2012年12月2日日曜日

F-22、F-35の配備遅れで予定変更を迫られる米空軍、各国空軍: 西側戦闘機の実戦力維持は大丈夫か

Air Forces React To JSF Delays


aviationweek.com November 26, 2012

「第 五世代戦闘機」F-22およびF-35がともに予定の配備時期とコストで当初計画とのズレが生じていることから米国および同盟各国の戦闘機装備に連鎖影響 が生じており、米空軍ではF-22パイロット訓練を根本的に見直しているし、F-16の耐用年数延長と性能改修を急ぐことになる。
  1. .F- 22訓練は「劇的な変更」(第9空軍司令官ラリー・ウェルズ少将Maj. Gen. Larry Wells, commander of the U.S. Ninth Air Force)を受けている。ウェルズ少将はF-22部隊のほとんどを統括しており、10月にはティンダル空軍基地(フロリダ州)に配備中のF-22が空軍 教育訓練司令部から第9空軍に移管されてばかりだ。
  2. 大きな変化はF-15やF-16といった非ステルス機との合同演習の開始だ。これはF-35の引渡しが遅れる中で、F-22機数が少ないことで空軍としてもステルス機主体の機材運営が実現するのは2030年以降になってしまうという現実を直視した結果だ。
  3. .F-22パイロットは 「センサー編隊」として10ないし15 nmの距離をとって飛行し、ボーイングF-15C/Dの「クォーターバック」役をする訓練を受けている。
  4. 課 題のひとつが「F-22のひとりごと」だとウェルズ少将は言う。同機の搭載する飛行データリンクは別のF-22としか交信しないので「相互運用が完全にで きるまで相当の時間がかかる」という。また、F-22にリンク16戦術データの受信能力が2014年に搭載されるという。これは性能改修3.2アップグ レードの際に実施され、リンク16のデータ送信(位置情報、識別や追跡)は2015年予定。それまではF-22からは音声無線交信で他機材に連絡するしか 手段がない。
  5. 訓練ではそのほかにジャミングやそのほかの妨害手段に直面する想定のシミュレーションをパイロットが受けているという。「今まではいつも完全装備で飛んでいたが、今ではその逆に何かが使えない状況が生じており、日によって通信装備だったり、GPSだったりする」
  6. よ い面もある。ウェルズ少将によるとF-22の性能は向上しつつあり、それに呼応して訓練標準も改定されているという。「これまではF-22をF-15のよ うに飛ばしていました」という。同時にF-22に早く習熟できる対策も取られている。T-38訓練を終えた新人パイロットはF-16で「高性能導入」 “high-performance lead-in” 訓練8回を終了しないとラプターは飛ばせない。その理由は「T-38からそのままF-22に来たパイロットが成果を出していないことが判明した」ためだと いう。「F-35を導入しようとする各国でも配慮が必要な事象だ」ともいう。
  7. 空 軍はT-38をF-22の仮想敵機として配備している。「ステルス機同士の勝負では一番発生しやすいシナリオを再現できない」とウェルズ少将は指摘する。 F-22操縦の新人パイロットはそれまでにT-38を一年近く飛ばすことがある。「これもF-35導入国が考える必要がある点で、全機材がステルスになる としたら、訓練用の敵機役はどの機材にするべきでしょうか」
  8. F- 22は現在南西アジアに配備されていると同少将は言う。「F-22を戦闘に投入するには三つの必要事項があります。戦闘部隊司令官が同機投入を必要と判断 すること、利用可能な機材を集めること、そして国防長官が承認することです。ただしこれは今まで実行されていません」
  9. F- 35の初期作戦能力initial operational capability (IOC)獲得期日が依然として未定の中、米空軍は戦闘用エイビオニクス・プログラム延長パッケージCombat Avionics Programmed Extension Suite (Capes) 開発をF-16向けに開始しており、ロッキード・マーティンが唯一の入札者で主契約を交付されている。Capes構想は350機のF-16を2030年まで稼動可能とするもので、逆にF-35の調達機数が同時期に減ること意味する。
  10. Capes には海外からも関心が示されており、ポーランドもその一国だ。「JSFが遅れることが逆に好機になるのは各国が米国にF-16の本格改修実施の圧力をかけ ているため」とポーランドは見ている。同国には後期型ブロック52のF-16が48機あり、AESA(電子アクティブスキャン方式アレイ)レーダーや操縦 席ディスプレイで改良を加えるCapesをうまく取り入れたいと考えている。
  11. Capesには重要な変更を最近受けている。空軍が重要決定をロッキード・マーティンにゆだねたのだ。レイセオン製の高性能戦闘用レーダーAdvanced Combat Radar かノースロップ・グラマンの拡張機動性ビームレーダーScalable Agile Beam Radarかの選択だ。
  12. レ イセオンにとっては不愉快な選択になる。F-16全機、F-22、F-35搭載のレーダーはノースロップ・グラマン製で、空軍が何を考えているか見えてこ ない。ただし内部事情筋によれば「外部批判かわし」がねらいではないかという。対象レーダーは1,000基以上となり、これだけの規模の調達はこれが最後 かもしれず、政府内部にこのような選択の経験がある人材がいないというのが現実だ。
  13. ただし、韓国の国防調達計画庁Defense Acquisition Program AdministrationがBAEによる自国F-16の改修実施を7月に決めている。AESAレーダーの換装もその一部であるが、韓国には米国の動向が決まるまで決定を先延ばしにする圧力がかかっているという。
  14. .BAEシステムズが韓国案件を落札した背景にはロッキード・マーティンよりも価格で有利だったはずで、現在同社はCapes参加をもちかけられた複数国と商談中だ。ポーランド以外に関心を持つのは、シンガポール、ポルトガル、ギリシャだ。
  15. た だし米空軍予算でCapes計画に初期開発段階以降の予算手当てができているか不明だ。構想では各国とコンソーシアムを組み、費用分担を求めることになっ ていた。さらにCapesが各国共通で万能の解決策となるのか、現地事情にどれだけうまく適合するのか不明だ。たとえば、F-16の一部では電子戦システ ムの運用が必要とされているが、Capesではこの想定がないし、また電子戦を想定していない運用国もある。■


2012年12月1日土曜日

中国初の空母運用をどう見るべきか-空母戦闘群を中国は編成できるのか

China's Carrier: The Basics
           
by Bernard D. Cole
US Naval Institute November 27, 2012
                                                  

中国空母の運用状況を示す初のビデオを 見ると、中国が米国その他の海軍と同様な安全配慮をしていることがわかる。飛行甲板の要員が色別の服装をし、手信号を送っているがこれも国際標準に近いも のだ。各配置点には二名の水兵が配属されているようで、一人は「訓練中」なのだろう。あきらかに人民解放軍海軍People’s Liberation Army Navy (PLAN)は航空母艦運用の知見を獲得しつつあるようだ。ただし天候に恵まれた条件で、基本運用の域を脱していないが。
  1. .空母「遼寧」は長い建造期間を経て完成しており、建造素材に問題を抱えて構造に欠陥がある可能性があり、また搭載するのは圧縮蒸気による推進機関で保守点検と運用に困難がつきまということが知られている。
  2. 中 国がはじめて入手した空母は1985年のオーストラリア海軍を退役したメルボルンであり、技術陣がすみからすみまで調べ上げた後でスクラップにされた。そ のあとロシア製空母二隻が加わる。ミンスクとキエフであり、ともに海上テーマパークとして購入された。この二隻は「航空重巡洋艦」と呼称されていたもので あり、中国に到着した初の空母はワリャーグだった。
  3. 同 艦の建造は1985年にウクライナで始まっていたが、ソ連邦崩壊で1989年に中止となっていた。そのまま乾ドックで放置状態だった同艦を中国は約20百 万ドルで1998年に購入したが、トルコの反対でボスポラス海峡を通過できず、結局通過できたのは2001年になってしまった。途中で嵐に遭遇し、タグ ボートの曳航が外れる事態もあったが、中国大連に到着したのは2002年で、そこから8年かけて改装工事ののち完成させている                   
  4. 同 艦は初の公試を2011年8月に実施し、これで26年かけて完成したことになり、軍艦建造期間としても最長の部類だ。PLANに公式に編入したのは 2012年9月で遼寧の艦名、艦番号16が付いた。中国海軍の初の正式空母となり、海軍の70年代からの夢が実現した。同艦は航空要員向けの訓練艦として もっぱら使用される。また運用要員の訓練用にも使い、今後建造される中国製空母の乗員を育てる。
  5. 遼寧は海上公試後半から航空機運用を開始し、初の航空機離着艦を2012年11月実施し、J-15戦闘機二機の運用記録が公開されている。
  6. 遼 寧はスキージャンプ式の構造を航空甲板前方にもつが、カタパルトはない。ただし、拘束ケーブルがあり航空機を回収する。J-15とはロシア製Su-33を 中国で国産化したもので、降着装置を強化し、テイルフック、折りたたみ式主翼と空母運用を想定している。さらにPLANは新型ステルス機J-31を空母に 搭載するかもしれない。
  7. その他搭載機にはロシアが設計したKa-25や国産のZ-9ヘリコプターがあり、さらに、米国のE-2ホークアイに似た空中早期警戒機が開発中だという。
  8. この五年間でPLANに空母護衛用の艦船が就役している。旅洋IILuyang II 級誘導ミサイル駆逐艦はイージスシステムと類似した装備を搭載していることがわかっており、中国では地域防空戦闘任務ができる初の艦となり、遼寧の防衛の要となる。旅洲Luzhou級および旅洋I級ミサイル駆逐艦および江凱Jiangka級も空母防御に投入できるミサイル運用能力がある。
  9. 中国が空母戦闘群に潜水艦も加えるのであれば、93型商Shang級原子力攻撃潜水艦 (SSN) が適しているが、同級の建造がわずか二隻で完了しているのは次形式の95型SSN建造に切り替えるためかもしれない。.
  10. さ らに中国は洋上補給replenishment-at-sea (“unrep”) 能力を有する艦の建造を開始したが、2005年以降でもわずか二隻しか就航しておらず、中国が2008年から派遣しているアデン湾海賊対策の派遣部隊支援 に投入されている。新型補給艦の建造が伝えられている。
  11. 中国の空母運用は第一歩をはじめたばかりだが、今後数年間を訓練と経験の蓄積に使って運用能力を獲得できる。遼寧は母国を離れた海域に海軍力を投入する決意が中国にあることを示す意義があり、さらにドック型揚陸艦や病院船の建造もこの決意のあらわれだろう。
  12. 戦略面では遼寧の就役および航空機運用状況をはじめて公表したことは大きな成果であり東アジア水域におけるPLANの重みが増したといえる。同地域内の各国は非友好勢力となる可能性のある海軍が航空戦力を洋上に展開する能力を獲得した状況に直面しているのである■


 Bernard D. Coleは国家国防大学で米中関係論の教鞭をとる、米海軍退役士官。

2012年11月28日水曜日

次期大統領専用ヘリの選定が始まる

US Navy Moves Ahead To Replace Presidential Helicopters

By Reuters

aviationweek.com November 27, 2012

米海軍がマリーンワン大統領専用ヘリ部隊の老朽化へ対応する動きを遅まきながら示しはじめている。その一号機は2020年から供用開始となる予定。
  1. .前回の海軍による大統領専用ヘリ調達計画は2009年にロバート・ゲイツ国防長官(当時)がロッキード・マーティン案をキャンセルしたことで終了している。その理由として仕様要求が繰り返し変更されたことで総額がほぼ倍増の130億ドルに膨れ上がったことが取り上げられていた。
  2. 先週金曜日に海軍が発表した提案公募要領では新造ヘリ25機を購入する内容で応募企業に12月5日までの回答を求めている。また入札企業には12月10日の週に非公開会合で政府側から詳細内容を説明するとしている。
  3. ロッキード・マーティンはシコルスキー航空機と組み、シコルスキーS-92で入札する。
  4. 前回ロッキードと提携したアグスタウェストランドノースロップグラマンとチームを組みアグスタウェゥトランド101を提案する。
  5. ボーイングはH-47チヌークまたはV-22オスプレイでの入札を検討中だ。
  6. 現行機材はVH-60ナイトホークとVH-3Dシーキングでともにシコルスキー製。機材運用は海兵隊だが、調達は海軍が担当する。
  7. 入 札公募は連邦政府調達情報ホームページで11月23日に掲載されていた。海軍はその中で実用化ずみ通信装置を既存機体に搭載することを目標においていると 説明。また、調達要求の最終版は2013年3月に公表し、初回の技術設計契約を2014年中ごろに締結したいとしている。
  8. 海軍スポークスウーマンのケイト・ミューラー大佐Captain Cate Muellerは固定価格を基本に、開発奨励金をつけた契約を海軍は希望しており、固定価格を条件にまず低率初期生産をかいししてから本格生産に持っていきたいとしている。
  9. 海軍は2013年度から2017年度にかけてこの調達関連で18・5億ドルを形状しており、初年度は61.2百万ドルで始め、2017年度には687.7百万ドルに増やす。
  10. この海軍による調達案は軍用製造メーカー各社が国防予算削減を覚悟し、1月からの5,000億ドル削減を回避しても国防予算削減は避けらない中で発表されたもの。
  11. 議会筋からは徐々に予算規模を増やしていこうとする海軍案は予算削減が追加されても生き残る可能性が高いと評価されている。
  12. なお、前回の調達で実際にロッキードが製造した機体はカナダに売却済みで、部品はデンマークが購入したという。
  13. この売却代金の金額は不明だが、海軍はこの金でロッキードへの計画取り消し費用の一部を支払おうとしていた。■


2012年11月26日月曜日

Darpaが考える戦闘機開発の新手法で大幅な期間短縮が可能となるか

 ご注意 以下の内容には一部こちらも理解できないものが含まれています。また、このまま実施した場合は既存企業にとって不利益な結果が出る可能性があります。

 

Darpa Works To Speed Design, Simplify Manufacture



aviationweek.com November 05, 2012


米 国防高等研究プロジェクト庁Defense Advanced Research Projects Agency, Darpa に想像力が不足していると揶揄する向きはいないと思うが、航空宇宙産業の開発製造工程で長年使われている方法を丸ごと考え直すことは、GPS、インター ネット、ステルスを実現させてきた同庁でもさすがに簡単なことではない。

  1. 適 応性機体製造計画Adaptive Vehicle Make (AVM) programの呼称でDarpaはモデルに基づく設計、仮想共同エンジニアリング、一環生産方式を組み合わせて全体を俯瞰する工程ととらえ開発所要期 間、設計・製造テスト・再設計の時間サイクルで短縮化を追及している。
  2. 「軍 装備品の調達方法は持続可能な形になっていないといっても過言ではないでしょう」と語るのはネイサン・ウィデンマン中佐(Darpa AVM計画主査)Lt. Col. Nathan Wiedenman, Darpa AVM program managerだ。「これまでのようにたくさん出費してそれに似合わない結果しか手に入らないやり方では継続できません」
  3. 中 佐が指摘しているのは2010年報告で米陸軍が合計220億ドルを15年間に渡り出費したあげく対象プログラムが取り消しになった事例だ。また、「オーガ スティンの法則」にも触れている。1984年にロッキードのノーマン・オーガスティン前会長が費用支出の傾向から50年たつと米国防予算で購入できるのは 戦術航空機がわずか一機になってしまうと結論づけた事例だ。
  4. Darpa は原因を設計手法に求めている。全体システムを技術要素で分解し、個別部品やサブシステムを最適化してから各部を組み合わせるという考え方だ。「作ってか らテストし、期待通り作動するかを見ています。ただし常にそうはいきません。なぜなら各部品・サブシステムが予期できない形で相互作用しているからで す。」(同中佐)
  5. 動 力や熱源だけに問題があるわけではない。「それぞれに特性があり、部品・サブシステムに影響が出ます。過熱や振動で緩みが出るものがありますが、予測する には相当の計算が必要で、相互作用を評価する必要があります。つまり、もう一度戻って再設計、再製作、再テストが必要になります。」
  6. 問 題は複雑系だとDarpaは見ている。「製作するシステムがもっと複雑化しても、システムを技術的に把握する今のやり方は根本的に50年間変わっていませ ん」(同中佐) 業界ではモデルに基づく設計作業を採用しているが、AVMは別の方法をとる。コンポーネントのモデルで設計し、コンテキスト・モデルで仮 想テストをし、生産モデルで自動フィードバックをコストと日程管理に送るのだ。
  7. 「複 雑なシステムでは完成するまでうまく動くかはわからない。そこで新しいアプローチが必要で設計とモデル化で相互作用を予測可能にするのです」(同中佐)  AVMのねらいは相互作用を把握し、システム作動を製作前に把握することだ。「設計者は『作りながら修正』できるツールを作成しています。つまり、一回で 設計の狙い通りに作動するように製作するわけです」
  8. Darpa は半導体産業の事例を参考にしている。半導体では何十年も前に複雑系の壁を打ち破っている。「集積回路産業は30年も前に同様の形で変身を実行していま す。電子設計自動化と言うツールを手に入れたのです。」 このツールで修正しながら作成する設計 correct-by-construction designs が可能となり、24から36ヶ月の製品サイクルで莫大な成長を維持できた、と同中佐は言う。
  9. AVM はメタ自動化ツールMeta automated toolsから始まる。これにより設計工程での抽象化水準があがり、これはコンピュータの高次元プログラミング言語とおなじ作用だ。ソフトウェア技術者が アプリケーションに取り組んでも電気回路には触らないのと同じで、航空宇宙設計者はシステムを相手にするのであり、個々の部品は対象としない。
  10. メ タとは「サイバーと現実の各システムの設計の流れであり、ハードウェアとソフトウェア構成部品を相互連関させること」と言うのはヤノス・スズチパノヴィッ ツ Janos Sztipanovits ヴァンダービルト大教授だ。「物理的・コンピュータ上の各システムは同時に設計し co-design 、ハードウェア・ソフトウェアのバランス trade-offs をとることが可能だ」
  11. メ タツールを使う設計者はコンポネントの各種モデルをライブラリーから取り出し、システムに纏め上げることが可能だ。「モデルとはそのコンポネントが周囲の 環境にどう対応するかをすべてあらわしたもの。環境とはその他のコンポネント、インプット・アウトプット、熱、振動、作動特徴その他のこと。これはメタモ デルであり、たんなる製図ではない」
  12. パー ツすべてをねじ一本まで把握し相互作用のモデル化をするのでは何十年もかかってしまう。「抽象化レベルをどこまでインテリジェントに追及できるかを見てい るのであり、ボルト一本単位を対象にしていない。エンジンがどう伝達装置につながっているのか、動力が最後はどこにつながっているのか、サスペンションは どのようにつながっているのかを見るのだ」
  13. メ タにより設計者は何十万と言うコンセプト一つ一つが要求水準に合致しているかを評価できる。「従来はこうあるべきだという機体の形からはじめて、ひとつの 設計案を繰り返し使っていましたので、設計全体の領域のごくわずかしか解明していませんでした。今回提供するしツールで設計全体を探査できるようになり、 長時間の計算も必要ありません。」(ウィデンマン中佐)
  14. 各 モデルはパラメーターになるので、「いろいろ変形させて設計を決めることができ」、各種の絞込みレイヤー refinement layers を使い、設計案はより精密度を高める。「高次元で各種要素が相互作用する様相を定義づけましたので、今あるコンポーネントの選択肢の中から設計を変更する 自由度を追加できます。そこで低密度の計算で実施可能な分析ツールで本当に高度の分析が必要な設計案数種に絞り込むわけです」
  15. 文脈モデルにより作動環境をシミュレートする。コンセプト各種はすべて要求内容との比較をされる。「これにより設計内容が改良され、非凡な設計が要求をもっと満足させる可能性を求めることができます」
  16. 製 造のしやすさ manufacturability を設計中にフィードバックすることが即時製造適合かを断片的に行う技術 Instant Foundry Adaptive Through Bits (iFAB)のねらいであり、意味するところは「設計内容を受け取り、実行可能かを決め、所用期間・費用を算出すること」と説明するのはマイク・ユーキッ シュMike Yukish(iFAB主任研究官、ペンシルバニア州立大)だ。「単純なウイジェットでさえ作成方法は何通りあり、それぞれコスト・必要工数が異なりま す」
  17. FAB とは情報の設計information architectureだといえる。「何かを作る目的がある工場とはちがって、分散型で再プログラム可能な生産能力です」(ウィデンマン中佐) iFABはメタで設計を示し、製造工程や設備を選択し、製造の流れを決め、コンピュータの数値コードを各製造機械に形成し、作業員に指示書を作ります。」
  18. iFAB が設計案を受け取ると、サプライチェーンに流して現実的なコスト・日程案を設計部門へ返す。「アナログなのはグーグル・ドキュメント(現グーグルドライ ブ)で、スペルチェックはできますが、スペルチェッカーはあなたのコンピューター上にはありません。生産面でみるとiFABは設計中は絶えず反応してお り、ボタンを押せばコストと所要時間の見積もりがわかります」(ユーキッシュ)
  19. こ こでAVM構想が現実の壁にぶつかる。「設計データを任意に選んで、そのパーツコストがいくらになるかは断言できません。わかるのは該当工程がいつできる かということだけです。」(ユーキッシュ)「そこでパラメーター化し、設計部門と製造部門が先に交渉をします。実はこれはすでにICチップ産業では実施中 で材料や形状で事前に合意ができています。設計空間を制約することで逆に設計の進捗は早まり、反復なしに製造できるようになります」
  20. 設 計者に自動生産化を可能とするパラメーターは制約することで、「生産する機種が決まる」とユーキッシュは語り、「今ある手段の範囲で選択することになりま す。技術を追求するあまりコストが拡大することは避けます。」 これでは設計の最適化に支障が出そうだが、Darpaは設計技術者の持つ創造力を活用し、 ポータルサイトも利用して共同開発を進めるとしている。
  21. 「半 導体やソフェアの事例からこれを行うとイノベーションの可能性が増えることがわかっています」(ウィデンマン中佐) 航空宇宙産業では現在使用中のツール による制約から「設計で貢献できる組織は何百万ドルもする試作機の製造が可能な大企業だけです。これができる企業が少ないこと、さらに企業内に数百名しか 必要な能力を有していないことが制約条件になります。」
  22. 「ただし大企業に勤めていないが必要な能力を持っているものは多いので、ツールをつくり、エンジニアがシステムの作動方法を理解してから製造をはじめるようにすれば、もっと多くの頭脳を集めて、複雑系のシステム構築が可能となるはずです」(ウィデンマン)
  23. 「生 産の可否が自動的に判定できる仕組みを利用できれば、制約条件の克服を多数の技術陣が評価しやすいコンポネントを作ることで可能にしてくれます。製造上の 制約により、構造をにもっと簡単にすることが必要ですが、設計段階からこれを実施できる能力をもつ人材は豊富なので活用できます」(ユーキッシュ)
  24. 「こ れから実現しようとしているのは最適設計をこれまでより早く完成させること、後になって出てくる要求事項で修正が必要となる前に完成させることです。」 (ウィデンマン) 「仕事の成果の問題ではなく、どれだけ早く成果を出せるかです。Darpaは現状の能力の範囲内で管理を強めようとしており、日程管理 を絶対とする点でユニークです」(ユーキッシュ)■


2012年11月25日日曜日

F-35 海兵隊が初の飛行中隊を編成しました

US Marines Establish First Operational Squad Of F-35 Fighters

By Reuters

aviationweek.com November 21, 2012

.米海兵隊は11月20日にF-35初の戦闘機中隊をユマ基地(アリゾナ州)で発足させた。
  1. 同基地にはF-35B三機がすでに到着しており、さらに13機が来年中に加わる。海兵隊は5億ドルで同機用の格納庫、訓練用高性能フライトシミュレーター、整備施設を新設している。
  2. 新設飛行中隊は今年末に飛行を実施する予定で、このたび発足式がペンタゴン、ロッキードの幹部に加え同州選出マケイン上院議員Senator John McCain(上院軍事委員会で共和党トップ)も参加してとりおこなわれた。
  3. It marked good news for the radar-evading Lockheed fighter program, which has been restructured three times in recent years to save money and allow more time to work out technical kinks.これまで三回に渡り立て直しを図ってきた同機の開発で今回の飛行中隊発足は朗報だ。
  4. Marine Corps Commandant General James Amos said it was a historic day for the smallest of the U.S. military services, which urgently needs to replace its aging fleet of older model F/A-18 fighters built by Boeing Co, and AV-8B Harrier jets, which are growing expensive to maintain.海兵隊にとってもF/A-18初期型の老朽化が進む中でこれは大きな意味を持つ日になった。
  5. .「本中隊は海兵隊のみならず米国、世界初の第五世代、多機能ステルス戦闘機部隊で、本日から運用を開始する」(海兵隊総司令官ジェイムズ・エイモス大将Marine Corps Commandant General James Amos)
  6. エイモス大将はF-4ファントムを操縦していたが、新型機には『目から涙がでるような」性能があると語ったが、機密保護のため具体的な性能の説明はしなかった。
  7. わずかに年前にはペンタゴンはF-35B短距離陸垂直着陸型の開発を深刻な技術問題を理由に取りやめようとしていた。
  8. マケイン上院議員もコスト超過や技術問題を理由にF-35には批判的だったが、最近の進展を評価している。
  9. 「長い間同機には不満だったが、今では正しい方向に動いていることに安堵している」と同議員もスピーチで語った。
  10. ただし、成功の域まで達するまでにはまだ課題が残っていると同議員は苦言を呈しており、ペンタゴン関係の各機関管ならびに同機を製造する民間各社と政府の間での連携をつよめるべきだとしている。
  11. 12月6日付でペンタゴンのF-35総括責任者となるクリストファー・ボグダン空軍中将Major General Christopher Bogdanは9月に政府と民間各社の関係は最悪だと発言していた。
  12. .新設中隊は海兵隊第121戦闘攻撃中隊となり、指揮官のジェフ・スコット中佐はハリヤーを14年間操縦してきた。同隊は最初は1941年に編成され、1989年にはボーイングF/A-18Dを最初に配備された隊となった。
  13. 2015.ユマではF-35Bの運用評価を実施し、本格運用を2015年に開始する一助とする。■


2012年11月23日金曜日

有効性が証明されたアイアンドームはイスラエルが整備してきたミサイル防衛の努力成果

Iron Dome Repels Hamas Rockets

 


avitionweek.com November 21, 2012

南 部レバノンを巡る2006年紛争ではヒズボラ発射のミサイルの25%がイスラエル北部の人口稠密地帯に命中していた。今回の紛争ではハマスおよび聖戦派の ロケットの命中地点は安全上の理由で秘匿されているが、イスラエル国内の死亡者数は極めて少なく、10名未満になっており、イスラエルのアイアンドーム Iron Dome 短距離ミサイル防衛システムを配備した五個部隊が予想以上に効果的であることを示している。
  1. イ スラエルで第二次レバノン戦争と呼称する前回の紛争では、損害総額38億ドルだった。これを教訓にイスラエルは研究開発を進め、着弾する25%のロケット の迎撃を目指した。また、このミサイル防衛が効果的であればイスラエルはガザに地上軍を侵攻させる必要がなくなる。ガザでの軍事行動は一日26百万ドルの 出費となり、これならミサイル防衛に投資するほうが安上がりだ。イスラエルはラファエルRafael 開発によるアイアンドームの二個部隊をまず予算化した。
  2. 米国はさらに8個部隊相当の整備費用を負担し、その見返りにアイアンドーム技術の提供を受ける。レイセオンとラファエルは共同でアイアンドーム以外にデイビッズスリングDavid’s Sling(ダビデのパチンコ)中間高度防空ミサイルといった高性能システムの拡販を目論む。
  3. 「発 射された敵ロケットのデータはすべて集めており、技術改良に利用しています。すでにシステムの性能向上をはじめており、ロケット迎撃率を90%以上に引き 上げる事ができるでしょう」(ラファエル社幹部) イスラエル国防軍(IDF)の記録によるとロケット攻撃の迎撃率は最新で85%だという。
  4. さらに予備策としてイスラエル政府は予備役75千名の招集を決定した。しかし、予備役兵員は最先端の戦闘経験が少ない。そのため、主力部隊の補助として想定され、特殊作戦部隊、落下傘兵、装甲部隊他戦術空軍部隊が主に侵攻部隊となるのだろう。.
  5. ハマスによるロケット攻撃の初回11月14日と15日にIDFは877基のロケット発射を記録している。このうち、イスラエル国内に到達したのは570発で307発がアイアンドームで迎撃された。
  6. し かし、570発のうち迎撃されずにイスラエルに着弾したものがあったからといってアイアンドームが迎撃に失敗したとはいえない。アイアンドームは人口地帯 に向かうロケットだけを選択することができ、今回設計通りの作動が確認された。アイアンドームのミサイル単価は60千ドルほどなので、IDFは発射しない ことで3.4百万ドルを節約できたことになる。.
  7. ただアイアンドームの想定はハマス他の敵勢力がイスラエルの防空能力を超えた飽和攻撃をしない前提だ。そのため、「アイアンドームの装備拡大が必要で、多額の支出となります」(ラファエル).
  8. アイアンドームの有効性を一番物語るのは今回のロケット攻撃そのものが一種のスポーツ観覧と化したことで、YouTubeではイスラエル国民が戸外に出てアイアンドームの迎撃の様子を見守る映像が多数公開されている。
  9. アイアンドームの指揮統制システム改良は迎撃対象の新型兵器、戦術変更や発射条件の変化に対応するもの。今回注目されたのはハマスが新型長距離ミサイルを最近試射していたこと。
  10. ハマス発射のロケットは大部分がイスラエル国境に到達することができなかった。イスラエル国内に侵入したものでも2006年レバノン紛争時や2009年にガザより発射し着弾したロケットより少数になっている。
  11. ただしハマス発射のロケットの精度は前回よりも向上しており、発射台も地下に埋めたものからの発射が多くなっているのが特徴。以前はトラック空発車することが多く、座標も不正確だった。
  12. 「アイアンドームの開発では当初は一斉発射のロケット弾を想定していました。現在はそれ以上に広がっています。155ミリ榴弾砲も迎撃できますし、精密誘導弾、短距離防空ミサイルも撃破できます」(ラファエル) 唯一例外は肩発射の対空ミサイルだ。
  13. ハ マスならびに聖戦派集団はミサイル・ロケットをスーダン及びイランより供給受けており、エジプト南部からシナイ半島に通じる密輸ルートを利用している。イ スラエルによると言われるハルツーム爆撃が10月24日にあり、出荷前のロケット他弾薬類を破壊している。スーダン大統領は『敵シオニストによる攻撃』に 報復を宣言している。その直後にガザから発射のロケット攻撃が開始されている。
  14. イスラエル国防省によるとアイアンドームの公称有効射程は70 kmだが実際はそれより長いとみられる。イスラエル防空体制の中でアイアンドームは第三番目の手段の位置づけとなり、長距離滞空監視、発射地点の空爆につぐ。
  15. イスラエル航空宇宙工業Israeli Aerospace Industries’ (IAI) のエルタ電 子部門Eltaは高性能レーダー他センサー技術によりガザの攻撃地点を選択することを可能としている。「対象地区内で送受信すべて監視し、レーダー、電子 戦、通信の全般でわが方のシステムを支援しています」(同社幹部)「センサー類によりイスラエル空軍は敵のネットワーク構成を把握し、送信記録から特定の 個人をその居場所まで特定しています」
  16. 一 方、ハマスも探知されにくくするためロケットを商用車に装備していることがあり、イスラエル関係者はAviation Weekにダンプトラックに4ないし6発の発射管が取り付けられている写真を示した。トラック荷台を持ち上げると、発射管が現れる構造だ。その他に簡単に 地面に穴を掘っただけのものがイスラエル国境近くにあり、トラックを駐車し、網をかけて見えにくくしている。トラックからはファジール-3や -5Fajr-3, Fajr-5、グラッドGradミサイル他を発射できる。イスラエル防空能力を圧倒するために一斉射撃することをハマス側も学んでいる。
  17. そこでイスラエルは情報収集能力を向上させて国境を超えた「深部部隊」 “Depth Command”を新設しており、長距離飛行有人・無人機を配備している。IAO製のヘロン Heron I UAVがシリア国内の戦闘状況を監視している様子が写真撮影されている。.
  18. 同部隊は編成後すでに一年が経過しており、敵領土内の作戦を統合し、高度に訓練された特殊部隊や新技術の効果を最大限に利用する。新技術には空中精密多機能センサー類・兵器がある。部隊にはエルビット製ハーミス450および900およびヘロンTPの各UAVが配備されている。
  19. 同部隊からリアルタイムでの情報収集や昼間偵察を戦闘中に行い、ロケット発射地点を探知できる。「UAVはステルス性がありませんが、飛行は静かで発見されにくいのです。ヘロン1は30時間以上も滞空できます」(イスラエル空軍UAVパイロット)
  20. ア イアンドーム運用は第167積極防空部隊167th Active Air Defense Wing のおかれたパルマヒムPalmachim空軍基地からされている。同時にアローおよびペイトリオットIII防空システムの指揮も行なっている。防空のパラ ダイムが積極防空active air defenseに切り替わってから一年半が経っている。■


2012年11月19日月曜日

ノースロップ・グラマンのファイヤーバードとはどんな機体なのか

Northrop Grumman Reveals Bigger Firebird

By Guy Norris guy_norris@aviationweek.com
aviationweek.com November 13, 2012

ノースロップ・グラマンが秘密裡に開発したファイヤーバード Firebird 中高度飛行有人操縦選択型機 optionally piloted vehicle (OPV) 実証機の複座型が非公開の発注で完成しテスト飛行を開始した。
  1. .ノースロップ社テストパイロット二名が操縦した同機はカリフォーニア州モハーヴェで11月12日に初飛行に成功。動力はライカミングTEO-540E ピストンエンジン一基で高度3,880 ftまで上昇し、最高速度100 kt.を六分間の飛行で記録した。
  2. 2011 年に発表されたファイヤーバード実証機より30%大きい機体の、生産を前提とした同機は全長35.5 ft. 全幅 72.2 ft. だ。二人目のパイロット席が発注者の要望で追加され、特定の目的で設計されたUAVにオプションで有人操縦できる形になっている。
  3. 原型の単座型は民間航空路を通常型機として飛行する構想だった。ノースロップによると複座化で副パイロットあるいはセンサーシステムの運用用としても選択肢が広がるという。ただしもともとの目的である低コスト長時間監視能力は変更ない。
  4. 無 人機とした場合は地上局から見通し線 line-of-sight (LOS)  無人モードあるいは見通し線外モードで運行する。「さらに先に飛行するの出ればキャノピーを外してガーミンのパイロット用システムの代わりにL3の衛星通 信アンテナが入ります」(ファイヤーバード計画責任者ジェリー・マディガンFirebird Program Manager Jerry Madigan)
  5. .機体単価10百万ドルにはエイビオニクス、基本センサーを含み、生産型のファイヤーバードは現在運行中で老朽化が進む特殊用途航空機各型の交替には最適だと同社は言う。
  6. 同 機への関心を一気に高めたのは2011年のエンパイヤ・チャレンジ演習での各軍相互運用、情報共有展示でのこと。同演習は米国統合軍司令部U.S. Joint Forces Commandの解体により同年の実施が最後になったが、同機は12通りのペイロードを搭載し飛行したことで注目を一気に集めた。ペイロードには電子光学 赤外線、レーダーや通信中継装備があったという。
  7. 同 演習でのファイヤーバードの登場には米陸軍が後援していたが、そのほかに考えられる同機の利用者には米特殊作戦司令部 U.S. Special Operations Command (Socom) がある。ノースロップは以前にもSocomが同機に関心を示していると発表しているが、「公表できない依頼主向けに競作し、当社が選定されたが、依頼主か ら複座型量産型などの具体的な要望が出ている」とのみ今回発言があった。
  8. .初回の生産契約では年2機を5ヵ年継続することが盛り込まれている。■


2012年11月18日日曜日

次世代主力機で覚えておきたい新技術の動向 Advent/Invent とは

Advent, Invent Address F-35 Needs And Look Ahead

aviatonweek.com November 05, 2012

次世代の米国製戦術航空機が2030年ごろの実戦配備が期待どおりに実現する保証はどこにもない。逆にエンジンおよびシステムで適応技術 adaptive engine and system technology の開発が進行中であり、その最初の適用例としてロッキード・マーティンF-35が対象になる可能性がある。同機は2020年代を通じ生産される唯一の米国製戦闘機になるはずだ。

  1. . 米空軍と海軍が注目しているのが高性能多用途エンジン技術 Advanced Versatile Engine Technology (Advent)  および統合機体エネルギー技術 Integrated Vehicle Energy Technology (Invent)  という相互関連した二つの計画で空軍研究所(AFRL)の主導のもとF-35性能向上策が生まれるように構想されている。
  2. F-35では適応技術の実用化が遅かれ早かれ必要となるとされることを前提にペンタゴンは次世代戦闘機の試作型製作を立ち上げようとしており、最新の自動化設計ツール、モデル化、シミュレーションを応用して開発工程の効率化を追求する予定だ。
  3. 10 月初めに空軍と海軍宛にフランク・ケンドール国防次官(調達担当) Frank Kendall, undersecretary of defense for acquisition から書簡が送付され次世代航空優勢機体コンセプトの探求を開始が示されている。5年以内に試作機完成に持っていく構想だ。18ヶ月でコンセプトを完成させ るため国防高等研究プロジェクト庁 Defense Advanced Research Projects Agency (Darpa) 予算を使うと同書簡に記してあるとブルームバーグが報道している。
  4. 「い つの日かF-35に取って代わる次世代機の性能要求水準の検討を今から始めても時期尚早とはいえない。「さらにF-35は高性能機とはいえ未だ開発が10 年ほどかかっても完了していない機体.....最先端機を設計するわが国の技術能力が衰えていると憂慮している」(同書簡)
  5. 今回の動きは設計チームにとっては適応技術、モデルを使ったツールを前提に開発中のAdvent、InventならびにDarpaによる適応型機体製作Adaptive Vehicle Makeを実行に移す好機となる。AFRLはすでにジェネラルエレクトリックおよびプラットアンドホイットニー 二社をバイパス可変型適応ファン装着のエンジンvariable-bypass, adaptive-fan engines 実証事業者として選定済みだ。このエンジンは適応型エンジン技術開発Adaptive Engine Technology Development (AETD) としてAdventの後に続くものだ。
  6. GE とプラットはファン、コア、ノズルリグの運転を2016年に実施し、エンジンの完全テストを2017年に行う道を開く。AETDエンジンは次世代ステルス 超音速巡航飛行可能な戦闘機用に想定されているが、F-35にも装着可能とすべきで、現在のエンジンとの比較で推力で5から10%増加しつつ燃料消費は 25%削減できる。
  7. .一方でInventの地上実証も2016年に終了予定で、Invent Spiral 1改修がF-35向けに開発されるのとほぼ同時期となる。nventの核心部分であるダイナミックモデルを利用する試みの上ではF-35の熱力学上の残余能力の把握が重要な要素だ。
  8. リ アルタイムでの熱余裕アルゴリズムにより「パイロットはリアルタイムで燃料が加熱しているのか冷却しているのか理解できるので、ミッションが台無しになる ことを防げます」と話すのはサム・セプテンバー(海軍将来装備研究開発部門の上級アナリスト)だ。加熱が限度を超えるとパイロットは高度を上げて燃料を冷 却させる。この機能は三から四年で機体に導入されるという。
  9. そ もそもこのアルゴリズムはF-35の熱制御システムのモデルから生まれたもので、環境やミッション条件の変化に対応することを目指し開発された。運用では まず飛行前のミッション計画システムに組み入れる。その後、機体の燃料タンク内に計器を入れて、コックピット上に加熱あるいは冷却の必要を表示し、パイ ロットが自ら熱制御に関与できるようにする。
  10. F- 35への応用とは別に第六世代戦闘機の開発を念頭に作業が続いており、高出力ながら熱制約がないエンジンの開発が今後の航空業界の産業力維持に鍵となる。 「先端的な設計、建造、試験をする好機」が利用できないと、ケンドール書簡によれば米国は高性能航空機を作る能力を「維持できなくなり、わが国の技術優位 性は持続できなくなる」という。■

marauderさんのコメント

10:14 AM on 11/12/2012
  • なかなか洞察力に富んだ記事ですね。
  • あえて要約させてもらうとF-35は今後登場するはずの敵側の能力向上で挑戦に直面する一方で、これから登場する技術革新の恩恵も受けられるということですか。
  • 彼我双方が同時に技術進歩をめざしていく中でF-35の実力と生存可能性はつとめてF-35自体の性能にかかってくるわけで、同時に同機を支援するシステム全体(給油機、C4Iやロジスティクス)の一部でもあるわけですね。.
  • この意味でF-35もこれまでの歴史で傑作機と言われた機体と同じではあるものの、大きく違うのはF-35自体は成長変化できるように設計されていることですね。ただし、F-35Bの機体重量問題という微妙な話題もありますが。

筆者のコメント
Darpa の考える革新的な機体開発技術については別個ご紹介します。先日ご紹介した日本のF-3と米空軍のF-X、あるいは米海軍のF/A-Xが共通の機体あるい は技術となる可能性もあるのですが、米側が考えている開発技法は相当革新的なようです。それに対して日本側はどうでしょうか。こと開発になると安全な従来 どおりの考え方が踏襲されるのでしょうね。米側の焦りというのはF-35で苦い思いをしたことが念頭にあるのでしょう。その意味でF-35の「思わぬ貢 献」が今後の航空機開発で出てくるかもしれません。それにしてもF-22はどこにも話題が出ていませんね。