2014年8月5日火曜日

中国の衛星攻撃能力開発は弾道ミサイル防衛も狙っているのか



China Developing Capability To Kill Satellites, Experts Say

Aug. 4, 2014 - 03:11PM   |  
By WENDELL MINNICK   |

TAIPEI —米国防関係者と国務省は中国が7月23日に成功した「対ミサイルテスト」の実態は衛星攻撃テスト anti-satellite test (ASAT) とみている。運動エネルギーによるASAT実施はこれで3度目で、米国では情報収集・航法・通信各衛星を防御しきれないのではと警戒を強めている。

  1. 今回の衛星迎撃テストは人民解放軍(PLA)が中国上空を通過する他国衛星を破壊する能力を有しているのを示すものとプロジェクト2049研究所 Project 2049 Institute の中国ミサイル専門家マーク・ストークス Mark Stokes は見る。

  1. SC-19(DF-21弾道ミサイルとほぼ同形)に運動性破壊機を装着した。宇宙空間上の目標破壊に成功したのは2007年テストだった。2010年と今回のテストでは弾道ミサイル迎撃に成功している。
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  1. 前回の気象衛星破壊はデブリ帯を作り他国の宇宙機の運航を危険にしたと国際非難を招いた。このため中国は弾道ミサイルの迎撃に切り替えたとみられる。

  1. 今回の実験はストークスによれ宇宙迎撃専用に作られた新型固体燃料ロケットのテストだった可能性もあるとし、名称はHongqi-26 (HQ-26)であるという。

  1. 国際評価戦略センターの中国軍事専門家リチャード・フィッシャー Richard Fisher, a China military specialist with the International Assessment and Strategy Center は2007年の初回テスト後に人民解放軍は衛星攻撃手段を隠蔽し低高度の対ミサイル迎撃実験と称することにしたのではないかという。「SC-19テストはASATとABM(対弾道ミサイル)能力の両面をねらったものだったのかもしれない」

  1. 中国がABM能力獲得に真剣になっていると信じる向きは少ないが、アメリカ科学者連盟 Federation of American Scientists の核情報プロジェクトを主宰するハンス・クリステンセン Hans Kristensen はその一人だ。

  1. 「なぜ中国がABMシステム構築に多大な努力を払うのか、米ソが長年にわたり構築しようとしたが部分的な成功しか収めていないのに」と言い、中国がABMの実用化に一夜にして成功するのはありそうもないという。

  1. また中国が米国のミサイル防衛に反対する一方で自前のABM開発を進めるのは矛盾しているとクリステンセンは見ており、中国のシステムが高性能な米ロの核ミサイルに有効な能力を有しているとは思えないが、インドなら話は別だとみる。

  1. 「インドが中国のABMで自国の小規模な核抑止力の実効性が危うくなると判断すれば、中国を狙う長距離ミサイルを増強する動きに出る、あるいはMIRV(多弾頭独立攻撃型再突入部分)を装備しようとし、結果として中国は自国の安全を守るのではなくむしろ危うくしてしまう」

  1. フィッシャーは中国は衛星攻撃とABMの双方を同時に開発中とする。SC-19にASATとABM能力が両方備わっている可能性もあるという。新型HQ-19とHQ-26の想定性能は米国の最終段階高高度地域防衛システム(THAAD)と同程度とフィッシャーは見ている。また中国がロシア製S-400低高度ABMの調達を狙っているとの報道もあるという。

  1. クリステンセンも中国は多様なプロジェクトを同時実施する潤沢な予算があるとし、「中国がABM技術で自国防衛を図ろうとしているのか潜在敵国のミサイル防衛を無効にしようとしているのか興味深い点」としている。

  1. フィッシャーもより大きな観点は中国があれだけc米ミサイル防衛を「長々と批判演説」をほぼ30年にわたり繰り広げてきたあげく、実は自前の弾道ミサイル防衛システムを開発していた点だとする。「中国の第二次ABM、ASAT開発が実は1990年代初頭にはじまっていたと判明しています。戦略核兵器に関する中国の発言の信ぴょう性が傷つく以上に、米国は2020年代に高性能核ミサイルに加え有効なミサイル防衛能力を持つ中国に直面する現実を今から覚悟しなければなりません」

2014年8月4日月曜日

米陸軍次期ヘリ開発 実証事業者の選定が遅れる






US Army's JMR Helo Selection Slips

Initial Flying Demonstrator Planned for 2017

Aug. 1, 2014 - 05:44PM   |  
By PAUL McLEARY   |   Comments
Next Helos: The US Army's Future Vertical Lift program would replace its Black Hawk and Apache helicopters.
米陸軍の次世代垂直離着陸機事業は現行のブラックホーク、アパッチヘリの後継機をめざすもの(US Army)

WASHINGTON — 米陸軍による野心的な共用多用途 Joint Multi-Role (JMR) ヘリコプターの技術実証契約企業絞込みが7月中に完了できなかった。陸軍は今月中に選定結果を発表する。
  1. JMR提案競争に参加中の民間企業チーム4つを「8月末あるいは9月はじめ」に招集し、今後の進め方を協議したいとし、2社への絞り込む作業が招集時までに終わっているはずだと陸軍関係者は言っている。
  2. 担当主査のダン・ベイリーDan Bailey によるとこの会合時に「選考結果として技術内容と企業チームを明示」しさら次の目標である大型の次世代垂直離着陸機 Future Vertical Lift  開発にどうつないでいくかを話しあうという。
  3. とはいえ今回の変更で計画全体への影響は限定的だ。陸軍の希望は飛行実証を2017年、次世代垂直輸送機FVLの運用開始を2030年代中頃としており、ここでJMRが技術実証機として役割を果たす。
  4. ただし陸軍から作業の遅れの理由の説明はない。陸軍は予算強制削減以前に2019年までに350百万ドルをJMRに使う予算案を作っていた。
  5. 開発主査のベイリーは2016年に強制削減措置が続いていても開発の大きな障害にならない、なぜなら陸軍の将来にとって同事業が不可欠なものだからだという。
  6. 冷戦時代の産物であるブラックホークやアパッチ攻撃ヘリの後継機としてFVLが想定されている。「市街地における将来の作戦では垂直飛行が絶対条件」(ベイリー)
  7. その一環として7月11日にはボーイングシコルスキーのチームがJMR向けの共用共通コンピュータ構成 Joint Common Architecture (JCA)  開発先として陸軍から選定されている。JCAとは各ミッションシステムをFVLに統合する「デジタル基盤」とシコルスキーは発表している。
  8. シコルスキー・ボーイングチームはDefiant (挑戦)案を陸軍に提出している。同機は反回転同軸ローターと推進用プロペラーを搭載したシコルスキーX2を原型とするもの。
  9. 陸軍は2013年にベルAVXカレム、ボーイング・シコルスキーに各6.5百万ドルを交付し、技術実証事業を開始させている。この内2社が絞り込みで脱落する。ベイリーは競争は公平に行われ、陸軍は各社技術から最適な選択をすると公言している。
  10. 選定二社に予算を分配し、また陸軍が期待する技術内容もそれぞれ担当させることになろう。■

2014年8月3日日曜日

UCLASSと次期艦載有人機F/A-XXの微妙な関係 海軍航空部隊の価値観の問題が無人機開発を妨害しているのか





UCLASS Requirements Shifted To Preserve Navy’s Next Generation Fighter

By: Dave Majumdar and Sam LaGrone
Published: July 31, 2014 3:49 PM
Updated: July 31, 2014 4:53 PM
A Boeing artist's conception of a potential design for F/A-XX. Boeing Photo
ボーイングによるF/A-XX構想図. Boeing Photo


米海軍の無人空母運用型監視攻撃機 Unmanned Carrier Launched Airborne Surveillance and Strike (UCLASS)のステルス性と攻撃力の想定が引き下げられたことで海軍の次期主力戦闘機の存在意義が守られる結果になった。


  1. UCLASSが敵地奥深くに進攻するステルス攻撃機から軽武装の情報収集監視偵察機(ISR)に変更されたことでF/A-XX有人機版(ボーイングF/A-18E/F後継機)が残る結果になると海軍、国防総省、業界筋からUSNI Newsは確認できた。

  1. 各筋は「空母に無人機を導入することへ役所的ならびに価値観の抵抗」があることをにおわせている。

  1. 海軍内部で伝統的価値観に染まった航空関連部署が有人機温存を図り、無人機に攻撃任務を任せルのを容認するのはほんの一握りにすぎないという。

  1. 「一般的に海軍の航空部隊はUCLASSや無人機の空母運用では意見がまとまっています」とUCLASSに求める要求性能が二転三転している現状を元海軍高官はコメントしている。「F/A-18後継機となる有人機を無人機とまともに競争させないためにどうしますか。無人機をISR専用にするか、ISR機で限定的攻撃能力のみ有する機体にするか、脅威度が低い空域でしか運用できない機体にしておけば有人戦闘機とのすみわけが可能ですね」

An artist's concept of General Atomic's Sea Avenger UCLASS bid taken from a display monitor. US Naval Institute Photo
UCLASSへのジェネラルアトミックスのシーアヴェンジャー提案
US Naval Institute Photo

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  1. 具体的にはF/A-XX構想は海軍航空戦力の近代化策として検討中だが、有人攻撃戦闘機として温存できることは有益だと海軍はじめとする複数筋が認めている。ただし海軍は両構想を直接関連付けていない。
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  1. 「海軍は F/A-18E/F後継機種の開発にむけ分析業務中」とペンタゴンの戦術航空機開発室Program Executive Officer for Tactical Aircraft Programs [PEO(T)]の報道官ロブ・クーンRob Koonは説明している。同室は海軍航空システムズ本部内にありUSNI Newsあてに文書で伝えられてきた。「UCLSSとは別個の作業であり、調達方針も異なる」

  1. たしかに両機種は別個の関係だが、ある筋によれば海軍は予算的にも政治的にも同時に高価かつハイエンドの三機種を同時開発する力はないという。UCLASS、F/A-XXおよびロッキード・マーティンF-35CライトニングIIである。

  1. そのためUCLASSをISR任務中心にして無難に実現させることにしたのだと複数筋が認めている。

  1. UCLASS単価を調達可能な額にすることが開発過程で表面化したのは2012年の要求性能の大幅変更とその翌年に海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将がこれを承認したことによる。

  1. 「初の艦載無人機システムとなるので、十分な注意を払い慎重に要求性能および調達配備の計画づくりを心がけ、性能と価格のバランスをとり、戦闘上の要求性能を時間通りかつ予算内で実現できるようにした」とマット・ウィンター少将(Rear Adm. Mat Winter, NAVAIR’s PEO Unmanned Aviation and Strike Weapons (U&W).)は書いている。

  1. 「そのため調達戦略で承認を得たうえで、調達可能な価格で妥当な性能で耐久性のある無人艦載機を実現し、艦隊の要求性能を見たし、空母飛行隊を今後数儒年間にわたり革命的に変革する機体にしようとした」

  1. このUCLASS調達方針を支持する中にはジェイムズ・ウィネフェルド大将 Adm. James Winnefeld(統合参謀本部副議長で合同要求性能検討委員会(JROC)の長でもある)、ショーン・スタックレー海軍副長官Sean Stackley(研究開発調達)、海軍作戦部長付き航空機要求性能担当および情報優位性担当部門があると複数筋からUSNI Newsは把握している。

The X-47B on the deck of the USS Theodore Roosevelt (CVN-71) on Nov. 10, 2013. US Navy Photo
USSセオドア・ローズヴェルト艦上(CVN-71)のX-47B
US Navy Photo

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  1. ISR特化型のUCLASS構想には議会、学会始めペンタゴン内部からも反対の声が起こっている。

  1. 上院国防歳出委員会からは2015年度予算案で示された性能内容への説明要求が出ており、下院軍事委員会シーパワー・兵力投射小委員長のランディ・フォーブス議員Rep Randy Forbes (共、ヴァージニア)は一貫してハイエンドUCLASS構想を支持している。

  1. 国家防衛審議会National Defense Panel (ペンタゴンの4年間国防計画検討報告を作成する独立監査機関)からはハイエンド無人艦載機の実現を求める見解が7月31日に出ている。

  1. 「合衆国の海洋兵力投射能力は長距離攻撃能力によってこそ強化されるのであり、有人、無人のいすれでもステルス性が望ましいが、合衆国の航空母艦あるいはその他の移動艦船から発進して正確で制御可能かつ威力のある攻撃を行いつつ、今後ますます威力を増す長距離精密対艦巡航・弾道ミサイルに対して生存性を確立することが肝要である」と同審議会は報している。

  1. その他にもペンタゴン内部にはUCLASSを多用途機とし、接近阻止領域通過拒否の環境でも運用できるようにすべきと主張している向きがある。ボブ・ワーク国防副長官Bob Work,、海軍長官レイ・メイバスRay Mabus、マイケル・ヴィッカース Michael Vickers 国防次官(情報担当)、クリスティン・ウォーマスChristine Wormuth 国防次官(政策担当)他だと複数筋からUSNI Newsは把握している。

  1. ペンタゴンでは要求性能内容を見直す動きがある。そこでUCLASSの最終要求性能の定義完了は先送りされて8月予定のワーク副長官による検討を待つことになったとUSNI News は知った。

  1. ワーク副長官は長距離攻撃に特化したUCLASSを支持するグループの一人で厳しい防空体制や強力な敵水上艦船に対しても作戦可能な機体を求めている。

  1. 最新の敵艦船には高周波目標捕捉レーダーだけでなく低周波レーダーも搭載されており、戦闘機大のステルス機の探知が可能だ。

  1. またコンピュータ処理能力の向上で、低周波レーダーが兵器誘導までできるようになってきた。このため全方位ステルス性能が必須になると専門家は見ている。全方位ステルス性を有する機体でないと高性能の敵最新鋭艦の撃破は不可能で、これ以外だと潜水艦や長距離対艦巡航ミサイルのみ対応可能だ。

  1. さらに敵攻撃の有効射程距離外に空母が待機するためUCLASSには長大な航続距離が必要となる。

  1. かつては空母は沖合から作戦実施が可能だったが、今や安全ではなくなっている。これは戦術戦闘機が制約を受ける作戦シナリオがあることを意味する。■

主張: 空軍を廃止せよ



Opinion: Abolish the Air Force

Jul 31, 2014Robert Farley | Aviation Week & Space Technology

組織面で見る限り、現在も1947年と変化がない。特定機能を専門に提供すべく各軍が創設されてきた。大戦間の航空兵力信奉者は航空軍独立を求めていた。陸と海の指揮官には軍事航空が変化し続ける重要性が理解できないからだ。技術、産業界、教義の各面で陸軍、海軍の視野の狭い権益により進歩が妨げられ、航空部門はいわば羽を広げることができない状態だった。

  1. 独立した空軍を求める議論の裏には航空兵力を独立させて本当に効果があるのかという問いが長い問があった。航空兵力の信奉者は空軍力で戦争に勝てると大げさな主張をしつつ、陸軍や海軍は不要だと吹聴した。この主張が軍事問題を真剣に考察した結果なのか単に縄張り争いから発したものなのかは今でも議論の種になっている。

  1. 陸兵や水兵から独立した軍を航空兵に与えることは航空兵力をめぐる組織間の陳情活動になった。1947年の遺産は「軍事航空をどう組織化すべきか」という難しい課題であり、答えはますます困難になっている。記者の著作Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force,(合衆国空軍解散)では各軍の改革が必要であり、空軍は陸軍と海軍の一部に改編されるべきと主張している。

  1. 合衆国は計5つの航空兵力を持ち、それぞれ独自に調達、訓練、ミッション運用を行っている。米空軍、海軍航空隊、海兵隊、陸軍、沿岸警備隊である。それぞれが独自規程で運用し、相互に複雑な関係を保っているのが現状だ。

  1. 各軍の創設すると官僚主義の壁が生まれる。その中には必要な壁もある。訓練や部隊の価値観で各軍は異なるからこそ、それぞれのもとめる役割を極めることができる。一方で、意味がない有害な壁もあり、調達が非効率になったり、戦闘時に装備が不足したりする。

  1. 近接航空支援やA-10をめぐる議論に終わりが見えないのは空軍あるいは陸軍の将校が愚鈍なせいではない。むしろ空軍と陸軍が装備を巡って争うことで共同作戦能力を阻害する構造を作ってしまっている。
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  1. そこで空軍を陸海軍の組織に編入すれば以下の政策目的二つが達成できる。

  1. ■まず、必然的に調達改革が生まれる。これは各軍の意思決定が変わるためだ。国防総省の調達手順は各軍の要求にそって制定されているものだ。1986年のゴールドウォーターーニコルス改革で合同訓練に道が開けたが、調達では依然として各軍ニーズ中心で行われており、そのため各軍の価値観や近視眼的利害がからみあったままだ。これにより戦争への準備や装備調達で各軍が分断されたままである。
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  1. ■二番目に国防総省による合同作戦遂行の方法が変わる。1947年以来初めて戦闘部隊を真の意味で統合できるからだ。航空兵力はいつも軍事作戦に関与している。第二次大戦が終結してから平時に戻るといつも各軍間に実行能力の期待と実態に大きな差があったことが明らかになっている。戦時になりこの差が埋まるのだが、ここでもゴールドマン―ニコルス法案が助けとなっているが、無人機を巡る意見の対立、ゲリラ鎮圧の教義を巡る対立がここ十年間に発生しているのを見るとこの問題の困難さが見て取れる。

  1. 問題解決には必ずマイナス面がある。空軍部隊に自律権を与える国が世界の大勢であるが、実態は各事例で異なる。我が国にかけているのは各軍の保有する航空部隊を正当化する思考である。その中でももっともよくいわれているのが手段が違うのだから違う組織が必要だ、というものだが、よく考えれば破たんしている。(我が国が空軍五種類を運用している実態を見てほしい) また陸兵にも水兵にも空軍力を重視しなくてもよいと説明することはもはや不可能だ。たとえば潜水艦部隊には独自の軍は不要である。なぜなら海軍には潜水艦を戦略上、通常作戦両面で統合することでその存在を十分理解しているからだ。

  1. 各軍の境界線は1947年当時には意味があったのかもしれないが、現在は健全な戦略・戦術思考の阻害になっているだけで、調達業務を邪魔しているだけだ。政府組織内の官僚主義を打破するのは困難だが、やればできるはずだ。

Farley is an assistant professor at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky.
本記事の著者ファーレーはケンタッキー大学パターソン外交国際商務大学院で助教を務めている。


コメント: あるのがあたりまえ、ではなく目的から考えて(ここでは調達と作戦運用)から考えると空軍の機能を陸軍、海軍にそれぞれ持たせればいいではないか、という主張ですね。じゃ宇宙はどうするんだ、と聞きたくなってしまいますが、これもF-35で頂点に到達した調達のずさんな実態に対する忍耐力の限界から出てきた主張なのではないでしょうか。ファーレー助教もむしろ「気付き」を読者にあたえるためにあえて主張している気がしますが、こういう主張ができる、またそれを堂々と発表するメディアがあるところがアメリカのすばらしさですね。


2014年7月31日木曜日

米空軍のこれからの30年戦略案(総論)が発表されました。



総論としてコンパクトなつくりのようですが、議会との関係改善などお題目だけに終わっている感じですね。技術開発については空軍のこれからの動きに要注目です。ISRを抑止力でとらえる、指向性エネルギー兵器の開発などさらに注意が必要な表現もあるようです。なにかと話題が乏しい米空軍ですが、先を見越した戦略で盛り返しを見せるのか、それとも絵に描いた餅でおわってしまうのか、今後が大事ですね



New US Air Force Strategy Emphasizes Closer Ties With Industry, Congress

Jul. 30, 2014 - 01:03PM   |  
By AARON MEHTA   |  
House Armed Services Committee Holds FY2015 Air Fo
空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将と空軍長官デボラ・リー・ジェイムズが下院軍事委員会で3月に証言している。新戦略案では議会との関係改善を重要視している。(Chip Somodevilla/Getty Images)

WASHINGTON —米空軍は今後30年間を展望した新戦略を7月30日に発表し、産業界とは密接に協力し、議会とはよりよい関係を築き、人材と装備では柔軟性を高めたいとする。
報告書は「アメリカの航空戦力:未来に向けた選択」“America’s Air Force: A Call to the Future”の表題で参謀総長マーク・ウェルシュ大将が求めた広範な戦略検討作業の成果物である。ウェルシュ大将は従来より長期間をにらんだ作業を求めていた。
文書は22ページで大目標の設定にあてられている。これとは別に20年の視野で「戦略マスタープラン」 “Strategic Master Plan” を2014年末までに完成させ、より具体的な目標と目的を明らかにする予定。

【ロードマップの要約】
今回の30年文書ではウェルシュ大将とデボラ・リー・ジェイムズ空軍長官Air Force Secretary Deborah Lee James の考える空軍の未来へのロードマップが示されている。その特徴は以下の四点。
■ 「新技術による急速なブレイクスルー」が今後も続き、空軍は技術優位性を確保するため柔軟な対応が必要。
■ 地政学的不安定度は今後も続き、「現時点での地政学的現実だけで脅威へ準備するのは不適当」
■ 空軍が対応を迫られる「広範囲な作戦環境」に敵対的、非敵対的双方の環境で運用できる装備とともに人道救難活動でも苛酷環境に対応した装備が必要。
■ 空、サイバー、宇宙の各空間で「グローバル防衛」の必要性。
この4分野の取り扱いには「戦略的機動性」 “strategic agility” が必要で、空軍は柔軟かつ状況適合的に脅威対象に対応する必要がある。
「戦略的機動性の実現ではじめて20世紀の産業社会のパラダイムの現状から「脱する」ことが可能となる。

【人材活用と組織改編】
この機動力の源泉はいくつか考えられている。空軍人員には空軍を離れ現実世界で経験を積ませてから復帰できる制度を構築することだとし、本人の経歴に汚点とならないようにする。
「勤務中断」として常勤から非常勤に切り替えても本人の経歴上不利にならないようにする。さらに空軍外で得る経験を好意的に評価する」(同報告書より)「同様に各人の職歴開発モデルを真剣に考え、専門分野での経験機会とともに昇給昇進の機会を空軍
同報告書では同時に「個性を重視した広範な価値観」を空軍内部で認めるべきと重視しており、その目標を空軍本体、州軍、予備役の一体化におく。


開発と企画化の迅速化は同時に調達業務を軽減する一方、民間産業界との連携を一層必要とする。
「将来の調達では今以上に価格妥当性が重要要素になるので、民間産業の知見を利用すべきだ。民間では利益が動機とない競争が発生している。この競争と調達方法ならびに開発過程の改革で生き残りを目指したビジネスモデルができている」
ジェイムズ長官もこの競争機動力をファーンボロ医国際航空ショー会場でのスピーチに盛り込んでいる。
「手続き、作業の両面が硬直化したままになっている....仕事の完了にあまりにも時間がかかりすぎている。もっとお互いに自由に話し合って学びあうことが必要だ」(ジェイムズ)
報告書でもう一つ重要な強調点は「協調」で、シンクタンク、業界そして議会との関係強化である。
この数年にわたり議会と空軍の関係はぎくしゃくしてきた。このことを報告書も認め、改善を公言している。A-10などの装備退役と言う空軍の掲げる目標に対し、議会が法令審査面で妨害をとってきたが、一言に改善と言っても簡単には実現しない。.

【技術開発】
技術面では機動性の意味は科学技術分野との仕事の緊密化により新技術の開発育成をすすめることだとする。
「有望な科学技術上のブレイクスルー結果を利用することで将来の作戦能力の拡大の可能性が高まる。これとともに性能要求の定義と調達制度の中に『見直し』の機会を増やすことで内容の変更あるいは中止を途中で行えるようにする。また試作品開発を迅速化し、装備の実用化までの経費を節減する」としている。
モジュラー化で技術の実用化を加速するほか、世界で活動する各部隊に選択肢の幅がひろげられるとする。
報告書の中で特に細かく記載があるのが「根本を一変させる」“game-changing” 技術開発が進行中であり今後の空軍の方向性にも大いに関係があると説明しているくだりだ。
五つの分野を取り上げている。極超音速兵器、ナノテクノロジー、指向性エネルギー、無人機、自律技術だ。
各分野は開発中であり報告書はこれですべてではないと特記しているが、各技術は空軍研究部門だけでなく産業界トップで新規投資を決断する必要のある層にとっても重要なロードマップを示すものだと説明。
マーク・ホステジ空軍大将Gen. Mike Hostag(空中戦闘司令部司令官)は指向性エネルギーの実用化を期待しており、弾倉大の大きさにしてF-22やF-35に搭載するのが目標だとする。「指向性エネルギー兵器を開発中の各種研究施設を訪問してきた。驚くべき成果があらわれつつある」
ホステジはあわせて業界と空軍が今以上に協力して新技術開発にあたることを期待していると発言。航空戦闘軍団は研究部門、運用部門と産業界を一緒にするための「革新会議」“innovation conferences” tを開催していると説明している。「目標は民間企業に対して当方の研究結果への関心を持たせ、この技術で空軍と協力したい、と言わせることだ」
「産業界の提携先各社へはIRAD(空軍自由研究開発)資金を提供しており、各社にとって不可欠なものとなっている」とホステジは発言している。「そこから将来の利益を生む製品が生まれる。IRADから戦闘に必要な技術が生まれる。その意味で科学技術への投資で研究成果が生まれるように維持するのは大切だ。しかし同時に民間企業が同じ技術を取り入れた製品を実際に作ることが重要だ」

【抑止力】
報告書では抑止力の近代化についても触れている。「21世紀においても確実な核抑止力は絶対的に必要な存在だ」とし、
小規模な脅威(例、アルカイダのようなテロリスト)の阻止は核兵器では不可能だが、現実的にはイランのような国が合衆国にサイバー攻撃をしかけたら核による対応策の可能性が出てくる。
そうではなく新抑止政策として経済的かつ即応性の高い技術を基盤とする手段が必要だ。サイバーはここでおおきなやくわりがあるが、高性能ISR機材も忘れてはいけない。
「巨額の予算で敵を一網打尽に圧倒するのではなく、革新的かつ低価格な選択肢が必要だ。それを行使した場合敵に高額の対応が必要となる選択肢だ」と報告書は述べる。「わが方によるミサイル防衛コストが敵のミサイル製造・運用コストを大幅に下回れば、戦略上の方程式が大きく変化することになる」■


米空軍の新型静止軌道監視衛星 運用近づく


USAF Ready for New Geosynchronous Overwatch

Jul. 27, 2014 - 05:00PM   |  
By AARON MEHTA   |   Comments


A Delta IV rocket carrying the first two satellites for the GSSAP program awaits launch on July 25.
A Delta IV rocket carrying the first two satellites for the GSSAP program awaits launch on July 25. (United Launch Alliance)

WASHINGTON —米空軍はまもなく新型スパイ衛星を投入し、宇宙空間の監視にあたらせる。.
  1. 静止軌道宇宙状況把握プログラムGeosynchronous Space Situational Awareness Program (GSSAP) で構築する衛星群の第一陣2基を投入し、宇宙空間上の目標の追尾能力が実用化されると空軍の宇宙関連トップが説明している。
  2. 「新型衛星はわが方の静止軌道上アセットの防衛に加えて他国が重要な軌道上に配置しようとする悪意ある動きを監視するもの」とウィリアム・シェルトン大将Gen. William Shelton(米空軍宇宙司令部US Air Force Space Command,)が記者団に説明している。「この二基の衛星が送る画像で静止軌道上の動きが克明に把握可能となる」
  3. 打ち上げは悪天候で予定変更になったが、25日時点でユナイテッドローンチアライアンス社が再度準備に入っていた。打ち上げはULAのデルタIVロケットでケイプカナベラル(フロリダ州)から行われる。
  4. GSSAPはオービタルサイエンシズ社が製作して2月まではその存在は秘匿されていたが、シェルトン大将がスピーチで明らかにしてしまっている。第二陣の衛星一組を2016年に予備として打ち上げる予定があることも報道陣に明らかにした。
  5. GSSAP衛星は高度の機動性を有し、「必要な画像情報の収集に最適な位置に」移動させることができる。
  6. ただし宇宙関係者の間でGSSAPが攻撃能力手段と受け止められかねないとの懸念が出ている。移動能力がGSSAPの目指す目標であるが、他国が宇宙空間で行う活動を監視することになるからだ。
  7. 「この衛星の目的は宇宙空間の監視能力向上とともに米国の安全保障上重要な衛星を敵から守ることにある。それはそのとおりなのだが、宇宙空間監視の実効性を上げるにはまだ相当時間がかかると思う」と Secure World Foundation.の技術顧問ブライアン・ウィーデンBrian Weedenは語る。
  8. 「米国政府が今後どのようにしてこの衛星は攻撃手段ではないと説明するのが重要な問題になるだろう」
  9. これに対し「この衛星はあきらかに攻撃手段と受け止めれる」と言うのが Teal Groupアナリストのマーコ・カセレス Marco Caceresだ。「米空軍が防衛を一義的に考えているのは明らかだが、他の衛星の近くまで寄って修理あるいは燃料再補給あるいは監視する能力があれば、邪魔な衛星を除去したくなるだろう」
  10. シェルトン大将は米国には他国衛星を追跡、把握する権利があると主張。「脅威の対象になりそうな衛星の周囲を監視する権利を有している」
  11. またGSSAPのような事業が必要な理由をこう述べている。「宇宙空間上の対抗手段が多数実用化されそうだ。しかも意外に早く実用化されそうだ。国家としてその状況に合わせていく必要がある。」.
  12. 「宇宙は平和な空間と見られてきたので宇宙機は比較的脆弱にできており、防衛手段を考慮する必要がなかった。しいていえば衝突の可能性だけ心配してきたが、自国の衛星にちょっかいを出す他国の存在はもう想定外ではない。そこでこれからは宇宙機も生存性を上げる工夫が必要になる」.
  13. 退役を控えた同大将にとって宇宙空間での追尾能力整備は一つの信念になっているのだろう。
  14. 空軍は6月にロッキード・マーテインに宇宙のフェンス Space Fence 開発契約を与えたことで宇宙空間上の状況把握能力を大幅に引き上げることになる。これは大型Sバンドレーダーを太平洋クェジェリン環礁に構築し、宇宙空間の物体に関する情報を大量に提供できると空軍は期待。また宇宙デブリの情報も同時に把握できるという ■

中国・ロシアの新型レーダーでステルス機は簡単に捕捉されてしまうのか


新型レーダーがステルス性を無効にできる問題は以前もお知らせしていましたが、実態はかなり深刻なようです。F-35の開発配備が進まない間に対抗手段はその先を行きそうで、F-35の「ステルス性」は史上最大の誇大表示になってしまうのかもしれません。

Chinese and Russian Radars On Track To See Through U.S. Stealth

By: Dave Majumdar
Published: July 29, 2014 11:01 AM
Updated: July 29, 2014 11:06 AM

ロシアと中国が開発中の新型レーダーで米国のステルス戦闘機の探知だけでなく目標捕捉が容易になる可能性が高まっていると米海軍高官(退役ずみ)が USNI News に語っている。

  1. ロッキード・マーティンF-22ラプターとF-35ライトニングIIは高周波目標照準用レーダーに特化したステルス性能があるが、低周波レーダーにはステルス性が発揮できない。

  1. これまで高周波数帯への対応だけでさして問題ではなかった。なぜなら低周波レーダーは「兵器級追尾」はできないとされてきたからだ。

  1. F-22やF-35はKu,X,Cバンドと一部Sバンドといった高周波への防御がなされているが、両機種とも波長が長いL、UHFやVHFを使うレーダーだと発見される。

  1. いいかえればロシアと中国の現行レーダーはステルス機を探知することができるが、正確な位置を割り出してミサイル誘導をすることは困難だということになる。

  1. 「捕捉・火器管制レーダーが周波数帯を変える傾向にある」と元米海軍高官がUSNI Newsに説明している。

  1. またコンピューターの性能向上で低周波数レーダーは目標の識別能力が正確になってきている。

  1. 「2020年あるいは2030年にこういった装備が実用化されたら機体の生存性は危うくなる。だから低周波対策が必要だ」と先の専門家は指摘する。さらに一部の建造中海外艦艇には高周波低周波双方のレーダーが装備されている、とも指摘。

  1. 中国のタイプ52C旅洋IILuyang IIや52D旅洋III駆逐艦にがその例であるという。
People's Liberation Army Navy guided missile Type 52D Luyang III destroyer Changsha. The ship is reported to field a radar that could detect U.S. stealth fighters.
人民解放軍海軍の誘導ミサイル駆逐艦タイ52D旅洋IIIの長沙Changshaには米ステルス機を探知可能なレーダー装備が施されているといわれる。


  1. では海軍自慢のNIFC-CA海軍火器管制対空対応手段はどうかというと、あまり期待できない。第一に低周波レーダーが普及するとF-35Cが生存できるのかと言う深刻な疑問が出てくる、とし、先の専門家は「全方位ステルスがネットワーク型対空体制に対しては望ましい」と言う。

  1. 二番目に中国とロシアがNICA-CAに対抗しサイバー攻撃、電子攻撃を仕掛けるのは確実だという。NICA-CAの基盤はデータリンクである。「データリンクが厳しい環境の下で作動するか疑問です。ジャミングが大量に発生しているはずです」

  1. さらに敵になる可能性のある国家である中国とロシアは長距離放射線追尾型ミサイルを開発中で、NIFC-CAの中枢部分となるノースロップ・グラマンE-2D高性能ホークアイが目標となる可能性が高い。

  1. 「放射線追尾型兵器がパッシブ動作で長距離射程ならNIFC-CA構想では対応が難しくなる」と言う。

  1. 空母に全方位ステルス性能を有する機材が配備されないことで高性能版のUCLASS(艦載無人偵察攻撃機)で敵の防空網に対処すべきとの主張が勢いがますことになりそうだ。この機能がないままだと海軍の空母航空戦力は実効力を失うとこの専門家は見る。■

コメント しかし肝心のUCLASSについては最初から高度の脅威環境での単独使用はあきらめている節がありますので、この「高官」の意図はUCLASS構想の大幅な上方修正にあるのではないでしょうか。

2014年7月30日水曜日

UCLASS仕様の見直しと想定される性能内容の解説



Latest UCLASS Concept Emphasizes Maritime Roles

By: Dave Majumdar and Sam LaGrone
Published: July 17, 2014 2:30 PM
Updated: July 17, 2014 4:19 PM
An artist's concept of General Atomic's Sea Avenger UCLASS bid taken from a display monitor. US Naval Institute Photo
ジェネラルアトミックスのシーアヴェンジャーUCLASS構想の想像図 US Naval Institute Photo


米海軍がUCLASS(無人艦載偵察攻撃機)のコンセプトを変更するのは三度目になり、開発はかつてない規模の混乱と変更を生んでいる。

2006年の当初案では新世代無人艦載機として空母航空隊各機の飛行距離をしのぐ長距離飛行性能を重視していた。

しかし2011年に海軍とペンタゴンは低価格UAVで対テロ攻撃を重視し、陸上運用型UAVの飛行が制約される場所に米軍が作戦行動を展開する想定とした。あわせて情報収集監視偵察(ISR)機として通常の艦載機が飛行していない間に投入する案を作った。

今度は海軍は再度UCLASSの位置づけを変更し、飛行時間の大半を海上で過ごす機体を想定しているようだ。
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「海軍の装備の一部として空母打撃集団にもなります」とポール・グロスクラグス中将 Vice Adm. Paul Grosklags(研究開発調達担当海軍副長官付き主席武官)がUSNI Newsに述べている。
A 2008 illustration from the CSBA paper: Range, Persistence, Stealth and Networking: The Case for a Carrier-Based Unmanned Combat Air System by Thomas P. Ehrhard and Robert O. Work

2008年当時のCSBAによる想定図。空母運用型無人戦闘航空機システムの考察:航続距離、飛行時間、ステルス性、ネットワーク能力について(Thomas P. Ehrhard and Robert O. Work)

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新コンセプトは現国防副長官ボブ・ワーク Bob Workも参加した当初案とと全く違うものだ。一方で海軍が現時点で想定する西太平洋での脅威への対応としては整合性があるように見える。現在想定されるUCLASSのミッションには制空権の確保された空域でのISRおよび開戦時の攻撃ミッションがあると中将は言う。その後加わるのが難易度の高い沿海部でのISRおよび攻撃ミッションで、さらに水上戦闘艦艇への攻撃も加わる。

UCLASSへの要求内容が決まり、ペンタゴンは国防調達委員会Defense Acquisitions Board (DAB) を7月21日に開催するとグロスクラグス中将は下院軍事委員会シーパワー兵力投射小委員会で証言した。

ただしDAB開催前にワーク副長官より事前会合の要望があり、ペンタゴンはDABを延期せざるを得なくなった。

ワーク副長官との会議およびDABは来週開催の見込みで、そのあとで最終版の提案要求(RFP)が四社に送付される予定だ。ボーイングロッキード・マーティンジェネラルアトミックスノースロップ・グラマンの各社。RFPでは内容は大部分が非秘匿性ではないものの閲覧は制限される。「国民一般の安全を危うくすることはできない」と言うのが海軍航空システムズ本部の考え方だとUSNI News に伝えてきた。「保安上の秘匿扱い方針が海軍上層部で決まりました」(同本部報道官ノジェイミー・コスグローヴ)

ただしコスグローブは具体的に海軍の誰が秘匿扱いを承認したかを伝えていない。

一方グロスクラグスは証言の中でUCLASSの性能開発文書は2013年4月に作戦部長ジョナサン・グリーナート大将が承認しており、海軍トップが関与しており、一年以上にわたり改定されていないと発言。

さらに合同性能要求検討会 Joint Requirements Oversight Council (JROC) はUCLASS性能要求を6回にわたり検討しており、直近では2月4日に作業をしたと米空軍ンジョセフ・グアステラ准将 Brig. Gen. Joseph Guastella(統合参謀本部要求性能設定次長)が委員会に述べている。

現時点で想定されるUCLASSは危険度が低い、あるいは中程度の空域でISR任務および軽攻撃を実施する手段として空母航空隊の一部に想定されているとグロスクラグスは述べている。
Proposed operational ranges of UCLASS. US Naval Institute Illustration
UCLASSの作戦半径の想定 (米海軍協会による作図)


初期作戦能力獲得時の段階で同機は空母から600海里でISR周回飛行を二通り実施するか1,200海里で周回飛行を一回実施する想定だ。同時に1,000ポンドのレーザー誘導式共用直接攻撃弾 Laser Joint Direct Attack Munition (LJDAM)一発を内部に搭載して2,000海里先の攻撃ミッションを実施する。

初期想定でUCLASSは耐空14時間想定だったが、その後ミッションが変化したことでこれは消えた。「14時間というのは初期の想定で限定的な精密攻撃能力しかないものだった」とグロスクラグスは述べている。

しかしながら外部兵装搭載をしても14時間連続飛行が可能な設計案もありそうだが、各社とも14時間には固執しないだろうという。

14時間飛行性能はライフサイクルコストにより導かれたものだと証言したのはマーク・アンドレス(海軍情報作戦部長代理) Mark Andress, assistant deputy chief of naval operations for intelligence.である。
X-47B UCAS. Northrop Grumman Photo
X-47B UCAS. Northrop Grumman Photo


UCLASSを8時間飛行とし、攻撃・空中給油に最適化すると海軍が負担する運用・保守費用は14時間飛行型の4倍になる。

UCLASSは発展改良を前提にしているが内部兵装搭載量は1,000ポンドのままだ。最終的には外部ハードポイントに兵装を搭載することになる。海軍はこのハードポイントで軍の兵装搭載が可能ならばよいとする。「外部ハードポイントは3,000ポンド二か所となる」とグロスクラグスは説明している。

UCLASSに求められる生存性では低視認性だけに依存するのではなく、海軍の考え方で電子攻撃能力をハイエンドの戦闘状況で使うことも想定している。

グロスクラグスはステルス性能でどの周波数帯に特化しているのかをコメントできる立場ではない。しかしUCLASSが全翼機の形状でないとすると高周波数帯への対応に特化しておく必要があるのは物理法則によるもの。

An artist's concept of the Lockheed Martin's bid for the Unmanned Carrier Launched Airborne Surveillance and Strike (UCLASS). Lockheed Martin Image
ロッキード・マーティン提案のUCLASS構想の想像図 Lockheed Martin Image


UCLASSは単独で敵空域奥深く進入する想定ではなく、他の艦載機と連携してNIFC-CA海軍統合火器管制対空作戦実施能力構想でロッキード・マーティンF-35C、ボーイング F/A-18E/FやEA-18Gグラウラーと共同作戦をする想定だ。

「単機での運用は想定していないし、敵の防御が整っている空域での運用も想定外」とする

強固な防御空域での作戦で想定される問題のひとつが敵による通信妨害であるが、海軍はすでにこれを想定ずみだとするものの詳細には触れていない。

「ジャミングあるいは通信途絶の脅威は検討済み」とグロスクラグスは述べている。「現時点での想定を検討しただけでなく、将来の環境も考慮している」

The Navy plans to field UCLASS by 2020.
海軍はUCLASSの配備を2020年までに実現する予定だ。