾へ売却すると2019年に発表し、台湾向けでは史上最大規模の装備品販売となった。


その他リーパー無人機、HIMARSトラック搭載ロケット弾、ハープーン対艦ミサイルも売却する。


これに対し北京では国防部報道官Ren Guoqiangが9月19日の軍用機飛行を正当化し、「台湾海峡で進行中の事態に対応し国家主権と領土防御に必要で正当な行為だ」と述べた。


先月もアレックス・エイザー保健長官の訪台中に中国は台湾海峡中央部を超える飛行展開を実施していた。■


この記事は以下を再構成したものです。


PACOM Chief Warns Of Threat To Guam; China Presses Hard

By   PAUL MCLEARY

on September 18, 2020 at 3:22 PM




2020年9月22日火曜日

航空機の新しい開発製造方法となるデジタル技術の概要がわかってきた

 空軍が発表した次期戦闘機の試作型ではシミュレーション他デジタルツール各種が用いられており、米軍装備品の開発生産に新時代が到来したようだ。

 空軍が公表した次世代制空戦闘機(NGAD)の資料は中身がないに等しいが、飛行実証機材は記録を数々破ったようだ。判明しているのは空軍と社名未公表の契約企業が仮想空間で機体を設計したことで、従来の数分の一の時間で製造しテストにこぎつけたことだ。ちなみにF-35では製造だけで10年超が必要だった。

 「『eプレーン』で設計が短期間で可能となり、組立も短時間で完成し、テスト開始が早まり、データを量産機に反映できるようになった」と調達トップのウィル・ローパーが述べた。「事業のライフサイクルを通じデジタルスレッズすべてが加速化されている。加速すれば重要問題に集中できる。デジタルモデルに既知内容を放り込めばよい」

 仮想化自体は前からある。新しいのは計算能力の高さとデータの利用で現実物と一寸たがわぬデジタル版を作り、活用することだ。このデジタルツイニングdigital twinningは2002年のマイケル・グリーブス(ミシガン大プロダクトライフサイクル管理センター)による発表にさかのぼり、センサーの測定データで現物のデジタル版を作成するとあった。

 「このモデルの根本は各システムを二つのシステムで構成することにある。物理システムと仮想システムで後者は物理システムの全データを活用する」とグリーブスはその後2016年論文に著している。「つまりシステム同士を現実空間と仮想空間で鏡像関係あるいは双子関係にする」とあり、国防総省は次世代戦闘機の設計構想の探求に入っていると述べていた。

 NGADに関して空軍はF-35及びT-7訓練機のデータを活用し仮想試作機を開発してから物理的に飛行可能な機材を作成した。

 「今回の発表は『eプレーン』を製造して仮想空間で飛行させているだけでなく実寸大の飛行実証機材が完成済みで現実世界で飛行を開始しているというものです」(ローパー)

 さらに各種eプレーンの迅速製造に必要なデータが空軍にあり、既存機種の改良に加え完全新型機も手に入る能力があるという。ローパーはT-7の後継機ならテストは小規模で十分と述べている。 

 デジタルツイニング構想は空軍だけのものではない。アップルはiPhoneでこれを実施している。テスラは製造各車のデジタルツインを作成し、車両センサーがテスラに問題の発生を伝えてくると、修理工場での作業あるいはソフトウェア改修で解決できるかを区別してくれる。センサーデータはすべて新型車に反映され、現実世界での各現象が次の車両のもととなる。

 国防総省は宇宙空間にもこの応用を狙い、2018年4月に研究開発技術担当の次官補マイケル・グリフィン(当時)は議会で仮想化とシミュレーションを兵装、ネットワーク、装備の各分野に応用する必要を訴えていた。

 「わが方および敵勢力の装備のデータを共用シミュレーションで統合運用する能力を整備中で、高精度の評価がミッションレベルのシナリオで可能となれば、国防総省には各装備が実際にどこまでの威力があるのかが把握できるようになる」とグリフィンは発言していた。同年その後には国防総省に新デジタルエンジニアリング戦略の採択を急がせているとも発言していた。

 ペンタゴンはUptake社と契約を昨年結び、ブラッドレイ戦闘車両の仮想ツインで整備問題の予測予知の精度を上げようとしている。ローパーによれば将来は衛星から大陸間弾道ミサイルまで全装備の開発に同技術を応用するという。

 コンセプト提唱者グリーブスは最近になりデジタルツイニングの応用は空母他軍で必要とするほぼ全装備に広がっていると述べている。「仮想製品、現実製品を並べて見せたとしましょう。ほぼ全員がその違いは区別できないはずです」■

この記事は以下を再構成したものです。


The Virtual Tools That Built the Air Force’s New Fighter Prototype

“Digital twinning” is coming to a battlefield near you.

 

BY PATRICK TUCKER

TECHNOLOGY EDITOR

SEPTEMBER 15, 2020

 

先にお伝えしたeT-7Aというのは仮想空間上の機体名称の可能性が出てきましたね。今後はっきりするはずですが、まだ情報が錯そうしています。概念的には今回の記事で道筋がはっきりした気がします。