2018年9月18日火曜日

中国潜水艦部隊の「優位性」を無にする作戦は可能?

 

中国が米国主導の国際秩序に公然と挑戦する姿勢を隠そうともしないため、各国の包囲網さらに米国による貿易戦争を招いています。中国経済が弱点を露呈するのは時間の問題とはいえ、錬金術のような予算拡大で建造した潜水艦部隊が忽然と消えるわけではなく、潜水艦部隊は悪夢になります。ではどうしたらよいでしょう。対潜能力は日本の能力が卓越しているため、中国は日本の対潜アセットの排除に必死になるはずですね。P-1やP-3Cを守るのが航空自衛隊の役目、島しょ部の艦船通過を阻むのが陸上自衛隊の任務で、海自潜水艦は阻止任務、水上艦はASWに専念できるようにすべきでは。

US submarines are better than China's 'by far,' but in a war that may not matter 米潜水艦は中国艦より「相当」優位だが有事には解決にならない

Sep. 11, 2018, 5:56 PM

A Chinese submarine attends an offshore blockade exercise2005年のロシア共同演習に参加した中国潜水艦 Zha Chunming/Xinhua/Associated Press

  • 中国が20年にわたり潜水艦開発に多大な予算を投じてきたが米潜水艦の優越性は変わらない
  • だが中国が数の面や場所、場面で米国の優越性を脅かす可能性はある
  • 中国は「グレイゾーン状況」で優位で開戦一歩手前まで緊張を高めるだろう



国ほか太平洋周辺国が危惧しつつ見守るのは中国の潜水艦部隊の増強でこの二十年間にわたり新型かつ柔軟運用可能な潜水艦の全隻数は米国を上回るまでになった。
米潜水艦は中国艦より高性能とはいえ、有事の際は隻数と地理条件で中国に有利で米国や同盟国の優位性を脅かす可能性がある。
海軍近代化は中国がめざす「海洋権益重視」のあらわれと国防総省は年次報告「中国の軍事力」で開設している。
人民解放軍海軍への作戦要求は高まっており、潜水艦に高優先順位がつき、米海軍の海洋支配への対抗が期待されている。
現在の勢力は56隻でうちミサイル原潜4隻、攻撃型原潜5隻、ディーゼル動力攻撃型潜水艦47隻だが2020年には69隻から78隻になるとペンタゴンは見ている。
中国はこの15年間で原子力潜水艦10隻を建造し、うち普級ミサイル潜水艦は「中国初の信頼性を備えた海洋配備核抑止力」とペンタゴン報告書は述べている。
だが原潜は可能性が一番高い有事シナリオでは使い勝手が悪いと指摘するのがブライアン・クラーク(予算戦略評価センター主任研究員)だ。
「騒音が比較的高く、追尾は容易で、対地巡航ミサイルを除けば大した戦力でなく隻数も多くありません。もっと遠隔地の標的のグアムやハワイの攻撃手段でしょう」(クラーク
China navy naval bases Asia Pacific中国海軍の構成と配備基地をペンタゴンがまとめた US Defense Department

クラークは通常型潜水艦のほうが「重要な潜水艦戦力」とし、とくに対艦ミサイル発射可能な艦や大気非依存型推進方式(AIP)搭載艦に注意を促している。後者はディーゼル電気推進方式の欠点を克服している。
1990年代中頃以降の中国は宋級ディーゼル電気推進攻撃型潜水艦13隻を建造し、さらにロシア製キロ級12隻を調達し、うち8隻が対艦巡航ミサイル発射可能だ。
キロ級は通常型ディーゼル潜水艦で定期的に浮上する必要がある。
「それでも優秀かつ頑丈で信頼性高い潜水艦で長距離対艦ミサイルを搭載しています」とクラークは評する。短距離運用でキロ級は「スノーケルを使わず接近し長距離戦を行うとの懸念が米側にあります」
さらに元級ディーゼル電気方式大気非依存型攻撃潜水艦を17隻建造し、2020年までに20隻になるとペンタゴンは見ている。
Navy Ray Mabus China Chinese Yuan submarineレイ・メイバス海軍長官(当時)が元級潜水艦Hai Jun Changに宁波で乗艦した。2012年11月29日。REUTERS/US Navy/Chief Mass Comm. Specialist Sam Shavers
「元級AIP潜水艦はとても優秀」とクラーク(元米海軍潜水艦士官)は述べる。「通常任務は二三週間でAIPを使えばスノーケル浮上は不要です。日米両国の心配のたねとなるでしょう」
元級各艦は魚雷と対艦ミサイルで水上艦部隊に脅威となる。
クラークは「元級が一番の懸念になるのは米艦船の攻撃能力がありながら追尾探知が難しく攻撃機会は皆無に近いからです」
だが中国のディーゼル電気推進潜水艦に不利な点もある。
china navy yuan class submarine元級攻撃型潜水艦 .Congressional Research Service

静かとはいえ米原子力潜水艦が最大限に静粛運行した際の静粛度に及ばない。また米潜水艦並の航海日数はなく、定期浮上の必要もある。中国の潜水艦乗員に米海軍乗員が有する経験の深さはない。
「そうなると中国潜水艦は米国水準に達していないことになります」(クラーク)
中国潜水艦はインド洋まで遠征し対海賊運用を東アフリカでおこなったが第一列島線周辺での運用が大半である。フィリピン海に展開すれば米艦船攻撃も可能とクラークは見る。
第一列島線の大部分は中国の陸上運用機材・ミサイルの行動半径内で中国の目指す接近阻止領域拒否戦略の一環となる。その同じ地域で米国および同盟国の優位性が脅かされている。
China Asia Pacific first island china第一、第二列島線の大まかな位置。 US Defense Department

「中国は数の上で優位で、作戦投入可能な潜水艦を多数保有していますが、同時に作戦海域も狭くてすむので有利なのです」(クラーク
対潜能力で米国や関係国に制約がある。
米潜水艦には対地攻撃や監視偵察など各種任務があり、対中国潜水艦攻撃に特化できず対潜作戦は水上、航空部隊に任されるが中国空軍機やミサイルの標的になる。
「ASW装備は中国の接近阻止戦術の前に脆弱度が最高に大きく、中国沿岸に近い海域で展開になるためこれは当然でしょう。そうなると動きが取れず進出前の中国潜水艦との交戦もままなりません」(クラーク)
数とともに地理条件で中国は「グレイゾーン」対決で有利となる。これは開戦一歩手前の状況で米海軍もこの状況に備える必要を認めている。
「中国とのグレイゾーン対決ならどうなるか。中国は第一列島線を通過して潜水艦多数を出動させ大洋に展開しようとすれば封じ込めは失敗」となり米側には大きな課題だとクラークは指摘。
「グレイゾーン事態でも武器は発射できず、かといって全隻の追尾は不可能なので所在不明の元級がフィリピン海に遊弋していれば事態がエスカレートしかねません。元級から巡航ミサイルが発射される心配につきまとわれるでしょう」「中国はホームチームでテンポと進展を自分でコントロールできるというわけです」(クラーク)
だが米国および関係国はこの状況にすでに直面している。
china coast guard scarborough中国沿岸警備隊がフィリピン漁民とスカボロ礁で対立した。2015年9月23日。AP Photo/Renato Etac

中国は沿岸警備隊を展開し南シナ海での海洋権益を執行して(国際法廷でこの主張は却下されているが)、人工島を構築し軍事拠点として固持する構えを示している。 
こうした沿岸警備艦船が米海軍艦船と遭遇すると中国は米国を侵略者と非難している。
中国沿岸沖合や人工島周辺の海域では「自国領海であり人口島のミサイルやレーダーで守られる安心感からやりたい放題だ」とクラークは指摘。「中国側は緊張を自由自在に高めたり下げられる」
武力衝突の可能性が高まる状況で中国潜水艦が優位となるが戦闘が長引けば欠点があらわになる。
「AIPでも連続使用時間は限られる酸素や推進力を失う、スノーケル浮上する必要が出てくる。

「そこで時間要素が関係する。もし米国と日本が中国潜水艦をしのげば元級はそのうちスノーケル浮上あるいは帰港を迫られる事態になり、それだけ脆弱になるのです」(クラーク)■

2018年9月17日月曜日

歴史に残る機体17 ノースアメリカンF-100スーパーセイバー

歴史に残る機体17 F-100スーパーセイバー

こうやって見ると航空機の歴史はいろいろわからない事象に果敢に挑戦した先人の苦労でいっぱいだとわかります。またA型で成功した機材は以外に少なく、以後BCD...と続いて改良され傑作機といわれるようになったのがわかります。F-100は傑作機とは言えないでしょうが歴史に残る機体でしょうね。台湾の話が出てきますが、実は日本でも一時採用候補になっていたのでは。しかし最後はCAS任務についたというのは悲しいですね。


The F-100 Super Sabre Was the Air Force’s First Supersonic Jet F-100スーパーセイバーは米空軍初の超音速ジェット機And workhorse of the Vietnam War. そしてヴィエトナム戦で大活躍した




1947年10月14日、オレンジ色塗装のベルX-1をチャック・イエーガーが操縦し水平飛行で初の音速飛行を達成した。X-1はロケット推進で実験機だったが、ジェットエンジン技術が進展し超音速戦闘機の実現が見えてきた。

ノースアメリカン社は独自に朝鮮戦争時の最殊勲戦闘機F-86セイバーを超音速機に変えようとしていた。セイバーの主翼後退角は35度で高速飛行に適し機首に大型空気取り入れ口があった。F-100「スーパー」セイバーでは主翼が45度になり、機首空気取り入れ口は整形され楕円形になった。1950年代の最新戦闘機「センチュリーシリーズ」一号機としてF-100には「ハン」のニックネームがついた。100(ハンドレッド)の短縮形だ。

搭載するJ-57-P-7ターボジェットにアフターバーナーがつき、燃料を直接テールパイプに放出した。燃料が大量消費されるがF-100は高高度で時速850マイルの超音速を実現し、F-100でスピード記録が数点生まれた。

空軍は同機を採用しF-100Aが1954年10月に就役した。ただし事故が多発し、空中分解でエースパイロットのジョージ・ウェルチが死亡するなど災難が続き全機飛行停止措置が必要となった。不安定な飛行や制御不能なヨーは小さすぎる尾翼が原因と判明した。

これは解決したがハンには別の問題もあった。高速飛行可能で20ミリ機関砲M-39を四門搭載したものの同機の設計思想は一時代前のままで、空対空ミサイル、長距離レーダーは未搭載で航続距離の短さは落下タンクで補っていた。事故多発のF-100Aは1958年までに順次撤去された。
RF-100Aは高速偵察機としてカメラ四台を機関砲の代わりに搭載し、原型機より成功したと言える。ドイツ、日本へ配備された同型機は東ヨーロッパやおそらく中国北朝鮮の上空50千フィートからスパイ飛行を行った。当時撮影された画像では迎撃機が遥か下方で懸命に追いつこうとしている様子が残っている。高高度偵察飛行は1956年に登場したU-2が交代した。

その後登場したF-100C戦闘爆撃機(476機製造)では主翼を大型化かつ強化し、エンジンも強力なJ-57-P21に換え最高速度は924マイルになりパイロン6箇所に6千ポンドを搭載した。さらに燃料搭載量が二倍になり主翼上に空中給油用プローブがついた。これによりF-100Cは単発機として当時最長距離のロサンジェルス・ロンドン間を1957年5月13日に14時間で飛行している。サンダーバード飛行展示隊がF-100Cを1956年採用し、来場者をソニックブームで驚かしたがその後FAAがこれを禁じてしまった。

F-100Dは1,274機製造され主翼尾翼が大型化されレーダー警報装置もつき、ハードポイントが追加され、AIM-9B熱追尾空対空ミサイルを運用できるようになった。C型D型ともにナパーム弾、ズーニ2.75インチロケット弾、クラスター爆弾、AGM-45ブルパップ初期型、AGM-83空対地誘導ミサイルが搭載可能だった。

NATO配備のF-100飛行隊では戦術核爆弾四種類の運用に備えた。だが高速低空飛行する戦闘爆撃機が自機が投下した核爆弾の爆風から逃げられたのか。通常兵器でも同じ危険があったが。

ハンパイロットは「肩越し」のトス投下で超音速機をバレルロールで上昇させた。ハンのMA-2低空爆撃装置が自動的に爆弾を投下させる間ほぼ垂直に飛行し、核爆弾は弧を描き目標に接近するが機体は上空をロールしつつアフターバーナー全開で反対方向に退避するのだった。

空軍はF-100 ZEL(ゼロ長離陸)もテストし、巨大ロケットブースターを機体下部に取り付け軌道上を一気に離陸する構想だった。この奇妙な発進方式の背景にはNATO航空基地がソ連核攻撃で抹消される危惧があったことがある。テストは成功したがZELが実戦配備されることはなかった。

ヴィエトナム戦争での大活躍---MiG撃墜一号記録を作ったのか

1961年4月、F-100D部隊がフィリピンからタイヘ移動し東南アジアでの米軍ジェット機の初の展開となった。戦闘投入は1964年が初めてで北ヴィエトナム対空陣地制圧にむかった。その後1965年3月2日にF-105戦闘爆撃機の援護としてローリング・サンダー爆撃作戦に加わった。ドナルド・キルガス大尉操縦のF-100はタインホア鉄橋攻撃に加わっていたがヴィエトナムのMiG-17四機編隊が雲中から突如現れた。これがヴィエトナム戦初のジェット空戦となった。MiG-17は米戦闘機より低速かつミサイル未搭載だが強力な機関砲三門でF-105一機を撃墜し2機目に甚大な損害を与えた。

キルガスは落下タンクを捨て急旋回しながらMiGの後尾につこうとした。ソ連製戦闘機は垂直降下しキルガスを誘おうとした。F-100は大型機のため機体引き起こしができなくなる。高度わずか7千フィートでキルガスは機関砲四門を浴びせた。以下本人による記録である。

「MiGの垂直尾翼上に閃光を目にしたと思うとすぐにMiGの姿が消えた。速度は580ノットだったと思う。トンキン湾の飛沫を浴びた、と大袈裟に言うつもりはないがぎりぎりのところで機体を引き起こした」

その日、MiGは三機喪失したが、二機はヴィエトナム側対空火砲の誤射のためだった。三番機の運命が不明だがキルガスが同機を仕留めたと主張しているのは正しいのかもしれない。ただし空軍は「可能性あり」としか認めていない。

その後旧式化したF-100は北爆任務から外され、南ヴィエトナム出ヴィエトコン相手に戦う地上部隊の支援に回された。1967年、州軍部隊四個飛行隊がF-100Cで現地に派遣された。最盛時にはスーパーセイバー490機が南ヴィエトナム上空を舞い連日地上支援ミッションを平均二回こなしていた。事前に計画された標的の攻撃以外に近接航空支援を必死に求める声に臨機対応した。
複座F-100F練習機の7機が初の「ワイルド・ウィーゼル」に改装され敵防空レーダー探知に投入された。EF-100Fにはレーダー受信機二式が搭載され敵レーダーの位置を探り、ロケットポッドで位置を知らせ随行するF-105に攻撃を任せた。その後AGM-145シュアライク・レーダー追尾ミサイルも搭載し、自機でレーダー施設を排除できるようになった。この試行で9箇所を破壊したものの二機を喪失した。実験成果に喜び空軍はF-4やF-105をワイルドウィーゼル任務に投入した。

F-100Fは「高速前線航空統制」任務にも投入され後部座席から敵を探知し、位置を煙幕弾で味方航空部隊に知らせた。コールサイン「ミスティ」の高速FACは優勢な防空体制の上空を飛び、その他の低速観測機では危険な任務だった。

スーパーセイバーは爆弾やナパーム弾40百万ポンドを投下し、合計360,283ソーティーをこなし1971年に現地から撤退した。この実績はF-4ファントムやF-105を上回る。F-100パイロットは代償も払った。戦中の喪失機材は242機でうち敵火砲により186機、基地攻撃により7機を失った。

ただしスーパーセイバーの極端に高い事故率はコンプレッサー失速や主翼破損、さらに一貫して発生したヨーの不安定さが原因で深刻だった。全生産2,294機のうち889機を喪失し324名のパイロットの命を奪った。

その他運用国での実績

フランス、デンマークでもF-100D型、F型を運用し、フランスはアルジェリア反乱勢力への空爆に投入した。台湾もF-100A戦闘機仕様118機を導入しその後レーダー探知機やサイドワインダーミサイルを搭載した。中国のMiG相手の空戦や大陸上空のスパイ飛行もこなしたと言われる。

トルコもF-100C型、D型、F型200機以上を受領し、Su-15と交戦多数を行い、少なくとも一機を地対空ミサイルで喪失している。スーパーセイバーの500ソーティで1974年7月のキプロス介入を支援したが対空火砲で6機を喪失しさらに2機が事故で失われた。750ポンド爆弾でニコシア空港を空爆し、ヘリコプター強襲作戦を上空援護し、誤爆でトルコ駆逐艦コチャテプを撃沈した。

晩年

米州軍では1980年までスーパーセイバーを運用した。退役後の325機はオレンジ色に塗装されQF-100標的無人機としてミサイル試射に投入されたが、今でも飛行可能な状態のF-100が数機残る。

米国初の超音速ジェット機は戦闘機としては卓越した存在ではなく、恐ろしいほど高い事故率にみまわれたものの革命的な新技術の先駆けで新戦術も生んだ。だがヴィエトナムで苦戦する地上部隊の支援という地味な仕事についたのである。■

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: Wikipedia

極超音速ミサイル迎撃手段の開発始まる---進化するミサイル防衛技術

This Is How the U.S. Military Wants to Shoot Down Russian or Chinese Hypersonic Missiles 米軍は中露の極超音速ミサイルをこう撃墜する

Kill a bullet with a bullet—hypersonic style. 弾丸で弾丸を撃ち落とす---しかも極超音速で

September 15, 2018  


超音速ミサイルが米国のミサイル防衛網を突破する可能性が出てきた中、米ミサイル防衛庁(MDA)が極超音速(マッハ5超)迎撃ロケットを求めるのは当然だ。

MDAは迎撃体で極超音速での高G飛翔制御を可能とする装備開発の研究提案を求めようとしている。

MDAによれば「飛翔制御は最大にしつつ運動エネルギー損失を最小限にして極超音速での飛翔を制御する」方法が必要だとする。

「提案ではマッハ5以上の速度域、高度50キロ以上を想定してもらいたい。迎撃体は1メートル未満あるいは5メートル以上の大きさを想定する」

実に明確に聞こえるが実は違う。極超音速ミサイルが大気圏にマッハ5プラスで突入する様子を想像してもらいたい。(DARPAがマッハ20の飛翔体をテストしたが焼えつきてしまったといわれる)そこにマッハ5プラスの迎撃体が接近する。両者合わせた速度は相当の難題となる。

興味深いことにMDAから「政府はこれまで各種システムに相当の支出を続けてきた」との発言が出ており、飛翔方向を制御するスラスターのことを指しているようだ。

極超音速ミサイルの出現は米国には嬉しくない事態で、現在のミサイル防衛は冷戦時代からつづくICBMや戦域規模の弾道ミサイルへの対応が中心だからだ。ICBMは上昇後は宇宙空間を巡航してから分離した弾頭がマッハ23で大気圏に再突入する。このため宇宙での迎撃が最も望ましい。だが、極超音速ミサイルは大気圏内を高速飛翔しながら回避行動をとり、一定の弾道コースを飛ばないのだ。MDAは2019年度予算で極超音速兵器対策に120.4百万ドルを要求している。

「MDAは現行の迎撃手段では制御可能な極超音速ミサイルへ対応できないと公に認めている。今後は極超音速ミサイルに最適化した手段の開発が必要と認めている」とジェイムズ・アクトン(カーネギー平和財団核政策研究部門)が本誌に語ってくれた。「今回の要望を見ると明らかにその方向に向かっているようだ」「現行の迎撃手段の一部も極超音速飛翔できるだろうが今以上の飛翔制御能力がないと標的を直撃できないのだろう」

ここから生まれる嫌な問題は極超音速迎撃が実現すれば国際軍備管理が不安定となり軍拡競争が生まれるのではないかという点だ。アクトンは迎撃体が非戦略ミサイルを相手にするなら受け入れ可能と見る。「米THAAD(終末高高度広域防衛)は短距離、中距離の弾道ミサイルへ十分効果がある手段であり、こうした弾道ミサイルは同じ距離なら極超音速兵器より高速飛翔する。そうなると極超音速ミサイル相手の局所防衛は十分可能と思うし、それが実現したからと言って不安定化を招くことはないだろう」

ただしICBM相手に極超音速迎撃体を使うと事態は変わる。「広域防衛に極超音速手段を使えば不安定化を招く。ロシアや中国の第二次攻撃能力を危うくするからだ。それでも実施可能だと思う」(アクトン)

一方でDARPAがグ極超音速兵器に対応するライドブレイカーGlide Breaker防衛構想を募集中だ。「グライドブレイカーの目的は超音速、極超音速の脅威全体に有効な米防衛体制を高めることにある」とDARPAが説明している。■

Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter andFacebook .

2018年9月16日日曜日

E-2Dは日本へ、P-8、ペイトリオットを韓国へ、軍事装備販売を強化する米国の動き

米国から見れば貿易赤字解消に即効効果があるのは軍事装備品の販売です。しかし日本にとって米製装備依存が高まると国内の防衛産業の基盤がそれだけ弱まってしまいます。ただでさえ日本の防衛産業はやる気を失いかねないので長い目で見て痛い効果を生みそうです。韓国軍には「国民感情」に流されず北朝鮮の監視警戒を続けてもらいたいものです。


U.S. Sending Billions Worth of P-8s, E-2Ds To Asian Allies 

米国はP-8,E-2D数十億ドル相当をアジア同盟諸国へ提供

Japan and South Korea are getting new generations of sub-hunting and intelligence-gathering aircraft as China, North Korea, and Russia continue to push more assets into the waters of the Pacific. 

日本、韓国が新世代対潜哨戒機、情報収集機を導入し、中国・北朝鮮・ロシアが引き続き太平洋で軍事力増強を続ける状況に対応

By PAUL MCLEARYon September 13, 2018 at 6:15 PM

US Navy P-8 Poseidon
国務省が総額26億ドルでP-8Aポセイドン対潜哨戒偵察機6機、ペイトリオット弾道ミサイル迎撃兵器64本の韓国向け販売を承認した。米同盟国側が米製軍事装備の強化で中国に対抗する姿勢の一環であり、同時に北朝鮮へも警戒を怠らない動きにもなる。
このうちボーイング製ポセイドンは対潜哨戒をしながら偵察任務を広範囲な海洋上で行なえ、韓国軍には北朝鮮潜水艦追跡能力で新次元を提供sルウ。2010年に北朝鮮小型潜水艇が韓国海軍コルベット艦天安を沈め、46名の生命を奪った事案が発生している
Navy E-2D Advanced Hawkeye
中国はこれまでより高性能潜水艦の展開をすすめており、一部はインド洋まで遠征している。「中国潜水艦部隊の近代化は依然として高優先順位事業」とペンタゴンが直近で公表した中国軍事力評価で指摘している。
ロシアも新世代潜水艦を送り込んでおり、ロシア国営通信TASSによれば「ステルス」潜水艦二隻が太平洋艦隊に今後二年のうちに編入され、6隻あるヴァルシャヴャンカ級ディーゼル電気推進式潜水艦(改キロ級)の初号艦が太平洋に配備される。
日本も海外装備の調達に大金を支払おうとしている。今週月曜日、ペンタゴンから31億ドルでノースロップ・グラマンE-2Dアドバンストホークアイ位空中早期警戒統制機合計9機の日本向け販売が発表された。
安倍晋三首相のもとで日本は大幅な軍事力増強に乗り出しており、中国が急速に通常兵力を近代化していること、北朝鮮の弾道核ミサイル脅威を真剣に受け止めている。
日本は旧型E-2Cホークアイを運用中だが新型機は大幅な性能向上で、F-35共用打撃戦闘機との併用で日本周囲での水中、空中の情報収集力が増強される。
安倍政権は先月に記録的な480億ドル軍事予算を要求したところで米製軍事装備品に数十億ドルを手当している。

今週初めには海上自衛隊艦船がハワイ沖合で模擬弾道ミサイル迎撃に成功しており、日米両国の関係者から日本の能力向上は確実に進んでいるとの評価を得た。日本艦がイージス弾道ミサイル防衛システムで弾道ミサイル迎撃に成功したのはこれが二回目で初回は2017年2月のことだった。6月の二回目テストは失敗したが、海軍は飛翔中の爆発は人的ミスが原因としていた。■

2018年9月14日金曜日

自衛艦あたご発射のSM-3が弾道ミサイル迎撃実験に成功

目立たないニュースですが、着実に迎撃能力を上げていくのは頼もしい限りです。SM-3はレイセオンが商標登録していたのですね。使い方に今後気をつけないといけません

 

Standard Missile-3 intercepts ballistic missile target during Japanese test at sea スタンダードミサイル-3で日本が弾道ミサイル迎撃実験に成功

Japan's first SM-3 IB test underlines international cooperation 日本初のSM-3 IBテストは国際協力の賜物だ

PACIFIC MISSILE RANGE FACILITY, Hawaii, Sept. 12, 2018
US Navy 111031-N-BT947-026 The Japan Maritime Self-Defense Force (JMSDF) guided-missile defense destroyer JDS Atago (DDG-177) maneuvers with other
By U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist Seaman Jacob I. Allison [Public domain], via Wikimedia Commons
上自衛隊は米ミサイル防衛庁と協力しミサイル迎撃テストに成功した。米海軍も加わりハワイのカウアイ島沖合で実施した。レイセオン SM-3®ブロックIBミサイル一発が弾道ミサイル標的を迎撃したが、日本が高性能の同ミサイルを使用した迎撃テストを実施したのは今回が初めて。
標的ミサイルは太平洋ミサイル発射場から発射され、迎撃ミサイルは日本のJSあたご(DDG-177)から発射され、最新の弾道ミサイル防衛装備の実戦力を改修後の同艦が試した格好となった。飛翔テストは日米のミサイル防衛協力の大きな一歩を示すもの。日本はSM-3ブロックIA迎撃ミサイルを運用中だがIB型ではシーカーが改良され、スロットル制御高度制御装備が改良されたため従来よりも大型の表てkに対応できるようになった。
「SM-3ファミリーはこれまでも一貫して高性能脅威に対応できる力を陸上海上問わず示してきました」とレイセオンミサイルシステムズ社長テイラー・W・ローレンス博士は述べる。「今回のテストは両国の弾道ミサイル防衛が相互運用状態になっていることに加え、両国が共同すれば強力な結果が生まれることを改めて示す格好になりました」
SM-3を生産するのはレイセオンの宇宙ファクトリー(アリゾナ州ツーソン)と同社のインテグレーション施設(アラバマ州ハンツヴィル)にある。


レイセオンについて

レイセオン(本社マサチューセッツ州ウォルタム)の2017年売上は250億ドル、従業員64千名で国防分野以外にサイバーセキュリティ等でのソリューションを得意分野とする。創立以来96年の歴史はイノベーションを多数含み、最新の電子製品、ミッションシステム統合、C5I™製品サービス、センサー、ミッション支援等を世界80カ国超の顧客に提供中。

2018年9月13日木曜日

スタンドオフ兵器の新構想Jassm-XR開発始まる

北朝鮮の先にイラン、さらに米国に公然と歯向かうロシア、中国まで控える中、スタンドオフ兵器の能力向上が必要なのですね。日本もJassm-ER導入の観測がありましたが運用機材さらにISR機能までシステムで考えないと意味がありませんね。

Aerospace Daily & Defense Report

USAF Revives ‘Extreme Range’ Jassm Concept 米空軍の「超長距離」型Jassmコンセプト復活へ

Sep 11, 2018Steve Trimble | Aerospace Daily & Defense Report

Jassm: USAF

空軍が十年に渡り温めてきたAGM-158共用空対地スタンドオフミサイル(Jassm)の新型版構想を復活させ、射程距離は現行型の5倍程度に伸びるとみられる。
ロッキード・マーティンが51百万ドル相当の契約交付を9月10日に受け、「超長距離』版となるJassm-XRの開発を企画、日程調整する。
契約は新型ミサイル制御装置も含み、2023年8月31日までの期間。
ロッキードの戦術ミサイル事業があるフロリダ州オーランドで超長距離型Jassm-XRのコンセプトが2004年にお披露目されていた。
.国防科学委員会(DCB)が2009年にまとめた報告書では1,000カイリ程度の射程距離を想定していた。
これに対して、現行ミサイルの射程延長版AGM-158B Jassm-ERは500カイリ超といわれる。Jassm原型は200カイリだ。ロッキードは米海軍向けにJassm-ERを開発し、長距離対艦ミサイル (LRASM)と呼称している。
Jassm-XRは大型化し射程距離も伸びており、爆撃機など大型機発射の想定とDSB報告書は述べていた。
この兵器はAGM-158Bと射程距離2,400カイリのボーイングAGM-86通常型空中発射式巡航ミサイルの間を埋める存在となる。
Jassm-XRが原型通りのステルス特性を保持できればレイセオンAGM-129核対応巡航ミサイル(2012年に空軍が退役させた)に相当する射程距離と低視認性を同時に実現することになる。

AGM-129AはボーイングB-52Hが主翼下パイロン各2箇所に合計12発搭載していた。■