2014年6月24日火曜日

速報 F-35Aが離陸前に出火し、機体全損か


BREAKING: Fire Breaks Out on F-35 at Eglin Air Force Base, Pilot Safe

USNI News By: Dave Majumdar and Sam LaGrone
Published: June 23, 2014 3:39 PM
Updated: June 23, 2014 4:05 PM
ご注意 本件は進行中のため記事内容が追加となる可能性があります。

ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機で初の重大事故が発生した。機体が大破(全損の可能性もあり)している。6月23日午前にエグリン空軍基地滑走路上で発火したことがわかった。
  1. 人的被害の報告はなく、関係者は事故調査を開始している。.
  2. 「事故機は訓練ミッションの準備中に機体後部で発生した発火のため離陸を中止している」と空軍が発表している。「火災は発泡剤で消火された」
  3. 事故機はF-35A(空軍仕様)の第33飛行中隊所属機で、同中隊はJSFの各型に習熟する訓練の中心だ。
  4. 「緊急事態に的確かつ迅速に対応できるようパイロット向けの充実した訓練を実施している」と同中隊司令のポール・ハース海軍大佐が声明文を発表している。
  5. 今回はパイロットは正しい手順でミッションを中止し、エンジンを停止させて脱出している。基地ではF-35の火災訓練を5月に実施したばかりだった。
  6. USNI Newsの問い合わせにロッキード関係者からは回答がない。
  7. エグリン基地は米国仕様のJSFのみならず各国向け機材でも訓練拠点となっている。
  8. 33飛行隊は2009年にF-35専用の訓練隊として発足している。同隊には2018年までに59機が納入される予定で、パイロット100名を年間訓練し、2018年までに合計2,100名を養成する。
  9. JSFでは今月初めにも飛行停止措置があった。海兵隊機が飛行中にオイル漏れを発生させたためだった。■

☆ エンジン開発から見えてきた第六世代戦闘機の性能要求水準



Next Generation Engine Work Points to Future U.S. Fighter Designs

USNI News By: Dave Majumdar
Published: June 23, 2014 10:51 AM
Updated: June 23, 2014 10:51 AM
A Boeing artist's conception of a potential design for F/A-XX. Boeing Photo
ボーイングが企画中のF/A-XX. Boeing Photo
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米海軍と米空軍はそれぞれ次世代戦闘機の要求性能水準の作成を開始したばかりだが、推進力となるエンジンは先行開発が進んでおり、第六世代戦闘機の性能の一部が見えてきた。
  1. 海軍のF/A-XX と空軍のF-X 用のエンジンで、ペンタゴンは開発をすでに始めている。エンジンメーカーノプラット&ホイットニー、ジェネラルエレクトリックの関係者からUSNI Newsはそれぞれの開発コンセプトを聞く機会を得た。
  2. 「第六世代機を定義するのはエンジン含む推進系だ」と話すのはダン・マコーミックDan McCormick(GEの適応サイクルエンジン事業部長)「推進系システムは機体設計工程に統合されるべきです」
  3. 両社が革新的な適応サイクルジェットエンジンadaptive-cycle jet engines を開発中でこれがボーイング F/A-18E/F スーパーホーネットやロッキード・マーティンF-22ラプターの後継機に搭載されることになる。
  4. These advanced engines would be able to vary their bypass ratios for optimum efficiency at any combination of speed and altitude within the aircraft’s operating range unlike today’s engines that are at their best at a single point in the flight envelope.
  5. 新型エンジンの特長はパイパス比を調整し、速度・高度に合わせた最適な効率を実現することになる。これに対し現行のエンジンは飛行条件の一点で最高性能を発揮するものだ。
  6. エンジン開発が機体開発より先行するのは1970年代に空軍がF-15A、海軍がF-14Aをそれぞれ開発する中でエンジンで深刻な問題に直面した苦い経験のためだ。.
  7. 次世代戦闘機に求められる基本性能は空軍研究所 Air Force Research Laboratory と海軍研究室 Office of Naval Researchがそれぞれおこなう研究開発内容から推察することができる。
  8. 空軍は適応型多用途エンジン技術Adaptive Versatile Engine Technology (ADVENT)をF-Xに応用する目論見で、海軍は変動サイクル高性能エンジン技術 Variable Cycle Advanced Technology (VCAT)を海軍の用途に合わせて採用する考えだ。
  9. GEで第六世代戦闘機用エンジンの専門家のジェフ・マーティンJeff Martinによれば推定される要求性能として現行機を上回るより長い航続距離があるという。さらに高速飛行、高加速力、亜音速巡航時での高効率飛行がある。
  10. 「変動サイクルエンジンがないとこれだけの要求にこたえられなく、とてつもない巨大機になってしまいます」(マーティン).
  11. 変動サイクルエンジンは超音速飛行時はターボジェットと同様に作動し、旅客機と同様の速度では高バイパスターボファンのように高効率で飛行できる。このことから新型機はスーパークルーズ性能が重視されるのではないかと思われる。
  12. 「海軍から聞いているのは空母を発艦する迎撃ミッションで、すぐ飛び出して数百カイリ先に高速で進出するというものです」(マーティン)このミッションはF-14を思い起こさせるものだ。ソ連機が巡航ミサイルを発射する前に迎撃するのがF-14のコンセプトだったが、ソ連崩壊とともにその必要がなくなったとはいえ、中国の急速な台頭が米空母部隊に同様の脅威を与えることになりそうだ。
  13. 「スーパークルーズが要求の柱なのか不明ですが、機体の縦横比から見て超音速機となるのは間違いありません。それで変動サイクルエンジンを搭載すればスーパークルーズは可能ですが、実際にそうなるかは別問題です。燃料消費が大きくなりますから」(マーティン)
  14. 海軍と空軍で別個の機体開発となるが、空軍によると海軍と密接に作業しているという。「エンジン開発部門は非常にまとまりのよい集団で、海軍とは完璧な透明性を維持している」とAFRLがUSNI Newsに文書で回答してきた。
  15. 「相互に技術検討を行っている。技術的見地から非常に参考になる情報を得ている」
  16. マーティンから海軍の開発内容がわかってきた。「VCAT開発がAFRLにも非常に役立っています」
  17. VCAT開発は非常に有益だと判明しているという。具体的なサイクルの情報が得られたこと以外にエンジンと機体を全体として扱う必要が理解されたという。
  18. プラット&ホイットニーにとってはVCATはエンジン開発を別の側面から考察する機会になっている。可変式なのはファンだけではない、とジェイムズ・ケニオン James Kenyon(同社次世代戦闘機用エンジン開発部長)は語る。「変動の範囲はもっと大きく、柔軟度が高いものです」
  19. 空軍のめざすのはエンジンの技術成熟度としてマイルストーンA判定を2018年に下し、F-Xの技術開発段階に進むことだ。.
  20. しかし、生産型エンジンではマイルストーンBが達成されないと生産開発段階に進めない。「マイルストーンBはTRL(技術即応性)が6と同等といわれます」(マーティン)
  21. With adaptive engine technology already set to hit the TRL-6 milestone before the end of the year, a production engine could be ready by 2021 if necessary.
  22. 予定通りなら生産機用エンジンは2021年に利用可能となる。
  23. 適応サイクルエンジンの中核技術は適応型ファンで、これによりエンジンはバイパス比を自由に変えることができる。
  24. 超音速飛行ではマッハ2.2以上の性能が出しにくくなるのは空気取り入れ口の形状に制約を受けるからだ。
  25. そこで適応型サイクルエンジンを搭載した戦闘機は低バイパスに切り替えてバイパスする気流そのものが少ない離陸時や超音速飛行時に必要な推力を確保する。
  26. ただし低バイパスで高推力を得る際の気流速度が高くなると推進効率が低くなり、巡航速度の確保には悪影響だ。そこで適応型ファンによりエンジンは高バイパスモードに切り替え、推進効率を補う。
  27. 将来の適合サイクルエンジンの効率性を確保するのは適応型ファン以外に新素材の採用による高温高圧運転への耐久性だ。
  28. 変動サイクルエンジンで戦闘機用に製作されたのは1990年代初期のジェネラルエレクトリックYF120 エンジンが初だが、これはプラット&ホイットニーF119の前に不採用となった。F119はロッキード・マーティンF-22ラプターに搭載された。「YF120は適応型サイクルエンジンでしたが、狙いが今とは違っていました。ADVENTとAETDのねらいは燃料消費効率で、AETDでは確かに推力の追加もありますが、熱管理でも改善がされています。これに対してYF120はスーパークルーズの要求にこたえることが主眼でした」(マコーミック)

ADVENT (ADaptive Versatile ENgine Technology) engine core in its test cell at GE facilities in Evendale, Ohio. GE Aviation System Photo
ADVENT (ADaptive Versatile ENgine Technology) engine core in its test cell at GE facilities in Evendale, Ohio. GE Aviation System Photo

  1. 空軍が第六世代機向けの変動サイクルエンジン開発を開始したのは2007年で空軍研究所による適応型万能エンジン技術’ADVENT)としてであった。当時の目標は次世代技術を技術成熟度はTRL-6まで、製造成熟度はMRL-6まで持っていき、実証機材の生産を可能とすることだった。
  2. ジェネラルエレクトリックとロールス-ロイスに6か年契約が交付され、実証用エンジンの製作をすることになった。プラット&ホイットニー案は不採用となったが、同社は自己資金で技術開発を続け、その後に期待をつないだ。
  3. プラット&ホイットニーはロッキードF-35用のF135エンジンのファン改良を中心にしたとケニオンは話す。同社は適応型ファンの実証を行っている。「気流の制御が可能であることを証明できました」とケニオンはいい、自社資金投入の効果が出たという。

  1. 一方でジェネラルエレクトリックは6年間の開発期間を経てADVENT実証エンジンを2013年11月よりテスト運転している。テストは今年中に完了する。
  2. 「当社は実寸大適応型サイクル技術実証エンジンをオハイオ州エヴェンデールに設置しております。そこで技術を成熟させていきます」(マコーミック)
  3. GEのADVENTエンジンには適応型ファン、超高圧コンプレッサー、新型燃焼システム、各種新素材(セラミックマトリックス複合材含む)、冷却技術が投入されているという。.
  4. テストではエンジンコア部分が想定よりも130度Fも上昇した。同社によればジェットエンジンの複合コンプレッサー・タービン温度としてAFRLによる認定も受けた最高記録を樹立したという。
  5. Further, McCormick said that the ADVENT demonstrator engine is actually exceeding expectations in many cases including for fuel burn. The fuel efficiency target for ADVENT was to reduce fuel-burn by 25 percent.
  6. またマコーミックによればADVENT実証エンジンは燃料消費、など多くの点で予想を上回る性能を発揮している。なお、ADVENTの燃料消費目標は25%の効率アップである。
  7. 空軍研究所の次の研究課題が適応型エンジン技術開発 Adaptive Engine Technology Development (AETD)でそのねらいはADVENTで開発した技術で実際に飛行をジ失することにある。ただし、飛行に重点がおかれ、エンジンの大きさ、重量などは考慮に入れていない。
  8. 「AETDはADVENTが実現した技術で成熟したものを取り入れ、ひとつにまとめて航空機に搭載できるかを見極めるものです」(マコーミック)
  9. ただしAETDはADVENTをそのまま延長したものではない。空軍は再度公募をかけ、ジェネラルエレクトリックとプラット&ホイットニーが採択されたが、ロールスロイスは選外となった。AETDはエンジンを完成させない点でADVENTと違う。


This is a Lockheed Martin concept for a sixth-generation concept aircraft to replace the F-22 Raptor. The Air Force released a request to arm its next generation fighters with offensive lasers. Lockheed Martin Illustration
ロッキード・マーティンによる第六世代機のコンセプト図。
空軍は第六世代機に攻撃用レーザー兵器の搭載を求めている。
Lockheed Martin Illustration

  1. ただし両社はエンジン設計を完成させ、予備設計審査 preliminary design review (PDR)に持ち込むことが求められている。PDRは当初は2014年11月実施の予定だったが、空軍により2015年2月への延期が認められた。.
  2. この日程変更の理由は二つ考えられる。ひとつはAETDの流れをくむ次世代技術の開始が2016年度になることだ。
  3. もうひとつはAFRLが二社の設計審査へ向けた進展を見ながら日程を調整した点だ。
  4. AETDの後に空軍の次期戦闘機NexGenが来る。今年初めに国防長チャック・ヘイゲルから高性能エンジンを量産するため10億ドルを投資しているとの発表があった。しかし、いまのところ開発がどこまで進んでいるのか詳細はほとんどわからない状態だ。■


米MDAが地上配備型ミサイルで弾道弾迎撃に成功


U.S. Missile Defense Intercept Test Succeeds

aviationweek.com Jun 22, 2014Michael Fabey | AWIN First

米ミサイル防衛庁(MDA)が地上配備型中間コースミサイル防衛Ground-based Midcourse Defense (GMD) による迎撃実験に成功した。GMDの迎撃成功は2008年以来はじめて。
  1. 6月22日の演習では 長距離地上配備迎撃ミサイルがヴァンデンバーグ空軍基地(カリフォーニア州)から発射され、マーシャル諸島共和国ノクェジェリン環礁にある米陸軍レーガンテスト施設から発射された中距離弾道ミサイルの迎撃に成功した。
  2. 今回のテストで米本土防衛に供する各種弾道ミサイル防衛手段の評価に必要なデータが入手できた。
  3. テストには米空軍第30宇宙部隊U.S. Air Force 30th Space Wing、合同部隊本部Joint Functional Component Command,、統合ミサイル防衛部隊Integrated Missile Defense、米北方方面司令部U.S. Northern Command 、米海軍も参加している。
  4. 標的になった中距離弾道ミサイルは海軍のDDG-70ホッパー(イージス艦)のAN/SPY-1レーダーで探知、追尾され、GDM発射管制室に指揮・統制・戦闘管理・通信システムCommand, Control, Battle Management and Communication (C2BMC) によりデータを送った。海上のXバンドレーダーも追尾し、GMD発射管制システムにデータを送ってきた。
  5. 標的ミサイル発射からおよそ6分後に地上配備迎撃ミサイルがヴァンデンバーグ空軍基地から発射され、三段式ブースターロケットが大気圏外迎撃体 Capability Enhancement II Exoatmospheric Kill Vehicle (EKV) を標的の予想宇宙軌道に運んだ。迎撃体は標的に位置修正され、識別ののち、目標の弾頭部分に衝突破壊した。これはEKVの第二世代機による初の迎撃となった。
  6. なお、迎撃ミサイルは米陸軍第100ミサイル防衛旅団(コロラド州シュリーヴァー空軍基地内)が遠隔制御で発射した。
  7. 弾道ミサイル防衛システムとして今回の成功で2001年以来通算81回中65回の成功となった。システムの中でGMDはこれまで4回使用されている。実戦用の地上配備型迎撃ミサイルはアラスカのフォート・グリーリィとヴァンデンバーグ空軍基地に配備されている。■

2014年6月23日月曜日

第5世代、第4世代機間の通信でステルス性の維持が課題


5th-To-4th Gen Fighter Comms Competition Eyed In Fiscal 2015

aviationweek.com Jun 18, 2014Amy Butler | AWIN First
米空軍は第五世代機と第四世代機間の通信接続手段の提案を業界に求める模様。
  1. 空軍は「第5から第4へ」と通称する通信能力が必要だとしてきたが、F-35の配備が近づく中、技術的な課題と予算制約で先送りにしていた。またF-22の調達規模が縮小して各機を空軍のネットワークに接続させ作戦の協調が実施上の課題となっていた。
  2. 「第5から第4へ」と言う名称だが、F-22とF-35でLink 16を使わずに通信させる方法の確立が課題だ。Link 16を使うとステルス性に支障が出るためだ。両機種はロッキード・マーティン製だが、設計年代が違っており、F-22は基本的に僚機のF-22に「話す」ことを専用の低探知性・低妨害可能性のシステムを通じて行うことしかできない。これに対し、F-35は多機能高性能データリンク Multi-function Advanced Datalink (MADL) を使用しており、波形を変えつつ通信が可能だ。F-35の空軍での実戦化は2016年8月予定。
  3. 空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が2月の空軍協会主催会合で第5から第4戦闘機への交信能力の必要性を訴えていた。しかし、航空戦闘軍団Air Combat Command は具体的な必要条件を明確に示しておらず、同軍団は本件について取材に応じていない。
  4. 特にF-22を実戦投入する際に通信が制約条件になっている。同機をリビア作戦(2011年)に投入する案があったが、F-22が集めたデータを友軍に送信する手段がないことがわかり企画はとん挫してしまった、と業界筋が明らかにしている。
  5. そこで空軍が提案しているのは多分野適応性処理システムMulti-Domain Adaptable Processing System (MAPS) といい、ステルス戦闘機間の通信のゲートウェイとなるポッドをつくることだ。これをF-16はF-15と言った第四世代戦闘機に搭載すれば、旧型機でも通信のやり取りが可能となる。
  6. 作戦概念ではステルス戦闘機を敵防空網の脅威がある「バブル」の背面から侵入させ、MAPSシステムでデータをそれぞれ送受信させる。
  7. これで戦闘航空機間の通信は楽になるが、作戦概念はステルス機が侵入するだけでなく、第四世代機が周囲を旋回飛行し、通信を支援することが必要条件となる。これは作戦実施のコストを増加させる要因だ。
  8. このMAPSの提案仕様は空軍が2015年第二四半期までに完成させることにあっているとアンソニー・ジェネテンポ大佐 Col. Anthony Genatempo (空軍電子システムズセンターElectronic Systems Center)が語る。同センターはMAPS調達を担当する。2015年度末までに競争入札を実施したいという。
  9. 通信ゲートウェーに加え、空軍は赤外線探索追跡センサーinfrared search and track sensor (IRST) をMAPSのハードウェアの最終仕様に追加する予定だという。空軍の目論見はMAPS開発を100百万ドル以下で完了することだが、最終的な金額は変更の可能性がある。
  10. MAPSはタロン・ヘイトTalon Hate の知見をもとにしている。タロン・ヘイトは飛行中のF-22からデータリンクを第四世代戦闘機に提供するのが目的で、2015年度内に専用ポッド四つを作ることになっている。航空作戦で後方につく第四世代戦闘機のパイロットもF-22が収集した戦術情報が利用できるようになる。ボーイングがF-15C用のポッドを作成中だ。
  11. このタロン・ヘイトのポッドは各1,800 lb.の重量があり、長さは17 ft.で、IRST(多機能情報提供システムMultifunctional Information Distribution System (Link 16に類似))、衛星通信能力、空対地通信リンクを内蔵する。
  12. タロンヘイト開発を担当するのは空軍の戦術能力開発室Tactical Exploitation of National Capabilities officeで議会から指定を受けて各軍に応用できる能力を開発する部署である。航空戦闘軍団はタロンヘイトについても取材を拒否してきたが、データ表は提供している。なお、ボーイングは本システムについて一切の質問に答えていない。
  13. 最終的には空軍がステルス戦闘機に相互通信能力を持たせ、外部ゲートウェイを経由することなく独立した能力とし、データリンクの高性能化を目指している。ただMAPSについては「同様の性能がタロンヘイトにありますが、重量及び部品の電力消費量が減ります」とジェネテンポ大佐は語る。「形状はポッドではなくなるかもしれなく、一部ポッドになっているかもしれない」
  14. F-22とF-35はともにLink 16で受信できるが、代わりに自機の位置をさらすことになる。そこで空軍はLPI/LPD で通信接続を実現する方法を模索しつつ、第五世代戦闘機を危険度が最高に高い地域に送るかを考えている。
  15. ジェネテンポ大佐によれば要求性能を一気に実現しなくても段階的変化で究極の目標たるF-22とF-35 間の直接リンクを実現すればよいと空軍は考えているという。ただコストが最大の関心事だという。生産規模は予算がいくら使えるか次第だという。
  16. 最終目標は第五世代戦闘機、第四世代戦闘機を情報収集監視偵察用や衛星などその他の国防関係の機材と連結するネットワークとして完成させることだという。
  17. ボーイング、ノースロップ・グラマンロッキード・マーティンの各社がMAPSの概念提案に参加する見込みで、このうちノースロップ・グラマンはジェットパックJetpack 共用能力として実証を行っている。ジェットパックはF-22とF-35 の出すメッセージを翻訳することが目的だという。
  18. これとは別にロッキード・マーティンはL-3コミュニケーションズが開発した新波形キャメレオンChameleon によりF-22とF-35間でゲートウェイ介さずに直接交信出来ることを昨年12月に実証している。その際の信号強度は接近拒否の環境下での探知範囲以下だったと関係者は語っており、波形はLバンドアンテナで送信されたという。Lバンドアンテナは両機種に取り付け済み。.
  19. ロッキードは自社資金でシステムを完成させようとしており、プロジェクトミゾウリProject Missouri と命名している。このシステムの特長はキャメレオン波形によりデータが行き来してもステルス機の位置が見えてしまうことがないので、高度に防空体制での作戦に有利に働くことだ。同社は空軍が予算交付に動き、同プロジェクト開発がさらに進むことを期待している。■




2014年6月21日土曜日

ロシア原潜建造が活発化、新型攻撃原潜ヤーセン級・ミサイル原潜ボレイ級


USNI Newsより


Russian Navy Accepts First in New Class of Nuclear Attack Submarine

By: Dave Majumdar
Published: June 19, 2014 7:04 PM
Updated: June 19, 2014 7:16 PM
Russian submarine Severodvinsk
Russian submarine Severodvinsk

ロシア国内のテレビ報道によるとロシア連邦海軍がプロジェクト855 ヤーセン級 Yasen-class 原子力攻撃潜水艦の一号艦を今週受領したという。
  1. 艦名はK-560セヴェロドヴィンスク Severodvinsk で1993年からセヴマシ造船所で建造が始まっていた。完成が遅れたのはロシア経済の不振が理由で、2010年までロシアでは新造潜水艦は一隻も進水していない。

  1. セヴェロドヴィンスクはロシアの攻撃原潜で静粛度が最も高く攻撃能力も高いとみられる。ただ米海軍のシーウルフ級、ヴァージニア級原潜と同等の静粛性は実現していないとみられる。

  1. ロシア官営メディアによると同艦の潜水時排水量は13,800トン、全長119メートル、速度31ノットで600メートルまで潜航できるという。乗組員は90名でうち32名が士官。武装はオニキスOniks(SS-N-26)巡航ミサイルおよびカリバーKalibr (SS-N-27)巡航ミサイル24発に加え533㎜魚雷と機雷を搭載する。またソナーアレイを球状船首に初めて採用するロシア潜水艦となった。

  1. ヤーセン級ではあと2隻の建造がはじまっており、カザンKazan とノボシビルスクNovosibirskの各艦は一部改修された設計のためプロジェクト855MヤーセンーM型と呼称されている。さらに四号艦の建造が8月に開始されるとロシア放送は伝えている。

  1. 855M仕様の潜水艦はさらに3隻発注され、最終的にヤーセン級は8隻の陣容になる。さらにヤーセン級の次の艦も設計が始まっているという。

  1. その一方、ロシア海軍はボレイ級Borei-class 戦略弾道ミサイル原潜の建造も続けており、タイフーン級(プロジェクト941)とデルターIV(プロジェクト667BDRM)ミサイル原潜と交代させる。

  1. ボレイ級原潜は三隻完成しており、四号艦は設計を手直ししニャズ・ウラディミールの艦名で建造中。この艦はプロジェクト955-AボレイII I級と呼ばれ、これ以前の艦が16発ミサイルを搭載していたものを20発に変えている。■

2014年6月20日金曜日

同盟各国のサイバー戦対応能力強化を支援する米国防総省


DoD Bolstering Cyber Warfare Capabilities in at Risk Nations

USNI News By: Carlo Muñoz
Published: June 12, 2014 4:25 PM
Updated: June 12, 2014 4:26 PM
German and American soldiers during a 2011 cyber warfare exercises. US Army Photo
2011年のサイバー戦演習での米軍と独軍関係者。 US Army Photo

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ペンタゴンのサイバー戦専門集団がサイバー攻撃に脆弱とみられる各国向けにテコ入れをしている。

  1. サイバー政策担当国防次官補代理のジョン・デイビス陸軍中将Maj. Gen. John Davisによるとサイバー攻撃の脅威が比較的高い国があるという。

  1. そこで米国関係者は同盟国の関係者とともにサイバー戦の能力向上にとりかかっており、たとえばマルウェアへの防御策や、ネットワーク防衛他の戦術、技法、手順を強化していると同中将は明らかにしている。

  1. デイビス中将は対象国の名前を明らかにはしていないが、米国の支援対象が東欧およびアジア太平洋の数か国である可能性が高く、中国やロシアによるサイバー攻撃のリスクが高い国である。

  1. ホワイトハウスとペンタゴンはこの両国が同盟各国への悪意あるサイバー活動のみならず米国内ネットワーク侵入にも関与していると非難している。

  1. 今年初めにロシアはウクライナの軍民ネットワーク多数をハッキングしており、ウクライナ東部およびクリミア奪取の軍事行動の一部であった。同じように2008年にグルジア侵攻でもサイバー作戦をおこなっている。

  1. 司法省は5月に中国国籍5名を連邦刑法で訴追しており、米国ネットワークを対象とした中国のサイバー諜報活動の実行犯だとした。米政府が中国のサイバー戦行為に対して正式な法手続きをとったのはこれが初めて。

  1. デイビス中将はロシアや中国が今回のサイバー戦対応力強化の元凶だとは名指ししていないが、同盟各国の強化は米国の安全保障戦略の一環であると強調。

  1. 各国別対応とは別にNATO加盟国用にも対応能力向上策が用意されている。また今秋にはNATO本部でサイバーサミットを開催し対策を協議する。

  1. さらに加盟各国と「サイバー事案対応センター」を創設するとデイビス中将は紹介。これをNATO加盟国のサイバー作戦の調整の中心とし、加盟国へのサイバー攻撃に備えるものだという。■


2014年6月19日木曜日

自衛隊の対艦ミサイル前方配備で中国が反応を示す



China Reacts to Japanese Anti-Ship Missile Positioning

USNI News By: Sam LaGrone
Published: June 18, 2014 11:43 AM
Updated: June 18, 2014 11:43 AM

自衛隊が尖閣諸島を視野に入れて地対艦ミサイルを配備視する計画を進めていることに対し、6月16日中国外務省は「断固として効果的な行動」を取る用意があると発表している。

  1. 自衛隊は12式地対艦誘導弾を九州と宮古群島に配備し、尖閣諸島を防衛する計画と地元紙が報道していた。
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  1. 「日本の動きは地域内の安全保障環境に影響を与えかねないもので、日本は真の意図を責任ある形で公表すべきである」と中国外務省報道官華春蛍Hua Chunyingは記者会見で発言。これは今回のミサイル配備が中期防衛計画として昨年12月に発表されたものの一部で特定の国家を意識したものではないとの報道が出たことへの反応。
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  1. 日本側からはその翌日に12式誘導弾配備の動きがあることを Jane’s Defence Weeklyに認めている。

  1. 12式誘導弾の射程は62マイルであり、以前の88式対艦誘導弾(同じく三菱重工製)より性能が向上している。

  1. 12式の特長は中間段階のGPS誘導で地形照合による精度向上と目標識別能力があるいわれる。また再装填時間が短縮され、ライフサイクルコストが下がっているとJane’sは伝えている。■

イラク急変への対応(2)航空戦力でISIS打倒は無理---現役米海軍士官の見解


Opinion: U.S. Air Power Won’t Defeat ISIS

USNI News By: Cmdr. Daniel Dolan
Published: June 17, 2014 7:28 AM
Updated: June 17, 2014 7:29 AM
An F/A-18E Super Hornet prepares to launch from the aircraft carrier USS George H.W. Bush (CVN-77) on June 15, 2014. US Navy Photo
An F/A-18E Super Hornet prepares to launch from the aircraft carrier USS George H.W. Bush (CVN-77) on June 15, 2014. US Navy Photo

イラク・シリア・イスラム国家 Iraq and Syria Islamic State (ISIS)の非正規軍がバグダッド目指し進軍する中、アメリカの政治指導層とくにジョン・マケイン上院議員(共、アリゾナ) Sen. John McCain (R-AZ) とリンゼイ・グラハム上院議員(共、サウスカロライナ) Sen. Lindsey Graham (R-SC)中心に空爆でイラク国内の治安回復を求める声が高まっている。
  1. 航空兵力が効果的かつ政治上甘受できる選択肢としても、空軍力でISISの打倒は不可能だ。
  2. 歴史上も空軍力だけで決定的な結果を得た例がない。あえていえば1999年のNATOによる対セルビア懲罰的攻撃だけが政治目的を達成した唯一の事例と言える。
  3. その事例から今回のイラク・シリア事例への教訓が二つある。まず、ISISに交渉相手となる政治指導部が存在していない。つまり全滅させないとイラク現政権の復権はままならない。二番目に、仮にISISが敗退しても結局は地上兵力がないと平和維持は不可能だ。イラク国連大使ルクマン・フェイリ Lukman Failyは6月16日に「イラクは米国陸上兵力を必要とせず、来てほしくない....イラク国内で兵力を確保する」と語っている。さらにイラクにビン・ラディンのような人物が千人も出現させないためには米国による航空優勢、空軍訓練、援助が必要だと語っている。
  4. ISISは米国が空母打撃群 carrier strike group (CSG) をペルシア湾に移動させても気にもかけていない。もし米国がISISが実効支配する人口稠密地区で攻撃目標を決定すれば、ISISIは住民を人質にするだけだ。誰が悪者なのかを区別することは1万フィートからは難しい。
  5. コソボ事例では村落部に展開したセルビア軍の移動を食い止めるのはF-15には困難な任務だとNATOは思い知らされた。その後セルビア政府は交渉に応じた。そこでISISに話を戻すと、紀元10世紀と同じ世界の到来を期待するテロリスト中心のグループにとって重要な経済インフラ上の目標はどれになるのか。
  6. 事実を無視した主張が識者から出ている。イラク国内に米軍対テロ部隊を駐留させていれば今回の危機は発生しなかったというのである。(反乱分子は米軍を恐れるため、だという) あるいは反乱分子を容易に鎮圧できただろうというのだ。これが本当なら、アフガニスタンで国外から戦闘員が引き続き流入しており反乱分子の士気が高いのはなぜか。また、7年余の米国のイラク作戦で治安維持がたえず問題だったのはなぜか。アフガニスタンでもイラクでも米国は完璧な航空優勢を確保しても決定的な勝利を得ていないのに、なぜ今回は勝利できるのか。
  7. 米軍投入は一定の範囲で理解できるし、攻撃対象の人物や目標を探すべのも妥当な反応といえる。ただし米国やその同盟国はISIS打倒で高価な支出を求められる。最良の選択は反応的に空軍力を使いイラク政府および治安維持部隊に余裕を与え、反攻の時間を作ることではないか。■

2014年6月18日水曜日

イラク情勢急変に対応した米海軍の動き(1)



イラクの国内治安が不安定になってきました。米海軍はそれに対応し艦艇配置を変更しています。今後も情勢変化に対応した動きが出てきそうです。合わせてイランの動きにも注意が必要です。原油価格の上昇の引き金にならないことを祈るばかりです。


U.S. Moves Amphibious Warship Closer to Iraq, Four U.S. Ships in the Gulf

USNI News By: Sam LaGrone
Published: June 16, 2014 9:38 AM
Updated: June 16, 2014 9:38 AM
USS Mesa Verde (LPD-19) is underway in the U.S. 5th Fleet Area of Responsibility. US Navy Photo
USS Mesa Verde (LPD-19) is underway in the U.S. 5th Fleet Area of Responsibility. US Navy Photo

スンニ派のISIS(イラク・シリア・イスラム国家)武装組織の進撃がイラク国で進んでいることへの対応し、米海軍は揚陸艦艇の配置をイラクに近づけているとUSNI Newsへ国防関係者が16日明らかにした。

USSメサヴェルデ(LPD-19)が現在第五艦隊作戦海域にあり、本日中にペルシア湾に入る。同艦は海兵隊員550名とLCAC揚陸用ホーバークラフト2機およびMV-22を5機搭載している。
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同艦は空母USSジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)、誘導ミサイル巡洋艦USSフィリピンシー(CG-58)よび誘導ミサイル駆逐艦USSトラクストン(DDG-103)に加わりペルシア湾内4隻目の合衆国艦艇になる。ブッシュおよび他の2艦は先週土曜日に湾内入りしていた。


メサヴェルデはバターン揚陸即応集団Amphibious Ready Group (ARG) の一部を構成しており、他にUSSガンストンホール(LPD-44)およびUSSバターン(LHD-5)で編成された第22海兵隊遠征部隊Marine Expeditionary Unit (MEU)に属する。なおバターンは東地中海に展開中。



2014年6月16日月曜日

☆ ステルス機に有効なE-2Dの新型レーダー


空軍からちっとも華々しいニュースが来ないのと対照的に海軍からは色々と話題がでています。

ステルスの弱点もここまでわかってくるとF-35が第一線化する時点ですでに威力が低減しているかもしれませんね。宣伝してきたロッキードはその時にどうするのでしょうか。わかっているだけに海軍はF-35Cに過大な機体はしていないのでしょう。

ところで、新型UHFレーダーですが、本当にそれだけ高性能なレーダーであれば、AWACSのみならずJ-STAR後継機など用途がいろいろありそうですね。


The U.S. Navy’s Secret Counter-Stealth Weapon Could Be Hiding in Plain Sight

USNI News By: Dave Majumdar
Published: June 9, 2014 9:14 AM
Updated: June 9, 2014 9:15 AM
An E-2D lands on the aircraft carrier USS Dwight D. Eisenhower (CVN-69). US Navy Photo
An E-2D lands on the aircraft carrier USS Dwight D. Eisenhower (CVN-69). US Navy Photo

ノースロップ・グラマンE-2D高性能ホークアイは米海軍にとって敵の第五世代戦闘機や巡航ミサイルの脅威に対する秘密兵器になるかもしれない。

  1. そのカギを握るのが同機が搭載する強力なUHFバンドの機械式・電子スキャン式のハイブリッドAN/APY-9レーダー(ロッキード・マーティン製)だ。UHFレーダーはステルス技術への効果的な対抗手段となる。

  1. その一例が国防大学National Defense Universityの合同軍四季報Joint Forces Quarterly 学術誌の2009年第四四半期号に掲載されたアレンド・ウェストラ Arend Westra の論文だ。

  1. 「波長を延ばして共振させることでVHFおよびUHFレーダーでステルス機を探知できる」とウェストラは「レーダー対ステルス」の題で投稿している。

  1. UHFバンドのレーダーの周波数は300MHzから1GHzで波長は10センチメートルから1メートルになる。ステルス機戦闘機では物理特性によりKa、Ku、X、Cバンドのいずれかあるいは一部のSバンドの高周波数で探知困難にしている。だが航空機の尾翼端など構造の寸法が波長の八分の一以下と等しくなると共振現象が発生し、レーダー断面積が変化する。

  1. つまり小型ステルス機ではレーダー吸収塗料を厚さ2フィート以上も施す余裕がないのでステルス性を発揮できる周波数帯を選択し、それ以外はあきらめるしかないということだ。

  1. 幾何学的視覚パターン分散が可能なのは大型ステルス機のみ、ただし機体表面に突出したものがないことが条件で、これを満たすのは現在はノースロップ・グラマンB-2だけだが、将来は長距離攻撃爆撃機が加わる。「戦闘機サイズの機体では発見は免れえない」とある筋がUSNI Newsに解説している。

An E-2D Hawkeye outside the hangar at Naval Air Station Patuxent River on March 26, 2014. US NAvy Photo
An E-2D Hawkeye outside the hangar at Naval Air Station Patuxent River on March 26, 2014. US NAvy Photo

  1. ただしウェストラ他多くが指摘するのがUHFやVHF帯のレーダーにも欠陥があるという点だ。「角度と距離によって解像度が低くなり、従来はUHFやVHFは正確な目標探知や火器管制には使えなかった」(ウェストラ)

  1. ノースロップ・グラマンとロッキード・マーティンはこの欠点を克服したようで、APY-9には高性能電子スキャン能力とともに強力なデジタルコンピュータを組み合わせた処理を可能としている。海軍関係者によるとAPY-9の性能はE-2Cの搭載するレーダーより大幅に向上しているというが海軍はこの点を公にしていない。

  1. 「E-2DのAPY-9レーダーにより早期警戒と状況把握能力はすべての航空目標に有効になり、航空機以外に巡航ミサイルにも有効」と海軍航空システムズ本部はUSNI Newsに電子メールで回答している。「APY-9は新技術を採用しており、1970年代の技術を使うE-2CのAPS-145レーダーよりはるかに高性能」

  1. 海軍はE-2Dの役割は海軍統合火器管制防空体制 Naval Integrated Fire Control-Counter Air (NIFC-CA)(ニフッカアと発音してください) の中央で敵の航空機及びミサイルの脅威に対抗することとしており、マイク・マナジル少将(航空戦部長)はこの概念を昨年12月にUSNI Newsに明らかにしている。

  1. NIFC-CA構想の「From the Air」(FTA)仕様によりAPY-9 はセンサーとしてレイセオンAIM-120 AMRAAM 空対空ミサイルに目標指示を与える。これはLink-16データリンクを介しボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットに伝えられる。

  1. それ以外にAPY-9はスタンダードSM-6ミサイルを誘導するセンサーにもなる。同ミサイルはイージス巡洋艦・駆逐艦からSPY-1レーダーの有効限界より先にある目標に対してNIFC-CAの「From the Sea」(FTS)仕様の協調戦闘能力 Cooperative Engagement Capability のデータリンクで伝えられる。これまでのところNIFC-CAのミサイル実弾試射は全数成功している。

  1. E-2D初の飛行隊VAW-125が作戦能力を獲得する今年10月にNIFC-CAの実用化も始まる。

  1. APY-9は独特の設計となっている。NAVAIRとノースロップは同レーダーはAPS-145の「2世代先」だと自慢しているが、外観上は機械式スキャンのAN/APS-145と同じでも、内部は全く別となっている。

  1. APY-9はE-2Dのレドーム内部で回転し、360度を監視できるが、乗員によりアンテナの回転速度は調整可能で、対象方面に焦点を合わせることができる。さらに18チャンネルのパッシブ式フェイズドアレイADS-18アンテナにはレーダービームを電子的に制御可能。また電子スキャン式の敵味方識別能力もある。

  1. 送受信部のハードウェアは胴体内部に装着し、アンテナとは高出力の高周波送信線と高速回転カプラーで接続する。その意味でこれはアクティブ電子スキャンアレイ方式のレーダーではない。

  1. APY-9は高性能空中早期警戒監視Advanced Airborne Early Warning Surveillance、高性能広域スキャンEnhanced Sector Scan、および高性能追跡Enhanced Tracking Sectorの3モードへ切り替え可能である。

  1. このうち高性能空中早期警戒監視モードが通常の用途で、360度にわたり同時に空中と地上を対象に、レーダー断面積が小さい目標を長距離にわたり捕捉することが可能。このモードでレーダーは10秒で1回転する。

  1. 高性能広域スキャンモードはこれまでの機械式スキャンと操作可能な電子スキャン技術を一緒にして、双方のいいところを取り、それぞれの方法の欠点を埋めるものだ。アンテナは機械式に回転するが、操作員は任意の方角を選択し、その部分でアンテナ回転を減速し、詳細情報を得ることができる。

  1. 高性能追跡モードは完全な電子スキャン方式でアンテナは安定化されるか特定の目標追跡にされる。高精度の目標追跡ができ、アンテナを止めて完全に電子式にスキャンすれば特定の地区での追尾が可能だ。ステルス機にはこのモードが効果を発揮する。

  1. APY-9の有効距離は300海里以上だが通常運用高度が25,000フィートというE-2Dの機体性能で制約を受ける。

  1. 海軍はE-2Dを75機導入する予定で2020年代に艦隊に配備が完了する。■




2014年6月15日日曜日

U-2全廃してもグローバルホークに19億ドル改修しないと使いものにならないのか


予算が潤沢であればミッションごとに複数の機種を維持できたのですが、昨今の予算環境では贅沢なことは言えなくなっています。しかし海軍と同様に政治が機種選択にいらぬ口を出してくると空軍も大変ですね。ISRは大変重要な分野なので、超高度を飛行できないグローバルホークを残し、U-2を全廃することで禍根を残さないことを祈るばかりです。

Global Hawk Needs $1.9 BN in Upgrades Before U-2 Can Retire


UAS Vision, 11 June 2014

RQ-4_Global_Hawk_Block_40

ノースロップ・グラマンRQ-4グローバルホーク無人偵察機が現行のロッキードU-2の全ミッションを引き継ぐには総額19億ドルの性能改修が必要と判明した。米空軍はU-2全機を退役させて予算節約を期待している。

「高高度ISR用には一機種しか維持できない」とロバート・オットー中将Lieutenant General Robert Otto(ISR担当副参謀総長)は語る。「もしグローバルホーク改修予算がないと各現場司令官に同機の利用を理解してもらえない」と同中将は空軍協会のイベントで話している。

改修内容は地上局以外に通信・画像送信能力、また機体に搭載された気象レーダーも含む、と同中将は話している。米空軍によるとすべての作業を完了するには6年かかり、費用は19億ドルだという。

空軍は今年早々に2012年に決定していたグローバルホークのブロック30機処分方針を撤回し、逆にU-2を全廃しようとしている。

わずか二年前には米空軍はグローバルホークの運用費用が高いとしていたが、その時点で同機をモスボール保存する案には議会の強い拒否反応が示されていた。

オバマ政権の2014年度予算要求では国防総省からRQ-4の運航コストの削減ができたとの報告があり、同機を温存し、U-2を全廃したいとしている。チャック・ヘイゲル国防長官によればこの決定は僅差で決まったという。■