2018年9月16日日曜日

E-2Dは日本へ、P-8、ペイトリオットを韓国へ、軍事装備販売を強化する米国の動き

米国から見れば貿易赤字解消に即効効果があるのは軍事装備品の販売です。しかし日本にとって米製装備依存が高まると国内の防衛産業の基盤がそれだけ弱まってしまいます。ただでさえ日本の防衛産業はやる気を失いかねないので長い目で見て痛い効果を生みそうです。韓国軍には「国民感情」に流されず北朝鮮の監視警戒を続けてもらいたいものです。


U.S. Sending Billions Worth of P-8s, E-2Ds To Asian Allies 

米国はP-8,E-2D数十億ドル相当をアジア同盟諸国へ提供

Japan and South Korea are getting new generations of sub-hunting and intelligence-gathering aircraft as China, North Korea, and Russia continue to push more assets into the waters of the Pacific. 

日本、韓国が新世代対潜哨戒機、情報収集機を導入し、中国・北朝鮮・ロシアが引き続き太平洋で軍事力増強を続ける状況に対応

By PAUL MCLEARYon September 13, 2018 at 6:15 PM

US Navy P-8 Poseidon
国務省が総額26億ドルでP-8Aポセイドン対潜哨戒偵察機6機、ペイトリオット弾道ミサイル迎撃兵器64本の韓国向け販売を承認した。米同盟国側が米製軍事装備の強化で中国に対抗する姿勢の一環であり、同時に北朝鮮へも警戒を怠らない動きにもなる。
このうちボーイング製ポセイドンは対潜哨戒をしながら偵察任務を広範囲な海洋上で行なえ、韓国軍には北朝鮮潜水艦追跡能力で新次元を提供sルウ。2010年に北朝鮮小型潜水艇が韓国海軍コルベット艦天安を沈め、46名の生命を奪った事案が発生している
Navy E-2D Advanced Hawkeye
中国はこれまでより高性能潜水艦の展開をすすめており、一部はインド洋まで遠征している。「中国潜水艦部隊の近代化は依然として高優先順位事業」とペンタゴンが直近で公表した中国軍事力評価で指摘している。
ロシアも新世代潜水艦を送り込んでおり、ロシア国営通信TASSによれば「ステルス」潜水艦二隻が太平洋艦隊に今後二年のうちに編入され、6隻あるヴァルシャヴャンカ級ディーゼル電気推進式潜水艦(改キロ級)の初号艦が太平洋に配備される。
日本も海外装備の調達に大金を支払おうとしている。今週月曜日、ペンタゴンから31億ドルでノースロップ・グラマンE-2Dアドバンストホークアイ位空中早期警戒統制機合計9機の日本向け販売が発表された。
安倍晋三首相のもとで日本は大幅な軍事力増強に乗り出しており、中国が急速に通常兵力を近代化していること、北朝鮮の弾道核ミサイル脅威を真剣に受け止めている。
日本は旧型E-2Cホークアイを運用中だが新型機は大幅な性能向上で、F-35共用打撃戦闘機との併用で日本周囲での水中、空中の情報収集力が増強される。
安倍政権は先月に記録的な480億ドル軍事予算を要求したところで米製軍事装備品に数十億ドルを手当している。

今週初めには海上自衛隊艦船がハワイ沖合で模擬弾道ミサイル迎撃に成功しており、日米両国の関係者から日本の能力向上は確実に進んでいるとの評価を得た。日本艦がイージス弾道ミサイル防衛システムで弾道ミサイル迎撃に成功したのはこれが二回目で初回は2017年2月のことだった。6月の二回目テストは失敗したが、海軍は飛翔中の爆発は人的ミスが原因としていた。■

2018年9月14日金曜日

自衛艦あたご発射のSM-3が弾道ミサイル迎撃実験に成功

目立たないニュースですが、着実に迎撃能力を上げていくのは頼もしい限りです。SM-3はレイセオンが商標登録していたのですね。使い方に今後気をつけないといけません

 

Standard Missile-3 intercepts ballistic missile target during Japanese test at sea スタンダードミサイル-3で日本が弾道ミサイル迎撃実験に成功

Japan's first SM-3 IB test underlines international cooperation 日本初のSM-3 IBテストは国際協力の賜物だ

PACIFIC MISSILE RANGE FACILITY, Hawaii, Sept. 12, 2018
US Navy 111031-N-BT947-026 The Japan Maritime Self-Defense Force (JMSDF) guided-missile defense destroyer JDS Atago (DDG-177) maneuvers with other
By U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist Seaman Jacob I. Allison [Public domain], via Wikimedia Commons
上自衛隊は米ミサイル防衛庁と協力しミサイル迎撃テストに成功した。米海軍も加わりハワイのカウアイ島沖合で実施した。レイセオン SM-3®ブロックIBミサイル一発が弾道ミサイル標的を迎撃したが、日本が高性能の同ミサイルを使用した迎撃テストを実施したのは今回が初めて。
標的ミサイルは太平洋ミサイル発射場から発射され、迎撃ミサイルは日本のJSあたご(DDG-177)から発射され、最新の弾道ミサイル防衛装備の実戦力を改修後の同艦が試した格好となった。飛翔テストは日米のミサイル防衛協力の大きな一歩を示すもの。日本はSM-3ブロックIA迎撃ミサイルを運用中だがIB型ではシーカーが改良され、スロットル制御高度制御装備が改良されたため従来よりも大型の表てkに対応できるようになった。
「SM-3ファミリーはこれまでも一貫して高性能脅威に対応できる力を陸上海上問わず示してきました」とレイセオンミサイルシステムズ社長テイラー・W・ローレンス博士は述べる。「今回のテストは両国の弾道ミサイル防衛が相互運用状態になっていることに加え、両国が共同すれば強力な結果が生まれることを改めて示す格好になりました」
SM-3を生産するのはレイセオンの宇宙ファクトリー(アリゾナ州ツーソン)と同社のインテグレーション施設(アラバマ州ハンツヴィル)にある。


レイセオンについて

レイセオン(本社マサチューセッツ州ウォルタム)の2017年売上は250億ドル、従業員64千名で国防分野以外にサイバーセキュリティ等でのソリューションを得意分野とする。創立以来96年の歴史はイノベーションを多数含み、最新の電子製品、ミッションシステム統合、C5I™製品サービス、センサー、ミッション支援等を世界80カ国超の顧客に提供中。

2018年9月13日木曜日

スタンドオフ兵器の新構想Jassm-XR開発始まる

北朝鮮の先にイラン、さらに米国に公然と歯向かうロシア、中国まで控える中、スタンドオフ兵器の能力向上が必要なのですね。日本もJassm-ER導入の観測がありましたが運用機材さらにISR機能までシステムで考えないと意味がありませんね。

Aerospace Daily & Defense Report

USAF Revives ‘Extreme Range’ Jassm Concept 米空軍の「超長距離」型Jassmコンセプト復活へ

Sep 11, 2018Steve Trimble | Aerospace Daily & Defense Report

Jassm: USAF

空軍が十年に渡り温めてきたAGM-158共用空対地スタンドオフミサイル(Jassm)の新型版構想を復活させ、射程距離は現行型の5倍程度に伸びるとみられる。
ロッキード・マーティンが51百万ドル相当の契約交付を9月10日に受け、「超長距離』版となるJassm-XRの開発を企画、日程調整する。
契約は新型ミサイル制御装置も含み、2023年8月31日までの期間。
ロッキードの戦術ミサイル事業があるフロリダ州オーランドで超長距離型Jassm-XRのコンセプトが2004年にお披露目されていた。
.国防科学委員会(DCB)が2009年にまとめた報告書では1,000カイリ程度の射程距離を想定していた。
これに対して、現行ミサイルの射程延長版AGM-158B Jassm-ERは500カイリ超といわれる。Jassm原型は200カイリだ。ロッキードは米海軍向けにJassm-ERを開発し、長距離対艦ミサイル (LRASM)と呼称している。
Jassm-XRは大型化し射程距離も伸びており、爆撃機など大型機発射の想定とDSB報告書は述べていた。
この兵器はAGM-158Bと射程距離2,400カイリのボーイングAGM-86通常型空中発射式巡航ミサイルの間を埋める存在となる。
Jassm-XRが原型通りのステルス特性を保持できればレイセオンAGM-129核対応巡航ミサイル(2012年に空軍が退役させた)に相当する射程距離と低視認性を同時に実現することになる。

AGM-129AはボーイングB-52Hが主翼下パイロン各2箇所に合計12発搭載していた。■

2018年9月11日火曜日

J-20用国産エンジン量産に目処がつき、いよいよ機体本格生産か

China is about to finish the J-20's fifth-generation engine, and will soon begin mass producing the aircraft 中国はJ-20に第5世代戦闘機にふさわしいエンジンを完成させ、機体の本格生産に移りそうだ

Minnie Chan,

J-20 china stealth fighterJ-20 Wikimedia Commons via V587wiki
  • 中国のJ-20ステルス戦闘機用の新型エンジンが今年末までに本生産開始か
  • WS-15エンジン開発が遅れていたのはブレイド部分の過熱等の問題が原因だった
  • ただし問題は大部分解決済みで、本生産準備が整った



J-20ステルス戦闘機を名実ともに世界クラスに押し上げる新型エンジンの本生産が今年末までに準備完了となる。
WS-15エンジンは最新の単結晶タービンブレイドを使い、これまで開発中と伝えられてきたが、中国技術陣は本格生産への以降に苦慮していた。
ただし問題の本質は最高速度域でのブレイド過熱問題ですでに解決済みで高い歩留まりでの生産が視野に入ったとサウス・チャイナ・モーニング・ポストが伝えている。
中国がかねてからステルス戦闘機の実戦配備を急いでいるのは米国がF-22、F-35の配備をアジア太平洋で進めていることも意識してのことで米国との緊張も高まっていることが背景にある。
WS-15エンジンのJ-20への搭載の準備が年末までに完了する、と消息筋は述べている。
ただし「小さな問題」が残ったままだが、エンジンが「機体に搭載され稼働すれば」解決可能と同筋は述べる。
北京在住の軍事問題専門家Zhou Chenmingによれば中国は200機ないし300機のF-35をアジア太平洋で2025年までに展開すると見ており、「中国にもそれにに匹敵する規模のJ-20が必要だ、200機は最低必要だろう」と述べる。
別の軍事筋によればWS-15エンジンの技術問題はJ-20の本格生産開始前に解決が必要だと言う。
「現在J-20は20機配備中だがとても十分とは言えない」と同筋は述べ、「国産エンジンがJ-20の大量生産前に必要だ。これだけの高水準技術を供してくれる国はないので」
上記筋はそれぞれ国営中国中央テレビCCTVが4月に伝えた製造元の成都航空宇宙が同機生産で四番目のラインを2019年にも開設するとの報道の裏付けともなる。
CCTVは先月も中国空軍がJ-20パイロット養成課程を強化したと伝えていた。
人民解放軍からはJ-20が今年2月に戦闘配置されたと発表があり、その他第四世代機のJ-10、J-10やH-6K戦略爆撃機と共に運用中としていた。5月には台湾封じ込めの演習に同機も投入されていた。
ポスト紙では2月にJ-20には「つなぎ」エンジンが搭載されているとの記事があった。
軍事筋の一つからは今年末に開催される珠海の国際航空宇宙展示会で同機が一般公開されるのではとの指摘がある。展示会は隔年開催で今年は11月5日から11日開かれる。

2018年9月10日月曜日

米軍はシリア攻撃の準備に入った

化学兵器の運用、備蓄についてはロシアが頑なに否定しますが、実は北朝鮮が関与していたのではないでしょうか。ロシアは北朝鮮を使えば自国への非難を回避できますね。だとすれば地理的に離れているものの、シリア問題は北朝鮮問題と関連していることになりますが実態はいかがなのでしょうか。


Pentagon, White House consider military strike options on Syria ペンタゴンとホワイトハウスがシリア軍事攻撃オプションを検討中

By: Tara Copp 

北部イラク上空でシリア空爆を終えたF-15EストライクイーグルがKC-135ストラトタンカーから空中給油を受けている。 Sept. 23, 2014(Senior Airman Matthew Bruch/Air Force)


リア政府軍が化学兵器をイドリブで投入した場合に備えペンタゴンが軍事行動オプションをドナルド・トランプ大統領に提示する準備に入っている。ジョセフ・ダンフォード大将が統合参謀本部議長として9月8日に語っている。
「大統領から化学兵器が使用された場合の軍事対応策を求められている」とダンフォード大将は移動に同行した記者団に語った。「各選択肢の準備状況を報告済みだ」
米国が計画する反撃の対象地は戦闘で疲弊したシリアで米国とイランまたはロシアが支援する各勢力の権益がここに来て対立を明白にしており、そうした地域の一つを対象にする。
米海兵隊が南部の訓練基地アンタンフAn Tanf へ派遣されており、シリア政府寄りの勢力やロシアやイランの支援勢力への抑止効果を期待する。
実弾演習に海兵隊を派遣することでメッセージを送ったとダンフォード大将は述べる。
「増援効果として十分な戦力を持つ部隊が現地で演習をしながらアンタンフで必要なら支援効果を与える」
アンタンフでは空域侵入が日常のように発生しているが、ロシアとの軍事衝突回避ホットラインで未然に事態を回避してきた
The guided-missile cruiser USS Monterey (CG 61) fires a Tomahawk land attack missile April 14, 2018, as part of the military response to Syria's use of chemical weapons on April 7. (Mass Communication Specialist Seaman Trey Fowler/U.S. Navy via AP)
USSモントレー(CG 61)がトマホークミサイルを発射した。2018年4月14日。シリアが化学兵器を4月7日に使用したことへの対応策として。(Mass Communication Specialist Seaman Trey Fowler/U.S. Navy via AP)

昨年はイランの無人機数機、シリア戦闘機一機がアンタンフ付近の空域に侵入し米国がすべて撃墜している。
外交面では米国はシリア国内のミッションを拡大する構えで国務省はISIS打倒後も米軍部隊はシリア国内に残ると発表しており、シリアへのロシア、イランの影響力拡大防止のため米軍が残留するとの解釈を呼んでいる。
ダンフォード大将は米軍部隊の任務はISIS撃破にとどまらず現地の将来の政体の姿を模索するジュネーブ交渉を通じ国務省を助けることとする。
「何ら変更していない」とダンフォード大将は述べる。「ISIS撃滅を常に考えており、今後も再興させない方法を模索している」
これまで二度もアサド指揮下の部隊が反乱勢力が占拠する地点で塩素を民間人に使ってきたが、米国は都度アサド政権を攻撃してきた。
2017年には米駆逐艦二隻が巡航ミサイル数十発をシリア国内の航空基地に向け発射した。2018年4月にはシリア政府軍が反乱勢力支配下の村落を塩素攻撃したため米英仏艦船航空機がミサイル・爆弾攻撃をシリア政府の三拠点へ行った。この際も各施設が化学兵器製造に関連していることをつきとめている。

シリアはイドリブ県を大軍で包囲し推定20千ないし30千名のアルカイダまたはISIS関連部隊を追い詰めている。ダンフォード大将は上記は米国の推定値としながらも通常兵器ではそれだけの勢力の排除は困難でむしろ人道的に憂慮すべき事態を惹起するだけと指摘。

KC-46がFAA型式証明を取得

KC-46 achieves US FAA certification KC-46がFAA型式証明を取得

Pat Host, Washington, DC - IHS Jane's Defence Weekly
07 September 2018
  
Boeing on 4 September achieved a key milestone in the KC-46 programme when the US FAA granted the platform a supplemental type certificate. Source: Boeing

ーイングKC-46空中給油機が米連邦航空局FAAの型式証明を取得し10月の初納入へむけ大きな一歩となった。
KC-46ペガサス空中給油機にFAAが追加型式証明supplemental type certificate (STC)を交付したと同社から9月4日発表があった。
STCでKC-46の給油機能とミッション用エイビオニクスシステムがFAAの要求水準を満たすことが証明される。今回の交付でFAA型式証明取得作業は完了した。ボーイング広報からは10月の米空軍向け一号機引き渡しに向け準備中との発表が9月6日に出た。
STC取得にむけボーイングは各種実験、地上試験、飛行試験を2015年から展開していた。飛行試験ではKC-46のブーム、ドローグ双方による給油方法がFAAの求める型式証明基準に適合することを確認した。
STCはFAA耐空証明二種類のひとつで、ボーイングは原型の767-2C機材で改正型式証明 amended type certificate (ATC)を昨年12月に受けていた。両方の型式証明で同機機能の殆どが対象となるが、軍用機能は例外で別途FAA証明を取得する必要がある。
USAFから別途軍用機型式証明military type certificate (MTC)を得る必要があり、ボーイングは今後数ヶ月での取得を予定している。同社はMTC用の飛行テストを完了しており、空中給油、防御他軍用装備のテストを7月に行った。
ボーイングによればMTCは審査中で空軍承認に向かっているという。USAF広報官ホープ・クローニン大尉からはMTC手続き完了の具体的日程は決まっていないとの発言が9月6日にあった。

STC、MTC双方のテストには6機を投入し、延べ3,500フライト時間、1,361トンの燃料の空中給油をロッキード・マーティンF-16ファイティング・ファルコン、ボーイングF/A-18ホーネット、ボーイングAV-8BハリヤーII、ボーイングC-17グローブマスターIII、ノースロップ・グラマンA-10サンダーボルトII、ボーイングKC-10エクステンダー、ボーイングKC-135ストラトタンカーの各機に行ったほか、KC-46間でも実施した。■

FAAの型式証明が必要というのは原型が民間機のためなのでしょうか、中身がよくわかっていないため理解し難い話ではあります。なんとか今年中の納入実績をボーイングは実現できそうですね。

2018年9月5日水曜日

極超音速兵器開発で新たな役割を果たすB-52


ここに来てB-52の話題が増えていますね。極超音速ミサイル兵器は相当大きな外寸になりB-52での運用がピッタリなのでしょうが、ここまで役に立つ機体を1950年代に作ったことは本当に投資効率が高い事業ですね。歴史に残る機材の資格は十分と言えましょう。

Aviation Week & Space Technology

B-52 Readied For Intense Hypersonic Weapons Test And Deployment Role 極超音速兵器開発・運用の準備を進めるB-52

Aug 29, 2018Guy Norris | Aviation Week & Space Technology

B-52
極超音速兵器実証はX-51Aウェイヴライダーのテスト経験をベースにするはずだCredit: U.S. Air Force

B-52Hの主翼サイズと外部搭載能力が極超音速兵器テストの母機で決め手となり、今後始まる米空軍の第一世代極超音速攻撃兵器の実証、運用で同機に新たな役割が与えられる。
大幅改修策とエンジン換装案検討が進むB-52Hは2050年まで供用予定で米空軍は今後登場するノースロップ・グラマンB-21と長距離攻撃にB-52を活用する方針だ。B-21の投入は2020年代末の予定。B-52ではスタンドオフ能力を期待され、極超音速兵器を多数搭載する。
「極超音速が同時平行で開発中で、各種兵器構想の実証をめざします」とボーイング爆撃機事業主幹スコット・オートハウトが述べる。「B-52が極超音速技術の成熟化で中心的存在です」 
空軍はB-52を「2019年から2020年に実施する極超音速兵器実証で発射母機とする」とし、緊急性を鑑み、ペンタゴンで新たに生まれた804セクション調達手法で二方式の試作を加速化する。つまりロッキード・マーティンのAGM-183A空中発射方式迅速対応兵器 (ARRW) と極超音速通常型打撃兵器(HCSW)の二種だ。「どちらかがあるいは両方が成功すればB-52の極超音速兵器運用ミッションが一変することはなくても長距離攻撃能力は引き上げられる」と空軍は説明する。
短期的にはDARPAが戦術加速滑空技術(TBG)の実証を企画中で、このロケット推進のロッキード・マーティン超高速滑空機がAGM-183Aの母体となる。TBGは2019年にも飛行テストを開始する予定で、その後登場する迅速即応兵器の作戦運用開始は2021年が目標だ。固体ロケット推進方式のHCSWは2022年の作戦運用開始を期待される。
空軍が目指す極超音速兵器はスクラムジェットエンジンを使い、B-52母機がNASAの2000年代にX-43をテストしており、その後継たる空軍とボーイング共同開発のX-51Aが2010年から2013年にテストされた。ロッキード・マーティンのスカンク・ワークスはレイセオンとDARPA事業で類似コンセプトの極超音速空気吸い込み式兵器コンセプト (HAWC)を製作中だ。HAWCの採用案はB-52でテストを2020年に開始する。
最終仕様がどうなるかと別に「B-52の将来はこの兵器運用で更に伸びる」とオートハウトは述べる。「大型トラックであり大型装備を簡単に外部搭載可能で長距離運用できるので、2040年代2050年代まで重宝され今後の技術動向に対応できるはずです」
大型兵器の登場を予想するボーイングは空軍と「大型装備搭載案で新型パイロンを検討中」とオートハウトは說明する。B-52では重量10,150-lb.のAGM-28ハウンドドッグ超音速ミサイルや特殊ミッション用大型装備としてD-21ステルス無人機やX-15極超音速試験機を搭載の実績があるが、設計陣は高速兵器数発を搭載出来ないか検討中だ。

その動きのひとつとして6月に空軍物資本部が情報開示要求を発出していた。新しく外部搭載兵器用パイロンを開発しB-52の現行最大搭載能力10,000-lb.を 40,000 lbへ引き上げる。新設計パイロンは現行の改良型共通パイロン(1960年代から共用中)に手を加えたものになると見られる。「当時はそんな要求もなくここまで重い兵装の搭載を予想したものもいなかった」と空軍は説明しており、開発期間36-72ヶ月での実現を狙う。■

2018年9月4日火曜日

日本の防衛力の要となる人員を人口減高齢化社会の日本で確保するには思考の転換が必要だ

日本でも遅ればせながら無人装備の開発に拍車がかかってきたのは良い傾向でしょう。日本の防衛力維持にどれだけの人員が必要なのか。不足するなら技術でカバーできるのか。いや、やはり一定の人員数が必要なのか。いずれにせよ日本が今までとは違う社会になっているからこそ新しい思考、過去の延長線を断ち切れるたくましい思考が必要なのですが。

How to Make Japan's Military Great Againこの方法で日本の軍事力は再興する

Can the Self-Defense Forces’ (SDF) force level and structure sufficiently cope with the increased defense capability?自衛隊の戦力水準、構造は防衛力増強のニーズに応えられるのか
August 25, 2018  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: JapanSelf-Defense ForceChinaIndo-PacificU.S.-Japan Alliance
2017年12月15日、安倍晋三首相は共同通信編集者会議の席上でスピーチし、総選挙での勝利、アベノミクス、社会保障問題、北朝鮮、中国と多様な話題を取り上げた。その中で特に取り上げたのが防衛大綱(NDPG)の2018年内改訂で、日本の防衛装備調達を中期防(MTDP)として次の5年間に渡り定める内容となる。
スピーチで安倍首相が強調したのが改訂方針で「専守防衛を所与の条件としつつ国民の安全にとって真の意味で寄与する防衛能力を確認していきたい。既存装備をそのまま維持することはしない。日本を取り巻く安全保障環境の現実を重視する」とし、いよいよ今年は安全保障上で大きな変革の年になることを予感させた。
だが本質的な疑問はこの十年以上答えがないままでNDPG策定で解答が求められる。現在の自衛隊の戦力水準と構造で防衛能力の向上が十分可能だろうか。
2014年度防衛大綱、中期防での防衛力増強
現行の2014年版大綱では自衛隊の抑止力および即応力を数と質の両面で強調している。例として自衛隊は能力整備で海と空での優越性確保を重視しており、これを有効な抑止力ならびに即応体制の基本とし南西部における防衛力整備が含まれている。
この目標達成に向け2014年版NDPGおよびMTDPでは以下の主要対策を想定した。(A)駆逐艦を47隻体制(うちイージス駆逐艦6隻)から54隻(イージス駆逐艦8隻含む)に拡充 (B)潜水艦を16隻から22隻体制にする (C)戦闘機を260機から280機へ増強する (D)空輸飛行隊を1個飛行隊から3飛行隊へ増強する (E)水陸即応旅団1個の整備 を掲げていた。
2018年度執行が4月から始まったが現行MTDPで23あった調達項目のうち13で予算化され、駆逐艦5隻(うちイージス艦2隻)、潜水艦5隻、F-35A(23機)、水陸両用車両52台が対象だ。日本の防衛力整備は想定どおりに進んでおり、2018年版のNDPGとMTDPがこの12月に内容を更新する。
現在の自衛隊戦力構造はどうなっているのか
2017年3月31日時点で自衛隊の総人員は224,422名でうち6割が陸上自衛隊(GSDF)、19パーセントが海上自衛隊(MSDF)、また19パーセントが航空自衛隊(ASDF)、統合幕僚部(JSC)が2パーセントだった。充足率(実際の人数と必要人員数の比率)はGSDFが9割、MSDFで93パーセント、ASDFが92%、JSCが91パーセントで自衛隊全体としては91パーセントだった。各隊で人員不足とはいえ当面は十分と言える。では何が問題なのか。
深刻なのが一般隊員での不足がめだつことだ。MSDFの一般隊員には運用要員見習い、運用要員で構成されるが、幹部、上級隊員、一般隊員の各部門は2017年度で93-99パーセントの間だったが、一般隊員では69.5パーセントにとどまっていた。詳細は不明だが戦闘部隊での一般隊員が想定の7割程度になっていると想像できる。
自衛隊ではこの問題に長年に渡り対応策を模索してきた。これまでの防衛白書によれば充足比率は2008年から2017年の間に69から76パーセントの間を推移している。ただし艦船は100%の人員を確保してこそ所与の機能を発揮できることに留意する必要がある。
こうした状況で自衛隊は各隊を完全な形で機能する部隊にすべく考えられるすべての対策をとっている。2008年から海上自衛隊はソマリア沖海賊対策の国際協力に部隊派遣しており、現在も駆逐艦一隻が活動中だ。2011年5月19日の国会議事録によれば駆逐艦二隻を海外派遣するにあたってMSDFは各艦の人員充足率を最低でも9割とすると確約している。このため残る自衛艦で充足率が7割から8割に落ち込んでいる。つまり日本本土近くで活動する艦艇で人員が不足したままなので作業ロードが高くなっていることになる。
防衛力増強と隊員数の関係は
2015年以降にMSDFはいずも級ヘリコプター駆逐艦(乗員定数470名)二隻、あさひ級駆逐艦(同上230名)一隻、そうりゅう級潜水艦(同上65名)を就役させた。約1,430名の隊員が合計で必要だ。もちろん新規就役艦の裏には退役艦があることがわかる。ただ新規建造艦は大型化する傾向があり、いずも級が交代したしらね級ヘリコプター駆逐艦は乗員定数350名だったので単純に120名追加する必要がある。
今後就役する駆逐艦潜水艦はすでに予算手当がついていることに注意が必要だ。まや級イージス駆逐艦(350名)二隻、新型30DX水上艦(100名)二隻、そうりゅう級潜水艦(65名)3隻がある。これだけで995名が必要となる。
では海上自衛隊の隊員数は2014年から増えているのか。防衛白書を見るとそうではないとわかる。2014年度末の42,209名が2016年度末に42,136名に微増しているだけだ。そのため疑問は残ったままだ。海上自衛隊更に自衛隊全体は本当に機能できるのだろうか。
大幅な人口減がやってくる
2012年度を見ると自衛隊全体で平均毎年14千名が入隊し10千名が退官あるいは任期満了で去っている。このため毎年4千名が残り、自衛隊合計で224千名が227千名になった。ただし近年の経済回復傾向とあいまって出生率の低下傾向ならびに高学歴化のため自衛隊隊員募集の環境はきわめて厳しい。2017年度でいうと自衛隊は一般隊員として陸自に5,400名、海自1,100名、空自1,660名の募集目標を立てたがそれぞれ8割、6割、8割しか集めていない
更に大幅な人口減がやってくるのは確実であり、このため現在以上に隊員確保が困難になるのは避けられない。日本が超高齢社会に入っているとの指摘は出ており、人口減社会は現実のものだ。自衛隊入隊年齢の18歳から24歳人口のピークは1994年の17百万人だったが2016年度ではこれが6百万人35%減となった。2030年には適正年齢層は9百万人になりそうだ。
防衛省も各種対策を展開し、女性隊員の入隊を増やす(2016年度現在で6.1パーセント相当になった)ほか、今年10月より入隊可能年齢を延長する。だが日本には定年年齢の延長措置の検討が必要であり、元自衛官の再採用や女性隊員をさらに増やす必要もある。
今こそ自衛隊の人員構造を見直すべきだ
では将来の隊員不足に対応しつつ望ましい防衛力を自衛隊は確保できるのだろうか。スウェーデンがロシアの脅威に対応し徴兵制を復活させた。日本も同じ方法をとれないのか。答えは否である。理由は「憲法違反」だからだ。日本国憲法第18条では「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」とあり、現行政府の解釈では徴兵制は「服従の強制」とされている。安倍総理も2016年3月の国会でこの見解を認めた。
新技術はどうか。超高齢化社会、人口減少社会の日本では無人装備の研究開発が必要だ。防衛装備庁が防衛技術戦略構想を2016年8月発表しており、まさしくこの方向で今後20年間進むと示されている。今後の有望案件は無人水上艇(USV)と無人水中機(UUV)でそれぞれ一ヶ月以上連続投入可能という想定だ。このうちUUVは対艦ミサイルと魚雷を搭載する。米国も同様の研究をしており、日米共同体制のうえで大きな意味を持つことになるかもしれない。
こうした技術の開発は相当の長期間が必要だし簡単に運用可能に進めない。そのため今利用できる高性能兵器装備の調達が早道だろう。イージス・アショアを二箇所に導入する決定で日本本土全体をカバーできるとともに弾道ミサイル防衛運用での海上自衛隊の負担を軽減できる。イージス・アショアは陸上自衛隊が運用し、最初の施設は2023年に運用開始となる。
中国の海空軍事力の整備に直面する日本だが自衛隊員の数が現在も将来も不足する中で独自の海空防衛力増強が必要だ。新防衛大綱ではこの課題に取り組み解決策の提示が求められる。陸自6海自2空自2という現行の人員配置は1980年代中頃から変わっていないことが毎年の防衛白書からわかる。これを今変えるべきで、自衛隊員の比率変更こそ政策の柱とすべきだ。
各種報道によれば日本では陸海空の枠を超えた隊員勤務を検討しているという。現在、海上自衛隊には481箇所、航空自衛隊には392箇所の基地施設がありそれぞれの人員で警備保安をしている。これが検討中の新体制なら陸上自衛隊に海自、空自の基地を警備させ、その分で浮いた隊員が重要任務に割り当てられる。これはよいスタートとなり今後は各隊の枠を超えた運用が必須となろう。その例として陸上輸送、ISR、ミサイル防衛、サイバー、宇宙、電子戦がある。
インド太平洋を睨む米戦略への影響は
中国の軍事力拡大に同対応するかで米国では議論が盛んになっている。おもに3つの考え方がある。(1)米国の軍事力増強 (2)米軍のアジア撤退 (3)中国周辺国の軍事力増強 である。では日本が自衛隊隊員の再調整に成功するかがここで大きな意味を有する。仮に人口構造変化への対応に日本が失敗した場合、日本は防衛力増強ができない事態に直面し安全保障面で米国依存をさらに強める結果となるかもしれない。だが米軍にも独自のミスマッチ問題が人員数とふえるばかりの需要の間にあり、インド太平洋地区では事故が複数発生している。日本が自衛隊隊員構成の調整に失敗した場合に米国はどう対応すべきだろうか。新防衛大綱は12月に発表され、米国の政策決定層が注視するのは確実だ。
Dr. Aki Nakai is an adjunct faculty in the Pardee School of Global Studies at Boston University and the Political Science Program at Lesley University. His research interests lie in the intersection of international security and politics of the Indo-Pacific region.
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