2022年4月12日火曜日

ウクライナ関係のニュース:ドイツがレオパルド戦車を(イタリア経由で)で供与か、米国はウクライナ軍を国内で訓練、マウリポル包囲戦の行方など


 

A German Leopard 1A5 main battle tank. Germany is currently considering approving the transfer of 50 Leopard 1 tanks to Ukraine.

RAINER LIPPERT VIA WIKIMEDIA

 

 

イツの防衛関連企業ラインメタルのトップは、ウクライナ当局が承認すれば、6週間以内に冷戦時代のレオパルド1主力戦車の送付を開始できると述べている。発言は、ドイツ政府に移送を許可するよう圧力をかけている。オラフ・ショルツ首相は、自党や連立政権内でウクライナへの戦車供与を支持する声が高まっているが、計画を保留しているとされる。

 

 

 

 ドイツがレオパルド1の搬送を許可すれば、ウクライナに戦車や装甲車を送った、あるいは送る計画を発表した他国にドイツが加わることになる。ウクライナが同戦車の操作方法や整備をどう訓練するのか、必要なサプライチェーンをどう確立するのかは不明である。いずれにせよ、これは最近ウクライナの国際的パートナーが地対空ミサイルや対艦ミサイル、火砲など、より高性能の兵器を同国に導入する動きが広がっている一部である。

 ロシア軍はウクライナ東部のドンバス地域とその周辺を確保するため、攻勢を強める準備をしているようだ。週末には、商業衛星画像プロバイダーのマクサール・テクノロジーズが、ウクライナの都市ハリキウの東約8マイルの道路上を移動するロシアの装甲車両、野砲、トラックの画像を公開した。車列は、合計数百台の車両で、前線に向かい南下しているように見える。

 

以下の最新ニュースをお伝えする。

 ドイツ新聞ハンデルスブラットHandelsblattがラインメタルCEOであるアルミン・パッペルジャーArmin Pappergerのコメントとして、ウクライナにレオパルド150両を譲渡する可能性を伝えた。パッペルジャーによると、最初の戦車は譲渡の承認後6週間以内にウクライナに移動が可能で、ウクライナ軍が戦車全車両を受け取るのは3ヶ月後になる。

 パッペルジャーは、譲渡が承認されれば、戦車はラインメタルのイタリア子会社ラインメタルイタリア経由で送られると述べ、イタリア軍で供用されていた車両を示唆した。イタリア軍は2008年までレオパルド1を運用していた。ベルリン政府は、ドイツ製兵器システムを外国から第3国へ再移転させるのを厳しく規制している。ドイツのクリスティーネ・ランブレヒト国防相も週末に、ウクライナに直接譲渡できる装備は「限界に達している」と発言していた。

 この計画が実際にいつ動き出すかは不明。ショルツ首相は、戦車やドイツ製歩兵戦闘車「マーダー」(台数不明)のウクライナ供与について、さまざまな理由で最終決定を先延ばしにしているとされる。

 レオパルド1が旧イタリア製であっても、第三国経由の譲渡を認めれば、ロシア当局の反発のみならず、ドイツ国内の政治的懸念も和らぐかもしれない。ドイツ政府は、ロシア産天然ガスからの脱却をめざしているが、現状では天然ガスが重要なエナジー源であることに変わりはない。ドイツはチェコ共和国から旧東ドイツ軍BMP-1歩兵車両をアップグレードするなど、ウクライナへの第三者提供を承認している。

 また、ウクライナ軍がレオパルド1を受領した後、実際に運用できるのかとの懸念もある。ウクライナ軍には同戦車の運用・整備経験がなく、部品や105mm主砲用弾薬のサプライチェーンも未確立だ。

 ラインメタルのパッペルジャーはハンデルスブラット紙で、スキルを有するウクライナ人なら、数日でレオパルド1の操作訓練を受けられると語った。「レオパルド1では、集中的な訓練が必要だ。しかし、ウクライナ人が戦車を欲しがるのであれば、方法は見つかるはずだ」と、現在の連立政権の一翼を担うドイツの自由民主党の防衛政策スポークスマンであるマーカス・フェーバーMarcus Faberが、同紙に語っている。

 

 ウクライナ軍が最終的にレオパルド1戦車を受け取るかはともかく、この2週間で他国から今までより実質的な軍事支援計画が出てきた。今週末には、英国政府がウクライナへの対艦ミサイル供与で詳細を詰めていることが明らかになったが、具体的な兵器システムは特定されていない。英国当局がハープーン対艦巡航ミサイルの輸送を計画しているという噂や、すでに輸送したとの噂があるが、裏付けは何もない。

 興味深いことに、英国製マートレットMartletミサイルがウクライナで地対空ミサイルとして使用されているように見えるビデオクリップが公開された。英国当局は、これまでウクライナに肩撃ち式の地対空ミサイルのスターストリークStarstreakの供与を確認していたが、マートレットの供与は公式発表されていない。マートレットは、スターストリークと同じ手持ち式や発射台から発射でき、構成によっては、海洋や地上の目標にも使用できる。

 米軍は現在、一般に「自爆ドローン」とも呼ばれるスイッチブレードSwitchblade滞空待機弾の使用について、ウクライナ人要員向け訓練方法を模索している。4週間前、アメリカ政府がウクライナ軍に同兵器100基の供給を始めたことが初めて明らかになった。週末には、米国国内でウクライナ軍に同無人機の使い方を訓練したと米国防総省が明らかにした。ウクライナ軍隊員は、ミシシッピ州ビロクシの海軍小型船舶教習所(NAVSCIATTS)で行われた別の訓練コースに参加するため、侵攻開始前から米国に滞在していた。昨日、ウクライナ帰国を前に、オースティン米国防長官が隊員と談話した。

 米国防総省高官は本日、スロバキアが先週ウクライナに譲渡した長距離地対空ミサイルS-300が破壊されたとする証拠はない、と述べた。週末にロシアが南部の都市ドニプロの空港を攻撃した際、破壊された標的の中にS-300が含まれていたとの報告があった。ウクライナの地元当局者は、空港が事実上破壊されたと述べていた。

 ウクライナ当局はここ数週間、戦車や装甲車、その他の高性能兵器システムの追加供与を繰り返し要請している。これは、ロシア軍の主要な作戦の焦点が、同国の東部と南東部の地域に移っているためだ。マクサール・テクノロジーが週末公開した衛星画像では、ドンバスの前線に向かい南下する、ロシア軍の大規模な車列が写っており、新たな大規模攻撃の計画を示している。

 英国国防省が発表した紛争に関する最新評価では、ロシア軍はドンバスのウクライナ支配地域を砲撃し続けているが、これまでのところ攻撃は撃退されているとある。英国政府関係者はまた、ロシア軍がマリウポルを完全確保するために進行中の戦いで、論争の的になっている白リン焼夷弾が使用される可能性を警告している。アゾフ海に面した南東部の戦略的な港湾都市マリウポルは、1カ月以上にわたり包囲されているが、ウクライナ防衛隊は持ちこたえている。この地域を完全確保するのは、クリミア半島への陸橋を確保するロシアの大きな目標のための重要な要素だ。

 米国防省高官は、ドンバスでロシアが新たな攻勢を開始する兆候はまだないが、ウクライナ北部の地域から撤退した部隊がその方向に動いているように見えると述べている。また、ロシア軍がマリウポルで使っている壊滅的な戦術を他のウクライナの都市にも使うことが懸念されるとも述べた。

 また、これまでの戦闘の結果、ロシアの大隊戦術群の一部が完全に戦闘不能に陥ってたとの指摘もある。

 

 ウクライナ東部で激戦が続いているのは確かだ。同地域からは市民数千人が避難している。ウクライナ当局によると、クラマトルスク市から約16万人が避難している。先週、避難拠点となっていた同市の鉄道駅がロシアのミサイル攻撃を受け、子供5人含む少なくとも57人が死亡、さらに114人が負傷した。

 米軍によると、ロシア軍は侵攻開始以来、ウクライナに弾道ミサイルと巡航ミサイル1500発以上を発射している。ウクライナ海軍がこれまでの戦闘で事実上無力であったことを考えれば、ロシア軍は他の対艦巡航ミサイルを陸上攻撃に使用している可能性がある。

オーストリアのカール・ネハンマー Karl Nehammer 首相は、今日モスクワでロシアのプーチン大統領と会談する。ネハンマー首相は、2月のロシアのウクライナ侵攻開始後に、プーチン大統領と会談する最初の西側指導者となる。同首相はキーウでウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領とも会談しており、欧州の指導者多数がキーウ訪問をしている。■


Ukraine Situation Report: Leopard Tanks Could Arrive In Six Weeks With Germany's Approval

Ukraine has been asking for tanks as a major Russian offensive in Ukraine's east looms.

BY JOSEPH TREVITHICK APRIL 11, 2022


 

オスプレイ生産が終了になる見込みが出てきたが、2050年代までのティルトローター需要を考えればこのまま終了としていいのだろうか。

 

 

 

 

 

軍の共通機種中で最も革新的な回転翼機の生産が終わりに近づいてきた。

 

 

 V-22オスプレイ・ティルトローター481機のが発注済みか発注間近となり、同機を製造するベル=ボーイングが生産を数年以内に終了する見込みとなった。

 冷戦末期、ディック・チェイニーが国防長官として、くりかえし同機開発を止めようとしたため、不安定なスタートを切ったものの、オスプレイは史上最も多目的の回転翼機となった。

 

V-22 Osprey in flight.

V-22オスプレイは統合部隊で唯一のティルトローター機だ WIKIPEDIA

 

 V-22は従来型のヘリコプターではないので、「ロータークラフト」と呼ばれる。

 翼端のエンジンにより、ヘリコプターの垂直方向の俊敏性とターボプロップ機のスピードと航続距離を兼ね備えており、空中ではわずか12秒で90度旋回する。

 そのため、V-22は他の回転翼機と異なり、時速300マイル以上で巡航し、無給油で1000マイルの航続距離を実現し、さらに狭い場所に着陸可能だ。

 しかし、1988年、ソビエト連邦崩壊により、国防総省が兵器計画100事業を中止する準備を進めると、陸軍は開発を中止した。

 1990年代の「平和の配当」により軍備近代化が停滞する中、同事業を守り抜いたのは、主に海兵隊であった。

 海兵隊はそのコンセプトへの信頼を失うことなく、チェイニー長官の攻撃を議会の力を借り撃退し、オスプレイは揚陸作戦のあり方を一変させるに至った。

 空軍は特殊作戦部隊のために56機を、海軍は空母など洋上の艦艇への補給用に数十機を購入し、海兵隊以外も恩恵を受けている。

 いずれの場合も、ヘリコプターとターボプロップ機の性能を組み合わせた同機で、これまで不可能だった任務が可能になると軍の計画者たちは考えた。

 例えば、海軍の空母艦載機オスプレイは、外洋の艦艇に緊急物資を届け、従来の空母用輸送機と異なり、空母以外の各種艦船に対応できる。

 ボーイングとベル/テクストロンは、生産分担し、この計画の成功から多大な利益を得ている(両社は著者が所属するシンクタンクに寄附している)。

 しかし、海兵隊と海軍が必要とするティルトローターの最後の発注は2023年になりそうで、その時点で両社は他の機会をさらに追求する必要に迫られる。

 ベルは、陸軍ブラックホークヘリコプター数千機を交替する先進的回転翼機の入札で、V-22の性能から力を得ており、ボーイング社は別の競合チームに懸命に取り組んでいる。

 しかし、V-22の生産が終了するまでに、V-22の退役2055年予定まで必要となる機数を確保しておくことが重要だ。

 というのも、オスプレイのユニークな性能のため、退役前に機数を消耗した場合、海兵隊を船から陸に上げたり、長距離の特殊作戦を実行する任務を効率的に遂行する手段がなくなるためだ。

 海兵隊はオスプレイ360機の運用を計画し、今日の遠征作戦はティルトローター技術による柔軟性を前提としている。

 残念ながら、今後数十年にわたる紛争でどこまで消耗となり、ティルトローター機を必要とするどんな任務が発生するか、確実に予測する術はない。

 新規任務には、空中給油、電子戦、戦闘捜索・救助など、多用となる可能性がある。

 そのため、海兵隊が必要とするオスプレイをすぐに全機調達することと、10年後、20年後に十分な機数を揃えられるかは同じではない。

 空軍の特殊作戦部隊ではオスプレイの導入数が少ないため、この問題はさらに顕著となる。空軍当局は、特殊機材少数を維持する高コストで繰り返し警告を発している。

 また、海軍は、空母艦載機に48機のオスプレィを購入予定だったが、分散海上作戦によってティルトローター機体への需要がどこまで増加するかを考えずに44機に減らしてしまった。

 統合部隊は将来の戦争での消耗を回避するよう部隊編成する傾向があるが、国家防衛戦略が中国のような大国のライバルにしっかりと焦点を合わせた今、計画立案部門は相当数のティルトローターが敵攻撃で失われた場合、作戦にどんな影響が出るかを考えるべきではないか。

 というのも、計画通りなら、オスプレイの新規生産は間もなく終了するからだ。

 海兵隊は初期モデルを最新構成にアップグレードし続けるが、42州に広がる請負業者400社のサプライチェーンは、新規生産が完了すれば徐々に姿を消す。

 ラインの停止にどう備えるべきか、ベルとボーイングはすでに各軍へ打診を始めた。

 運命の一歩を踏み出す前に、計画部門は今世紀半ばを乗り切るべく十分なティルトローターの機数と、付随して起こりうる複雑な状況は事前に確認の必要がある。

 オスプレイ生産が終われば、再開はないと断言できる。ティルトローターの機能を発揮する機材は他にないため、今こそ機材整備の規模を正しく把握するべきだ。■

 

Production Of The V-22 Osprey Is Ending. The Pentagon Needs To Be Sure It Has Bought Enough.

Loren ThompsonSenior Contributor

Apr 8, 2022,10:44am EDT

https://www.forbes.com/sites/lorenthompson/2022/04/08/production-of-the-v-22-osprey-is-ending-the-pentagon-needs-to-be-sure-it-has-bought-enough/?sh=3cebec35ad9e

2022年4月11日月曜日

ウクライナ戦では次のドンバスの戦闘に注目。今度はウクライナも補給線が伸び不利に、一方、ロシアは緒戦の失敗を繰り返すことなく今度こそ勝利を収められるかが注目。


主砲を発射するロシア戦車

 Image Credit: Creative Commons.

 

 

シアとウクライナはドンバスの戦いにむけ準備の最終段階に入ったようだ。第二次世界大戦のクルスクの戦い以来、ヨーロッパ最大の戦車戦になると予想される。モスクワとキーウの双方にとって、大きな賭けとなる。ドンバスの結果が戦争全体の行方を左右しかねない。

 

 

 2月24日、ロシア軍はキーウ近郊、ハリキウ、ドンバス、クリミアと、4つの主要な進攻軸でウクライナに侵攻した。ロシア軍指導部は、限られた兵力を分散させるにあたり、戦争の最も古い原則の1つである「質量」に違反した。第一目標を定め、その目標達成に戦闘力の大部分を割く代わりに、兵力を広範囲に分散させたため、ウクライナ守備側は4軸すべてを撃退することができた。

 キーウの西と北の周辺で深刻な戦闘損失を被ったロシアは、失敗を認め、開戦から約1 カ月で全軍を撤退させ、現在進行中のドンバス戦の北側に配置転換し、キーウとスミSumy地域の失敗を抑える決断を下した。ロシアはまた、ウクライナ軍(UAF)がドンバスの戦いに参加するために撤退しないように、ハリキウ北部の軍を限定的に探査攻撃と嫌がらせ砲撃で維持した。

 ドンバスの南側では、ロシアはマリウポルのUAF防衛部隊の撃滅に向け最終段階にあり、ロシアとクリミア軍との間に陸橋が開かれ、ケルソン地域の部隊(ドンバス同様に低いレベルの戦闘が続いている)への兵站やその他支援ができるようになる。

 一方、ドンバスでの戦闘の最前線では、4万のウクライナ軍が防衛に当たっている。ロシアの戦略は開幕戦の惨めな状況から転換し、ドンバス線より東側の部隊を前進させ続け、南部/マリウポル軸からロシア軍を投入しドンバス・ポケットの南側の肩を攻撃し、キーウからロシアの装甲を投入してドンバス・ポケットの北側の肩に攻撃する修正案が見えてきた。

 ロシアがUAFの陣地を北側か南側のどちらかで側面攻撃に成功すれば、ウクライナの全戦闘部隊を切り離し、計画的に破壊または捕捉できる。一方、ウクライナはロシアがドンバスで自軍を包囲するのを阻止しようとする。その作業は非常に難しいが、不可能ではない。

 ウクライナはハリキウやケルソン地区で戦う部隊を撤退させられない。ロシア軍が攻略できる領域を広げないためだ。しかし、キーウ、チェルニヒフ、スミを守っていた部隊を再配置し、キーウにまだあれば戦略的予備軍と合わせ、ドンバスを強化するために送り込むことは可能だろう。

 UAF側には、2014年以降、同地域に相当の防衛施設を建設してきた利点があり、ロシアが前線を突破しようとすれば、甚大な損害を与える。しかし、ロシアの突破を阻止するウクライナの目的は、いくつかの理由で複雑だ。

 まず、ロシア軍のみならず、ウクライナ軍も兵員や戦車多数を失っており、UAFの戦闘力は開戦時より低下している。キーウ政府は自軍部隊の損失に関する情報をブラックアウトしているため、ウクライナ軍がどれだけの死傷者を出し、ドンバス戦線を守る訓練済み部隊がどれだけ残っているのかは不明だ。

 第二に、ロシア側のドンバスへの補給線は短く安全だが、皮肉にもウクライナ側が困難である。ウクライナの援軍や欧米から送られる軍需品は、キーウから前線まで数百キロ移動しなければならない。ロシアは空爆、ドローン、ロケット弾やミサイルによる襲撃で、補給線を破壊し続けている。阻止に成功するたび、兵員、燃料、弾薬、武器が奪われる。

 キーウはNATO諸国に重火器、戦車、戦闘機、長距離防空ミサイルシステムなどの提供を懇願してきた。このような援助は、組み立て、ウクライナへの輸送、前線への配送に相当の時間がかかる。すべては、前線に到着する前に破壊しようとするロシアの有人機無人機の監視下に置かれることになる。しかし、同じく重要な要素として、訓練を忘れてはならない。

 ウクライナは毎日、訓練済み兵員多数を失っており、交替は容易にできない。攻勢に出るには、ウクライナは新しい戦車、自走砲、防空システムを揃えた戦闘集団を創設する必要がある。戦場でロシア機甲部隊に勝てるまでには、個人レベルから、次に小隊単位、大隊規模と訓練に時間がかかる。ウクライナが十分に訓練しないまま部隊と新装備を戦場に投入すれば、効果は低くなり、その結果、ロシア軍の阻止はより困難になる。

 1943年のクルスクの戦いでは、強力なドイツ戦車軍がソ連の防衛戦線の突破を図った。ソ連軍は数ヶ月かけ、精巧な防御陣地を準備し、大量の援軍を投入し、現地での反撃ルートを事前リハーサルし、大量の燃料、食料、弾薬を貯蔵しておいた。ヒトラー軍はズタズタにされ、何万人ものかけがえのない犠牲者を出した。防衛側も大きく損失を被ったが、ここまでの敗北を与えたため、ドイツ軍は攻撃能力を回復することなく、ソ連領から追い出されたのである。

 今回のドンバスの戦いもクルスクの戦いと似た地形で行われ、この戦いの結果に多くのものがかかる。ロシアがUAF戦闘団の周囲に形成されたポケットを封鎖できれば、ウクライナ側がそれを破ることは事実上不可能であり、プーチンが新たな攻撃を行うにしても、キーウに戻る道が再び開かれるが、今回はウクライナ側の防御兵力がはるかに少なくなる。

 もしUAFが戦線を維持し、ロシア軍に十分な損失を与えきれば、プーチン軍は攻撃に戻る能力を失い、防衛的にまわるのを余儀なくされるかもしれない。その場合、戦争は新たな、暗い局面を迎えることになる。

 この戦いにどちらが勝つにせよ、ロシア軍とウクライナ軍の双方が深刻な損失を被り、市民インフラは想像を絶する損害を被ることになる。戦闘が終了すると、両軍とも部隊の再建、交代、再教育のため、おそらく数ヶ月は攻勢に転じることが困難になる。

 最も現実的な解決策は、迫り来る戦いが消耗戦となり、1943年のクルスクの戦い以来、人類が見たことのないレベルの破壊となると認識することだ。この戦いでは、間違いなく勝者は生まれないだろう。むしろ、一方が他方よりひどい負け方をするだけだろう。そして、ドンバスの戦いの展開に関わらず、この戦争に軍事的勝利はなく、交渉による解決で終わるという苦い現実が待つのみだ。

 アメリカの最優先課題は、第一に、戦争がウクライナ国境から拡大し、アメリカやNATO対ロシアの紛争に発展しないようにすること、第二に、戦争を早期に終わらせる方法の模索を支援することだ。戦争が長引けば、より多くのウクライナ人が苦しみ、死ぬことになる。■

 

 

Battle of Donbas: A Massive Tank War Could Decide Ukraine's Fate - 19FortyFive

ByDaniel DavisPublished1 day agoDaniel L. Davis is a Senior Fellow for Defense Priorities and a former Lt. Col. in the U.S. Army who deployed into combat zones four times. He is the author of “The Eleventh Hour in 2020 America.” Follow him @DanielLDavis1

 

 


ウクライナ空軍の爆撃機Su-24がここに来て姿を消している件について。創意工夫があっても機材の消耗がウクライナ空軍を苦しめている。

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A Ukrainian Su-24 in 2015. PHOTO VIA WIKIMEDIA COMMONS

 

戦時点でウクライナ空軍にはスホイSu-24爆撃機が少なくとも14機あった。各機は戦闘開始から数日間は重要な役割を果たしたが、その後、公式発表、ニュース、ソーシャルメディアから一切姿を消している。

 

 

 ロシアのウクライナ攻撃は7週目に入り、ウクライナ軍の可変翼Su-24に何が起こったかは不明である。ロシアは少なくとも1機を撃墜したようだ。他の機体は訓練されたパイロット、スペアパーツ、燃料の不足のため飛行できなくなった可能性がある。

 いずれにせよ、進行中の戦争でつかの間とはいえ、Su-24がはたした役割は、ウクライナ空軍有人機部隊の厳しい状況を物語っている。日を追うごとに、ウクライナ空軍は機材を損耗し、無人機への依存度を高めている。

 Su-24は、1960年代に流行した可変ジオメトリー翼を採用し、飛行速度に応じ主翼が展開する戦闘爆撃機だ。高速飛行には後退させ。低速で機動力を発揮したい場合は、主翼を伸ばす。

 ソ連のMiG-23、MiG-27、Tu-22M、Tu-160、アメリカのF-111、F-14、B-1などがこの機構を共有する。しかし、旋回翼は重く複雑になるため、最近は人気がなくなっている。

 当時、Su-24は恐るべき戦闘機であった。爆弾3トンを積み低空を高速飛行し、400マイル先に到達する。ソ連空軍は数百機取得し、1991年のソ連崩壊時で約120機をウクライナに残していった。

 ウクライナは数十機のSu-24を近代化し、徐々に規模を減少させる空軍機材の一部として供用してきた。2014年には分離主義者が支配するドンバスで少なくとも1機のSu-24を失っている。

 ロシアが今年、ウクライナ攻撃のために20万人で侵攻した段階で、老朽機のうち14~23機がウクライナ南部のミコライフ空軍基地に残っていたが、その他Su-24は、ほとんどのウクライナ戦闘機と同様に、基地になかった。

 爆撃機と乗員や整備員は、比較的安全なウクライナ西部の空軍基地や小規模な民間滑走路、あるいは高速道路の上に分散していた。スホイ機はロシア砲撃の最初の夜を乗り切った後、行動に移った。

 Su-24がウクライナ上空に初めて姿を現したのは、2月24日だった。ロシア空挺部隊がキーウ近郊のホストメルにあるアントノフ工場の飛行場を襲撃した。ウクライナ軍は猛烈に反撃し、ウクライナに降伏の意思はないことが初めて明らかになった。

 2月24日、ホストメル上空でウクライナのSu-24がフレアを放出し、爆弾投下する様子が撮影されている。当時も今もホストメルはロシア機にとって危険極まりない場所で、1カ月半の戦闘でロシアがSu-24をウクライナに投入した確認はないため、同機はロシア機ではないと確信できる。

 ロシア空軍は新型Su-34を送り込み、大量に喪失している。ロシアではSu-34は徐々にSu-24に代わりつつある。

 キーウの当局者は、ロシアのSu-24を撃墜したとの主張を続けている。しかし、裏付ける証拠はない。

 だが、ウクライナ軍が少なくとも1機のSu-24を失った証拠はある。3月30日、ウクライナの爆撃機がウクライナ西部のリブネ上空で煙を吐いている様子を撮影した動画がソーシャルメディアに出回った。

 リブネは、ウクライナ空軍がSu-24の一部(廃機も含む)を保管するルツク空軍基地から遠くない。2月27日撮影の商業衛星画像では、ルツクでロシア攻撃により大破したSu-24が数機写っている。

 ロシア国営メディアは、ロシア軍が3月13日以前にウクライナ南部のケルソン付近でウクライナのSu-24を撃墜したと主張している。

 4月3日以前に、ウクライナのSu-24と思われる機体の墜落現場を撮影したビデオがある。青い迷彩柄が見え、AL-21エンジンの残骸も見える。

 ウクライナ政府がSu-24について言及したのは3月1日と3月2日が最後で、当局はスホイ爆撃機でロシア軍を爆撃したと主張した。

 その後、何もない。Su-24の飛行を示すビデオや写真は出ていない。同爆撃機が活動しているとの新たな主張もない。

 ウクライナの残存Su-24が戦闘中である可能性はあるが、話題に出てこない。小規模の爆撃機部隊は、消耗が激しく、飛行場、燃料貯蔵所、航空機整備施設へのロシア攻撃でも、損失をわずかに抑えている可能性もある。

 ウクライナはまだ飛行可能な機材(MiG-29やSu-27など)を持っているようだ。しかし、ロシアはウクライナ空軍を消耗させ続けている。戦争が長引けば、遅かれ早かれ、ウクライナで有人機が不足するときが来る。

 同盟国から中古戦闘機が提供されない限り、ウクライナ空軍には無人機が残るのみとなる。キーウが有人戦闘機の追加調達に苦労するのに対し、トルコからのTB-2武装無人機調達には苦労していない。

 TB-2はウクライナに必要な装備なのだろう。TB-2はロシア戦闘機の撃墜はできないが、Su-24より効果的にロシア車両を追い詰め、破壊している。

 しかも、乗員を危険にさらさずに任務を遂行している。■

 

Where Are Ukraine’s Bombers?

David AxeForbes Staff

Apr 7, 2022,08:00am EDT

https://www.forbes.com/sites/davidaxe/2022/04/07/where-are-ukraines-bombers/?ss=aerospace-defense&sh=55b705106e7e

 


2022年4月10日日曜日

論考 ウクライナ戦に見る戦争形態の変化を物語る3要素。ロシアは変化を無視し従来型戦術のまま作戦展開し痛い目にあっている。

 技術の進化、地形、社会の変化で攻守のバランスが変化しており、ウクライナ以外の民主体制国家にも有利になってきた。



シア侵攻へのウクライナの反撃が予想外に成功していることは、戦争の性格が変わりつつある姿を示している。ロシア軍が予想外な無能ぶりを示した一方で、侵略側が思う通り進展できなくなる傾向だ。

 これは、中国など征服により他国の領土を確保しようとする国々にとって悪い知らせだ(そして、先制攻撃戦をいまだ主張するアメリカのネオコンも同様だ)。逆に戦略目標の中心を防衛におく民主主義国家や、圧倒的な通常戦力に直面している小国には朗報だ。

 何が変わり、なぜ変わるのか?ウクライナ戦争は、精密誘導火力市街地化国民動員という世界的トレンド3つの軍事的意味を浮き彫りにした。今回が初めてではなく、米国自身もイラクで同様の苦境に遭遇した。しかし、ロシア侵攻は、現代の戦場で各要素が展開する点で群を抜いて明確な例であり、台湾当局者が公言したように、中国の戦略家は台湾統一を強行した場合の影響を熟考する必要があろう。


火力

火力、防護、作戦のバランスは常に変化しながら、戦争の様相を形成している。歴史上、長距離兵器が防御力を上回ると、戦場の移動が危険になり、隠れるのが安全になる。その結果、攻撃効果は妨げられ、防御が有利になる。クレシーやアジャンクールでイギリスの長弓がフランス騎士団の進撃を妨げたように、西部戦線で機関銃が塹壕戦の膠着状態をもたらしたように、そしてウクライナがロシアの進撃を妨げた事例となる。

 最も劇的な例は、英NLAWや米ジャベリンといった西側装備がロシア戦車を破壊したことだ。重装甲車両は最も難しい標的であり、対抗策のアップグレードも最も簡単だ。(例えば、米軍はイスラエルのトロフィーシステムをM1戦車に搭載している)。米国の経験から、軽量車両、特に前進の維持に不可欠な非装甲の補給トラックへの対ミサイル防衛装備の搭載は困難だ。そして、薄っぺらな車両は、高性能対戦車ミサイルだけでなく、小型弾を投下する無人機にも脆弱だ。実際、ウクライナのアエロズヴィドカAerorozvidka部隊は、自ら設計した爆弾投下型無人機でロシア部隊を停止させたと主張している。また、非武装の市販無人機でも、目標を発見することで、ウクライナ砲兵隊や待ち伏せ部隊の威力を増進できる。

 スマート兵器の世界的な普及、そして標的探知用の長距離センサーの普及は、ウクライナにとどまらず、大きな意味を有する。ロシアと中国は、米軍による介入を阻止するため、長距離対空ミサイルや対艦ミサイルを用いた「接近阻止/領域拒否」防衛の構築を模索してきた。逆に、アンドリュー・クレピネビッチAndrew Krepinevichなど欧米の専門家は、フィリピン、日本、台湾を中国から守るため同様のシステムを主張しており、台北は同アプローチを検討している。いずれの場合も、陸上兵器により、敵航空機や軍艦を壊滅させるコンセプトだ。

 揚陸侵攻部隊は、こうした防御に特に脆弱だ。陸上部隊と異なり、艦船では外洋には隠れる地形がない。航空部隊のように高速移動して攻撃を回避することもできない。従来、海軍は陸からの脅威を避けるため、射程圏外にとどまり、広大な海で発見されないようにしてきた。しかし、部隊を上陸させるのが目的だと、その選択肢はない。

 中国が台湾を侵攻する場合、80マイル以上の海峡を渡り、さらに地球上で最も密集した市街地を内陸に向かい戦う必要が出てくる。それが次の話題につながる。


ウクライナの人口密度分布

ウィキメディア・コモンズ


市街地化

ウクライナは歴史的に侵略の通路であった。広い草原と小麦畑が広がり、モンゴルの騎馬民族からナチス戦車兵まで、侵略者の前進を妨げる自然障害物がほとんどない。では、なぜロシア軍はベラルーシから60マイルも離れたキーウや、ロシア国境から13マイルしか離れていないハルキウを占領できなかったのか。

 答えの一つは、防衛側を有利に変えた市街地化だ。ウクライナの自然特徴は変わらないが、居住地は過去の戦争と大きく異なっている。ウクライナの人口は、ヒトラーが侵攻した当時とさほど変わらない。公式発表によれば、当時は4000万人強、現在は4500万人だが、都市部住民の割合は69%へ倍増した。ウクライナの人口密度マップでは、点在する都市の一つ一つが要塞だ。

 紀元前6世紀、孫子は都市への攻撃は最悪の戦略だと警告していた。21世紀の都市はさらにタフだ。石垣はないが、上方から待ち伏せが可能な高層ビル、掩蔽壕に転用できるコンクリート構造、戦闘員が地下から作戦展開できるトンネルや地下鉄網がある。都市環境の複雑さは、攻撃側にとって悪夢であり、無数の裏ルート、隠れ場所、待ち伏せの可能性がある場所について防衛側ほど熟知していない。ロシアがウクライナで行っているように、都市を爆撃して瓦礫にすれば、民間人の殺戮では効果的だが、軍事的観点では、通りを瓦礫で埋め尽くしてしまうことになる。イラクのファルージャやサドルシティ、ウクライナのマリウポリなど、近代における最大に過酷な戦闘が都市が舞台となっているのは不思議ではない。


ウィキメディア・コモンズ


 そのため、各軍隊は都市への接近を避けるようにしてきた。しかし、世界人口が都市化を深め、市街地が広がるにつれて、接近回避は難しくなってきた。世界銀行によれば、1960年に世界人口の3分の1が都市部に住んでいたが、2020年は60%近くになるという。

 中国の最重要ターゲットである台湾では、人口の約80%が都市部に居住している。台湾の人口はウクライナより少ないが(4,500万人に対し2,400万人弱)、国土が狭いため、人口密度は9倍(1平方マイルあたり1,709人、185人)にもなる。さらに人口が集中している西側に中国の侵略軍が上陸する可能性が高い。(東海岸は本土から遠くなるだけでなく、急峻な山地が多い)。

 ここまで密集した都市部は、侵略の物理的な障害になるだけでない。人的な障害にもある。住民は、社会的ネットワーク、集団抗議行動、暴動、あるいは反乱軍が容易に生まれる。テクノロジーで大衆動員はかつてなく容易になっている。


国民動員

今日のウクライナの大部分は、300年以上にわたりロシア支配下にあった。しかし、ウクライナを服従させるのは困難になっている。歴史的に見れば、ウクライナ人の多くは自給自足の農民で、孤立した村落に住み、外部のニュースやアイデアはゆっくりとしか入ってこなかった。しかし現在では、ほとんどのウクライナ人が都市部に住み、60%以上がスマートフォンを持つ。農民にとって、戦争や政治は天候のように不可解で、危険で、しばしば災いをもたらし、耐えることはできても影響を受けることはなかった。現代のネットユーザーにとって戦争はインタラクティブな存在であり、ソーシャルメディアは抵抗、抗議、入隊、火炎瓶製造、補給隊への攻撃などを促している。勝利と残虐行為の画像は日常となり、ゼレンスキー大統領は国民に直接訴えている。

 この現象は、インターネットの登場以前にもあった。チャーチルがラジオでイギリス国内の抵抗を結集させたのは有名な話だ。それ以前にも、新聞、パンフレット、書籍の大量印刷は、アメリカ独立戦争までさかのぼれば、民衆の抵抗運動の炎を燃え上がらせてきた。独裁者もマスメディアを利用し、ヒトラーやスターリンは、工業化以前の専制君主では到底不可能な方法で、国民を総力戦に向け奮い立たせるプロパガンダを利用した。共通する要因は、大量動員を可能とするマスコミュニケーションだが、なかでもインターネットは最新かつ最も効果的な形態だ。QAnonの台頭やアメリカでの1月6日暴動を見ればわかる。


2021年8月24日、ウクライナの独立記念日のパレードで、大きなウクライナ国旗を運ぶ軍部(Brendan Hoffman/Getty Images)


 もちろん、ウェブサイトはハッキングされ、通信は妨害され、印刷機は押収される可能性がある。しかし、ウクライナでロシアが通信遮断できなかったことは顕著だ。とはいえ、強い国民性が形成されれば、手遅れだ。長年にわたりマスメディアに接することで、国民は共通の言語、思想、経験に触れ、学者ベネディクト・アンダーソンBenedict Andersonが言う「想像の共同体」imagined communityを形成し、対面のつながりで得る以上のアイデンティティが確立できる。ひとたび自分の村を超えた価値観に共感できれば、それを守るために動員される可能性が高くなる。

 今日のウクライナでは、何百万人が国家的大義のため戦うと強く共感している。 台湾はどうか?台湾は世界で最も電脳化され、動員された社会の一つだ。2021年の時点で、人口の98%がスマートフォンを持つ。うち67パーセントが選挙に参加し、2020年には75パーセントに増加する。

 さて、歴史的には、北京と台北間で台湾が統一中国の不可分の一部であることに同意できていた。ただ、どちらが主導権を握るかで意見が分かれていただけだ。しかし、最近の世論調査では、台湾人口の68%が自らを台湾人だとし、中国人と答えたのは2%以下、28%が両方であると答えている。64パーセントが台湾を守るため「絶対に」または「おそらく」戦うと答えた。

 この数字は、ウクライナ式の国土防衛が台湾で新兵多数を獲得できると示唆している。最新のミサイルや無人機で武装し、さらに都市部の地形で守れば、中国の侵略には手強い障害となり得るだろう。

 攻撃が時代遅れになったとは言い難いし、中国はロシアよりずっと強力だ。しかし、ウクライナは正しい形の防衛が有効だとあらためて示唆しており、世界各地の民主主義国はウクライナを参考にすべきだ。■


Three reasons why defense is beating offense in Ukraine - and why it matters for Taiwan

Changes in technology, terrain and society have shifted the balance between offense and defense in ways that favor democracy's defenders in Ukraine — and beyond.

By   SYDNEY J. FREEDBERG JR.

on April 08, 2022 at 9:13 AM


ウクライナ戦の最新状況(4月9日)ジョンソン首相の電撃キーウ訪問、黒海の機雷、陸上不発弾処理など

 





ANDRIJ SYBIHA, DEPUTY HEAD OF ZELENSKY'S ADMINISTRATION VIA KYIV INDEPENDENT

 

シアとの戦争が7週間目に突入した中、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は4月9日土曜日、ボリス・ジョンソン英国首相をキーウで迎えた。

ロシアの包囲攻撃でキーウ郊外や近隣市町村が廃墟と化して1週間後でのジョンソンの首都訪問は、2月24日のロシアの侵攻以来、NATO指導者のウクライナ訪問としては最も注目されるものとなった。今回の訪問は、ロシア軍が北部攻勢から態勢を立て直し、東部で攻撃を続けている最中に行われた。

ジョンソンとゼレンスキー両首脳が武装ガードマンに囲まれキーウ市内を歩くという驚きの映像が公開された。セキュリティ面からかなり衝撃的で、両首脳は各方面からの見通し線内を移動している。

 在英ウクライナ大使館が土曜日午前、両指導者の写真を最初にツイートした。BBCは、今回の訪問は「ウクライナ国民との連帯を示す」だけでなく、ウクライナへの英国の経済的・軍事的支援の協議が目的と報じた。

 前日に英国政府が対戦車システムNLAWとジャベリン、滞空待機弾、スターストリーク防空システムなど新たなウクライナ向け軍事支援パッケージを発表していた。

 その後、装甲車約120台と対艦ミサイルシステムの供与で首脳が合意したと英首相府が発表した。装甲車は6輪走行式マスティフMastiffと見られるが、対艦ミサイルの種類は不明。

 ジョンソン訪問は、キーウ周辺の状況をさらに浮き彫りにしている。ポーランド、チェコ、スロベニアの首脳が3月15日に包囲中の首都に列車で向かったことがあるが、英国首相の電撃訪問は別次元だ。

 端的に言えば、ジョンソン訪問団は核武装したNATO加盟国首脳がウクライナに移動したことを意味し、キーウ滞在中や移動中にロシアが攻撃すれば、偶然であっても、事態がエスカレートする深刻なリスクをはらんでいた。今回の訪問は、英国やNATOがロシアの攻撃リスクを低く見積もった場合、あるいは外交協議中の紛争地帯に向かうことに特別な勇気を感じた場合にのみ成立する。ここまで注目度の高い外交作戦のリスクを相殺する保証が英国にあったのかは、現時点では不明である。

 英国国防省が最新の評価を発表した。ロシア軍は現在ドンバスに集中し、クリミアへの陸上回廊を確保しているようだが、マリウポリなどで抵抗が続いているため期待どおりに動いていないとのオープンソース報告とほぼ一致している。

 英国防省はロシア軍のトーチカU Tochka-U ミサイルがクラマトルスクKramatorsk駅を攻撃し、脱出しようとした市民50人以上が死亡したとの報道にも言及している。

 ビデオでは、イジュムIzyum近くの道路上で、主にVマークのBMD空挺歩兵戦闘車、T-80U戦車とそれに付随するトラックなどの車両のロシア軍を映していた。最近ロシア軍に占領されたイジュムは、ドンバスのウクライナ軍に対するロシアの包囲作戦で重要地点になりそうだ。

 ウクライナ東部は青空が広がり、ドネツク近郊やベルゴロド・ハリコフBelgorod-Kharkiv前線の北には、ミサイル発射煙が何キロにもわたり見えるほどだった。これがトーチカ-Uあるいはイスカンデルのような弾道ミサイルか、長距離ロケット砲なのか、それとも防空ミサイルの発射かは不明である。

英国国防省が言及した抵抗の映像がさらにある。ウクライナのアゾフ大隊が公開した映像では、小型無人機からと思われるが、マリウポルのウォーターフロント付近でロシア軍トラックをピンポイント攻撃する様子が映し出されている。また、衛星はポパスナPopasns付近の戦闘を映し出している。

ロシア国防省はマリウポルに残るウクライナに補給を狙っていたマルタ船籍貨物船アゾフ・ゼアを攻撃したと主張している。

 衛星画像は、黒海でロシアの掃海作戦が進行中であることを示している。オデーサ上陸の噂が絶えない中、ロシア黒海艦隊は「水陸両用デモンストレーション」を実施しているが、揚陸作戦では機雷除去が前提となる。

 黒海では機雷の危険性のため、海上交通コストの上昇が伝えられている。トルコ海軍は浮遊機雷少なくとも3個を処分したと伝えられている。

 陸上では、キーウとその周辺地域の不発弾(UXO)の除去という高難易度作業が始まっているようだ。6週間にわたる激しい砲撃と市街戦で、戦闘員が落としたもの、不発弾、撃破車両内で燃え尽きなかった弾薬など、不発弾がトン単位で存在している可能性がある。

 車両の殺傷について言えば、オープンソース軍事監視員として知られるオリックスOryxが、目視で確認されたロシアの車両と重軍事装備の破壊数が合計1000台を突破したと土曜日発表した。■

 

Ukraine Situation Report: British Prime Minister Boris Johnson Meets Zelensky In Kyiv (Updated)

The British leader’s trip to the Ukrainian capital is thus far the most prominent visit by a NATO leader.

BY STETSON PAYNE APRIL 9, 2022