2016年10月3日月曜日

第二次朝鮮戦争に備える---核兵器の使用可能性は?


北朝鮮が核運用能力を整備する前に片を付ける先制攻撃論がどうも強まってきたようです。その場合に核兵器使用の選択肢も検討には入っているものの、現状では使えない兵器のままなのか、それとも誰も経験したことのない新型核兵器の開発が促進するのかもしれません。文中で言う「核環境でも作戦行動可能な部隊」ですが、機能する保証もなく、絵空事に終わるのでしょうか。おそらく北朝鮮へ侵攻し、政府機能を喪失させる部隊のことでしょうね。

Preparing for The Next War in Korea

By BOB BUTTERWORTHon September 26, 2016 at 4:01 AM
  1. 戦闘準備で実際の戦争を回避することがある。また準備してあれば実際に開戦となっても有益だ。北朝鮮に対して開戦となればどうなるかを示すとともに同盟国韓国には米国がともにいることを真剣に見せるべき時が来た。
  2. 米韓通常兵力による軍事演習が一番良い選択肢で核攻撃の際の作戦能力を見せつけることが可能だ。
  3. 第二次朝鮮戦争の想定では米核攻撃で北を破壊するシナリオが多いが、今年になり米軍は2回も韓国へ爆撃機を派遣し、金正恩に対して核攻撃能力がこちらにあることを刷り込んでいる。だが米軍が核兵器を北に投下する実現性は低い。金が原子爆弾を使い開戦しても同じだ。
  4. その理由としてよく言われるタブーやエスカレーションの危険はあたらない。投入がふさわしい兵器がないのだ。これまで低威力で最小限の放射能しか出さない一方で電子電磁効果を上げる兵器を求める声があり、戦術レベルの精密攻撃にふさわしい手段が必要とされてきた。これに一番近いのは低威力のB61-12爆弾で爆撃機から投下できるが、放射線レベルは遥かに高い。もし北朝鮮にロシア製高度防空体制が導入されていれば、爆撃機の生還は望み薄だ。
  5. もちろん要求条件に適合した核兵器を個別に開発することは可能だし、これまでも米ロの軍事作戦立案で検討されてきた。だが国内政治上、米国がこのような特殊兵器を選択することは考えにくい。これまで政府が守ってきた政策を逆転させるからだ。
  6. さらに軍事作戦上で今より広範な用途に核兵器を開発することへの反対意見は多い。実現すれば実戦投入の可能性が高くなるためだ。どちらにせよ核爆発は選択肢に入らない。使用後の事態の複雑さとともにエスカレーションを抑制できるのか危惧され、戦争終結のゆくえや戦後復興でも問題が複雑化するだけだ。
  7. だが米国は小出力核兵器による軍事解決方法が必要なのであり、本格的な核兵器は使うべきではない。仮に敵が投入しても変わらない。この点は長年に渡り共有された認識だ。1993年末に当時の国防長官レス・アスピンは「核兵器はこちらより強力な敵地上兵力に対抗できるが、米国通常兵力は圧倒的な強さを保持しており、敵に回るはずの勢力が逆に核兵器を入手しようとしている。最終的には米国が対抗兵器を確保して事態を収めることになるだろう」と発言していた。
  8. 当時のクリントン大統領指令PDD-18に先立ち、国防総省は核拡散が発生した場合のアクションの選択肢も準備していた。「拡散対抗策」の名称で核攻撃下でも行動可能な普通科部隊の創設もそのひとつだった。さらに広範な緊急事態への対応として特任部隊は同盟国側が懸念する域内抑止力の実効性も担保するはずだった。(韓国は2010年の天安撃沈、ヨンビョン島砲撃を受け米抑止力効果に懐疑的になっていた。)
  9. もしそのまま進めていれば、普通科地上部隊が装備訓練をともに受けて核攻撃下でも軍事作戦が可能となり、戦略上も敵の挑発に即応できていたはずだ。ただし挑発効果も米側の軍事対応に時間がかかれば薄まる。そのような外交軍事上の調整は熟考と手間をかけるべきであり、非核軍事力を重視するとともに選択肢となれば抑止力体制の長期間維持で生まれる不確実性が着実に減っていただろう。
  10. 「拡散対抗」政策は1993年に想定されていたが本格的な実施に移らなかった。新構想の想定する任務、予算規模で既存の政策との整合性をだうやってはかるかですぐに疑問視された。こうした疑問は今も残るが、アスピン長官が考えた軍事力はいまでも実現していない。
  11. 国防科学委員会が2005年に「核爆発が発生すると既存の装備、指揮統制能力(C2)、情報収集監視偵察(ISR)、その他支援システムが使用可能のままでいられるか保証がないことが結論」と報告している。同委員会はその五年後に「ほぼ20年に渡り、核攻撃での残存性を装備の強靭化あるいは迅速作戦により『継戦』を続けられるとしてきたが答えは不明のままだ。もし(汎用普通科部隊が)核攻撃にさらされれば任務遂行は運任せになるか故障装備の復旧にかかってくるだろう」と報告している。
  12. こうした弱点が補正されないと米軍はジレンマに陥り、大統領に低出力核兵器の投入あるいは作戦実施が失敗する可能性の高い通常兵力の投入の選択肢を提示できなくなる。■

イラン国内に不時着したRQ-170の謎とリバースエンジニアリングで生まれたイラン製「雷電」UAV


技術を一気に進める安価な方法はその技術を盗むことで、古今東西同じです。盗む側にとって棚からぼたもち状態なのは欲しい機体がこちらにやってくることで、今回のRQ-170の他にもサイドワインダーミサイルやB-29の例がありますね。今回の事例では機体そのものより内部の情報や情報収集手段が手に入った価値のほうが高いのではないでしょうか。

Iran unveils new UCAV modeled on captured U.S. RQ-170 stealth drone

Oct 02 2016

  1. 10月1日イランのイスラム革命防衛隊(IRGC) が新型戦闘無人航空機(UAV)セエケエSaeqeh(雷電)を公表した。
  2. 新型無人機は長距離型で精密誘導爆弾四個を搭載し、原型は米RQ-170センティネル(2011年にイランが捕獲)だ。
  3. IRGC航空宇宙部門長アミラリ・ハジザデ准将はイランは米国を上回る性能の航空装備を有するにいたり、UAV部門の工業力はミサイル部門同様に発展するだろうと述べている。
  1. イランはRQ-170をコピーしただけでなく、新たな性能を実現したようだ。「カンダハールの野獣」がイラン国内に不時着した背景は現在も謎のままだ。イラン機はセンティネルより微妙に主翼が小さいがRQ-170にある機体前面の空気取り入れ口がない。
  2. また同機に着陸装置がついているのかも不明だ。
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  1. 本誌が2011年以来報道しているように謎の解明には多数の説がある。
  2. イラン側は同機をハッキングしたと主張しているが、ステルス無人機はレーダーでは探知できないはずで、イラン東部で故障のため不時着したのだろう。(また米軍は同機の捕獲防止のため派遣された特殊部隊は同機破壊ができなかった)
The Iranians say the RQ-170 was hijacked using Jamming and GPS spoofing attack tailored on known vulnerabilities of the UAV highlighted in Air Force official documents.
  1. イランはRQ-170の制御乗っ取りにジャミングとGPS探知攻撃を使ったと主張し、米空軍も認めるUAVの弱点に言及している。
  2. だが筆者は一番可能性が高い説は同機はレーダー探知されず、イランの無人砂漠地帯に何らかの故障のため不時着したと信じる。
  3. 米側は当初はこの事件を公表しないつもりだった。なぜなら無人機が不時着した地帯で同機の発見は不可能、あるいは機体が相当の損傷を受けていればイランが捕獲したとしても技術の獲得は困難と見ていたためだ。また公表吸えばイラン上空でのスパイ活動を認めることになり、イラン核開発を阻止しようとするイスラエル秘密作戦に与していることが暴露されてしまう。
  4. だが羊飼いがほぼ無傷の同機を発見すると一気にニュースがあふれ、米側も同機喪失を認めざるを得なくなった。イランには思わぬ好機となり、世界向けに宣伝戦を展開し、同国の電子サイバー戦能力の成果だと喧伝した。
  5. いうまでもなく、以上は同機が学校体育館の中にある写真が公表されてからの推測の一つにすぎない。このシナリオではジャミングやGPS探知、衛星リンクの暗号解読や制御リンク乗っ取りは全く関係ない。イランは確かにこの分野での技術を示しているため、一部説ではUAVをジャミングして乗っ取ったとしているが、米無人機に技術上の弱点があるのは事実だが現実とあまりにもかけ離れた解説と言わざるをえない。
  6. イランはさらに別のUAV二機種を入手している。RQ-11が二機と少なくとも一機のスキャンイーグルがペルシア湾からイラン国内に侵入した後に捕獲されている。
  7. いずれにせよ2013年2月にその二年前に捕獲したRQ-170内部のデータの暗号解除に成功していなくてもデータの一部にアクセスできた映像を公開している。
  8. センティネルが撮影した画像では機体下部のカメラがカンダハール飛行場に着陸する様子、C-130が一機、リーバーが少なくとも一機カンダハール基地のシェルターに入っているのが見える。
  9. そうなると内蔵メモリーは有益な情報を含んだままで、機体制御が失われた際に完全に自動消去されていなかったことになる。搭載するFLIRタレットが撮影した画像含めデータが入手された可能性がある。
  10. 2014年5月11日にイランはセンティネルをコピーしたUAVを明らかにリバースエンジニアリングの成果として公表した。イラン版のUAVは捕獲したセンティネルの隣に展示されていた。
  11. 2014年11月10日にIRGC航空宇宙軍司令官アミル・アリ・ハジザデ准将から同機の初飛行に成功したと発表があった。センティネルのコピー機が飛行する様子のビデオが公開されている。
  12. 2016年10月1日に公開された写真でイランがRQ-170のコピー機を多数整備しているのがわかる。次に来るのは何か要注意だ。
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Image credit: Sepahnews, @Azematt

2016年9月30日金曜日

★★退役して8年たつF-117はネヴァダ上空を飛行して何をしているのか




Watch two F-117 stealth jets fly over Nevada together….8 years after “retirement”

Sep 23 2016 - 1 Comment



F-117数機が飛行可能状態でトノパ射爆場(ネヴァダ州)で残っていることは秘密でもなんでもないが、二機のブラックジェットが引退後8年経っても編隊飛行しているのはやはり奇異だが興味深い。写真を御覧いただきたい。

ここ数年に渡りF-117ナイトホークがトノパ射爆場(TTR)から東のネヴァダ上空を飛行しているのが報告されている。

今回はAviationistへ寄稿している「Sammamishman」氏が2016年7月末に撮影した写真、ビデオをご覧いただく。

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2014年に映像や写真がオンラインで出るや米空軍はブラックジェットが「タイプ1000」保存機としてTTRにあることを認めた。この符号は機体が戦闘に必要になるまで状態を維持することを示す。


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ネヴァダの砂漠地帯は機体保存に最適で乾燥性気候は機体腐食を進行させない。
機体は四年単位で保存状態におかれ、保存状態によるが必要なら30日から120日で現役復帰できるよう整備されている。すごい。

ということは米国はF-117が将来の戦争シナリオで活用できると見て、保存機材を時折飛行させ、パイロットに習熟させているのだ。では何に備えているのか。

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1970年代に企画された亜音速でC、X、Kuの各帯域での探知から逃れることに特化したもののF-22やF-35よりステルス性に欠けるF-117は「おそらく」一部の低中程度の脅威環境なら投入できるのだろう。だが今後の敵の進歩に追随できない。

空軍が一部現役機材かつ交替が難しい機種(A-10サンダーボルトなど)を退役させようとしているのは最新防空装備に対抗できないためで浮いた費用で高性能機種(F-35など)を調達しようとしている。
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そうなるとなぜ空軍は象徴的だが古典とも言えるこの機材を飛行可能状態に維持しているのか。

すでにお伝えしているよに同機がまだ別の用途に使えると見ている人物がいるのだろう。おそらく新技術のテスト用ではないか。レーダーとか赤外線探知追尾装置とか、SAM地対空ミサイルの支援か、第六世代戦闘機、あるいは次世代AEW空中早期警戒機材としてかUAV無人機関連だろう。

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また同機を無人機に転用して戦闘用の高速ステルスUCAVにする構想を発表したこともあった。

写真撮影した「Sammamishman」氏は以下伝えてきた。

「お送りした写真を見ているうちに気づいたことがあります。F-117が二機滑走路に並んでいますが、一機の上部に通信アンテナに見える物体がついています。もう一機には付いていません」

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「TTR基地を観察していると日の出直後に今回撮影した二機のF-117の格納庫周りに車両が集結しているのがわかりました。二機はその後離陸準備をし写真の様に離陸しています。二機は低空で数回にわたり射爆場上空を通過してから基地に戻っています。(ビデオ映像を参照されたい) 滞空時間は45分から1時間ほどでした。二機の飛行を見ると退役後の通常飛行には見えません。格納庫に集まった車両は午前早い時間に帰っていき、翌日には隣の格納庫で支援に集まっていました。機種は確認できませんでしたが、別のF-117と思われます。ナイトホークの写真を見ると一機が改修を受けているようですがよくわかりません」と「Sammamishman」氏はメールで伝えてきた。

たしかに二機のF-117のうち一機はわずかに外観が違うようだが100パーセント断言できないのは撮影が遠距離からで高温と距離のため画像に歪みがでているためだ。

読者の判断に委ねる。なおビデオは下を参照してください。





2016年9月28日水曜日

B-1Bにちょっかいを出すと痛い目にあうぞ 北朝鮮を睨むランサーの韓国臨時派遣飛行


なるほどB-1Bでも中国、ロシアへの侵攻は不可能になっているわけですか。でも北朝鮮なら可能なのですね。そうなれば北朝鮮もグアムを狙ってくるはずで、グアムのミサイル防衛はどうなっていましたかね。
War Is BoringWe go to war so you don’t have to

韓国オサン基地上空を飛行する B-1B ランサー。Sept. 21, 2016. U.S. Air Force photo

It’s Still a Bad Idea to Mess With the B-1B Bomber

The Lancer shows off near North Korea

by DAVE MAJUMDAR
ロックウェル・インターナショナルB-1Bランサー戦略爆撃機一機がオサン空軍基地(韓国)に着陸した。ペンタゴンは同機の臨時派遣は韓国防衛の意思を核をちらつかせる北朝鮮に示すものだ。
  1. 「米韓のつながりは鉄並に堅く、北朝鮮の強硬な態度が出てもコミットメントが揺らぐことはありません」とトーマス・バーゲソン中将(第7空軍司令官)は語る。
  2. B-1Bはグアムのアンダーセン基地から9月21日、北朝鮮が新型潜水艦発射ミサイルのテストに成功したあと韓国に飛来した。
  3. B-1B一機が9月13日に韓国上空を飛行したが着陸はしていない。
  4. 韓国空軍作戦司令官リー・ワン・クエン中将は「韓半島は深刻な安全保障上の危機状態にあり、その原因は北朝鮮が五回目の核実験、SLBM発射、弾道ミサイル発射で、国際社会の懸念を招いている」との声明を発表している。「韓米空軍部隊は状況の変化を意識し密接に情報交換し運用能力を高めている。敵が再度挑発してくれば合同空軍部隊は迅速に対応し、敵の戦闘意欲と能力を排除する」
北朝鮮との国境線付近を韓国空軍F-15Kスラムイーグル二機編隊と飛行するB-1B Sept. 21, 2016. South Korean air force photo
  1. B-1Aは1970年代に高高度をマッハ2で飛行する戦略核爆撃機として構想された。しかし当時のジミー・カーター大統領が1977年に一旦開発を取り消し、空中発射巡航ミサイル(B-52搭載)やICBMを重視した他、その後B-2スピリットとなったステルス爆撃機構想を進めた。
  2. カーター政権はこの理由としてソ連領空に高高度から非ステルス機が侵入すれば自殺行為に等しいとしていた。
  3. ロナルド・レーガン大統領はランサーを1981年に復活させたが、新型B-1Bは低空侵入に特化した機材となった。さらに空軍は同機の空気取り入れ口やその他を改良しレーダー断面積を減らした。
  4. その結果B-1Bはマッハ2の速度は失い、マッハ1.2が限度となったが、残存性は大幅に高まった。
  5. 冷戦後に空軍はB-1Bから核運用能力を除去し、通常兵器運用機材に変換した。イラク、アフガニスタンでは大きな活躍を示している。
  6. その後空軍は精密誘導兵器、データリンク、各種センサーを取り込み、今後の供用に備えさせている。また機内エイビオニクスも更新中でノースロップ・グラマンのAESAレーダー他が搭載される。
  7. ただし性能向上してもB-1Bは敵の強力な防空体制で残存は期待できない。中程度の脅威空域での運用が精一杯だ。
  8. 20機あるB-2ステルス爆撃機隊のみがA2AD体制の防空網を突破できる戦略爆撃機となっている。中国、ロシアがS-300V4,S-400あるいはHQ-9で防空を固めている。
  9. 開発中のB-21レイダーによりあらゆる防空網を突破できる能力の実現に期待する米空軍だ。
  10. だがレイダーの実用化は2030年以降となる。空軍はレイダーを100機調達する予定だが、希望として200機を想定している。■

2016年9月27日火曜日

歴史に残らなかった機体(1)F-103は設計に終わったラムジェット・マッハ3迎撃戦闘機



The National Interest

The F-103 Could Have Been America's Mach 3 Ramjet Fighter

The XF-103 was an amazing design best left on the drawing board.
XF-103 Fighter. Wikimedia Commons/U.S. Air Force

September 22, 2016

  1. ICBMが登場する前の1950年代はワシントン、モスクワ双方が高高度飛行爆撃機で核攻撃する想定だった。
  2. 当時の主力戦闘機F-86セイバーでは迎撃できないと考えられ、米空軍は1949年に高高度超音速迎撃戦闘機をもとめソ連爆撃機が爆弾投下する前に撃墜をめざした。
  3. 構想は1954年型迎撃機事業と命名され、その年に供用開始を見込んだ空軍に提案9件が寄せられた。そのうち三案が初期開発に進んだ。コンベアはその後F-102デルタダガーとなる案、ロッキードはF-104スターファイター、リパブリックエアクラフトはAP-57を提案しXF-103と命名された。
  4. 三案でXF-103がずばぬけて先端的で、リパブリックは時速2600マイル(音速の三倍)で高度80千フィートを飛行するとした。1950年代初頭ではF-86とMiG-15が朝鮮半島で数百マイルの速度でドッグファイトをしていた中でXF-103は航空機と言うよりロケットのようなだった。
  5. 図面から起こした想像図は巡航ミサイルのように見える。高速度を得るためリパブリック(のちにF-105サンダーチーフを製造)は複合推進方式を想定した。ライトXJ-57ターボジェット一基で離陸と通常飛行し、ソ連のバジャー、ベア、バイソン各爆撃機にダッシュが必要となればラムジェットを始動する。ラムジェットは前方から空気を吸い込み、燃料と混合させ、後方に排出する比較的単純な構造だが前提は機体なりロケットがすでにマッハ1以上の速度で飛行している必要がある。ラムジェット効果を得るための空気圧縮度のためだ。そこでXF-103はまずターボジェットで速度を稼いでからラムジェットを始動する。
  6. 装備には長距離レーダー、GAR-3ファルコンレーダー誘導対空ミサイル6発、非誘導指揮マイティマウス2.75インチ対空ロケット弾36発を搭載する構想だった。マイティマウスは良い考えだっただろう。なぜならファルコンは空軍の第一世代でヴィエトナム戦で欠陥を露呈し54発発射して命中はわずか5回だった。XF-103は機関砲を搭載しなかったが、この発想がやはりヴィエトナムで障害となった。マッハ3飛行中に機関砲を発射する管制レーダーを1950年代に実現するのは難しかったからだ。
  7. 独特の射出脱出装置を搭載する予定だった。コックピットの与圧が失われれば、座席下の隔壁が上昇し、パイロットを包む与圧ポッドを形成する。パイロットは機体を基本操縦だけで帰還させ、視界は潜望鏡で行う。あるいは射出脱出が必要となれば、ポッドがレールで降下し機体底部から機外に放出する構想だった。
  8. だがXF-103は地上モックアップから先に進まなかった。競合するコンベアーのF-102が現実的な選択肢となり採用されると空軍はXF-103への関心を失った。遅延とコスト超過のため試作機一機制作まで規模が縮小される。ライトXJ67エンジンは結局完成しなかった。空軍は1957年8月にXF-103事業を断念した。
  9. F-103として米空軍に配備されていたら、無駄な投資になっていただろう。ソ連が大量の長距離爆撃機でアメリカを攻撃する恐れは根拠がないと後にわかる。1960年代初頭にソ連はICBMに軸足を移していた。迎撃対象の爆撃機はわずかで、F-103はヴィエトナム上空の低速ドッグファイトには全く不向きであったはずだ。
  10. 結局XF-103の驚異的な設計は図面台に留まった。
Image: XF-103 Fighter. Wikimedia Commons/U.S. Air Force

2016年9月25日日曜日

日曜特集 B-21名称募集にこんな応募が....米空軍隊員の考えは多様です



アメリカ文化の広がり多様性を物語るようなエピソードであり、空軍という軍組織でも隊員はいろいろな価値観を持っていることを伺わせます。かつて航空自衛隊でも機体愛称をつけておりF-104が栄光だったりした時代があったのですが定着せず中止になりました。今回、F-35一号機に航空自衛隊内部に限り愛称を公募したらどんな結果になるでしょう。その応募こ組織文化を反映するものになるはずです。一部よくわからない名称もあり、ご存じの方は教えて下さい。

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Here Are the Names the Air Force Didn’t Pick For the B-21 Raider

Bomber McBombface didn’t make it

by JOSEPH TREVITHICK
9月19日のこと、101歳の退役中佐リチャード・E・コールは有名なドーリットル日本爆撃隊(レイダーズ)の生き残りの一人でジミー・ドーリットルの副操縦士を務めた人物でB-21を「レイダー」と命名した。
高齢の元中佐が数千におよぶ名称提案すべてに目を通すなくてよかった。
四ヶ月前に空軍は異例な決断で空軍隊員に爆撃機名称をインターネットで広く集めることとした。レイダーは4,600件を超える応募で重複を除くと2,100件の名称から選ばれたものだ。
その後空軍は名称候補を15件に絞ったとしていた。コールが発表したのは空軍協会主催の年次大会の席上だった。
本誌は情報公開法でその他の候補内容の開示を求めていたが9月21日に空軍から完全な一覧表が示された。
多くの提案が真面目な内容で空軍の伝統や歴史にふさわしいものだったが、ふざけたものや侮蔑的な名称もあった。空軍広報部門のアン・ステファネックは上位15件の名称を教えてくれた。
アルファベット順にならべると、ブーメラン、ゴースト、ホライゾン、ルメイ、リベレーターII、ミッチェルII、ナイトフューリー、フェニックス、レイダー、シャドウ・フォートレス、スティングレイ、ヴァルキリー、ヴィクトリー、レイス(幽霊)、ゼウスIIであった。
中にはなるほどと思える候補もある。カーティス・ルメイ大将の名前は物議を醸し出しそうだが、その名前はステルス爆撃機としての血統を思わせる。同将軍が核爆撃機の基礎を1940年代50年代に作った。リベレーターとミッチェルの各初代は第2次大戦に米空軍力の象徴として北アフリカ、欧州、太平洋の各戦線で活躍した。
A B-25 Mitchell flown by the Doolittle Raiders takes off from the USS ‘Hornet’ to attack Tokyo in 1942. ‘Mitchell II’ and ‘Raider’ were both on the list of B-21 names. U.S. Air Force photo
空軍は明らかに過去の時代を想起させる名称を模索したようだ。ノースロップ・グラマンがB-21レイダーを製造するが、競争相手のボーイングにはB-17空飛ぶ要塞からB-52ストラトフォートレスまで米爆撃機として鮮やかな記憶が残っている。
ゴースト、ホライゾン、フェニックス、ヴァルキリーという名前ははるか遠くまで飛ぶステルス爆撃機にふさわしいものがある。B-21の想像図はB-2と同様にブーメランに見える。
最終候補には採用済み名称もある。米海軍はスティングレイを開発中の偵察空中給油無人機につけており、レイスはRQ-170偵察無人機の非公式名称である。
選外となった名称も同様の分類が可能で、自由に関連した名称がある一方、空軍の過去の機材名称からドーントレスII、ドラゴンII、ハヴォックII、フライイングフォートレスIIやファントムIIIの応募があった。空軍隊員はダーク、グローバル、シャドウ、ピース、サイレント、スィフトの付いた名前を多数応募している。
一方で冗談としか思えない候補も挙げられており、Badasswhoopass, Zoomfist, Bomber McBombface, Plane McPlaneface, Stealthy McStealthfaceが見られる。
A B-2 stealth bomber. Air Force photo
アクション俳優のチャック・ノリスは空軍憲兵隊勤務の経験があり、今回の名称リストに含まれる。同様にパット・ティルマン(フットボール選手)やクリス・カイル(海軍シールズの名狙撃者)の名前もある。またユリシーズ・グラントやセオドア・ローズヴェルトの元大統領の名前を提案したものもある。
その他有名人の名前ではレスリング界のスーパースター、ジョン・セナやシンガーソングライターのケニー・ロギンス(「Danger Zone])があり、実在しない人物としてキャプテン・アメリカ、C-3PO、ダースヴェイダーなどがあった。
スターウォーズ映画からはデススター、ミレニアム・ファルコンなどがあり、バード・オブ・プレイを推薦したのはクリンゴン宇宙船(スタートレック)で姿を隠す装置がついていたことからの連想だろう。
商標名もあり、ドリトス、チートスの他ベイコネーター(ダブルチーズバーガー)と言うのはウェンディファストフードチェーンからだろう。確かにB-21初めて極秘ステルスジェット機は三角形のドリトスチップと形状が似ている。
だが何よりもポップカルチャーの流れを組む名前には独創性がない。また、独創的と思える名称には空軍に受け入れがたいものもあった。
優雅さでは劣るA-10ウォートホグの名称での応募も二人からあった。空軍は直線翼で丸鼻の同機を何度となく退役させようとしており、うわべ上はF-35やB-21用の予算を確保するためと説明している。
その他「F-35で金をドブに投じたね、ハハハ」とか「予算を飲み込む空に開いた穴」とか「この機体に使える予算があるのかな」という表現も名称として応募されており空軍の選択への疑問が表現されている。その他「国家債務」とか「この機体がどれだけ税収を食いつぶすかわからないだろう」という案も提案されていた。
その他に「無人機の方がマシだが無駄遣いは好き」というのもあり、空軍が無人機で長い間複雑な関係を作ってきたことを思い起こさせる。グローバルストライク軍団司令官のロビン・ランド大将はB-21を無人機にする案はないと公言している。
「国立保険研究所に予算を回せ」とか「この機のせいでデイドにろくな装備がそろわない」というものもあった。「デイド」とはアル・ウデイド空軍基地(カタール)のアメリカ式ニックネームだ。
2月から空軍は同基地の劣悪な居住環境でたたかれている。この二年間でアル・ウデイド基地から9千名を超える隊員がメディアを通じ、あるいは自らソーシャルメディアで水源の汚染、電気系統の危険などを訴えている。
異色をはなつのは陰謀説に関連した9/11やリベラル派慈善事業家ジョージ・ソロスに関する激烈な内容だ。応募には隊員の氏名をつけて空軍所属であることを示す必要があるのだが、こういった応募をした隊員は氏名を明らかにしていない。■



2016年9月24日土曜日

もし戦わば⑤ J-20対F-16(台湾)、F-15(日本)


日台両国とも主力戦闘機の性能改修を着実に行わないと、中国新型機に対応が難しくなるね、という主張です。中国のエンジン技術が遅れていることが救いですが、長距離誘導ミサイルの登場で空戦の様相が相当変わってきているようです。J-20はむしろ支援機としてのAWACSや空中給油機を緒戦で撃ち落とすのが目的と思っていましたが、日本の防空体制に穴が開けば各地の自衛隊基地へのミサイル攻撃も視野に入ってくるでしょう。

The National Interest


China's J-20 Stealth Fighter vs. America's F-35, Taiwan's F-16 and Japan's F-15: Who Wins?

September 22, 2016


中国軍がわずか四分の一世紀で劇的に進歩している。
中国は米国を標的とした機材に多額の投資をし、アジアの覇権を賭け米軍と対抗する動きを示している。その例が台湾であり東シナ海、さらに緊張が高まる南シナ海だ。装備には議論の種となるDF-21D(「空母キラー」ミサイル)、巡航ミサイル、高性能機雷、潜水艦、無人機等接近阻止領域拒否を狙う装備が目白押しだ。
空の上でも進展がある。特にJ-20新型第五世代戦闘機が注目される。米第四世代、第五世代機並びに日本、台湾他の機材を相手に設計された同機には米国のみならず各国防衛関係が大きな関心を寄せている。
だが戦闘になれば同機はどんな活躍を示すだろうか。台湾のF-16や日本のF-15との対決はどうなるか。そこでカイル・モチズキの以前の記事をお届けする。アジアの空を制するのは誰か。

台湾空軍が相手の場合
  1. 台湾をめぐる軍事優位性のバランスはゆっくりと変動中だ。中華民国空軍の戦闘機部隊が確保してきた優位性は台湾国防予算の減少とともにゆっくりと中国の側に向かっている。
  2. 内戦に敗れた中華民国政府は台湾に逃れた。大陸とは二百マイルと離れないままで台湾が強力な海軍空軍を維持し、中国が貧しいままなら月の裏側に等しかった。
  3. だが現在の中国は貧しさを脱却し富に見合った軍事力を構築中だ。中国は台湾が対応できないほどの機数の軍用機を整備しており、第五世代戦闘機も同時に二型式を開発中だ。
  4. 成都J-20は昇竜の名前で開発はまだ終わっていないが、台湾の安全保障上で最大の脅威といってよい。大型双発でステルス性を兼ね備え長距離飛行が可能なJ-20(各種型式がある)は長距離航空優勢戦闘機となるだろう。
  5. これまでの中国戦闘機は短距離性能のため台湾上空で滞空時間に成約があったが、J-20は大型で機内に大量の燃料搭載が可能だ。そのためJ-20は中国本土の基地から出撃し、台湾上空の戦闘機を排除し台湾空軍を標的にすることが可能だ。J-20のステルス性能が設計通りなら台湾の防空レーダーは同機の追尾に苦労するはずだ。
  6. J-20が搭載するセンサー類一式は新型アクティブ電子スキャンアレイ方式AESAレーダー(現在開発中と推定)や赤外線捜索追尾(IRST)があり、後者でパッシブ方式で追尾撃墜ができるようになるはずだ。
  7. 台湾上空へ飛来すればJ-20は相当の火力性能を発揮するはずだ。昇竜には三箇所の機内兵装庫があり、ふたつが短距離用ミサイル、のこりに中長距離ミサイルを搭載する。航空優勢確立ミッションに投入する際の標準ペイロードでPL-15レーダー誘導長距離ミサイル4発を搭載するはずだ。推進方式にラムジェットも採用しているPL-15の有効射程は95マイルから125マイルだろう。
  8. このJ-20に立ち向かうのが台湾空軍のF-16ファイティングファルコンで獰猛な機種だ。もともと軽量の昼間限定戦闘機としてF-15を補完する存在だったF-16は全天候多用途戦闘機に進化している。機体価格が比較的安くて多彩な任務をこなすF-16は台湾にはいい買い物だった。
  9. 台湾空軍のF-16Aブロック20の150機は1992年発注、1997年から2001年にかけて納入されており、20年近く経過している。ブロック20はAN/APG-66(V)3レーダーでAIM-7スパローおよびAIM-120C7AMRAAM中距離レーダー誘導方式ミサイルを運用する。レイセオン製の電子対抗手段ポッドとプラット&ホイットニーF-100-PW220ターボファンエンジンを搭載する。
  10. 2011年になり、新型F-16を66機の発注が不成約になり米国は台湾とともに導入済み機材の改修に注力し、センサー、航法、武装を改良した。APG-83拡張可能機動ビームレーダーScalable Agile Beam Radar (SABR)が搭載された。これはF-22やF-35のレーダーから生まれた新しいハードウェア、ソフトウェアである。
  11. 台湾はSNIPER ポッドの搭載も検討している。これは空対地精密目標捕捉機能のあるポッドで空対空赤外線相殺追尾にも応用できる。またAIM-9Xサイドワインダーも導入する予定だ。これは最先端のドッグファイト用ミサイルで米軍ではすでに導入済みだ。
  12. 航空優勢ミッションでは台湾F-16はAIM-9Xサイドワインダー4発ととAIM-120AMRAAMを2発搭載するだろう。
  13. では空中戦で勝つのはどちらか。交戦を視程内、視程外で区別してみてみよう。
  14. 視程外交戦ではJ-20がF-16を一方的に撃墜するはずだ。J-20の設計が正しければステルス、高性能レーダー、長距離ミサイルの組み合わせが功を奏するはずだ。F-16搭載のSABRがJ-20を相当の距離で探知する可能性もあるが台湾機で足かせになるのはAMRAAMミサイルがジャミングに弱いことだ。PL-15を搭載し、ステルスに守られたJ-20は理論上はF-16パイロットが気づく前に同機を撃墜しているだろう。
  15. 短距離戦となるとJ-20の操縦性の悪さが浮上するはずだ。F-16は逆に高い操縦性を発揮し、AIM-9Xサイドワインダーミサイルが本領を発揮する。だが長距離高性能視程外ミサイルの登場で有視界内の交戦は相打ちとなる可能性が増えてきた。
  16. このため中華民国空軍はJ-20に手こずる可能性が高い。探知が困難であり、台湾機に先制攻撃を仕掛けてくる公算が高い。そこで考えられる戦術として台湾の山岳部を利用して低高度に機体を待機させることがある。これでJ-20の長距離交戦能力を無意味にできる。また中国のルックダウン、シュートダウン能力はまだ西側水準に達していない。台湾が低周波地上配備レーダーやE-2Tが搭載するUHFレーダーでJ-20探知に成功すれば、F-16で有利な待ち伏せ攻撃をしかけることができ短距離戦に持ち込めば成功の可能性は高い。
  17. J-20の高性能と機体構成は台湾にとって現実の脅威だ。中国空軍の規模と成長する威力の前に台湾は自国上空の航空優勢の確保が一層困難になるだろう。そうなると城塞型の姿勢を採用し、両国がA2AD戦術を採用することになるかもしれない。
航空自衛隊が相手の場合
  1. 日中両国の緊張が高まっており、両国の軍用機が空中で遭遇する事案が増えている。人民解放軍空軍(PLAAF)のSu-27が東シナ海上空で日本機により目撃される機会が多くなっており、日本のF-15が沖縄から緊急発進している。
  2. 空での対峙はもう普通のことになっているようだ。では近い将来にJ-20が作戦投入されたらどうなるだろうか。J-20の供用開始は2010年代末と言われる。
  3. その時点で日本はF-15Jイーグルをまだ運用しているだろう。確かに優秀な機材ではあるが、防衛省は本来ならいまごろF-22ラプターに交替させているはずだった。不幸にも米議会がラプター輸出を禁止してしまい、F-15は後継機種がないままだ。
  4. 日本がF-15導入を開始したのは1981年で、ライセンス生産で三菱重工業が製造し、大方は米国が運用中の機体と同じだが例外が電子対抗装置およびレーダー探知警告装置で米政府がこの2つの販売を拒否した。当初はAIM-9サイドワインダーとセミアクティブ方式のAIM-7スパローを搭載していたが、後者はAIM-120AMRAAMに換装された。M61機関砲(20ミリ)も搭載する。
  5. F-15Jは223機が納入され、8機を事故喪失した。
  6. 日本は2000年代早々から性能改修を開始し、新型赤外線誘導ミサイル(AAM-3およびAAM-5)を搭載し、エンジンを改良し、AN/APG-63 (V)1機械式スキャンパルスドップラー・レーダーやAAM-4Bレーダー誘導ミサイルが運用可能となった。改良型の電子対抗措置や機首に赤外線探知追尾センサーもついて近代化が実現した。しかし、改修は非常に高価で年間10機未満しか作業できない。このため改修が完了したF-15Jはまだ半数未満だ。
  7. 成都J-20は謎の機体だ。中国初の第五世代戦闘機としてまず2011年にその存在が確認された。双発、単座機で前方カナード翼とステルス性能を有するJ-20はF-15Jより僅かに全長が長い。機体は長く幅広で内部兵装庫と燃料タンクに活用している。短距離、長距離双方の空対空戦および空対地ミサイルを搭載する。
  8. J-20のノーズコーンは大きく高性能の電子スキャンアレイレーダーを搭載できるはずだ。長距離で敵目標の捕捉に有効でレーダー誘導ミサイルで攻撃できる。最近完成した試作型では赤外線探知追尾システムと電子光学式目標捕捉装置で空対地攻撃に対応できるようだ。
  9. 正確な任務は不詳のままだ。長距離ミッションを念頭に製造されているようだ。「昇竜」はロシアのMiG-31同様に高速かつステルスの迎撃機として敵の空中給油機やAWACS、偵察情報収集機を撃墜する想定なのかもしれない。あるいは中型爆撃機なのかもしれない。米F-111同様に沖縄や日本国内の各基地を攻撃するための機体かもしれない。
  10. ここで検討したいのはJ-20を長距離対応可能な航空優勢戦闘機と想定した場合で、F-15Jと空戦に入れば勝つのはどちらか。
  11. J-20の機体設計が正しくレーダー断面積が小さいとすれば、F-15Jでは長距離からの探知は困難だろう。またF-15Jにはステルス性がなく-20は容易に日本機を探知できるはずだ。このため視程外戦ではF-15Jに幸先が悪い。ことにJ-20が搭載するPL-15ミサイルがあり、アクティブレーダーシーカーおよびおそらくパルスロケット推進あるいはラムジェット推進となっているはずだ。
  12. 接近戦になればF-15Jが優位に立つ。J-20は推力不足と言われ、F-15の推力重量比が際立つ。またF-15のドッグファイト実績は他に例がなく高推力と操縦性で有利な位置につけるはずだ。
  13. もうひとつ検討してみよう。J-20はまだ試作機の段階で銃はまだ搭載されていない。銃の効用を巡っては今も専門家の意見は分かれるが、接近ドッグファイトではF-15JのM61ガトリング砲が効果をあげるはずだ。
  14. 成都J-10と三菱F-2の比較では接近戦ではJ-10が、長距離戦ではF-2がそれぞれ優位と判定された。航空優勢戦闘機同士の戦いとなると逆転する。中国の歴史上のライバル国を一気に追い抜いて第五世代戦闘機を完成させた事実には主要国が一様に驚いているはずだ。■
Image: Creative Commons/Flickr.

★★KC-46の対日販売を米国務省が認可



KC-46も小牧基地に配備するのでしょうか。実機が現れればKC-767との区別が話題になりそうですね。しかし小牧基地にそれだけのスペースがありましたかね。追記)読者の方からご指摘あり、KC-46は美保基地配備になるとのことです。訂正します。

State Department Clears $1.9B Sale of KC-46A Tankers to Japan

By: Valerie Insinna, September 22, 2016 (Photo Credit: Boeing)

  1. WASHINGTON —  米国務省は21日、19億ドルでKC-46空中給油機の日本向け売却を承認し、ボーイングは同機で初の海外販売の実現に一歩近づいた。
  2. 国防安全保障協力庁(DSCA)によれば案件はKC-46A四機、プラット&ホイットニー製4062型エンジン予備一基を含む。日本は運用訓練も契約の一部として受ける。
  3. 各機はALR-69Aレーダー警告装置および小型空中GPS受信機を装着する。ともにレイセオン製で、さらにノースロップ・グラマンのAN/AAQ-24(V)大型機用赤外線対抗装置も搭載する。
  4. 日本は昨年10月にKC-46導入の意向を表明していた。海外販売を模索していたボーイングには初の海外販売成約となった。
  5. KC-46はエアバスA330多目的給油輸送機としのぎを削る商戦を展開しており、軍用実績ではエアバスのほうが多く低リスク選択肢と受け止められてきた。韓国は2015年にボーイングを退けA330MRTTの採用を決めている。
  6. アジア太平洋の同盟諸国は米政府に装備提供と訓練実施を求めて中国、北朝鮮への対応を急いでいる。対外軍事販売は米議会の承認が必要だが 今回の案件は議会を難なく通過するだろう。日本との軍事上の密接な関係があるためだ。この点はDSCAも声明文で強調している。「今回提案されている売却により日本の太平洋地区における安全保障活動能力が強化され、米国の主要同盟国たる日本の防衛体制も向上します」
  7. DSCAは今回の契約に付随した見返り合意内容 offset agreementsはないとしている。
  8. 米空軍はKC-46を179機調達する。■